図1は、本発明の実施の形態に係る視覚補助システムの実施例1における全体構成を示すブロック図である。実施例1の視覚補助システムは、ゴーグル型ヘッドマウントディスプレイ(以下「HMD」)2および、これとケーブルで接続されるコントローラ4を有する。上記ケーブルは、HMD2とコントローラ4のパラレルデータ通信ラインおよび電源供給ラインとなる。
HMD2は、使用者の右目6および左目8の前にかけられている通常の眼鏡10のさらに前にかけられる。このように、HMD2は、眼鏡10により使用者の右目6および左目8の屈折上の問題が解決されているという前提で使用される。この目的のため、HMD2は、本体部2aおよびツル部2bよりなり、ツル部2bを眼鏡10の上から耳にかけたとき、本体部2aが眼鏡10のレンズの前に来るよう構成されている。
本体部2a内のHMDの右目用ディスプレイ12および左目用ディスプレイ14はいずれも有機EL現象を利用したOLED(有機発光ダイオード)ディスプレイパネルにより構成されている。駆動部16は、後述のようにコントローラ4から送られる画像信号に基づいて右目用ディスプレイ12および左目用ディスプレイ14をそれぞれ駆動し、右目用画像および左目用画像を表示する。表示された画像の虚像は、破線矢印で示すように、視線6aおよび8aに沿って右目用接眼光学系18および左目用接眼光学系20によりそれぞれ右目6および左目8に導かれる。駆動部16は、また、コントローラ4の制御に基づいて右目用接眼光学系18および左目用接眼光学系20のフォーカス調節を行うとともに、その光軸を並行移動させて視線6aまたは8aからずらせる視線シフト調節も行う。
本体部2a内の右目画像用撮像素子22には、破線矢印で示すように右目の視線6aに沿って入射する光を90度内側(紙面で右側)に屈曲させる右目用屈曲ズームレンズ光学系24によって被写界の実像が結像させられる。同様に、左目画像用撮像素子26には、破線矢印で示すように左目の視線8aに沿って入射する光を90度内側(紙面で左側)に屈曲させる左目用屈曲ズームレンズ光学系28によって被写界の実像が結像させられる。右目画像用撮像素子22および左目画像用撮像素子26で撮像された被写界像は、後述のように駆動部16を介してコントローラ4に送られる。右目用屈曲ズームレンズ光学系24および左目用屈曲ズームレンズ光学系28によるズーミング機能により、右目画像用撮像素子22および左目画像用撮像素子26には、等倍の画像だけでなく、実際の被写界を拡大した画像や実際の被写界のワイド領域を集約した画像を結像させることができる。前者は拡大観察に、後者は、視野狭窄の使用者のために実際に見えるよりもワイドな被写界像を視野内に提供するのに適する。
上記の右目用屈曲ズームレンズ光学系24および左目用屈曲ズームレンズ光学系28を用いた撮像系は入射光軸方向の厚みを薄くし、本体部2aが前方に過度に飛び出さないようにする。また、右目用屈曲ズームレンズ光学系24および左目用屈曲ズームレンズ光学系28は屈曲後の光学系がそれぞれ視線6a、8aに垂直な方向のスペースを占めるとともに、屈曲方向の更に内側に右目画像用撮像素子22および左目画像用撮像素子26が配置される。この配置により、視線6aおよび8aの外側を遮る部品配置を避け、視線6aおよび8aの外側の実際の被写界が直接見えるようにしている。人間の目は、200度程度の広角の被写界の情報が認識できるといわれているが、実施例1において右目用ディスプレイ12および左目用ディスプレイ14に表示される被写界の情報は約40度である。このため、実施例1では、右目用ディスプレイ12および左目用ディスプレイ14に表示される画像情報の外側の被写界についても直接これを見ることにより視覚情報が得られるようにしている。
以上の構成により、実施例1の視覚補助システムは、右目画像用撮像素子22および左目画像用撮像素子26で撮像された被写界像をコントローラ4に送って使用者の症状に合わせて処理し、コントローラ4から戻される処理画像を右目用ディスプレイ12および左目用ディスプレイ14に観察可能に表示することにより、被写界を直接目で見るよりも良好な視覚情報が得られるようにする。例えば、夜盲症(暗順応障害)の使用者にはゲインアップを行うとともにガンマ補正により暗部を持ち上げた処理画像を提供する。一方、羞明(明順応障害)の使用者にはガンマ補正により高輝度部分を圧縮した処理画像を提供する。また、文字等の判読性を高めるため、白黒反転画像を提供することも可能である。さらに、上記のように右目用ディスプレイ12および左目用ディスプレイ14に表示される画像情報の周りの被写界についても直接これを見ることにより視覚情報が得ることができる。なお、直接画像については、後述のように、その透過率を制御することにより、表示画像との調和が図られる。
上記でも触れたように、本発明の実施例1においては、通常状態では、右目用ディスプレイ12の虚像を右目6に導く右目用接眼光学系18の光軸は右目用屈曲スームレンズ光学系24の入射光軸と一致している。同様に、左目用ディスプレイ14の虚像を左目8に導く左目用接眼光学系20の光軸は左目用屈曲スームレンズ光学系28の入射光軸と一致している。そして、必要に応じ、駆動部16の制御により右目用接眼光学系18または左目用接眼光学系20の光軸を並行移動させて視線6aまたは8aからずらせることが可能である。これは、例えば加齢黄斑変性等により中心視覚に障害がある場合、右目画像用撮像素子22または左目画像用撮像素子26で撮像された被写界中心の像が障害のない網膜の中心部以外に見えるよう視線をシフトするためである。
