第1の発明は、複数の対象物が段積みされた対象物群から対象物を分離する段ばらし装置であって、搬入位置に置かれた対象物群を水平移動させる第1移動部と、前記第1移動部が水平移動させた対象物群の下面を支えた状態で対象物群を昇降させる昇降部と、前記昇降部が昇降させた対象物群の最上部に段積みされた対象物を搬出位置へ水平移動させる第2移動部とを備える、段ばらし装置である。
ここで、「段積みされた」とは、対象物が鉛直方向(上下方向)に積み重ねられた状態を指し、「段ばらし」とは、段積みされた対象物群から対象物を分離する(ばらす)ことを指す。
第1の発明によれば、構成を複雑化させることなく、複数の対象物が段積みされた対象物群から、対象物を安定的かつ高速に分離することができる。
第2の発明は、特に第1の発明において、前記第1移動部と前記第2移動部とが一体的に駆動される、段ばらし装置である。
ここで、「一体的に駆動される」とは、第1移動部と第2移動部との相対的な位置関係が保たれた状態で駆動されることを指す。
第2の発明によれば、第1移動部と第2移動部とが一体的に駆動されることで水平移動のタイミングを別々に制御する必要がなくなり、段ばらし装置の構成を簡略化することができる。
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る段ばらし装置について説明する。図1(a)は段ばらし装置1の概略正面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す段ばらし装置1のA−A線断面図である。本実施の形態に係る段ばらし装置1は、対象物の例として卵用のトレイWを扱っており、複数のトレイWが段積みされたトレイ群Uから、トレイWを分離する。本実施の形態に係る段ばらし装置1は、搬入部2と、第1移動部4と、第2移動部13と、昇降部10と、搬出部16とを備えている。
始めに、搬入部2について説明する。搬送方向Tの上流側に設置された一時保管庫(図示せず)において保管されていたトレイ群Uは、搬入部2によって段ばらし装置1に搬入され、図1に示す搬入位置で停止する。搬入部2の搬送面3は、トレイ群Uを搬送するためのベルトコンベヤとなっている。本実施の形態では、搬送面3をベルトコンベヤとしているが、たとえば、作業者がトレイ群Uを手動で段ばらし装置1へ搬入するための搬入場所としてもよい。この場合、段ばらし装置1は、トレイ群Uを搬入するためのベルトコンベヤを備えない構成としてもよい。
本実施の形態に係るトレイ群Uは、5×6に区分けされた収容部に30個の卵Eを収容することができる合成樹脂製のトレイWが6段に段積みされたものであり、トレイW同士を段積みするときに一方のトレイWの向きを水平に90度変えることで卵Eを収容したまま段積みすることが可能な、いわゆるアメリカントレイと呼ばれる卵用トレイである。トレイWの高さ(鉛直方向の幅)はXとなっており、トレイWを6段に段積みした状態のトレイ群Uの高さは、6Xに卵Eがトレイの上端からはみ出している分の高さを加えたものとなる。
本実施の形態に係る段ばらし装置1の搬入部2は、アメリカントレイだけでなく、パルプモールドトレイや段ボール箱などの様々な対象物群を搬入することができる。たとえば、対象物同士を段積みするときに一方の対象物の向きを水平に180度変えることが必要な対象物群であっても搬入することができ、段ばらし装置1はそれらの対象物群から対象物を段ばらしすることができる。
また、搬入部2と昇降部10との間には中継板9が設けられている。中継板9は、搬出部16から昇降部10へトレイ群Uを水平移動させる時に、搬送面3から昇降面11への載り移りを円滑に行うための部材である。
次に、第1移動部4および第2移動部13について説明する。第1移動部4は、図2に示すように、搬入部2によって搬入されたトレイ群Uを搬送方向Tへ水平移動させるための装置である。また、第2移動部13は、図3(b)に示すように、後述する昇降部10上のトレイ群Uの最上部に位置するトレイWを搬出位置である搬出部16の搬送面17上に水平移動させるための装置である。
また、図4に示すように、本実施の形態に係る第1移動部4は、第2移動部13がトレイ群U1から最後に搬出されるトレイW6を搬送方向Tへ水平移動させる時に、搬入部2が搬入した他のトレイ群U2を搬送方向Tへ水平移動させるように構成されている。
