JP6632455B2 - 二酸化バナジウム系蓄熱材料の製造方法 - Google Patents

二酸化バナジウム系蓄熱材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、二酸化バナジウムVO2系蓄熱材料の製造方法に関し、特に二酸化バナジウムVO2系蓄熱材料を低コストで量産容易にする製造方法に関するものである。
蓄熱材料は、外気温の変化に対して一定の温度に保持するという温度調節機能を有するものであり、一般的には、保冷剤や、断熱材ではない保温剤として知られている。また、蓄熱材料は、工場や自動車での廃熱利用等にも使用される。
蓄熱材料としては、物質の大きな比熱を利用するもの(顕熱蓄熱材料)、物質の相変化熱(例えば、融解−凝固の相変化)を利用するもの(潜熱蓄熱材料)、化学反応による発熱を利用するもの等がある。顕熱蓄熱材料は、他の蓄熱熱材料よりも蓄熱量が小さいという問題がある。また、化学反応による発熱を利用した蓄熱材料は、繰り返して使用することができないという問題がある。
一方、潜熱蓄熱材料は、繰り返して使用することができ、また、蓄熱容量が他の蓄熱材料に比べて大きいといった利点がある。最も代表的な潜熱蓄熱材料は氷であり、氷−水の融解−凝固の相変化を利用している。しかしながら、固体−液体の相変化を利用する場合には、相変化による大きな体積変化を伴う、液体の漏れが生じる可能性がある等の問題がある。
以上のような状況の中で、特許文献1にあるような固相状態で生じる相転移を利用した蓄熱材料が発明された。前記蓄熱材料は、固体−液体相転移と異なり、液体の漏れが生じることはなく、相転移時の相分離や分解も生じるおそれがない。更に、相転移時の体積変化が固体−液体相転移に比べ小さいという特徴を有する。
前記の蓄熱材料の具体的例としては、二酸化バナジウムVO2系酸化物が挙げられる。VO2系酸化物においては、VO2及びVサイトをMで置換したV1-xx2があり、その例としては、V1-xx2(0≦x≦0.0650)、V1-xTax2(0≦x≦0.117)、V1-xNbx2(0≦X≦0.115)、V1-xRux2(0≦X≦0.150)、V1-xMox2(0≦X≦0.161)、V1-xRex2(0≦X≦0.0964)が挙げられている。
二酸化バナジウムVO2系蓄熱材料は、特許文献1によれば次のように製造されるとしている。
まず、V25粉末を、水素とアルゴンの混合ガス(水素5%、アルゴン95%)中において、700℃まで昇温し、48時間保持することにより、前駆体であるV23粉末を得る。当該V23粉末と、V25粉末及びWO3粉末を、バナジウムとタングステンと酸素との間のモル比が所定のモル比になるように混合する。そして、当該混合物(粉末)を石英管内に入れ、真空封入する(真空度:2.67×10-4Pa程度)。具体的には、混合物を入れた石英管を排気装置に接続し、石英管内を真空排気する。そして、該石英管を、ガスバーナー等を用いて溶かしながら封じ切る。その後、上記混合物を、石英管ごと1000℃まで昇温し、48時間保持する。以上の工程を経て、V1-xx2の粉末試料を合成する。また、上記合成方法において、WO3の代わりに、Ta25、Nb25、RuO2、MoO2、ReO3をそれぞれ用いることにより、V1-xTax2、V1-xNbx2、V1-xRux2、V1-xMox2、V1-xRex2を合成する。
また、特許文献2には、サーモクロミック材料として二酸化バナジウムが挙げられており、その製造方法として、バナジウムとタングステンとを過酸化水素水に溶解させたヒドロゾルを基板上にスピンコーティングした後、数100℃で還元焼成して二酸化バナジウムのガラス状被膜を形成する方法、酸化バナジウムと酸化タングステンとを溶融法により合成した材料をビーズミルで粉砕して酸化バナジウムの微粒子を得る方法、及びバナジウム化合物を過酸化水素水に含有させたバナジウム含有液からバナジウム酸化物を析出させ、更に水素還元処理した後に加熱処理して二酸化バナジウムを製造する方法が記載されている。
特許文献3には、サーモクロミック材料として二酸化バナジウム単結晶微粒子が挙げられており、その製造方法として、五酸化二バナジウムV25、バナジン酸アンモニウムNH4VO3、三塩化酸化バナジウムVOCl3、メタバナジン酸ナトリウムNaVO3等と、ヒドラジンN24またはその水和物N24・nH2Oとの水溶液を水熱反応させる方法が記載されている。
特許文献4には、サーモクロミック材料として二酸化バナジウムが挙げられており、その製造方法として、五酸化二バナジウムV25と、シュウ酸(COOH)2やその水和物等の還元剤と、水とを含む混合液を水熱反応させることで二酸化バナジウムのロッド状ナノ粒子を作製する方法が記載されている。
特許文献5には、サーモクロミック材料となる二酸化バナジウムの製造方法として、バナジウムアルコキシド及びアルコールを含有するバナジウムアルコキシド溶液と塩基性水溶液とを反応させて酸化バナジウム前駆体を作製し、該酸化バナジウム前駆体を焼成した後に水素雰囲気中で還元することで二酸化バナジウム粒子とする方法が記載されている。
また、五酸化バナジウムを還元する方法として、五酸化バナジウム、酸化鉄、炭素質還元剤、スラグ形成剤を1350〜1650℃で加熱溶融してフェロバナジウムに還元する方法が特許文献6に記載されている。