また、上述のように本発明の実施例1では、視線6aおよび8aの外側の実際の被写界が背景として直接見えるように構成している。そして、矢印30で示す右目外側からの光路中には、右目用可変透過率NDフィルタ33が設けられている。右目用可変透過率NDフィルタ33は例えば液晶シャッタにより構成され、駆動部16の制御により、最大透過率と遮光状態との間で透過率が可変となっている。同様に、矢印34で示す左目外側からの光路中には、左目用可変透過率NDフィルタ36が設けられており、駆動部16の制御により、最大透過率と遮光状態との間で透過率が可変となっている。このように、右目用可変透過率NDフィルタ32と左目用可変透過率NDフィルタ36は互いに独立に透過率が変更可能である。透過率の変更は、周囲の明るさ変化に対する瞳孔の順応能力の補助に用いられる他、表示部の明るさの変化に合わせた透過率変更により表示部を見やすくするとともに、表示部の画像と背景としての直接観察画像との調和を図るために活用される。さらに表示部に白黒反転表示を行なったときは右目用可変透過率NDフィルタ32および左目用可変透過率NDフィルタ36を遮光状態として、白黒反転画像観察の妨げとならないようにする。
図1からも明らかなように、上記で説明した実施例1における各構成は、すべて本体部2a内に収納されており、本体部2a前面から突出する部分がない。従って、HMD2を装着した使用者に向かい合う人から見たとき、HMD2は通常のサングラスに近似したものに感じられ、特別な機器で観察されているという違和感が軽減される。
HMD2の本体部2aにおける駆動部16は、パラレルデータ通信および電源供給ライン38でコントローラ4と接続され、相互の通信およびコントローラ4からHMD2への電源供給をおこなっている。また、環境の明るさに応じて右目用ディスプレイ12および左目用ディスプレイ14に提供される画像処理を変更するためHMD2のツル部2bには環境光センサ40が設けられており、通信ライン42により環境光の情報をコントローラ4に送っている。さらに、顔の向きを変えた場合等における特に拡大時の画像急変を緩和するため加速度センサ44がツル部2bに設けられており、通信ライン46により顔の動き等の情報をコントローラ4に送っている。パラレルデータ通信および電源供給ライン38、通信ライン42、46は実際には一本の接続ケーブルにまとめられている。また、図1では、環境光センサ40、加速度センサ44および生体センサ45が直接コントローラと通信する構成を図示しているが、駆動部16を介してパラレルデータ通信および電源供給ライン38で通信するよう構成してもよい。
コントローラ4は、上記のようなHMD2との通信およびHMD2への電源供給のための入出力部48を有する。コントローラ4の画像処理部50は、パラレルデータ通信および電源供HMD2の右目画像用撮像素子22および左目画像用撮像素子26から駆動部16を介して給ライン38により受信した画像を処理し、使用者の補助に適した画像データとして表示制御部52に送る。表示制御部52からの画像データはパラレルデータ通信および電源供給ライン38により送信され、駆動部16は受信した画像データに基づいて右目用ディスプレイ12および左目用ディスプレイ14を駆動し、画像表示する。また、背景制御部54は、パラレルデータ通信および電源供給ライン38を通じて目用可変透過率NDフィルタ32と左目用可変透過率NDフィルタ36を制御する。
プリセット記憶部56は、使用者の個別症状および環境光に応じた画像処理情報および可変透過率NDフィルタにおける透過率情報のプリセット値を記憶している。操作部58はコントローラ表示部60の表示との連携で上記のプリセット値の入力操作および白黒反転などの画像処理選択操作を行なう。中央制御部62は、プリセット記憶部56の画像処理情報に操作部58の操作、環境光センサ40および加速度センサ44からの情報も加味して画像処理部50を制御する。また、中央制御部58は、プリセット記憶部56の透過率情報に環境光センサ40からの情報も加味して背景制御部50を制御する。背景制御部50の制御データはパラレルデータ通信および電源供給ライン38により送信され、駆動部16受信したデータに基づき、右目用可変透過率NDフィルタ32および左目用可変透過率NDフィルタ36の透過率を変化させて、直接観察される背景の明るさを制御する。中央制御部62はさらに、以上のような機能に関連して、表示制御部52、コントローラ表示部60を制御する。電源部64は、コントローラ全体に給電するとともに、入出力部48を介してHMD2にも給電する。
