JP6631321B2 - ニッケル複合水酸化物とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池 - Google Patents

ニッケル複合水酸化物とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池 Download PDF

Info

Publication number
JP6631321B2
JP6631321B2 JP2016038073A JP2016038073A JP6631321B2 JP 6631321 B2 JP6631321 B2 JP 6631321B2 JP 2016038073 A JP2016038073 A JP 2016038073A JP 2016038073 A JP2016038073 A JP 2016038073A JP 6631321 B2 JP6631321 B2 JP 6631321B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
positive electrode
active material
cobalt
electrode active
nickel composite
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016038073A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017154916A (ja
Inventor
充 山内
充 山内
泰 伊藤
泰 伊藤
小向 哲史
哲史 小向
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority to JP2016038073A priority Critical patent/JP6631321B2/ja
Publication of JP2017154916A publication Critical patent/JP2017154916A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6631321B2 publication Critical patent/JP6631321B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Description

本発明は、ニッケル複合水酸化物とその製造方法、二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯機器の普及にともない、高いエネルギー密度を有し、小型かつ軽量な二次電池の開発が強く望まれている。このような二次電池として、非水系電解質二次電池が知られている。
非水系電解質二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池が挙げられる。リチウムイオン二次電池は、正極活物質としてリチウム金属複合酸化物が使用される。リチウム金属複合酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)などが知られている。
リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)は、合成が比較的容易であり、かつ、リチウムコバルト複合酸化物を正極活物質に用いたリチウムイオン二次電池において、4V級の高い電圧が得られる。そのため、リチウムコバルト複合酸化物は、高いエネルギー密度を有する二次電池を実用化させるための正極材料として実用化されている。
しかしながら、リチウムコバルト複合酸化物は、原料に希産で高価なコバルトを含む化合物を用いるため、正極材料および二次電池のコストアップの原因となっている。リチウムコバルト複合酸化物を用いたリチウムイオン二次電池は、その容量あたりの単価がニッケル水素電池の約4倍であるため、適用可能な用途がかなり限定される。よって、リチウムイオン二次電池の用途をさらに拡大する観点からは、正極活物質のコストを下げ、より安価なリチウムイオン二次電池の製造を可能とする必要がある。
リチウムコバルト複合酸化物に代替できる正極活物質として、例えば、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)などが挙げられる。リチウムニッケル複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物と同様の高い電気電圧を示すとともに、リチウムコバルト複合酸化物よりも低い電気ポテンシャルを示し、電解液の酸化による問題が問題になりにくいため、二次電池の高容量を可能とする正極活物質として期待されている。しかしながら、リチウムニッケル複合酸化物は、低い充電率(低SOC)において、出力特性を担保することが難しい。
例えば、特許文献1には、実験式:LiM’Ni1−yM’’を有する核、および上記核よりも大なるコバルト/ニッケル比を有する被覆を有する組成物が提案され、熱安全性とサイクル効率に優れるとしている。しかしながら、特許文献1では、出力に関する記載はなく、また組成傾斜量についての記載もない。また、二次電池の正極として、出力特性とサイクル特性とのより高いレベルでの両立が求められている。
特表2004−533104号号公報 特開2011−116580号公報 特開2012−256435号公報
本発明は、上述のような問題に鑑みて、高い出力特性と優れたサイクル特性の両立が可能な非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体であるニッケル複合水酸化物とを提供することを目的とする。また、そのニッケル複合水酸化物を高い生産性で容易に製造する方法を提供することを目的とする。また、そのニッケル複合水酸化物を用いた非水系電解質二次電池用正極活物質及び非水系電解質二次電池の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、非水系電解質二次電池用正極活物質の出力特性とサイクル特性の両立について鋭意検討したところ、正極活物質を傾斜組成として表面近傍のコバルト含有量を内部より多くすることで、高い充放電容量と優れたサイクル特性を両立できるとの知見を得た。さらに、バッチ晶析法によって、二次粒子内部の組成を制御して得られる粒子表面近傍のコバルト含有量の多いニッケル複合水酸化物を用いるとともに、特定の条件で焼成することにより、上述の傾斜組成を有する正極活物質が得られるとの知見を得て、本発明を完成したものである。
本発明の第1の態様では、複数の一次粒子が互いに凝集した二次粒子からなり、一般式(1):Ni1−x1−y1−z1Cox1Mny1z1(OH)(前記式(1)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金賊元素、族元素、及び13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x1は0.15≦x1≦0.25、y1は0.15≦y1≦0.25、z1は0≦z1≦0.1の範囲内にあり、0.3≦x1+y1+z1≦0.5を満たす。)で表されるニッケル複合水酸化物であって、二次粒子の粒子表面から粒子内部にかけてコバルトリッチ層を有し、該コバルトリッチ層は、一般式(2):Ni1−x2−y2−Z2Cox2Mny2z2(OH)(前記式(2)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x2及びy2は、x2=1及びy2=0を満たす、又は、x2/((1−x2−y2)+y2)≧1を満たし、zは0≦z2≦0.1の範囲内である。)で表され、かつ、その厚さが前記二次粒子の直径に対して10%以上20%以下である、ニッケル複合水酸化物が提供される。
また、上記ニッケル複合水酸化物は、レーザー回折散乱法によって測定された粒度分布において、体積平均粒径(Mv)が4μm以上10μm以下であり、累積90体積%径(D90)及び累積10体積%径(D10)と、体積平均粒径(Mv)とによって算出される、粒径のばらつき指数を示す[(D90−D10)/Mv]が、0.60以下であることが好ましい。
本発明の第2の態様では、上記のニッケル複合水酸化物の製造方法であって、ニッケル塩、コバルト塩及びマンガン塩の少なくとも1つを含む第1の混合水溶液を、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気中で、液温25℃基準でpH値が12.5以上となるように調整して核の生成を行う核生成工程と、核生成工程において形成された核を含有するスラリーを、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気中で、液温25℃基準でpH値を10.5以上12.5以下の範囲、かつ核生成工程におけるpH値より低くなるように調整し、スラリーに、第1の混合水溶液を供給して、粒子成長を行う粒子成長工程と、を含み、粒子成長工程において、第1の混合水溶液を供給した後、コバルトリッチ層中のNi、Co、Mn及びMのモル比と同様のモル比でそれぞれの金属塩を含む第2の混合水溶液に切り替えて供給することを含む、ニッケル複合水酸化物の製造方法が提供される。