非特許文献1には、五酸化バナジウムを高温で炭素を用いて還元して三酸化バナジウムV23を作製することが記載されている。
非特許文献2には、五酸化バナジウムを還元して金属バナジウムを製造する方法として、五酸化バナジウムと炭素材の混合物をアークプラズマで還元する方法が記載されているが、二酸化バナジウムVO2を製造することについては何ら開示されていない。
特開2010−163510号公報 特開2011−136873号公報 特開2011−178825号公報 特開2012−116737号公報 特開2013−71859号公報 特開2010−111941号公報
千谷利三著「新版 無機化学(中巻)」産業図書1980年p.567 宮内彰彦、岡部徹、日本金属学会誌第74巻第11号(2010)701−711
蓄熱材料として二酸化バナジウムVO2系蓄熱材料は公知のものであり、二酸化バナジウムVO2系蓄熱材料の製造方法に関し、特許文献1の製造方法では、五酸化バナジウムV25を水素−アルゴン雰囲気で熱処理してV23前駆体を形成し、更にV25及びWO3等をともに石英管に真空封入して熱処理するという二回の熱処理が必要であり、かつ二回目の熱処理では試料を石英管に封入することになるのでキログラム以上の量産製造には不向きであるという問題がある。
また、蓄熱材料用途ではないが、特許文献2〜5では二酸化バナジウムVO2を製造する方法として溶融法や湿式法が挙げられている。しかしながら、いずれの製造方法も必ずしも量産製造が容易であるというものではない。ヒドラジン、シュウ酸等の高価な還元剤を使用したりするので、低コストで製造できるような効率の良い二酸化バナジウムの製造方法ではないという問題がある。
二酸化バナジウムVO2の製造方法ではないが、特許文献6には五酸化バナジウムV25を還元する方法として、酸化鉄とスラグ形成剤も含むが炭素質還元剤を加えて1350〜1650℃で加熱溶融して還元することが記載されているが、酸化鉄とスラグ形成剤を入れずに二酸化バナジウムに還元できることやその要件についての記載も示唆もない。また、非特許文献1には、五酸化バナジウムV25を炭で還元してV23を作製できることが記載されているが、二酸化バナジウムVO2に還元できることやその要件についての記載も示唆もない。また、非特許文献2には、五酸化バナジウムV25を還元する方法として、五酸化バナジウムV25と炭素材の混合物をアークプラズマで還元して金属バナジウムを製造する方法が記載されているが、二酸化バナジウムVO2が形成できることやその要件についての記載も示唆もない。即ち、特許文献6や非特許文献1、2の方法では、十分な蓄熱特性を有するVO2系蓄熱材料を製造できないという問題がある。
本発明では、上記問題点に鑑みてなされたものであり、十分な蓄熱特性を有するVO2系蓄熱材料の製造方法であって、低コストで量産容易なVO2系蓄熱材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、二酸化バナジウムVO2の量産製造が可能な五酸化バナジウムV25の乾式還元方法、特に、五酸化バナジウムV25を炭素材で還元する方法に着目して鋭意研究を行った。従来技術では、五酸化バナジウムV25を炭素材で還元するとV23は製造できるが、二酸化バナジウムVO2は製造することができなかった。ところが、本発明者は研究の結果、五酸化バナジウムV25を炭素材で還元する際に、五酸化バナジウムV25と炭素材との混合割合を特定の範囲の混合物にして酸素分圧PO2が10-7Pa以上103Pa以下の雰囲気中で900℃を超え1542℃未満で加熱すれば、五酸化バナジウムV25を二酸化バナジウムVO2に還元でき、更に十分な蓄熱特性が得られるルチル構造のVO2系蓄熱材料を低コストで量産できることを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の要旨とするものである。
(1)五酸化バナジウムV25と炭素材とを混合する工程(a)、前記混合した混合物を加熱する工程(b)を含み、前記混合する工程(a)において、五酸化バナジウムV25と炭素材との混合割合が、五酸化バナジウムV25:炭素材中の炭素Cのモル比で1:0.41〜0.54の範囲であり、前記加熱する工程(b)において、雰囲気の酸素分圧PO2が10-7Pa以上103Pa以下であり、加熱温度が900℃を超え1542℃未満であることを特徴とするVO2系蓄熱材料の製造方法。
(2)前記五酸化バナジウムV25の平均粒径D50が0.01μm以上1000μm以下であることを特徴とする上記(1)に記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
(3)前記炭素材Cの平均粒径D50が0.01μm以上1000μm以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
(4)前記混合する工程(a)において、バナジウムサイトを置換する元素を含む置換元素原料を混合することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかひとつに記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
