FTTH(Fiber To The Home)に代表される光アクセスでは、端局装置と複数の終端装置とが接続された受動光通信網が用いられることがある。受動光通信網が用いられることによって、経済的なサービス提供が可能となる。受動光通信網では、端局装置と終端装置との間の通信は時分割多重方式により多重化される。終端装置から端局装置への通信(以下「上り通信」という。)は、例えば非特許文献1に記載されるように、MPCP(Multi-Point Control Protocol)と呼ばれる制御プロトコルを用いて実現される。各終端装置の上り通信における送信量及び送信開始時刻は、端局装置において集中制御される。その制御方法は、静的帯域割当と動的帯域割当とに大別できる。静的帯域割当では、送信量は固定的に与えられる。動的帯域割当では、送信量は動的に変化して与えられる。特許文献1では、各終端装置から端局装置に対して要求量が送信される。端局装置は、受信された要求量に基づいて送信量を動的に決定する。このような技術により、高い帯域利用効率が達成される。
LTEやLTE−advancedに代表される移動体無線通信サービス網(以下「モバイル網」という。)に受動光通信網を適用することが検討されている。このような適用によって、ネットワークの経済化が図られる。例えば特許文献2では、従来の無線基地局の機能が、ベースバンド処理を担う基地局装置部と、無線処理を担う無線装置部とに分割される。基地局装置部を収容局に集約し、無線装置部を張り出す構成が採用される。そして、基地局装置部と無線装置部との間に受動光通信網が適用される。モバイル網では、再送制御(HARQ)のために、基地局装置部と無線装置部との間の遅延時間に対する要求条件が厳しい。そこで特許文献2では、端局装置は、終端装置による上り通信の送信開始時刻と送信許可量とを、スケジューリング情報に基づいて決定する。そして、端局装置は、決定された送信開始時刻及び送信許可量を終端装置に対して通知する。このような処理により、下位装置から上位装置への上り信号を低遅延で転送することを可能にしている。
無線装置部が上りリンクの信号を基地局装置部に送信する際には、予めスケジューリングされた無線信号(以下「スケジューリング信号」という。)と異なる信号(以下「非スケジューリング信号」という。)が送信される場合がある。非スケジューリング信号の具体例として、無線装置部と基地局装置部間との制御信号や、無線端末を無線装置部に登録する際に基地局装置部に転送される制御信号がある。また、本来は存在しないはずの異常ユーザが存在する場合にも、非スケジューリング信号が発生する可能性がある。異常ユーザとは、例えば送信タイミングや、使用する周波数スロット数が、スケジューリング情報と一致しない無線端末のユーザである。
図7は、受動光通信網が適用された従来のモバイル網における処理の流れの具体例を示すシーケンスチャートである。上位装置は、ユーザ装置に対して割り当てられる送信開始時刻及び送信許可量を決定する。図7の例では、上位装置は、ユーザ装置に対して“50”のデータ量のデータ送信を許可する。上位装置は、決定されたを送信開始時刻及び送信許可量を示すスケジューリング情報を送信する(ステップS901)。上位装置から送信されたスケジューリング情報は、端局装置、終端装置、下位装置を介してユーザ装置まで中継される(ステップS902〜S904)。
ユーザ装置は、スケジューリング情報を受信すると、送信開始時刻まで待機する(ステップS905)。この間に、終端装置に対して、“30”のデータ量の非スケジューリング信号が到来する(ステップS906,907)。また、ユーザ装置は、送信開始時刻が到来すると、許可されたデータ量である“50”の量の上りデータを送信する(ステップS908)。データ量“50”の上りデータは、下位装置から終端装置へ中継される(ステップS909)。このようにして、終端装置には合計“80”のデータが到着する。
端局装置は、スケジューリング情報を受信した後、受信されたスケジューリング情報に基づいて帯域割当を実行する。帯域割当の実行により、端局装置は、終端装置による上り通信の送信開始時刻と送信許可量とを決定する(ステップS910)。この時点のスケジューリング情報では、データ量“50”の上り通信が発生することが示されている。そのため、ステップS910で決定される送信許可量は、“50”となる。そして、端局装置は、上り信号が終端装置に到着する時刻にあわせて、決定された内容を含む中継網送信許可を終端装置に送信する(ステップS911)。
