定義
用語“抗体”および“免疫グロブリン”には、抗体または何れかのアイソタイプの免疫グロブリン、Fab、Fv、scFv、およびFdフラグメント、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、および抗体の抗原結合部分と非抗体タンパク質を含む融合タンパク質を含むが、これらに限定されない、抗原への特異的結合性を有する抗体のフラグメントが含まれる。抗体は、例えば、放射性同位体で、検出可能な産物、蛍光タンパク質を生じる酵素などで検出可能に標識することができる。抗体は、特異的結合対のメンバー、例えば、ビオチン(ビオチン−アビジン特異的結合対のメンバー)などのような他の部分とさらに結合していてもよい。抗体はまた、ポリスチレンプレートまたはビーズなどを含むが、これらに限定されない、固体支持体に結合していてもよい。該用語はまた、Fab’、Fv、F(ab’)2、および/または抗原への特異的結合性を有する他の抗体フラグメント、およびモノクローナル抗体を包含する。抗体は、一価でも二価でもよい。
本明細書に用いる用語“ヒト化免疫グロブリン”は、異なる起源の免疫グロブリンの複数部分を含む免疫グロブリンであって、少なくとも1つの部分がヒト起源のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンを意味する。例えば、ヒト化抗体は、例えばマウスのような、必要な特異性を有する非ヒト起源の免疫グロブリンに由来する複数部分、およびヒト起源の免疫グロブリン配列に由来する部分を含み(例えば、キメラ免疫グロブリン)、それらは、従来技術(例えば、合成)により化学的に共に結合されるか、または遺伝子操作技術を用いて(例えば、キメラ抗体のタンパク質部分をコード化するDNAが発現されて、隣接するポリペプチド鎖を生じる)、隣接するポリペプチドとして製造される。ヒト化免疫グロブリンの別の例は、非ヒト起源の抗体に由来するCDRおよびヒト起源の軽鎖および/または重鎖に由来するフレームワーク領域を含む、1つまたはそれ以上の免疫グロブリン鎖を含む免疫グロブリン(例えば、フレームワーク変化を有する、または有しないCDR移植抗体)である。キメラまたはCDR移植一本鎖抗体はまた、用語ヒト化免疫グロブリンに包含される。一本鎖抗体に関して、例えば、Cabillyらの、米国特許番号第4,816,567号;Cabillyらの、欧州特許番号第0,125,023 B1号;Bossらの、米国特許番号第4,816,397号;Bossらの、欧州特許番号第0,120,694 B1号;Neuberger, M. S.らの、WO 86/01533;Neuberger, M. S. らの、欧州特許番号第0,194,276 B1号;Winterの、米国特許番号第5,225,539号;Winterの、欧州特許番号第0,239,400 B1号;Padlan, E. A. らの、欧州特許出願番号第0,519,596 A1号を参照のこと。また、adnerらの、米国特許番号第4,946,778号;Hustonの米国特許番号第5,476,786号;および Bird, R. E. et al., Science, 242:423−426 (1988))を参照のこと。
例えば、ヒト化免疫グロブリンは、合成および/または組み換え核酸を用いて製造され、所望のヒト化鎖をコードする遺伝子(例えば、cDNA)を製造することができる。例えば、ヒト化可変領域をコードする核酸(例えば、DNA)配列は、PCR変異導入法を用いて構築され、改変前のヒト化可変領域をDNAテンプレートのようなヒトまたはヒト化鎖をコードするDNA配列に改変することができる(例えば、Kamman, M., et al., Nucl. Acids Res., 17:5404 (1989));Sato, K., et al., Cancer Research, 53:851−856 (1993);Daugherty, B. L. et al., Nucleic Acids Res., 19(9):2471−2476 (1991);および、Lewis, A. P. and J. S. Crowe, Gene, 101:297−302 (1991)を参照のこと)。これらの、または他の好適な方法を用いて、変異体を容易に製造することも可能である。例えば、クローン化された可変領域に変異導入することができ、所望の特異性を有する変異体をコードする配列を選択することができる(例えば、ファージライブラリから;例えば、Krebber et al., U.S. Pat. No. 5,514,548;Hoogenboom et al., WO 93/06213, 1993年4月1日公表)を参照のこと)。
“抗体フラグメント”は、無傷(インタクト)抗体の一部、例えば、インタクト抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント;二重特異性抗体;直鎖状抗体(Zapata et al., Protein Eng. 8(10):1057−1062 (1995));一本鎖抗体分子;ならびに、抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれる。抗体のパパイン消化により、“Fab”フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント(それぞれが1つの抗原結合部位を有する)、および残りの“Fc”フラグメント(容易に結晶化する能力によりそのように呼ばれる)を生じる。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位を有し、かつ依然として抗原と結合することができるF(ab’)2フラグメントを生じる。
“Fv”は、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含む最小限の抗体フラグメントである。この領域は、強力な非共有結合で連結した1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインの二量体から構成される。それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH−VL二量体の表面に抗原結合部位を画定する構造をとる。すなわち、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または、抗原に特異性のある3つのCDRのみを含む半分のFv)でさえも、抗原を認識し結合する能力を有するが、結合部位全体よりも親和性は低い。
“Fabフラグメント”もまた、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を含む。Fabフラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つまたはそれ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端にいくつかの残基を付加することによって、Fab’フラグメントとは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数)が1つの遊離チオール基を有するFab’の本明細書における名称である。F(ab’)2抗体フラグメントは、元々、Fab’フラグメント間にヒンジシステインを有する一対のFab’フラグメントとして産生された。抗体フラグメントの他の化学的結合も知られている。
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の“軽鎖”を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、明確に区別される2つの型のうちの1つに割り当てることができる。免疫グロブリンは、それらの重鎖定常ドメインのアミノ酸配列によって種々のクラスに分類される。免疫グロブリンには5つの主なクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに分類され得る。
“一本鎖Fv”または“sFv”抗体フラグメントは、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。ある態様において、Fvポリペプチドは、VHとVLドメインの間にあるポリペプチドリンカーをさらに含み、これは、抗原結合のためにscFvが所望の構造に形成することを可能にする。scFvについての検討は、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer−Verlag, New York, pp. 269−315 (1994)を参照のこと。
用語“二重特異性抗体”は、2つの抗原結合部位を有する小型抗体フラグメントであり、該フラグメントは、同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(VL)に結合している重鎖可変ドメイン(VH)(VH−VL)を含む。同じ鎖内で2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、該ドメインは別の鎖の相補ドメインと対を形成して、2つの抗原結合部位を作り出す。二重特異性抗体は、例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHollinger et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444−6448においてより詳細に記載されている。
本明細書で用いる用語“親和性”は、2つの物質(例えば、抗体および抗原)の可逆的結合の平衡定数を意味し、解離定数(Kd)として示される。親和性は、関係のないアミノ酸配列に対する抗体の親和性より高く、少なくとも1倍以上、少なくとも2倍以上、少なくとも3倍以上、少なくとも4倍以上、少なくとも5倍以上、少なくとも6倍以上、少なくとも7倍以上、少なくとも8倍以上、少なくとも9倍以上、少なくとも10倍以上、少なくとも20倍以上、少なくとも30倍以上、少なくとも40倍以上、少なくとも50倍以上、少なくとも60倍以上、少なくとも70倍以上、少なくとも80倍以上、少なくとも90倍以上、少なくとも100倍以上、または少なくとも1000倍以上、またはそれ以上であり得る。標的タンパク質に対する抗体の親和性は、例えば、約100ナノモル(nM)ないし約0.1nM、約100nMないし約1ピコモル(pM)、または約100nMないし約1フェムトモル(fM)またはそれ以上であり得る。本明細書で用いる用語“親和力(avidity)”は、2種以上の物質の複合体の希釈後の解離に対する抵抗性を意味する。用語“免疫反応性”および“特異的結合(preferentially bind)”は、本明細書中、抗体および/または抗原結合フラグメントに対して互換的に用いられている。
用語“結合”は、例えば、塩架橋および水架橋のような相互作用を含む、共有結合、静電的結合、疎水性結合、ならびにイオン結合および/または水素結合相互作用による、2つの分子間の直接結合を意味する。好適な抗Tau抗体は、Tauポリペプチド内のエピトープに特異的に結合する。非特異的結合は、約10−7M未満の親和性での結合、例えば、10−6M、10−5M、10−4Mなどの親和性での結合を意味し得る。
本明細書で用いる用語“CDR”または“相補性決定領域”は、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される不連続な抗原結合部位を意味することが意図される。CDRは、Kabat et al., J. Biol. Chem. 252:6609−6616 (1977);Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, “Sequences of proteins of immunological interest” (1991);Chothia et al., J. Mol. Biol. 196:901−917 (1987);および、MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732−745 (1996)に記載されており、ここでは、定義は、互いを比較したとき、アミノ酸残基の重複または一部を含む。しかしながら、抗体もしくは移植抗体またはその変異体のCDRについての定義の適用は、本明細書で定義され、かつ使用される用語の範囲内であることが意図される。上記の文献の何れかに定義されるCDRを含むアミノ酸残基は、以下の表1に比較して記載される。
本明細書で用いる用語“フレームワーク”は、抗体の可変領域に関して用いるとき、抗体の可変領域内のCDR領域の外側の全てのアミノ酸残基を意味することを意図する。可変領域フレームワークは、一般的に、約100−120個のアミノ酸長の不連続なアミノ酸配列であるが、CDRの外側のアミノ酸のみを意味することが意図される。本明細書で用いる用語“フレームワーク領域”は、CDRにより分断されるフレームワークの各ドメインを意味することが意図される。
“単離された”抗体とは、天然環境の成分から同定、分離および/または回収されたものである。天然環境の混入成分は、抗体の診断用途または治療用途を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性もしくは非タンパク質性溶質を含み得る。ある態様において、抗体は、(1)ローリー法で決定したとき、抗体が90重量%以上、95重量%以上、または98重量%以上、例えば、99重量%を越えるまで精製され、(2)スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)の使用によってN末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで精製され、または(3)クマシーブルーまたは銀染色を用いる還元または非還元条件下のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で均質になるまで精製される。単離された抗体には、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分も存在しないので、組換え細胞内に存在する抗体が含まれる。ある例において、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製され得る。
用語“エピトープ”または“抗原決定基”とは、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原上の部位を意味する。エピトープは、連続するアミノ酸から、またはタンパク質の三次構造フォールディングによって近接される非連続のアミノ酸の両方から形成され得る。連続するアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒への暴露に対して保持されるが、三次構造フォールディングによって形成されるエピトープは、一般的には、変性溶媒での処理時に失われる。エピトープは、一般的に、固有の空間的立体構造中に少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸を含む。所定の抗体によって結合されるエピトープを決定する方法(すなわち、エピトープマッピング)は、当技術分野で周知であり、例えば、イムノブロッティングおよび免疫沈降アッセイが含まれ、ここで、Tauからの重複ペプチドまたは隣接ペプチドを、所定の抗Tau抗体との反応性について試験する。エピトープの空間的立体構造を決定する方法は、当技術分野の技術および本明細書に記載の技術を含み、例えば、X線結晶学および2次元核磁気共鳴(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, G. E. Morris, Ed. (1996))を含む。
他の技術は、例えば、エピトープの原子分解能を提供する抗原:抗体複合体の結晶のX線分析のような、エピトープマッピング法が含まれる。他の方法は、抗原フラグメントまたは抗原の変異したバリエーションへの抗体の結合をモニタリングすることであり、ここで、抗原配列内のアミノ酸残基の修飾による結合の喪失は、エピトープ成分の指標とみなされることが多い。さらに、エピトープマッピングのためのコンピュータ上で行うコンビナトリアル計算法を使用することもできる。これらの方法は、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから特定の短いペプチドを親和性により単離するための目的の抗体の能力に依存する。その後、ペプチドは、ペプチドライブラリーをスクリーニングするために使用される抗体に対応するエピトープを定義するためのリード(lead)とみなされる。エピトープマッピングのために、コンホメーションの不連続なエピトープをマッピングして示す、計算アルゴリズムもまた開発されている。
用語“エピトープマッピング”とは、抗体−抗原認識のための分子決定基を同定するプロセスを意味する。
2以上の抗体について、用語“同じエピトープに結合する”とは、同じ、重複する、または包含される、アミノ酸の連続または不連続セグメントに結合する抗体を意味する。当業者は、用語“同じエピトープに結合する”が、該抗体が正確に同じアミノ酸に結合することを必ずしも意味するものではないことを理解する。抗体が結合する正確なアミノ酸は異なっていてよい。例えば、一次抗体は、二次抗体が結合するアミノ酸のセグメントに完全に包含されるアミノ酸のセグメントに結合し得る。別の例において、一次抗体は、二次抗体が結合する1つまたはそれ以上のセグメントを有意に重複するアミノ酸の1つまたはそれ以上のセグメントに結合する。本発明の目的のために、かかる抗体は、“同じエピトープに結合する”と考えられる。
従って、本明細書に記載の特定の抗体によって認識されるエピトープの全てまたは一部を含むTau上のエピトープに結合する抗体もまた、本発明に包含される(例えば、同一または重複領域または領域間もしくはスパニング領域)。
本明細書に記載の抗体とTauへの結合について競合する抗体もまた、本発明に包含される。結合について競合する抗体は、常套技術を用いて同定され得る。かかる技術には、例えば、標的抗原への別の抗体の結合を遮断する一の抗体の能力を示す免疫アッセイ、すなわち、競合的結合アッセイが含まれる。競合的結合は、試験下での免疫グロブリンが、Tauのような共通の抗原への対照抗体の特異的結合を阻止するアッセイにおいて決定される。多数の競合的結合アッセイが知られており、例えば、固相直接もしくは間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接もしくは間接酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al., Methods in Enzymology 9:242 (1983)参照)、固相直接ビオチン−アビジンEIA (Kirkland et al., J. Immunol. 137:3614 (1986)参照)、固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ (Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1988)参照)、I-125標識を用いる固相直接標識 RIA (Morel et al., Mol. Immunol. 25(1):7 (1988)参照)、固相直接ビオチン−アビジンEIA (Cheung et al., Virology 176:546 (1990))、ならびに直接標識RIA (Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32:77 (1990))が知られている。一般的に、かかるアッセイは、これらの、非標識試験免疫グロブリンおよび標識対照免疫グロブリンのいずれかを有する固体表面または細胞に結合した精製抗原の使用を含む。競合的阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することにより測定される。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。通常、競合抗体が過剰に存在するとき、共通抗原に対する対照抗体の特異的結合が、少なくとも50から55%、55から60%、60から65%、65から70%、70から75%またはそれ以上阻害され得る。
本明細書中、互換的に用いられる用語“ポリペプチド”、“ペプチド”および“タンパク質”は、何れかの長さのアミノ酸の多量体形態を意味し、それには、遺伝子的にコード化されたおよび非遺伝子的にコード化されたアミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導化されたアミノ酸、ならびに修飾ペプチド主鎖を有するポリペプチドが含まれ得る。該用語は、融合タンパク質を含み、異種アミノ酸配列を含む融合タンパク質、異種および同種リーダー配列を含む融合タンパク質、N末端メチオニン残基を有する、または有しないもの、免疫学的タグ付加タンパク質などを含むがこれらに限定されない。
本明細書で用いる用語“処置”、“処置する”などは、所望の薬理学的および/もしくは生理学的効果を得ることを意味する。該効果は、疾患またはその症状の完全または部分的な防止という点で予防的であってよく、かつ/または、疾患および/もしくは該疾患に起因する有害作用に関する部分的または完全な治癒という点で治療的であってもよい。本明細書で用いる“処置”とは、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の全ての処置を包含し、以下の段階を含む。(a)疾病の素因を持ち得るが、それを有するとまだ診断されていない対象において、疾病の発症を防止する段階、(b)疾病を阻害する、すなわち、その進行を阻止する段階、および(c)疾病を緩和する、すなわち、疾病を緩解させる段階。
本明細書中、互換的に用いられる用語“個体”、“対象”、“宿主”および“患者”は、マウス(ラット、マウス)、非ヒト哺乳動物、ヒト、イヌ科、ネコ科、有蹄動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限定されない哺乳動物を意味する。
“治療的有効量”または“有効量”は、疾患の処置のために哺乳動物または他の対象に投与されるとき、疾患のそのような処置に有効である十分量、抗Tau抗体の量を意味する。“治療的有効量”は、抗Tau抗体、疾患およびその重篤度ならびに処置される対象の年齢、体重などによって変わり得る。
本明細書で用いる用語“固定用量”、“均一な用量”および“均一な固定用量”は、互換的に用いられ、患者の体重および体表面積(BSA)に関係なく該患者に投与される用量を意味する。従って、固定用量または均一な用量は、体重1kg当たりのmgとしてではなく、むしろ薬剤(例えば、抗Tau抗体)の絶対量として提供される。
本明細書で用いる“体表面積(BSA)に基づく用量”は、個々の患者の体表面積(BSA)に対して調整される、(例えば、抗Tau抗体)の用量を意味する。BSAに基づく用量は、体重1kg当たりのmgとして提供され得る。種々の計算が、直接計測することなくBSAに達するために公開されており、そのうち最も広く使用されているのが、デュ・ボアの式(Du Bois D, Du Bois EF (Jun 1916) Archives of Internal Medicine 17 (6): 863-71; および、 Verbraecken, J. et al. (Apr 2006)。Metabolism - Clinical and Experimental 55 (4): 515-24)である。他の例示的なBSA式には、モステラー式(Mosteller RD. N Engl J Med., 1987; 317:1098)、ヘイコック式(Haycock GB, et al., J Pediatr 1978, 93:62-66)、ゲーハン(Gehan)およびジョージの式 (Gehan EA, George SL, Cancer Chemother Rep 1970, 54:225-235)、ボイド式(Current, JD (1998), The Internet Journal of Anesthesiology 2 (2);および、Boyd, Edith (1935), University of Minnesota. The Institute of Child Welfare, Monograph Series, No. x. London: Oxford University Press)、藤本式 (Fujimoto S, et al., Nippon Eiseigaku Zasshi 1968;5:443-50)、高平式 (Fujimoto S, et al., Nippon Eiseigaku Zasshi 1968;5:443-50)、およびシュリック式(Schlich E, et al., Ernauhrungs Umschau 2010;57:178-183)が含まれる。
“生物学的サンプル”は、個体から得られる種々のサンプルタイプを包含し、診断またはモニタリングアッセイで使用され得る。定義は、生物学的起源の血液および他の液状サンプル、生検標本または組織培養物もしくはそれらに由来する細胞およびその子孫細胞のような固体組織サンプルを包含する。定義はまた、それらを入手後に何れかの方法、例えば、試薬での処理、可溶化、またはポリヌクレオチドのようなある成分の富化により、操作されたサンプルを包含する。用語“生物学的サンプル”は、臨床サンプルを包含し、また、培養細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生物学的液体、および組織サンプルを包含する。用語“生物学的サンプル”は、尿、唾液、脳脊髄液、血漿および血清のような血液画分などを含む。