また、粒子成長工程において、スラリーのアンモニア濃度を5g/L以上20g/L以下に調整することが好ましい。
本発明の第3の態様では、複数の一次粒子が互いに凝集した二次粒子からなり、一般式(3):Li1+uNi1−x1−y1−z1Cox1Mny1z1(前記式(3)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、uは−0.05≦u≦0.50、xは0.15≦x≦0.25、yは0.15≦y≦0.25、zは0≦z≦0.1の範囲内にあり、0.3≦x+y+z≦0.5を満たす。)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成された非水系電解質二次電池用正極活物質であって、二次粒子の粒子表面から粒子内部にかけてコバルトリッチ層を有し、該コバルトリッチ層は、一般式(4):Li1+uNi1−x2−y2−z2Cox2Mny2z2(前記式(4)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、uは−0.05≦u≦0.50で表され、x2及びy2は、x2=1及びy2=0を満たす、又は、x2/((1−x2−y2)+y2)≧1を満たし、zは0≦z2≦0.1の範囲内である。)で表され、かつ、その厚さが前記二次粒子の直径の10〜20%であり、X線回折測定による(003)面のピークから算出した結晶子径が60nm以上90nm以下である、非水系電解質二次電池用正極活物質が提供される。
また、上記非水系電解質二次電池用正極活物質は、レーザー回折散乱法によって測定された粒度分布において、体積平均粒径(Mv)が4μm以上10μm以下であり、累積90体積%径(D90)及び累積10体積%径(D10)と、体積平均粒径(Mv)とによって算出される、粒径のばらつき指数を示す[(D90−D10)/Mv]が、0.60以下であることが好ましい。
本発明の第4の態様では、一般式(5):Li1+uNi1−x1−y1Cox1Mny1z1(式(5)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、uは−0.05≦u≦0.50、x1は0.15≦x1≦0.25、y1は0.15≦y1≦0.25、z1は0≦z1≦0.1であり、0.3≦x1+y1+z1≦0.5を満たす。)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成された非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法であって、上記ニッケル複合水酸化物とリチウム化合物とを混合してリチウム混合物を形成することと、リチウム混合物を、酸化性雰囲気中において750℃以上900℃以下の温度で焼成することと、を含む非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
本発明の第4の態様では、上記正極活物質から構成された正極を備える非水系電解質二次電が提供される。
本発明は、電池の正極に用いた際に高い出力特性と優れたサイクル特性を示す非水系電解質二次電池用正極活物質が提供される。また、本発明は、上記正極活物質の製造方法であって、工業的規模でも容易で、生産性が高く、工業的価値がきわめて高い製造方法を提供する。
図1は、実施形態のニッケル複合水酸化物の一例を示す模式図である。 図2は、実施形態のニッケル複合水酸化物粒子断面のSEM写真、及び各金属(Ni、Co、Mn)のEDXマッピング図の一例を示す図である。 図3は、実施形態のニッケル複合水酸化物の製造方法の一例を示すフローチャートである。 図4は、実施形態の正極活物質粒子断面のSEM写真、及び各金属(Ni、Co、Mn)のEDXマッピング図の一例を示す図である。 図5は、実施形態の正極活物質の製造方法の一例を示すフローチャートである。 図6は、実施例で用いた評価用コイン型電池(2032型)を示す模式図である。 図7は、インピーダンス評価の測定例と解析に使用した等価回路の概略説明図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。また、図面においては、各構成をわかりやすくするために、一部を強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造または形状、縮尺等が異なっている場合がある。
[ニッケル複合水酸化物]
図1は、本実施形態に係るニッケル複合水酸化物1の一例を示す模式図である。図1に示すように、ニッケル複合水酸化物1は、二次粒子の粒子表面から粒子内部にかけてコバルトリッチ層2を有する。コバルトリッチ層2の内部には、中心部3が配置される。ニッケル複合水酸化物1は、非水系電解質二次電池用正極活物質(以下、「正極活物質」ともいう。)の前駆体として好適に用いられる。
ニッケル複合水酸化物1は、複数の一次粒子が互いに凝集した二次粒子(不図示)からなり、その組成(2次粒子全体)は、一般式(1):Ni1−x1−y1−z1Cox1Mny1z1(OH)(前記式(1)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x1は0.15≦x1≦0.25、y1は0.15≦y1≦0.25、z1は0≦z1≦0.1の範囲内にあり、0.3≦x1+y1+z1≦0.5を満たす。)で表される。
ニッケル複合水酸化物1の粒子内部の組成は、これを用いて得られる正極活物質の粒子内部の組成に強く影響する。特に、後述するように、焼成工程において、その条件を制御することで、ニッケル複合水酸化物1の粒子内部の組成と粒度分布を正極活物質まで維持することが可能である。したがって、ニッケル複合水酸化物1の粒子内部の組成が正極活物質の粒子内部と同様になるように制御することが重要である。
ニッケル複合水酸化物1は、後述するように、リチウム化合物と混合した後(ステップS3)、焼成されて(ステップS4)、正極活物質が形成される。ニッケル複合水酸化物1の組成は、正極活物質まで継承される。したがって、ニッケル複合水酸化物1全体の組成は、得ようとする正極活物質のリチウム以外の金属の組成と同様とすることができる。
コバルトリッチ層2は、一般式(2):Ni1−x2−y2−Z2Cox2Mny2z2(OH)(前記式(2)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。)で表され、式(2)中のx2及びy2は、x2=1及びy2=0を満たす、又は、x2/((1−x2−y2)+y2)≧1を満たす。これにより、ニッケル複合酸化物1を前駆体とする正極活物質を用いた二次電池は、高い出力特性を有する。また、z2は0≦z2≦0.1の範囲内である。なお、上記式(2)中、x2は、0.5≦x2≦1の範囲である。
コバルトリッチ層2は、例えば、Co以外の金属として、Ni、Mn及びMの少なくとも一種を含んでもよい。この場合、コバルトリッチ層2は、CoをNiとMnの合計(モル)の1倍以上含む。また、コバルトリッチ層2は、例えば、金属としてCoを単独で含み、その組成がCo(OH)であってもよい。この場合、上記式(2)中、x2+y2+Z2=0となる。なお、コバルトリッチ層2の組成は、例えば、走査型電子顕微鏡の断面観察におけるエネルギー分散型X線分析(EDX)の定量分析により求めることができる。また、コバルトリッチ層の組成は、例えば、後述する粒子成長工程(ステップS2)における、第2の混合液の金属組成を制御することにより、所望の範囲に調整できる。
また、コバルトリッチ層2は、その厚さtが前記二次粒子の直径dに対して10%以上20%以下である。なお、コバルトリッチ層の厚さtは、EDXによる組成マッピングや線分析により求めることができる。また、二次粒子の直径dは、走査型電子顕微鏡を用いた二次粒子の断面観察により求めることができる。コバルトリッチ層2の厚さや二次粒子の直径dは、二次粒子間で変動する場合があるため、複数の二次粒子を測定して平均値として求めることが好ましく、例えば、任意の10個の二次粒子を測定した場合の平均値から求めることができる。
図2は、ニッケル複合水酸化物1断面の金属(Ni、Co及びMn)のエネルギー分散型X線分析(EDX)マッピング図の一例を示す図である。図2に示されるように、ニッケル複合水酸化物1は、その粒子表面から粒子内部にかけてコバルトが豊富に含まれるコバルトリッチ層2を有する。
ニッケル複合水酸化物の粒子内部の組成および構造は、正極活物質の粒子内部の組成及び構造に影響する。このため、コバルトリッチ層2の組成及び構造を上記範囲とすることにより、得られる正極活物質においても、リチウムを含むコバルトリッチ層が形成され、電池の正極に用いた際に高い出力特性と優れたサイクル特性を示す。
ニッケル複合水酸化物1は、レーザー回折散乱法によって測定された粒度分布において、体積平均粒径(Mv)が4μm以上10μm以下であることが好ましい。ニッケル複合水酸化物1の体積平均径が上記範囲である場合、得られる正極活物質の体積平均粒径を4μm以上10μm以下の範囲に制御することができ、この正極活物質を用いた電池は、高い充填密度と優れた出力特性とを両立させることができる。