通常、中継網送信許可の送信は、スケジューリング情報の通知よりも短い周期に分割して送信される。例えば、データ量“50”の中継網送信許可が1回送信されるのではなく、データ量“5”の中継網送信許可が10回送信される。これにより、スケジューリング信号も複数回(上記の場合は10回)に分割して送信される。ただし、本書面では説明の簡略化のため、1回の送信にて処理が行われるように記載する。
ステップS911で受信された中継網送信許可では、データ量“50”の上り通信が終端装置に許可されている。そのため、終端装置は、最初に受信された非スケジューリング信号のデータ量“30”に相当する上り信号と、次に受信されたスケジューリング信号のデータ量“20”に相当する上り信号と、を端局装置に送信する(ステップS912)。端局装置は、この上り信号を上位装置へ中継する(ステップS913)。
データ量“30”の非スケジューリング信号の発生により、終端装置に到達した上り信号のデータ量の合計は“80”である。そのため、終端装置は、許可されていないデータ量に相当する“30”のデータ量の上り信号を、次の送信タイミングまでバッファリングする(ステップS214)。
次の送信タイミングにおいて、上位装置は、ユーザ装置に対して割り当てられる送信開始時刻及び送信許可量を決定する。図7の例では、上位装置は、ユーザ装置に対して“60”のデータ量のデータ送信を許可する。上位装置は、決定されたを送信開始時刻及び送信許可量を示すスケジューリング情報を送信する(ステップS915)。上位装置から送信されたスケジューリング情報は、端局装置、終端装置、下位装置を介してユーザ装置まで中継される(ステップS916〜S918)。
ユーザ装置は、スケジューリング情報を受信すると、送信開始時刻まで待機する(ステップS919)。この送信タイミングでは、一つ前の送信タイミングとは異なり非スケジューリング信号は発生しない。ユーザ装置は、送信開始時刻が到来すると、許可されたデータ量である“60”の量の上りデータを送信する(ステップS920)。データ量“60”の上りデータは、下位装置から終端装置へ中継される(ステップS921)。このようにして、終端装置には合計“60”のデータが到着する。
端局装置は、スケジューリング情報を受信した後、受信されたスケジューリング情報に基づいて帯域割当を実行する。帯域割当の実行により、端局装置は、終端装置による上り通信の送信開始時刻と送信許可量とを決定する(ステップS922)。この時点のスケジューリング情報では、データ量“60”の上り通信が発生することが示されている。そのため、ステップS922で決定される送信許可量は、“60”となる。そして、端局装置は、上り信号が終端装置に到着する時刻にあわせて、決定された内容を含む中継網送信許可を終端装置に送信する(ステップS923)。
ステップS923で受信された中継網送信許可では、データ量“60”の上り通信が終端装置に許可されている。そのため、終端装置は、前回の送信タイミングからバッファリングされていたスケジューリング信号のデータ量“30”に相当する上り信号と、次に受信されたスケジューリング信号のデータ量“30”に相当する上り信号と、を端局装置に送信する(ステップS924)。端局装置は、この上り信号を上位装置へ中継する(ステップS925)。終端装置は、この送信タイミングで送信できなかったデータ量“30”のデータ量の上り信号を、次の送信タイミングまでバッファリングする(ステップS926)。
図1は、実施形態の通信システム(通信システム100)のシステム構成例を示す図である。通信システム100は、上位装置10、端局装置20、複数の終端装置30(30−1〜30−n)及び複数の下位装置40(40−1〜40−n)を備える。上位装置10は、通信システム100の上位ネットワークに相当する上位網60に接続される。上位装置10と端局装置20とは一対一に接続される。端局装置20と複数の終端装置30とは中継網70を介して通信可能に接続される。各下位装置40は、下位網80を介して複数のユーザ装置50に通信可能に接続されてもよい。上位装置10は、端局装置20、中継網70及び複数の終端装置30を介して、複数の下位装置40と通信可能に接続される。中継網70には、中継部71が備えられる。中継部71は、光を分岐する装置である。中継部71は、例えば光スプリッタである。中継部71は、光信号を多重化又は分離する多重化装置であってもよい。中継網70には、例えば受動光通信網が適用されてもよい。
