JP6629547B2 - ランフラットタイヤ - Google Patents
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Description
ランフラットタイヤとしては、例えば、タイヤのサイドウォール部の内面に、熱による温度の変化で不可逆的に変色する変色材料を塗布することで、パンク走行履歴の有無を後に判断可能にするランフラットタイヤが報告されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、サイド補強ゴムがランフラット走行によって一定以上の歪みを生じたか否かを判断するのは困難である。
また、サイドウォール部のインナーライナー表面のシワの有無よって、サイド補強ゴムが一定以上の歪みが生じたことの履歴(歪み履歴)を推測しようとする場合に、低速・短距離でのランフラット走行においては、サイド補強ゴムが一定以上の歪みを生じたにもかかわらず、そのシワが目視等で確認できない恐れがある。
通常走行、またはランフラット走行によってサイド補強ゴムが屈曲変形しても、サイド補強ゴムが一定以上の歪みを生じていない場合には、圧縮歪吸収層が、サイド補強ゴムに生じた歪みを吸収する。従って、応力可視化層に圧力が加えられないため、応力可視化層は視覚的に変化がない。しかし、ランフラット走行によってサイド補強ゴムが繰り返し大きく撓んで、サイド補強ゴムに一定以上の歪みが生じると、圧縮歪吸収層がその歪み(圧縮歪み)を吸収しきれなくなり、その吸収しきれなかった圧縮歪吸収層からの歪みによって応力可視化層に圧力が加えられ、応力可視化層中の感圧材料が、加えられた圧力によって視覚的に変化する。このように、視覚的変化よって、サイド補強ゴムに生じた一定以上の歪みの履歴を確認することができる。当該履歴によってサイド補強ゴムの耐久性等の程度を判断でき、パンク後のタイヤ修理かタイヤ交換かの判断を行うための有効な情報を提供できる。また、前記応力可視化層は厚みが10μmを超える前記圧縮歪吸収層を介してサイド補強ゴム内面に貼り付けられているので、ランフラット走行時にサイド補強ゴムが繰り返し大きく撓んでも、前記圧縮歪吸収層が歪みを吸収し、応力可視化層が剥がれ落ちるのを防ぐことができる。
「歪み」は、外部からの圧縮圧によって形成される圧縮歪みを意味する。
ランフラット走行し始めた場合には、サイド補強ゴムに生じる歪みの程度は、一定以下に低く抑えられているが、ランフラット走行を続けると、サイド補強ゴムが繰り返し大きく撓むようになり、これに伴ってサイド補強ゴムにそれまでとは著しく程度の異なる大きな歪みが生じる。
歪み履歴を視覚的に「確認」するとは、応力可視化層の変色又は変形の確認を意味する。また、確認方法としては、応力可視化層を目視して直接観察する方法はもちろん、応力可視化層の変色や変形を数値化して確認してもよい。変色するとは、視覚的に色が変化することを意味する。変形とは、視覚的に形状が変化することを意味する。
「加えられた圧力によって視覚的に変化する感圧材料」とは、圧力が加えられると視覚的に変化する材料であって、変化には変色及び変形を含む。また、視覚的な変化には、前記感圧材料が発色等により変色することの他、前記感圧材料が、形状によって反射率が変化する場合も含む。すなわち、本発明における感圧材料は、サイド補強ゴムからの歪みを受けた圧縮歪吸収層を介して応力可視化層に加えられる圧力(単位:Pa)に応答して視覚的に変化する。
以下、本発明のランフラットタイヤの詳細について説明する。
図1を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るランフラットタイヤ10について説明する。なお、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明のランフラットタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面の形状を示す断面図である。なお、図中の矢印Wはランフラットタイヤ10の幅方向を示し、矢印Rはランフラットタイヤ10のタイヤ径方向を示す。また、符号CLは、ランフラットタイヤ10の幅方向中央を通る中央線を示す。
また、タイヤ10においては、インナーライナー25を有しない場合があり、この場合には、後述する応力可視化部材28は、サイド補強ゴム26の表面に直接接着されることになる。従って、本発明における応力可視化部材28は、サイド補強ゴム26の内面またはインナーライナー25の表面に接着するものとする。