ニッケル複合水酸化物1は、レーザー回折散乱法によって測定された粒度分布において、累積90体積%径(D90)及び累積10体積%径(D10)と、体積平均粒径(Mv)とによって算出される、粒径のばらつき指数を示す[(D90−D10)/Mv]が、0.60以下であることが好ましい。ニッケル複合水酸化物1のばらつき指数が上記範囲である場合、微粒子や粗大粒子の混入が少なく、得られる正極活物質のサイクル特性や出力特性を向上させることができる。正極活物質の粒度分布は、ニッケル複合水酸化物1の影響を強く受けるため、ニッケル複合水酸化物1のばらつき指数が0.60を超え、粒度分布が広い状態である場合、正極活物質にも微粒子又は粗大粒子が存在するようになることがある。完全に粒径のばらつきを抑制することは困難であるため、現実的なばらつき指数の下限は、0.30以上程度である。
上記[(D90−D10)/Mv]において、D10は、各粒径における粒子数を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の10%となる粒径を意味している。また、D90は、同様に粒子数を累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径を意味している。体積平均粒径Mvや、D90及びD10は、レーザー光回折散乱式粒度分析計を用いて測定することができる。
[ニッケル複合水酸化物の製造方法]
図3は、本実施形態に係るニッケル複合水酸化物の製造方法の一例を示すフローチャートである。図3のフローチャートを説明する際に、適宜図1を参照する。ニッケル複合水酸化物の製造方法は、少なくともニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩の少なくとも一つを含有する水溶液と、中和剤および錯化剤とを、撹拌しながら反応容器に供給して、晶析反応によりニッケル複合水酸化物1を製造する。図3に示すように、ニッケル複合水酸化物1の製造方法は、2段階の晶析工程を含む。すなわち、二次粒子に成長する核の生成を行う核生成工程(ステップS1)と、核生成工程で得られた核を成長させる粒子成長工程(ステップS2)とを含む。
なお、このような2段階のバッチ晶析工程を含むニッケル複合水酸化物の製造方法については、例えば、特許文献2、特許文献3などに開示されており、詳細な条件についてはこれらの文献を参照して条件を適宜、調整することができる。ニッケル複合酸化物の製造方法は、2段階の晶析工程を含むことにより、粒度分布が狭く均一な粒子径を有する複合水酸化物を得ることができる。なお、以下の説明は、ニッケル複合水酸化物の製造方法の一例であって、この方法に限定するものではない。
まず、核生成工程(ステップS1)では、ニッケル塩、コバルト塩及びマンガン塩の少なくとも1つを含む第1の混合水溶液を、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気中で、液温25℃基準でpH値が12.5以上となるように調整することによって、形成された核生成用水溶液中で核の生成が優先的に生じる。核生成用水溶液のpH値は、好ましくは12.5以上14以下である。
核生成工程(ステップS1)においては、核生成用水溶液のpH値が、液温25℃基準で12.5以上、好ましくは12.5以上14.0以下、より好ましくは12.5以上13.5以下の範囲となるように制御する。核生成用水溶液のpH値を上記範囲に制御する場合、核を十分に生成することができる。液温25℃を基準としたpH値が12.5未満の場合、核が生成されるものの核自体が大きくなるため、その後の粒子成長工程で一次粒子が凝集した二次粒子が得られない。一方、pH値が高いほど微細な結晶核が得られるが、14.0を超える場合、反応液がゲル化して晶析が困難となったり、ニッケル複合水酸化物の二次粒子を構成する板状一次粒子が小さくなり過ぎたりする等の問題が生じることがある。
pHは、中和剤である無機アルカリ溶液を添加することにより制御することができる。無機アルカリ溶液は、特に限定されるものではなく、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。アルカリ金属水酸化物を、直接、混合水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度は、12.5質量%以上30質量%以下とすることが好ましく、20質量%以上25質量%以下とすることがより好ましい。アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度の低い場合、スラリー濃度が低下して生産性が悪化することがあるため、濃度を高めることが好ましく、具体的には、アルカリ金属水酸化物の濃度を20質量%以上とすることが好ましい。一方、アルカリ金属水酸化物の濃度が30質量%を超えると、添加位置でのpHが局部的に高くなり、微粒子が発生することがある。
核生成工程(ステップS1)においては、例えば、予め、無機アルカリ水溶液に水を加えることによりpH値を12.5以上に調整した反応前水溶液を準備し、この反応前水溶液を反応槽内で撹拌しながら、ニッケル塩、コバルト塩及びマンガン塩の少なくとも1つを含む第1の混合水溶液を供給するとともに、水酸化ナトリウムなどの無機アルカリ水溶液(中和剤)を添加して、pH値が上記範囲に維持された核生成用水溶液を形成し、核の生成を行う。このように核生成用水溶液のpH値を維持しながら混合水溶液を供給する方法は、pH値の制御を厳密に行うことができ、核の生成が容易であり、好ましい。なお、核生成用水溶液には、無機アルカリ水溶液(中和剤)とともにアンモニア水溶液(錯化剤)を添加してもよい。核生成用水溶液中のアンモニウムイオンの濃度は、例えば、3g/L以上25g/L以下である。
核生成工程(ステップS1)における核生成用水溶液の温度は、それぞれ40℃以上70℃以下に保持することが好ましい。温度が上記範囲である場合、ニッケル複合水酸化物の粒径を目標とする範囲まで成長させることができる。
次に、粒子成長工程(ステップS2)では、核生成工程の終了後、核生成工程において形成された結晶核を含有するスラリー(粒子成長用スラリー)を、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気中で、液温25℃基準でpH値を10.5以上12.5以下の範囲、かつ核生成工程(ステップS1)におけるpH値より低くなるように調整する。
粒子成長用スラリーのpH値は、液温25℃基準で10.5以上12.5以下、好ましくは11.0以上12.0以下の範囲、かつ核生成工程(ステップS1)におけるpHより低くなるように制御される。粒子成長用スラリーのpH値を上記範囲に制御した場合、核生成工程で生成した核の成長と凝集のみを優先的に起こさせ、新たな核形成を抑制することができ、得られるニッケル複合水酸化物を均質且つ粒度分布の範囲が狭く、形状が制御されたものとすることができる。液温25℃を基準としたpH値が10.5未満である場合、得られるニッケル複合水酸化物中に含まれる不純物、例えば、金属塩に含まれるアニオン構成元素等、が多くなる。また、pH値がpH12.5を超える場合、粒子成長生成工程で新たな核が生成し、粒度分布も悪化してしまう。また、核生成工程(ステップS1)と粒子成長工程(ステップS2)をより明確に分離するという観点から、粒子成長用スラリーのpH値を核生成工程におけるpHより0.5以上低く制御することが好ましく、1.0以上低く制御することがより好ましい。
粒子成長工程(ステップS2)における粒子成長用スラリーの温度は、それぞれ40℃以上70℃以下に保持することが好ましい。温度が上記範囲である場合、ニッケル複合水酸化物の粒径を目標とする範囲まで成長させることができる。40℃未満では、混合水溶液における金属塩の溶解度が低く塩濃度が低いため、粒子成長工程では核生成が多く微細な粒子が多くなり、粒度分布が悪化することがある。また、混合水溶液の温度が70℃を超えると、アンモニアの揮発が多く、ニッケルアンミン錯体濃度が安定しない。
粒子成長工程(ステップS2)において、上記核を含有するスラリーに、ニッケル塩、コバルト塩及びマンガン塩の少なくとも1つを含む第1の混合溶液を供給して、粒子成長を行う。この工程では、ニッケル複合水酸化物1粒子の中心部3の形成が主に行われる。
第1の混合水溶液は、ニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩の少なくとも一つを含む。これらの金属塩としては、硫酸塩、硝酸塩および塩化物などを使用することができ、コスト、不純物および廃液処理の観点から、硫酸塩を使用することが好ましい。第1の混合水溶液には、所定の組成比のニッケル複合水酸化物が得られるように必要に応じてニッケル、コバルト、マンガン、元素Mを含有する金属化合物を含有させる。なお、最終的に、上記式(2)で表されるコバルトリッチ層を有し、上記式(1)で表されるニッケル複合水酸化物1を得られる範囲であれば、第1の混合溶液中のニッケル、コバルト、マンガン、元素Mの含有量は特に限定されない。
また、粒子成長工程(ステップS2)において、第1の混合液を供給した後、コバルトリッチ層2中のニッケル、コバルト、マンガン及びMのモル比と同様のモル比でそれぞれの金属塩を含む第2の混合液に切り替えて供給する。これにより、コバルトリッチ層2の形成が行われる。