上位装置10は、複数の下位装置40及び複数との間で通信を行うことによって所定の機能を実現する装置である。上位装置10は、例えばモバイル網における基地局装置(BBU:Base Band Unit)である。
端局装置20は、上位側で中継網70を終端する装置である。端局装置20は、例えば光加入者線端局装置(OLT:Optical Line Terminal)である。端局装置20は、上位装置10から通知される無線割当情報に基づいて、帯域割当を実行する。帯域割当の実行により、端局装置20は、複数の終端装置30に対して上り通信における送信開始時刻と送信許可量とを決定する。
終端装置30は、下位側で中継網70を終端する装置である。終端装置30は、例えば光回線終端装置(ONU:Optical Network Unit)である。終端装置30は、下位装置40と一対一で接続されてもよいし、一対多で接続されてもよい。
下位装置40は、上位装置10との間で通信を行うことによって所定の機能を実現する装置である。下位装置40は、上位装置10に比べてよりユーザ側に近い位置に設置される装置である。例えば上位装置10がBBUである場合、下位装置40はモバイル網における無線装置(RRH:Remote Radio Head)である。下位装置40は、例えば複数のユーザ装置50を収容する。
ユーザ装置50は、下位装置40に下位網80を介して接続することによって、中継網70及び上位網60を介して他の装置と通信可能に接続される装置である。ユーザ装置50は、例えばスマートフォン、タブレット、コンピュータ等の情報処理装置(無線端末)である。ユーザ装置50は、例えばIoT(Internet of Things)におけるセンサであってもよい。ユーザ装置50は、例えばATM(Automatic Teller Machine)や自動販売機やPOS(Point Of Sale)端末等のビジネス用途の装置であってもよい。ユーザ装置50は、上位装置10から通知されるスケジューリング情報に基づいて、上りデータの送信を開始する。
図2は、端局装置20の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。端局装置20は、情報処理装置を用いて構成される。端局装置20は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、中継プログラムを実行する。端局装置20は、上位送受信部201、下位送受信部202、情報抽出部203、要求量変換部204、帯域割当部205、異常検出部206及びモニタ部207を備える装置として機能する。なお、端局装置20の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。中継プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。中継プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
上位送受信部201は、通信インタフェースである。上位送受信部201は、上位装置10との間でデータの送受信を行う。
下位送受信部202は、通信インタフェースである。下位送受信部202は、終端装置30との間でデータの送受信を行う。
情報抽出部203は、上位装置10から受信されるスケジューリング情報から、無線割当情報を抽出する。
要求量変換部204は、情報抽出部203によって抽出された無線割当情報と、帯域要求情報と、に基づいて、終端装置30が上り通信に必要とする帯域量(中継網要求量)を決定する。
帯域割当部205は、終端装置30に対する上り通信の送信開始時刻及び送信許可量を決定する。送信許可量は、スケジューリング情報で発生することが示されている上り通信のデータ量に対して補正項αが加算された値とする。そして、帯域割当部205によって決定された送信許可量を示す中継網送信許可が終端装置30に対して送信される。
帯域割当部205は、異常検出部206によって非スケジューリング信号が発生したと判定された場合には、通常の処理によって決定される中継網送信許可が指定する上り信号の送信タイミングを変更する。具体的には、帯域割当部205は、送信タイミングを早める、又は、遅くする。この場合、帯域割当部205は、送信タイミングの変更に代えて、上り信号の送信許可量を増加させてもよい。このような増加は、例えば予め定められている量(補正項α)だけ行われてもよい。この場合、中継網送信許可が示す送信許可量は以下のような式1によって表される。