また、応力可視化層は、サイド補強ゴム26またはインナーライナー25に厚みが10μmを超える圧縮歪吸収層を介して貼り付けられているので、ランフラット走行時にサイド補強ゴム26が繰り返し大きく撓んだ際に、応力可視化層はサイド補強ゴム26またはインナーライナー25から剥がれにくい。
以上によって、サイド補強ゴム26の内面上で、算出した変化量が最も大きい領域35を最大屈曲部32という。
各条件下における領域35の曲率半径は、X線CTにより得られる断面画像を画像処理し計測することによって測定することができる。
圧縮歪吸収層41は、サイドウォール部の内面に形成されたサイド補強ゴム26の表面の最大屈曲部を含む領域(図1の領域29’)に配置される。なお、図3中の矢印Hは圧縮歪吸収層41の高さを示し、同様に矢印H’は応力可視化層43の高さを示す。また、図3中、矢印Lは応力可視化部材28の幅方向における長さを示す。
また、応力可視化部材28の配置の一例を図4の(A)及び(B)に示す。図4(A)は、タイヤ10をタイヤ周方向に沿って切断し、タイヤ10側面側よりタイヤ10の内側を観察した模式図である。また、図4(B)は、タイヤ10の内面の一部を拡大した斜視図である。図4(A)に示すように、サイド補強ゴム26内面にはインナーライナー25を介して応力可視化部材28が配置されている。応力可視化部材28は、タイヤ10の内面においてタイヤ径方向に沿って縞状に装飾されるセレーション線6に沿うように、サイド補強ゴム26の最大屈曲部を含む領域に複数配置されている。図4(B)に示すように、応力可視化部材28は、全体としてドーム形状の構造を有している。また、応力可視化部材28は、応力可視化層43と圧縮歪吸収層41との2層構造であり、上層が応力可視化層43である。応力可視化部材28を応力可視化層43の上方より観察した場合には、図4(A)及び(B)に示すように円形状となっている。但し、応力可視化部材の形状は特に限定されるものではなく、例えば、応力可視化層43の上方から観察した際の形状は、円形(楕円形を含む)、多角形(例えば、三角形、正方形、菱形、五角形、六角形、星形等)であってもよい。また、応力可視化部材28の全体的な形状は、ドーム型に限定されるものではなく、円柱状、角柱状、ピラミッド形状等の錐形状でもよい。更に、図4(A)及び(B)においては、応力可視化層43と圧縮歪吸収層41とが応力可視化部材28として、一体的にドーム状の形状を形成しているが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、応力可視化層43と圧縮歪吸収層41とが同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよいし、更には、応力可視化層43と圧縮歪吸収層41と一体となって一つの形状とされていてもよいし、一体して一つの形状とされていなくてもよい。
また、上記の領域は、最大屈曲部に生じた歪みを、応力可視化部材により十分に検知する観点から、さらに50%以内が好ましく、30%以内が特に好ましい。
また、サイド補強ゴム26が繰り返し大きく撓んでも、応力可視化層43をより強く接着させるという観点から、100℃における弾性率としては、1×105Pa〜1×1010Paであることが好ましく、さらに1×105Pa〜1×108Paであることが好ましい。
圧縮歪吸収層41の弾性率は、万能圧縮試験機を用いて、算出することができる。例えば、原料となる圧縮歪吸収層を構成する組成と同じ組成物を、公知の方法により3cm×1cm×50μmのシート状に成形し、得られたシートを粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス製 DMS7100)で試験速度5mm/分で測定し、測定値から圧縮応力−ひずみ曲線を作製し、これに基づいて算出することができる。
また前記マイクロカプセルを含む材料としては、例えば、2種以上の化合物を組み合わせて発色させる材料を挙げることができる。このような材料としては、電子供与性化合物及び電子受容性化合物のそれぞれが別々のマイクロカプセルに内包されているもの、あるいはこれらの化合物のいずれかがマイクロカプセルに内包されているものが挙げられる。これらの化合物がマイクロカプセルに内包されていることにより、一定以上の圧力が加えられた時点で、マイクロカプセルが破壊され、内包されたそれぞれの化合物あるいはどちらかの化合物がカプセル外に放出され、それぞれの化合物が接触することによって、発色反応が起こり、結果として応力可視化層43が変色する。