第1移動部4には、搬送方向Tの前後に移動するための駆動部8が設けられており、第2移動部13にも、第1移動部4と同様に搬送方向Tの前後に移動するための駆動部8が設けられている。本実施の形態では、第1移動部4と第2移動部13とが、連結部7によって一体となるように構成されており、第1移動部4および第2移動部13は、一つの駆動部8によって駆動されている。このようにすることで、駆動部8によって第1移動部4および第2移動部13を水平移動させる時に水平移動のタイミングを別々に制御したりする必要がなくなり、段ばらし装置の構成や制御を簡略化することができる。なお、本実施の形態に係る第1移動部4および第2移動部13は連結部7で一体となるように構成されているが、これに限らず、複数の駆動部を設けた第1移動部4と第2移動部13とが一体的に駆動されることによって第1移動部4と、第2移動部13との相対的な位置関係が固定されるようにしてもよい。
さらに、第1移動部4は、トレイ群Uを押すための押圧部5を有している。図1(b)に示すように、押圧部5は回動軸6を中心に90度回動し、実線で示された位置に固定されることで、第1移動部4が駆動部8よって水平移動する際にトレイ群Uを押して搬送方向Tへ水平移動させる。トレイ群Uを水平移動させる必要がない時は、押圧部5は図1(a)(b)に二点鎖線で示した位置で固定されるので、搬入部2よって搬送方向Tの上流から搬送されてくるトレイ群Uの搬入の妨げとならない。なお、第1移動部4には押圧部5を回動させるための機構が備えられているが、図示の簡略化のために記載を省略している。
一方、第2移動部13は、トレイWを支持するための支持部14を有している。図1(a)(b)に示すように、支持部14には、トレイ群U1の最上部に位置するトレイW1の周縁部分を支持するための支持爪15が設けられている。ここで、「周縁部分を支持する」とは、下から支えるだけの場合や、対象物の周縁部分を掴むように支持する場合などを含んでいる。
本実施の形態に係る支持爪15は、図1(b)に示すように、トレイWを支持していない時には支持部14の内部に格納されており、トレイWを支持する時に支持部14からトレイWに向けて突き出るように構成されている。なお、第2移動部13には支持爪15を支持部14に格納したり、突き出したりするための機構が備えられているが、図示の簡略化のために記載を省略している。
本実施の形態では、支持部14はトレイWの周縁部分の四辺のうち、搬送方向Tと平行な対向する二辺を支持するが、周縁部分の四辺を支持してもよい。周縁部分の四辺を支持することで、支持部14がトレイWを確実に支持することができる。また、支持部14は支持爪15によってトレイWの周縁部分を支持するだけでなく、たとえば把持機構で周縁部分の四辺を把持してもよい。なお、本実施の形態では、支持爪15を用いてトレイWを支持しているが、トレイWを支持することができればよいので、爪形状の部材に限られない。
次に、昇降部10について説明する。図2および図3に示すように、昇降部10は、第1移動部4が水平移動させたトレイ群U1の下面を昇降面11によって支えた状態でトレイ群U1を昇降させる昇降装置である。昇降部10は昇降面11によって下面を支えたトレイ群U1の最上部に位置するトレイW1の高さが、後述する搬出部16の搬送面17を搬出される時のトレイWの高さと等しくなるまで下降する(図2(c)参照)、第2移動部13がトレイ群U1の最上部に位置するトレイW1を搬出部16へ水平移動させた後(図3(b)参照)、トレイ群U1の最上部に位置するトレイW2の高さが、搬出部16の搬送面17を搬出される時のトレイWの高さと等しくなるまで上昇するように構成されている(図3(c)参照)。
本実施の形態に係る昇降部10の下方には、昇降軸12を駆動する回転昇降機構(図示せず)が設けられており、昇降部10は回転昇降機構によって昇降する。図1(b)に示すように、昇降軸12を中心に昇降面11を水平に90度回動させることでトレイ群U1の向きを90度変更することができるように構成されている。
また、昇降部10は、図5に示すように、昇降部10上に存在するトレイWの数に応じて昇降するときの位置(高さ)が変化するように構成されている。本実施の形態ではトレイWが6段に段積みされたトレイ群Uを段ばらししているが、これに限らず、段積みされているトレイWの数は必要に応じて様々なものに対応するようにしてもよい。また、昇降部10は、常に一定の位置まで下降するように設定してもよいが、本実施の形態に係る昇降部10のように、昇降面11上に存在するトレイWの数が少ないほど下降するときの位置が高くなるように設定することで、昇降部10がトレイ群U1を昇降させる距離が小さくなり、トレイ群Uの段ばらしに必要な時間を短縮することが可能となる。
本実施の形態に係る段ばらし装置1は、昇降部10が水平に90度トレイ群Uの向きを変える場合と、トレイ群Uの向きを変えずに下降または上昇のみを行う場合を交互に繰り返すことで段ばらしを行う。このようにトレイ群Uの向きを変える理由は、本実施の形態に係るトレイWが卵Eを5行×6列で収容しているため、トレイWの向きによって卵Eの配置が変化するからであり、昇降部10が90度回動することで下流工程での処理を容易にしている。