本明細書で用いる用語“急性タウオパチー”は、対象の細胞外液 (例えば、脳脊髄液 (CSF)、間質液(ISF)、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿のような血液画分)中の異常に上昇した (例えば、正常の、対照レベルのTauと比較して上昇した) Tau、例えば、対象の脳および/または中枢神経系の関連組織に対する物理的な暴行による傷害後の細胞外液中の上昇したTauの突然の発症に関連する疾患、障害または病状を意味する。かかる傷害の後には、一般的に、比較的短期間の、例えば数週間または数ヶ月(またはより短い期間)以内の、細胞外液(例えば、CSF、ISF、血液および/または血液画分(例えば、血漿))中のTauの上昇がある。かかる傷害の例には、物理的外傷(例えば、頭部損傷) および卒中が含まれるが、これに限定されない。急性タウオパチーの非限定的な例としては、卒中、慢性外傷性脳症、外傷性脳損傷、脳震盪、発作、癲癇(例えば、ドラベ症候群 (乳児の重症ミオクロニー癲癇(SMEI)としても知られている)、および急性鉛毒性脳症がある。
用語“外傷性脳損傷”(“TBI”としても知られている)は、外傷が脳に損傷を起こした時に生じる、後天性の脳損傷の形態 (例えば、外的な力により引き起こされる脳への損傷)である。例えば、TBIは、頭部を突然激しく物に打ち付けたとき (例えば、落下時、自動車事故、スポーツイベント、または任意の数の異なる方法)、または物が頭蓋骨を貫通し、脳組織へ到達したときに、生じ得る。両タイプのTBIが原因で、脳組織の打撲、脳内の出血、脳の大きなまたは小さな裂傷、および/または剪断力による神経損傷が引き起こされ得る。脳はまた、多数の二次性の損傷、例えば腫れ、発熱、痙攣、または神経学的化学物質の不均衡などを経験し得る。TBIの症状は 脳への損傷の程度によって、軽度、中程度または重度であり得る。軽度のTBIを有するヒトは、意識があるか、または数秒もしくは数分間の意識喪失を経験し得る。軽度のTBIの他の症状には、頭痛、混乱、立ちくらみ、めまい、視力障害もしくは疲れ眼、耳鳴り、口の中の不快な味、疲労もしくは無気力、睡眠パターンの変化、行動もしくは気分の変化、および記憶、集中、注意もしくは思考のトラブルが含まれる。中程度または重度のTBIを有するヒトは、これらの同じ症状を示し得るが、悪化したか、もしくは治まらない頭痛、繰り返す嘔吐もしくは悪心、痙攣もしくは発作、睡眠からの覚醒不能、一方もしくは両方の瞳孔の散大、不明瞭な発語(slurred speech)、四肢の筋力低下またはしびれ、協調性の喪失、および増加した混乱、落ち着きのなさ、または動揺などを有していてよい。TBIの例としては、びまん性軸索損傷、脳震盪、挫傷、真撃−反衝損傷(Coup-Contrecoup injury)、セカンドインパクト症候群、穿通損傷、乳幼児揺さぶられ症候群、および閉じ込め症候群が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で用いる“慢性タウオパチー”は、一般的に、対象の細胞外液中の上昇したTau、例えば、比較的長期間、例えば数十年間の、細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血液、および/または血液画分 (例えば、血漿))中のTauの蓄積の、漸進的発症に関連する状態を意味する。慢性タウオパチーには、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン型認知症複合、好銀顆粒性認知症、英国型アミロイド血管症、大脳アミロイド血管症、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ボクサー認知症、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化、ダウン症候群、前頭側頭骨性認知症(FTD)、17番染色体に関連するパーキンソン症状がみられる前頭側頭骨性認知症、前頭側頭葉変性症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、ハラーフォルデン−シュパッツ疾患、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋緊張性ジストロフィー、ニーマン・ピック病C型、神経原線維変化を伴う非グアマニアン(non-Guamanian)運動神経疾患、ピック病、脳炎後のパーキンソン症状、プリオンタンパク質脳アミロイドアンギオパチー、進行性皮質下神経膠症、進行性核上非性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、神経原線維変化型老年認知症、および多発梗塞性認知症が含まれるが、これらに限定される必要はない。
本発明をさらに記載する前に、本発明は、ここに記載される特定の態様に限定されるべきものではなく、言うまでもなくその態様が変更されていてもよいことが理解されるべきである。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され得るものであるため、本明細書で用いる用語は、特定の態様のみを記載する目的で使用されており、本発明の範囲を限定する意図を有していないことが理解されるべきである。
数値の範囲が記載されるているとき、他に明確にこれと異なる記載がなされない限り、下限の単位の、各10分の1まで、その範囲の上限と下限の間の各中間値、および所定範囲内の任意の他の記載値または中間値は、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、その小さい範囲に独立して包含され得て、また、本発明の範囲内に包含されても、所定の範囲から除外されてもよい。所定の範囲が、限界の一方または両方を包含するとき、それが包含される限界の一方または両方を除外する範囲もまた、本発明に包含される。
他に特記されない限り、本明細書に用いる全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および物質と同様のまたは均等な方法および物質もまた、本発明の実施または試験に使用され得るが、好ましい方法および物質が本明細書中に記載される。本明細書に記載の全ての文献は、引用により、その文献が引用される事柄に関する方法および/または物質についての開示および記載が本明細書中に包含される。
本明細書中、他に明確に記載がない限り、本明細書中および添付の特許請求の範囲における単数表記は、複数の意味を含むことが注意されるべきである。従って、例えば、単数で記載された抗Tau抗体は、複数のそのような抗Tau抗体を包含し、タウオパチーという記載は、1種またはそれ以上のタウオパチーおよび当業者に知られているそれらと同等の疾患が包含される。さらに、特許請求の範囲は、何か任意の要素を除くように記載され得ることが注意される。そのような場合、この記載は、だけ、のみなどの排他的用語の使用および特許請求の範囲の要素の記載に関して同様の使用、または否定的な限定の使用に対する先行記載となることが意図される。
明確にするために、本明細書中、別個の態様で記載される本発明の一定の特徴はまた、単一の態様の組み合わせで提示され得る。逆に、簡単にするために、一態様で記載される本発明の種々の特徴はまた、別個に、または任意の好適な下位の組み合わせで提示され得る。全ての本発明に関する態様の組み合わせは、特に本発明に包含され、各々のおよび全ての組み合わせが、個々に、そして明確に記載されているように、本明細書に記載される。さらに、種々の態様およびその要素の全ての下位の組み合わせもまた、本発明に特に包含され、各々のおよび全てのかかる下位の組み合わせが、個々に、および明確に記載されているように、本明細書に含まれる。
本明細書に記載の文献は、本出願の出願日前にそれらの開示内容を単に提供するにすぎない。それらの何れも、本発明が、先行発明として、かかる文献に先行しないと認めるとの認識と解されるべきではない。さらに、提供される文献の出版日は、実際の出版日とは異なり得るので、個々に確認される必要がある。
詳細な説明
本発明は、個体におけるタウオパチーの処置のための方法を提供する。
タウオパチーの処置法
本発明は、タウオパチー、例えば、急性タウオパチーの処置法を提供する。この方法は、一般的に、有効量の抗Tau抗体、または抗Tau抗体を含む医薬組成物を、それを必要とする個体に投与することを含む。ある態様において、抗Tau抗体は、TauのN末端領域内のエピトープに特異的に結合する。ある態様において、抗Tau抗体は、細胞外Tau (eTau) のN末端領域内のエピトープに特異的に結合する。ある態様において、抗体はヒト化されている。ある態様において、細胞外液は、脳脊髄液(CSF)、間質液(ISF)、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿のような血液画分)である。ある態様において、タウオパチーは、急性タウオパチーであり、例えば、卒中、慢性外傷性脳症、外傷性脳損傷、脳震盪、発作、癲癇(例えば、ドラベ症候群 (乳児の重症ミオクロニー癲癇(SMEI)としても知られる)、および急性鉛毒性脳症である。Gheyaraらにより記載される通り、Tauの減少は、ドラベ症候群および他の難治性の遺伝性てんかんに治療上有益であり得る (Ann Neurol. 2014 Sep;76(3):443-56)。従って、本明細書に記載の方法は、例えば、癲癇 (例えば、ドラベ症候群)を含む、任意の急性タウオパチーを処置するのに有用であり得る。
ある態様において、遊離Tauレベルが低減される。“遊離Tau”とは、抗Tau抗体に結合していないTauポリペプチドを意味する。一態様において、遊離Tauは、細胞外Tau (eTau)である。総Tauには、遊離Tauおよび抗Tau抗体に結合されているTauが含まれる。ある態様において、総Tauのレベルが低減される。ある態様において、細胞外液中の結合したTau (抗Tau抗体に結合しているTau)のレベルが増加する。
本発明は、個体のタウオパチー(例えば、急性タウオパチー)を処置する方法、個体の細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿))中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの態様において、Tau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルは、抗Tau抗体の投与後36時間以内に顕著に低減される。例えば、ある態様において、有効量の抗Tau抗体は、抗Tau抗体の投与後48時間以内、36時間以内、24時間以内、12時間以内、8時間以内、4時間以内、2時間以内、1時間以内、30分以内、15分以内または5分以内に、細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルを顕著に低減するのに有効な量である。例えば、ある態様において、有効量の抗Tau抗体は、5分から約10分、約10分から約15分、約15分から約30分、約30分から約1時間、約1時間から約2時間、約2時間から約4時間、約4時間から約8時間、約8時間から約12時間、約12時間から約24時間、約24時間から約36時間、約24時間から約48時間、または約36時間から約48時間以内に、細胞外液中のTau(例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルを顕著に低減させるのに有効な量である。
個体の細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿))中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルの顕著な低減とは、少なくとも10%の減少、少なくとも15%の減少、少なくとも20%の減少、少なくとも25%の減少、少なくとも30%の減少、少なくとも40%の減少、少なくとも45%の減少、少なくとも50%の減少、少なくとも75%の減少、少なくとも80%の減少、少なくとも85%の減少、少なくとも90%の減少、少なくとも95%の減少、または90%以上の減少である。いくつかの態様において、細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルは、正常な、対照レベル(例えば、約100pg/ml)まで低減される。いくつかの態様において、細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルは、検出不可能なレベルに低減される。ある態様において、細胞外液はCSFである。他の場合に、細胞外液は間質液(ISF)である。他の場合に、細胞外液は血漿である。他の場合に、細胞外液は全血である。他の場合に、細胞外液は血清である。
本発明は、個体におけるタウオパチー(例えば、急性タウオパチー)の処置法を提供する。該方法は、一般的に、個体の細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿))中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含む。
個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルの顕著な低減とは、少なくとも10%の減少、少なくとも15%の減少、少なくとも20%の減少、少なくとも25%の減少、少なくとも30%の減少、少なくとも35%の減少、少なくとも40%の減少、少なくとも45%の減少、少なくとも50%の減少、少なくとも55%の減少、少なくとも60%の減少、少なくとも65%の減少、少なくとも70%の減少、少なくとも75%の減少、少なくとも80%の減少、少なくとも85%の減少、少なくとも90%の減少、少なくとも95%の減少、または90%以上の減少である。いくつかの態様において、細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルは、正常な、対照レベル(例えば、約100pg/ml)まで低減される。いくつかの態様において、細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルは、検出不可能なレベルに低減される。ある態様において、細胞外液はCSFである。他の場合に、細胞外液は間質液(ISF)である。他の場合に、細胞外液は血漿である。他の場合に、細胞外液は血清である。他の場合に、細胞外液は全血である。
ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法は、個体の細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿))中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、該抗Tau抗体は、細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルを、抗Tau抗体の投与後48時間以内に顕著に低減するのに有効である。例えば、ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法は、個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、該抗Tau抗体は、細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルを、抗Tau抗体の投与後48時間以内、36時間以内、24時間以内、12時間以内、8時間以内、4時間以内、2時間以内、1時間以内、または30分以内 (または30分未満)に顕著に低減するのに有効である。例えば、ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法は、個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、該抗Tau抗体は、細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルを、約15分から約30分以内、約30分から約1時間、約1時間から約2時間、約2時間から約4時間、約4時間から約8時間、約8時間から約12時間、約12時間から約24時間、約24時間から約36時間、または約36時間から約48時間以内の間、顕著に低減するのに有効である。
ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法は、個体の細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿))中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、該Tau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)の低減レベルは、抗Tau抗体の投与後、少なくとも2時間に亘って維持される。例えば、ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー) の処置法は、個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を投与することを含み、ここで、Tau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)の低減レベルは、該抗Tau抗体の投与後、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも120時間、少なくとも144時間、少なくとも168時間、または168時間以上に亘って維持される。例えば、ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法は、個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、Tau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)の低減レベルは、約2時間から約4時間、約4時間から約8時間、約8時間から約12時間、約12時間から約24時間、約24時間から約36時間、約36時間から約48時間、約48時間から約72時間、約72時間から約96時間、約96時間から約120時間、約120時間から約144時間、約144時間から約168時間、または168時間以上 (例えば、8日、10日、14日、または14日以上)に亘って維持される。ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法は、個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、Tau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)の低減レベルは、少なくとも7日、少なくとも10日、少なくとも2週間、または少なくとも4週間に亘って維持される。例えば、ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー) の処置法は、個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、Tau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)の低減レベルは、約7日から約10日、約10日から約2週間、または約2週間から約4週間、または4週間以上 (例えば、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、または6ヶ月以上)に亘って維持される。
ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー) の処置法は、個体の細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿)) 中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、Tau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) の低減レベルは、細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿))中のAβレベルの低下をもたらす期間に亘って維持される。例えば、いくつかの態様において、細胞外液中のAベータ (Aβ)は、抗Tau抗体の投与後約1日から約25日の期間に亘って顕著に低減される。例えば、いくつかの態様において、細胞外液中のAβレベルは、抗Tau抗体の投与後、約1日から約5日、約5日から約10日、約10日から約15日、約15日から約20日、または約20日から約25日の期間に亘って顕著に低減される。抗Tau抗体は、Aβレベルをある期間に亘って継続的に抑制するために投与され得る。Aβは、Aβ40およびAβ42を含む。ある態様において、Aβ40レベルが低減される。ある態様において、Aβ42レベルが低減される。ある態様において、Aβ42およびAβ40の両レベルが低減される。Aβレベルの“顕著な減少”とは、抗Tau抗体を投与しないときのAβレベルと比較して(例えば、抗Tau抗体の投与前のAβレベルと比較して)、Aβレベルの、少なくとも5%の減少、少なくとも10%の減少、少なくとも15%の減少、少なくとも20%の減少、少なくとも25%の減少、少なくとも30%の減少、少なくとも40%の減少、少なくとも45%の減少、少なくとも50%の減少、または50%以上の減少である。
ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法は、個体の細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿)) 中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、細胞外液はCSFである。ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法は、個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、細胞外液はISFである。ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー) の処置法は、個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、細胞外液は血漿である。
ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法は、個体の細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿))中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、抗Tau抗体は、皮下投与により、例えば、皮下注射により投与される。ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法は、個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、抗Tau抗体は髄腔内投与により投与される。ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー) の処置法は、個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、抗Tau抗体は、静脈内投与、例えば、静脈内注射により投与される。
ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー) の処置法は、個体の細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿)) 中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、抗Tau抗体は、体重1kg当たり、約0.1mgから約50mgの量で投与される。例えば、ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法は、個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、抗Tau抗体は、体重1kg当たり、約0.1mgから約0.5mg、約0.5mgから約1mg、約1mgから約5mg、約5mgから約10mg、約10mgから約15mg、約15mgから約20mg、約20mgから約25mg、約25mgから約30mg、約30mgから約35mg、約35mgから約40mg、約40mgから約45mg、または約45mgから約50mg、または50mg以上の量で投与される。
ある態様において、抗Tau抗体は、体重1kg当たり、約0.1mgから約0.5mg、約0.5mgから約1mg、約1mgから約5mg、約5mgから約10mg、約10mgから約15mg、約15mgから約20mg、約20mgから約25mg、約25mgから約30mg、約30mgから約35mg、約35mgから約40mg、約40mgから約45mg、または約45mgから約50mg、または50mg以上の量で投与され、そして該抗Tau抗体は単回用量で投与される。
ある態様において、抗Tau抗体は、体重1kg当たり、約0.1mgから約0.5mg、約0.5mgから約1mg、約1mgから約5mg、約5mgから約10mg、約10mgから約15mg、約15mgから約20mg、約20mgから約25mg、約25mgから約30mg、約30mgから約35mg、約35mgから約40mg、約40mgから約45mg、または約45mgから約50mg、または50m以上の量で投与され、そして該抗Tau抗体は、多数回 (2回またはそれ以上) の用量で投与される。
ある態様において、抗Tau抗体は、体重1kg当たり、約0.1mgから約0.5mg、約0.5mgから約1mg、約1mgから約5mg、約5mgから約10mg、約10mgから約15mg、約15mgから約20mg、約20mgから約25mg、約25mgから約30mg、約30mgから約35mg、約35mgから約40mg、約40mgから約45mg、または約45mgから約50mg、または50mg以上の量で投与され、そして該抗Tau抗体は、多数回用量で投与され、例えば、抗Tau抗体は、1時間に1回、2時間に1回、3時間に1回、4時間に1回、5時間に1回、6時間に1回、7時間に1回、8時間に1回、9時間に1回、10時間に1回、12時間に1回、24時間に1回、48時間に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、7日に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、4ヶ月に1回、6ヶ月に1回、または1年に1回投与される。
