無線基地局のアンテナ部(RRH:Remote radio head)と信号処理部(BBU:Baseband unit)を分離した無線通信システムがある。この無線通信システムでは、RRHとBBUとは光装置及び光ファイバを介して結ばれており、この光区間はモバイルフロントホールと呼ばれている。
図6は、モバイルフロントホールの構成例を示す図である。モバイルフロントホールに上りリンクと下りリンクで異なる波長を使用する光波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplex)方式を用いることによって、一心の光ファイバを介して、上りリンクの信号と下りリンクの信号とを同時に送受信することが可能となる(例えば、非特許文献1参照)。
無線通信システムでは、RRHとスモールセル内の無線端末との間の無線区間において、周波数分割複信(FDD:Frequency division duplex)方式と、時分割複信(TDD:Time division duplex)方式の2つの方式が使われている。FDDでは、上下リンクで異なる周波数帯を用いる。TDD方式では、上下リンクで周波数帯を共有し、時間軸上で信号が直交する。
図7は、LTE(Long term evolution)に用いられるTDDフレームを示す図である。同図に示すようなインデックス0〜6により特定される7種類のTDDフレームの情報を、TDDフレーム情報と呼ぶ。TDD方式では、上りリンク又は下りリンクのトラヒックに合わせてフレーム構成を切換えることにより、上りリンクと下りリンクの通信時間の割合を柔軟に設定することが可能である。
無線フレームにおいて上下リンクの送信のために分割されたフレームをサブフレームとよぶ。TDDを用いた無線フレームであるTDDフレームのサブフレームを「TDDサブフレーム」とも呼ぶが、本明細書では、無線フレームがTDDフレームであることを前提とするため、「TDDサブフレーム」を単に「サブフレーム」とも記載する。LTEの場合、このTDDサブフレームは1ミリ秒の長さに設定されている。また、1サブフレームがスケジューリングの最小時間単位でありTTI(Transmission time interval)と表される(例えば、非特許文献2参照)。本明細書では、1サブフレームの時間的な長さを「TTI」と記載する。
TDDフレームを構成するTDDサブフレームには、ダウンリンクサブフレーム(D)と、アップリンクサブフレーム(U)と、スペシャルサブフレーム(S)とがある。ダウン(下り)リンクサブフレームの期間では、下りリンクの信号である下り信号が送信される。アップ(上り)リンクサブフレームの期間では、上りリンクの信号である下り信号を送信する。スペシャルサブフレームの期間は、ダウンリンクパイロットタイムスロット(DwPTS)、ガードピリオド(GP)及びアップリンクパイロットタイムスロット(UpPTS)により構成され、上り信号の受信と下り信号の送信がある。
図8は、無線通信システムがTDD方式の無線基地局を収容する場合のモバイルフロントホールにおける無線区間及び光区間のデータ伝送例を示す図である。無線区間において、上りリンクのデータと下りリンクのデータは時間軸上で直交して伝送されるため、光伝送区間でも、上りリンクのデータと下りリンクのデータは時間軸上で直交して伝送される。したがって、WDM方式を採用している光伝送区間では、上下リンクの各波長でデータ伝送が行われない期間が存在する。以下、WDM方式を採用している光区間において、TDD方式によってデータ伝送が行われない期間を「TDD未送信期間」と記載し、TDD方式によってデータ伝送が行われる期間を「TDD送信期間」と記載する。
図9は、複数通信システムを収容するアクセスネットワークシステム800の構成を示す図である。光端局装置81、光スプリッタ82及び光終端装置83を備える光伝送システムが、無線通信システム及び他通信システムを収容する構成である。光端局装置81から光終端装置83の方向は下りであり、光終端装置83から光端局装置81の方向は上りである。
光スプリッタ82は、光端局装置81から1本の光ファイバ51により伝送されるTDM(時分割多重)の光信号を、複数の光終端装置83それぞれと接続される光ファイバ52に分配する。また、光スプリッタ82は、複数の光終端装置83それぞれと接続される光ファイバ52から伝送されるTDMA(時分割多元接続)方式の光信号を合波して、光ファイバ51に出力する。
同図に示すアクセスネットワークシステム800において、光伝送システムは、無線通信システムが備えるRRH32とBBU33との間の通信を中継する。RRH32は、移動無線端末31とTDD方式により無線通信する。BBU33は、モバイルNW(ネットワーク)34と接続される。
