無線基地局のアンテナ部(RRH:Remote radio head)と信号処理部(BBU:Baseband unit)を分離した無線通信システムがある。この無線通信システムでは、RRHとBBUとは光装置及び光ファイバを介して結ばれており、この光区間はモバイルフロントホールと呼ばれている。
図6は、モバイルフロントホールの構成例を示す図である。モバイルフロントホールに上りリンクと下りリンクで異なる波長を使用する光波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplex)方式を用いることによって、一心の光ファイバを介して、上りリンクの信号と下りリンクの信号とを同時に送受信することが可能となる(例えば、非特許文献1参照)。
無線通信システムでは、RRHとスモールセル内の無線端末との間の無線区間において、周波数分割複信(FDD:Frequency division duplex)方式と、時分割複信(TDD:Time division duplex)方式の2つの方式が使われている。FDDでは、上下リンクで異なる周波数帯を用いる。TDD方式では、上下リンクで周波数帯を共有し、時間軸上で信号が直交する。
図7は、LTE(Long term evolution)に用いられるTDDフレームを示す図である。同図に示す7種類のTDDフレームの情報を、TDDフレーム情報と呼ぶ。TDD方式では、上りリンク又は下りリンクのトラヒックに合わせてフレーム構成を切換えることにより、上りリンクと下りリンクの通信時間の割合を柔軟に設定することが可能である。
無線フレームにおいて上下リンクの送信のために分割されたフレームをサブフレームとよぶ。TDDを用いた無線フレームであるTDDフレームのサブフレームを「TDDサブフレーム」とも呼ぶが、本明細書では、無線フレームがTDDフレームであることを前提とするため、「TDDサブフレーム」を単に「サブフレーム」とも記載する。LTEの場合、このTDDサブフレームは1ミリ秒の長さに設定されている(例えば、非特許文献2参照)。本明細書では、サブフレームの長さを1秒として説明する。
TDDフレームを構成するTDDサブフレームには、ダウンリンクサブフレーム(D)と、アップリンクサブフレーム(U)と、スペシャルサブフレーム(S)とがある。ダウン(下り)リンクサブフレームの期間では、下りリンクの信号である下り信号が送信される。アップ(上り)リンクサブフレームの期間では、上りリンクの信号である下り信号を送信する。スペシャルサブフレームの期間は、ダウンリンクパイロットタイムスロット(DwPTS)、ガードピリオド(GP)及びアップリンクパイロットタイムスロット(UpPTS)により構成され、上り信号の受信と下り信号の送信がある。
図8は、無線通信システムがTDD方式の無線基地局を収容する場合のモバイルフロントホールにおける無線区間及び光区間のデータ伝送例を示す図である。無線区間において、上りリンクのデータと下りリンクのデータは時間軸上で直交して伝送されるため、光伝送区間でも、上りリンクのデータと下りリンクのデータは時間軸上で直交して伝送される。したがって、WDM方式を採用している光伝送区間では、上下リンクの各波長でデータ伝送が行われない期間が存在する。以下、WDM方式を採用している光区間において、TDD方式によってデータ伝送が行われない期間を「TDD未送信期間」と記載し、TDD方式によってデータ伝送が行われる期間を「TDD送信期間」と記載する。
図9は、複数通信システムを収容するアクセスネットワークシステム800の構成を示す図である。光端局装置81、光スプリッタ82及び光終端装置83を備える光伝送システムが、無線通信システム及び他通信システムを収容する構成である。光端局装置81から光終端装置83の方向は下りであり、光終端装置83から光端局装置81の方向は上りである。
光スプリッタ82は、光端局装置81から1本の光ファイバ51により伝送されるTDM(時分割多重)の光信号を、複数の光終端装置83それぞれと接続される光ファイバ52に分配する。また、光スプリッタ82は、複数の光終端装置83それぞれと接続される光ファイバ52から伝送されるTDMA(時分割多元接続)方式の光信号を合波して、光ファイバ51に出力する。
同図に示すアクセスネットワークシステム800において、光伝送システムは、無線通信システムが備えるRRH32とBBU33との間の通信を中継する。RRH32は、移動無線端末31とTDD方式により無線通信する。BBU33は、モバイルNW(ネットワーク)34と接続される。