図2は、実施例1における中央制御部62の動作を説明する基本フローチャートである。フローは、システムへの給電が開始されるとスタートし、ステップS2でプリセット値が記憶されているか否かチェックする。そして記憶があればプリセット値をプリセット記憶部56から読み出し、ステップS6に移行する。一方、ステップS2プリセット値の記憶がなければステップS8に移行し、画像処理において補正を行わない旨のデフォルト値を読み出してステップS6に移行する。
ステップS6では、右目画像用撮像素子22および左目画像用撮像素子26による撮像を開始し、ステップS10に進んで、所定の明るさを基準とした標準状態の表示制御およびこれに見合う標準状態の背景となるよう右目用可変透過率NDフィルタ32および左目用可変透過率NDフィルタ36の透過率制御を開始する。
次いでステップS12では、プリセット値を設定する操作が行われたか否かチェックし、設定操作が行われたことが確認されるとステップS14に移行してプリセット値設定処理を行い、ステップS16に移行する。一方、ステップS12でプリセット値設定操作が確認されないときは直接ステップS16に移行する。ステップS14のプリセット値設定処理の詳細については後述する。
ステップS16では、使用者に中心視野障害があることがプリセット値として記憶されているか否かチェックし、該当すればステップS16に進んで視線シフト処理を行いステップS20に移行する。一方、ステップS16で使用者が中心視野障害に該当しないことが確認されたときは、直接ステップS20に移行する。このときは、通常状態となり、上述のように右目用接眼光学系18および右目用接眼光学系20の光軸はそれぞれ右目用屈曲スームレンズ光学系24および左目用屈曲スームレンズ光学系26の入射光軸と一致することになる。
ステップS16では、環境光の明るさが変化したか否かチェックし、変化があれば、ステップS22の右目用表示変更処理、およびステップS24の右目用表示変更処理を順次実行してステップS26に至る。このように、右目用と左目用の表示変更処理はそれぞれ独立して行われる。ステップS26では、右目用背景変更処理が行われ、次いでステップS28の左目用背景変更処理が実行されてステップS30に至る。このように、右目用と左目用の背景変更処理についてもそれぞれ独立した処理が行われる。一方、ステップS20で環境光の変化がなかったときは直接ステップS30に移行する。
ステップS30では、白黒反転操作があったか否かチェックし、操作があればステップS32に移行して白黒反転表示を行うとともに背景については白黒反転表示の観察を妨げないよう遮光状態としてステップS34に移行する。一方、ステップS30で白黒反転操作がかくにんできないときには直接ステップS34に移行する。ステップS34では電源供給中か否かがチェックされ、供給中であればステップS12に戻って、以下、ステップS36で電源供給中であること確認される限りステップS12からステップS36を繰り返す。一方、ステップS36で電源供給中であることが確認されなければ直ちにフローを終了する。
図3は、図2のステップS22の右目用表示変更処理およびステップS24の左目用表示変更処理の詳細を示すフローチャートであり、両ステップに共通の内容であるが、図2に示すように右目用および左目用にそれぞれ実行される。フローがスタートすると、ステップS42に進み、図1のステップS20において検知された環境光の変化が表示変更処理用にあらかじめ定められた所定値以上か否かチェックする。そして変化が表示変更処理を必要としない所定値以下であれば直ちにフローを終了し、ステップS26に移行する。
一方、ステップS42で所定以上の変化が検知されるとステップS44に移行し、その変化により環境光が所定値よりも増加したか否かチェックする。ステップS44において環境光が所定値よりも増加したことが検知されるとステップS46で撮像素子のゲインをダウンしてステップS48に移行する。ステップS48では、使用者に明順応障害があるか否かチェックし、該当すればステップS50に進んで高輝度部分を圧縮するガンマ補正を行ってステップS52に進む。ステップS52ではさらに輪郭強調処理を行ってステップS54に移行する。一方ステップS44において環境光が所定値より増加したことが検知されない場合、またはステップS48において使用者が明順応障害であることが確認されない場合は、直接ステップS54に移行する。
ステップS54では、環境光が所定値よりも減少したか否かがチェックする。そして、環境光が所定値よりも減少したことが検知されるとステップS56で撮像素子のゲインをアップしてステップS58に移行する。ステップS58では、使用者に暗順応障害があるか否かチェックし、該当すれば60に進んで低輝度部分を持ち上げるガンマ補正を行ってステップS62に進む。ステップS62ではさらに輪郭強調処理を行ってステップS64に移行する。一方ステップS54において環境光が所定値より減少したことが検知されない場合、またはステップS58において使用者が暗順応障害であることが確認されない場合は、直接ステップS64に移行する。