さらに、光伝送システムは、無線通信システムとは異なる通信システムである他通信システムの通信を中継する。他通信システムは、例えば、FTTH(Fiber to the home)、M2Mシステム(Machine to machine)である。光端局装置81は、他サービスNW44とL2SW43を介して接続される。M2Mシステムの通信装置41やFTTHの通信装置42は、光伝送システムを介して、他サービスNW44と通信する。アクセスネットワークシステム800は、無線通信システムのTDD未送信期間に他通信システムの信号を重畳し、他通信システムと無線通信システムを同一光ファイバ51上で収容する(例えば、非特許文献3参照)。
非特許文献3では、PONシステムにおける光端局装置であるOLT(Optical Line Terminal)が光ファイバ内を流れる無線通信システムの信号からTDD未送信期間を推定する方法が提案されている。
図10は、従来技術によるOLT90の構成を示す図である。同図に示すOLT90は、図9における光端局装置81として用いられる。OLT90は、L2SW(レイヤ2スイッチ)901と、下りフレーム処理部902と、E/O変換部903と、O/E変換部904と、上りフレーム処理部905と、L2SW906と、トラヒックモニタ部907と、TDDフレーム情報推定部911と、タイミング計算部912と、タイミング指示部913と、帯域割当部914とを備える。L2SW901、下りフレーム処理部902及びE/O変換部903により、BBU33又は他通信システム上位装置35から受信した下り信号が光終端装置83としてのONUに中継される。また、O/E変換部904、上りフレーム処理部905及びL2SW906により、ONUから受信した上り信号がBBU33又は他通信システム上位装置35へ中継される。
トラヒックモニタ部907は、無線通信システムの上り信号のトラヒックをモニタリング(監視)し、トラヒック情報をTDDフレーム情報推定部911に通知する。TDDフレーム情報推定部911は、トラヒックのモニタリング結果に基づいて、TDDフレーム構成の推定を行う。TDDフレーム情報推定部911は、この推定により、TDDフレームを構成する各TDDサブフレームが上りリンクのサブフレーム(アップリンクサブフレーム)、下りリンクのサブフレーム(ダウンリンクサブフレーム)又はスペシャルサブフレームのいずれの割当てパターンに該当するかを判別する。さらに、TDDフレーム情報推定部911は、各サブフレームの開始位置の推定を行い、TDD未送信期間を判別する。TDDフレーム情報推定部911は、これらの推定を行った後、TDDフレーム情報と各サブフレームの開始位置の情報をタイミング計算部912に通知する。タイミング計算部912は、TDDフレーム情報推定部911から通知された情報に基づいて、各通信システムが光区間を使用可能なタイミングを計算し、この計算結果を示すタイミング情報をタイミング指示部913に通知する。タイミング指示部913は、タイミング情報を基に、帯域割当部914に各通信システムが光区間を使用可能なタイミングを通知する。帯域割当部914は、各通信システムの帯域割当方法を選択し、各通信システムが光区間を使用可能なタイミングの情報を基に各通信システムに帯域を割当てる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
[第1の実施形態]
本実施形態の光伝送システムは、例えば、従来技術の図9に示すアクセスネットワークシステム800における光伝送システムに代えて用いられる。本実施形態では、光伝送システムがPON(Passive Optical Network;受動光ネットワーク)システムである場合を例に説明する。光伝送システムがPONシステムである場合、アクセスネットワークシステム800は、図9に示す光端局装置81に代えて、図1に示すOLT(Optical Line Terminal)10を設け、光終端装置83として従来のONU(Optical Network Unit)を設ける。
PONシステムは、無線通信システム及び他通信システムを収容する。すなわち、PONシステムは、無線通信システムのRRH32とBBU33との間の通信、及び、他通信システムの下位装置と上位装置との間の通信を中継する。無線通信システムのRRH32は、移動無線端末31とTDD(時分割複信)方式により通信する。他通信システムは、例えばFTTH(Fiber to the home)、M2Mシステム(Machine to machine)など、無線通信システム以外の通信システムである。以下では、無線通信システムのRRH32と接続され、無線通信システムの通信を中継するONUを「無線通信システムを収容するONU」、他通信システムの下位装置と接続され、他通信システムの通信を中継するONUを「他通信システムを収容するONU」と記載する。