さらに、光伝送システムは、無線通信システムとは異なる通信システムである他通信システムの通信を中継する。他通信システムは、例えば、FTTH(Fiber to the home)、M2Mシステム(Machine to machine)である。光端局装置81は、他サービスNW44とL2SW43を介して接続される。M2Mシステムの通信装置42やFTTHの通信装置42は、光伝送システムを介して、他サービスNW44と通信する。アクセスネットワークシステム800は、無線通信システムのTDD未送信期間に他通信システムの信号を重畳し、他通信システムと無線通信システムを同一光ファイバ51上で収容する(例えば、非特許文献3参照)。
非特許文献3では、PONシステムにおける光端局装置であるOLT(Optical Line Terminal)が光ファイバ内を流れる無線通信システムの信号からTDD未送信期間を推定する方法が提案されている。
図10は、従来技術によるOLT90の構成を示す図である。同図に示すOLT90は、図9における光端局装置81として用いられる。OLT90は、L2SW(レイヤ2スイッチ)901と、下りフレーム処理部902と、E/O変換部903と、O/E変換部904と、上りフレーム処理部905と、L2SW906と、トラヒックモニタ部907と、TDDフレーム情報推定部908と、タイミング計算部909と、帯域割当部910とを備える。L2SW901、下りフレーム処理部902及びE/O変換部903により、BBU33又は他通信システム上位装置35から受信した下り信号が光終端装置83としてのONUに中継される。また、O/E変換部904、上りフレーム処理部905及びL2SW906により、ONUから受信した上り信号がBBU33又は他通信システム上位装置35へ中継される。
トラヒックモニタ部907は、無線通信システムの上り信号のトラヒックをモニタリング(監視)し、トラヒック情報をTDDフレーム情報推定部908に通知する。TDDフレーム情報推定部908は、トラヒックのモニタリング結果に基づいて、TDDフレーム情報の推定を行う。TDDフレーム情報推定部908は、この推定により、TDDフレームを構成する各TDDサブフレームが上りリンクのサブフレーム(アップリンクサブフレーム)、下りリンクのサブフレーム(ダウンリンクサブフレーム)又はスペシャルサブフレームのいずれの割当てパターンに該当するかを判別する。さらに、TDDフレーム情報推定部908は、各サブフレームの開始位置の推定を行い、TDD未送信期間を判別する。TDDフレーム情報推定部908は、これらの推定を行った後、TDDフレーム情報と各サブフレームの開始位置の情報をタイミング計算部909に通知する。タイミング計算部909は、TDDフレーム情報推定部908から通知された情報に基づいて、各通信システムが光区間を使用可能なタイミングを計算し、この計算結果を示すタイミング情報を帯域割当部910に通知する。帯域割当部910は、各通信システムの帯域割当方法を選択し、各通信システムが光区間を使用可能なタイミングの情報を基に各通信システムに帯域を割当てる。
図11は、OLT90によるONUへの帯域割当ての状況を示す図であり、図12は、TDDフレーム情報推定中と推定後のONUへの上下リンクの割当帯域を示す図である。OLT90がTDDフレーム情報の推定を行っている期間では、TDD未送信期間が不明なため、無線通信システムを収容する光終端装置83としてのONUへ上りリンク、下りリンクともに常に固定帯域を割当てる。この推定期間では、他通信システムを収容する光終端装置83としてのONUは上りリンク、下りリンクとも送信停止状態となる。OLT90は、TDDフレーム情報の推定を完了した後、無線通信システムのTDD未送信期間に他通信システムを収容するONUに帯域を割当て、無線通信システムを収容するONUは送信停止状態となる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
[第1の実施形態]
本実施形態の光伝送システムは、例えば、従来技術の図9に示すアクセスネットワークシステム800における光伝送システムに代えて用いられる。本実施形態では、光伝送システムがPON(Passive Optical Network;受動光ネットワーク)システムである場合を例に説明する。光伝送システムがPONシステムである場合、アクセスネットワークシステム800は、図9に示す光端局装置81に代えて、図1に示すOLT(Optical Line Terminal)10を設け、光終端装置83として従来のONU(Optical Network Unit)を設ける。
