JP6635479B1 - エンテロコッカス・フェシウムに属する新規乳酸菌およびその利用 - Google Patents
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Abstract
Description
pH2.5、37℃での培養条件において生育可能な乳酸菌
である。
便宜上、本願で使用される特定の用語は、ここに集めている。別途規定されない限り、本願で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。文脈で別途明記されない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の言及を含む。
本実施形態の乳酸菌は、pH2.5、37℃での培養条件において生育可能である。条件「pH2.5、37℃」とは、本実施形態の乳酸菌がこの条件でしか生育ができないという意味ではなく、この条件下であっても生育することができる能力を有することを意味する。ある実施形態において、「生育可能」とは、例えば、上記条件下での3時間培養の場合、3時間培養後の上記乳酸菌の生存率が0.001、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.0、3.0又は4.0%以上であることを意味し、上記条件下での1時間培養の場合、1時間後の上記乳酸菌の生存率が0.05、0.1、0.5、1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、35.0又は40.0以上であることを意味する。別の実施形態において、「生育可能」とは、例えば、上記条件下での3時間培養の場合、3時間培養後の上記乳酸菌の生存率が0.001以上であることを意味する。本実施形態の乳酸菌は、pH2.5においても生育可能であるがpH2.5から7.0の間(至適pHは、6.0から7.0の間であり、例えば、6.7)で生育可能である。本実施形態の乳酸菌の至適温度は、30℃から37℃の間であり、少なくともこの温度範囲であれば、上述の温度であっても生育可能である。
本実施形態の発酵物は、上記乳酸菌による食品素材の発酵により得られる。また、本実施形態の飲食物は、その発酵物を含む。本実施形態において、食品素材は、上記乳酸菌により発酵できるものであればいかなる食品素材であってもよく、例えば、牛乳、豆乳、果物及び野菜が挙げられる。上記乳酸菌を用いて発酵豆乳飲料を製造する場合には、まず使用する豆乳に適した条件で殺菌した豆乳に、上記乳酸菌を単独または他の微生物と同時に接種培養し、これを均質化処理することで発酵豆乳を得ることができる。牛乳、果物又は野菜の場合も、豆乳と同様の方法により、発酵乳、発酵果汁又は発酵野菜を得ることができる。これら発酵物を未発酵野菜果汁や未発酵果汁、アルコール等と混合し、さらに各種栄養素、ビタミン、フレーバー等を添加して最終製品とすることも可能である。これらは、上記乳酸菌を生菌の状態で含有するので好ましい。
エンテロコッカス・フェシウムに属する新規乳酸菌は、以下に示す酒粕濾過培地を用いて単離した。800mLの蒸留水に200gの酒粕を加え、弱火にかけ、よく撹拌して沸騰させて溶かす。火から下ろして50℃くらいになるまで冷まし、キッチンペーパーで濾過し、Brixを5.0に調整して121℃で15分間オートクレーブし、酒粕濾過培地として使用した。ヤエザクラの花に付着した菌類を酒粕濾過培地に接触させ、30℃、24時間培養し、生育した菌を単離した。単離後、121℃、15分間オートクレーブしたLactobacilli MRS Broth(Difco社製)培地で30℃、24時間の条件において培養可能であった菌を以後の実験で用いた。かかる菌は、Lactobacilli MRS Broth(Difco社製)培地において円形で白色のコロニーを形成した。顕微鏡観察において、上記菌は、球菌で運動性はなく、芽胞は形成しなかった(不図示)。上記菌は、グラム染色試験において陽性を示し、カタラーゼ活性試験において活性を示さず、また、ガス発生が観察されなかった(不図示)。
上記菌の菌種同定を16S rDNA塩基配列に基づいて以下の方法で行った。MRS培地を用いて30℃、24時間培養した培養用菌液を遠心分離した菌体ペレットから抽出したDNAを鋳型として、16S rDNA配列の全長をPCR法によって増幅し、増幅産物の塩基配列をDye Terminator法により決定した。その塩基配列を配列番号1に示す。得られた塩基配列をデータベースで検索して菌種を同定した。その結果、前記乳酸菌の16S rDNAの塩基配列はエンテロコッカス・フェシウムの16S rDNA塩基配列と97%同一であることが確認できた。実施例において対照として使用したエンテロコッカス・フェシウムに属するNBRC 100486、 NBRC 100485とも97%の相同性を示した。上記乳酸菌は、エンテロコッカス・フェシウムに属する乳酸菌の新株と同定し、エンテロコッカス・フェシウム サクラ9と命名して(以後、実施例1の乳酸菌)、2018年9月19日に日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8に住所を有する独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託された。受託番号はNITE P-02786である。
(1)菌株
比較例の乳酸菌(対照群)としてNBRCのエンテロコッカス・フェシウムに属する7株、3535株(比較例1)、100485株(比較例2)、100486株(比較例3)、100487株(比較例4)、100488株(比較例5)、100602株(比較例6)、113009株(比較例7)を使用した。
(2)培養
Lactobacilli MRS Broth(Difco社製)液体培地を作成し、121℃、15分間滅菌後、γ線滅菌済みポリプロピレン製遠沈管(ECK-15ML-R、アズワン社製)に分注した後、MRSプレート上に生やした実施例又は比較例の乳酸菌のコロニーを接種し、実施例1、比較例4及び比較例5は、30℃で24時間定常状態になるまで培養し、比較例1、比較例2、比較例3、比較例6、比較例7及び比較例8は、NBRC推奨の37℃で24時間定常状態になるまで培養した。培養開始時の培地のpHは、6.7であった。
(3)生菌数の測定
培養液を滅菌した希釈液(0.1%酵母エキス溶液)に適宜希釈後、スパイラルシステムにてMRS寒天平板培地に塗布し、翌日、生菌数を測定した。生菌数は、5回の異なる培養を用い、各2回ずつ実験を行って、計10回の実験を行い、得られた数値を平均して算出した。
(4)酸耐性試験
Lactobacilli MRS Broth(Difco社製)液体培地を作成し、1M塩酸でpH2.5に合わせ、121℃、15分間滅菌後、γ線滅菌済みポリプロピレン製遠沈管(ECK-15ML-R、アズワン社製)に5mlずつ分注した後、菌数が1 x 107個となるように実施例又は比較例の乳酸菌を添加し(2 x 106個/mL)、37℃で1時間、3時間培養し、各時間ごとの生菌数を測定した。添加する乳酸菌は、pHの変化がおきないように容量を1%以下にした。結果を表2に示す。
Claims (5)
- 受託番号:NITE P-02786で寄託されている、乳酸菌。
- 請求項1に記載の乳酸菌による食品素材の発酵により得られた発酵物。
- 請求項2に記載の発酵物を含有する飲食物。
- 請求項1に記載の乳酸菌を含有する飲食物。
- 食品素材に、請求項1に記載の乳酸菌を接種し、発酵させることを特徴とする発酵物の製造方法。
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