中継網送信許可(送信許可量)=スケジューリング情報+補正項α・・・(式1)
式1において、スケジューリング情報とは、スケジューリング情報が示す送信許可量である。補正項αの値は、データ量を示す正の大きさの値である。補正項αの値は、予め固定値として与えられても良い。補正項αの値は、予め定められた条件にしたがって段階的に増加してもよい。帯域割当部205によって決定された送信許可量を示す中継網送信許可は、下位送受信部202を介して終端装置30へ送信される。
異常検出部206(本発明の判定部に相当)は、帯域要求情報に基づいて、終端装置30より下位の装置において非スケジューリング信号が発生したか否かを判定する。異常検出部206は、終端装置30においてバッファリングされたデータ(送信しきれなかったデータ:「バッファリングデータ」という。)が発生したか否かを判定してもよい。異常検出部206は、モニタ部207によって転送されるトラヒック量の情報と、情報抽出部203によって転送される無線割当情報とを比較することによってトラヒック量の大小を判定する。異常検出部206は、非スケジューリング情報が発生したと判定した場合、異常情報を帯域割当部205に通知する。
モニタ部207は、下位送受信部202からトラヒックの転送を受け、トラヒックをモニタリングする。
図3及び図4は、端局装置20によって実行される異常検出処理のフローチャートの具体例である。図3及び図4のフローチャートに示される異常検出処理は、スケジューリング情報の送信周期毎に実行される。異常検出処理では、以下に示される各処理(S102〜S114)が、各終端装置30に対して実行される(ステップS101)。
まず、異常検出部206が、モニタ部207から、中継網送信許可の送信先となる終端装置30からの上りトラヒック量を取得する(ステップS102)。取得された上りトラヒックが、複数回に分割された中継網送信許可のうち1つ目の中継網送信許可に対応するスケジューリング信号に関するトラヒックである場合(ステップS103−YES)、異常検出部206は、中継網送信許可の送信先となる終端装置30に割り当てられた帯域量が、受信されたトラヒック量よりも大きいか否か判定する(ステップS104)。
割り当てられた帯域量が、受信されたトラヒック量よりも大きい場合(ステップS104−YES)、異常検出部206は、この終端装置30に接続される下位装置40において異常が生じていると判定する。そして、異常検出部206は、異常が生じていることを帯域割当部205に通知する(ステップS105)。帯域割当部205は、次のスケジューリング情報の送信周期から、中継網送信許可が指定する送信タイミングを遅くすることを決定する(ステップS106)。
次に、異常検出部206は、スケジューリング情報の周期分のトラヒック量の総和を算出する(ステップS111)。異常検出部206は、算出された総和が無線割当量よりも大きいか否か判定する(ステップS112)。算出された総和が無線割当量よりも大きい場合(ステップS112−YES)、異常検出部206は、処理対象となっている終端装置30に接続される下位装置40において異常が生じていると判定する。そして、異常検出部206は、異常が生じていることを帯域割当部205に通知する(ステップS113)。帯域割当部205は、次のスケジューリング情報の送信周期から、中継網送信許可の量を増加させることを決定する(ステップS114)。以上で、ステップS101において処理の対象となった終端装置30に対する異常検出の処理が終了する。この後、処理の対象となっていない終端装置30がある場合には、その終端装置30を処理の対象としてステップS102以降の処理が実行される。
ステップS112の処理において、算出された総和が無線割当量以下である場合(ステップS112−NO)、処理の対象となっている終端装置30に対する異常検出の処理が終了する。この後、処理の対象となっていない終端装置30がある場合には、その終端装置30を処理の対象としてステップS102以降の処理が実行される。
ステップS104の処理において、割り当てられた帯域量が、受信されたトラヒック量以下である場合(ステップS104−NO)、ステップS111以降の処理が実行される。
