JP6631233B2 - 制動力制御装置 - Google Patents
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この場合、車輪を通して車両に加わる制動力は、車両の総重量(車両自体の重量と乗車人員および荷物を含む搭載重量との総和)と、路面の摩擦係数とによって決まるため、ブレーキペダルの操作量が一定の場合、車両の総重量によって減速度(制動距離)が影響を受けることになる。
そこで、車両の総重量を検出すると共に、検出された車両の総重量に応じて制動力を調整することで車両の総重量によらず一定の減速度が得られるようにした制動力制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
また、車両の重量に基いて算出した制動力を、各車輪の動的荷重に基いて各車輪に分配することで、ブレーキ操作量に対して一定の目標減速度を得るようにした制動力制御装置が提案されている(特許文献2参照)。
すなわち、各車輪の制動力の調整に際しては、制動時に車両に作用する慣性力による車両の後輪から前輪への荷重の移動を考慮した各車輪の垂直荷重に比例するように制動力を配分する理想制動力配分に近づくようにすることが、前輪および後輪の制動力を有効に利用する上で好ましいが、上記従来技術では、理想制動力配分については特に考慮されていない。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、前輪および後輪の制動力を有効に利用する上で有利な制動力制御装置を提供することにある。
また、本発明は、前記制動力制御部による前記各車輪の制動力の制御は、前記差分値が負の値でかつその絶対値が大きくなるほど前記前輪の制動力を大きくし、前記差分値が正の値でかつその絶対値が大きくなるほど前記後輪の制動力を大きくするようになされることを特徴とする。
また、本発明は、前記制動力制御部による前記各車輪の制動力の制御は、前記車両全体の実減速度が前記車両に対する要求減速度と一致するようになされることを特徴とする。
また、本発明によれば、専用の部材を設けることなく既存の車輪速センサを用いることで車両重量配分の推定を行なうことができ、構成の簡素化、部品コストの抑制を図る上で有利となる。
また、本発明によれば、車両重量配分が標準的なものであっても、フロントヘビー傾向であっても、リアヘビー傾向であっても前輪および後輪の制動力を有効に利用する上で有利となり、車両の制動を効率よく行なう上で有利となる。
また、本発明によれば、車両重量配分が標準的なものであっても、フロントヘビー傾向であっても、リアヘビー傾向であっても、車両全体の実減速度を一定にすることができ、制動操作時の違和感を抑制する上で有利となる。
まず、実施の形態にかかる制動力制御装置が搭載された車両のブレーキ機構について説明する。
図1は、車両のブレーキ機構を示す説明図である。
図示するように、マスタシリンダ3には、液路2を介してホイールシリンダ1A〜1Dが接続されており、ドライバがブレーキペダル5を踏み込むと、このブレーキペダル5の操作に応じてマスタシリンダ3内のブレーキ液(作動流体)が加圧されるとともに、液路2を介してブレーキ液が各ホイールシリンダ1A〜1Dに供給されるようになっている。なお、ホイールシリンダ1A〜1Dは、図3に示す車両10の前後左右の各車輪11に対応してそれぞれ設けられている。なお、図3において符号11Fは前輪、符号11Rは後輪を示す。また、図1において、符号22A、22Bは各前輪11Fに設けられた前輪制動部、22C、22Dは各後輪11Rに設けられた後輪制動部を示す。
また、同様に、右前輪と左後輪の液路2Rもその下流側で2つの液路2C、2Dに分岐しており、右前輪のホイールシリンダ1C、左後輪のホイールシリンダ1Dに液路2C、2Dがそれぞれ接続されている。
各車輪11に設けられた制動部22A〜22Dがディスクブレーキで構成されている場合、ホイールシリンダ1A〜1Dで発生した制動力により、不図示のブレーキキャリパが車輪11と共に回転する不図示のディスクローターを押し付けて車輪11の制動がかけられる。
また、例えば後輪用制動部22B、22Dがドラムブレーキで構成されている場合、後輪のホイールシリンダ1B、1Dで発生した制動力により、不図示のブレーキシューが車輪11と共に回転する不図示のブレーキドラムを押し付けて車輪11の制動がかけられる。