ステップS54では、明るさの変化に瞳孔が反応する時間に応じた表示変更補正を行うためのカウンタをリセットしてスタートさせ、ステップS66に進む。ステップS66では、前回の明るさ変化に基づく瞳孔反応の補正中であるか否かチェックし、該当すればステップS68に進んで前回の瞳孔反応補正をキャンセルしてステップS70に進む。一方、ステップS66で前回瞳孔反応補正中であることが検知されなければ直接ステップS70に進む。ステップS70では瞳孔反応補正を開始させるとともにカウンタに基づき瞳孔反応が終了した時点で瞳孔反応補正を自動終了させる処理をスタートさせてフローを終了する。
図4は、図2のステップS26の右目用背景変更処理およびステップS28の左目用背景変更処理の詳細を示すフローチャートであり、両ステップに共通の内容であるが、図2に示すように右目用および左目用にそれぞれ実行される。フローがスタートすると、ステップS82に進み、図1のステップS20において検知された環境光の変化により環境光が所定値よりも増加したか否かチェックする。通常、図4のステップS82における所定値は、図3のステップS44における所定値よりもレベルが低い。
ステップS82において環境光が所定値よりも増加したことが検知されるとステップS84に進み、環境光の増加に対応して可変透過率NDフィルタの透過率を減少させてステップS86に移行する。ステップS86では、今回の環境光変化に基づいて表示部変更処理が行われたか否かチェックし、該当すればステップS88に進んで表示部変更に対応して可変透過率NDフィルタの透過率を変更してステップS90に至る。一方ステップS82において環境光が所定値より増加したことが検知されない場合、またはステップS86において表示部変更処理があったことが確認されない場合は、直接ステップS90に移行する。
ステップS90では、図1のステップS20において検知された環境光の変化により環境光が所定値よりも減少したか否かチェックする。通常、図4のステップS90における所定値は、図3のステップS54における所定値よりもレベルが高い。ステップS90において環境光が所定値よりも減少したことが検知されるとステップS92に進み、可変透過率NDフィルタの透過率が既に最大になっているか否かチェックする。そして最大値でなければステップS94に進み、環境光の増加に対応して可変透過率NDフィルタの透過率を増加させてステップS96に移行する。但し、この増加は最大透過率が限度である。一方、ステップS92で可変透過率NDフィルタの透過率が既に最大になっていることが検知された場合は直接ステップS96に移行する。
ステップS96では、今回の環境光変化に基づいて表示部変更処理が行われたか否かチェックし、該当すればステップS98に進んで表示部変更に対応して可変透過率NDフィルタの透過率を変更してステップS100に移行する。但し、この増加は最大透過率が限度である。一方ステップS90において環境光が所定値より減少したことが検知されない場合、またはステップS96において表示部変更処理があったことが確認されない場合は、直接ステップS90に移行する。
ステップS100では、図3において表示変更のためにスタートされた瞳孔反応補正処理があるか否かチェックし、該当すればステップS102に進んで対応する可変透過率NDフィルタの透過率補正を開始させるとともに表示変更のための動向反応補正に対応して補正を自動終了させる処理をスタートさせてフローを終了する。
図5は、図2のステップS34における画像急変緩和処理の詳細を示すフローチャートである。フローがスタートすると、ステップS112で表示倍率が等倍以上か否かチェックする。そしてこれに該当しない場合、すなわち、表示倍率が背景の倍率と等倍かまたはより低倍率であって顔の向きを変えた場合等における画像急変の緩和を必要としない場合は、直ちにフローを終了し、ステップS36に移行する。
これに対し、ステップS112で表示倍率が等倍以上であることが検知されるとステップS114に進み、顔の向きを変えたことに基づく加速度が検知されるか否か検知する。そして加速度が検知されるとステップS116に進み、右目用ディスプレイ12および左目用ディスプレイ14における前フレームの表示を維持し、ステップS118に進む。ステップS118では表示倍率に対応して予め決められている時間(例えば表示倍率2倍で3フレーム分の時間)が経過したか否かチェックする。そして時間経過がなければステップS116に戻り、以下、ステップS118で時間経過が検知されるまでステップS116およびステップS118を繰り返し、前フレームを維持する。一方、ステップS118で時間経過が検知されるとステップS120に進む。
ステップS120では、再度加速度検知を行い、顔の動きが止まることにより加速度が検知されなくなった場合はステップS122に進み、ステップS116で維持されたフレームの次のフレームを表示してステップS126に移行する。ステップS122の次フレーム表示は通常よりも早いフレームレートで行われる。ステップS126では現フレームの表示に追いついたかどうかチェックが行われ、まだ追いつかない場合はステップS120に戻る。以下ステップS120で新たな加速度が検知されずステップS126で現フレームに追いつかない限りステップS120からステップS126が繰り返され、通常フレームレートよりも早いフレームレートで現フレームへの復帰が行われる。そしてステップS126で現フレームが表示され鵜状態となったことが検知されるとフローを終了する。これにより、倍率が大きい状態で顔の向きを変えた場合の画像の急変が緩和され、画像の動きに遅延がかけられる。なおこの遅延は顔の動きが止まったときに速やかに取り戻される。一方、ステップS120で加速度が検知され、顔の動きが継続しているときは、ステップS124に進み、現フレームを表示してフローを終了する。従って顔の動きが継続しているときはフレームの間引かれる形で画像の急変が健和される。