ステップS103の処理において、取得された上りトラヒックが、複数回に分割された中継網送信許可のうち1つ目の中継網送信許可に対応するスケジューリング信号でない場合(ステップS103−NO)、且つ、最後の中継網送信許可に対応するスケジューリング信号でも無い場合(ステップS107−NO)、ステップS111以降の処理が実行される。
取得された上りトラヒックが、複数回に分割された中継網送信許可のうち最後の中継網送信許可に対応するスケジューリング信号である場合(ステップS107−YES)、異常検出部206は、中継網送信許可の送信先となる終端装置30に割り当てられた帯域量が、受信されたトラヒック量よりも大きいか否か判定する(ステップS108)。
割り当てられた帯域量が、受信されたトラヒック量よりも大きい場合(ステップS108−YES)、異常検出部206は、この終端装置30に接続される下位装置40において異常が生じていると判定する。そして、異常検出部206は、異常が生じていることを帯域割当部205に通知する(ステップS109)。帯域割当部205は、次のスケジューリング情報の送信周期から、中継網送信許可が指定する送信タイミングを早くすることを決定する(ステップS110)。その後、ステップS111以降の処理が実行される。
ステップS108の処理において、割り当てられた帯域量が、受信されたトラヒック量以下である場合(ステップS108−NO)、ステップS111以降の処理が実行される。以上で図3及び図4に示されるフローチャートについての説明を終える。
図5は、実施形態の通信システム100における処理の流れの具体例を示すシーケンスチャートである。上位装置10は、ユーザ装置に対して割り当てられる送信開始時刻及び送信許可量を決定する。図5の例では、上位装置10は、ユーザ装置50に対して“50”のデータ量のデータ送信を許可する。上位装置10は、決定されたを送信開始時刻及び送信許可量を示すスケジューリング情報を送信する(ステップS201)。上位装置10から送信されたスケジューリング情報は、端局装置20、終端装置30、下位装置40を介してユーザ装置50まで中継される(ステップS202〜S204)。
ユーザ装置50は、スケジューリング情報を受信すると、送信開始時刻まで待機する(ステップS205)。この間に、下位装置40において異常が発生し、この異常発生に伴って終端装置30に対して、“30”のデータ量の非スケジューリング信号が到来する(ステップS206,207)。また、ユーザ装置50は、送信開始時刻が到来すると、許可されたデータ量である“50”の量の上りデータを送信する(ステップS208)。データ量“50”の上りデータは、下位装置40から終端装置30へ中継される(ステップS209)。このようにして、終端装置30には合計“80”のデータが到着する。
端局装置20は、スケジューリング情報を受信した後、受信されたスケジューリング情報に基づいて帯域割当を実行する。帯域割当の実行により、端局装置20は、終端装置30による上り通信の送信開始時刻と送信許可量とを決定する(ステップS210)。この時点のスケジューリング情報では、データ量“50”の上り通信が発生することが示されている。そのため、ステップS210で決定される送信許可量は、このデータ量“50”に対して補正項α(図5の場合は“10”)が加算された値である“60”となる。そして、端局装置20は、上り信号が終端装置30に到着する時刻(送信開始時刻)にあわせて、データ量“60”を示す中継網送信許可を終端装置30に送信する(ステップS211)。
非スケジューリング信号が端局装置20に到来しない場合、終端装置30に対して割り当てられたデータ量“60”に対して、実際にはスケジューリング情報が示す送信許可量“50”と同等のデータ量の上り信号が到来するはずである。しかしながら、非スケジューリング信号が発生している場合(異常が発生している場合)、スケジューリング情報が示す送信許可量“50”を上回るトラヒックが端局装置20に到来する。端局装置20は、このときのトラヒック量をモニタすることによって、スケジューリング情報が示す送信許可量に対してトラヒック量が上回るか下回るかを判定する。スケジューリング情報が示す送信許可量を上回るデータ量が到来した場合、端局装置20は何らかの異常が発生しているとして検知する。異常を検知した際には、端局装置20は上位装置10へ異常発生を通知してもよい。