すなわち、前輪用制動部22A、22Cは、前輪用制動部材(ブレーキキャリパ)を前輪と一体に回転する前輪用被制動部材(ディスクロータ)に押し付けるものである。
後輪用制動部22B、22Dは、後輪用制動部材(ブレーキキャリパ、あるいは、ブレーキシュー)を前輪と一体に回転する後輪用被制動部材(ディスクロータ、あるいは、ブレーキドラム)に押し付けるものである。
ところで、図示するように、上記マスタシリンダ3と各ホイールシリンダ1A〜1Dとの間には、各種のバルブや液路をそなえたハイドロリックユニット6が設けられている。
言い換えると、液圧センサ12は、車両10に対する要求減速度を検出する要求減速度検出部を構成している。
第2液路13の他端側にはモータ14により駆動されるポンプ15が接続されており、ポンプ15の上流側及び下流側には、それぞれ逆止弁24、25が介装されている。
また、液路16上にはインテーク弁17が介装されている。ここで、インテーク弁17は、液路16を連通状態又は遮断状態に選択的に切り換えるオンオフ型の電磁弁であって、やはり後述するECU26からの制御信号に基づいてその作動が制御されるようになっている。
また、これらのドレーン用液路20A〜20Dは逆止弁23を介して液路16に接続されている。
しかしながら、ブレーキ機構は各車輪11に個別に制動力を付与できるものであればよく、従来公知の様々な構成のブレーキ機構が使用可能である。
したがって、ブレーキ機構として、空気圧を用いて各車輪11に個別に制動力を付与するものや、モータなどの電動アクチュエータによって各車輪11に個別に制動力を付与するものが使用可能である。
車両10には、制動力制御装置に対応するECU26が設けられている。
ECU26は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
なお、前輪車輪速センサ30は左右の前輪11Fにそれぞれ設けられ、後輪車輪速センサ32は左右の後輪11Rにそれぞれ設けられている。
また、図1では液圧センサ12以外のセンサについては図示を省略している。
車両重量配分推定部26Aは、前輪11Fに加わる車両10の重量と後輪11Rに加わる車両10の重量との配分である車両重量配分を推定するものである。
本実施の形態では、車両重量配分推定部26Aによる車両重量配分の推定は、前輪11Fの減速度から後輪11Rの減速度を減じた差分値に基いてなされる。
また、本実施の形態では、差分値を車両重量配分の推定値Aとし、推定値Aは以下の式(1)で定義される。
A=(前輪左側の車輪速Vflの微分値+前輪右側の車輪速Vfrの微分値)/2−(後輪左側の車輪速Vrlの微分値+後輪右側の車輪速Vrrの微分値)/2
……(1)
すなわち、推定値Aは、左右の前輪11Fの減速度の平均値から左右の後輪11Rの減速度の平均値を減じた値である。
図4は車両重量配分の推定値Aに対応する理想制動力配分を示す線図であり、横軸が前輪11Fの制動力Ff、縦軸が後輪11Rの制動力Frを示す。
車両重量配分がフロントヘビー傾向(前輪11Fに加わる車両10の重量>後輪11Rに加わる車両10の重量)であり、したがって、推定値A<0となる場合、前輪11Fに加わる車両10の重量が増加するほど線図は下方に変化しその傾きが低下する。
一方、車両重量配分がリアヘビー傾向(前輪11Fに加わる車両10の重量<後輪11Rに加わる車両10の重量)であり、したがって、推定値A>0となる場合、後輪11Rに加わる車両10の重量が増加するほど線図は上方に変化しその傾きが増加する。
Ff=μ(Wf+(Wf+Wr)αH/L)……(2)
Fr=μ(Wr−(Wf+Wr)αH/L)……(3)
各パラメータは、図3に示すように以下の通りである。
Wf:前軸重量(前輪11Fの車軸にかかる重量)
Wr:後軸重量(後輪11Rの車軸にかかる重量)
μ:路面の摩擦係数
H:車体の重心高(路面から車体の重心Gまでの距離)
L:ホイールベース(前輪軸と後輪軸との距離)
α:車両10の減速度(車速の微分値)
Ff=μ(KWf+(KWf+Wr)αH/L)……(4)
Fr=μ(Wr−(KWf+Wr)αH/L) ……(5)
ただし、K(K>1)は前輪側係数であり、図5で示されるように、重量配分値Aの絶対値が大きくなるほど前輪係数Kは大きくなる(ただし重量配分推定値A<0)。
Ff=μ(Wf+(Wf+kWr)αH/L) ……(6)
Fr=μ(kWr−(Wf+kWr)αH/L)……(7)
ただし、k(k>1)は後輪側係数であり、図6で示されるように、重量配分値Aの絶対値が大きくなるほど後輪側係数kは大きくなる(ただし重量配分推定値A>0)。