なお、本実施形態は、ネットワークトポロジーに制限を受けない。すなわち、光伝送システムとして、PONシステムだけではなく、リング構成やバス構成等のネットワークトポロジーでも実現することが可能である。
図1は、本実施形態によるOLT10の構成を示す機能ブロック図であり、本実施形態と関係する機能ブロックのみを抽出して示してある。OLT10は、L2SW(レイヤ2スイッチ)101と、下りフレーム処理部102と、E/O変換部103と、O/E変換部104と、上りフレーム処理部105と、L2SW106と、トラヒックモニタ部107と、データセット生成部110と、TDDフレーム情報推定部111と、タイミング計算部112と、タイミング指示部113と、帯域割当部114とを備える。
L2SW101、下りフレーム処理部102、E/O変換部103、O/E変換部104、上りフレーム処理部105、L2SW106、トラヒックモニタ部107、タイミング計算部112、タイミング指示部113及び帯域割当部114はそれぞれ、図9に示すOLT90が備えるL2SW901、下りフレーム処理部902、E/O変換部903、O/E変換部904、上りフレーム処理部905、L2SW906、トラヒックモニタ部907、タイミング計算部912、タイミング指示部913及び帯域割当部914と同様の機能を有する。すなわち、OLT10は、図9に示すOLT90のTDDフレーム情報推定部911に代えて、データセット生成部110及びTDDフレーム情報推定部111を備えた構成である。
L2SW101は、BBU33又は他通信システム上位装置35から下りリンクの信号である下り信号を受信し、下りフレーム処理部102に出力する。他通信システム上位装置35は、他通信システムにおける上位装置である。下りフレーム処理部102は、L2SW101から入力した下り信号を、PONで用いられるフレームに変換する。下りフレーム処理部102は、帯域割当部114により割当てられたタイミングで、無線通信システムを収容するONU宛の下り信号及び他通信システムを収容するONU宛の下り信号をE/O変換部103に出力する。E/O変換部103は、フレーム変換された下り信号を、電気信号から光信号に変換し、光ファイバ51に出力する。光信号は、光スプリッタ82により分岐され、無線通信システムを収容するONU及び他通信システムを収容するONUに入力される。
O/E変換部104は、無線通信システムを収容するONUから送信される上り信号及び他通信システムを収容するONUから送信される上り信号を、光ファイバ52及び光ファイバ51を介して光信号として受信する。O/E変換部104は、ONUから受信した上り信号、すなわち、上りリンクの信号を、光信号から電気信号に変換し、上りフレーム処理部105に出力する。上りフレーム処理部105は、O/E変換部104から入力した上り信号を、当該上り信号の送信先の上位装置との間で用いられるフレームに変換し、L2SW106出力する。上り信号の送信先の上位装置は、BBU33又は他通信システム上位装置35である。L2SW106は、上りフレーム処理部105から入力した上り信号を、BBU33又は他通信システム上位装置35に送信する。
トラヒックモニタ部107は、無線通信システムの上り信号のトラヒックをモニタリング(監視)し、モニタ結果として得られた時系列のトラヒック量を示すトラヒックデータをデータセット生成部110に通知する。モニタ対象を、主信号のみとしてもよい。データセット生成部110は、トラヒックデータが示す時系列のトラヒック量に基づいて、サブフレームの開始位置を推定した後、TDDフレーム構成の推定に用いられるデータ列であるデータセットを生成する。データセットは、各サブフレームが上りリンクの信号であるか又は下りリンクの信号であるかの尤もらしさを示す。TDDフレーム情報推定部111は、データセットと、図7に示す7種類の各TDDフレーム構成を表すデータそれぞれとの相関を算出し、算出された相関に基づいて前述の7種類のうち推定されるTDDフレーム構成を選択する。TDDフレーム情報推定部111は、選択したTDDフレーム構成を示す情報と各サブフレームの開始位置の情報をタイミング計算部112に通知する。タイミング計算部112は、通知されたTDDフレーム構成と各サブフレームの開始位置の情報に基づいて、各通信システムが光区間を使用可能なタイミングを計算し、この計算結果を示すタイミング情報をタイミング指示部113に通知する。タイミング指示部113は、タイミング情報を基に、帯域割当部114に各通信システムの使用可能タイミングを通知する。帯域割当部114は、各通信システムの帯域割当方法を選択し、各通信システムの使用可能タイミングの情報を基に各通信システムの帯域を割当てる。割当てられた帯域の情報は、各通信システムを収容するONUに通知される。