PONシステムは、無線通信システム及び他通信システムを収容する。すなわち、PONシステムは、無線通信システムのRRH32とBBU33との間の通信、及び、他通信システムの下位装置と上位装置との間の通信を中継する。無線通信システムのRRH32は、移動無線端末31とTDD(時分割複信)方式により通信する。他通信システムは、例えばFTTH(Fiber to the home)、M2Mシステム(Machine to machine)など、無線通信システム以外の通信システムである。以下では、無線通信システムのRRH32と接続され、無線通信システムの通信を中継するONUを「無線通信システムを収容するONU」、他通信システムの下位装置と接続され、他通信システムの通信を中継するONUを「他通信システムを収容するONU」と記載する。
なお、本実施形態は、ネットワークトポロジーに制限を受けない。すなわち、光伝送システムとして、PONシステムだけではなく、リング構成やバス構成等のネットワークトポロジーでも実現することが可能である。
図1は、本実施形態によるOLT10の構成を示す機能ブロック図であり、本実施形態と関係する機能ブロックのみを抽出して示してある。OLT10は、L2SW(レイヤ2スイッチ)101と、下りフレーム処理部102と、E/O変換部103と、O/E変換部104と、上りフレーム処理部105と、L2SW106と、トラヒックモニタ部107と、時系列データ抽出部111と、TDD(時分割複信)フレーム情報一次推定部112と、TDDフレーム情報二次推定部113と、タイミング計算部114と、帯域割当部115とを備える。
L2SW101、下りフレーム処理部102、E/O変換部103、O/E変換部104、上りフレーム処理部105、L2SW106、トラヒックモニタ部107、タイミング計算部114及び帯域割当部115はそれぞれ、図10に示すOLT90が備えるL2SW901、下りフレーム処理部902、E/O変換部903、O/E変換部904、上りフレーム処理部905、L2SW906、トラヒックモニタ部907、タイミング計算部909及び帯域割当部910と同様の機能を有する。すなわち、OLT10は、図10に示すOLT90のTDDフレーム情報推定部908に代えて、時系列データ抽出部111、TDDフレーム情報一次推定部112及びTDDフレーム情報二次推定部113を備えた構成である。
L2SW101は、BBU33又は他通信システム上位装置35から下りリンクの信号である下り信号を受信し、下りフレーム処理部102に出力する。他通信システム上位装置35は、他通信システムにおける上位装置である。下りフレーム処理部102は、L2SW101から入力した下り信号を、PONで用いられるフレームに変換する。下りフレーム処理部102は、帯域割当部115により割当てられたタイミングで、無線通信システムを収容するONU宛の下り信号及び他通信システムを収容するONU宛の下り信号をE/O変換部103に出力する。E/O変換部103は、フレーム変換された下り信号を、電気信号から光信号に変換し、光ファイバ51に出力する。光信号は、光スプリッタ82により分岐され、無線通信システムを収容するONU及びは他通信システムを収容するONUに入力される。
O/E変換部104は、無線通信システムを収容するONUから送信される上り信号及び他通信システムを収容するONUから送信される上り信号を、光ファイバ52及び光ファイバ51を介して光信号として受信する。O/E変換部104は、ONUから受信した上り信号、すなわち、上りリンクの信号を、光信号から電気信号に変換し、上りフレーム処理部105に出力する。上りフレーム処理部105は、O/E変換部104から入力した上り信号を、当該上り信号の送信先の上位装置との間で用いられるフレームに変換し、L2SW106出力する。上り信号の送信先の上位装置は、BBU33又は他通信システム上位装置35である。L2SW106は、上りフレーム処理部105から入力した上り信号を、BBU33又は他通信システム上位装置35に送信する。