図6は、図2のステップS14におけるプリセット値設定処理の詳細を示すフローチャートである。フローがスタートすると、ステップS132で医師による設定か否かのチェックが行われる。該当すればステップS134に進み、医師設定処理を実行してステップS136に移行する。一方、ステップS132で医師による設定であることが検知されない場合は直接ステップS136に移行する。ステップS136では、視能訓練士による設定か否かのチェックが行われる。該当すればステップS138に進み、視能訓練士設定処理を実行してステップS140に移行する。一方、ステップS136で視能訓練士による設定であることが検知されない場合は直接ステップS140に移行する。
ステップS140では、使用者本人による設定か否かがチェックされる。そして該当すればステップS142で右目設定をスタートしステップS144では環境光初期設定が行われる。本人設定は、実際に本人がHMD2を装着し、右目用ディスプレイ12を観察することで設定の適否を判断する。具体的には、ステップS146において本人による表示補正パラメータの変更が行われる。そしてステップS148において右目用ディスプレイ12により観察される画像が最適であるか否かについて本人の判断を求める。そして最適との判断ができなければステップS146に戻り、以下ステップS146とステップS148を繰り返すことでパラメータ変更と本人の判断が繰り返される。そしてステップS148において本人による最適判断なされて操作部58が操作されるとステップS150に進み、その状態におけるパラメータを記憶してステップS152に移行する。
ステップS152では、上記のようにして記憶されるパラメータ蓄積記憶が所定回数に達したか否かチェックする。ステップS152において蓄積記憶が所定数に達していなければステップS146に戻り、以下蓄積記憶が所定数に達するまでステップS146からステップS152が繰り返される。一方、ステップS152において蓄積記憶が所定数に達するとステップS154に進み、記憶されたパラメータの平均による設定パラメータの確定を行う。
次いで、ステップS156では、設定の目的で環境光を自動変更してステップS158に進む。ステップS158では、環境光の変更処理が終了したか否かチェックする。変更処理が終了していなければステップS146に戻り、以下環境光変更が終了しない限りステップS146からステップS158を繰り返し、右目用設定が継続される。一方、ステップS158で環境光変更処理が終了するとステップS160の左目設定処理に移行する。ステップS160の左目設定処理の詳細は、ステップS146からステップS158における右目用設定処理と同じであるが、煩雑を避けるためステップS160にまとめて図示している。ステップS160の左目用設定処理が終了するとフローを終了し、図2のステップS16に移行する。一方ステップS140で本人による設定であることが検知されなければ、直ちにフローを終了する。
以上の実施例1に示した種々の特徴の実施は、上記の実施例1に限るものではなく、その利点を享受できる限り、他の実施例でも実施可能である。例えば、図3のフローでは、使用者に明順応障害がある場合に輪郭強調を行うとともに、使用者に暗順応障害がある場合にコントラスト強調を行うようにしているが、このような使い分けは任意であり、明順応障害がある場合でも暗順応障害がある場合でも、輪郭強調およびコントラスト強調を採用することが可能である。
図7は、本発明の実施の形態に係る視覚補助システムの実施例2における画像急変緩和処理の詳細を示すフローチャートである。実施例2の全体構成は図1における実施例1のブロック図と共通である。また、その基本動作は、図における実施例1の基本フローチャートと共通である。従って、共通の部分については、実施例1を援用し、説明を省略する。実施例2が実施例1と異なるのは、図2のステップS34における画像急変緩和処理の具体的構成である。図7のフローチャートはこのような実施例2において援用される図2のステップS34の詳細を示すものである。
図7のフローがスタートすると、ステップS162で所定量以上の加速度が検知されるか否かチャックされる。加速度の検知があればステップS164に進み、一連の加速度検知において加速度を最初に検知してから所定時間(例えば2秒)経過したか否かがチェックされる。所定時間が経過していなければステップS166に進み、一連の加速度検知の履歴分析を行いステップS168に移行する。ステップS168では、分析を開始してから所定の時間(例えば0.5秒)が経過したか否化チェックする。所定の時間が経過していなければステップS166に戻り、以下所定時間が経過するまでステップS166とステップS168を繰り返して分析を継続する。