図1においては、OLT10内にトラヒックモニタ部107、タイミング計算部112、タイミング指示部113及び帯域割当部114を備えているが、これらの任意の一部又は全ての機能部をOLT10に接続される外部の装置に備えてもよい。
図2は、データセット生成部110の動作を示すフローチャートである。
まず、OLT10のトラヒックモニタ部107は、上り信号のトラヒックを予め指定されたモニタ時間であるT秒間モニタする(ステップS105)。モニタリングを行う時間(T秒間)は、1無線フレームの時間の倍数である。例えば、図7に示すTDDフレーム構成の場合、モニタ時間は、1TDDフレームの時間10msの倍数である。また、トラヒックモニタの1周期分の長さであるモニタ間隔は、サブフレーム長を割り切ることが可能な間隔とする。例えば、図7に示すTDDフレーム構成の場合、TDDサブフレーム長であるTTIが1msであるため、トラヒックモニタ部107は、1/Mms毎(Mは正数)のトラヒック量を得る。トラヒックモニタ部107は、トラヒック量のモニタ結果を示すモニタリングデータをデータセット生成部110に出力する。モニタリングデータは、例えば、トラヒックモニタ周期毎の時系列のトラヒック量を要素とする配列データであり、要素の数は、1無線フレームにおけるモニタ回数N(=10M)×T秒間に含まれる無線フレームの数P(=T/0.01)である。
データセット生成部110は、トラヒックモニタ部107から入力したモニタリングデータを無線フレーム単位に分割した後、無線フレーム毎に分割された複数のモニタリングデータを加算し、配列Dとする。つまり、データセット生成部110は、モニタリングデータをそれぞれ10ms分の要素からなる分割データ(0)、分割データ(1)、…、分割データ(P−1)に分割する。分割データ(p)は、モニタリングデータのpN〜(p+1)N−1番目の要素からなる(p=0,1,…,P−1)。データセット生成部110は、これらP個の分割データ(0)〜分割データ(P−1)を加算して配列Dとする。配列Dは、1無線フレーム分のデータであり、N個の要素を有する配列データである。
続いて、データセット生成部110は、配列Dと同じデータ構成の配列DataSetを用意し、配列DataSetのN個の要素を全て0.5に初期化する(ステップS110)。以下では、配列Dのn番目(nは0以上N−1以下の整数)の要素をD(n)と記載し、配列DataSetのn番目(nは0以上N−1以下の整数)の要素をDataSet(n)と記載する。配列の要素数Nはトラヒックモニタのモニタ間隔に依存する。例えば、TDDフレームの長さが10ms、1TTIが1msであり、31.25us間隔で10ms間モニタを行う場合、配列D及び配列DataSetの要素数Nは320となる。
次に、データセット生成部110は、配列Dの各要素が示すトラヒック量を、アップリンクサブフレームであることを表す数値と、アップリンクサブフレーム又はスペシャルサブフレームの可能があることを表す数値と、ダウンリンクサブフレーム又はスペシャルサブフレームの可能があることを表す数値とに3値化する(ステップS115)。具体的には、データセット生成部110は、アップリンクサブフレームを「2」、ダウンリンクサブフレームを「0」、スペシャルサブフレームを「1」の数値で表すとき、配列Dの各要素のトラヒック量を予め設定した閾値Dth1、Dth2と比較することにより、「0.5」、「1.5」、「2」に3値化する。3値化処理を行った数値は、TDDフレーム情報を数値化した値と比較して、尤もらしさを表している。
閾値Dth1は、スペシャルサブフレームにおける上りトラヒック量を超えていることを判定するための閾値である。n=0,1,…,N−1とすると、要素D(n)が表すトラヒック量が閾値Dth1を超えて多い場合、アップリンクサブフレームと完全に一致するため、データセット生成部110は、要素D(n)の尤もらしい値として、アップリンクサブフレームを表す「2」を選択する。
また、閾値Dth2は、閾値Dth1よりも小さく、上りトラヒック量が少ないことを判定するための閾値である。要素D(n)が表すトラヒック量が閾値Dth2以上かつ閾値Dth1以下の場合、その要素はスペシャルサブフレームとアップリンクサブフレームのいずれであるかを判別できず、それらどちらの可能性もある。そこで、データセット生成部110は、スペシャルサブフレームを表す値「1」と、アップリンクサブフレームの値「2」の間の値である「1.5」を、要素D(n)の尤もらしい値として選択する。