異常が検知されると、端局装置20は、次の送信タイミングにおいて中継網送信許可をより大きなデータ量として設定する。例えば、“200”のような数値であってもよい。このように大きな値が設定ることにより、終端装置30にバッファされたデータ量を全て送信させることが可能になる。このときの中継網送信許可のデータ量の増加量は、予め指定された量であってもよいし、段階的に増加される値であってもよい。
上述した異常検知は、スケジューリング情報に基づき、スケジューリング信号のデータ量を端局装置20において監視することによって判定される。終端装置30は、スケジューリング信号をいくつかに分割して端局装置20へ送信するが、端局装置20において、一つのスケジューリング信号に結合した後に上記の判定を行われてもよい。
なお、中継網送信許可の送信は、通常はスケジューリング情報の通知よりも短い周期に分割して送信される。例えば、データ量“50”の中継網送信許可が1回送信されるのではなく、データ量“5”の中継網送信許可が10回送信される。これにより、スケジューリング信号も複数回(上記の場合は10回)に分割して送信される。ただし、以下の説明では説明の簡略化のため、1回の送信にて処理が行われるように記載する。
シーケンスチャートの説明に戻る。ステップS211で受信された中継網送信許可では、補正項α(データ量“10”)が加算された量であるデータ量“60”の上り通信が終端装置30に許可されている。そのため、終端装置30は、最初に受信された非スケジューリング信号のデータ量“30”に相当する上り信号と、次に受信されたスケジューリング信号のデータ量“30”に相当する上り信号と、を端局装置に送信する(ステップS212)。端局装置20は、この上り信号を上位装置10へ中継する(ステップS213)。このとき、端局装置20は、スケジューリング情報の送信許可量によって割り当てられていたデータ量“50”に対し、実際に終端装置30から受信されたデータのデータ量“60”が大きいと判定する。この判定に基づき、端局装置20は、異常の発生(非スケジューリングデータの発生)を検知する。端局装置20は、異常の検知に応じて、次の送信タイミングにおいて、中継網送信許可のデータ量を増加させる(例えばデータ量を“200”とする)ことを決定する。
データ量“30”の非スケジューリング信号の発生により、終端装置30に到達した上り信号のデータ量の合計は“80”である。そのため、終端装置30は、許可されていないデータ量に相当する“20”のデータ量の上り信号を、次の送信タイミングまでバッファリングする(ステップS214)。
次の送信タイミングにおいて、上位装置10は、ユーザ装置50に対して割り当てられる送信開始時刻及び送信許可量を決定する。図5の例では、上位装置10は、ユーザ装置50に対して“60”のデータ量のデータ送信を許可する。上位装置10は、決定されたを送信開始時刻及び送信許可量を示すスケジューリング情報を送信する(ステップS215)。上位装置10から送信されたスケジューリング情報は、端局装置20、終端装置30、下位装置40を介してユーザ装置50まで中継される(ステップS216〜S218)。
ユーザ装置50は、スケジューリング情報を受信すると、送信開始時刻まで待機する(ステップS219)。この送信タイミングでは、一つ前の送信タイミングとは異なり非スケジューリング信号は発生しない。ユーザ装置50は、送信開始時刻が到来すると、許可されたデータ量である“60”の量の上りデータを送信する(ステップS220)。データ量“60”の上りデータは、下位装置40から終端装置30へ中継される(ステップS221)。このようにして、終端装置30には合計“60”のデータが到着する。
端局装置20は、スケジューリング情報を受信した後、受信されたスケジューリング情報に基づいて帯域割当を実行する。帯域割当の実行により、端局装置20は、終端装置30による上り通信の送信開始時刻と送信許可量とを決定する(ステップS222)。この時点のスケジューリング情報では、データ量“60”の上り通信が発生することが示されている。ただし、一つ前の送信タイミングにおいて、端局装置20は異常の発生を検知したことに応じて、中継網送信許可のデータ量を増加させる(例えばデータ量を“200”とする)ことを決定している。そのため、ステップS222で決定される送信許可量は、“200”となる。そして、端局装置20は、上り信号が終端装置30に到着する時刻にあわせて、決定された内容を含む中継網送信許可を終端装置30に送信する(ステップS223)。