また、電子供与性化合物及び電子受容性化合物については、それぞれ1種類を用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記マイクロカプセルの調製方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、特開2009−19949号公報に詳細に記載されている。
また、前記マイクロカプセルの粒径としては、より十分に発色濃度を高める観点から、5μm〜50μmであることが好ましい。さらに、粒径は、10μm〜40μmであることがより好ましい。
また、前記マイクロカプセルの壁材については、カプセルの壁剤の種類やカプセル径など種々の条件によって適宜調整されるが、0.05MPa〜130MPaの範囲で破壊される壁材であることが好ましい。すなわちマイクロカプセルの圧力測定範囲は、3MPa〜50MPaであることが好ましい。
また、応力可視化層43に用いられるバインダーとしては、透明性の観点からは、ポリビニルアルコールを好ましく用いることができ、中でもカルボキシ変性ポリビニルアルコールやシリカ変性ポリビニルアルコール等のPVAを用いることができる。また、応力可視化層には公知の硬膜剤等を含有させることができる。該硬膜剤としては、ホウ酸、ホウ砂、コロイダルシリカ等の無機化合物やアルデヒド誘導体、ジアルデヒド誘導体などを挙げることができる。
また、複数に配置された場合の応力可視化部材は、それぞれが同じ圧力の範囲で視覚的に変化する感圧材料を用いてもよいし、それぞれ異なった圧力の範囲で視覚的に変化する感圧材料を用いてもよい。例えば、最大屈曲部位からの距離が近い応力可視化部材の応力可視化層には、遠い距離に配置された応力可視化部材の応力可視化層よりもより高い圧力範囲で視覚的に変化する感圧材料を用いることで、複数あるすべての応力可視化部材の歪み履歴、すなわちより広い範囲のサイド補強ゴムの歪み履歴を詳細に知ることができる。
例えば、応力可視化層は、変色後の色の明度を60%以上とするのが好ましい。一般的なタイヤの色は黒色であり、タイヤの色の明度は0%に近い。このため、応力可視化層の変色後の色の明度が60%以上であれば、コントラスト比が高くなり、応力可視化層の変色後の色を容易に確認できる。また、応力可視化部材は、タイヤ内面に配置されているため陰になっており観察しにくい場合があるが、応力可視化層の変色後の色の明度が60%以上であれば、容易に確認できる。ここで、明度とは、HSVモデルにおいて定義され、明度100%を純色、明度0%を真黒とする。また、明度は、分光測色計を用いて、標章、模様部またはグラデーション部等の測定対象の明度を他系統(例えば、Lab色空間)で測定した後、photoshop(登録商標)等のソフトウェアを用いてHSV系統に変換する方法によって測定するものとする。
また、上記の変色における調整は、例えば、変色材料として用いる発色材料の種類や濃度を適宜変更することによって行うことができる。
車両の走行中にタイヤ10がパンクすると、タイヤ10に充填された空気(窒素)がタイヤ10の外部に漏れ、タイヤ10の空気圧が低下する。
空気が漏れたタイヤ10は、サイドウォール部22の内面に形成されたサイド補強ゴム26が車両及び乗員の重量を支えることで、一定距離をランフラット走行することができる。
ランフラット走行時には、路面に接地しているトレッド部20側に近いサイド補強ゴム26が、タイヤ径方向の荷重によって大きく撓んで変形する。また、タイヤ10は転動しているので、サイド補強ゴム26は、全周に亘って連続的に撓み変形が繰り返される。これにより、ヒステリシスロスが増大し、サイド補強ゴム26の変質を伴う一定以上の歪みを生じる。このような現象は、サイド補強ゴム26が数回撓んだ程度では発生しないので、タイヤ10がパンクした状態でのみ発生することになる。
以上のように、サイド補強ゴム26に生じた一定以上の歪みに伴って視覚的に変化する応力可視化層28を配置することにより、サイド補強ゴム26の歪み履歴を判断できる。
本発明の第2の実施形態に係るランフラットタイヤにおける応力可視化部材を図5に沿って説明する。図5は、応力可視化部材の層構成を示す断面図である。図5に示されるように、応力可視化部材128は、複数の圧縮歪吸収層141と、応力可視化層143と、がこの順に積層されている積層体であり、複数の圧縮歪吸収層141を1つの応力可視化層143で架橋している構造を含むように構成されていてもよい。なお、応力可視化部材以外の部分は、第1実施形態と同じであるので同じ番号を使用し、それらの説明は省略する。