また、要素D(n)が表すトラヒック量が閾値Dth2より小さい場合は、その要素はスペシャルサブフレームとダウンリンクサブフレームのいずれであるかを判別できず、それらどちらの可能性もある。そこで、データセット生成部110は、データセット生成部110は、スペシャルサブフレームを表す値「1」と、ダウンリンクサブフレームの値「0」の間の値である「0.5」を、要素D(n)の尤もらしい値として選択する。
なお、上記におけるサブフレームの種類表す数値は一例であり、配列Dの各要素に設定する数値は、サブフレームの種類を表す数値によって変わるため、上記の値は固有ではない。
データセット生成部110は、3値化した値を配列Dの各要素に格納すると、配列Dにおいて「0.5」が最も連続する要素の区間を探索し、その区間から「1.5」又は「2.0」に切り替わる要素に対応した時間TSを、図7に示す10TTIの無線フレームの先頭とする(ステップS120)。
データセット生成部110は、時間TSから1無線フレーム(10ms)分の要素について、1ms単位でステップS130〜ステップS180のループ処理を実行する(ステップS125)。そこで、まず、データセット生成部110は、処理対象の要素をi番目の要素としたとき、時間TSに当たる要素の番号をiの初期値とする。データセット生成部110は、ループ処理を行うたびに、iの値を、現在のiの値に1サブフレーム(1TTS)分の要素の数Mを加算した値に更新する。ただし、データセット生成部110は、配列Dの最後の要素までループ処理を行った場合、配列の最初に戻ってループ処理を続ける。つまり、iの値にMを加算した値が配列Dの最大の要素の番号N−1(=10×M−1)を超える場合は、iの値を(i+M−N)に更新する。そして、データセット生成部110は、無線フレームの先頭である時間TSの要素に達するまでループ処理を実行する。
このループ処理は、前述の3値化された情報をより尤もらしい値に修正するために行う。ループ処理中の対象となる配列Dのi番目の要素を要素D(i)と記載し、配列Dにおけるi番目の要素D(i)の前後の要素を要素D(i±1)と記載し、配列Dのi番目の要素D(i)の1TTI分前後の要素をD(i±1TTI)と記載する。例えば、1TTI=1msである場合、配列Dのi番目の要素D(i)の1TTI分前後の要素をD(i±1ms)と記載する。また、配列DataSetのi番目の要素を要素DataSet(i)と記載する。
ループ処理において、データセット生成部110は、要素D(i)が「2」であるか否かを判定する(ステップS130)。データセット生成部110は、要素D(i)が「2」であると判定した場合(ステップS130:YES)、要素D(i−1)が「0.5」又は「1.5」であるか否かを判定する(ステップS135)。
図3は、OLT10におけるトラヒックモニタ周期と無線通信システムのサブフレームの送信周期との同期状態を示す図である。同図では、OLT10のトラヒックモニタの周期が、無線通信システムにおける1サブフレームの1/4である場合を例に示している。同図に示すように、OLT10におけるトラヒックモニタ周期と無線通信システムにおけるサブフレームの送信周期とは、位相同期が取られずに非同期に動作している。そのため、要素D(i)は、一つ前のサブフレームのトラヒックデータに基づいて設定された値の可能性がある。そこで、一つ前の要素D(i−1)に格納されている値を参照し、要素D(i)が、一つ前のサブフレームのトラヒック量のデータであるのか、対象のサブフレームのトラヒック量のデータであるのかを判断する必要がある。ここでは、配列Dにおける一つ前の要素のトラヒック量を参照しているが、参照する要素として任意の数だけ前の要素を指定することも可能であり、例えば、配列Dにおける二つないしは三つ前の要素を参照することも可能である。
図4は、モバイルトラヒックを示す図である。同図に示すように、RRH32が、移動無線端末31から無線により受信した信号の復調及び復号処理を行い、各サブフレームにおいて、復調及び復号処理の結果得られたデータがサブフレームの先頭から埋まると仮定すると、要素D(i)に格納された値は、一つ前ではなく、対象のサブフレームのデータと見なすことが可能である。そこで、データセット生成部110は、要素D(i−1)が「0.5」又は「1.5」であると判定した場合(ステップS135:YES)、配列DataSetのi番目の要素から1ms分までの要素DataSet(i)〜DataSet(i+1ms−1)の全てに2を設定する(ステップS140)。