ある態様において、抗Tau抗体は、体重1kg当たり、約0.1mgから約0.5mg、約0.5mgから約1mg、約1mgから約5mg、約5mgから約10mg、約10mgから約15mg、約15mgから約20mg、約20mgから約25mg、約25mgから約30mg、約30mgから約35mg、約35mgから約40mg、約40mgから約45mg、または約45mgから約50mg、または50mg以上の量で投与され、そして該抗Tau抗体は多数回用量で投与され、例えば、抗Tau抗体の初回用量は、上昇したTauレベルをもたらす対象の脳および/または中枢神経系の関連組織への物理的攪乱に起因する損傷の、30分以内、1時間以内、2時間以内、4時間以内、8時間以内、12時間以内、24時間以内、2日以内、4日以内、1週間以内、2週間以内、4週間以内、または2ヶ月以内に投与され、そして抗Tau抗体のその後の用量は、抗Tau抗体の初回用量の投与後、約1時間から約1年もしくはそれ以上(例えば、約1時間から約4時間、約4時間から約8時間、約8時間から約12時間、約12時間から約24時間、約24時間から約2日、約2日から約4日、約4日から約7日、約1週間から約2週間、約2週間から約4週間、約4週間から約2ヶ月、約2ヶ月から約4ヶ月、約4ヶ月から約6ヶ月、約6ヶ月から約1年、または1年以上)の時点で投与される。
ある態様において、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法は、個体の細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿)) 中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、抗Tau抗体は、単回のボーラス注射で投与される。
他の場合に、本発明のタウオパチー (例えば、急性タウオパチー) の処置法は、個体の細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血液、または血液画分 (例えば、血清または血漿)) 中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、抗Tau抗体は、多数回用量 (例えば、2、3、4、5、またはそれ以上の用量)で投与される。多数回用量が投与されるとき、投与間隔は、1時間毎、2時間毎、3時間毎、4時間毎、5時間毎、6時間毎、7時間毎、8時間毎、9時間毎、10時間毎、12時間毎、24時間毎、48時間毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎などであり得る。
本発明は、個体におけるタウオパチー (例えば、急性タウオパチー) の処置法を提供し、ここで、該方法は、個体の脳脊髄液 (CSF)中の抗Tau抗体の最小濃度を提供するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含む。ある態様において、CSF中の抗Tau抗体の最小濃度は、抗Tau抗体の投与の30分以内に達成される。ある態様において、CSF中の抗Tau抗体の最小濃度は、抗Tau抗体の投与の1時間以内に達成される。ある態様において、CSF中の抗Tau抗体の最小濃度は、抗Tau抗体の投与の、48時間以内、36時間以内、24時間以内、12時間以内、8時間以内、4時間以内、2時間以内、1時間以内、または30分以内 (または30分未満)で達成される。ある態様において、CSF中の抗Tau抗体の最小濃度は、約15分から約30分、約30分から約1時間、約1時間から約2時間、約2時間から約4時間、約4時間から約8時間、約8時間から約12時間、約12時間から約24時間、約24時間から約36時間、または約36時間から約48時間の時間内に達成される。
ある態様において、個体においてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー) を処置するための本発明の方法は、個体のCSFにおいて抗Tau抗体の最小濃度を提供するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、CSF中の抗Tau抗体の最小濃度は、少なくとも20ng/mlである。例えば、ある態様において、個体においてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー) を処置するための本発明の方法は、個体のCSFにおいて抗Tau抗体の最小濃度を提供するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、CSF中の抗Tau抗体の最小濃度は、少なくとも20ng/ml、少なくとも25ng/ml、少なくとも30ng/ml、少なくとも40ng/ml、少なくとも50ng/ml、少なくとも60ng/ml、少なくとも75ng/ml少なくとも100ng/ml、少なくとも125ng/ml、少なくとも150ng/ml、少なくとも175ng/ml、少なくとも200ng/ml、少なくとも250ng/ml、少なくとも300ng/ml、少なくとも350ng/ml、少なくとも400ng/ml、少なくとも450ng/ml、少なくとも500ng/ml、少なくとも550ng/ml、少なくとも600ng/ml、少なくとも650ng/ml、少なくとも700g/ml、少なくとも750ng/ml、または少なくとも800ng/mlである。例えば、ある態様において、個体においてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー) を処置するための本発明の方法は、個体のCSFにおいて抗Tau抗体の最小濃度を提供するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、CSF中の抗Tau抗体の最小濃度は、約20ng/mlから約30ng/ml、約30ng/mlから約40ng/ml、約40ng/mlから約50ng/ml、約50ng/mlから約60ng/ml、約60ng/mlから約75ng/ml、約75ng/mlから約100ng/ml、約100ng/mlから約150ng/ml、約150ng/mlから約200ng/ml、約200ng/mlから約250ng/ml、約250ng/mlから約300ng/ml、約300ng/mlから約350ng/ml、約350ng/mlから約400ng/ml、約400ng/mlから約450ng/ml、約450ng/mlから約500ng/ml、約500ng/mlから約550ng/ml、約550ng/mlから約600ng/ml、約600ng/mlから約700ng/ml、約700ng/mlから約800ng/ml、または800ng/ml以上である。
ある態様において、個体においてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー) を処置するための本発明の方法は、個体のCSF中の抗Tau抗体の最小濃度を提供するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、CSF中の抗Tau抗体の最小濃度は、CSF中の抗Tau抗体:Tauのモル比が少なくとも2:1である。例えば、ある態様において、個体においてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置するための本発明の方法は、個体のCSF中の抗Tau抗体の最小濃度を提供するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、CSF中の抗Tau抗体の最小濃度は、CSF中の抗Tau抗体:Tauのモル比が、少なくとも2:1、少なくとも2.5:1、少なくとも3:1、少なくとも3.5:1、少なくとも4:1、少なくとも4.5:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、または少なくとも10:1である。
ある態様において、タウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置するための本発明の方法は、個体のCSF中の抗Tau抗体の最小濃度を提供するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、急性タウオパチーは外傷性脳損傷である。ある態様において、タウオパチー (例えば、急性タウオパチー) を処置するための本発明の方法は、個体のCSF中の抗Tau抗体の最小濃度を提供するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含み、ここで、急性タウオパチーは卒中である。
本発明は、個体における外傷性脳損傷(TBI) の処置法を提供し、該方法は、一般的に、個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau) のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含む。ある態様において、抗体は、外傷性脳損傷の48時間以内に投与される。ある態様において、抗体は、TBIの48時間以内、36時間以内、24時間以内、12時間以内、8時間以内、4時間以内、2時間以内、1時間以内、または30分以内 (または、30分未満)に投与される。
本発明は、個体における卒中の処置法を提供し、該方法は、一般的に、個体の細胞外液中のTau (例えば、総Tauおよび/または遊離Tau)のレベルを顕著に低減するのに有効な量で抗Tau抗体を該個体に投与することを含む。ある態様において、抗体は、卒中の48時間以内に投与される。ある態様において、抗体は、卒中の48時間以内、36時間以内、24時間以内、12時間以内、8時間以内、4時間以内、2時間以内、1時間以内、または30分以内 (または、30分未満)に投与される。
細胞外液中の抗eTau 抗体に結合していない遊離Tau、例えば、遊離細胞外Tau (eTau)の量を、以下の通りに決定することができる。遊離Tauの量は、a)固定化抗体を個体から得られた細胞外液 (例えば、CSF、ISF、血清、血液または血漿) のサンプルと接触させ(ここで、固定化抗体は、個体に投与された抗eTau抗体とeTauへの結合について競合し、接触は、固定化抗体への結合していないeTauの結合に適する条件下で行う。)、そしてb)固定化抗体に結合したeTauの量を決定することを含む方法により決定され得る。固定化抗体に結合したeTauの量は、サンプル中の抗Tau抗体に結合していないeTauの量の指標である。ある態様において、固定化抗体に結合したeTauの量は、抗体eTauへの結合について固定化抗体と競合しない、検出可能に標識された第三の抗体を用いて決定される。
抗体
本発明での使用に適する抗Tau抗体 (または、VH/VLドメインもしくはそれに由来するCDR)は、当技術分野で周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において承認されている抗Tau抗体を使用可能である。同じエピトープに結合する抗体および/またはTauへの結合についてこれらの当技術分野において承認されている抗体のいずれかと競合する抗体もまた、使用可能である。
抗Tau抗体の一例は、配列番号37および41にそれぞれ示される配列を有する重鎖および軽鎖を含むhu-IPN002 (IPN007およびIPN002 変異体2としても知られる)、またはその抗原結合フラグメントおよび変異体である。hu-IPN002は、細胞外Tauに結合するヒト化免疫グロブリン (IgG4) モノクローナル抗体である。
他の態様では、抗体は、hu-IPN002の重鎖および軽鎖CDRまたは可変領域を含む。従って、一態様において、抗体は、配列番号37に記載される配列を有するhu-IPN002のVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号41に記載される配列を有するhu-IPN002のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の態様において、抗体は、配列番号10、11および12にそれぞれ記載される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号7、8および9にそれぞれ記載される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の態様において、抗体は、配列番号37および/または配列番号41にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を有するVHおよび/またはVL領域を含む。別の態様において、抗体は、配列番号29および/または配列番号33にそれぞれ記載される核酸によりコード化される重鎖可変 (VH)および/または軽鎖可変 (VL) 領域を含む。 別の態様において、抗体は、上記の抗体と結合について競合し、および/または上記の抗体と同じTau上のエピトープに結合する。別の態様において、抗体は、上記の抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性 (例えば、配列番号37または配列番号41と少なくとも約90%、95%または99%の可変領域の同一性)を有する。
一態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、そしてタウオパチー(例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗体は、Tauのアミノ酸2−176内、例えば、Tauのアミノ酸2−15、アミノ酸15−24、アミノ酸24−50、アミノ酸2−25、アミノ酸15−50、アミノ酸50−75、アミノ酸40−60、アミノ酸75−100、アミノ酸60−80、アミノ酸100−125、アミノ酸80−115、アミノ酸125−150、アミノ酸115−140、アミノ酸150−176、またはアミノ酸140−160内の、Tauのエピトープに結合する抗体である。例示的Tauポリペプチドを図9に示す。個体におけるタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置するのに適する抗体は、図9に示されるTauポリペプチド中のエピトープに特異的に結合するヒト化抗体であり得る。図21は、eTauポリペプチドの例を示す。個体におけるタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置に適する抗体は、図21に示すTauポリペプチド中のエピトープに特異的に結合するヒト化抗体であり得る。
TauポリペプチドのN末端領域に結合し、そしてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適するヒト化抗体は、Tauのアミノ酸2−176内、例えば、Tauのアミノ酸2−15、アミノ酸15−24、アミノ酸24−50、アミノ酸2−25、アミノ酸15−50、アミノ酸50−75、アミノ酸40−60、アミノ酸75−100、アミノ酸60−80、アミノ酸100−125、アミノ酸80−115、アミノ酸125−150、アミノ酸115−140、アミノ酸150−176、またはアミノ酸140−160内の、Tauのエピトープに結合するヒト化抗体である。例示的Tauポリペプチドを図9に示す。TauポリペプチドのN末端領域に結合し、そしてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗体は、図9に示されるTauポリペプチド中のエピトープに特異的に結合するヒト化抗体であり得る。
ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、そしてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗体は、Tauのアミノ酸15−24内のエピトープに結合するヒト化抗Tau抗体である。
ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、そしてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗体は、Tauのアミノ酸1−158内、例えば、Tauのアミノ酸1−15、アミノ酸7−13、アミノ酸2−18、アミノ酸15−24、アミノ酸19−46、アミノ酸24−50、アミノ酸2−25、アミノ酸25−30、アミノ酸15−50、アミノ酸28−126、アミノ酸50−75、アミノ酸40−60、アミノ酸75−100、アミノ酸60−80、アミノ酸100−125、アミノ酸80−115、アミノ酸125−150、アミノ酸115−140、またはアミノ酸150−158内の、Tauのエピトープに結合する抗体である(ここで、アミノ酸の番号付けは、2N4R Tauのアミノ酸番号に基づく。例えば、図9に記載の通り。)。ある態様において、抗体はヒト化されている。
ある態様において、本発明は、抗Tau抗体を投与することによりタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置することを含み、ここで、該抗体が結合するエピトープにはTauのアミノ酸1−158内のアミノ酸残基が含まれ、該アミノ酸番号は図9に記載の2N4R Tauアミノ酸配列に基づく。ある態様において、投与される抗Tau抗体はTauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸2−18内のアミノ酸残基を含む。ある態様において、投与される抗Tau抗体はTauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは線形エピトープであり、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸2−68内のアミノ酸残基を含む。ある態様において、投与される抗Tau抗体は、配列番号71に記載のアミノ酸配列に少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するTau4ポリペプチドに特異的に結合する。ある態様において、投与される抗Tau抗体は、Tauポリペプチド内の線形エピトープに特異的に結合し、ここで、該エピトープは、Tauのアミノ酸2−68内にある。ある態様において、投与される抗Tau抗体は、Tauポリペプチド内の線形エピトープに特異的に結合し、ここで、該エピトープは、Tauのアミノ酸15−24内にある。ある態様において、投与される抗Tau抗体は、Tauに特異的に結合し、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸7−13内のアミノ酸残基、例えば、アミノ酸EFEVMED(配列番号21)を含む。ある態様において、投与される抗Tau抗体はTauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸25−30内のアミノ酸残基、例えば、アミノ酸DQGGYT(配列番号22)を含む。ある態様において、投与される抗Tau抗体はTauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸28−126内のアミノ酸残基を含み、該アミノ酸番号は、図9に記載の2N4R Tauアミノ酸配列に基づく。ある態様において、投与される抗Tau抗体はTauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸150−158内のアミノ酸残基を含み、アミノ酸番号は、図9に記載の2N4R Tauアミノ酸配列に基づく。ある態様において、投与される抗Tau抗体はTauに特異的に結合し、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸19−46内のアミノ酸残基を含み、アミノ酸番号は、図9に記載の2N4R Tauアミノ酸配列に基づく。
ある態様において、本発明の方法は、細胞外Tau (eTau) に特異的に結合する抗体を投与することによりタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置することを含み、ここで、該抗体が結合するエピトープにはTauのアミノ酸1−158内のアミノ酸残基が含まれ、該アミノ酸番号は図9に記載の2N4R Tauアミノ酸配列に基づく。ある態様において、投与される抗Tau抗体はeTauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、eTauのアミノ酸2−18内のアミノ酸残基を含む。ある態様において、投与される抗Tau抗体はeTauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは線形エピトープであり、該抗体が結合するエピトープは、eTauのアミノ酸2−68内のアミノ酸残基を含む。ある態様において、投与される抗Tau抗体は、配列番号71に記載のアミノ酸配列に少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するeTau4ポリペプチドに特異的に結合する。ある態様において、投与される抗Tau抗体は、eTau4ポリペプチド内の線形エピトープに特異的に結合し、ここで、該エピトープは、eTau4のアミノ酸2−68内にある。ある態様において、投与される抗Tau抗体は、eTau4ポリペプチド内の線形エピトープに特異的に結合し、ここで、該エピトープは、eTau4のアミノ酸15−24内にある。ある態様において、投与される抗Tau抗体は、eTauに特異的に結合し、該抗体が結合するエピトープは、eTauのアミノ酸7−13内のアミノ酸残基、例えば、アミノ酸EFEVMED(配列番号21)を含む。ある態様において、投与される抗Tau抗体はeTauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、eTauのアミノ酸25−30内のアミノ酸残基、例えば、アミノ酸DQGGYT(配列番号22)を含む。ある態様において、投与される抗Tau抗体はeTauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、eTauのアミノ酸28−126内のアミノ酸残基を含み、該アミノ酸番号は、図9に記載の2N4R Tauアミノ酸配列に基づく。ある態様において、投与される抗Tau抗体はeTauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、eTauのアミノ酸150−158内のアミノ酸残基を含み、アミノ酸番号は、図9に記載の2N4R Tauアミノ酸配列に基づく。ある態様において、投与される抗Tau抗体はeTauに特異的に結合し、該抗体が結合するエピトープは、eTauのアミノ酸19−46内のアミノ酸残基を含み、アミノ酸番号は、図9に記載の2N4R Tauアミノ酸配列に基づく。
本発明は、個体におけるタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法を提供する。該方法は、一般的に、a)TauポリペプチドのN末端領域に結合する、有効量の抗体 (例えば、モノクローナル抗体)であって、所望によりヒト化抗体であってもよい抗体、またはb)該ヒト化抗体を含む医薬組成物を、該個体に投与することを含む。
Tauポリペプチド (所望により、ヒト化抗体、例えば、モノクローナル抗体)のN末端領域に結合し、そしてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗体は、Tauのアミノ酸1−158内、例えば、Tauのアミノ酸1−15、アミノ酸7−13、アミノ酸2−18、アミノ酸15−24、アミノ酸19−46、アミノ酸24−50、アミノ酸2−25、アミノ酸25−30、アミノ酸15−50、アミノ酸28−126、アミノ酸50−75、アミノ酸40−60、アミノ酸75−100、アミノ酸60−80、アミノ酸100−125、アミノ酸80−115、アミノ酸125−150、アミノ酸115−140、またはアミノ酸150−158内の、Tauのエピトープに結合する抗体であって、ここで、アミノ酸の番号付けは、例えば、図9に記載の、2N4R Tauのアミノ酸番号に基づく。ある態様において、抗体はヒト化されている。
ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、そしてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗体は、本明細書に記載のヒト化抗Tau抗体である。ある態様において、抗体は、Tauのアミノ酸15−24内のエピトープ (例えば、線形エピトープ)に結合するヒト化抗体である。
ある態様において、個体におけるタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)の処置法は、Tauに結合するのにTauの2Nインサートの存在を必要としない、有効量の抗Tau抗体の該個体への投与を伴う。ある態様において、タウオパチーを処置する本発明の方法における使用に適する抗Tau抗体により認識されるエピトープは、Tauの2Nインサート内にはない。Tauの2Nインサートは、図9に記載の2N4R アミノ酸配列のアミノ酸45−102を含む。
ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、タウオパチー (例えば、急性タウオパチー) を処置する本発明の方法における使用に適する抗Tau抗体は、Tauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸2−68内のアミノ酸残基を含む。ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、タウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗Tau抗体は、細胞外Tau(eTau)に特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、eTauのアミノ酸2−68内のアミノ酸残基を含む。ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、タウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗Tau抗体は、eTauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは線形エピトープであり、該抗体が結合するエピトープは、eTauのアミノ酸2−68内のアミノ酸残基を含む。ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、タウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗Tau抗体は、配列番号48に記載のアミノ酸配列に少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するeTau4ポリペプチドに特異的に結合する。ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、タウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗Tau抗体は、eTau4ポリペプチド内の線形エピトープに特異的に結合し、ここで、該エピトープは、eTau4のアミノ酸2−68内にある。上記の態様のいずれかにおいて、抗体はヒト化されていてよい。
ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、そしてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗体は、Tauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸1−158内のアミノ酸残基を含み、ここで、アミノ酸の番号付けは、例えば、図9に記載の、Tauの2N4R形態に基づく。これらの態様のいくつかにおいて、抗体はヒト化されている。これらの態様のいくつかにおいて、エピトープは線形エピトープである。
ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、そしてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗体は、Tauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸2−18内のアミノ酸残基を含み、ここで、アミノ酸の番号付けは、例えば、図9に記載の、Tauの2N4R形態に基づく。これらの態様のいくつかにおいて、抗体はヒト化されている。これらの態様のいくつかにおいて、エピトープは線形エピトープである。
ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、そしてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗体は、Tauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸7−13内のアミノ酸残基を含み、ここで、アミノ酸の番号付けは、例えば、図9に記載の、Tauの2N4R形態に基づく。これらの態様のいくつかにおいて、抗体はヒト化されている。これらの態様のいくつかにおいて、エピトープは線形エピトープである。
ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、そしてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗体は、Tauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸25−30内のアミノ酸残基を含み、ここで、アミノ酸の番号付けは、例えば、図9に記載の、Tauの2N4R形態に基づく。これらの態様のいくつかにおいて、抗体はヒト化されている。これらの態様のいくつかにおいて、エピトープは線形エピトープである。
ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、そしてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗体は、Tauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸28−126内のアミノ酸残基を含み、ここで、アミノ酸の番号付けは、例えば、図9に記載の、Tauの2N4R形態に基づく。これらの態様のいくつかにおいて、抗体はヒト化されている。これらの態様のいくつかにおいて、エピトープは線形エピトープである。
ある態様において、TauポリペプチドのN末端領域に結合し、そしてタウオパチー (例えば、急性タウオパチー)を処置する本発明の方法における使用に適する抗体は、Tauに特異的に結合し、ここで、該抗体が結合するエピトープは、Tauのアミノ酸150−158内のアミノ酸残基を含み、ここで、アミノ酸の番号付けは、例えば、図9に記載の、Tauの2N4R形態に基づく。これらの態様のいくつかにおいて、抗体はヒト化されている。これらの態様のいくつかにおいて、エピトープは線形エピトープである。
ある態様において、本明細書に記載の方法における使用に適する抗Tau抗体は、TauポリペプチドのN末端領域内のエピトープ (例えば、Tauのアミノ末端(N末端)部分内、例えば、Tauのアミノ酸1−25内、Tauのアミノ酸1−18内、Tauのアミノ酸9−18内 (ここで、Tauのアミノ酸1−18は、MAEPRQEFEVMEDHAGTY;配列番号23である。)、Tauのアミノ酸15−44内、Tauのアミノ酸13−24内、またはTauのアミノ酸15−24内 (ここで、Tauのアミノ酸15−24は、AGTYGLGDRK (配列番号24)である。) の線形エピトープ)に特異的に結合する抗Tau抗体である。ある例において、抗体はヒト化されており、例えば、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域の1つまたはそれ以上のフレームワーク領域は、ヒト免疫グロブリンフレームワークに由来する配列を含む。
ある態様において、本発明の方法における使用に適するヒト化モノクローナル抗体は、Tauポリペプチドのアミノ酸15−24内のエピトープに特異的に結合する。ある態様において、エピトープは、リン酸化アミノ酸を含まない。ある場合において、エピトープは、ニトロ化アミノ酸を含まない。ある場合において、エピトープはリン酸化アミノ酸、ニトロ化アミノ酸、またはリン酸化アミノ酸およびニトロ化アミノ酸の両方を含む。
ある態様において、本発明の方法における使用に適する抗体はヒト化されている。フレームワーク領域(複数可)のヒト化は、ヒトにおけるヒト−抗マウス−抗体(HAMA)応答を誘発する抗体の危険性を低減する。免疫応答を決定する当業者に認められる方法は、特定の患者または臨床試験中の患者におけるHAMA応答をモニターすることで実行され得る。ヒト化抗体を投与される患者は、治療開始時および投与期間中に免疫原性評価をされ得る。HAMA応答は、例えば、表面プラズモン共鳴技術(BIACORE)および/または固相酵素免疫定量法(ELISA)分析を含む当業者に知られる方法を用いて、患者からの血清サンプル中、ヒト化治療用薬剤に対する抗体を検出することにより、測定される。多くの場合に、好適なヒト化抗Tau抗体は、ヒト対象におけるHAMA応答を実質的に誘発しない。ある態様において、好適なヒト化抗Tau抗体は、CD8+欠失末梢血単核細胞を用いて行われるEpiScreen(商標)アッセイにより決定されるとおり、免疫原性を低減させた。ある態様において、好適なヒト化抗Tau抗体は、2.0未満の刺激指数を示す。
ヒト可変領域フレームワーク残基由来の任意のアミノ酸は、それらのCDR立体構造への考えられる影響および/または抗原への結合性に基づいて置換のために選択される。ヒト可変フレームワーク領域を含むマウスCDR領域の天然では生じない並置は、天然では生じない立体構造制限を生じることがあり、この制限は所定のアミノ酸残基の置換により修正されない限り、結合親和性の損失をもたらす。
置換されるアミノ酸残基の選択は、1つには、コンピューターモデリングを用いて決定され得る。免疫グロブリン分子の3次元画像を作成するためのコンピューターハードウェアおよびソフトウェアが、当技術分野で知られている。一般的に、分子モデルは、免疫グロブリン鎖またはそのドメインに関する解明された構造から出発して生成される。モデリングされる鎖は、該鎖のアミノ酸配列の、解明された3次元構造の鎖またはドメインとの類似性が比較され、最大の配列類似性を示す鎖またはドメインが、分子モデル構成の出発点として選択される。少なくとも50%の配列同一性を共有する鎖またはドメインが、モデリングのために選択され、例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%、または90%以上の配列を共有するものがモデリングのために選択される。解明された出発構造は、モデリングされている免疫グロブリン鎖またはドメイン内の実際のアミノ酸と、出発構造内のアミノ酸との差異を許容するよう修飾される。次いで、修飾構造は、複合体免疫グロブリンに組み立てられる。最終的に、モデルは、エネルギー最小化し、また全ての原子が互いから適切な距離内に存在し、結合の長さと角度とが化学的に許容される限界内にあることを検証することにより精密化される。
CDRおよびフレームワーク領域は、Kabatの、Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987 および 1991)により定義される。別の構造的定義が、Chothiaらの、J. Mol. Biol. 196:901 (1987);Nature 342:878 (1989);および、J. Mol. Biol. 186:651 (1989)(まとめて、“Chothia”と言う)により提案されている。上記のKabatに定義されるフレームワーク残基が、上記のChothiaに定義される構造的ループ残基を構成するとき、マウス抗体中に存在するアミノ酸は、ヒト化抗体への置換のために選択され得る。“CDR領域に隣接する”残基は、ヒト化免疫グロブリン鎖の一次配列中の1つまたはそれ以上のCDR、例えば、Kabatにより定義されるCDR、またはChothiaにより定義されるCDRに直接隣接する位置のアミノ酸残基を含む(例えば、Chothia and Lesk JMB 196:901 (1987)を参照のこと)。これらのアミノ酸は、アクセプターから選択されたとき、特にCDR内のアミノ酸と相互作用し、ドナーCDRを変形させ、親和性を低減させる。さらに、隣接アミノ酸は、抗原と直接的に相互作用することができ(Amit et al., Science, 233:747 (1986))、これらのアミノ酸をドナーから選択することは、元々の抗体に親和性を提供する全ての抗原接点を維持するために望ましい。
本発明の方法における使用に適する抗体は、ヒト化軽鎖フレームワーク領域およびヒト化重鎖フレームワーク領域を含む単離された抗体を提供し、ここで、単離された抗体は、TauポリペプチドのN末端領域内のエピトープへの結合を、a)i)配列番号1または配列番号7のアミノ酸配列を含むVL CDR1、(ii)配列番号2または配列番号8のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および(iii)配列番号3または配列番号9のアミノ酸配列を含むVL CDR3、を含む軽鎖領域、ならびにb)(i)配列番号4または配列番号10のアミノ酸配列を含むVH CDR1、(ii)配列番号5または配列番号11のアミノ酸配列を含むVH CDR2、および(iii)配列番号6または配列番号12のアミノ酸配列を含むVH CDR3、を含む重鎖領域、を含む抗体と競合する。ある場合において、軽鎖領域および重鎖領域は、別個のポリペプチド中に存在する。他の場合において、軽鎖領域および重鎖領域は、単一のポリペプチド中に存在する。単離された抗体は、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4の定常領域を含む重鎖を含む。他の場合において、抗体は、Fv、scFv、Fab、F(ab’)2、またはFab’である。抗体は、共有結合した非ペプチド合成ポリマーを含んでいてよく、例えば、合成ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)ポリマーである。ある場合において、単離された抗体は、血液脳関門の通過を促進する担体分子、ペプチドまたはタンパク質に直接またはリンカーを介して結合されている。ある場合において、単離された抗体により結合されるエピトープは、Tauポリペプチドのアミノ酸15−24内である。単離された抗体のヒト化軽鎖フレームワーク領域は、表3に記載の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換を含み得る。単離された抗体のヒト化重鎖フレームワーク領域は、表2に記載の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個のアミノ酸置換を含む。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、a)i)IPN001抗体の1、2または3個の相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖領域を含み、ここで、該CDRは、Kabatに定義の通りである(例えば、上記の表1、およびKabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, “Sequences of proteins of immunological interest” (1991)を参照のこと)。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、a)i)IPN001抗体の1、2または3個のVL CDR、およびii)ヒト化軽鎖フレームワーク領域、を含む軽鎖領域、ならびにb)i)IPN001抗体の1、2または3個のVH CDR、およびii)ヒト化重鎖フレームワーク領域、を含む重鎖領域を含み、ここで、該VHおよびVL CDRは、Kabatに定義の通りである(例えば、上記の表1、およびKabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, “Sequences of proteins of immunological interest” (1991)を参照のこと)。これらの態様のいくつかにおいて、抗Tau抗体は、ヒト化VHおよび/またはVL フレームワーク領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、a)i)IPN001抗体の1、2または3個のVL CDR、およびii)ヒト化軽鎖フレームワーク領域、を含む軽鎖領域、ならびにb)i)IPN001抗体の1、2または3個のVH CDR、およびii)ヒト化重鎖フレームワーク領域、を含む重鎖領域を含み、ここで、該VHおよびVL CDRは、Chothiaに定義の通りである(例えば、上記の表1、およびChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901−917 (1987)を参照のこと)。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、a)i)IPN002抗体の1、2または3個のVL CDR、およびii)ヒト化軽鎖フレームワーク領域、を含む軽鎖領域、ならびにb)i)IPN002抗体の1、2または3個のVH CDR、およびii)ヒト化重鎖フレームワーク領域、を含む重鎖領域を含み、ここで、該VHおよびVL CDRは、Kabatに定義の通りである(例えば、上記の表1、および Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, “Sequences of proteins of immunological interest” (1991)を参照のこと)。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、a)i)IPN002抗体の1、2または3個のVL CDR、およびii)ヒト化軽鎖フレームワーク領域、を含む軽鎖領域、ならびにb)i)IPN002抗体の1、2または3個のVH CDR、およびii)ヒト化重鎖フレームワーク領域、を含む重鎖領域を含み、ここで、該VHおよびVL CDRは、Chothiaに定義の通りである(例えば、上記の表1、およびChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901−917 (1987)を参照のこと)。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、a)i)配列番号1、配列番号2、および配列番号3から選択される1、2または3個のCDR、およびii)ヒト化軽鎖フレームワーク領域、を含む軽鎖領域、ならびにb)i)配列番号4、配列番号5、および配列番号6から選択される1、2または3個のCDR、およびii)ヒト化重鎖フレームワーク領域、を含む重鎖領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、a)i)配列番号7、配列番号8、および配列番号9から選択される1、2または3個のCDR、およびii)ヒト化軽鎖フレームワーク領域、を含む軽鎖領域、ならびにb)i)配列番号10、配列番号11、および配列番号12から選択される1、2または3個のCDR、およびii)ヒト化重鎖フレームワーク領域、を含む重鎖領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、a)i)配列番号1または配列番号7のアミノ酸配列を含むVL CDR1、(ii)配列番号2または配列番号8のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および(iii)配列番号3または配列番号9のアミノ酸配列を含むVL CDR3、および(iv)ヒト化軽鎖フレームワーク領域、を含む軽鎖領域、ならびにb)(i)配列番号4または配列番号10のアミノ酸配列を含むVH CDR1、(ii)配列番号5または配列番号11のアミノ酸配列を含むVH CDR2、および(iii)配列番号6または配列番号12のアミノ酸配列を含むVH CDR3、およびiv)ヒト化重鎖フレームワーク領域、を含む重鎖領域、を含む。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、配列番号4、5および6の1つまたはそれ以上から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1、2または3個、ならびにヒト化されている1、2、3または4個のFR領域(フレームワーク領域)を含む重鎖可変領域を含む。例えば、ある態様において、好適な抗体は、N末端からC末端まで順番に:ヒト化重鎖FR1;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;ヒト化重鎖FR2;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;ヒト化重鎖FR3;配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR3;および、ヒト化重鎖FR4を含む、重鎖可変領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、配列番号1、2および3の1つまたはそれ以上から選択されるポリペプチド配列を有する1、2または3個の軽鎖CDR、およびヒト化されている1、2、3または4個のFR領域、を含む軽鎖可変領域を含む。例えば、ある態様において、好適な抗体は、N末端からC末端まで順番に:ヒト化軽鎖FR1;配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;ヒト化軽鎖FR2;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;ヒト化軽鎖FR3;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むCDR3、ならびにヒト化軽鎖FR4、を含む軽鎖可変領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、配列番号10、11および12の1つまたはそれ以上から選択されるアミノ酸配列を有する1、2または3個の重鎖CDR、ならびに1、2、3または4個のヒト化されているFR領域、を含む重鎖可変領域を含む。例えば、ある態様において、好適な抗体は、N末端からC末端まで順に、ヒト化重鎖FR1;配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;ヒト化重鎖FR2;配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;ヒト化重鎖FR3;配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むCDR3;ならびに、ヒト化重鎖FR4を含む重鎖可変領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、配列番号7、8および9の1つまたはそれ以上から選択されるポリペプチド配列を有する1、2または3個の軽鎖CDR;ならびに、1、2、3または4個のヒト化されているFR領域、を含む軽鎖可変領域を含む。例えば、ある態様において、好適な抗体は、N末端からC末端まで順に、ヒト化軽鎖FR1;配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;ヒト化軽鎖FR2;配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;ヒト化軽鎖FR3;配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むCDR3;ならびに、ヒト化軽鎖FR4を含む軽鎖可変領域を含む。
IPN001のVHおよびVLアミノ酸配列は、図11Aおよび11Bに記載される。CDR(Kabatにより定義される)は、太字および下線で示される。IPN002のVHおよびVLアミノ酸配列は、図12Aおよび12Bに示される。CDR(Kabatにより定義される)は、太字および下線で示される。
配列番号1−12は、下記の通りである。
RSSQTILHSNGNTYLE (配列番号1);
KVSKRFS (配列番号2);
FQGSLVPWA (配列番号3);
SYGMS (配列番号4);
TISSSGSRTYFPDSVKG (配列番号5);
TWDGAMDY (配列番号6);
KSSQSIVHSNGNTYLE (配列番号7);
KVSNRFS (配列番号8);
FQGSLVPWA (配列番号9);
KYGMS (配列番号10);
TISSSGSRTYYPDSVKG (配列番号11);