複数の圧縮歪吸収層141は、第1実施形態と同様に、サイド補強ゴム26のタイヤ幅方向内側の表面の最大屈曲部を含む領域29’に配置される。複数の圧縮歪吸収層141は、1つの応力可視化層143とサイド補強ゴム26との間に配置されており、タイヤがランフラット走行を続けることによってサイド補強ゴム26が繰り返し大きく撓み始めるまで、サイド補強ゴム26からの屈曲変形による歪みを吸収し、応力可視化層143への歪みの伝達を防ぐ。サイド補強ゴム26が繰り返し大きく撓み始め、サイド補強ゴム26の内面に一定以上の歪みが生じると、複数の圧縮歪吸収層141がこの歪みを吸収しきれなくなる。吸収しきれない歪みによって、応力可視化層に圧力が加えられ、その圧力によって感圧材料が視覚的に変化するので、これにより歪み履歴を視認することができる。なお、図5中の矢印H−1は圧縮歪吸収層141の高さを示し、矢印H−1’は応力可視化層143の高さを示す。また、図5中、矢印L−1は応力可視化部材28の幅方向における最も離れた圧縮歪吸収層141同士の間の長さを表す。すなわち、圧縮歪吸収層141の外側端141Aと圧縮歪吸収層141の外側端141Bとの間の長さを示す。また、矢印L−1’は、応力可視化部材の幅方向における応力可視化層143の長さを示す。
また、サイド補強ゴム26の内面またはインナーライナー25の表面に2以上の方向に沿って配置する複数の圧縮歪吸収層141を、一つの応力可視化層143で架橋する場合には、上記の形状以外にも、例えば応力可視化層143を上方から見た場合、一定幅の直線が交差する形状、一定幅の曲線形状、一定幅の曲線が交差する形状、これらが組み合わされた形状、及び上記の円形、多角形とこれらが組み合わされた形状であってもよい。
また、応力可視化部材128の複数の圧縮歪吸収層141において、幅方向における長さL−1(図5参照)は、4mm〜50mmであることが好ましい。4mm以上であることで、サイド補強ゴム26に生じる一定上の歪みをより十分に検知することができ、50mm以下であることで、サイド補強ゴム26に生じる歪みが一定以上になるまで、歪みをより十分に吸収することができる。さらに、L−1は、4mm〜40mmであることが好ましく、4mm〜30mmであることが特に好ましい。
上記の実施形態に係るタイヤの他、本発明のタイヤは、前記応力可視化部材及び示温部材を、前記サイド補強ゴムの内面の最大屈曲部を含む領域に配置された形態としてもよい。示温部材としては、圧縮歪吸収層、及び、温度変化によって変色する変色材料を含み前記圧縮歪吸収層上に形成された示温層を有する形態とすることができる。ランフラット走行によって、サイド補強ゴムが繰り返し大きく撓んだ場合、サイド補強ゴム内面の最大屈曲部では熱が発生し、一定以上の温度に上昇するとサイド補強ゴムが変質する。このため、上記のように、示温部材による熱検知、すなわち、示温部材の示温層の変色を確認することによってサイド補強ゴムの熱履歴を視認することができ、これによってサイド補強ゴムの耐久性を判断できる。
以下、示温部材について、図6に沿って説明する。図6は示温部材の層構成を示す断面図である。なお、示温部材以外の部分については、第1実施形態と同じであるので同じ番号を使用し、それらの説明は省略する。
この圧縮歪吸収層241は、サイドウォール部の内面に形成されたサイド補強ゴム26の表面の最大屈曲部を含む領域(図1の領域29’)に配置される。図6に示すように、圧縮歪吸収層241は、示温層243とインナーライナー25との間に配置されており、ランフラット走行時における、サイド補強ゴム26からの屈曲変形による歪みを吸収し、示温層243への歪みの伝達を防ぐ。また、示温層243が圧縮歪吸収層241を介して貼り付けられているので、サイド補強ゴム26が繰り返し大きく撓んでも示温層には影響しにくいので、剥がれ落ちるのを防ぐことができる。
また、複数に配置された場合の示温部材228は、それぞれが同じ温度範囲で変色する変色材料を用いてもよいし、それぞれ異なった変色材料を用いてもよい。例えば、最大屈曲部位からの距離が近い示温部材228の示温層243には、遠い距離に配置された示温部材228の示温層243よりもより高い温度範囲で変色する変色材料を用いることで、複数あるすべての示温部材228の熱履歴、すなわちより広い範囲のサイド補強部の熱履歴を詳細に知ることができる。