一方、データセット生成部110は、要素D(i−1)が「0.5」でも「1.5」でもないと判定した場合(ステップS135:NO)、要素D(i+1ms)が「2」であるという条件(A1)、あるいは、要素D(i+1)が「1.5」又は「2」であるという条件(A2)のいずれかを満たすか否かを判定する(ステップS145)。
ステップS135の判定において、一つ前のサブフレームがアップリンクサブフレーム(上りリンク)と確定しているため、要素D(i+1ms)が「2」であるという条件(A1)を満たす場合、要素D(i)はアップリンクサブフレーム間に挟まれていることになる。この場合は、図7に示すTDDフレームにおけるダウンリンクサブフレーム及びアップリンクサブフレームのフレーム構成パターンを参照すると、アップリンクサブフレーム(上りリンク)しか存在しないため、対象の要素D(i)を「2」と確定することが可能となる。
また、ステップS145の判定において、要素D(i+1)が「1.5」又は「2」であるという条件(A2)を満たす場合、図4に示すモバイルトラヒックから、要素D(i)の値も「2」(アップリンクサブフレーム)に確定可能である。
上記から、データセット生成部110は、条件(A1)又は条件(A2)を満たすと判定した場合(ステップS145:YES)、配列DataSetのi番目の要素から1ms分までの要素DataSet(i)〜DataSet(i+1ms−1)の全てに「2」を設定する(ステップS140)。
ステップS145において、条件(A1)も条件(A2)も満たさない場合、要素D(i)は、一つ前のサブフレームのデータである確率が高い。そこで、データセット生成部110は、条件(A1)も条件(A2)も満たさないと判定した場合(ステップS145:NO)、配列DataSetのi番目の要素から1ms分までの要素DataSet(i)〜DataSet(i+1ms−1)の全てに「0.5」を設定する(ステップS150)。
データセット生成部110は、要素D(i)が「2」ではないと判定した場合(ステップS130:NO)、要素D(i)が「1.5」であるか否かを判定する(ステップS155)。ステップS155において、要素D(i)が「1.5」ではない場合、アップリンクサブフレーム、スペシャルサブフレーム、ダウンリンクサブフレーム全ての可能性が存在する。そのため、データセット生成部110は、要素D(i)が「1.5」ではないと判定した場合(ステップS155:NO)、配列DataSetのi番目の要素から1ms分までの要素DataSet(i)〜DataSet(i+1ms−1)の全てに「1」を設定する(ステップS160)。
データセット生成部110は、要素D(i)が「1.5」であると判定した場合(ステップS155:YES)、要素D(i−1ms)が「2」又は「1.5」であるという条件(B1)と、要素D(i+1ms)が「2」又は「1.5」であるという条件(B2)の両方を満たすか否かを判断する(ステップS165)。条件(B1)と条件(B2)の両方を満たす場合、要素D(i)がスペシャルサブフレーム又はアップリンクサブフレームに挟まれることになるため、図7に示すTDDフレーム構成のパターンから、要素D(i)はアップリンクサブフレームと確定することが可能となる。そこで、データセット生成部110は、条件(B1)と条件(B2)の両方を満たすと判定した場合(ステップS165:YES)、配列DataSetのi番目の要素から1ms分までの要素DataSet(i)〜DataSet(i+1ms−1)の全てに「2」を設定する(ステップS170)。
データセット生成部110は、条件(B1)と条件(B2)の少なくとも一方を満たさないと判定した場合(ステップS165:NO)、要素D(i−1)が「0.5」であるか否かを判定する(ステップS175)。これにより、一つ前の要素D(i−1)が「0.5」である場合、ステップS130〜ステップS140と同様に、一つ前のサブフレームからのデータではないと判断できる。そこで、データセット生成部110は、要素D(i−1)が「0.5」ではないと判定した場合(ステップS175:NO)、配列DataSetのi番目の要素から1ms分までの要素DataSet(i)〜DataSet(i+1ms−1)の全てに「1.5」を設定する(ステップS180)。
一方、一つ前の要素D(i−1)が「0.5」である場合は、アップリンクサブフレーム、ダウンリンクサブフレーム、スペシャルサブフレームの判断ができない。そのため、データセット生成部110は、要素D(i−1)が「0.5」であると判定した場合(ステップS175:YES)、配列DataSetのi番目の要素から1ms分までの要素DataSet(i)〜DataSet(i+1ms−1)の全てに「1」を設定する(ステップS160)。