SWDGAMDY (配列番号12)。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、図11Bおよび配列番号13に記載の配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、図11Aおよび配列番号14に記載の配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、図12Bおよび配列番号15に記載の配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、図12Aおよび配列番号16に記載の配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、図13に記載の配列(VH変異体1)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、図14に記載の配列(VH変異体2)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、図15に記載の配列(VH変異体3)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、図16に記載の配列(VH変異体4)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、図17に記載の配列(Vk変異体1)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、図18に記載の配列(Vk変異体2)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、図19に記載の配列(Vk変異体3)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、図20に記載の配列(Vk変異体4)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、表2に示すIPN002親抗体FRアミノ酸配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個のフレームワーク(FR)アミノ酸置換を含む重鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、VH FR1中のアミノ酸位置3におけるH→Q置換および/またはVH FR1中のアミノ酸位置19におけるK→R置換を含む重鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、VH FR2中のアミノ酸位置40におけるT→A置換および/またはVH FR2中のアミノ酸位置42におけるD→G置換および/またはVH FR2中のアミノ酸位置44におけるR→G置換を含む重鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、VH FR3中のアミノ酸位置66におけるQ→R置換および/またはVH FR3中のアミノ酸位置83におけるS→N置換および/またはVH FR3中のアミノ酸位置85におけるL→S置換および/またはFR3中のアミノ酸位置86におけるK→R置換および/またはVH FR3中のアミノ酸位置87におけるS→A置換および/またはVH FR3中のアミノ酸位置93におけるS→A置換を含む重鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、VH FR4中のアミノ酸位置108におけるS→T置換を含む重鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、N末端からC末端まで順に、EVX1LVESGGALVKPGGSLRLSCAASGFSFS(配列番号25);図2Aに示すVH CDR1;WVRQAPGKGLEWVA(配列番号26);図2Aに示すVH CDR2;RFTISRDNAKNTLYLQMX2SX3X4X5EDTAMYYCX6I(配列番号27);図2Aに示すVH CDR3;WGQGTX7VTVSS(配列番号44)(式中、X1はHまたはQであり、X2はSまたはNであり、X3はSまたはLであり、X4は、KまたはRであり、X5は、SまたはAであり、X6はSまたはAであり、X7はSまたはTである。)を含むVH領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、表3に示す、IPN002親抗体FRアミノ酸配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のフレームワーク(FR)アミノ酸置換を含む軽鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、VL FR1中のアミノ酸位置3におけるL→V置換および/またはVL FR1中のアミノ酸位置7におけるT→S置換および/またはVL FR1中のアミノ酸位置14におけるS→T置換および/またはVL FR1中のアミノ酸位置17におけるD→Q置換および/またはVL FR1中のアミノ酸位置18におけるQ→P置換を含む軽鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、VL FR2中のアミノ酸位置45におけるK→Q置換および/またはVL FR2中のアミノ酸位置48におけるV→I置換を含む軽鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、VL FR3のアミノ酸位置83におけるL→V置換および/またはVL FR3中のアミノ酸位置85におけるT→V置換を含む軽鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、VL FR4中のアミノ酸位置104におけるL→V置換を含む軽鎖可変領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、N末端からC末端まで順に、DVX1MTQSPLSLPVTLGQPASISC(配列番号45);図12Bに示すVL CDR1;WYLQKPGQSPQLLX2Y(配列番号46);図12Bに示すVL CDR2;GVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGX3YYC(配列番号47);図12Bに示すVL CDR3;FGGGTKVEIK(配列番号48)(式中、X1はLまたはVであり、X2はVまたはIであり、そしてX3はTまたはVである。)を含むVL領域を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、
a)図13に示すアミノ酸配列を含むVH変異体1、および図17に示すアミノ酸配列を含むVk変異体1;
b)図13に示すアミノ酸配列を含むVH変異体1、および図18に示すアミノ酸配列を含むVk変異体2;
c)図13に示すアミノ酸配列を含むVH変異体1、および図19に示すアミノ酸配列を含むVk変異体3;
d)図13に示すアミノ酸配列を含むVH変異体1、および図20に示すアミノ酸配列を含むVk変異体4;
e)図14に示すアミノ酸配列を含むVH変異体2、および図17に示すアミノ酸配列を含むVk変異体1;
f)図14に示すアミノ酸配列を含むVH変異体2、および図18に示すアミノ酸配列を含むVk変異体2;
g)図14に示すアミノ酸配列を含むVH変異体2、および図19に示すアミノ酸配列を含むVk変異体3;
h)図14に示すアミノ酸配列を含むVH変異体2、および図20に示すアミノ酸配列を含むVk変異体4;
i)図15に示すアミノ酸配列を含むVH変異体3、および図17に示すアミノ酸配列を含むVk変異体1;
j)図15に示すアミノ酸配列を含むVH変異体3、および図18に示すアミノ酸配列を含むVk変異体2;
k)図15に示すアミノ酸配列を含むVH変異体3、および図19に示すアミノ酸配列を含むVk変異体3;
l)図15に示すアミノ酸配列を含むVH変異体3、および図20に示すアミノ酸配列を含むVk変異体4;
m)図16に示すアミノ酸配列を含むVH変異体4、および図17に示すアミノ酸配列を含むVk変異体1;
n)図16に示すアミノ酸配列を含むVH変異体4、および図18に示すアミノ酸配列を含むVk変異体2;
o)図16に示すアミノ酸配列を含むVH変異体4、および図19に示すアミノ酸配列を含むVk変異体3;または
p)図16に示すアミノ酸配列を含むVH変異体4、および図20に示すアミノ酸配列を含むVk変異体4
を含む。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、抗Tau重鎖CDRおよび抗Tau軽鎖CDRの一本鎖ポリペプチドを含み、例えば、ある態様において、本発明の抗体はscFvである。ある態様において、好適な抗体は、N末端からC末端の順に、約5アミノ酸から約25アミノ酸長の第一のアミノ酸配列;配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;約5アミノ酸から約25アミノ酸長の第二のアミノ酸配列;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;約5アミノ酸から約25アミノ酸長の第三のアミノ酸配列;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むCDR3;約5アミノ酸から約25アミノ酸長の第四のアミノ酸配列;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;約5アミノ酸から約25アミノ酸長の第五のアミノ酸配列;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;約5アミノ酸から約25アミノ酸長の第六のアミノ酸配列;配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR3;および、約5アミノ酸から約25アミノ酸長の第七のアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、N末端からC末端の順に、軽鎖FR1領域;配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;軽鎖FR2領域;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;軽鎖FR3領域;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むCDR3;所望により、軽鎖FR4領域;リンカー領域;所望により、重鎖FR1領域;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;重鎖FR2領域;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;重鎖FR3領域;配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR3;および、重鎖FR4領域を含む。これらの態様のいくつかは、1つまたはそれ以上のFR領域がヒト化FR領域である。これらの態様のいくつかが、各FR領域がヒト化FR領域である。リンカー領域は、約5アミノ酸から約50アミノ酸長、例えば、約5aaから約10aa長、約10aaから約15aa長、約15aaから約20aa長、約20aaから約25aa長、約25aaから約30aa長、約30aaから約35aa長、約35aaから約40aa長、約40aaから約45aa長、または約45aaから約50aa長であり得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、N末端からC末端の順に、重鎖FR1領域;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;重鎖FR2領域;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;重鎖FR3領域;配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR3;所望により、重鎖FR4領域;リンカー;所望により、軽鎖FR1領域;配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;軽鎖FR2領域;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;軽鎖FR3領域;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むCDR3;および、軽鎖FR4領域、を含む。これらの態様のいくつかにおいて、FR領域の1つまたはそれ以上は、ヒト化FR領域である。これらの態様のいくつかにおいて、各FR領域はヒト化FR領域である。リンカー領域は、約5アミノ酸から約50アミノ酸長、例えば、約5aaから約10aa長、約10aaから約15aa長、約15aaから約20aa長、約20aaから約25aa長、約25aaから約30aa長、約30aaから約35aa長、約35aaから約40aa長、約40aaから約45aa長、または約45aaから約50aa長であり得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、N末端からC末端の順に、軽鎖FR1領域;配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;軽鎖FR2領域;配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;軽鎖FR3領域;配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むCDR3;所望により、軽鎖FR4領域;リンカー領域;所望により、重鎖FR1領域;配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;重鎖FR2領域;配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;重鎖FR3領域;配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むCDR3;および、重鎖FR4領域を含む。これらの態様のいくつかにおいて、FR領域の1つまたはそれ以上は、ヒト化FR領域である。これらの態様のいくつかにおいて、各FR領域はヒト化FR領域である。リンカー領域は、約5アミノ酸から約50アミノ酸長、例えば、約5aaから約10aa長、約10aaから約15aa長、約15aaから約20aa長、約20aaから約25aa長、約25aaから約30aa長、約30aaから約35aa長、約35aaから約40aa長、約40aaから約45aa長、または約45aaから約50aa長であり得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、N末端からC末端の順に、重鎖FR1領域;配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;重鎖FR2領域;配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;重鎖FR3領域;配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むCDR3;所望により、重鎖FR4領域;リンカー;所望により、軽鎖FR1領域;配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むCDR1;軽鎖FR2領域;配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むCDR2;軽鎖FR3領域;配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むCDR3;および、軽鎖FR4領域を含む。これらの態様のいくつかにおいて、FR領域の1つまたはそれ以上は、ヒト化FR領域である。これらの態様のいくつかにおいて、各FR領域はヒト化FR領域である。リンカー領域は、約5アミノ酸から約50アミノ酸長、例えば、約5aaから約10aa長、約10aaから約15aa長、約15aaから約20aa長、約20aaから約25aa長、約25aaから約30aa長、約30aaから約35aa長、約35aaから約40aa長、約40aaから約45aa長、または約45aaから約50aa長であり得る。
抗体への使用に好適なリンカーは、“可動性リンカー”を含む。リンカー分子は、それが存在するとき、一般的に、結合された領域間の柔軟な動きを可能にするのに充分な長さである。リンカー分子は一般的に、約6〜50個の原子の長さである。これらのリンカー分子はまた、例えば、アリールアセチレン、2〜10のモノマー単位を含むエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二酸、アミノ酸、またはそれらの組み合わせであることもできる。ポリペプチドに結合し得る他のリンカー分子は、本明細書に記載の長さで使用することができる。
好適なリンカーは、容易に選択することができ、かつ1アミノ酸(例えば、Gly)から20アミノ酸長、2アミノ酸から15アミノ酸長、3アミノ酸から12アミノ酸長、4アミノ酸から10アミノ酸長、5アミノ酸から9アミノ酸長、6アミノ酸から8アミノ酸長、または7アミノ酸から8アミノ酸長のようないずれかの好適な異なる長さであってよく、1、2、3、4、5、6または7アミノ酸長であり得る。
可動性リンカーの例には、グリシンポリマー(G)n、グリシン−セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS)n(配列番号49)および(GGGS)n(配列番号50)、ここで、nは少なくとも1の整数である)、グリシン−アラニンポリマー、アラニン−セリンポリマー、および当技術分野で知られている他の可動性リンカーが含まれる。グリシンおよびグリシン−セリンポリマーは、それらが両方とも比較的構造化されておらず(unstructured)、そのため成分間のニュートラルなテザーとして機能することができるため興味深い。グリシンポリマーは、グリシンが、アラニンよりも有意にphi−psi空間に到達し、より長い側鎖を有する残基よりも制限されないため、特に興味深い(Scheraga, Rev. Computational Chem. 11173−142 (1992)を参照のこと)。可動性リンカーの例には、GGSG(配列番号51)、GGSGG(配列番号52)、GSGSG(配列番号53)、GSGGG(配列番号54)、GGGSG(配列番号55)、GSSSG(配列番号56)などが含まれるが、これらに限定されない。当業者は、上記の何れかの成分に結合するペプチドの設計が、全体または部分的に可動性のリンカーを含み得ることを認識し得る。例えば、該リンカーは、可動性リンカー、ならびにより柔軟性に劣る構造を与える1またはそれ以上の部分を含み得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、抗体フラグメント、Fv、scFv、Fab、F(ab’)2、またはFab’である。故に、本発明は、単離された抗体であって、該抗体が、Fv、scFv、Fab、F(ab’)2、またはFab’であり、該抗体が、TauポリペプチドのN末端領域内のエピトープへの結合を、a)(i)配列番号1または配列番号7のアミノ酸配列を含むVL CDR1、(ii)配列番号2または配列番号8のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および(iii)配列番号3または配列番号9のアミノ酸配列を含むVL CCDR3を含む軽鎖領域、ならびにb)(i)配列番号4または配列番号10のアミノ酸配列を含むVH CDR1、(ii)配列番号5または配列番号11のアミノ酸配列を含むVH CDR2、および(iii)配列番号6または配列番号12のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む重鎖領域、を含む抗体と競合する、抗体を提供する。これらの態様のいくつかにおいて、単離された抗体は、上記の通り、1、2、3または4個のヒト化VLフレームワーク領域を含む。これらの態様のいくつかにおいて、単離された抗体は、上記の通り、1、2、3または4個のヒト化VHフレームワーク領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、scFv抗体である。ある態様において、本発明の抗Tau抗体は、scFv多量体を含む。例えば、ある態様において、好適な抗体は、scFv二量体(例えば、2つのタンデムscFv(scFv2)を含む)、scFv三量体(例えば、3つのタンデムscFv(scFv3)を含む)、scFvテトラマー(例えば、4つのタンデムscFv(scFv4)を含む)であり、または5つ以上のscFvの多量体(例えば、タンデムで)である。scFv単量体は、約2アミノ酸から約10アミノ酸(aa)長、例えば、2aa、3aa、4aa、5aa、6aa、7aa、8aa、9aa、または10aa長のリンカーを介してタンデムに結合されていてよい。好適なリンカーには、例えば、(Gly)x(式中、xは、2から10の整数である)が含まれる。他の好適なリンカーは、上記のものである。ある態様において、目的のscFV多量体における各scFv単量体は、上記の通り、ヒト化されている。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、免疫グロブリンの定常領域(例えば、Fc領域)を含む。Fc領域は、存在するとき、ヒトFc領域であり得る。定常領域が存在するとき、抗体は、軽鎖および重鎖定常領域の両方を含み得る。好適な重鎖定常領域は、CH1、ヒンジ、CH2、CH3、およびCH4領域を含む。本明細書に記載の抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgE、ならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意のアイソタイプを含む全タイプの定常領域を有する抗体を含む。好適な重鎖Fc領域の例は、ヒトアイソタイプIgG1 Fcである。ある場合において、該重鎖領域は、アイソタイプIgG4のものである。これらの態様のいくつかにおいて、ヒンジ領域はS241P置換を含む。例えば、Angal et al. (1993) Mol. Immunol. 30:105を参照のこと。軽鎖定常領域は、λまたはκであり得る。好適な抗体(例えば、ヒト化抗体)は、2以上のクラスまたはアイソタイプ由来の配列を含み得る。抗体は、2つの軽鎖および2つの重鎖を、個別の重鎖、軽鎖として、Fab、Fab’F(ab’)2およびFvとして含むテトラマーとして発現され得るか、または重鎖および軽鎖可変ドメインがスペーサーを介して結合されている一本鎖抗体として発現され得る。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、ヒト軽鎖定常領域およびヒト重鎖定常領域を含み、該抗体は、TauポリペプチドのN末端領域内のエピトープへの結合を、a)(i)配列番号1または配列番号7のアミノ酸配列を含むVL CDR1、(ii)配列番号2または配列番号8のアミノ酸配列を含むVL CDR2、および(iii)配列番号3または配列番号9のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む軽鎖領域、ならびにb)(i)配列番号4または配列番号10のアミノ酸配列を含むVH CDR1、(ii)配列番号5または配列番号11のアミノ酸配列を含むVH CDR2、および(iii)配列番号6または配列番号12のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む重鎖領域、を含む抗体と競合する、抗体を提供する。これらの態様のいくつかにおいて、単離された抗体は、上記の通り、1、2、3または4個のヒト化VLフレームワーク領域を含む。これらの態様のいくつかにおいて、単離された抗体は、上記の通り、1、2、3または4個のヒト化VHフレームワーク領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、カルボキシル末端に遊離チオール(−SH)基を含んでいてよく、ここで、該遊離チオール基は、第二のポリペプチド(例えば、好適な抗体を含む、別の抗体)、主鎖(scaffold)、担体などに該抗体を結合させるために用いることができる。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、1つまたはそれ以上の天然に存在しないアミノ酸を含む。ある態様において、天然にコード化されないアミノ酸には、カルボニル基、アセチル基、アミノオキシ基、ヒドラジン基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、アジド基、またはアルキレン基が含まれる。好適な天然に存在しないアミノ酸に関して、例えば、米国特許番号第7,632,924号を参照のこと。天然に存在しないアミノ酸を含むと、ポリマー、第二のポリペプチド、主鎖などへの結合が可能となる。例えば、水溶性ポリマーに結合した好適な抗体は、カルボニル基を含む水溶性ポリマー(例えば、PEG)を抗体に反応させることにより作製可能であって、ここで、該抗体は、アミノオキシ、ヒドラジン、ヒドラジドまたはセミカルバジド基を含む天然にコード化されないアミノ酸を含む。別の例としては、水溶性ポリマーに結合した好適な抗体は、アルキレン含有アミノ酸を含む好適な抗体を、アジド基を含む水溶性ポリマー(例えば、PEG)と反応させて製造することができる。ある態様において、該アジドまたはアルキレン基は、アミド結合を介してPEG分子に結合している。“天然にコード化されないアミノ酸”は、20種の必須アミノ酸うちの1つまたはパイロリジン(pyrrolysine)またはセレノシステインでないアミノ酸を意味する。用語“天然にコード化されないアミノ酸”と同義に用いられ得る他の用語は、“天然ではないアミノ酸”、“非天然アミノ酸”、“天然に存在しないアミノ酸”ならびにそのハイフンでつないだ変形およびハイフンでつながない変形を含む。用語“天然にコード化されないアミノ酸”はまた、翻訳複合体によりポリペプチド鎖の伸張時に天然に挿入されないが、天然にコード化されるアミノ酸(20個の共通アミノ酸またはパイロリジン(pyrrolysine)およびセレノシステイン)の修飾(例えば、翻訳後修飾)により生じるアミノ酸を含むが、これらに限定されない。かかる天然に存在しないアミノ酸の例には、N−アセチルグルコサミニル−L−セリン、N−アセチルグルコサミニル−L−スレオニン、およびO−ホスホチロシンが含まれるが、これらに限定されない。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、ポリマー(例えば、ポリペプチド以外のポリマー)に結合(例えば、共有結合)している。好適なポリマーには、例えば、生体適合性ポリマー、および水溶性の生体適合性ポリマーが含まれる。好適なポリマーには、合成ポリマーおよび天然に存在するポリマーが含まれる。好適なポリマーには、例えば、置換または非置換の直鎖または分枝鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレンまたはポリオキシアルキレンポリマー類または分枝状もしくは非分枝状ポリサッカライド類、例えばホモ−またはヘテロ−ポリサッカライドが含まれる。好適なポリマーには、例えば、エチレンビニルアルコールコポリマー(一般名EVOHまたは商品名EVALとして知られる);ポリブチルメタクリレート;ポリ(ヒドロキシバレレート);ポリ(L−乳酸);ポリカプロラクトン;ポリ(ラクチド−コ−グリコリド);ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−バレレート);ポリジオキサノン;ポリオルトエステル;ポリ酸無水物;ポリ(グリコール酸);ポリ(D,L−乳酸);ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート);ポリリン酸エステル;ポリリン酸エステルウレタン;ポリ(アミノ酸);シアノアクリレート;ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(イミノカーボネート);コポリ(エーテル−エステル)(例えば、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(乳酸)(PEO/PLA)のコポリマー);ポリアルキレンオキサレート;ポリホスファゼン;フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸などの生体分子;ポリウレタン;シリコン;ポリエステル;ポリオレフィン;ポリイソブチレンおよびエチレン−αオレフィンコポリマー;アクリルポリマーおよびアクリルコポリマー;ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルポリマーおよびハロゲン化ビニルコポリマー;ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル類;ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなどのポリビニリデンハライド;ポリアクリロニトリル;ポリビニルケトン;ポリスチレンなどのポリビニル芳香族化合物;ポリビニルアセテートなどのポリビニルエステル類;エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、およびエチレン−ビニルアセテートコポリマーなどの互いを有するビニルモノマーとオレフィンのコポリマー;ナイロン66およびポリカプロラクタムなどのポリアミド;アルキド樹脂類;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂類;ポリウレタン;レーヨン;レーヨン−トリアセテート;セルロース;セルロースアセテート;セルロースブチレート;セルロースアセテートブチレート;セロファン;セルロースニトレート;セルロースプロピオネート;セルロースエーテル;アモルファステフロン;ポリ(エチレングリコール);ならびに、カルボキシメチルセルロースが含まれる。