トラヒックモニタ部107及び時系列データ抽出部111は、光伝送システムにより中継される信号に基づいて、無線通信システムの上りリンクの信号の時系列の特徴を抽出する抽出部として動作する。本実施形態では、時系列の特徴として、時系列のトラヒック量を用いる。
トラヒックモニタ部107は、無線通信システムを収容するONUから受信した上り信号のトラヒックを監視(モニタリング)し、モニタ結果として得られたトラヒック量を示すモニタリングデータを生成する。モニタ対象を、主信号のみとしてもよい。時系列データ抽出部111は、トラヒックモニタ部107から入力されたモニタリングデータに基づいて、無線通信システムの上り信号についての時系列のトラヒックの特徴を抽出し、抽出したトラヒックの特徴を示すデータをTDDフレーム情報一次推定部112及びTDDフレーム情報二次推定部113に出力する。
TDDフレーム情報一次推定部112は、無線通信システムの上り信号が送信される期間である送信期間のタイミングを、時系列データ抽出部111により抽出された時系列のトラヒックの特徴のデータに基づいて短期に推定する。TDDフレーム情報二次推定部113は、無線通信システムの上り信号が送信される期間である送信期間のタイミングを、時系列データ抽出部111により抽出された時系列のトラヒックの特徴のデータに基づいて長期に推定する。
タイミング計算部114は、無線通信システムを収容する各ONU及び他通信システムを収容する各ONUに、上り信号の送信や下り信号の送信を許可するタイミングを計算する。帯域割当部115は、無線通信システムを収容するONU及び他通信システムを収容するONUに、タイミング計算部114が決定したタイミングにおける上りリンクの通信の帯域や下りリンクの通信の帯域を割り当てる。帯域割当部115は、各ONUに割り当てた帯域の情報を下りフレーム処理部102に出力する。各ONUに割り当てた帯域の情報が設定された下り信号は、E/O変換部103により電気信号に変換され、各通信システムを収容するONUに通知される。ONUは、下り信号から割り当て帯域の情報を取得すると、自装置に割当てられた帯域に従って上り信号をOLT10に送信する。
図1においては、OLT10内にトラヒックモニタ部107と、時系列データ抽出部111と、TDDフレーム情報一次推定部112と、TDDフレーム情報二次推定部113と、タイミング計算部114と、帯域割当部115とを備えているが、これらの任意の一部又は全ての機能部をOLT10に接続される外部の装置に備えてもよい。
図2は、OLT10の動作を示す処理フローである。トラヒックモニタ部107は、無線通信システムを収容する1台又は複数台のONU、すなわち、OLT10及びRRH32と接続された1台又は複数台のONUから受信した上り信号のトラヒックをモニタリングする(ステップS110)。トラヒックモニタ部107は、サブフレーム長より短いトラヒック監視周期により上り信号のトラヒック量の情報を取得し、取得したトラヒック量の情報を示すモニタリングデータを時系列データ抽出部111に転送する。モニタリングデータは、トラヒック量を得た時刻又はタイミングを示すデータと、その時刻又はタイミングにおけるトラヒック量を示すデータとを対応付けた情報を含む。例えばモニタリングデータが、トラヒック監視周期毎の時系列のトラヒック量の情報を設定した複数の要素を含む場合、先頭から何番目の要素であるかの情報を、タイミングを示すデータとして用いることができる。また、モニタリングデータに所定の位置の要素が得られた時刻の情報をさらに付加することにより、各要素に対応した時刻を得ることができる。時系列データ抽出部111は、モニタリングデータを用いて、TDDフレーム情報の推定に用いられるデータ列である特徴量データを生成する(ステップS120)。
図3は、ステップS120の処理において用いられるデータの例を示す図である。LTEを例に挙げると、LTEの無線フレーム長は10msであり、サブフレーム長は1msである。時系列データ抽出部111は、モニタリングデータを10ms単位のトラヒック量のデータに分割し、分割データ(1)、分割データ(2)、…、分割データ(n)を得る。トラヒック監視周期が(1/M)ms(Mは1以上の整数)である場合、1つの分割データは、M×10個分の時系列のトラヒック量のデータを含む。時系列データ抽出部111は、これら分割データ(1)〜分割データ(n)を加算して、起点推定用データを得る。