ステップS140、ステップS150、ステップS160、ステップS170又はステップS175の処理の後、データセット生成部110は、処理対象の要素(i)を、要素(i+1ms)に更新する。ただし、要素(i+1ms)が配列Dの最大の要素の番号(N−1)を超える場合、データセット生成部110は、処理対象の要素(i)を、要素(i+1ms−N)に更新する。データセット生成部110は、更新後の要素(i)が時間TSの要素に達してない場合は再びステップS130からの処理を行い、更新後の要素(i)が時間TSの要素に達した場合は、ループ処理を終了する(ステップS125)。
上記のように、分岐条件の判定とループ処理を繰り返し、データセット生成部110は、配列DataSetを作成し、TDDフレーム情報推定部111に出力する。
TDDフレーム情報推定部111は、データセット生成部110が生成した配列DataSetを基に、図7に示す7種類のTDDフレーム構成のいずれであるかを推定する。そこで、TDDフレーム情報推定部111は、図7に示す7種類のTDDフレーム構成を表すデータを生成する。
TDDフレーム構成を表すTDDフレームデータは、配列DataSetと同じN個の要素の配列で表される。インデックスkのTDDフレームデータのjM個目の要素から(j+1)M−1個目の要素までは、そのTDDフレームのサブフレーム番号j(j=0,1,…,9)のサブフレームの種類を表す値(ダウンリンクサブフレームの場合は「2」、スペシャルサブフレームの場合は「1」、アップリンクサブフレームの場合は「0」)を設定する。
TDDフレーム情報推定部111は、配列DataSetと、インデックスk(k=0〜7の整数)のTDDフレーム構成を示すTDDフレームデータそれぞれとの相互相関を表す標本相関係数rを、以下の式(1)により算出する。
x={xi}、xiは配列DataSetのi番目の要素DataSet(i)、y={yi}、yiはTDDフレームデータのi番目の要素であり、x ̄はxの相加平均、y ̄はyの相加平均である。上記式(1)は相関係数を求める例であり、相関を算出する他の式を利用してもよい。
TDDフレーム情報推定部111は、7種類のTDDフレームデータそれぞれについて配列DataSetとの標本相関係数rを比較し、最も値の大きい標本相関係数rが得られたTDDフレームデータが表すTDDフレーム構成を、推定結果として選択する。TDDフレーム情報推定部111は、選択したTDDフレーム構成の情報と、TDDフレームにおける各サブフレームの開始位置のタイミングの情報とを、タイミング計算部112に通知する。タイミング計算部112は、TDDフレーム情報推定部111から通知されたTDDフレーム構成の情報と各サブフレームの開始位置のタイミングの情報とに基づいて、無線通信システムを収容するONU及び他通信システムを収容するONUのそれぞれが上り通信のために光区間を使用可能なタイミングを計算し、この計算結果を示すタイミング情報をタイミング指示部113に通知する。タイミング指示部113は、タイミング計算部112から通知されたタイミング情報を基に、無線通信システムを収容するONU及び他通信システムを収容するONUに上り通信に使用可能タイミングの情報を帯域割当部114に通知する。帯域割当部114は、各通信システムの帯域割当方法を選択し、各通信システムを収容するONUが上り通信に使用可能タイミングの情報を基に、各ONUに帯域を割当てる。帯域割当部114は、各ONUに割り当てた帯域の情報を下りフレーム処理部102に出力する。各ONUに割り当てた帯域の情報が設定された下り信号は、E/O変換部103により電気信号に変換され、各通信システムを収容するONUに通知される。ONUは、下り信号から割り当て帯域の情報を取得すると、自装置に割当てられた帯域に従って上り信号をOLT10に送信する。
[第2の実施形態]
本実施形態では、第1の実施形態のOLT10が有するTDDフレーム構成推定の機能をONUに機能分散する。例えば、アクセスネットワークシステム800は、図9に示す光終端装置83に代えて、図5に示すONU20を設ける。
図5は、本実施形態におけるONU20の構成を示す機能ブロック図であり、本実施形態と関係する機能ブロックのみを抽出して示してある。ONU20は、O/E変換部201と、下りフレーム処理部202と、上りフレーム処理部203と、E/O変換部204と、トラヒックモニタ部205と、データセット生成部206と、TDDフレーム情報推定部207とを備える。