好適な合成ポリマーには、非置換および置換の、直鎖または分枝鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)、およびそれらの誘導体、例えば、置換ポリ(エチレングリコール)、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)、およびその誘導体が含まれる。好適な天然に存在するポリマーには、例えば、アルブミン、アミロース、デキストラン、グリコーゲン、およびそれらの誘導体が含まれる。
好適なポリマーは、500Daから50000Da、例えば、5000Daから40000Da、または25000から40000Daの範囲の平均分子量を有し得る。例えば、ある態様において、好適な抗体が、ポリ(エチレングリコール)(PEG)またはメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーを含むとき、PEGまたはメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーは、約0.5キロダルトン(kDa)から1kDa、約1kDaから5kDa、5kDaから10kDa、10kDaから25kDa、25kDaから40kDa、または40kDaから60kDaの範囲の分子量を有し得る。
上記の通り、ある態様において、好適な抗体は、PEGポリマーに共有結合している。ある態様において、scFv多量体は、PEGポリマーに共有結合している。例えば、Albrecht et al. (2006) J. Immunol. Methods 310:100を参照のこと。タンパク質のPEG化に好適な方法および反応材は、当技術分野で知られており、例えば、米国特許番号第5,849,860号に見出され得る。タンパク質との結合に好適なPEGは、一般に、室温で水に可溶であり、一般式 R(O−CH2−CH2)nO−R(式中、Rは水素またはアルキルもしくはアルカノール基のような保護基であり、nは1から1000までの整数である)を有する。式中、Rが保護基であるとき、それは一般的に、1から8個の炭素を有する。
PEGと複合体形成した抗体は直鎖状であってよい。PEGと複合体形成した目的のタンパク質はまた、分枝状であってもよい。米国特許番号第5,643,575号に記載のような“star−PEG”、およびShearwater Polymers, Inc. catalog “Polyethylene Glycol Derivatives 1997−1998.”に記載のような多分枝PEGなどの分枝状PEG誘導体が存在し、スターPEGは、例えば、米国特許番号第6,046,305号を含む、当技術分野の文献に記載されている。
いくつかの態様において、本発明の方法における使用に適する抗体は、グリコシル化されていてよく、例えば、好適な抗体は、共有結合した糖または多糖部分を含み得る。抗体のグリコシル化は、典型的に、N−結合型またはO−結合型のいずれかである。N−結合型は、アスパラギン残基の側鎖への糖部分の結合を意味する。アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン(ここで、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が存在することになる。O−結合型グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンに、糖類N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースの一つが結合することを意味するが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンが用いられることもある。
抗体へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、上記のトリペプチド配列(N−結合グリコシル化部位の場合)の1つまたはそれ以上が含まれるように変化させることによって都合よく達成することができる。この変化は、基となる抗体の配列への1つまたはそれ以上のセリンまたはスレオニン残基の付加または置換によってもなされる(O−結合グリコシル化部位の場合)。同様に、グリコシル化部位の除去は、抗体の天然のグリコシル化部位内のアミノ酸を改変することによって達成され得る。
好適な抗体は、ある態様において、“放射線不透過性の”標識、例えば、X線を用いて容易に可視化できる標識を含む。放射線不透過性物質は、当業者に周知である。最も一般的な放射線不透過性物質としては、ヨウ化物、臭化物またはバリウム塩が含まれる。他の放射線不透過性物質もまた知られており、有機ビスマス誘導体(例えば、米国特許番号第5,939,045号を参照のこと)、放射線不透過性マルチウレタン(米国特許番号第5,346,981号を参照のこと)、有機ビスマス複合材料(例えば、米国特許番号第5,256,334号を参照のこと)、放射線不透過性バリウム多量体(例えば、米国特許番号第4,866,132号を参照のこと)などが含まれるが、これらに限定されない。
好適な抗体は、例えば、グルタルアルデヒド、ホモ二官能性架橋剤、またはヘテロ二官能性架橋剤を用いて、第2の部分(例えば、脂質、該抗体以外のポリペプチド、合成ポリマー、糖など)と共有結合することができる。グルタルアルデヒドは、それらのアミノ部分を介してポリペプチドと結合する。ホモ二官能性架橋剤(例えば、ホモ二官能性イミドエステル、ホモ二官能性N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、またはホモ二官能性スルフヒドリル反応性架橋剤)は、2つまたはそれ以上の同一の反応性部分を含み、この架橋剤が、結合するポリペプチドの混合物を含む溶液に添加される一段階反応手順で使用することができる。ホモ二官能性NHSエステルおよびイミドエステルは、ポリペプチドを含むアミンを結合させる。穏やかなアルカリ性のpHでは、イミドエステルは第一級アミンとのみ反応して、イミドアミドを形成し、クロスリンクされたポリペプチドの全体的な電荷は影響を受けない。ホモ二官能性スルフヒドリル反応性架橋剤には、ビスマレイミドヘキサン(BMH)、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(DFDNB)、および1,4−ジ−(3’,2’−ピリジルジチオ)プロピオアミドブタン)(DPDPB)が含まれる。
ヘテロ二官能性架橋剤は、2つまたはそれ以上の異なる反応性部分(例えば、アミン反応性部分およびスルフヒドリル反応性部分)を有し、アミン反応性部分またはスルフヒドリル反応性部分を介して、ポリペプチドの1つとクロスリンクされ、次いで、反応していない部分を介して他のポリペプチドと反応する。ピリジルジスルフィド架橋剤のように、複数のヘテロ二官能性ハロアセチル架橋剤が利用できる。カルボジイミドは、アミド結合をもたらす、アミンにカルボキシルをカップリングするためのヘテロ二官能性架橋剤の典型例である。
好適な抗体は、ある態様において、検出可能な標識を含む。好適な検出可能な標識には、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段または化学的手段により検出可能な任意の組成物が含まれる。好適なものには、磁気ビーズ(例えば、Dynabead(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、および黄色蛍光タンパク質など)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、酵素免疫測定法(ELISA)で一般的に用いられる西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、および他の酵素)、ならびにコロイド金もしくは着色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびラテックスなど)のビーズなどの比色標識が含まれるが、これらに限定されない。
いくつかの態様において、好適な抗体は、造影剤または放射性同位元素を含み、この造影剤または放射性同位元素は、造影、例えば、ヒトで行われる造影法で使用するのに適するものである。標識の非限定的な例としては、1231I(ヨウ素)、18F(フッ素)、99Tc(テクネチウム)、111In(インジウム)、および67Ga(ガリウム)などの放射性同位元素、ならびにガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム、および鉄などの造影剤が含まれる。放射性Gdアイソトープ(153Gd)も利用可能であり、非ヒト哺乳動物における造影処理に適する。好適な抗体は、標準的な技術を用いて標識することができる。例えば、好適な抗体は、クロラミンTまたは1,3,4,6−テトラクロロ−3α,6α−ジフェニルグリコールウリルを用いてヨウ素化することができる。フッ素化では、フッ素は、フッ化物イオンの置換反応によって、合成時に抗Tau抗体に添加される。かかる放射性同位元素を用いるタンパク質の合成の概説については、Muller−Gartner, H., TIB Tech., 16:122−130 (1998) and Saji, H., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst., 16(2):209−244 (1999)を参照のこと。好適な抗体は、標準的な技術を介して造影剤でも標識することができる。例えば、好適な抗体は、Gdジエチレントリアミン五酢酸(GdDTPA)またはGdテトラアザシクロドデカンテトラ酢酸(GdDOTA)などの低分子Gdキレートを該抗体に結合させることによってGdで標識することができる。Caravan et al., Chem. Rev. 99:2293−2352 (1999) and Lauffer et al., J. Magn. Reson. Imaging, 3:11−16 (1985)を参照のこと。好適な抗体は、例えば、ポリリジン−Gdキレートを本抗体に結合させることによってGdで標識することができる。例えば、Curtet et al., Invest. Radiol., 33(10):752−761 (1998)を参照のこと。あるいは、好適な抗体は、アビジンを有するGdキレート脂質を含む常磁性の重合リポソームおよびビオチン化抗体をインキュベートすることによってGdで標識することができる。例えば、Sipkins et al., Nature Med., 4:623−626 (1998)を参照のこと。
好適な抗体に結合することができる好適な蛍光タンパク質には、例えば、米国特許第6,066,476号、同第6,020,192号、同第5,985,577号、同第5,976,796号、同第5,968,750号、同第5,968,738号、同第5,958,713号、同第5,919,445号、同第5,874,304号に記載のオワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質またはその変異体もしくは誘導体;例えば、高感度GFP、例えば、クロンテック社から市販されている多くのそのようなGFP;赤色蛍光タンパク質;黄色蛍光タンパク質;ならびに、例えば、Matz et al. (1999) Nature Biotechnol. 17:969−973に記載の、花虫類種由来の種種の蛍光タンパク質および着色タンパク質のいずれかなどが含まれるが、これらに限定されない。
ある態様において、抗体は、融合パートナー、例えば、リガンド;エピトープタグ;ペプチド;および抗体以外のタンパク質などに結合(例えば、共有結合または非共有結合)させ得る。好適な融合パートナーには、インビボでの安定性の強化(例えば、血清半減期の増加)をもたらすペプチドおよびポリペプチド;精製の容易さをもたらすペプチドおよびポリペプチド、例えば、(His)n、例えば、6His(配列番号57)など;細胞から融合タンパク質を分泌させるペプチドおよびポリペプチド;エピトープタグを提供するペプチドおよびポリペプチド、例えば、GST、ヘマグルチニン(HA;例えば、YPYDVPDYA;配列番号58)、FLAG(例えば、DYKDDDDK;配列番号59)、c−myc(例えば、EQKLISEEDL;配列番号60)など;検出可能なシグナルを提供するペプチドおよびポリペプチド、例えば、検出可能な産物を生成する酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ)、またはそれ自体が検出可能であるタンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質など;ならびに、多量体化をもたらすペプチドおよびポリペプチド、例えば、免疫グロブリンのFc部分などの多量体化ドメインが含まれる。
融合には、例えば、同定または精製に有用な、固体支持体上に固定化されたものなどの結合パートナーと相互作用することができるペプチド配列を含む親和性ドメインも含まれ得る。ヒスチジンなどの連続した単一アミノ酸は、タンパク質と融合させると、ニッケルセファロースなどの樹脂カラムへの高親和性結合によって、この融合タンパク質の一段階精製のために用いることができる。親和性ドメインの例としては、His5(HHHHH)(配列番号61)、HisX6(HHHHHH)(配列番号57)、C−myc(EQKLISEEDL)(配列番号60)、Flag(DYKDDDDK)(配列番号59)、StrepTag(WSHPQFEK)(配列番号62)、赤血球凝集素、例えば、HAタグ(YPYDVPDYA;配列番号58)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、セルロース結合ドメイン、RYIRS(配列番号63)、Phe−His−His−Thr(配列番号64)、キチン結合ドメイン、S−ペプチド、T7ペプチド、SH2ドメイン、C末端RNAタグ、WEAAAREACCRECCARA(配列番号65)、金属結合ドメイン、例えば、亜鉛結合ドメイン、またはカルシウム結合タンパク質、例えば、カルモジュリン、トロポニンC、カルシニューリンB、ミオシン軽鎖、リカバリン、S−モジュリン、ビジニン、VILIP、ニューロカルシン、ヒポカルシン、フリクエニン、カルトラクチン、カルパインの大サブユニット、S100タンパク質、パルブアルブミン、カルビンジンD9K、カルビンジンD28K、およびカルレチニン、インテイン、ビオチン、ストレプトアビジン、MyoD、ロイシンジッパー配列、およびマルトース結合タンパク質に由来するドメインなどのカルシウム結合ドメインが含まれる。
ある態様において、好適な抗体を、内在性血液脳関門(BBB)受容体に結合するポリペプチドに結合させる。内在性BBB受容体に結合するポリペプチドに好適な抗体を結合すると、例えば、好適な抗体を、それを必要としている個体に投与することを含む本発明の治療法(以下参照)において、BBBの通過を促進する。内在性BBB受容体に結合する好適なポリペプチドには、内在性BBB受容体に特異的に結合する抗体、例えば、モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメントが含まれる。好適な内在性BBB受容体には、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体、およびインスリン様増殖因子受容体が含まれるが、これらに限定されない。例えば、米国特許公開第2009/0156498号を参照のこと。
一例として、好適な抗Tau抗体は、Tauポリペプチド内のエピトープに特異的に結合する第一の抗原結合部分、および内在性BBB受容体に結合する第二の抗原結合部分を含む、二重特異性抗体であり得る。例えば、ある例において、好適な抗Tau抗体は、Tauポリペプチド内のエピトープに特異的に結合する第一の抗原結合部分、およびトランスフェリン受容体に結合する第二の抗原結合部分を含む、二重特異性抗体である。
例えば、好適な抗Tau抗体は、BBBの通過を促進するペプチドに結合されていてよく、該ペプチドは、約15アミノ酸から約25アミノ酸長を有し、以下のペプチド:Angiopep−1(TFFYGGCRGKRNNFKTEEY;配列番号66);Angiopep−2(TFFYGGSRGKRNNFKTEEY;配列番号67);cys−Angiopep−2(CTFFYGGSRGKRNNFKTEEY;配列番号68);Angiopep−2−cys(TFFYGGSRGKRNNFKTEEYC;配列番号69);ならびに、アプロチニンフラグメント(TFVYGGCRAKRNNFKS;配列番号70)のうち1つに少なくとも約85%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、米国特許公開第2011/0288011号および同第2009/0016959号を参照のこと。BBBの通過を促進するペプチドは、抗Tau軽鎖領域のN末端、抗Tau軽鎖領域のC末端、抗Tau重鎖領域のN末端、抗Tau重鎖領域のC末端、抗Tau一本鎖抗体のN末端、および抗Tau一本鎖抗体のC末端などに連結されていてよい。
いくつかの態様において、好適な抗体は、ポリアミン修飾を含む。好適な抗体のポリアミン修飾は、修飾された抗体のBBBでの透過性を高める。好適な抗体は、天然に存在するかまたは合成のいずれかであるポリアミンで修飾することができる。例えば、米国特許第5,670,477号を参照のこと。有用な天然に存在するポリアミンには、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、1,3−ジアミノプロパン、ノルスペルミジン、合成のホモスペルミジン、テルミン(thermine)、テルモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、およびカナバルミンが含まれる。プトレシン、スペルミジンおよびスペルミンは、特に有用である。合成ポリアミンは、実験式CXHYNZで構成され、さらに、1〜6個のNR部分またはN(R)2部分(式中、Rは、H、(C1−C4)アルキル、フェニルまたはベンジルである)を含む、環式もしくは非環式の、分枝状または非分枝状の3〜12個の炭素原子の炭化水素鎖であり得る。ポリアミンは、任意の標準的なクロスリンク法を用いて抗体に結合させることができる。
ある態様において、好適な抗体は、糖部分を含むように改変され、この糖部分は本抗体に共有結合することができる。ある態様において、好適な抗体は脂質部分を含むように改変され、この脂質部分は本抗体に共有結合することができる。好適な脂質部分には、例えば、N−ラウロイル、N−オレオイルなどのN−脂肪酸アシル基;ドデシルアミン、オレオイルアミンなどの脂肪族アミン;およびC3〜C16の長鎖脂肪族脂質などが含まれる。例えば、米国特許第6,638,513号を参照のこと。ある態様において、好適な抗体はリポソームに組み込まれている。
併用療法
抗Tau抗体は、それを必要とする個体に単独で(例えば、単剤療法として)、または1つもしくはそれ以上のさらなる治療剤と併用して投与され得る。例えば、抗Tau抗体は、卒中またはTBIの処置のための1つまたはそれ以上の治療剤と併用して投与され得る。
本明細書で用いる“〜との併用”は、例えば、第一の化合物が、第二の化合物の全投与期間中に投与される;第一の化合物が、第二の化合物の投与と重複する期間に投与される、例えば第一の化合物の投与が、第二の化合物の投与前に始まり、そして第一の化合物の投与が、第二の化合物の投与終了前に終了する;第二の化合物の投与が、第一の化合物の投与前に始まり、そして第二の化合物の投与が、第一の化合物の投与終了前に終了する;第一の化合物の投与が、第二の化合物の投与開始前に始まり、そして第二の化合物の投与が、第一の化合物の投与終了前に終了する;第二の化合物の投与が、第一の化合物の投与開始前に始まり、第一の化合物の投与が、第二の化合物の投与終了前に終了する、ような使用を意味する。例えば“併用”はまた、2以上の化合物の投与を含むレジメンを意味し得る。本明細書で用いる“〜との併用”はまた、同じか、または異なる製剤において、同じか、または異なる投与経路で、そして同じか、または異なる投与量形態タイプで投与され得る、2以上の化合物の投与を意味する。
処置されるべき個体
抗Tau抗体での処置に好適な個体には、タウオパチー(例えば、急性タウオパチー)を有すると診断されている個体;一般集団よりもタウオパチーを発症する危険性の高い個体(例えば、タウオパチーを発症する遺伝的素因を有する個体);軍人(military personnel)などが含まれる。ある態様において、個体は、10歳未満から10歳まで、10歳から約15歳、約15歳から約20歳、または約20歳から約30歳のヒトである。ある態様において、個体は、成人である。ある場合において、成人は、約20歳から約30歳、30歳もしくはそれ以上、40歳もしくはそれ以上、50歳もしくはそれ以上、60歳もしくはそれ以上、70歳もしくはそれ以上、または80歳もしくはそれ以上である。例えば、成人は、40歳から50歳、50歳から60歳、60歳から70歳、または70歳以上であってよい。ある態様において、個体は、TBIを有する者である。ある態様において、個体は、卒中を有した者である。
製剤
本発明の方法において、抗Tau抗体は、所望の治療効果または診断効果をもたらし得るいずれかの便利な手段を用いて宿主(host)に投与され得る。故に、薬物は、治療的投与のために種々の製剤に組み込まれ得る。より具体的には、抗Tau抗体は、適当な薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて医薬組成物に剤形されてよく、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏、溶液、坐薬、注射、吸入剤およびエアロゾル剤のような固体、半固体、液体またはガス状の製剤に剤形され得る。
医薬投与量形態において、抗Tau抗体は、それらの薬学的に許容される塩の形態で投与され得るか、またはそれらは、単独でもしくは適当に、ならびに他の薬学的に活性な化合物と組み合わせて使用されてもよい。以下の方法および添加剤は、単に例示として記載され、限定を意図するものではない。
経口用製剤に関して、抗Tau抗体抗Tau抗体は、単独で、または錠剤、散剤、顆粒剤またはカプセル剤を製造するための適当な添加剤と組み合わせて、例えば、常套の添加剤、例えばラクトース、マンニトール、コーンデンプンまたはジャガイモデンプンなど;結合剤、例えば結晶質セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンデンプンまたはゼラチンなど;崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなど;滑剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウムなど;および、要すれば、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤および着香剤と組み合わせて用いることができる。
抗Tau抗体は、水溶性溶媒または非水溶性溶媒、例えば、野菜もしくは他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコールなどに;および、要すれば、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤および防腐剤などの常套の添加剤と共に、それらを溶解、懸濁または乳化することにより、注射用製剤に製剤することができる。
抗Tau抗体を含む医薬組成物は、所望の純度を有する抗体を、任意の生理的に許容される担体、添加剤、安定化剤、界面活性剤、緩衝剤および/または等張化剤と混合することにより製造される。許容される担体、添加剤および/または安定化剤は、用いる投与量および濃度で受容者(レシピエント)に毒性ではなく、リン酸、クエン酸、および他の有機酸のような緩衝剤;アスコルビン酸、グルタチオン、システイン、メチオニンおよびクエン酸を含む、抗酸化剤;防腐剤(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、p−クロロ−m−クレゾール、メチルまたはプロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、またはそれらの組合せなど);アミノ酸、例えば、アルギニン、グリシン、オルニチン、リシン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イソロイシン、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、プロリンおよびそれらの組合せなど;単糖類、二糖類および他の炭水化物;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、ゼラチンまたは血清アルブミン;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばトレハロース、スクロース、ラクトース、グルコース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラフィノース、グルコサミン、N−メチルグルコサミン、ガラクトサミン、およびノイラミン酸など;ならびに/または、非イオン性界面活性剤、例えば、Tween、Brij、プルロニック類、トライトン−X、またはポリエチレングリコール(PEG)などが含まれる。