一方、ステップS168で分析を開始してから所定の時間が経過したことが確認されたときはステップS170に進み、履歴分析の結果、検知された一連の加速度変化が微小振動に該当するか否かがチェックされる。そして微小振動が検知されたときは、ステップS172に進んで前フレームの表示を維持し、表示の変更を停止する。これは意図しない体の震えなどによる微小振動による画像のブレを防止するためである。そしてステップS174において同方向の加速度が検知されたか否かをチェックする。
ステップS174で同方向の加速度が検知されない場合は、ステップS164に戻り、加速度を最初に検知してから所定時間が経過したことがステップS164で検知されない限り、ステップS164からステップS174を繰り返す。一方、ステップS174で同方向の加速度が検知されたときは、顔の向きを変えた等の意図的な動作が行われたものと判断し、表示を変更停止の状態から現フレームに変更しステップS178に移行する。なお、ステップS170で履歴分析の結果微小振動でないと判断された場合は、直ちにステップS178に移行する。
ステップS178では、現在の表示倍率の確認を行い、ステップS180に進んで表示倍率が当倍以上か否かチェックする。そして等倍以上であれば、ステップS182で倍率依存コマ落としを指示してステップS184に移行する。ステップS182の倍率依存コマ落としでは、例えば倍率が1.5倍のときフレームレートを半分に落とし、倍率が2倍の時はフレームレートを3分の1に落とすなど、倍率に依存したコマ落としを行い、倍率が高い程フレームレートを落として画像が短時間に細かく動かないようにし、拡大画像による映像酔い等を防止する。一方、ステップS180で画像が等倍以上でないときはステップS186に進み、通常フレームレートでの表示を指示してステップS184に移行する。
ステップS184では、加速度検知の有無を再度検知し、引き続き加速度が検知されるときはステップS164に戻り、加速度を最初に検知してから所定時間が経過したことがステップS164で検知されない限り、ステップS164からステップS188を繰り返す。一方、ステップS184で加速度検知がないことが確認されるとステップS188に進み、現フレームの表示を指示してフローを終了する。
また、ステップS164で加速度を最初に検知してから所定時間が経過したことが検知されたときは、たとえ加速度検知が継続していたとしても直ちにフローを終了する。これは図7のフローに長時間留まることによって図2における他のタスクを実行できなくなるのを防止するためである、図2に明らかなように他にタスクなければステップS12からステップS32の繰り返しの中でステップS34に至るので、図7のフローが繰り返され、加速度検知があればこれに対応する図7の機能を継続することができる。なお、ステップS162で加速度が検知されない場合はステップS190に移行し、通常フレームレートでの表示を指示してフローを終了する。この場合、図7のフローには実質的に動作は行われないことになるが、通常表示状態以外でステップS162に至り加速度検知がされない場合のためにステップS190を置いている。
図8は、本発明の実施の形態に係る視覚補助システムの実施例3における全体構成を示すブロック図である。図8における実施例3の構成は、図1における実施例1と共通するところが多いので、同一部分には同一の番号を付し、説明を省略する。実施例3が実施例1と異なる第一点目は、ツル部2bに脈拍を検知する脈拍センサ66が設けられており使用者が安静状態にあるか歩行中等の活動状態にあるか等の情報を通信ライン68によりコントローラ4に送っている点である。実施例1と同様にして、パラレルデータ通信および電源供給ライン38、通信ライン42、46、68は実際には一本の接続ケーブルにまとめられている。また、図3においても、環境光センサ40、加速度センサ44および生体センサ66が直接コントローラ4と通信する構成を図示しているが、各センサとコントローラ4は、駆動部16を介してパラレルデータ通信および電源供給ライン38で通信するよう構成してもよい。
図8に示す実施例3が図1の実施例1と異なる第二点目は、HMD2に視線センサが設けられており、使用者の視線の動きを検知する点である。視線センサ70によって検知された使用者の視線の動き等の情報は駆動部16を介してパラレルデータ通信によりコントローラ4に送られる。脈拍センサ66および視線センサ70の詳細については後述する。実施例3における環境光センサ40、加速度センサ44、脈拍センサ66、視線センサ70等は、HMD2が使用される際の状況を検知するものなので、状況センサと総称する。
図8に示す実施例3が図1の実施例1と異なる第三点目は、コントローラ4がモード記憶部72を有し、拡大モード、ワイドモード、白黒反転モードなどの各モードがそれぞれ使用される状況を検知する状況センサおよび操作部58の操作の関係の学習情報とともに登録される点である。そして、中央制御部74との連携によって操作部58によるモード選択に制限を加えたり、登録されたモードの自動選択を行ったりする。これらの詳細についても後述する。