O/E変換部201は、光ファイバ52により伝送された下り信号を受信し、光信号から電気信号に変換して下りフレーム処理部202に出力する。下りフレーム処理部202は、電気信号に変換された下り信号のフレームをRRH32との間で用いられるフレームに変換し、RRH32に送信する。上りフレーム処理部203は、RRH32から受信した上り信号を、PONで用いられるフレームに変換し、E/O変換部204に出力する。E/O変換部204は、フレーム変換された上り信号を、電気信号から光信号に変換し、光ファイバ52に出力する。光ファイバ52に出力された光信号は、光スプリッタ82により他のOLTからの光信号と合波され、光ファイバ51を介してONUに入力される。
トラヒックモニタ部205は、RRH32から受信した上り信号のトラヒックをモニタリング(監視)し、モニタリングデータをデータセット生成部206に通知する。データセット生成部206及びTDDフレーム情報推定部207はそれぞれ、第1の実施形態におけるOLT10が備えるデータセット生成部110及びTDDフレーム情報推定部111と同様の機能を有する。
なお、ONU20が、データセット生成部206を備え、TDDフレーム情報推定部207を備えず、OLTがTDDフレーム情報推定部111を備えるようしてもよい。この場合、ONU20のデータセット生成部206は、上りフレーム処理部203に生成したデータセットを転送し、OLTに送信する。そして、OLT内に実装されるTDDフレーム情報推定部111が、ONU20から受信したデータセットを用いて、第1の実施形態と同様の推定処理を行う。ONU20がデータセット生成部206と、TDDフレーム情報推定部207とを備える場合、TDDフレーム情報推定部207における推定結果を示すTDDフレーム構成情報を上りデータ信号に格納して、OLTに送信する。TDDフレーム構成情報は、例えば、TDDフレームのインデックスの番号であってもよい。
[第3の実施形態]
第1の実施形態及び第2の実施形態では、OLT10のトラヒックモニタ部107、ONU20のトラヒックモニタ部205において、上り信号を監視しているが、下り信号を監視することや、上り信号及び下り信号の両方を監視することによっても実現可能である。
上述した実施形態によれば、光伝送システムにおいて、端局装置と終端装置とが、時分割複信によって通信するネットワーク装置を有する通信システムの通信と、この通信システムとは異なる他通信システムの通信とを中継する。光伝送システムは、例えば、PONシステムである。また、通信システムは、例えば、無線通信システムであり、時分割複信によって通信するネットワーク装置として、移動無線端末と通信するRRHを有する。光伝送システムは、監視部と、抽出部と、推定部とを備える。なお、監視部、抽出部及び推定部が、端局装置に備えられてもよく、監視部、抽出部及び推定部の全て又は一部が終端装置に備えられてもよい。
監視部は、1台以上の終端装置から端局装置へ送信される通信システムの時分割複信による信号を監視する。監視部は、例えば、OLT10のトラヒックモニタ部107や、ONU20のトラヒックモニタ部205である。
抽出部は、監視部による監視結果に基づいて、上りリンクの通信と下りリンクの通信の尤もらしさを表す時系列のデータパターンを抽出する。抽出部は、例えば、OLT10のデータセット生成部110や、ONU20のデータセット生成部206である。
推定部は、通信システムに適用される時分割複信における上りリンクの通信のタイミング及び下りリンクの通信のタイミングの複数のパターンそれぞれを表す各データと、抽出部により抽出されたデータパターンとの相関を算出する。推定部は、前述の複数のパターンのうち推定されるパターンを、算出された相関の結果に基づいて選択する。推定部は、例えば、OLT10のTDDフレーム情報推定部111や、ONU20のTDDフレーム情報推定部207である。
従来は、データのトラヒックから無線フレームの構成を判別する推定処理の成功率が低かった。この推定を誤ると、モバイルシステムなどの無線通信システムに遅延やフレームロス等の影響を与えてしまう。上述した実施形態によれば、3GPPに規定されているTDDフレームパターン特徴を利用したデータセットを利用し、TDDフレーム構成の推定の精度を高めることができる。これにより、無線通信システムの基地局との連携時の遅延を抑えた光伝送システムを提供することが可能となる。
上述した実施形態におけるOLT10のトラヒックモニタ部107、データセット生成部110、TDDフレーム情報推定部111、タイミング計算部112、タイミング指示部113及び帯域割当部114、ならびに、ONU20のトラヒックモニタ部205、データセット生成部206及びTDDフレーム情報推定部207の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。