医薬組成物は、液体形態、凍結乾燥形態または凍結乾燥形態から再構成された液体形態であってよく、ここで、凍結乾燥製剤は、投与前に滅菌溶液で再構成される。凍結乾燥組成物を再構成するための標準的方法は、(典型的に、凍結乾燥中に除かれる容量と等量の)純水を戻す方法である。しかしながら、抗菌剤を含む溶液は、非経腸投与用医薬組成物の製造に用いられ得る;Chen (1992) Drug Dev Ind Pharm 18, 1311−54もまた参照のこと。
医薬組成物における抗体濃度の例は、約1mg/mLから約200mg/mlまたは約50mg/mLから約200mg/mL、または約150mg/mLから約200mg/mLの範囲であり得る。
抗体の水性製剤は、pH緩衝溶液として、例えば、約4.0から約7.0、または約5.0から約6.0の範囲のpH、あるいは約5.5のpHで製造され得る。この範囲内のpHに好適な緩衝液の例には、ホスフェート−、ヒスチジン−、クエン酸−、コハク酸−、酢酸−緩衝液、および他の有機酸緩衝液が含まれる。緩衝液の濃度は、約1mMから約100mM、または約5mMから約50mMであり得て、例えば、緩衝液および製剤の所望の等張性によって変わる。
等張化剤は、製剤の等張性を調節するために抗体製剤に包含され得る。等張化剤の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリンおよびアミノ酸群由来のいずれかの成分、糖類ならびにそれらの組合せが含まれる。ある態様において、高張性または低張性溶液が好適であり得るが、水性製剤は等張性である。用語“等張性”は、例えば、生理的な塩溶液または血清と比較される他の溶液と同程度の等張性を有する溶液を示す。等張化剤は、約5mMから約350mMの量、例えば、100mMから350nMの量で使用され得る。
界面活性剤はまた、製剤された抗体の凝集を減らす、および/または製剤中の粒子の形成を最小化する、および/または吸収を減らすために、抗体製剤に追加され得る。界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij)、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(トライトン−X)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー、Pluronic)、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が含まれる。好適なポリオキシエチレンそるビタン−脂肪酸エステルの例は、ポリソルベート20、(Tween 20(商標)の商品名で販売)およびポリソルベート80(Tween 80(商標)の商標名で販売)である。好適なポリエチレン−ポリプロピレンコポリマーの例は、商標名プルロニック(登録商標)F68またはポロキサマー188(商標)で販売されるものである。好適なポリオキシエチレンアルキルエーテルの例は、商標名Brij(商標)で市販されるものである。界面活性剤の濃度の例は、約0.001%から約1%w/vの範囲であり得る。
凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)はまた、凍結乾燥法の間に不安定化条件から変化しやすい活性成分(例えば、タンパク質)を保護するために添加され得る。例えば、知られている凍結乾燥保護剤としては、糖類(グルコースおよびスクロースを含む);ポリオール(マンニトール、ソルビトールおよびグリセロールを含む);および、アミノ酸(アラニン、グリシンおよびグルタミン酸を含む)が含まれる。凍結乾燥保護剤は、約10mMから500nMの量で含まれ得る。
ある態様において、好適な製剤は、抗Tau抗体、および1つまたはそれ以上の上記の薬物(例えば、界面活性剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤)を含み、1種またはそれ以上の防腐剤、例えばエタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、p−クロロ−m−クレゾール、メチルまたはプロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、およびそれらの組合せを基本的に含まない。他の態様において、防腐剤は、製剤、例えば、約0.001から約2%(w/v)の範囲の濃度で、製剤中に含まれる。
例えば、好適な製剤は、非経腸投与に好適な液体または凍結乾燥製剤であってよく、約1mg/mLから約200mg/mLの抗Tau抗体体;約0.001%から約1%の少なくとも1種の界面活性剤;約1mMから約100mMの緩衝剤;任意に、約10mMから約500mMの安定化剤;および、約5mMから約305mMの等張化剤を含んでいてよく、約4.0から約7.0のpHを有する。
別の例として、好適な非経腸製剤は、約1mg/mLから約200mg/mLの抗Tau抗体;0.04% Tween 20 w/v;20mM L−ヒスチジン;および、250mM スクロースを含み、pH5.5である、液体または凍結乾燥製剤である。
別の例として、好適な非経腸製剤は、1)15mg/mLの抗Tau抗体;0.04% Tween 20 w/v;20mM L−ヒスチジン;および、250mM スクロースを含み、pH5.5である凍結乾燥製剤、または2)75mg/mLの抗Tau抗体;0.04% Tween 20 w/v;20mM L−ヒスチジン;および、250mM スクロースを含み、pH5.5である凍結乾燥製剤、または3)75mg/mLの抗Tau抗体;0.02% Tween 20 w/v;20mM L−ヒスチジン;および、250mM スクロースを含み、pH5.5である凍結乾燥製剤、または4)75mg/mLの抗Tau抗体;0.04%Tween 20w/v;20mM L−ヒスチジン;および、250mM トレハロースを含み、pH5.5である凍結乾燥製剤、または6)75mg/mLの抗Tau抗体;0.02% Tween 20 w/v;20mM L−ヒスチジン;および、250mMトレハロースを含み、pH5.5である凍結乾燥製剤、を含む。
別の例として、好適な非経腸製剤は、1)7.5mg/mLの抗Tau抗体;0.022% Tween 20 w/v;120mM L−ヒスチジン;および、250 125mM スクロースを含み、pH5.5である液体製剤、または2)37.5mg/mLの抗Tau抗体;0.02% Tween 20 w/v;10mM L−ヒスチジン;および、125mM スクロースを含み、pH5.5である液体製剤、または3)37.5mg/mLの抗Tau抗体;0.01% Tween 20 w/v;10mM L−ヒスチジン;および、125mM スクロースを含み、pH5.5である液体製剤、または4)37.5mg/mLの抗Tau抗体;0.02% Tween 20 w/v;10mM L−ヒスチジン;125mM トレハロースを含み、pH5.5である液体製剤、または5)37.5mg/mLの抗Tau抗体;0.01% Tween 20 w/v;10mM L−ヒスチジン;および、125mM トレハロースを含み、pH5.5である液体製剤、または6)5mg/mLの抗Tau抗体;0.02% Tween 20 w/v;20mM L−ヒスチジン;および、250mM トレハロースを含み、pH5.5である液体製剤、または7)75mg/mLの抗Tau抗体;0.02% Tween 20 w/v;20mM L−ヒスチジン;および、250mM マンニトールを含み、pH5.5である液体製剤、または8)75mg/mLの抗Tau抗体;0.02% Tween 20 w/v;20mM L−ヒスチジン;および、140mM 塩化ナトリウムを含み、pH5.5である液体製剤、または9)150mg/mLの抗Tau抗体;0.02% Tween 20 w/v;20mM L−ヒスチジン;および、250mM トレハロースを含み、pH5.5である液体製剤、または10)150mg/mLの抗Tau抗体;0.02% Tween 20 w/v;20mM L−ヒスチジン;および、250mM マンニトールを含み、pH5.5である液体製剤、または11)150mg/mLの抗Tau抗体;0.02% Tween 20 w/v;20mM L−ヒスチジン;および、140mM 塩化ナトリウムを含み、pH5.5である液体製剤、または12)10mg/mLの抗Tau抗体;0.01% Tween 20 w/v;20mM L−ヒスチジン;および、40mM 塩化ナトリウムを含み、pH5.5である液体製剤である。
抗Tau抗体は、吸入により投与されるエアロゾル製剤に利用され得る。抗Tau抗体は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などのような加圧された許容される噴射剤に製剤され得る。
さらに、抗Tau抗体は、乳化基剤または水溶性基剤のような種々の基剤と混合されて坐薬に製剤され得る。抗Tau抗体は、坐薬の形で直腸から投与され得る。坐薬は、カカオバター、カーボワックスおよびポリエチレングリコールのようなビークルであって、体温で融解するが、室温では固化するビークルを含み得る。
シロップ剤、エリクシル剤、および懸濁液のような経口または直腸投与用単位投与量形態は、各投与量単位、例えば、小さじ一杯、大さじ一杯、錠剤または坐薬が、所定の量の、1つまたはそれ以上の阻害剤を含む組成物を含むように提供され得る。同様に、注射または静脈内投与用の単位投与量形態は、滅菌水、通常の生理食塩水または別の薬学的に許容される担体中の溶液として、組成物中に抗Tau抗体を含み得る。
本明細書で用いる用語“単位投与量形態”は、ヒトおよび動物対象の単位投与量として適する、物理的に分離された単位を意味し、それぞれの単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体またはビークルと共に、所望の効果を生じるために十分な量で計算された、事前に決定された量の抗Tau抗体を含む。抗Tau抗体の仕様は、用いる特定の抗体および達成する効果、ならびに宿主におけるそれぞれの抗体に関連する薬理学に左右され得る。
他の投与方法はまた、本明細書に記載の方法との使用が見出され得る。例えば、好適な抗体は、坐薬に製剤され得て、いくつかの場合に、エアロゾルおよび点鼻組成物に製剤され得る。坐薬について、ビークル組成物は、従来の結合剤および例えばポリアルキレングリコール、またはトリグリセリドのような担体を含み得る。そのような坐薬は、約0.5%から約10%(w/w)、例えば、約1%から約2%の範囲で活性成分を含む混合物から形成され得る。
点鼻製剤は、通常、鼻粘膜に炎症を起こさせず、繊毛機能を顕著に低下させない、ビークルを含み得る。水、生理食塩水または他の既知の物質のような希釈剤が用いられ得る。鼻用製剤はまた、クロロブタノールおよび塩化ベンザルコニウムのような防腐剤を含み得るが、これらに限定されない。界面活性剤は、鼻粘膜による抗体の吸収を増強するために存在し得る。
抗Tau抗体は、注射可能製剤として投与され得る。典型的に、注射可能組成物は、液体溶液または懸濁液として製造され、注射前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体形態としても製造することができる。該製剤を乳化すること、または該抗体をリポソームビークル中に封入されてもよい。
好適な添加剤ビークルは、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せである。加えて、要すれば、該ビークルは、少量の補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝剤などを含み得る。そのような投与量形態を製造する実際の方法は知られており、または当業者には明らかであり得る。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 17th edition, 1985を参照のこと。いずれにしても、投与される組成物または製剤は、処置されるべき対象を所望の状態にするのに充分な量の抗Tau抗体を含み得る。
薬学的に許容される添加剤、例えばビークル、アジュバント、担体または希釈剤は、容易に入手可能である。さらに、薬学的に許容される補助物質、例えばpH調整剤および緩衝剤、浸透圧調節剤、安定化剤、および湿潤剤などは、容易に入手可能である。
ある態様において、抗Tau抗体を、制御放出製剤に製剤化する。持続放出製剤は、当技術分野で既知の方法を用いて製造され得る。持続放出製剤の好適な例としては、抗体を含む固体の疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、該マトリックスは、成形品の形態、例えばフィルムまたはマイクロカプセルである。持続放出マトリックスの例としては、ポリエステル、L−グルタミン酸およびエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、ヒドロゲル、ポリラクチド、分解性の乳酸−グリコール酸コポリマー、ならびにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。持続放出製剤中に含まれる抗体の生物活性を消失させ、免疫原性を変化させる可能性は、適当な補助物質を用いること、水分含量を調節すること、および特定のポリマーマトリックス組成物を開発することにより、妨げられ得る。
本発明の範囲内の制御放出は、多くの持続放出投与量形態のいずれか1つを意味すると解釈することができる。以下の用語は、本発明の目的のために、制御放出と実質的に同等とみなすことができる:連続的放出、制御放出、遅延放出(delayed release)、デポー、徐放、長期放出、プログラム放出、持続放出、比例放出、遅延放出(protracted release)、持続性の、遅らせた、遅い放出、間隔をあけた放出、持続放出(sustained release)、タイムコート、持続放出(timed release)、遅延作用、延長された作用、レイヤードタイム作用、長時間作用型、持続性作用、反復作用、遅行性、持続作用(sustained action)、持続作用薬、および持続放出(extended release)。これらの用語のさらなる詳解は、Lesczek Krowczynski, Extended−Release Dosage Forms, 1987 (CRC Press, Inc.)に見出され得る。
種々の制御放出技術は、非常に広い範囲の薬物投与量形態を包含する。制御放出技術には、物理システムおよび化学システムが含まれるが、これらに限定されない。
物理システムには、マイクロカプセル化、マクロカプセル化、および膜システムなどの速度制御膜を含む貯蔵システム;中空繊維、超微小孔性セルローストリアセテート、および多孔質ポリマー基質および発泡体などの速度制御膜を含まない貯蔵システム;非多孔性のポリマーマトリクスまたはエラストマーマトリクス(例えば、浸食されない環境の、浸食され得る環境の、薬剤移入、および分解)に物理的に溶解されるそれらのシステム、および非多孔性のポリマーマトリクスまたはエラストマーマトリクス(例えば、浸食されない環境の、浸食され得る環境の、薬剤移入、および分解)に物理的に分散した物質を含む一体化したシステム;外側制御層に化学的に類似の、または非類似の貯蔵層を含む積層構造;ならびに、浸透圧ポンプ、またはイオン交換樹脂上の吸着などの他の物理的方法が含まれるが、これらに限定されない。
化学システムには、ポリマーマトリックスの化学的浸食(例えば、不均一な浸食、もしくは均一な浸食)、またはポリマーマトリックスの生物学的浸食(例えば、不均一、もしくは均一)が含まれるが、これらに限定されない。制御放出システムのカテゴリーのさらなる詳解は、Agis F. Kydonieus, Controlled Release Technologies:Methods, Theory and Applications, 1980 (CRC Press, Inc.)中に見出され得る。
経口投与用に開発される多くの制御放出製剤がある。これらには、浸透圧制御型消化管送達システム;動水圧制御型消化管送達システム;微多孔膜透過制御型消化管送達デバイスを含む膜透過制御型消化管送達システム;胃液耐性腸標的化制御放出型消化管送達デバイス;ゲル拡散制御型消化管送達システム;および、イオン交換制御型消化管送達システムが含まれるが、これらに限定されず、これらには、カチオン性薬物およびアニオン性薬物が含まれる。制御放出型薬物送達システムに関するさらなる情報は、Yie W. Chien, Novel Drug Delivery Systems, 1992 (Marcel Dekker, Inc.)中に見出され得る。
処置プロトコル
ある面において、個体におけるタウオパチー (例えば、急性タウオパチー) の処置法が提供され、該方法は、抗Tau抗体を該個体に投与することを含む。
従って、一態様において、抗Tau抗体の用量は、体重1kg当たりのmgで計算される。しかしながら、別の態様において、抗Tau抗体の用量は、患者の体重に無関係の固定されたフラットな固定用量である。特定の態様において、投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、効果的な応答)を提供するように調整される。
別の態様において、抗Tau抗体の用量は経時的に変化する。例えば、抗Tau抗体は、当初は高用量で投与されてもよく、時間とともに低減され得る。別の態様において、抗Tau抗体は、当初には低用量で投与され、経時的に増加される。
別の態様において、投与される抗Tau抗体の量は、各用量について一定である。別の態様において、投与される抗体の量は、各用量に応じて変わる。例えば、抗体の維持(または後続の)用量は、最初に投与される負荷用量(loading dose)より高いかまたは同じであってよい。別の態様において、抗体の維持用量は、負荷用量より低いかまたはそれと同じであってもよい。
一態様において、抗Tau抗体は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12mg/kgの用量で投与される。一態様において、抗Tau抗体は、10mg/kgの用量で投与される。一態様において、抗Tau抗体は4mg/kgの用量で投与される。別の態様において、抗Tau抗体は一回投与される。別の態様において、抗Tau抗体の2以上の用量が投与される。
他の態様において、抗Tau抗体は、臨床上の利益が観察される限り、または例えば完全な応答(complete response)もしくは手に負えない毒性(unmanageable toxicity)があるまでは、1週間に1回、2、3週間に1回、1月に1回投与される。
別の態様において、抗Tau抗体は、第一選択処置剤(例えば、当初または初回の処置)として投与される。別の態様において、抗Tau抗体は、(例えば、再発後および/または最初の処置が失敗した後を含む、初期または初回の処置後の)第二選択処置剤として投与される。
以下の実施例は、単なる例示であり、多くの変形および等価物が、本明細書の記載を読めば当業者には明らかとなるであろう任意の方法で、本明細書の記載の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
本明細書中に引用される、すべての引用文献の内容、Genbank登録番号、特許および公開された特許出願は、引用により本明細書中に明示的に包含される。
実施例
以下の実施例は、本発明を如何に実施し、使用するかを完全な開示および説明を当業者に提供するために示され、発明者らが彼らの発明と見なすものの範囲を限定するものではなく、また、以下の実験が実行される全ての実験または唯一の実験であると示すためのものでもない。使用する数字(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保する努力がなされたが、いくつかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。特に示さない限り、%は重量%であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧またはそれに近いものである。標準的な略語、例えば、bp、塩基対(複数可);kb、キロベース(複数可);pl、ピコリットル(複数可);sまたはsec、秒(複数可);min、分(複数可);hまたはhr、時(複数可);aa、アミノ酸(複数可)kb、キロベース(複数可);bp、塩基対(複数可);nt、ヌクレオチド(複数可);i.m.、筋肉内;i.p.、腹腔内;およびs.c.、皮下などを用いることができる。
実施例1:TauレベルおよびAβレベルに対するIPN002の効果
オスのカニクイザル (Macaca fascicularis) に、IPN002を20mg/kgの用量で単回遅延ボーラス注入により投与し、血漿および脳脊髄液(CSF)サンプルを注入後の種々の時間点で集めた。サンプル(CSFおよび血漿)を、特定のTauを捕捉するELISAアッセイを用いて、IPN002の存在を測定した。このアッセイは、Tauに結合していないIPN002のみを検出し得る。さらに、TauおよびAβレベルを、市販のELISAアッセイを用いてCSFにおいて測定した。Tauアッセイ (Invitrogen)において用いた捕捉抗体は、IPN002と競合するため、アッセイは、遊離Tauレベルのみ(すなわち、IPN002に結合していないTauのみ)を報告する。
図1に示すとおり、血漿中のIPN002の最大濃度は、注入直後に達成され(注入の5分後に約666μg/mL)、抗体が予期される血中動態で血漿から排出された後、8時間の間、比較的一定に維持された。驚くべきことに、IPN002は、試験した最も早い時点(1時間、図1参照)でCSF中に検出されたが、血漿中で観察されるよりも遙かに低いレベルであった。CSF中におけるIPN002レベルは、注入後最初の24時間は血漿レベルに追従したが、その後168時間は比較的一定のままであった。
図1。20mg/kgの用量レベルでIPN002を単回注入した後の、カニクイザルのCSFおよび血漿中のIPN002の測定。IPN002を、特定のELISAアッセイを用いて測定した。値は、特定の時間点で集めた全てのサンプルの平均を表す(平均±標準偏差)。
IPN002がCSF中で迅速に検出可能であった観察と一致し、Tauレベルもまた、IPN002注入の1時間以内に顕著に減少した(図2)。実際に、注入の8時間後には遊離TauはCSF中で検出不可能であって、この効果は、CSF中のIPN002の薬物動態と一致して、168時間持続した。
図2。20mg/kgの用量レベルでIPN002を単回注入した後の、カニクイザルのCSF中のIPN002およびTauの測定。IPN002を、特定のELISAアッセイを用いて測定した。値は、特定の時間点で集めた全てのサンプルの平均を表す(平均±標準偏差)。Tau タンパク質を、市販のELISAアッセイ (Invitrogen)を用いて測定し、値は、特定の時間点で集めた全てのサンプルの平均を表す(平均±平均値の標準誤差)。IPN002注入の7日前(−7日目)に集めたCSFサンプルを、参照のためにグラフ上にプロットしていることに留意する。
これとは対照的に、CSF中のAβタンパク質のレベルは、試験した条件下では顕著に変化しなかった(図3)。
図3。20mg/kgの用量レベルでIPN002を単回注入した後の、カニクイザルのCSF中のAβおよびTauの測定。TauおよびAβタンパク質を市販のELISAアッセイを用いて測定し、値は、特定の時間点で集めた全てのサンプルの平均を表す(平均±平均値の標準誤差)。IPN002注入の7日前(−7日目)に集めたCSFサンプルを、参照のためにグラフ上にプロットしていることに留意する。
実施例2:TauレベルおよびAβレベルに対するhu-IPN002の効果
オスのカニクイザル (Macaca fascicularis) に、IPN002のヒト化変異体(“hu-IPN002”)を5mg/kgまたは20mg/kgの用量で単回遅延ボーラス注入により投与した。
血清およびCSF中のhu-IPN002濃度分析
血清およびCSF中のhu-IPN002のレベルをアッセイした。結果を図4Aおよび4Bならびに図5Aおよび5Bに示す。
図4Aに示す通り、5mg/kgのhu-IPN002の投与により、血清中のhu-IPN002レベルは、約0.1時間以内に約25μg/mlであった。図4Bに示す通り、20mg/kgのhu-IPN002の投与により、血清中のhu-IPN002レベルは、約0.1時間以内に約120μg/mlであった。
図5Aに示す通り、5mg/kgのhu-IPN002の投与により、CSF中のhu-IPN002レベルは、10時間の時間点で約25ng/mlであった。図5Bに示す通り、20mg/kgのhu-IPN002の投与により、CSF中のhu-IPN002レベルは、10時間の時点で約200ng/mlであった。薬物動態データを図6にまとめる。
CSF中の遊離Tauレベルの分析
CSF中の遊離Tauレベルに対するhu-IPN002の効果を試験した。オスのカニクイザルを上記の通りに処理し、CSF中の遊離Tauレベルを測定した。結果を図7に示す。図7に示す通り、5mg/kgまたは20mg/kgのhu-IPN002の単回注入は、CSF中の遊離Tauレベルを低減させた。Tauレベルは、hu-IPN002 抗体の投与後160時間を超えて低く維持された。
CSF中のAβレベルの分析
非ヒト哺乳動物のCSFにおけるAβレベルに対するhu-IPN002の効果を評価した。オスのカニクイザル(Macaca fascicularis)に、hu-IPN002を5mg/kgまたは20mg/kgの用量で単回遅延ボーラス注入により投与した。脳脊髄液(CSF)サンプルを注入後の種々の時間点で集めた。CSFサンプルを、市販のELISAアッセイを用いて、Aβ40の存在を測定した。結果を図8に示す。値は、特定の時間点で集めた全てのサンプルの平均を示す(平均±平均の標準誤差)。