(5)前記混合する工程(a)が、五酸化バナジウムV25、酸化タングステンWO3、及び炭素材とを混合する工程であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかひとつに記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
(6)前記混合する工程(a)において、五酸化バナジウムV25と置換元素を含む置換元素原料とを混合した後に炭素材を加えて混合する工程であることを特徴とする上記(4)又は(5)に記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
(7)前記混合する工程(a)において使用する五酸化バナジウムV25の純度が、含有する総カチオンに対するバナジウムイオンのモル%とする純度で90モル%以上であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかひとつに記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
(8)前記混合する工程(a)において、五酸化バナジウムV25と炭素材との混合割合が、五酸化バナジウムV25:炭素材中の炭素Cのモル比で1:0.43〜0.51の範囲であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかひとつに記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
本発明によれば、十分な蓄熱特性が得られるVO2系蓄熱材料を低コストで量産容易に製造することができる。また、高品質で歩留まりよく量産製造できる。
本発明の製造方法で作製したVO2蓄熱材料のX線回折図の例を示す図である。 本発明の製造方法で作製したVO2蓄熱材料のDSC曲線の例を示す図である。
本発明における蓄熱材料とは、電子相転移する物質であって二酸化バナジウムVO2系酸化物である。例えば、組成式(V1-xx)O2で表される酸化物である。ここで、xは、0≦x<1である。Mは、4価、5価、6価のカチオンである。例えば、Nb5+、Mo6+、Ru4+、Ta5+、W6+、Re4+、Os4+、Ir4+が挙げられる。Mの種類と量xは、蓄熱温度域の可変に利用され、蓄熱材料の用途によって適宜選定されるものである。例えば、Nb5+の場合、0≦x≦0.115、Mo6+の場合、0≦x≦0.161、Ru4+の場合、0≦x≦0.150、Ta5+の場合、0≦x≦0.117、W6+の場合、0≦x≦0.065、Re4+の場合、0≦x0.096であることが好ましい。
五酸化バナジウムV25(以下単にV25と言う)の乾式還元方法としては、V25を水素や炭素で還元する方法があるが、V25を水素ガス気流中で加熱する方法では三酸化バナジウムV23(以下単にV23と言う)に還元されてしまい二酸化バナジウムVO2(以下単にVO2と言う)は得られない。途中で還元を止めてもVO2は得られず、V25とV23との混合物が得られ、その混合比率の制御は不可能である。VO2を得るためにはV25とV23との混合物を石英管に真空封入して加熱処理する真空加熱炉が必要である。この方法では、特殊な真空加熱炉が必要でコストが高くつき、連続生産ができず量産製造はできない。
その際の乾式還元方法の反応式は、下記式(1)および(2)の2段階に分けた反応が必要であると考えられる。
25+2H2→V23+2H2O(水素ガスフローで加熱)・・・(1)
25+V23→4VO2(石英管に真空封入して加熱) ・・・(2)
また、V25と炭素材Cとを配合して強加熱する還元方法でもV23に還元されてしまう。
このように、V25を単に乾式還元してもV23が生成し、直接VO2が得られないのは、V25は天然で安定な化合物、V23は比較的安定な化合物であり、VO2は不安定な化合物であるから乾式還元方法でVO2を製造することはこれまで困難とされてきた。
本発明者は、V25を炭素で還元する方法について鋭意研究したところ、V25を炭素材で還元する際に、V25と炭素材との混合割合を特定の範囲の混合物にして900℃を超え1542℃未満で加熱すれば、V25をR型VO2に直接還元でき、また、雰囲気は、酸素分圧PO2が10-7Pa以上103Pa以下の安価な気流中でよく、特殊な密閉加熱炉(真空装置)は不要で連続的に量産容易に生産可能であることを見出して本発明を完成したものである。
すなわち、本発明で、V25からVO2が得られる反応としては、下記式(3)および(4)に基づく二つの反応が一工程の加熱処理で生じているものと推定できる。
つまり、V25と炭素材とを混合して酸素分圧PO2が10-7Pa以上103Pa以下のガス(例えば、主成分がN2ガス)フローで加熱すると、式(3)の反応が生じる。
2V25+C→V25+V23+CO2・・・(3)
ついで、継続して加熱することで、
25+V23→4VO2・・・(4)
の式(4)の反応によりVO2を製造することができる。