なお、本実施の形態に係る段ばらし装置1では、昇降部10が回転昇降機構(図示せず)によって回動することでトレイ群Uを水平に90度回動させているが、たとえば特開2001−163308号公報に記載されている卵収容トレイの配向方法及びその装置を利用して、搬出部16の下流工程にあるコンベヤ(図示せず)上でトレイWを水平に90度回動させて向きを変えてもよい。この場合は昇降部10によってトレイ群Uを回動させる必要がない。
また、対象物がアメリカントレイのように交互に90度向きを変えて段積みするものだけでなく、たとえば、対象物が180度向きを交互に変えることで段積みされる対象物群を段ばらしする場合は、昇降部10が180度回動するようにすればよい。さらに、本実施の形態では反時計回りの後、時計回りに回動するように構成されているが、これに限らず、常に一定の方向に、所定角度ずつ回動するように構成してもよい。なお、昇降面11および中継板9の形状を図6(b)に示す、本発明の第2の実施の形態に係る昇降面111および中継板109の形状とすれば、昇降部10がどのような角度で回動しても、第1移動部4による搬入部2から昇降部10へ支障なくトレイ群Uの載り移りが行える。
次に、搬出部16について説明する。搬出部16の搬送面17は、段ばらしされたトレイWを搬送するためのベルトコンベヤとなっており、搬送方向Tの下流側へトレイ群Uから分離されたトレイWを搬出する。本実施の形態では、搬出部16の搬送面17をベルトコンベヤとしているが、ベルトコンベヤの代わりに、ローラーコンベヤとしてもよい。なお、本実施の形態では、昇降部10と搬出部16との間には中継板を備えていないが、中継板を備えるようにしてもよい。昇降部10と搬出部16との間に中継板を備え、押圧部5がトレイ群Uを搬入部2から搬出部16まで押して水平移動させるようにすることで、段ばらしを行わずに搬出部16の下流へトレイ群Uを搬出することもできる。
また、本実施の形態では、搬出位置である搬出部16の搬送面17の高さと、搬入位置である搬入部2の搬送面3の高さとが、略等しくなるように構成されている。このようにすることで、昇降部10上のトレイ群Uを搬送面3および搬送面17よりも下方で回動させることになる。そうすると、トレイ群Uと、第1移動部4または第2移動部13とが接触するおそれがなくなるため、トレイ群Uの回動が完了するまで第1移動部4および第2移動部13を待たせる必要がなくなる。ここで、「高さが略等しい」とは、本発明の効果が生じる範囲で高さが等しいことを指す。たとえば、対象物の下部が搬出部の搬送面より下の部分に接触しない程度に搬送部の搬送面の高さを若干低くするような場合を含む。
(動作説明)
次に、図2〜図5を参照して、本実施の形態に係る段ばらし装置1がトレイ群UからトレイWを段ばらしするときの動作について説明する。なお、本明細書においては、「トレイWの鉛直方向の幅(高さ)」をXとし、「トレイWから上方にはみ出す卵Eの上部が、支持部14に支持されている他のトレイWと接触しない程度の鉛直方向の幅(高さ)」をYとしている。
図2に示すように、本実施の形態に係る段ばらし装置1に対して、複数の卵Eが収容されているトレイW1〜W6が段積みされたトレイ群U1が搬入部2によって搬入され、図2(a)に示す搬入位置で停止する。
搬入部2によって搬入されたトレイ群U1が図2(a)に示す位置で停止すると、第1移動部4に設けられた押圧部5が回動軸6を中心に90度回動し、図1(b)に実線で示した位置で固定されてトレイ群U1に接触する。なお、図2(a)は、押圧部5が回動軸6を中心に90度回動した後の状態を示している。
押圧部5がトレイ群U1に接触すると、第1移動部4および第2移動部13は駆動部8によってD1の方向へ水平移動を開始する。図2(b)に示すように、第1移動部4に設けられた押圧部5がトレイ群U1を昇降部10上に水平移動させる。第1移動部4が水平移動させたトレイ群U1を昇降部10が受け取ると、昇降部10は、トレイ群U1をD2方向へ下降させる。また、昇降部10がトレイ群U1を受け取ると、押圧部5は回動軸6を中心に、前述の回動方向とは逆方向に回動して、図1(b)に二点鎖線で示した位置で固定される。
昇降部10は、トレイ群U1の最上部に位置するトレイW1の高さが、搬出部16によって搬出する高さと等しくなるまでトレイ群U1を下降させ、図2(c)の位置で停止する。この時、搬入部2の搬送面3の高さおよび搬出部16の搬送面17の高さと、昇降部10の昇降面11の高さとの差は、トレイW2〜W6の高さを合計した5Xとなる。また、昇降部10が下降すると同時に、第1移動部4および第2移動部13が図2(b)に示すD3方向へ水平移動する。第1移動部4および第2移動部13は図2(c)に示す位置で停止し、トレイ群U1の最上部に位置するトレイW1は、第2移動部13が有する支持部14によって支持される。なお、図2(c)に示す押圧部5は、回動軸6を中心に回動して、図1(b)に二点鎖線で示した位置で固定された後の状態を示している。