図8に示す通り、20mg/kgのhu-IPN002の単回注入は、約150時間後にCSF中のAβ40レベルを低減させた。CSF中のAβ40レベルは、約350時間まで低減し続けた。
実施例3:Tauフラグメントは、慢性外傷性脳症 (CTE)を有する可能性のある個体から得られたCSF中に存在する。
CSFサンプルを、行動/認知障害を示し、CTEを有する可能性があると考えられた、ナショナルフットボールリーグの元ラインマンから入手した。CSFサンプルをeTauフラグメントの存在についてアッセイした。eTauフラグメントは、複数の健常個体および複数のCTEを有する可能性がある個体から集めたCSFから親和性を利用して単離した。単離されたeTauフラグメントをポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて分離した。そして、分離したフラグメントを膜に移した。該膜をIPN001でプローブ化した。図10に示す結果は、TauフラグメントがCTEを有する可能性がある個体から得られたCSF中に存在することを示す。
実施例4:TauレベルおよびAβレベルに対するhu-IPN002の効果 (継続した単回静脈内投与試験−5mg/kgまたは20mg/kg)
オスのカニクイザルに、hu-IPN002を、5mg/kgまたは20mg/kgの用量で単回遅延ボーラス注入により投与した。血清hu-IPN002の分析のために、血液を、全ての動物から、投与前、ならびに単回投与(1日目)後、0.083時間、0.25時間、0.5時間、1時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、168時間、312時間(14日目)、480時間(21日目)、648時間(28日目)、816時間(35日目)、984時間(42日目)、1152時間(49日目)、および1320時間(56日目)にて得た。CSF hu-IPN002の分析のために、CSFを、全ての動物から、投与前、ならびに8時間、24時間、48時間、96時間、120時間、および168時間、312時間(14日目)、480時間(21日目)、648時間(28日目)、816時間(35日目)、984時間(42日目)、1152時間(49日目)、および1320時間(56日目)にて動物コホートから得た。血清およびCSF中のhu-IPN002レベルを、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いてアッセイした。
血清およびCSF中のhu-IPN002濃度の分析
血清 hu-IPN002についての薬物動態のまとめを以下の表4に示し、血清 hu-IPN002濃度 対 時間プロファイルを図22に示す。
単回静脈内投与後、平均hu-IPN002全身曝露(AUC[0-T] および AUC[INF])は、5mg/kgから20mg/kgの間でおよそ用量比例的に増加した。5および20mg/kg用量それぞれについて、平均CL値は、1.15および0.964mL/h/kgであり、平均Vss値は、0.293および0.271L/kgであった。5および20mg/kg用量それぞれについて、平均T-HALF値は、170および150時間であった。
CSF hu-IPN002についての薬物動態のまとめを以下の表5に示し、CSF hu-IPN002濃度 対 時間プロファイルを図23に示す。
単回静脈内投与後、hu-IPN002は、最も早い時点(投与後8時間)でサルCSF中に検出され、平均最大 CSF hu-IPN002 濃度は、投与の23時間後に達成された。CSF T-HALF値は、血清中でのそれらの値と同様であった(1.2から1.3倍)。平均 CSF hu-IPN002 暴露 (AUC[0-T]) は、5から20mg/kgの間で用量比例よりも大きく増加した。平均CSF/血清 AUC(0-T) 比は、5および20mg/kgそれぞれについて、0.0013および0.0038であった。一方、CSF AUC (INF) 値は、データ不足のために5mg/kgで報告されず、20mg/kgでのCSF AUC(INF)値は、血清 AUC(INF)値に対して 0.0039であった。
CSF中の遊離Tauレベルの分析
CSF中の遊離Tauレベルに対するhu-IPN002の効果もまた試験した。オスのカニクイザルを上記の通りに処理し、CSF中の遊離Tauレベルを市販のELISAキットを用いて測定した。結果を図11に示し、CSF 遊離eTau レベル (ベースラインの百分率) 対 経時プロファイルで示される。
図24に示す通り、hu-IPN002を単回静脈内投与した後、CSF 遊離 eTauレベルは、最も早い時点(投与後8時間)で用量依存的に低減し、5および20mg/kgのそれぞれで83%および99%の最大減少を示した。5mg/kg用量では、最大の標的との結合(target engagement)(最小の遊離eTau)は、48時間から96時間の間に達成され、遊離eTauレベルは、ベースラインの17.3−21%であった。遊離eTauレベルは、単回静脈内投与の約480時間 (21日目)後にベースラインに戻った。これとは対称的に、20mg/kgでのeTauレベルは、投与後8週間に亘りベースラインより低く維持された。20mg/kg用量において、最大の標的との結合が8から168時間の間に観察され、遊離eTauレベルは、ベースラインの1.35−7.44%であった。一方、遊離eTauレベルは、1320時間の試験期間に亘ってベースラインと比較して低く維持され、濃度は、後の時点でベースラインに向かって増加した。
CSF中のAβレベルの分析
オスのカニクイザル (Macaca fascicularis)のCSF中のAβレベルに対するhu-IPN002の効果もまた評価した。オスのカニクイザルを上記の通りに処理し、CSFサンプルを注入後の種々の時間点で集めた。CSFサンプルを市販のELISAアッセイを用いてAβ40の存在について測定した。結果を図25に示し、CSF Aβ40レベル (ベースラインの百分率) 対 経時プロファイルで示される。5mg/kg用量群では、CSF Aβ40レベルに変化は観察されなかった。これとは対称的に、20mg/kg用量群において、CSF Aβ40レベルは、480時間の時点で、ベースラインの82%まで平均値が低減した。816時間まで、および残りの実験期間中、CSF Aβ40レベルはベースラインに戻った。CSF Aβ40レベルは、投与の3週間後に20mg/kg群でベースラインに対して17%減少したが、648時間後にベースラインに戻った。
実施例5:TauレベルおよびAβレベルに対するhu-IPN002の効果(単回静脈内投与試験−0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg、または20mg/kg)
単回用量、多数回用量レベル、静脈内(IV)ボーラス注射試験を、57日間に亘って、hu-IPN002の血清およびCSF 薬物動態学的および薬力学的プロファイルを評価するために行った。用いる用量レベルは、0.5、2、5および20mg/kgであった。薬力学的評価項目には、遊離CSF eTauおよびAβ42が含まれた。
11匹のオスのカニクイザルに、血管アクセスポート (大腿静脈および大腿動脈) および脳脊髄液 (CSF) 腰部アクセスポート (L1で終わるカテーテル)を以前に移植していた。それぞれが、小分子薬理学的研究で以前に使用されていたが、これらの試験前に少なくとも1ヶ月の休薬期間があった。サルは、実験の開始時に、およそ5−9歳で、体重4.6−8.7kgであった。サル対象は、一般的に、注入前の朝を除いて、ペアで飼育され、標準サル餌(Harlan Teklad Global 20% protein Primate Diet 2050)を用いた。水は継続的に利用可能であり、新鮮な果物を週に2回提供した。おもちゃおよび採餌デバイスは、日常的に提供し、テレビ番組は、コロニー部屋で利用可能であった。実験動物のケアは、米国公衆衛生局実験動物の愛護管理と使用に関する方針、および実験動物の管理と使用のためのガイド(2011)に従って行った。
各分析物のベースライン測定を、試験の開始に先立って、複数のCSFサンプルから決定した。試験は、各動物へのビークル投与から開始した。ビークルは、静脈アクセスポートを媒介して20分かけて6ml/kgの単回遅延ボーラス用量として投与された。ビークルは、10mM リン酸および140mM NaClからなる、pH5.8のPBS中、0.02% Tween−80であった。血液およびCSFを、ビークル投与後およびhu-IPN002の投与前に少なくとも2週間採取し、hu-IPN002を以下のスケジュールで投与した。血清サンプリング時点は、投与前、動脈アクセスポートを介して注入後、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、72時間、168時間、336時間 (時間は、注入終了に関係する)であった。CSFサンプリング時点は、注入後、2時間、4時間、7時間、8時間、24時間、25時間、48時間、49時間、72時間、73時間、168時間、169時間、336時間および337時間であった。
処置群を表6に示すように割り当てた。hu-IPN002は、静脈アクセスポートを媒介して20分かけて6ml/kgの用量を0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kgまたは20.0mg/kgの単回遅延ボーラス用量として投与された。血清サンプリング時点は、投与前、動脈アクセスポートを介して注入後、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、72時間、168時間、336時間、504時間、672時間、840時間、1008時間、1176時間、1344時間および1512時間(時間は、注入終了に関係する)であった。CSFサンプリング時点は、注入後、2時間、4時間、7時間、8時間、24時間、25時間、48時間、49時間、72時間、73時間、168時間、169時間、336時間、337時間、504時間、505時間、672時間、673時間、840時間、841時間、1008時間、1009時間、1176時間、1177時間、1344時間、1345時間、1512時間および1513時間であった。8時間、25時間、49時間、73時間、169時間、337時間、505時間、673時間、841時間、1009時間、1177時間、1345時間および1513時間からのCSFサンプルを、中間分析のために使用し、他のサンプルは、試験の終了時に単一のバッチで分析した。
血清およびCSF hu-IPN002 濃度の分析
hu-IPN002レベルを、血清およびCSFサンプルの両方で特異的ELISAを用いて測定した。図26は、血清中のhu-IPN002の予測(fitted)データ 対 実測データを示し、図27は、CSF中のhu-IPN002の予測データ 対 実測データを示す。
図26に示す通り、hu-IPN002のAUC[INF]は、0.5mg/kgから20mg/kgの用量比例様式で増加した(0.5、2、5および20mg/kgにてそれぞれ、4131、20192、47087および145300μg・h/mL)。平均血清半減期 [T-HALF] 値は、218から276時間の範囲であった。平均血清クリアランス [CL]は、0.12mL/h/kgであると計算された。Vss値は、0.037から0.059L/kgの範囲であった。
図27に示す通り、0.5mg/kg用量にて、CSF暴露が、血清濃度により予想よりも低く現れた (CSF中のAUC[0-T] は、血清 AUC[0-T]の0.05%であると決定された) こと以外、CSF中のhu-IPN002濃度もまた、用量比例様式で増加し、ここで、AUC[0-T]は、hu-IPN002の対応する血清 AUC[0-T]の0.1%であった。
CSF中の遊離Tauレベルの分析
CSF中の遊離eTauレベルに対するhu-IPN002の効果を、ELISAを用いて測定した。図28は、CSF中のhu-IPN002 eTauの予測データ 対 観測データを示す。eTauの分解についてのKdegは、0.11h−1であると推定された。Kdは、0.16nmol/Lであると推定された。
図29Aおよび29Bならびに以下の表6に示す通り、hu-IPN002は、遊離eTauの用量および時間依存的減少を誘導した。
図29Aおよび29Bに示す通り、hu-IPN002は、CSF 遊離eTauを用量および時間依存的様式で低減させた。例えば、それぞれ0.5、2、5および20mg/kg IV(静脈内)用量の投与後24時間にて、遊離eTauレベルを、ベースラインの86.7%、ベースラインの37.9%、ベースラインの20.2%およびベースラインの8.3%まで低減させた。それぞれ0.5、2、5および20mg/kg IV用量の投与後48時間にて、遊離eTauレベルを、ベースラインの78.8%、ベースラインの27.4%、ベースラインの14.1%およびベースラインの8.7%まで低減させた。それぞれ0.5、2、5および20mg/kg IV用量の投与後72時間にて、遊離eTauレベルを、ベースラインの69.3%、ベースラインの31.5%、ベースラインの12.8%まで、および定量下限まで低減させた。遊離eTauレベルは、それぞれ0.5、2、5および20mg/kg IV用量の投与後、72時間での69.3%、168時間での26.7%、336時間での11.5%、および24時間での<10%(% ベースライン)の最小レベルまで低減された。これとは対称的に、ビークル投与動物(n=1)における遊離eTauレベルは、89.9%から130.2%の間で変化した。0.5mg/kg投与後の遊離CSF eTauの最大減少は、〜50%であって、一方、20mg/kg投与では>90%の減少を生じ、その中間用量では、この範囲の減少値を生じた。遊離eTauの減少は、長時間続き、2、5および20mg/kg用量群では、ベースラインに戻る傾向はあったが、投与後1512時間(57日目)でも減少が観察された。それぞれ0.5および2mg/kg用量の投与後、遊離CSF eTauは、8日目および57日目にベースラインレベルに戻り、一方、それぞれ5および20mg/kg用量の投与後、遊離CSF eTauは、57日目に〜50%および〜70%まで低減されたままであった。これらの結果は、CSF中のhu-IPN002の薬力学的活性を確証する。観察された遊離eTauの低減は、eTauへのhu-IPN002の結合、eTauの絶対的レベルの減少またはその両方の組み合わせを含む、複数の機序によって説明できた。
CSF中のAβレベルの分析
CSF中のAβレベルに対するhu-IPN002の効果を、インハウスアッセイおよび市販のキット(Millipore)を含む、2つの異なるサンドイッチELISA法を用いて測定した。図30A−30Bおよび以下の表7(インハウス アッセイ)ならびに図31A−31Bおよび以下の表8 (Millipore アッセイ)に示す通り、hu-IPN002は、いずれの用量でもCSF Aβレベルに影響を及ぼさなかった。これは、本明細書に記載の他の試験結果と一致しない。この不一致の原因は不明であるが、異なる投与レジメン (例えば、複数回投与プロトコルと単回投与プロトコル)によるものである可能性がある。
具体的には、図30A−30Bに示す通り、CSF Aβ42レベルは、varied from in theビークル投与動物でハウスアッセイを用いて、91.7%から117.5%(%ベースライン)まで変化した。図31A−31Bに示す通り、レベルは、Millipore アッセイを用いて、98.6%から120.9%(%ベースライン)まで変化した。両アッセイにおいて、hu-IPN002投与動物におけるCSF Aβ42レベルは、ビークル対照と同様であった。
実施例6:TauレベルおよびAβレベルに対するhu-IPN002の効果 (多数回静脈内投与試験)
複数用量の静脈内 (IV)ボーラス注入試験を、hu-IPN002の薬物動態および薬力学を評価するために行い、オスのカニクイザルに複数回静脈内投与後、4から6ヶ月に亘って試験した。用量は、試験1日目、29日目および57日目に投与した。用いた用量は以下の通りである。
1. 0mg/kg(ビークル)×3用量;
2. 20mg/kg×3用量;
3. 40mg/kg×3用量;および
4. 60mg/kg×1用量、その後、20mg/kg×2用量。
20mg/kg×3用量群は、最終用量の投与後、さらに56日間延長された。
hu-IPN002レベルは、ELISAを用いて血清およびCSFの両サンプルで測定した。血液を、全ての動物から、1日目の投与後、0 (投与前)、0.05、0.083、0.5、1、8、12、24、48、72、120、168、336、504、648時間、29日目の投与後、0 (投与前)、0.05、0.083、0.25、4、8、12、24、48、96、168、336、504、648時間、そして57日目の投与後、0 (投与前)、0.05、0.083、0.5、1、8、12、24、48、72、120、168、336、504、672、840、1008、1176、1344時間の時点で血清 hu-IPN002の分析のために採取した。さらなる血液サンプルを、血清 hu-IPN002の分析のために、20mg/kg×3用量群において、動物から、57日目の投与後、1512、1680、1848、2016、2184、2352、2520および2688時間にて採取した。
血清 hu-IPN002 濃度の分析
初回投与後、平均hu-IPN002 全身曝露(AUC[0-672h]) は、20から60mg/kgへおよそ用量比例的に増加した (表9;図32)。反復投与後、57日目(3回目の投与後)の平均hu-IPN002 全身曝露(AUC[0-672h]) もまた、20および40mg/kgを28日毎に投与して、用量比例的に増加した (表11;図34)。平均血清 T-HALF 値は、210から390時間の範囲であった。
反復投与後、20および40mg/kgを28日毎の投与で、57日目の3回目の投与後の平均hu-IPN002 全身暴露 (AUC[0-672h])は、初回投与後のものと同様 (0.8および0.9×)であって、29日目の2回目の投与後の暴露と同等であった(1.0および0.9×) (表10および11;図33および34)。暴露の蓄積または喪失は観察されなかった。定常状態は、初回投与後に達成された。
60mg/kgの負荷用量および28日毎の2回の20mg/kgの維持用量の投与後、グループ4における57日目の平均hu-IPN002全身暴露(AUC[0-672h])は、28日毎の20mg/kgの3回投与後のグループ2における暴露と同様であって(1.1×)、このことは、負荷用量が、57日目の血清 hu-IPN002 暴露に実質的な影響を与えなかったことを示す (表11および図34)。
CSF hu-IPN002 濃度の分析
CSFもまた、全ての動物から、投与前、1日目および29日目の投与後、8、48、168、336、504、648時間、ならびに57日目の投与後、8、48、168、336、504、672、840、1008、1176および1344時間の時点で、CSF hu-IPN002の分析のために採取した。さらなるCSF サンプルを、57日目の投与後、1512、1680、1848、2016、2184、2352、2520および2688時間の時点で、CSF hu-IPN002の分析のために、20mg/kg 3用量群の動物から採取した。
初回投与後、平均CSF hu-IPN002曝露(AUC[0-T]) は、20から60mg/kgへおよそ用量比例的に増加した (表12;図35)。反復投与後、57日目の平均CSF hu-IPN002曝露(AUC[0-672h]) もまた、20および40mg/kgを28日毎に投与して、用量比例的に増加し(表14;図37)、CSF AUC(0-672h) 値は、対応する血清 AUC(0-672h)値の0.0013から0.0014倍であった。
反復投与後、20および40mg/kgを28日毎の投与で、57日目の3回目の投与後の平均CSF hu-IPN002 暴露 (AUC[0-672h])は、初回投与後のものと同様 (1.2×)であって、29日目の2回目の投与後の暴露と同等であった(1.2×) (表13;図36)。暴露の蓄積または喪失は観察されなかった。定常状態は、初回投与後に達成された。
60mg/kgの負荷用量、その後の4週毎の2回の20mg/kgの用量の投与後、グループ4における57日目の平均CSF hu-IPN002暴露(AUC[0-672h])は、28日毎の20mg/kgを受容したグループ2における暴露と同様であって(1.2×)、このことは、負荷用量が、血清 hu-IPN002 暴露に実質的な影響を与えなかったことを示す (表14および図37)。明らかなCSF T-HALF値は、250から310時間の範囲であった。
hu-IPN002は、任意の対照CSF サンプルでは観察されなかった。
CSF中の遊離eTauレベルの分析
CSF中の遊離eTauレベルに対するhu-IPN002の効果を、市販のELISAを用いて測定した。全ての用量についての、CSF 遊離eTauレベル (ベースラインの百分率) 対 経時プロファイルを図38に示す。
初回投与後、CSF 遊離eTauレベルは、測定した最も早い時点で、8時間の時点で、3つの用量全てで、用量依存的に迅速に低減した。CSF 遊離eTauレベルは、40mg/kg用量で最大限に抑制されることが明らかであったが、全ての用量が、CSF 遊離eTauを≧75%まで減少させた。遊離eTauレベルは、試験112日目まで、または最後の投与後55日間、全ての用量群で、ベースラインに戻らなかった。
試験を、CSF遊離eTauレベルがベースラインに戻るかどうかを決定するために、20mg/kg用量について2ヶ月延長した。図39に示す通り、3用量の最後の投与後、試験162−169日または105−112日目までに、CSF 遊離 eTauは、ベースライン値付近まで戻る。3用量でのほとんどの時点でのeTauの減少は、ビークルとは顕著に異なっていた(データ示さず)。ある態様において、p値は、アッセイ値が検出下限以下であったため、計算できなかった。
まとめると、hu-IPN002は、この反復投与、多数回用量レベルの試験において、静脈内投与後のカニクイザルCSF中の遊離eTauの迅速かつ持続的な減少をもたらした。試験した全ての用量レベルにおいて、CSF遊離eTauは、3回目の投与後、試験期間(112日)または55日間、減少したままであった。40mg/kg用量レベルは、CSF 遊離eTauの最も持続的な減少を提供することが明らかであった。
CSF中のAβ42レベルの分析
全ての用量についての、CSF Aβ42レベル (ベースラインの百分率) 対 経時プロファイルを図40に示す。図40に示す通り、hu-IPN002は、この実験においてCSF Aβ42を低減する。全ての用量が、初回投与後21日でCSF Aβ42を低減させた。Aβ42の最大かつ最も持続的な(40−50日)減少は、3回目の投与後(57日目)に始まった。Aβ42の最大減少(ベースラインの25−50%)は、試験77日目または3回目の投与後20日に生じた。全ての用量レベルで、Aβ42値は、試験106日目または3回目の投与後49日でベースラインに戻った。hu-IPN002によって生じたCSF Aβ42 の減少には、わずかな用量依存性が認められた。
実施例6:ヒトにおける薬物動態および有効用量の予測
Estimation of 薬物動態
Ihu-IPN002のヒト薬物動態学パラメーターを、サルから単一種のアロメトリーに基づいて予測した。ヒトのクリアランスは0.06mL/時間/kgと予測された。ヒトの定常状態(Vss)での分布の予測量は、0.041L/kgである。
サルにおいて見られる血清濃度プロファイルの双指数関数的な性質を捕捉するために、、ヒト薬物動態学プロファイルを、CSS−平均滞留時間 (MRT)法を用いて予測した。予測されるヒトプロファイルの非コンパートメント分析は、それぞれ、0.04L/kgおよび535時間の、容積 (Vz)および半減期 (T-HALF)を生じた。推定される薬物動態学パラメーターを以下の表15に記載する。
モデルは、CSF中のTauの半減期について報告された文献値 (kdeg = 0.002 h-1と等しい11日) とは異なるkdeg (0.1 h-1) を予測した (Yamada K、et al., J. Exp. Med., 2014 Mar 10;211(3):387-93)。
ヒトにおける有効用量の予測
4週間のeTau濃度の75%の持続的低下は、ヒトにおいて有効である可能性が最も高い標的管理を提供するために選択された。
10mg/kg (700mg)の用量は、4週間に亘ってeTauの75%減少を達成するのに必要である。血清およびCSF中のhu-IPN002ならびにCSF中のeTauの予測される濃度−時間プロファイルもまたシミュレーションした(図41)。
定常状態のシミュレーションでは、4週毎に1回の10mg/kg用量投与は、24種間に亘り、遊離 eTau濃度の減少を維持すると予測された。10mg/kgの負荷用量の投与、その後の4週間毎の4mg/kgの維持用量の投与により、hu-IPN002の全体的な血清暴露は低減され、eTau減少の割合は、75%またはそれ以上に維持された(図42−43)。10g/kg Q4W(4週毎に1回投与)について予測される Cmaxss は、592ug/mlと計算され、一方、10mg/kg負荷用量の投与、その後の4mg/kg Q4Wの投与では、241ug/mlであることが見出された。2用量レジメンについて対応するAUCSSは、それぞれ204,977μg*h/mLおよび84,114μg*h/mLである。負荷用量および維持用量アプローチは、単一負荷用量の投与のすぐ近くで遊離 eTauレベルの実質的な低減を可能にし、より低い維持用量を用いてeTau レベルの減少を維持することが期待される。
本発明は、その特定の態様を引用して記載されているが、種々の変更が行われ得て、同等物は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく置き換えることができることが、当業者には理解されるべきである。さらに、多くの改良が、本発明の目的、精神および範囲に、特定の状況、材料、物質の組成、方法、一工程または複数工程を適合させて行うことができる。全てのそのような改良は、本明細書に添付した特許請求の範囲内であることが意図される。