図9は、実施例3における中央制御部74の動作を説明する基本フローチャートである。図9のフローは、実施例3における図のフローと共通するところが多いので、共通するステップには同一ステップ番号を付して説明を省略するとともに、共通するステップ郡についてもこれらをまとめて図示し、説明を省略する。つまり、ステップS192の立上げ処理は図2のステップS2、ステップS4およびステップS8をまとめたもの、ステップS194は図2のステップS12からステップS18をまとめたもの、ステップS194は図2のステップS22からステップS28をまとめたものである。
ステップS196の表示・拝見変更処理を経てステップS198に至ると、通常モード以外の拡大モード、ワイドモード、白黒反転モードなどを選択可能なように登録するための手動の
モード登録操作があったか否かをチェックする。モード登録操作があったときはステップS200に進み、操作に従ったモード手動登録処理を実行してステップS202に移行する。一方ステップS198でモード登録操作が検知されないときは直接ステップS202に移行する。
ステップS202では、モードを選択する手動操作があったか否かチェックする。モード選択操作があったときは、ステップS204以下に進み、で操作があったときの状況を各センサにて検知する。具体的には、ステップS204で環境光を環境光センサ40にて検知するとともに、ステップS206で加速度を加速度センサ44にて検知し、さらにステップS208で脈拍を脈拍センサ66で検知する。また、ステップS210で視線の移動状態を視線センサ70で検知する。
次いでステップS212では、そのモードが手動選択されたときに各センサの検知状態がどうであったかを学習してそのモードに自動登録するモード自動学習登録処理を行う。この処理では、例えば、拡大モードおよび白黒モードが選択されたときに、加速度検知のない静止状態でかつ脈拍から見て安静状態にあり、視線の移動が限定的であるであれば、このような状態のとき拡大モードかつ白黒モードが選択されるものであることを学習し、拡大モードと白黒モードにこれらの検知状態を登録する。つまり、このような状態の時は、使用者が読書または書類を見るために拡大モードと白黒モードを選択したものと解釈して登録する。
上記ステップS212のモード自動学習処理による登録情報は、後述のように一般的なモードを自動選択する際の妥当性のクロスチェックに用いられるとともに、使用者に特有の特定の学習結果条件の成立に基づく自動カスタムモード設定に利用される。ステップS212のモード自動学習処理が終了するとステップS214に進む。一方、ステップS202でモード選択操作が検知されない場合は直接ステップS214に移行する。ステップS214ではモード変更処理が実行されるがその詳細は後述する。ステップS34以下は図2と共通である。
図10は、図9のステップS214におけるモード変更処理の詳細を示すフローチャートである。フローがスタートすると、ステップS222でワイドモードに変更する旨の手動操作が行われたか否かのチェックが行われる。この操作が検知されなければステップS224に進み、拡大モードに変更する旨の手動操作が行われたか否かのチェックが行われる。拡大モードに変更する旨の手動操作が検知されるとステップS226に進み、使用者が移動中であることに対応する加速度が検知されているか否かのチェックが行われる。そして加速度検知がなければステップS228に進み、操作通りの倍率変更(この場合「拡大モード」の倍率)を実行してステップS230に移行する。
一方、ステップS226で、使用者が移動中であることに対応する加速度が検知されるとステップS232に移行し、拡大が不可である旨の報知表示をコントローラ表示部60に表示して倍率変更を実行することなくステップS230に移行する。なお、拡大が不可である旨のメッセージ表示は右目画像用撮像素子22および左目画像用撮像素子26のいずれかの画像に重畳表示してもよい。
また、ステップS222で、ワイドモードに変更する旨の手動操作が行われたことが検知されると直接ステップS228に進み、操作通りの倍率変更(この場合「ワイドモード」の倍率)を実行してステップS230に移行する。このように、倍率を小さくするための操作であれば、仮に使用者が移動中であっても危険の可能性は少ないので加速度の検知は行わず、直ちに操作を実行する。なお、ステップS224で拡大モード操作が検知されなければ倍率変更の手動操作はないことを意味するので直ちにステップS230に移行する。
ステップS230では、使用者が視野狭窄者であるか否かを確認する。そして視野狭窄者でなければステップS236に移行して等倍表示を標準モードに設定してステップS236に移行する。一方、ステップS230で使用者が視野狭窄者であることが確認されると、ステップS238に移行し、ワイド表示を標準モードに設定してステップS236に移行する。