切り替えの時期は、コバルトリッチ層の厚さによって調整すればよいが、例えば、晶析開始から晶析終了まで供給するすべての混合水溶液(第1及び第2混合水溶液を含む)中のニッケル、コバルト、マンガン及びMの合計で、20原子%以上55原子%以下を投入後にコバルトリッチ層2の組成に相当する金属組成を有する第2の混合水溶液へ切り替えることが好ましい。また、混合水溶液の供給量が一定であれば、晶析時間によって切り替えることができる。すなわち、晶析開始から晶析終了までの晶析時間の20%〜55%経過した時点で混合水溶液を切り替えてもよい。
粒子成長工程(ステップS2)において、核生成工程(ステップS1)で得られた核から成長する一次粒子の金属の組成比は、粒子成長工程で用いられる混合水溶液(第1の混合水溶液及び第2の混合水溶液を含む)における各金属の組成比と同様となる。また、核生成工程(ステップS1)においても、核における金属の組成比は、核生成用水溶液における各金属の組成比と同様となる。従って、核生成工程(ステップS1)で用いた混合水溶液中の金属塩と粒子成長工程(ステップS2)で用いる混合水溶液中の金属塩の合計を、ニッケル複合水酸化物1の各金属の組成比となるように調節する。
核生成工程及び粒子成長工程で用いられる第1の混合水溶液、及び第2の混合水溶液のそれぞれの塩濃度は、各塩の合計で、1.0mol/L〜2.2mol/Lとすることが好ましく、1.5mol/L〜2.0mol/Lとすることがより好ましい。混合水溶液全体の塩濃度が1.0mol/L未満であると、塩濃度が低すぎて、ニッケル複合水酸化物の結晶が十分に成長しないことがある。生産性を高めるためには、混合水溶液全体の塩濃度を1.5mol/L以上とすることがより好ましい。一方、混合水溶液全体の塩濃度が2.2mol/Lを超えると、常温での飽和濃度を超えるため、結晶が再析出して配管を詰まらせるなどの危険があるうえ、核生成の機会が多くなり、微粒子が多くなってしまう。
なお、また、核生成工程(ステップS1)で用いられる第1の混合溶液と、粒子成長工程(ステップS2)で用いられる第1の混合溶液とは、その組成が同一であってもよく、異なっていてもよい。
なお、粒子成長用スラリーには、錯化剤としてアンモニアを添加することが好ましい。その際の粒子成長用スラリー中のアンモニア濃度は、5g/L以上20g/L以下に制御することが好ましい。アンモニアは錯化剤として作用するため、アンモニア濃度が5g/L未満の場合、金属イオンの溶解度を一定に保持することができず、核から発達した一次粒子が不均一となり、ニッケル複合水酸化物の粒径の幅がばらつく原因となることがある。アンモニア濃度が20g/Lを超える場合、金属イオンの溶解度が大きくなり過ぎ、粒子成長用スラリーに残存する金属イオン量が増えて、組成のずれ等が起きる場合がある。また、アンモニア濃度が変動すると、金属イオンの溶解度が変動し、均一なニッケル複合水酸化物が形成されないため、一定値に保持することが好ましい。例えば、アンモニア濃度の変動は、設定濃度に対して増加又は減少の幅が5g/L程度として所望の濃度に保持することが好ましい。
アンモニアの添加は、アンモニウムイオン供給体によって行うが、アンモニウムイオン供給体は特に限定されないが、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウム等を使用することができる。
[非水系電解質二次電池用正極活物質]
本実施形態の正極活物質は、二次粒子の粒子表面から粒子内部にかけてリチウムを含むコバルトリッチ層を有する。正極活物質は、上述したコバルトリッチ層2を有するニッケル複合水酸化物と、リチウム化合物とを混合して、特定条件で焼成するこにより、表層部にコバルトが豊富な層を維持したまま、リチウムを二次粒子内部に分散させて、製造される。正極活物質は、リチウムを含むコバルトリッチ層を有し、かつ、後述するように、特定の結晶子径を有することにより、高い出力特性と優れたサイクル特性とを両立することができる。
正極活物質は、複数の一次粒子が互いに凝集した二次粒子からなり、一般式(3):Li1+uNi1−x1−y1−z1Cox1Mny1z1(前記式(3)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、uは−0.05≦u≦0.50、x1は0.15≦x1≦0.25、y1は0.15≦y1≦0.25、z1は0≦z1≦0.1の範囲内にあり、0.3≦x1+y1+z1≦0.5を満たす。)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成される。
上記式(3)中、リチウムの過剰量を示すuは、−0.05以上0.50以下であり、−0.05以上0.20以下とすることが好ましい。uが−0.05未満の場合、得られた正極活物質を用いた非水系電解質二次電池における正極の反応抵抗が大きくなるため、二次電池の出力が低くなる。一方、uが0.50を超える場合、この正極活物質を用いた二次電池の初期放電容量が低下するとともに、正極の反応抵抗も増加してしまう。高容量化の観点から、uを−0.02以上0.10以下とすることがより好ましい。なお、正極活物質の組成は、ICP発光分析法により求めることができる。
正極活物質中のコバルトリッチ層は、一般式(4):Li1+uNi1−x2−y2−z2Cox2Mny2z2(前記式(4)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。)で表され、式(4)中のx2及びy2は、x2=1及びy2=0を満たす、又は、x2/((1−x2−y2)+y2)≧1を満たし、z2は0≦z2≦0.1の範囲内である。なお、上記式(4)中、x2は、0.5≦x2≦1である。
正極活物質中のコバルトリッチ層は、ニッケル及びマンガンを含まない(x2=1、y2=0)、又は、ニッケル及びマンガンに対するコバルト比[x2/((1−x2−y2)+y2)]が1以上である。コバルトリッチ層の組成を上記範囲とする場合、正極活物質を用いた非水系電解質二次電池の電池容量が大きく向上する。
正極活物質中のコバルトリッチ層は、その厚さが、二次粒子の直径の10%以上20%以下である。これにより、電池容量を向上させることができる。コバルトリッチ層の厚さが10%未満になると、粒子内部の組成の影響を受けて電池容量の向上が十分に得られない。一方、厚さが20%を超えると、二次粒子全体の組成がニッケルリッチとなり、熱安定性が低下する。また、正極活物質中のコバルトリッチ層の厚さは、EDXによる組成マッピングや線分析により求めることができる。また、二次粒子の直径は、走査型電子顕微鏡を用いた二次粒子の観察により求めることができる。コバルトリッチ層の厚さや二次粒子の直径は、二次粒子間で変動する場合があるため、複数の二次粒子を測定して平均値として求めることが好ましい。なお、コバルトリッチ層の組成は、例えば、走査型電子顕微鏡の断面観察におけるエネルギー分散型X線分析(EDX)の定量分析に求めることができ、ニッケルとマンガンの合計に対するコバルト比が1以上となっていることでコバルトリッチ層を判断できる。
図4は、正極活物質の粒子内部の金属(Ni、Co及びMn)のエネルギー分散型X線分析(EDX)マッピング図の一例を示す図である。図4に示されるように、正極活物質は、その粒子表面から粒子内部にかけてニッケルが豊富に含まれるコバルトリッチ層を有する。なお、後述する焼成工程(ステップS4)により、ニッケル複合水酸化物1のコバルトリッチ層2由来の金属(Coなど)の一部は、粒子内部3へ拡散することがある。この場合、コバルトリッチ層とそれ以外の部分(中心部3由来の部位)との境界は、例えば、コバルトの連続的又は非連続的な濃度勾配を有する。よって、上記式(2)中のx2、y2及びz2の値と、上記式(4)中のx2、y2及びz2の値とは、必ずしも一致しなくてもよい。
正極活物質は、X線回折測定による(003)面のピークから算出した結晶子径が60nm以上90nm以下である。これにより、高い電池容量と優れた耐久性を両立することができる。60nm以下では焼成が不十分の可能性が高く、良好な電池容量が得られない。また、90nm以上では充放電に伴う体積の膨張収縮により導電パスが破断し耐久性が悪化する。
正極活物質は、レーザー回折散乱法によって測定された粒度分布において、体積平均粒径(Mv)が4μm以上10μm以下であることが好ましい。これにより、電池内での高い充填密度と優れた出力特性を両立させることができる。
正極活物質は、累積90体積%径(D90)及び累積10体積%径(D10)と、前記体積平均粒径(Mv)とによって算出される、粒径のばらつき指数を示す[(D90−D10)/Mv]が、0.60以下であることが好ましい。これにより、微粒子や粗大粒子の混入を低減し、さらに優れた耐久性と出力特性を得ることができる。なお、体積平均粒径(Mv)や、D90及びD10は、ニッケル複合水酸化物と同様にして求めることができる。
[非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法]
図5は、本実施形態に係る正極活物質の製造方法の一例を示すフローチャートである。また、本実施系の製造方法は、一般式(5):Li1+uNi1−x1−y1Cox1Mny1z1(式(5)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、uは−0.05≦u≦0.50、x1は0.15≦x1≦0.25、y1は0.15≦y1≦0.25、z1は0≦z1≦0.1であり、0.3≦x1+y1+z1≦0.5を満たす。)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成された正極活物質の製造方法である。以下、図5を参照して、正極活物質を製造する方法について説明する。