上記(3)式の反応については、以下の経過をたどるものと説明することができる。まず、2V25+2C→V25+V23+2COで発生したCOガスがN2気流中で散逸せずに瞬時に別のV25と反応して、V25+2CO→V23+2CO2の反応でさらにV23を生成し、もう一つ別のV25を右辺・左辺に加えて全体を2で割ると、上記(3)式を得ることができる。
このようにして生成した(V25+V23)の混合物を酸素を所定範囲で含むN2気流中で加熱することで、上記(4)式に示すV25+V23→4VO2の反応により、一工程の加熱処理でVO2を生成することができたものと推定できる。
また、Cをストイキオメトリー量(化学量論量)配合することで、R型(ルチル構造)のVO2ができることを知見した。
したがって、本発明によれば、V25からVO2を製造する還元処理を一工程で、大型の真空装置等を用いることなく実施でき、量産が可能となる。
本発明の蓄熱材料の製造方法は、V25と炭素材とを混合する工程(a)、前記混合物を加熱する工程(b)を含むものである。更に、前記混合する工程(a)において、V25と炭素材(炭素C)との混合割合が、V25:炭素材中の炭素Cのモル比で1:0.41〜0.54の範囲であり、前記加熱する工程(b)において、該加熱温度が900℃を超え1542℃未満である。
本発明者は、本発明の工程(a)におけるV25と炭素材中の炭素Cとの混合割合が、上述のように特定の範囲であれば蓄熱特性に優れたVO2系蓄熱材料が得られることを見出した。混合割合が0.41未満では還元が不十分となり蓄熱特性を十分発揮できなない。一方、混合割合が0.54を超えると還元が進み過ぎたり、未反応の炭素が多く混合したりするので不適である。
25と炭素材(炭素C)との混合割合の関係は、
25+1/2C→2VO2+1/2CO2 ・・・(5)
の上記反応式(5)に基づいて考えられる。即ち、V25:炭素Cのモル比は、化学量論的に1:0.5となり、理論的には最も好ましい。実際には、前記化学量論比から外れる前述のような範囲内であれば、本発明の効果が得られるものである。より好ましい範囲は、V25:炭素Cのモル比で1:0.43〜0.51である。この範囲内であるとより大きな蓄熱量が得られる。更に好ましい範囲は、V25:炭素Cのモル比で1:0.44〜0.50である。この範囲内であると更に大きな蓄熱量が得られる。即ち、化学量論量又はそれより少なめの炭素C量とするのが最も大きな蓄熱量が得られる。
本発明の製造方法における反応は、上述のような多段階反応が起こっていると推定しているが、反応式(5)のようなV25と炭素材が反応して直接VO2まで還元反応が進んでいるとも考えることができる。その際に、副生成物として二酸化炭素CO2が発生する。
本発明者は、上記混合割合とともに本発明の加熱する工程(b)において、該加熱温度が900℃を超え1542℃未満とすることで蓄熱特性に優れたVO2系蓄熱材料が得られることを見出した。加熱温度が900℃以下では十分に反応が進まず、蓄熱特性に優れたVO2系蓄熱材料が得られない。より好ましくは1000℃以上である。一方、加熱温度が1542℃以上では還元が進みすぎたり、酸素欠損が生じたりして蓄熱特性に優れたVO2系蓄熱材料が得られない。特に、1400℃以下である方が加熱するエネルギーや設備のコストが抑えられるのでより好ましく、更に好ましくは1300℃以下である。
本発明の工程(b)における雰囲気は、不活性ガスを主体とするが、若干の酸素を含有する方が好ましい。製造する蓄熱材料の品質についても、雰囲気の酸素分圧が低すぎると、むしろ生成する酸化バナジウムの平均酸素レベルが若干低い(例えばVO1.93程度の)ものが形成される。これに対して、不活性ガスを主体とし、酸素分圧PO2が10-7Pa以上となる雰囲気とすれば、得られる蓄熱材料のVO2比率を十分に高いものとすることができる。雰囲気の酸素分圧PO2が10-2Pa以上であればより好ましい。雰囲気の酸素分圧PO2が1Pa以上であればさらに好ましい。一方、雰囲気中の酸素分圧が高くなると、生成する酸化バナジウムの平均酸素レベルが高くなり(例えばVO2.15程度)、VO2比率が低減することとなる。そこで本発明では、酸素を含む雰囲気の酸素分圧を変更して工程(b)の加熱を行った。その結果、雰囲気の酸素分圧PO2が103Pa以下であれば、問題なくVO2系蓄熱材量を製造できることが明らかとなった。雰囲気の酸素分圧PO2が102Pa以下であればより好ましい。雰囲気の酸素分圧PO2が10Pa以下であればさらに好ましい。雰囲気における酸素以外のガス主成分としては、窒素N2、アルゴンAr、ヘリウムHe、二酸化炭素CO2等の不活性ガスを好適に用いることができる。
本発明における炭素材とは、例えば、石炭、木炭、コークス、天然黒鉛(天然グラファイト)、人造黒鉛(人造グラファイト)、活性炭、アセチレンブラック、カーボンブラック、等である。また、各種の有機物を炭化して得られる炭素材も使用できる。前記炭素材としては、チャー(残渣)の量が少ない方が、得られる蓄熱材料に含まれる不純物が少なくなるのでより好ましい。具体的なチャーの量は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以下である。よって、上述のV25:炭素Cのモル比における炭素Cは、炭素材に含有する炭素Cであり、炭素C以外のチャー等の不純物を除いたものである。