第2移動部13が有する支持部14がトレイW1を支持すると、昇降部10は、トレイ群U1を図2(c)に示すD4方向へ下降させる。図3(a)は昇降部10がD4方向へ下降した後の状態を示しており、図3(a)に示すように、昇降部10がトレイ群U1をD4方向へ下降させる距離はYとなる。トレイ群U1がD4方向へ下降すると、第1移動部4および第2移動部13がD5方向へ水平移動を開始し、昇降部10は昇降軸12を中心にD6方向へ90度回動する。
この時、搬入部2の搬送面3の高さおよび搬出部16の搬送面17の高さと、昇降部10の昇降面11の高さとの差は、トレイW2〜W6の高さの合計にYを足した5X+Yとなる。また、昇降部10が昇降軸12を中心にD6方向へ90度回動すると、昇降部10の昇降面11上のトレイ群U1の向きが図3(b)に示す向きに変えられる。
第1移動部4および第2移動部13がD5方向へ水平移動し、図3(b)に示す搬出位置まで到達すると、第1移動部4および第2移動部13は停止する。支持部14からトレイW1が搬出位置である搬出部16の搬送面17に渡され、支持部14からトレイW1を受け取った搬出部16は、搬送方向TへトレイW1を搬出する。
昇降部10が昇降軸12を中心にD6方向へ90度回動し、トレイ群U1の向きが変えられた後、昇降部10はD7方向へX+Yだけ上昇して停止する。図3(c)は昇降部10が停止した後の状態を示しており、搬入部2の搬送面3の高さおよび搬出部16の搬送面17の高さと、昇降部10の昇降面11の高さとの差は、図3(c)に示すように、トレイW3〜6の高さを合計した4Xとなる。また、第2移動部13の支持部14がトレイW1を搬出部16に渡すと、第1移動部4および第2移動部13が図3(b)に示すD8方向へ水平移動し、図3(c)に示す位置で停止する。この時、搬入部2にはトレイW7〜W12が段積みされたトレイ群U2が搬入されており、トレイ群U2は搬送方向Tへ搬送され、図3(c)に示す位置で停止する。なお、押圧部5は図3(b)に示すようにトレイ群U2と干渉しない位置で固定されているため、トレイ群U2を搬入する妨げとならない。
第1移動部4および第2移動部13がD8方向へ水平移動して図3(c)に示す位置で停止する。昇降部10がD7方向へX+Yだけ上昇して停止すると、トレイ群U1の最上部に位置するトレイW2は、第2移動部13が有する支持部14によって支持される。
支持部14がトレイW2を支持すると、昇降部10は、トレイ群U1を図3(c)に示すD9方向へ下降させる。この時の、昇降部10がトレイ群U1をD9方向へ下降させる距離はYとなる(図示せず)。昇降部10がD9方向へ下降すると、昇降部10は昇降軸12を中心にD10方向へ90度回動し、第1移動部4および第2移動部13はD11方向へ水平移動を開始する。
以降、トレイW3〜W5についても同様の動作が行われ、最終的に図4(a)に示すように、トレイ群U1の最下段に位置していたトレイW6が第2移動部13の有する支持部14によって支持される。
この時、搬入部2によって搬入されたトレイ群U2は、図4(a)に示す搬入位置で停止しており、第1移動部4に設けられた押圧部5が回動軸6を中心に90度回動して図1(b)に実線で示した位置で固定され、トレイ群U2に接触する。なお、図4(a)は、押圧部5が回動軸6を中心に90度回動した後の状態を示している。
押圧部5がトレイ群U2に接触すると、第1移動部4および第2移動部13は駆動部8によってD21の方向へ水平移動を開始する。図4(b)に示すように、第1移動部4に設けられた押圧部5がトレイ群U2を昇降部10上に水平移動させ、昇降部10がトレイ群U2を受け取ると、押圧部5は回動軸6を中心に、前述の回動方向とは逆方向に回動して、図1(b)に二点鎖線で示した位置で固定される。また、第2移動部13が有する支持部14が支持しているトレイW6が搬出位置である搬出部16の搬送面17に渡される。
第1移動部4が水平移動させたトレイ群U2を昇降部10が受け取ると、昇降部10は、トレイ群U2をD22方向へ下降させる。また、支持部14からトレイW6を受け取った搬出部16が、搬送方向TへトレイW6を搬出することで、トレイ群U1に係る一連の段ばらし動作が完了する。