図5に示す示すように、正極活物質の製造方法は、上述のニッケル複合水酸化物とリチウム化合物と混合して、リチウム混合物を形成すること(ステップS3)と、このリチウム混合物を酸化性雰囲気中において750℃以上900℃以下の温度で焼成すること(ステップS4)とが含まれる。
まず、上述のニッケル複合水酸化物とリチウム化合物と混合して、リチウム混合物を形成する(ステップS3)。リチウム化合物としては、特に限定されず公知のリチウム化合物が用いられることができ、例えば、入手が容易であるという観点から、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、もしくはこれらの混合物が好ましく用いられる。これらの中でも、リチウム化合物としては、取り扱いの容易さ、品質の安定性の観点から、より好ましくは酸化リチウ又は炭酸リチウムが用いられる。
ニッケル複合水酸化物とリチウム化合物とは、リチウム混合物中のリチウム以外の金属の原子数、すなわち、ニッケル、コバルトおよび添加元素の原子数の和(Me)と、リチウムの原子数(Li)との比(Li/Me)が0.95〜1.50、好ましくは0.95〜1.20、より好ましくは0.98〜1.10である。すなわち、焼成工程前後でLi/Meは変化しないので、この混合工程(ステップS3)で混合するLi/Meが正極活物質におけるLi/Meとなるため、リチウム混合物におけるLi/Meが、得ようとする正極活物質におけるLi/Meと同じになるように混合される。
また、混合には、一般的な混合機を使用することができ、シェイカーミキサ、レーディゲミキサ、ジュリアミキサ、Vブレンダなどを用いることができ、ニッケル複合水酸化物の形骸が破壊されない程度で、十分に混合されればよい。
次いで、リチウム混合物を酸化性雰囲気中において750℃以上900℃以下の温度で焼成する(ステップS4)。焼成は、酸化性雰囲気中で、750℃以上900℃以下で行うことが好ましい。焼成温度が750℃未満では、リチウムの拡散が十分に進行せず、余剰のリチウムが残存し、結晶構造が整わなくなり、電池に用いられた場合に十分な特性が得られない。一方、900℃を超えると、粒子内部の組成均一化が顕著となり、コバルトリッチ層が形成されず高い出力特性が望めなくなる。また、結晶子径も大きくなるため耐久性の向上も望めない。また、焼成時間は、特に限定されないが、1時間以上24時間以内程度である。
なお、ニッケル複合水酸化物またはニッケル複合酸化物と、リチウム化合物との反応を均一に行わせる観点から、昇温速度を1℃/min〜5℃/minとして上記温度まで昇温することが好ましい。さらには、リチウム化合物の融点付近の温度で1時間以上10時間以下程度保持することで、より反応を均一に行わせることができる。
[非水系電解質二次電池]
本実施形態の非水系電解質二次電池は、一般の非水系電解質二次電池と同様の構成要素により構成されることができ、例えば、正極、負極及び非水系電解液を含む。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本実施形態の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本実施形態の非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
(a)正極
先に述べた非水系電解質二次電池用正極活物質を用い、例えば、以下のようにして、非水系電解質二次電池の正極を作製する。まず、粉末状の正極活物質、導電材、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。正極合材ペースト中のそれぞれの成分の混合比は、例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60〜95質量部とし、導電材の含有量を1〜20質量部とし、結着剤の含有量を1〜20質量部とすることが好ましい。
得られた正極合材ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させる。必要に応じ、電極密度を高めるべく、ロールプレス等により加圧することもある。このようにして、シート状の正極を作製することができる。シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等をして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
正極の導電剤としては、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラック系材料などを用いることができる。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
なお、必要に応じ、正極活物質、導電材、活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加する。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
(b)負極
負極には、金属リチウムやリチウム合金等、あるいは、リチウムイオンを吸蔵及び脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDF等の含フッ素樹脂等を用いることができ、これらの活物質及び結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
(c)セパレータ
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
(d)非水系電解液
非水系電解液としては、例えば、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものが用いられる。使用する有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO等、及びそれらの複合塩を用いることができる。さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤及び難燃剤等を含んでいてもよい。
(e)電池の形状、構成
本実施形態の非水系電解質二次電池は、例えば、上述したような正極、負極、セパレータ及び非水系電解液で構成される。また、非水系電解質二次電池の形状は、特に限定されず、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極及び負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、及び、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。
(f)特性
本実施形態の非水系電解質二次電池は、上述の正極活物質から構成された正極を備えることにより、高い電池容量と優れた耐久性を有するものとなる。また、本実施形態の非水系電解質二次電池は、熱安定性が高く、安全性に優れる。
本実施形態の二次電池は、上記性質を有するので、常に高容量を要求されるノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など小型携帯電子機器の電源に好適である。また、本実施形態の二次電池は、高い電池容量と優れた耐久性が要求されるモーター駆動用電源としての電池にも好適である。電池は、大型化すると安全性の確保が困難になり、高価な保護回路が必要不可欠であるが、本実施形態の二次電池は、優れた安全性を有しているため、安全性の確保が容易になるばかりでなく、高価な保護回路を簡略化し、より低コストにできる。そして、小型化、高出力化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける輸送機器用の電源として好適である。
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(体積平均粒径および粒度分布測定)
体積平均粒径および粒度分布測定は、レーザー回折式粒度分布計(日機装株式会社製、商品名:マイクロトラック)により、タップ密度は、振とう比重測定器(株式会社蔵持科学器械製作所製、KRS−409)により測定した。組成分析は、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS-8100)を用いて行った。
(SEM及びEDX分析)
粒子の外観については、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S−4700)により観察した。また、ニッケル複合水酸化物粉末又はリチウムニッケル複合酸化物粉末における、コバルトリッチ層の組成分析は、エネルギー分散X線分光装置(EDX;日本電子株式会社社製、商品名:JED2300)、により分析した。EDX検出器は、分解能:137eVであり、測定条件は、管電圧20kV、管電流20μA、倍率5000倍、WD15mm、プロセスタイム4,計数400万カウント以上とした。