前記金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化珪素などが挙げられる。前記窒化物としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素などが挙げられる。前記炭化物としては、炭化珪素、炭化ホウ素などが挙げられる。前記金属粉としては、銀、金、銅、アルミニウムなどが挙げられる。熱伝導性材料としては、これらから1種あるいは2種以上を使用できる。前記熱伝導性材料としては、カーボン、カーボンナノチューブ、グラファイト、炭素繊維が好ましい。
温度変化により変色する変色材料としては、特に限定されないが、例えば、非結晶−結晶または相分離−非相分離によるリタイラブル系の電子供与性呈色性化合物(例えばロイコオーラミン類、ジアリールフタリド類ポリアリールカルビノール類、アシルオーラミン類、ローダミンBラクタム類、インドリン類、スピロピラン類、フルオラン類、シアニン色素類、クリスタルバイオレット等、の電子供与性有機物等)と電子受容性化合物(例えばフェノール類、フェノール金属塩類、カルボン酸金属塩類、サリチル酸及びその誘導体、スルホン酸及びその誘導体、スルホン酸塩及びその誘導体、リン酸塩、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸塩、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類等の酸化物等)とを含む発色材料などが挙げられる。
このような材料を用いた変色材料は、融点以上に加熱された後に急冷されることで無色となり、その後、ガラス転移点以上の温度になると、徐々に変色する特徴がある。
例えば、示温層243は、変色後の色の明度を60%以上とするのが好ましい。一般的なタイヤの色は黒色であり、タイヤの色の明度は0%に近い。このため、示温層243の変色後の色の明度が60%以上であれば、コントラスト比が高くなり、示温層243の変色後の色を容易に確認できる。また、示温部材228は、タイヤ内面に配置されているため陰になっており観察しにくい場合があるが、示温層243の変色後の色の明度が60%以上であれば、容易に確認できる。ここで、明度とは、HSVモデルにおいて定義され、明度100%を純色、明度0%を真黒とする。また、明度は、分光測色計を用いて、標章、模様部またはグラデーション部等の測定対象の明度を他系統(例えば、Lab色空間)で測定した後、photoshop(登録商標)等のソフトウェアを用いてHSV系統に変換する方法によって測定するものとする。
≪試験用ランフラットタイヤの作製≫
(応力可視化層の作製)
まず、感圧材料として、特開2009−19949号公報に記載の方法によって、
電子供与性染料前駆体を内包したマイクロカプセル分散液Aと、スチレン−ブタジエンラッテックスと硫酸処理活性白土(電子受容性化合物)とを含有する顕色剤含有液Bを調製した。上記で得られた、電子供与性染料前駆体内包マイクロカプセル分散液Aと顕色剤含有液Bとを混合し、75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)離形シート上にバーコーターにより塗布後乾燥し、離形シートより剥離して、厚さ100μmの応力可視化層を得た。
応力可視化層における測定圧力範囲については、前記シート(3cm×1cm×100μm)についての変色時の圧力を測定することで行った。なお測定は、加圧装置ミニテストプレスNP−SNL(東洋精機製作所製)を用いて加圧することで行い、変色した時の圧力を求めた。この操作を3回以上行い、応力可視化層における測定圧力範囲を決定した。
その結果、前記シートの測定圧力範囲は、3MPa以上であることが示された。
まず、シリコーン変性アクリル樹脂(セメダイン社製)を圧縮歪吸収層作製用の接着剤として準備した。
圧縮歪吸収層は、前記接着剤を用いて、万能圧縮試験機によりシート(3cm×1cm×50μm)として作製した。
前記シートの弾性率は、粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス製 DMS7100)を用いた試験速度5mm/分での測定で得られた値、すなわち前記シートに与えた圧縮応力に対して得られた歪みの測定値から、圧縮応力−歪み曲線を作成し、これによって得られる関係式に基づいて算出した。その結果、前記シートの25℃における弾性率は1×107Paであり、100℃における弾性率は1×105Paであった。