そして、昇降部10は、トレイ群U2の最上部に位置するトレイW7の高さが、搬出部16によって搬出する高さと等しくなるまでトレイ群U2を下降させ、図4(c)の位置で停止する。この時、搬入部2の搬送面3の高さおよび搬出部16の搬送面17高さと、昇降部10の昇降面11の高さとの差は、トレイW8〜W12の高さを合計した5Xとなる。また、昇降部10が下降すると同時に、第1移動部4および第2移動部13が図4(b)に示すD23方向へ水平移動する。第1移動部4および第2移動部13は図4(c)に示す位置で停止し、トレイ群U2の最上部に位置するトレイW7は、第2移動部13が有する支持部14によって支持される。なお、図4(c)に示す押圧部5は、回動軸6を中心に回動して、図1(b)に二点鎖線で示した位置で固定された後の状態を示している。
このように、トレイ群U2に対してもトレイ群U1と同様の段ばらし動作が行われる。図5は、本実施の形態に係る段ばらし装置1の一連の動作における、昇降部10の昇降面11の位置と時間との関係を示すグラフである。グラフ中の2a〜4cの点は、図2(a)〜図4(c)それぞれに示す昇降面11の位置に対応している。また、図5は、卵Eが収容されたトレイWのように、上方に卵Eの上部がはみ出すような対象物の鉛直方向の幅が一定でない場合の昇降部10の位置と時間の関係を示している。
なお、本実施の形態に係る段ばらし装置1が、たとえば、段ボール箱のような常に鉛直方向の幅が一定の対象物を段積みした対象物群を段ばらしするときは、対象物の鉛直方向の幅が常に一定であるため、支持部14に支持されている対象物に昇降部10上の対象物の上部が接触することがない。そうすると、対象物群の最上部に位置する対象物を分離して支持する度に下降する必要がない。
また、本実施の形態に係る段ばらし装置1では、第1移動部4および第2移動部13が連結部7によって一体となっているため、第1移動部4および第2移動部13は同時に動くように構成されているが、これに限らず、たとえば、駆動部8の駆動機構を第1移動部4および第2移動部13に対して個別に設け、それぞれを独立して駆動することができるようにしてもよい。この場合、第2移動部13が、トレイ群U1から最後に搬出されるトレイW6を水平移動させる時に、同時に第1移動部4が搬入部2が搬入したトレイ群U2を昇降部10まで水平移動させれば、トレイ群U1から最後に搬出されるトレイW6の搬出が完了することを待たずに、第1移動部4によってトレイ群U2を水平移動させることができる。
さらに、本実施の形態に係る段ばらし装置1は、トレイ群Uの最上部に位置するトレイWを1つずつ分離しているが、これに限らず、2つ以上のトレイWを一括して分離してもよい。たとえば、トレイ群U1の最上部に位置するトレイW1およびトレイW2を一括して分離する場合を指す。
(第2の実施の形態)
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る段ばらし装置について説明する。本発明の第1の実施の形態に係る段ばらし装置1は、搬入位置である搬入部2の搬送面3の高さと、搬出位置である搬出部16の搬送面17の高さとが、略等しくなるように構成されている。これに対して、本発明の第2の実施の形態に係る段ばらし装置101は、搬入位置である搬入部2の搬送面3の高さと、搬出位置である搬出部16の搬送面17の高さとが、異なるように構成されている。これに伴い、制御等が異なっている。
図6(a)は段ばらし装置101の概略正面図であり、図6(b)は、図6(a)に示す段ばらし装置101のB−B線断面図である。本発明の第2の実施の形態に係る段ばらし装置101は、対象物の例として、複数の卵用トレイWが段積みされたトレイ群Uから、トレイWを分離して搬出する段ばらし装置101であって、搬入部102と、第1移動部104と、第2移動部113と、昇降部110と、搬出部116とを備えている。
始めに、搬入部102について説明する。搬送方向Tの上流側に設置された一時保管庫(図示せず)において保管されていたトレイ群Uは、搬入部102によって段ばらし装置101に搬入され、図6に示す搬入位置で停止する。搬入部102は、トレイ群Uを搬送するためのベルトコンベヤである。本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、ベルトコンベヤを備えない構成としてもよい。なお、搬入部102によって搬入されるトレイ群Uは、第1の実施の形態で説明したトレイ群Uと同じであるため、本実施の形態においてはトレイ群U1およびトレイWの説明は省略する。
また、搬入部102と昇降部110との間には中継板109が設けられている。中継板109は、搬出部116から昇降部110へトレイ群Uを水平移動させる時に、搬送面103から昇降面111への載り移りを円滑に行うための部材である。なお、中継板109は、後述する昇降部110や、昇降部110が昇降軸112を中心に回動する時に、昇降面111上のトレイ群Uと干渉しないようにするため、搬送方向Tの下流側が円弧状に凹んだ形状となっている。