また、図2は、本実施形態のニッケル複合水酸化物粒子断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像とNi、Co及びMnのEDXによるマッピング図の一例である。図4は、本実施形態の正極活物質粒子断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像とNi、Co及びMnのEDXによるマッピング図の一例である。図2及び図4に示されるように、ニッケル複合水酸化物粒子と正極活物質粒子の表面にコバルトリッチ層が確認できる。
(電池の製造)
得られた非水系電解質二次電池用正極活物質の評価は、以下のように電池を作製し、評価することで行なった。非水系電解質二次電池用正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形して図6に示す正極PE(評価用電極)を作製した。その作製した正極1を真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。そして、この正極1を用いて2032型のコイン型電池CBAを、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
Li金属負極NEには、直径14mmの円盤状に打ち抜かれた平均粒径20μm程度の黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンが銅箔に塗布された負極シートを用い、電解液には、1MのLiPFを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の3:7混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。セパレータSEには膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。また、コイン型電池CBAは、ガスケットGAとウェーブワッシャーWWを有し、正極缶PCと負極缶NCとでコイン状の電池に組み立てられた。製造したコイン型電池CBAの性能を示すサイクル特性及び正極抵抗(出力特性)は、以下のように評価した。
(サイクル特性)
コイン型電池CBAを製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。上記充放電を繰り返し、初期放電容量測定も含めて500サイクル(充放電)繰り返した。500サイクル目の放電容量を測定して、1サイクル目の放電容量(初期放電容量)に対する500サイクル目の放電容量の百分率を容量維持率(%)として求めた。
(正極抵抗)
また、充電電位4.1Vで充電した2032型コイン電池を用いて、交流インピーダンス法により抵抗値を測定した。測定には、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製)を使用して、交流インピーダンス法により測定すると、図7に示すナイキストプロットが得られる。ナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗と容量、及び、正極抵抗と容量を示す特性曲線の和として表しているため、等価回路を用いてフィッテング計算し、正極抵抗の値を算出した。
(実施例1)
第1の混合水溶液(原料溶液)として、硫酸ニッケル(濃度:83.8g/L)と、硫酸コバルト(濃度:31.4g/L)の複合溶液を用意し、第2の混合水溶液(原料溶液)として、硫酸ニッケル(濃度:39.1g/L)と、硫酸コバルト(濃度:78.6g/L)との複合溶液を用意した。
反応槽(60L)内に、25Lの純水を入れて窒素雰囲気中(反応槽内の酸素濃度を2容量%以下)で撹拌しながら、槽内温度を42℃に設定し、そこへ25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量加えて、槽内の液のpH値を、液温25℃基準で12.8に、液中のアンモニア濃度を10g/Lに調節し、反応前水溶液とした。ここに、第1の混合水溶液を130ml/分の割合で加えて、同時に、25質量%アンモニア水および25質量%水酸化ナトリウム水溶液を一定速度で加えていき、pH値を12.8(核生成pH)に制御しながら2分30秒間晶析を行った(核生成工程)。
その後、pH値が液温25℃基準で11.6(核成長pH)になるまで、25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給のみを一時停止し、pH値が11.6に到達した後、再度25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給を再開し、pH値を11.6に制御したまま、2.4時間晶析を継続した後、第1の混合溶液(原料溶液)を第2の混合水溶液に切り替えて1.6時間晶析を継続し終了させた(粒子成長工程)。晶析の終了後、生成物を水洗、濾過、乾燥させ、Ni0.60Co0.20Mn0.20(OH)で表されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得た。
得られた複合水酸化物粒子と、Li/Me=1.04となるように秤量した炭酸リチウムを、シェイカーミキサ装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて十分に混合し、リチウム混合物を得た。このリチウム混合物を空気(酸素:21容量%)気流中にて830℃で10時間保持して焼成し、その後、解砕してリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
(実施例2)
硫酸ニッケル(濃度:97.8g/L)と硫酸マンガン(濃度:18.3g/L)の複合溶液を第1の混合水溶液(原料溶液)として核生成工程と粒子成長工程の原料溶液切り替え前の2.4時間晶析した後、硫酸ニッケル(濃度:29.3g/L)と、硫酸コバルト(濃度:58.9g/L)と、硫酸マンガン(濃度:27.5g/L)の複合溶液を第2の混合水溶液(原料溶液)として1.6時間晶析したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
(実施例3)
焼成温度を770℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
(実施例4)
焼成温度を880℃としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
(比較例1)
使用した原料溶液として、硫酸ニッケル(濃度:70.4g/L)と硫酸コバルト(濃度:23.6g/L)と硫酸マンガン(濃度:22.0g/L)の複合溶液のみを用いて4時間晶析を行ったこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
(比較例2)
使用した原料溶液として、硫酸ニッケル(濃度:75.6g/L)と、硫酸コバルト(濃度:15.7g/L)と、硫酸マンガン(濃度:24.5g/L)の複合溶液を第1の混合水溶液(原料溶液)として、核生成工程と粒子成長工程の原料溶液切り替え前の3.6時間晶析した後、硫酸ニッケル(濃度:23.5g/L)と硫酸コバルト(濃度:94.3g/L)を第2の混合水溶液(複合溶液)として0.4時間晶析したこと以外は実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
(比較例3)
硫酸ニッケル(濃度:87.6g/L)と、硫酸マンガン(濃度:27.3g/L)との複合溶液を第1の混合水溶液(原料溶液)として、核生成工程と粒子成長工程の原料溶液切り替え前の1.6時間晶析した後、硫酸ニッケル(濃度:58.4g/L)と、硫酸コバルト(濃度:38.7g/L)と、硫酸マンガン(濃度:18.6g/L)との複合溶液を第2の混合水溶液(原料溶液)として2.4時間晶析したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
(比較例4)
焼成温度を700℃としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
(比較例5)
焼成温度を950℃としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。評価結果を表1および表2に示す。
(評価)
実施例1〜4は、コバルトリッチ層を有するとともに結晶子径が制御されているため、高い出力特性と優れた耐久性を有していることがわかる。
一方、比較例1および比較例2は、コバルトリッチ層を有しない、もしくはコバルトリッチ層が薄いため、出力特性に劣ることがわかる。比較例3はコバルトリッチ層を有するもののコバルト比が1未満であるため、出力特性と耐久性が改善されていないことがわかる。比較例4は、焼成温度が低いため、結晶子径が小さくなっており、出力特性に劣る。一方、比較例5は、焼成温度が高いため、結晶子径が大きくなるとともにコバルトリッチ層がなくなっている。このため、出力特性に劣り、耐久性も悪化している。
1…ニッケル複合水酸化物
2…コバルトリッチ層
3…中心部
t…コバルトリッチ層の厚さ
d…二次粒子の直径
CBA…コイン型電池
PC…正極缶
NC…負極缶
GA…ガスケット
PE…正極
NE…負極
SE…セパレータ
WW…ウェーブワッシャー