前記接着剤を、第1実施形態で示したタイヤと同様のランフラットタイヤ(サイズ:255/35R18)であって、そのサイド補強ゴム内面側の最大屈曲部を含む領域、すなわちインナーライナー上の最大屈曲部を含む領域に、鋳型等を用いて円柱状になるように塗布した。次に、応力可視化層を前記接着剤を塗布した場所と同じ場所に積層し、23℃で24時間養生することにより、下記表1に示す圧縮歪吸収層の厚さ、応力可視化層の厚さ、及び直径4mmの円柱状の応力可視化部材を有する各ランフラットタイヤを作製し、実施例1〜3及び比較例1に用いた。
前記ランフラットタイヤにおける最大屈曲部は、既述のように、前記ランフラットタイヤの通常走行時における曲率半径とランフラット走行時における曲率半径との変化量の絶対値を算出し、最も大きな値を有する場所を特定することで求めた。また、ランフラット走行時における曲率半径は、X線CT(Y.MTIS、YXLON社製)により得られる断面画像を画像処理し計測することによって測定した。
上記で調製した応力可視化部材を有するランフラットタイヤを、ドラム式走行試験機に装着し、下記の条件で走行試験が行われた。
<通常走行>
・タイヤ内圧:260kPa
・総荷重:7kN
・速度:120km/h
・走行距離:180km
<ランフラット走行>
・タイヤ内圧:100kPa
・総荷重:7kN
・速度:120km/h
・走行距離:180km
以上のそれぞれの条件での走行後、応力可視化部材の有無について、目視で確認した。なお、ランフラット走行では、ランフラットタイヤのサイド補強ゴムが繰り返し大きく撓むことがX線CTの解析による断面画像によって明らかであることが確認されている。
≪結果≫
このように、本発明における応力可視化部材は、ランフラット走行後に、サイド補強ゴムの歪み履歴を視覚的に確認することが可能であることが示された。
Claims (10)
- トレッド部及びビード部を連結するサイドウォール部と、
前記サイドウォール部の内面に配置されたサイド補強ゴムと、
前記サイド補強ゴムの内面の最大屈曲部を含む領域に配置され、圧縮歪吸収層、及び、加えられた圧力によって視覚的に変化する感圧材料を含み前記圧縮歪吸収層上に形成された応力可視化層を含む応力可視化部材と、を有し、
前記圧縮歪吸収層の厚みが10μmを超え、
前記感圧材料が、圧力により脆性破壊されるマイクロカプセルを含むランフラットタイヤ。 - トレッド部及びビード部を連結するサイドウォール部と、
前記サイドウォール部の内面に配置されたサイド補強ゴムと、
前記サイド補強ゴムの内面の最大屈曲部を含む領域に配置され、圧縮歪吸収層、及び、加えられた圧力によって視覚的に変化する感圧材料を含み前記圧縮歪吸収層上に形成された応力可視化層を含む応力可視化部材と、を有し、
前記圧縮歪吸収層の厚みが10μmを超え、
前記感圧材料が、2種以上の化合物を組み合わせて発色させる材料を含むランフラットタイヤ。 - 前記感圧材料が、2種以上の化合物を組み合わせて発色させる材料を含む請求項1に記載のランフラットタイヤ。
- 前記圧縮歪吸収層は、25℃における弾性率が1×106Pa〜1×1010Paである請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のランフラットタイヤ。
- 前記圧縮歪吸収層は、100℃における弾性率が1×105Pa〜1×1010Paである請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のランフラットタイヤ。
- 前記圧縮歪吸収層は、シリコーン樹脂系の接着剤を含む請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のランフラットタイヤ。
- 前記応力可視化部材が複数配置されている請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のランフラットタイヤ。
- 複数の前記応力可視化部材は、タイヤ周方向及びタイヤの径方向の少なくとも一方において、互いに4mm以上の間隔で配置されている請求項7に記載のランフラットタイヤ。
- 前記最大屈曲部を含む領域が、前記サイド補強ゴムのタイヤ径方向において、サイド補強ゴムの下端からサイド補強ゴムの上端までの長さの80%以内の領域である請求項1〜請求項8の何れか1項に記載のランフラットタイヤ。
- 前記応力可視化層は、0.05MPa〜50MPaの圧力で視覚的に変化する請求項1〜請求項9の何れか1項に記載のランフラットタイヤ。
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