工程(a)において混合する五酸化バナジウムV25と炭素材Cそれぞれの平均粒径に好適範囲が存在する。ここでは平均粒径の定義としてD50を用いる。D50とは、メジアン径を意味し、粉体を当該粒径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側の体積(質量)が等量となる径のことを意味する。島津製レーザ回折式粒子径分布測定装置SALD−2000Jを用いて評価することができる。五酸化バナジウムV25の平均粒径D50が0.01μm以上1000μm以下が好ましい。1μm以上100μm以下がより好ましい。炭素材Cの平均粒径D50が0.01μm以上1000μm以下が好ましい。1μm以上100μm以下がより好ましい。五酸化バナジウムV25と炭素材Cのいずれか又は両方について上記好ましい粒径範囲とすることにより、反応ムラが少なくなるのでより好ましい。これは、原料V25の融点が690℃付近であり、混合粉の粒径が大きすぎると昇温過程で未反応V25が液化して発生するCO2ガスで発泡する場合がある。しかしながら、粒径範囲を上記好適範囲上限以下とするとV25の融点までに反応が進み、V25の液化を防いだり液化V25の発生量を低減できる。このようなことから、五酸化バナジウムV25と炭素材Cのいずれか又は両方の粒径を上記好適範囲上限以下とするのが好ましく、粒径が好適範囲上限を超えると前記理由で反応ムラが生じ易くなる場合がある。一方、粒径を小さくする方がより好ましいものであるが、上記好適範囲の下限未満とすると製造時のハンドリングが難しくなり、また効果は飽和する。
本発明の工程(a)における混合する方法は、特に限定しないが、湿式、乾式のいずれでもよく、乳鉢混合、振動ミル、ボールミル、遊星ボールミル、ビーズミル、ドラムミキサー、ピンミル、V型ミキサー、ロッキングミキサー、タンブラーミキサー、スーパーミキサー、等の既存の方法であればどのような方法でもよい。
本発明におけるV25は、含有する総カチオンに対するバナジウムイオンのモル%とする純度で90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上である。尚、上限純度は100%となる。
本発明の工程(b)における加熱する方法は、該混合物を所定の温度に加熱できる方法であればどのような方法でもよく、例えば、電気ヒータ加熱、マイクロ波加熱、ガス燃焼加熱、赤外線加熱等が挙げられる。加熱時間は反応が完了する時間であればよく、特に限定するものではないが、加熱温度に応じて3〜13時間加熱するのが好ましく、より好ましくは4〜12時間である。すなわち、3時間未満では十分にVO2を生成させることができず、13時間を超えると熱損失になるだけで好ましくない。
前記混合する工程(a)において、バナジウムサイトを置換する元素を含む置換元素原料をV25と混合することによって、蓄熱温度域を可変にできる。前記置換元素の種類と置換量を設定することで所望の蓄熱温度にすることができる。前記置換元素Mとしては、公知の4価、5価、6価のカチオンが挙げられる。例えば、Nb5+、Mo6+、Ru4+、Ta5+、W6+、Re4+、Os4+、Ir4+である。前記置換元素Mの中でも、蓄熱温度の可変し易さの観点からW6+が好ましい。バナジウム置換元素Mの原料としては、Mを含む酸化物、炭酸塩、水酸化物等が使用できる。
バナジウム置換元素Mの原料を混合するには、V25及び炭素材に該原料を混合すればよいが、より好ましくは、該原料を予めV25と混合し、該混合物と炭素材を混合する。置換元素Mの原料を使用する場合には、組成式(V1-xx)O2で表される酸化物として蓄熱材料を作製する。置換元素Mの価数が4価の場合は、上記(5)式の反応で考える炭素材量とすれば良い。即ち、組成式(V4+ 1-x4+ x)O2である場合、置換元素Mに対してVが1−xとなる割合で原料V25を使用するが、使用する原料V25の量に対して炭素材はV25:炭素Cのモル比で化学量論的に1:0.5となり、上述のような範囲内が好ましい。
一方、置換元素Mの価数が4価以外の5価や6価の場合には、V5+イオンの還元が一部V4+イオンからV3+イオンまで進み、(V4+ 1-2x3+ x5+ x)O2、(V4+ 1-3x3+ 2x6+ x)O2の組成式となり、これを考慮した炭素材の量となる。即ち、組成式(V4+ 1-2x3+ x5+ x)O2の場合、置換元素Mに対してVは1−2x+x=1−xの割合であるが、V5+イオンの還元がV4+イオンだけでなく一部はV3+イオンまで還元することになるので見かけ上Mに対するVは1−2x+2x=1の割合であるとして炭素材の化学量論的必要量を決めることになる。よって、置換元素Mの添加量だけVの割合が少なくなるが、炭素材の量は置換元素Mが添加されていても見かけ上VO2であるとしてV25:炭素Cのモル比を考えればよい。組成式(V4+ 1-3x3+ 2x6+ x)O2の場合も同様であり、置換元素Mに対してVは1−3x+2x=1−xの割合であるが、V5+イオンの還元がV4+イオンだけでなく一部はV3+イオンまで還元することになるので見かけ上Mに対するVは1−3x+2×2x=1+xの割合であるとして炭素材の化学量論的必要量を決めることになる。