Claims (8)

  1. 複数の一次粒子が互いに凝集した二次粒子からなり、一般式(1):Ni1−x1−y1−z1Cox1Mny1z1(OH)(前記式(1)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金賊元素、族元素、及び13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x1は0.15≦x1≦0.25、y1は0.15≦y1≦0.25、z1は0≦z1≦0.1の範囲内にあり、0.3≦x1+y1+z1≦0.5を満たす。)で表されるニッケル複合水酸化物であって、
    前記二次粒子の粒子表面から粒子内部にかけてコバルトリッチ層を有し、
    該コバルトリッチ層は、一般式(2):Ni1−x2−y2−Z2Cox2Mny2z2(OH)(前記式(2)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x2及びy2は、x2=1及びy2=0を満たす、又は、x2/((1−x2−y2)+y2)≧1を満たし、zは0≦z2≦0.1の範囲内である。)で表され、かつ、その厚さが前記二次粒子の直径に対して10%以上20%以下である、ニッケル複合水酸化物。
  2. レーザー回折散乱法によって測定された粒度分布において、体積平均粒径(Mv)が4μm以上10μm以下であり、累積90体積%径(D90)及び累積10体積%径(D10)と、前記体積平均粒径(Mv)とによって算出される、粒径のばらつき指数を示す[(D90−D10)/Mv]が0.60以下である、請求項1に記載のニッケル複合水酸化物。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のニッケル複合水酸化物の製造方法であって、
    ニッケル塩、コバルト塩及びマンガン塩の少なくとも1つを含む第1の混合水溶液を、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気中で、液温25℃基準でpH値が12.5以上となるように調整して核の生成を行う核生成工程と、
    前記核生成工程において形成された核を含有するスラリーを、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気中で、液温25℃基準でpH値を10.5以上12.5以下の範囲、かつ前記核生成工程におけるpH値より低くなるように調整し、前記スラリーに、前記第1の混合水溶液を供給して、粒子成長を行う粒子成長工程と、を含み、
    前記粒子成長工程において、前記第1の混合水溶液を供給した後、前記コバルトリッチ層中のNi、Co、Mn及びMのモル比と同様のモル比でそれぞれの金属塩を含む第2の混合水溶液に切り替えて供給することを含む、ニッケル複合水酸化物の製造方法。
  4. 前記粒子成長工程において、前記スラリーのアンモニア濃度を5g/L以上20g/L以下に調整する、請求項3に記載のニッケル複合水酸化物の製造方法。
  5. 複数の一次粒子が互いに凝集した二次粒子からなり、一般式(3):Li1+uNi1−x1−y1−z1Cox1Mny1z1(前記式(3)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、uは−0.05≦u≦0.50、x1は0.15≦x≦0.25、yは0.15≦y≦0.25、zは0≦z≦0.1の範囲内にあり、0.3≦x+y+z≦0.5を満たす。)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成された非水系電解質二次電池用正極活物質であって、
    前記二次粒子の粒子表面から粒子内部にかけてコバルトリッチ層を有し、
    該コバルトリッチ層は、一般式(4):Li1+uNi1−x2−y2−z2Cox2Mny2z2(前記式(4)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、uは−0.05≦u≦0.50で表され、x2及びy2は、x2=1及びy2=0を満たす、又は、x2/((1−x2−y2)+y2)≧1を満たし、zは0≦z2≦0.1の範囲内である。)で表され、かつ、その厚さが前記二次粒子の直径の10〜20%であり、
    X線回折測定による(003)面のピークから算出した結晶子径が60nm以上90nm以下である、非水系電解質二次電池用正極活物質。
  6. レーザー回折散乱法によって測定された粒度分布において、体積平均粒径(Mv)が4μm以上10μm以下であり、累積90体積%径(D90)及び累積10体積%径(D10)と、前記体積平均粒径(Mv)とによって算出される、粒径のばらつき指数を示す[(D90−D10)/Mv]が0.60以下である、請求項5に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
  7. 一般式(5):Li1+uNi1−x1−y1Cox1Mny1z1(前記式(5)中、Mは、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、2族元素、および13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、uは−0.05≦u≦0.50、xは0.15≦x≦0.25、yは0.15≦y≦0.25、zは0≦z≦0.1であり、0.3≦x+y+z≦0.5を満たす。)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成された非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    請求項1又は請求項2に記載のニッケル複合水酸化物とリチウム化合物とを混合してリチウム混合物を形成することと、
    前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気中において750℃以上900℃以下の温度で焼成することと、を含む、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  8. 請求項5又は6に記載の正極活物質から構成された正極を備える非水系電解質二次電
JP2016038073A 2016-02-29 2016-02-29 ニッケル複合水酸化物とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池 Active JP6631321B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016038073A JP6631321B2 (ja) 2016-02-29 2016-02-29 ニッケル複合水酸化物とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016038073A JP6631321B2 (ja) 2016-02-29 2016-02-29 ニッケル複合水酸化物とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017154916A JP2017154916A (ja) 2017-09-07
JP6631321B2 true JP6631321B2 (ja) 2020-01-15