次に、第1移動部104および第2移動部113について説明する。第1移動部104は、図7に示すように、搬入部102によって搬入されたトレイ群Uを搬送方向Tへ水平移動させるための装置である。また、第2移動部113は、図8に示すように、後述する昇降部110上のトレイ群UからトレイWを支持部114によって支持することによって分離し、分離したトレイWを水平移動させるための装置である。
また、図8に示すように、本実施の形態に係る第1移動部104は、第2移動部113がトレイ群U1から最後に搬出されるトレイW6を搬送方向Tへ水平移動させる時に、搬入部102が搬入した他のトレイ群U2を搬送方向Tへ水平移動させるように構成されている。
第1移動部104には、搬送方向Tの前後に移動するための駆動部108が設けられており、第2移動部113にも、第1移動部104と同様に搬送方向Tの前後に移動するための駆動部108が設けられている。本実施の形態においても、第1移動部104と第2移動部113とが、連結部107によって一体となるように構成されており、第1移動部104および第2移動部113は、一つの駆動部108によって駆動されている。このようにすることで、駆動部108によって第1移動部104および第2移動部113を水平移動させる時にそれぞれに独立した駆動部を設けたり、水平移動のタイミングを別々に制御したりする必要がなくなり、段ばらし装置の構成や制御を簡略化することができる。なお、本実施の形態に係る第1移動部104および第2移動部113は連結部107で一体となるように構成されているが、これに限らず、それぞれに駆動部を設けた第1移動部104と第2移動部113とが一体的に駆動されることによって第1移動部104と、第2移動部113との相対的な位置関係が固定されるようにしてもよい。
さらに、第1移動部104は、トレイ群Uを押すための押圧部105を有しており、図6(b)に示すように、押圧部105は回動軸106を中心に90度回動し、実線で示された位置に固定される。これにより、第1移動部104が駆動部108よって水平移動する際にトレイ群Uを押して搬送方向Tへ水平移動させることができる。トレイ群Uを水平移動させる必要がない時は、押圧部105は図6(a)(b)に二点鎖線で示した位置で固定されるので、搬入部102よって搬送方向Tの上流から搬入されてくるトレイ群Uの搬入の妨げとならない。なお、第1移動部104には押圧部105を回動させるための機構が備えられているが、図示の簡略化のために記載を省略している。
また、第1の実施の形態と同様に、第2移動部113は、トレイWを支持するための支持部114を有しており、図6に示すように、支持部114にはトレイ群U1の最上部に位置するトレイW1の周縁部分を支持するための支持爪115が設けられている。
次に、昇降部110について説明する。図7および図8に示すように、昇降部110は、第1移動部104が水平移動させたトレイ群U1の下面を昇降面111によって支えた状態でトレイ群U1を昇降させる昇降装置である。昇降部110は昇降面111によって下面を支えたトレイ群U1の最上部に位置するトレイW1の高さが、後述する搬出部116の搬送面117を搬出される時のトレイWの高さと等しくなるまで下降する(図7(c)参照)。第2移動部113がトレイ群U1の最上部に位置するトレイW1を搬出部116へ水平移動させた後(図8(b)参照)、トレイ群U1の最上部に位置するトレイW2の高さが、搬出部16の搬送面を搬出される時のトレイWの高さと等しくなるまで上昇するように構成されている(図8(c)参照)。
また、昇降部110の昇降面111は、図6(b)に示すように、中継板109の形状に沿った円形となっている。昇降面111を円形にすることで、搬出部116から昇降部110へトレイ群Uを水平移動させる時に、搬送面103から昇降面111への載り移りを円滑に行うことができる。
本実施の形態に係る昇降部110の下方には、昇降軸112を駆動する回転昇降機構(図示せず)が設けられており、昇降部110は回転昇降機構によって昇降する。図6(b)に示すように、昇降軸112を中心に昇降面111を水平に90度回動させることでトレイ群U1の向きを90度変更することができるように構成されている。
また、昇降部110は、図10に示すように、昇降部110上に存在するトレイWの数に応じて昇降するときの位置(高さ)が変化するように構成されている。本実施の形態ではトレイWが6段に段積みされたトレイ群Uを段ばらししているが、これに限らず、段積みされているトレイWの数は必要に応じて様々なものに対応するようにしてもよい。また、昇降部110は、常に一定の位置まで下降するように設定してもよいが、本実施の形態に係る昇降部110のように、昇降面111上に存在するトレイWの数が少ないほど下降するときの位置が高くなるように設定することで、昇降部110がトレイ群Uを昇降させる距離が小さくなり、トレイ群Uの段ばらしに必要な時間を短縮することが可能となる。