前述のバナジウム置換元素Mの原料の中でも、少量で蓄熱温度を大きく可変できること及び原料が扱い易いことという点から、酸化タングステンWO3が好ましい。よって、前記混合する工程(a)が、V25、WO3、及び炭素材とを混合するのが好ましい。
また、前記混合する工程(a)において、V25と置換元素Mを含む置換元素原料とを混合した後に炭素材を加えて混合するのがより好ましい。即ち、置換元素Mを含む置換元素原料は、V25に対して微量であるのでV25近くにある方が効率的に置換元素Mイオンを拡散できるので、その為には予めV25と置換元素Mを含む置換元素原料とを混合しておく方がよい。
前記混合する工程(a)において使用するV25の純度は高い方が望ましいが、少なくとも90%以上であるのが好ましい。V25の純度が90%以上であると、より大きな蓄熱量が得られる。V25の純度としては、95%以上、さらに好ましくは99%以上である。また、不純物にFeイオンが多く含まれると大きな蓄熱量が得られない場合がある。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。表1〜表7において、本発明から外れる数値・項目にアンダーラインを付している。
(実施例1)
25及び炭素材を表1の各割合になるように計量し、合計で20gをクロム鋳鋼ベッセルに入れて1分間振動ミルにて乾式混合した。得られた各混合粉を石英ボートに入れ、管状雰囲気焼成炉にて表1の条件で焼成した。工程(b)のガス雰囲気としては、表1に示す「加熱雰囲気」の「主成分」に記載したガスに酸素を混合し、同じく表1の「酸素分圧」に示す酸素分圧として供給した。酸素分圧の測定にはモトヤマ酸素分圧計を用いた。V25及び炭素材の平均粒径D50は、島津製レーザ回折式粒子径分布測定装置SALD−2000Jを用いて評価した。V25の平均粒径D50は1〜100μmの範囲内、炭素材の平均粒径D50は1〜100μmの範囲内であった。
焼成して得られた試料は、CuKαのX線源の粉末X線回折(XRD)装置((株)リガク製 RINT−2100を用いて粉末X線回折パターンを測定して生成相の同定を行った。その例を図1に示した。図1において、縦軸は回折強度、横軸は回折角度(2θ)である。粉末X線回折パターンの測定結果から、JCPDS(Joint Comittee on Powder Diffraction Standard)カードにおける43−1051のパターンによく一致するルチル構造(正方晶系)のVO2が生成していることが確認できた。
また、蓄熱量と蓄熱温度(転移温度)は、示差走査熱量(DSC)測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製EXSTAR6000シリーズDSC6200)を用いて測定した。その例を図2に示した。図2はVO2の測定結果である。縦軸は示差走査熱量、横軸は温度である。一般に示差走査熱量は、基準物質と試料に所定の熱量を与えた時の温度差、又は両者を所定の温度にするために要した熱量の差を表すものである。図2は基準物質と試料に所定の熱量を与えた時の温度差を測定したものである。蓄熱量は転移熱量であり、DSCの転移ピークの面積から算出する。蓄熱温度は転移温度であり、DSCの転移ピークから図2に示したようにして求める。
表1の「生成相」欄には、VO2単相:「S」、VO2相の最強ピーク(2θで28度付近)に対する不純物相(異相)ピークの面積比が0.1以下である場合:「A」、前記ピーク面積比が0.1を超え0.2以下の場合:「C」、前記ピーク面積比が0.2を超える場合:「×」として表している。S、A、Cは本発明の良好範囲内である。
表1の「蓄熱量」欄には、蓄熱量が50J/g以上の場合:「S」、蓄熱量が40J/g以上50J/g未満の場合:「A」、蓄熱量が20J/g以上40J/g未満の場合:「C」、蓄熱量が20J/g未満の場合:「X」として表している。S、A、Cは本発明の良好範囲内である。
表1に示しているように、No.1−1及びNo.1−13は、V25:炭素Cのモル比が1:0.41〜0.54を超えていたので十分な蓄熱量が得られなかったが、No.1−2〜No.1−12は本発明の範囲内であり十分な蓄熱量が得られた。No.1−14は、熱処理温度が低すぎるために十分な蓄熱量が得られず、一方、No.1−19は、熱処理温度が高すぎて溶融してしまった。No.1−15〜No.1−18は本発明の範囲内であり十分な蓄熱量が得られた。No.1−20〜No.1−22は、熱処理時間を変えたものであるが、いずれも十分な蓄熱量が得られた。No.1−2〜No.1−4、No.1−23〜No.1−28は、熱処理雰囲気の主成分を窒素とし、酸素分圧を変化させたものである。酸素分圧が本発明範囲内にあるNo.1−2〜No.1−4、No.1−23〜No.1−27は、本発明範囲内の蓄熱材料を得ることができた。No.1−28は雰囲気がは空気であり、雰囲気ガスの酸素分圧が高すぎたため、VO2相は得られなかった。一方、熱処理雰囲気のガス主成分をアルゴンにしたNo.1−29でも十分な蓄熱量が得られた。No.1−30〜No.1−32にあるように、V25の純度が高くなるほどより優れた蓄熱量を示した。No.1−33及びNo.1−34では、炭素材を木炭やカーボンブラックにしても十分な蓄熱量が得られた。熱処理の加熱温度を本発明範囲内で変化させたNo.1−35、1−36も良好な結果が得られた。尚、蓄熱温度(相転移温度)は、蓄熱量が測定できたいずれの試料も64℃〜66℃の範囲内であった。