ステップ236以下は自動モード変更に関する。まず、ステップS236では、加速度センサ44に基づき、使用者が静止状態にあるか否かチェックする。静止状態であればステップS240に進み、脈拍センサ66に基づき、使用者が安静状態にあるか否かチェックする。そして静止状態にあればステップS242に進み、このような状態において自動的に拡大モードに設定することがこれまでの使用者の手動設定行動に矛盾しないかチェックする。この結果矛盾がなければステップS244で拡大モードを自動設定し、ステップS246に移行する。一方、ステップS236で静止状態が検知できないか、ステップS240で安静状態が検知できないか、またはステップS242で学習情報との矛盾が検知されるかしたときは拡大モードの自動設定をせず、ステップS246に移行する。なお、学習情報との矛盾とは、図9のステップS202からステップS212の自動登録処理において、静止状態かつ安静状態であるにも関わらず、拡大モードを手動選択した履歴が稀である場合、または、静止状態かつ安静状態であることに基づき自動設定された拡大モードが手動によりキャンセルされた履歴が認められる場合等である。このような場合、静止状態および安静状態であることが検知されても拡大モードを自動設定することは使用者の意向に反する可能性が高いので、拡大モードの自動設定を控えてステップS246に移行することになる。
ステップS246では、視線センサ70の出力に基づく使用者の視線の動と読書パターンの視線移動を示す参照データとを比較し、使用者の視線移動が読書パターンの視線移動に該当するか否かチェックする。読書バターン視線移動であると判断されたときはステップS240に進み、読書パターンの視線移動がある状態において自動的に白黒反転モードに設定することがこれまでの使用者の手動設定行動に矛盾しないかチェックする。この結果矛盾がなければステップS250で白黒反転モードを自動設定し、ステップS252に移行する。一方、ステップS246で読書バターン視線移動が検知できないときは白黒反転モードの自動設定をせず、ステップS252に移行する。なお、この場合の学習情報との矛盾とは、ステップS242の説明と同様にして、図9のステップS202からステップS212の自動登録処理において、読書パターン視線移動があるにも関わらず、白黒反転モードを手動選択した履歴が稀である場合、または、読書パターン視線移動に基づき自動設定された白黒反転モードが手動によりキャンセルされた履歴が認められる合等である。このような場合、読書パターン視線移動が検知されても白黒反転モードを自動設定することは使用者の意向に反する可能性が高いので、白黒反転モードの自動設定を控えてステップS254に移行することになる。
以上のステップS236からステップS250の自動設定において、ステップS244での拡大モード自動設定を経てステップS250の白黒反転モード自動設定が行われた場合は、拡大された表示が白黒反転される。一方、ステップS244での拡大モード自動設定が行われてもステップS246で読書パターンの視線移動が検知されない場合は、例えば椅子に座って組立作業等を行っている可能性があり、文字判読に適した白黒反転を行うことは不適当な場合が多いので、拡大モードの自動設定のみでステップS252に至ることになる。
また、以上のステップS236からステップS250における自動設定は拡大モードや白黒反転モード等の比較的一般的なモードの自動設定に関するものである。これに対し、ステップS252およびステップS254は、明暗への順応障害、視野の異常等、使用者の症状に合わせて特定の使用者についてカスタム設定された複数のモード(少なくとも特定条件下での特定モードとその使用者について個別設定された標準モードとを含む)から一つを状況に応じて選択し、自動設定するために設けられているものである。具体的には、ステップS252においてカスタム設定された所定の条件に該当するか否かがチェクされ、該当すればステップS254の自動カスタムモード設定処理に入ってモード設定の変更を自動的に行い、ステップS256に移行する。一方、ステップS252でカスタム設定条件に該当することが検知されない場合は直接ステップS256に移行し、現設定モードを維持する。
ステップS256では、移動加速度が検知されたか否かのチェックを行う。そして移動加速度が検知されたときはステップS258に移行し、標準モードへの自動復帰を行ってフローを終了する。一方、ステップS256において移動加速度が検知されない場合は、現設定モードを維持してフローを終了する。ステップS256において移動加速度が検知された場合は、例えば椅子に座って読書や作業などをしていた人が立ち上がって歩き出した可能性があり、このような場合に拡大モードや白黒反転モードが維持されると危険であるためステップS258で標準モードへの自動復帰を行う。この標準モードは、ステップS234またはステップS238で設定された等倍モードまたはワイドモードである。また、標準モードは、特定の使用者についてカスタム設定しておくことも可能である。
以上の各実施例に示した種々の特徴の実施は、それぞれの実施例に限るものではなく、その利点を享受できる限り、他の実施例でも実施可能である。また、本明細書では、簡単のため、各実施例における説明や図示を他の実施例と異なる部分に集中しているが、各実施例において説明したそれぞれの特徴を兼ね備えた実施、これらを置き換えた実施、または複数の特徴を組み合わせた実施等も可能であることは言うまでもない。