次に、時系列データ抽出部111は、起点推定用データにおいて、トラヒックが生起していない期間からトラヒックが存在する状態に切り替わるタイミングをサブフレームの起点とし、その起点から1ms間隔をサブフレームと推定する。トラヒックが生起していない期間からトラヒックが存在する状態に切り替わるタイミングが複数ある場合、時系列データ抽出部111は、最も長くトラヒックが生起していない期間からトラヒックが存在する状態に切り替わるタイミングを起点として選択する。
時系列データ抽出部111は、起点推定用データにおいて推定されたサブフレームの起点から10ms(1無線フレーム)分、すなわち、10サブフレーム分のトラヒック量の特徴量データであるデータセットを生成する。具体的には、データセットは、起点推定用データの起点から始まり、起点推定用データの最後の要素に達したら先頭に戻って起点の1つ前に達するまで並べられた、トラヒック監視周期毎のトラヒック量のデータからなる。時系列データ抽出部111は、生成したデータセットをTDDフレーム情報一次推定部112及びTDDフレーム情報二次推定部113に転送する。
図2において、TDDフレーム情報一次推定部112は、データセットで示される10個の各サブフレームのトラヒック量を参照し、推定誤りが起きる確率が低い種類のサブフレームを特定する一時推定処理を行う(ステップS130)。例えば、図7に示すように、サブフレーム番号「0」と「5」では、全てのインデックスでダウンリンクサブフレーム(下りリンク)である。そこで、TDDフレーム情報一次推定部112は、データセットで示される各サブフレームのトラヒック量に基づいて、サブフレーム番号「0」と「5」にあたるサブフレームを探索し、推定結果とする。この際の推定方法は、固定の閾値を設け、この閾値とデータセットで示される各サブフレームのトラヒック量との比較により、ダウンリンクサブフレームであるかアップリンクサブフレームであるかを判定する従来の手法で実現可能である。他にも最尤推定法等の適用も考えられる。TDDフレーム情報一次推定部112は、この探索結果をタイミング計算部114に転送する。
タイミング計算部114は、TDDフレーム情報一次推定部112により推定されたサブフレーム番号「0」と「5」のサブフレーム位置に対応した時刻又はタイミングに基づいて他通信システムを収容するONUへ帯域割当てのタイミングを計算し、帯域割当部115に転送する。帯域割当部115は、サブフレーム番号が「0」及び「5」と判断されたサブフレームの期間に、他通信システムを収容するONUの上り通信の帯域を割り当てる(ステップS140)。TDDフレーム情報一次推定部112に転送されたトラヒックデータのモニタ期間は、LTEを仮定した場合、例えば10msの無線フレームを100ms取得するような短期のモニタである。
その後、トラヒックモニタ部107は、無線通信システムを収容し、OLT10及びRRH32と接続された1台又は複数台のONUから受信した上り信号のトラヒックを長時間に渡りモニタし、モニタリングデータを時系列データ抽出部111に転送する(ステップS150)。時系列データ抽出部111は、上記と同様にモニタリングデータからデータセットを生成し、生成したデータセットをTDDフレーム情報二次推定部113に出力する(ステップS160)。TDDフレーム情報二次推定部113は、データセットに基づいて、非特許文献3と同様にTDDフレーム情報の推定を行う(ステップS170)。ここで、TDDフレーム情報二次推定部113におけるトラヒックのモニタ期間は、LTEを仮定した場合、数秒に渡る長期のモニタを表す。
TDDフレーム情報一次推定部112は、ステップS130と同様の処理よって推定された結果をTDDフレーム情報二次推定部113に転送してもよい。TDDフレーム情報二次推定部113は、TDDフレーム情報一次推定部112による推定結果と、長期のモニタ結果と合わせることで推定を行う。
また、TDDフレーム情報一次推定部112とTDDフレーム情報二次推定部113とが異なる推定アルゴリズムを実装してもよい。例えば、最尤推定法のように総当たり演算が行われる推定は、短期的な推定を行うTDDフレーム情報一次推定部112には不向きであるが、推定誤りを低減させるTDDフレーム情報二次推定部113には向いている。
帯域割当部115は、推定されたTDDフレームにおけるダウンリンクサブフレームの期間に、他通信システムを収容するONUの上り通信の帯域を割り当てる(ステップS180)。
図4は、他通信システムに割当て可能な帯域の変化を示す図である。