Figure 0006632455
(実施例2)
25、炭素材、置換元素原料を表2−1〜表2−3の各割合になるように計量し、合計で20gをクロム鋳鋼ベッセルに入れて1分間振動ミルにて乾式混合した。
得られた各混合粉をアルミナボートに入れ、管状雰囲気焼成炉にて表2−1〜表2−3の条件で焼成した。工程(b)のガス雰囲気としては、表2に示す「加熱雰囲気」の「主成分」に記載したガスに酸素を混合し、同じく表2の「酸素分圧」に示す酸素分圧として供給した。V25の平均粒径D50は1〜100μmの範囲内、炭素材の平均粒径D50は1〜100μmの範囲内であった。
得られた試料は、実施例1と同様の方法で評価した。但し、生成相はV1-xx2である。尚、Mは置換元素を示す。尚、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法で生成物の組成分析をしているが、生成物の組成は表2−1〜表2−3の仕込み組成と一致している。
表2−1〜表2−3に示しているように、No.2−1、No.2−11、No.2−12、No.2−22、No.2−23、No.2−33、No.2−34、No.2−44は、V25:炭素Cのモル比が1:0.41〜0.54の範囲内でないので十分な蓄熱量が得られなかったが、No.2−2〜No.2−10、No.2−13〜No.2−21、No.2−24〜No.2−32、No.2−35〜No.2−43、No.2−45〜No.2−47は本発明の範囲内であり十分な蓄熱量が得られた。No.2−48は、熱処理温度が低すぎるために十分な蓄熱量が得られず、一方、No.2−53は、熱処理温度が高すぎて溶融してしまった。No.2−49〜No.2−52は本発明の範囲内であり十分な蓄熱量が得られた。No.2−54〜No.2−56は、熱処理時間を変えたものであるが、いずれも十分な蓄熱量が得られた。No.2−57〜No.2−64は、熱処理雰囲気の主成分を窒素とし、酸素分圧を変化させたものである。酸素分圧が本発明範囲内にあるNo.2−57〜No.2−63は、本発明範囲内の蓄熱材料を得ることができた。No.2−64は、熱処理雰囲気の酸素分圧が本発明上限を超えており、V1-xx2相は得られなかった。一方、熱処理雰囲気のガス主成分をアルゴンにしたNo.2−65でも十分な蓄熱量が得られた。No.2−66〜No.2−68にあるように、V25の純度が高くなるほどより優れた蓄熱量を示した。No.2−69及びNo.2−70では、炭素材を木炭やカーボンブラックにしても十分な蓄熱量が得られた。
また、置換元素によって蓄熱温度(転移温度)が変化した。
Figure 0006632455
Figure 0006632455
Figure 0006632455
(実施例3)
25、炭素材(天然黒鉛)、置換元素原料(Nb酸化物、Mo酸化物)を表3の各割合になるように計量し、合計で20gをクロム鋳鋼ベッセルに入れて1分間振動ミルにて乾式混合した。得られた各混合粉をアルミナボートに入れ、管状雰囲気焼成炉にて表3の条件で焼成した。焼成におけるガス雰囲気としては、表3に示す「加熱雰囲気」の「主成分」に記載したガスに酸素を混合し、同じく表3の「酸素分圧」に示す酸素分圧として供給した。V25の平均粒径D50は1〜100μmの範囲内、炭素材の平均粒径D50は1〜100μmの範囲内であった。
得られた試料は、実施例1と同様の方法で評価した。但し、生成相はV1-xx2である。尚、Mは置換元素を示す。尚、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法で生成物の組成分析をしているが、生成物の組成は表3の仕込み組成と一致している。
表3に示しているように、W以外の置換元素(Nb、Mo)についても表3の置換元素原料を用いて本発明の製造方法によれば良好な特性を有する蓄熱材料を作製できた。
Figure 0006632455
(実施例4)
25、炭素材(天然黒鉛)、置換元素原料(WO3)を表4の各割合になるように合計で20gになるように計量し、まず、V25と置換元素原料をクロム鋳鋼ベッセルに入れて1分間振動ミルにて乾式混合した。次に炭素材を加えて更に1分間振動ミルにて乾式混合した。得られた各混合粉をアルミナボートに入れ、管状雰囲気焼成炉にて表4の条件で焼成した。焼成におけるガス雰囲気としては、表4に示す「加熱雰囲気」の「主成分」に記載したガスに酸素を混合し、同じく表4の「酸素分圧」に示す酸素分圧として供給した。V25の平均粒径D50は1〜100μmの範囲内、炭素材の平均粒径D50は1〜100μmの範囲内であった。
得られた試料は、実施例1と同様の方法で評価した。但し、生成相はV1-xx2である。尚、Mは置換元素を示す。尚、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法で生成物の組成分析をしているが、生成物の組成(V0.9900.0102)は表4の仕込み組成と一致している。
表4に示すように、V25と置換元素原料を予め混合する方が熱処理条件を短時間にしても優れた特性を有する蓄熱材料が得られた。