Family

ID=59807926

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016038073A Active JP6631321B2 (ja) 2016-02-29 2016-02-29 ニッケル複合水酸化物とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6631321B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019163845A1 (ja) * 2018-02-22 2019-08-29 住友金属鉱山株式会社 金属複合水酸化物とその製造方法、非水電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および非水電解質二次電池
EP3757066A4 (en) * 2018-02-22 2021-11-17 Sumitomo Metal Mining Co., Ltd. METAL COMPOSITE HYDROXIDE AND METHOD FOR MANUFACTURING IT, POSITIVE ELECTRODE ACTIVE SUBSTANCE FOR A SECONDARY BATTERY WITH AN ANYHERIC ELECTROLYTE, AND METHOD FOR MANUFACTURING IT AND SECONDARY BATTERY WITH WATER-FREE ELECTROLYTE
JP7238880B2 (ja) * 2018-02-22 2023-03-14 住友金属鉱山株式会社 金属複合水酸化物とその製造方法、非水電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および非水電解質二次電池
KR20200133346A (ko) * 2018-03-20 2020-11-27 가부시끼가이샤 다나까 가가꾸 겡뀨쇼 양극용 화합물
CN112912342B (zh) * 2018-10-24 2023-05-16 尤米科尔公司 用于可再充电锂离子蓄电池的正电极材料的前体
JP7367335B2 (ja) * 2019-04-26 2023-10-24 住友金属鉱山株式会社 ニッケル複合水酸化物、ニッケル複合水酸化物の製造方法、リチウムイオン二次電池用正極活物質、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法及びリチウムイオン二次電池
WO2020218592A1 (ja) * 2019-04-26 2020-10-29 住友金属鉱山株式会社 ニッケル複合水酸化物、ニッケル複合水酸化物の製造方法、リチウムイオン二次電池用正極活物質、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法及びリチウムイオン二次電池
CN112158893B (zh) * 2020-08-27 2023-09-26 荆门市格林美新材料有限公司 一种富锂锰基正极材料前驱体的制备方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009060603A1 (ja) * 2007-11-06 2009-05-14 Panasonic Corporation 非水電解質二次電池用正極活物質ならびにそれを用いた非水電解質二次電池
KR101272411B1 (ko) * 2011-03-28 2013-06-07 스미토모 긴조쿠 고잔 가부시키가이샤 니켈 망간 복합 수산화물 입자와 그의 제조 방법, 비수계 전해질 이차 전지용 정극 활성 물질과 그의 제조 방법, 및 비수계 전해질 이차 전지
KR101316053B1 (ko) * 2011-04-26 2013-10-11 국립대학법인 울산과학기술대학교 산학협력단 리튬 이차 전지용 양극 활물질, 이의 제조 방법 및 이를 포함하는 리튬 이차 전지
US10128501B2 (en) * 2011-06-07 2018-11-13 Sumitomo Metal Mining Co., Ltd. Nickel composite hydroxide and manufacturing method thereof, cathode active material for nonaqueous-electrolyte secondary battery and manufacturing method thereof, and nonaqueous-electrolyte secondary battery

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017154916A (ja) 2017-09-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6631320B2 (ja) ニッケル複合水酸化物とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池
JP6631321B2 (ja) ニッケル複合水酸化物とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池
JP6142929B2 (ja) ニッケルマンガン複合水酸化物粒子とその製造方法、非水電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および非水電解質二次電池
JP6662198B2 (ja) ニッケル複合水酸化物とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池
WO2015182595A1 (ja) 非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および該正極活物質を用いた非水系電解質二次電池
JP6862727B2 (ja) 非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および該正極活物質を用いた非水系電解質二次電池
JP7135855B2 (ja) ニッケルマンガン複合水酸化物とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および非水系電解質二次電池
CN107078292B (zh) 非水系电解质二次电池用的正极活性物质及其制造方法、以及非水系电解质二次电池
JP7047251B2 (ja) 非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法
JP6350376B2 (ja) 非水系電解質二次電池用正極活物質及びその製造方法、並びにその正極活物質を用いた非水系電解質二次電池
JPWO2017090378A1 (ja) 非水系電解質二次電池用正極材料とその製造方法、および正極合材ペースト、非水系電解質二次電池。
JP2017226576A (ja) リチウムニッケル含有複合酸化物および非水系電解質二次電池
JP2018049685A (ja) 非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、及び非水系電解質二次電池
JP2018060759A (ja) ニッケルコバルトマンガン含有複合水酸化物の製造方法、非水電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および該正極活物質を用いた非水電解質二次電池
JP7167540B2 (ja) リチウムイオン二次電池用正極活物質とその製造方法およびリチウムイオン二次電池
JP2020009756A (ja) リチウムイオン二次電池用正極活物質とその製造方法、リチウムイオン二次電池用正極、及び、リチウムイオン二次電池
JP2020004506A (ja) リチウムイオン二次電池用の正極活物質とその製造方法、およびチウムイオン二次電池
JP2019019047A (ja) 金属複合水酸化物とその製造方法、非水電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、及び、それを用いた非水電解質二次電池
JP2018095529A (ja) リチウムマンガン複合酸化物粉末およびその製造方法ならびに非水電解質二次電池用正極
JP7310872B2 (ja) 非水系電解質二次電池用正極活物質、および該正極活物質を用いた非水系電解質二次電池
US20230135908A1 (en) Metal composite hydroxide, method for producing same, positive electrode active material for nonaqueous electrolyte secondary batteries, method for producing said positive electrode active material, and nonaqueous electrolyte secondary battery using said positive electrode active material
WO2020218592A1 (ja) ニッケル複合水酸化物、ニッケル複合水酸化物の製造方法、リチウムイオン二次電池用正極活物質、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法及びリチウムイオン二次電池
JP2019189489A (ja) 金属複合水酸化物とその製造方法、非水電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、及び、それを用いた非水電解質二次電池
JP2019212365A (ja) リチウムイオン二次電池用正極活物質及びその製造方法、並びにその正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池
JP6409619B2 (ja) 遷移金属複合水酸化物粒子とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および、非水系電解質二次電池

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181017

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190718

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190723

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190827

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191112

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191125

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6631321

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150