左の図に示すように従来は、TDDフレーム情報推定期間には他通信システムへ帯域を割り当てておらず、TDDフレーム情報推定後に他通信システムへ帯域を割り当ていた。一方、本実施形態により、右側の図に示すように、OLT10は、従来のTDDフレーム情報推定期間よりも短いTDDフレーム情報一次推定期間において無線通信システムがいずれのTDDフレームにおいても上り通信を行わないタイミングを特定して、他通信システムを収容するONUへ帯域を割り当てる。その後、OLT10は、TDDフレーム情報二次推定期間で従来と同様にTDDフレーム情報を第一次推定期間における推定よりも精度よく推定する。これにより、OLT10は、TDDフレーム情報一次推定期間で推定されたサブフレームに加え、無線通信システムが上り通信を行わないサブフレームのタイミングを特定することにより、他通信システムを収容するONUへ割当てる帯域を拡大することが可能となる。
[第2の実施形態]
本実施形態では、第1の実施形態のOLT10が有するTDDフレーム構成推定の機能をONUに機能分散する。例えば、アクセスネットワークシステム800は、図9に示す光終端装置83に代えて、図5に示すONU20を設ける。
図5は、本実施形態におけるONU20の構成を示す機能ブロック図であり、本実施形態と関係する機能ブロックのみを抽出して示してある。ONU20は、O/E変換部201と、下りフレーム処理部202と、上りフレーム処理部203と、E/O変換部204と、トラヒックモニタ部205と、時系列データ抽出部206と、TDDフレーム情報一次推定部207と、TDDフレーム情報二次推定部208とを備える。
O/E変換部201は、光ファイバ52により伝送されたOLTからの下り信号を受信し、光信号から電気信号に変換して下りフレーム処理部202に出力する。下りフレーム処理部202は、電気信号に変換された下り信号のフレームをRRH32との間で用いられるフレームに変換し、RRH32に送信する。上りフレーム処理部203は、RRH32から受信した上り信号を、PONで用いられるフレームに変換し、E/O変換部204に出力する。E/O変換部204は、フレーム変換された上り信号を、電気信号から光信号に変換し、光ファイバ52に出力する。光ファイバ52に出力された光信号は、光スプリッタ82により他のOLTからの光信号と合波され、光ファイバ51を介してONUに入力される。
トラヒックモニタ部205は、RRH32から受信した上り信号のトラヒックをモニタリング(監視)する。トラヒックモニタ部205は、モニタ結果として得られたトラヒック量を示すモニタリングデータを生成し、トラヒック情報を時系列データ抽出部206に通知する。時系列データ抽出部206、TDDフレーム情報一次推定部207、TDDフレーム情報二次推定部208はそれぞれ、第1の実施形態におけるOLT10が備える時系列データ抽出部111、TDDフレーム情報一次推定部112、TDDフレーム情報二次推定部113と同様の機能を有する。
本実施形態のONU20は、O/E変換部201、下りフレーム処理部202、上りフレーム処理部203及びE/O変換部204を有する従来技術のONUに、トラヒックモニタ部205、時系列データ抽出部206、TDDフレーム情報一次推定部207及びTDDフレーム情報二次推定部208を追加した構成である。OLTは、第1の実施形態のOLT10からトラヒックモニタ部107、時系列データ抽出部111、TDDフレーム情報一次推定部112及びTDDフレーム情報二次推定部113を除いた構成である。この場合、ONU20は、TDDフレーム情報一次推定部207が推定したTDDフレーム情報及びTDDフレーム情報二次推定部208が推定したTDDフレーム情報を上りデータ信号に格納してOLTに送信する。
なお、ONUが時系列データ抽出部206を備え、TDDフレーム情報一次推定部207及びTDDフレーム情報二次推定部208を備えず、OLTがTDDフレーム情報一次推定部112及びTDDフレーム情報二次推定部113を備えるようにしてもよい。この場合、時系列データ抽出部206は。上りフレーム処理部203に生成したデータセットを転送し、OLTに送信する。そして、OLT内に実装されるTDDフレーム情報一次推定部112及びTDDフレーム情報二次推定部113が、第1の実施形態と同様の推定処理を行う。
[第3の実施形態]