本実施の形態に係る段ばらし装置101は、昇降部110が水平に90度トレイ群Uの向きを変える場合と、トレイ群Uの向きを変えずに下降または上昇のみを行う場合を交互に繰り返すことで段ばらしを行う。
次に、搬出部116について説明する。搬出部116は、段ばらしされたトレイWを搬送するためのベルトコンベヤであり、搬送方向Tの下流側にトレイ群Uから分離されたトレイWを搬出する。本実施の形態においても、搬出部116にローラーコンベヤなどを利用してもよい。
本実施の形態に係る搬出部116は、搬入位置である搬入部102の搬送面103よりも、搬出位置である搬送面117が高くなるように構成されており、搬送面103の高さと搬送面117の高さとの差はトレイ群Uの高さよりも小さくなっている。このようにすることで、トレイ群Uを昇降させるための昇降部110の上下動が少なくなり、装置全体の高さを低くすることが可能となる。さらに、搬送面103の高さと搬送面117の高さとの差をトレイ群Uの高さより大きくした場合に比べ、昇降部116の昇降距離(移動距離)が短くなるので、トレイ群Uを昇降させる時間を減らして段ばらし装置101を高速化することができる。
(動作説明)
次に、図7〜図10を参照して、本実施の形態に係る段ばらし装置101がトレイ群UからトレイWを段ばらしするときの動作について説明する。図7に示すように、本実施の形態に係る段ばらし装置101に対して、複数の卵Eが収容されているトレイW1〜W6が段積みされたトレイ群U1が搬入部102によって搬入され、図7(a)に示す位置で停止する。
搬入部102によって搬入されたトレイ群U1が図7(a)に示す搬入位置で停止すると、第1移動部104に設けられた押圧部105が回動軸106を中心に90度回動し、図6(b)に実線で示した位置で固定され、トレイ群U1に接触する。なお、図7(a)は、押圧部105が回動軸106を中心に90度回動した後の状態を示している。
押圧部105がトレイ群U1に接触すると、第1移動部104および第2移動部113は駆動部108によってD101の方向へ水平移動を開始する。図7(b)に示すように、第1移動部104に設けられた押圧部105がトレイ群U1を昇降部110上に水平移動させる。第1移動部104が水平移動させたトレイ群U1を昇降部110が受け取ると、昇降部110は、トレイ群U1をD102方向へ下降させる。また、昇降部110がトレイ群U1を受け取ると、押圧部105は回動軸106を中心に、前述の回動方向とは逆方向に回動して、図6(b)に二点鎖線で示した位置で固定される。
昇降部110は、トレイ群U1の最上部に位置するトレイW1の高さが、搬出部116によって搬出する高さと等しくなるまでトレイ群U1を下降させ、図7(c)の位置で停止する。この時、搬入部102の搬送面103の高さと、昇降部110の昇降面111の高さとの差は、トレイW5,W6の高さを合計した2Xとなる。また、昇降部110が下降すると同時に、第1移動部104および第2移動部113が図7(b)に示すD103方向へ水平移動する。第1移動部104および第2移動部113は図7(c)に示す位置で停止し、トレイ群U1の最上部に位置するトレイW1は、第2移動部113が有する支持部114によって支持される。なお、図7(c)に示す押圧部105は、回動軸106を中心に回動して、図6(b)に二点鎖線で示した位置で固定された後の状態を示している。
第2移動部113が有する支持部114がトレイW1を支持すると、昇降部110は、トレイ群U1を図7(c)に示すD104方向へ下降させる。図8(a)に示すように、昇降部110がトレイ群U1をD104方向へ下降させる距離はYとなる。トレイ群U1がD104方向へ下降すると、昇降部110は昇降軸112を中心にD105方向へ90度回動し、第1移動部104および第2移動部113がD106方向へ水平移動を開始する。
この時、搬入部102の搬送面103の高さと、昇降部110の昇降面111の高さとの差は、トレイW5,W6の高さの合計にYを足した2X+Yとなる。また、昇降部110が昇降軸112を中心にD105方向へ90度回動すると、昇降部110の昇降面111上のトレイ群U1の向きが図8(b)に示す向きに変えられる。
第1移動部104および第2移動部113がD106方向へ水平移動し、図8(b)に示す位置まで到達すると、第1移動部104および第2移動部113は停止する。そして、支持部114からトレイW1が搬出位置である搬出部116の搬送面117に渡され、支持部114からトレイW1を受け取った搬出部116は、搬送方向TへトレイW1を搬出する。