制動力制御部26Cは、理想制動力配分決定部26Bで決定された理想制動力配分に基いて、各車輪11の制動力の制御を行なう。
制動力制御部26Cによる各車輪11の制動力の制御は、図5、式(4)、式(5)で示されるように、車両重量配分の推定値A<0でかつ推定値Aの絶対値が大きくなるほど前輪11Fの制動力Ffを大きくするようになされる。
また、図6、式(6)、式(7)で示されるに示すように、車両重量配分の推定値A>0でかつ推定値Aの絶対値が大きくなるほど後輪11Rの制動力Frを大きくするようになされる。
また、制動力制御部26Cによる前輪11F、後輪11Rの制動力の制御は、車両全体の実減速度が車両10に対する要求減速度と一致するようになされる。
車両10の走行中、車両重量配分推定部26Aは、減速時に車両重量配分の推定を実行する。
したがって、車両10が減速する毎に車両重量配分の推定が実行されるため、乗員の乗り降り、あるいは、荷室に対する荷物の積み下ろしなどの原因により車両重量配分が変化しても、車両重量配分の推定値Aとして常に更新された値が車両重量配分推定部26Aから理想制動力配分決定部26Bに対して供給される。
例えば、車両の前席および後席にバランスよく乗員が着座した場合、推定値A=0となり、理想制動力配分決定部26Bにより、図4の推定値A=0に対応する標準的な理想制動力配分が決定されるため、制動力制御部26Cは、決定された標準的な理想制動力配分に基いて前輪11F、後輪11Rの制動力の制御を行なう。
なお、図4では、説明を簡素化するため、車両重量配分が標準的な場合、フロントヘビー傾向の場合、リアヘビー傾向の場合の3種類の理想制動力配分を示したが、理想制動力配分は、推定値Aの値に応じてもっと細かく設定されていることは無論である。
したがって、車両重量配分に応じた理想制動力配分で前輪11F、後輪11Rを制動するため、前輪11Fおよび後輪11Rの制動力を有効に利用する上で有利となり、車両10の制動を効率よく行なう上で有利となる。
したがって、車両重量配分が標準的なものであっても、フロントヘビー傾向であっても、リアヘビー傾向であっても前輪11Fおよび後輪11Rの制動力を有効に利用する上で有利となり、車両10の制動を効率よく行なう上で有利となる。
したがって、車両重量配分が標準的なものであっても、フロントヘビー傾向であっても、リアヘビー傾向であっても、車両全体の実減速度を一定にすることができ、制動操作時の違和感を抑制する上で有利となる。
11 車輪
11F 前輪
11R 後輪
12 液圧センサ
22A、22B 前輪用制動部
22C、22D 後輪用制動部
26 ECU(制動制御装置)
26A 車両重量配分推定部
26B 理想制動力配分決定部
26C 制動力制御部
30 前輪車輪速センサ
32 後輪車輪速センサ
34 ブレーキスイッチ
Claims (3)
- 車両の前輪および後輪の各車輪のそれぞれの制動力を個別に制御する制動力制御部を備える制動制御装置であって、
前記前輪に加わる前記車両の重量と前記後輪に加わる前記車両の重量との配分である車両重量配分を推定する車両重量配分推定部と、
前記推定された車両重量配分に対応して前輪および後輪の制動力の理想制動力配分を決定する理想制動力配分決定部とを備え、
前記制動力制御部による前記各車輪の制動力の制御は、前記決定された理想制動力配分に基いてなされ、
前記車両重量配分推定部による車両重量配分の推定は、前記前輪の減速度から前記後輪の減速度を減じた差分値に基いてなされる、
ことを特徴とする制動制御装置。 - 前記制動力制御部による前記各車輪の制動力の制御は、前記差分値が負の値でかつその絶対値が大きくなるほど前記前輪の制動力を大きくし、前記差分値が正の値でかつその絶対値が大きくなるほど前記後輪の制動力を大きくするようになされる、
ことを特徴とする請求項1記載の制動制御装置。 - 前記制動力制御部による前記各車輪の制動力の制御は、前記車両全体の実減速度が前記車両に対する要求減速度と一致するようになされる、
ことを特徴とする請求項1または2記載の制動制御装置。
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JP2015247563A JP6631233B2 (ja) | 2015-12-18 | 2015-12-18 | 制動力制御装置 |
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