ステップS223で受信された中継網送信許可では、データ量“200”の上り通信が終端装置30に許可されている。そのため、終端装置30は、前回の送信タイミングからバッファリングされていたスケジューリング信号のデータ量“20”に相当する上り信号と、次に受信されたスケジューリング信号のデータ量“60”に相当する上り信号と、を端局装置20に送信する(ステップS224)。端局装置20は、この上り信号を上位装置10へ中継する(ステップS225)。上記のような処理により、終端装置30は、一つ前の送信タイミングにおいてバッファリングしていたデータと、新たに下位装置40から受信されたデータ量“60”のスケジューリング信号とを、いずれも全て送信する。そのため、終端装置30は、受信された未送信のデータをバッファリングする必要が無くなる。以上で、図5についての説明を終える。
次に、図9に示された問題点(タイミングギャップの問題)に対して本実施形態が行う処理について説明する。タイミングギャップが生じている場合、端局装置20は、中継網送信許可で指定される送信開始時刻にオフセットを与える。このオフセットにより、タイミングギャップの問題を緩和することが可能である。以下詳細に説明する。
上述の通り、端局装置20から終端装置30に対して送信される中継網送信許可は、複数回に分割されて送信される。このように複数回に分割された中継網送信許可のうち、1つ目の中継網送信許可に対応して送信されたスケジューリング信号を端局装置20で監視する。1つ目のスケジューリング信号が本来のデータ量よりも少ないデータ量で端局装置20に送信されてきた場合、図9に示すようにタイミングギャップの問題が発生していることがわかる。端局装置20は、1つ目の中継網送信許可に対応して送信されたスケジューリング信号を監視することによって異常を検知した場合、予め定められたオフセットだけ送信開始時刻を遅らせる。すなわち、端局装置20は、予め定められたオフセットだけ遅れた時刻に中継網送信許可を送信する。このような処理によって、タイミングギャップを段階的に埋めることが可能になる。
1つ目のスケジューリング信号が端局装置20に送られてきた際に、トラヒックの有無を確認するだけでも、タイミングギャップの判別は可能である。また、スケジューリング信号が終端装置30へ到着する時刻が、推定された時刻よりも早い場合のタイミングギャップを検知するために、最後に分割された中継網送信許可に対応するスケジューリング信号を端局装置20が監視してもよい。最後に分割された中継網送信許可に対応したスケジューリング信号によって送信されるはずのデータ量よりも多いデータが端局装置20に送信された場合、次の周期のスケジューリング信号が到来している可能性が高い。このような場合には、予め定められたオフセットだけ早められた時刻に中継網送信許可が送信されてもよい。このような処理によって、タイミングギャップを段階的に埋めることが可能になる。
(変形例)
図2において、上位装置10から端局装置20へ送信されるスケジューリング情報は、主信号と異なる通信インタフェースから通知されている。すなわち、情報抽出部203は、上位送受信部201を介さずにスケジューリング情報を取得している。しかしながら、主信号内にスケジューリング情報が含まれてもよい。この場合、スケジューリング情報のための通信インタフェースが主信号のための通信インタフェース(上位送受信部201)と別に設けられなくともよい。例えば、情報抽出部203は、上位送受信部201によって受信された主信号からスヌープされたスケジューリング情報を取得してもよい。
図6は、変形例における通信システム100における処理の流れを示すシーケンスチャートである。上述した異常検出部206は、終端装置30にバッファされた信号を救済するために、異常検知時に中継網送信許可の量を増加させた。例えば図5の例ではデータ量“200”の中継網送信許可がステップS223で送信された。一方、図6に示される例では、バッファされている信号を廃棄することが端局装置20によって終端装置30に対して指示される。図6の例では、ステップS316の処理において、バッファ中のデータの廃棄が指示される。このような処理によって、バッファされていた一つ前の送信タイミングのデータ(データ1)を上位装置10へ中継することは困難となるが、次以降の送信周期においてスケジューリング信号の送信において遅延等の悪影響を軽減することが可能となる。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。