昇降部110が昇降軸112を中心にD105方向へ90度回動した後、昇降部110はD107方向へX+Yだけ上昇して停止する。この時、搬入部102の搬送面103の高さと、昇降部110の昇降面111の高さとの差は、図8(c)に示すように、トレイW6の高さであるXとなる。また、第2移動部113の支持部114がトレイW1を搬出部116に渡すと、第1移動部104および第2移動部113が図8(b)に示すD108方向へ水平移動して図8(c)に示す位置で停止する。この時、搬入部102にはトレイW7〜W12が段積みされたトレイ群U2が搬入されており、トレイ群U2は搬送方向Tへ搬送され、図8(c)に示す位置で停止する。なお、押圧部105は図8(b)に示すようにトレイ群U2と干渉しない位置で固定されているため、トレイ群U2を搬入する妨げとならない。
第1移動部104および第2移動部113がD108方向へ水平移動して図8(c)に示す位置で停止し、昇降部110がD107方向へX+Yだけ上昇して停止すると、トレイ群U1の最上部に位置するトレイW2は、第2移動部113が有する支持部114によって支持される。
支持部114がトレイW2を支持すると、昇降部110は、トレイ群U1を図8(c)に示すD109方向へ下降させる。この時、昇降部110がトレイ群U1をD109方向へ下降させる距離はYとなる(図示せず)。昇降部110がD109方向へ下降すると、昇降部110は昇降軸112を中心にD110方向へ90度回動し、第1移動部104および第2移動部113はD111方向へ水平移動を開始する。
以降、トレイW3〜W5についても同様の動作が行われ、最終的に図9(a)に示すように、トレイ群U1の最下段に位置していたトレイW6が第2移動部113の有する支持部114によって支持される。
トレイW6が第2移動部113の有する支持部114によって支持されると、昇降部110はD121方向へ下降を開始し、搬入部102の搬送面103と、昇降部110の昇降面111との高さが同じになるまで下降する。図9(b)は下降した後の昇降部110の位置を示している。
この時、搬入部102によって搬入されたトレイ群U2は、図9(b)に示す搬入位置で停止しており、第1移動部104に設けられた押圧部105が回動軸106を中心に90度回動して図6(b)に実線で示した位置で固定され、トレイ群U2に接触する。図9(b)は、押圧部105が回動軸106を中心に90度回動した後の状態を示している。
押圧部105がトレイ群U2に接触すると、第1移動部104および第2移動部113は駆動部108によってD122の方向へ水平移動を開始する。図9(c)に示すように、第1移動部104に設けられた押圧部105がトレイ群U2を昇降部110上に水平移動させ、昇降部110がトレイ群U2を受け取ると、押圧部105は回動軸106を中心に、前述の回動方向とは逆方向に回動して図6(b)に二点鎖線で示した位置で固定される。また、第2移動部113が有する支持部114が支持しているトレイW6が搬出位置である搬出部116の搬送面117に渡される。
第1移動部104が水平移動させたトレイ群U2を昇降部110が受け取ると、昇降部110は、トレイ群U2をD123方向へ下降させる。また、支持部114からトレイW6を受け取った搬出部116が、搬送方向TへトレイW6を搬出することで、トレイ群U1に係る一連の段ばらし動作が完了する。
そして、昇降部110は、トレイ群U2の最上部に位置するトレイW7の高さが、搬出部116によって搬出する高さと等しくなるまでトレイ群U2を下降させる。また、昇降部110が下降すると同時に、第1移動部104および第2移動部113が図9(c)に示すD124方向へ水平移動する。
このように、トレイ群U2に対してもトレイ群U1と同様の段ばらし動作が行われる。図10は、本実施の形態に係る段ばらし装置101の一連の動作における、昇降部110の昇降面111の位置と時間との関係を示すグラフである。グラフ中の7a〜9cの点は図7(a)〜図9(c)のそれぞれに示す昇降面111の位置に対応している。また、図10は、卵Eが収容されたトレイWのように、上方に卵Eの上部がはみ出すような対象物の鉛直方向の幅が一定でない場合の昇降部10の位置と時間の関係を示しており、第1の実施の形態と同様に、段ボール箱のような常に鉛直方向の幅が一定の対象物が段積みされた対象物群を段ばらしするときは、対象物群の最上部に位置する対象物を分離して支持する度に下降する必要がない。
また、本実施の形態に係る段ばらし装置101においても、第1移動部104および第2移動部113が連結部107によって一体となっているため、第1移動部104および第2移動部113は同時に動くように構成されているが、第1の実施の形態と同様に、それぞれが独立して駆動するようにしてもよいし、トレイ群Uの最上部に位置する2つ以上のトレイWを一括して分離してもよい。
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。