Figure 0006632455
(実施例5)
25と炭素材、又は、V25と炭素材(天然黒鉛)と置換元素原料を表5の各割合になるように合計で10kgになるように計量し、ドラムミキサーで3時間混合した後、ピンミルを通して乾式混合した。
得られた各混合粉を匣鉢に2kgずつ入れ、5つの匣鉢を箱型雰囲気焼成炉内に積み上げて表5の条件で焼成した。焼成におけるガス雰囲気としては、表5に示す「加熱雰囲気」の「主成分」に記載したガスに酸素を混合し、同じく表5の「酸素分圧」に示す酸素分圧として供給した。V25の平均粒径D50は1〜100μmの範囲内、炭素材の平均粒径D50は1〜100μmの範囲内であった。
得られた試料は、実施例1と同様の方法で評価した。但し、生成相はV1-xx2である。尚、Mは置換元素を示す。尚、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法で置換元素原料を添加した生成物の組成分析をしているが、生成物の組成(V0.9950.0052)は表5の仕込み組成と一致している。
表5に示すように、本発明の製造方法によれば製造量を増やしても良好な特性を有する蓄熱材料が得られることが分かる。
Figure 0006632455
(実施例6)
酸化ルテニウムRuO4、酸化タンタルTa25、酸化レニウムReO3、酸化オスニウムOsO4、酸化イリジウムIrO2の各置換元素原料を用いて、実施例3と同様に蓄熱材料を作製した。上記実施例と同様な結果が得られ、本発明の製造方法によれば良好な特性を有する蓄熱材料を作製できることを確認できた。
(実施例7)
前記実施例1と同様の試験を行い、V25の平均粒径D50、炭素材の平均粒径D50について、表6に示す条件のものを用いた。いずれも、本発明の良好な蓄熱材料を得ることができた。No.6−1〜No.6−4はV25の平均粒径D50、炭素材の平均粒径D50いずれも本発明の好適範囲にある。No.6−5はV25の平均粒径D50、炭素材の平均粒径D50いずれも本発明の好適範囲の上限を外れたため、熱処理中の発泡が見られた。混合粉の粒径が好適範囲上限を超えたため、昇温過程で未反応V25が液化して発生するCO2ガスで発泡したものと推定される。
Figure 0006632455
(実施例8)
前記実施例2と同様の試験を行い、V25の平均粒径D50、炭素材の平均粒径D50について、表7に示す条件のものを用いた。いずれも、本発明の良好な蓄熱材料を得ることができた。
Figure 0006632455
本発明の製造方法によって得られた蓄熱材料は、保冷剤、保温材、エネルギー貯蔵、排熱利用等の用途において低コストで好適に使用できる。また、サーモクロミック材料やその原料としても使用できる。

Claims (8)

  1. 五酸化バナジウムV25と炭素材Cとを混合する工程(a)、
    前記混合した混合物を加熱する工程(b)を含み、
    前記混合する工程(a)において、五酸化バナジウムV25と炭素材との混合割合が、五酸化バナジウムV25:炭素材中の炭素Cのモル比で1:0.41〜0.54の範囲であり、
    前記加熱する工程(b)において、雰囲気の酸素分圧PO2が10-7Pa以上103Pa以下であり、加熱温度が900℃を超え1542℃未満であることを特徴とするVO2系蓄熱材料の製造方法。
  2. 前記五酸化バナジウムV25の平均粒径D50が0.01μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
  3. 前記炭素材Cの平均粒径D50が0.01μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
  4. 前記混合する工程(a)において、バナジウムサイトを置換する元素を含む置換元素原料を混合することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
  5. 前記混合する工程(a)が、五酸化バナジウムV25、酸化タングステンWO3、及び炭素材とを混合する工程であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
  6. 前記混合する工程(a)において、五酸化バナジウムV25と置換元素を含む置換元素原料とを混合した後に炭素材を加えて混合する工程であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
  7. 前記混合する工程(a)において使用する五酸化バナジウムV25の純度が、含有する総カチオンに対するバナジウムイオンのモル%とする純度で90モル%以上であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
  8. 前記混合する工程(a)において、五酸化バナジウムV25と炭素材との混合割合が、五酸化バナジウムV25:炭素材中の炭素Cのモル比で1:0.43〜0.51の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のVO2系蓄熱材料の製造方法。
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