第1の実施形態及び第2の実施形態では、OLT10のトラヒックモニタ部107、ONU20のトラヒックモニタ部205において、上り信号を監視しているが、下り信号を監視することや、上り信号及び下り信号の両方を監視することによっても実現可能である。
[第4の実施形態]
上記の実施形態におけるOLT10のTDDフレーム情報一次推定部112及びTDDフレーム情報二次推定部113を併用するだけではなく、どちらか一方のみ動作させることも可能である。同様に、ONU20のTDDフレーム情報一次推定部207とTDDフレーム情報二次推定部208のどちらか一方のみ動作させることも可能である。
従来技術ではTDDフレーム情報の推定を行い、推定結果を一斉に反映している。無線通信システムが上りデータを送信しない期間の推定を高精度に行うためには、一定期間のトラヒックモニタが必要である。しかし、トラヒックモニタ期間を長くすると、他通信システムと接続されたONUの送信停止期間が長くなってしまう。そこで、上述した実施形態によれば、推定誤りが起きる確率の低いサブフレームを推定結果として先行して反映した後、高精度の推定をその後に反映する。これにより、PONシステムは、無線通信システムとの連携時に、他通信システムと接続されたONUの送信停止期間を短縮することが可能となる。
上述した実施形態によれば、光伝送システムは、時分割複信によって通信するネットワーク装置を有する通信システムの通信と、この通信システムとは異なる他通信システムの通信とを中継する。通信システムは、例えば、無線通信システムであり、時分割複信によって通信するネットワーク装置として、移動無線端末と通信するRRHを有する。光伝送システムは、例えば、PONシステムである。光伝送システムは、中継部と、抽出部と、一次推定部と、二次推定部と、帯域割当部とを備える。
中継部は、終端装置と端局装置との間で通信システム及び他通信システムの上りリンクの信号及び下りリンクの信号を中継する。なお、中継部は、上りリンクの信号のみを中継してもよい。中継部は、例えば、OLTが備えるL2SW101、下りフレーム処理部102、E/O変換部103、O/E変換部104、上りフレーム処理部105及びL2SW106と、ONUが備えるO/E変換部201、下りフレーム処理部202、上りフレーム処理部203、E/O変換部204とに相当し、OLT−ONU間の光ファイバ及び光スプリッタも含み得る。
抽出部は、中継部によって中継される信号に基づいて、通信システムの上りリンクの信号の時系列の特徴を抽出する。抽出部は、例えば、OLT10の時系列データ抽出部111や、ONU20の時系列データ抽出部206である。
一次推定部は、終端装置が通信システムの上りリンクの信号が送信される期間である送信期間のタイミングを、抽出部により抽出された特徴に基づいて短期に推定する。一次推定部は、例えば、OLT10のTDDフレーム情報一次推定部112や、ONU20のTDDフレーム情報一次推定部207である。二次推定部は、終端装置が通信システムの上りリンクの信号が送信される期間である送信期間のタイミングを、抽出部により抽出された特徴に基づいて長期に推定する。二次推定部は、例えば、OLT10のTDDフレーム情報二次推定部113や、ONU20のTDDフレーム情報二次推定部208である。なお、光伝送システムは、一次推定部と二次推定部とのいずれか一方を使用可能である。
帯域割当部は、一次推定部による推定の結果に基づいて通信システムの上りリンクの信号及び他通信システムの上りリンクの信号に帯域を割り当てた後、二次推定部による推定の結果に基づいて通信システムの上りリンクの信号及び他通信システムの上りリンクの信号に帯域を割り当てる。帯域割当部は、例えば、OLT10のタイミング計算部114及び帯域割当部115である。終端装置は、帯域割当部による割り当てに基づいて、自装置が収容している通信システムの上りリンクの信号を送信する。
抽出部、一次推定部及び二次推定部は、端局装置に備えられてもよく、終端装置に備えられてもよい。
上述した実施形態におけるOLT10のトラヒックモニタ部107、時系列データ抽出部111、TDDフレーム情報一次推定部112、TDDフレーム情報二次推定部113、タイミング計算部114及び帯域割当部115、ならびに、ONU20のトラヒックモニタ部205、時系列データ抽出部206、TDDフレーム情報一次推定部207及びTDDフレーム情報二次推定部208の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。