JP6629107B2 - インジェクタ型昇圧装置及びランキンサイクルシステム - Google Patents
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Description
ボイラに供給される供給水は、ボイラで発生する蒸気の圧力に対抗して送り込まれるため、発生する蒸気圧より高い圧力で供給されることが要求される。そのため、給水ポンプの消費動力が大きいという問題がある。
また、特許文献1には、蒸気インジェクタに入力される流出水の圧力あるいは温度を調整する調整手段を設けることも記載されている(特許文献1の請求項8参照)。
そこで、特許文献1においては調整手段によって液体の過冷却度を増すようにしているものと考えられる。
蒸気を発生させる蒸気発生器と、該蒸気発生器で発生した蒸気によって駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンから吐出された蒸気を凝縮する凝縮器とを有し、
凝縮器で凝縮された液体を昇圧ポンプで昇圧した中間昇圧液と前記蒸気タービンから抽出した蒸気を前記インジェクタに供給して前記中間昇圧液をさらに昇圧して前記蒸気発生器に供給することを特徴とするものである。
本実施の形態に係るランキンサイクルシステム1は、図1に示すように、蒸気を発生させる蒸気発生器3と、蒸気発生器3で発生した蒸気によって駆動する蒸気タービン5と、蒸気タービン5から流出された蒸気を凝縮する凝縮器7と、蒸気タービン5から抽出した蒸気と凝縮器7で凝縮された液体を供給して凝縮器で凝縮された液体を昇圧して蒸気発生器3に供給するインジェクタ型昇圧装置20とを備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
蒸気発生器3は、蒸気タービン5の駆動源となる蒸気を発生させるものであり、一般的にはボイラである。
蒸気タービン5は、蒸気発生器3で発生させた蒸気を供給して回転駆動するものであり、発電機等(図示せず)が連結される。
なお、蒸気タービン5からはインジェクタ13に供給する蒸気を抽出できるようになっている。
凝縮器7は蒸気タービン5から流出した蒸気を、海水などの冷却媒体(図示せず)で冷却して凝縮するものであり、凝縮器7で凝縮された液体はほぼ飽和液状態にある。
昇圧ポンプ9は、凝縮器7で凝縮された液体(流出して昇圧ポンプに供給される液は以下、供給液という)を所定の中間圧力に昇圧するものである(中間圧力まで昇圧された液体は以下、中間昇圧液という)。昇圧ポンプ9の目的は、供給液の圧力を昇圧することで、インジェクタに供給される液体の過冷却度を増すことにあり、蒸気発生器3に供給される液体に要求される圧力(以下、蒸気発生器圧力という)よりも低くてよい。
凝縮器7からの供給液は、蒸気タービン5から抽出される蒸気よりは低温であるが、ほぼ飽和状態であり過冷却度がほとんどない。換言すると、加熱されたり減圧されたりするとすぐに沸騰する状態である。そのため、凝縮器7からの供給液で蒸気を冷却して凝縮させようとすると、逆に供給液が蒸気により加熱されて沸騰してしまい、蒸気を凝縮することができない。昇圧ポンプ9は、供給液を昇圧して過冷却度を増すことが目的である。
インジェクタ13は、昇圧ポンプ9から吐出された中間昇圧液と蒸気タービン5から抽出した蒸気を供給し、中間昇圧液をさらに昇圧して蒸気発生器3に供給するものである(インジェクタ13によりさらに昇圧された液は以下、昇圧液という)。
インジェクタ13の基本構成と作動原理を、図2に基づいて説明する。
なお、インジェクタ13に供給される液体の種類は特に問わないが、工業的に広く用いられている液種として、例えば水の他、フロン、ペンタンなどの炭化水素が挙げられる。
なお、上述したインジェクタは、蒸気供給部23が液体供給部21を覆うように設けられているが、これに限定されるものではなく、供給された液体と蒸気が互いに接触しながら同一方向に流出する構造となっていればよい。例えば、上述したものとは逆に、液体供給部21が筒状の蒸気供給部23を覆うように設けても良い。
第1検出手段15は、昇圧ポンプ9によって昇圧された中間昇圧液をインジェクタ13に供給する給液管34に設けられて中間昇圧液の流量、温度及び圧力をそれぞれ検出する第1流量検出器35、第1温度検出器37及び第1圧力検出器39によって構成されている。
第1検出手段15によって検出された各検出値は演算制御手段19に入力される。
なお、図1に示した例では、第1流量検出器35、第1温度検出器37及び第1圧力検出器39の全てを昇圧ポンプ9の下流側に配置した例を示したが、第1流量検出器35については昇圧ポンプ9の上流側であってもよい。
第2検出手段17は、蒸気タービン5から抽出された蒸気をインジェクタ13に供給する蒸気供給管47に設けられて蒸気の流量、温度及び圧力をそれぞれ検出する第2流量検出器41、第2温度検出器43及び第2圧力検出器45によって構成されている。
第2検出手段17によって検出された各検出値は演算制御手段19に入力される。
なお、図1に示した例では、第2流量検出器41、第2温度検出器43及び第2圧力検出器45の全てを流量調整弁11の下流側に配置した例を示したが、第2流量検出器41については流量調整弁11の上流側であってもよい。
第3検出手段18は、インジェクタ13における蒸気と液体との混合部における圧力を検出する圧力検出手段によって構成されている。第3検出手段18によって検出された検出値は演算制御手段19に入力される。
流量調整弁11は、蒸気供給管47に設けられてインジェクタ13に供給する蒸気の流量を調整する。流量調整弁11は演算制御手段19によって制御される。
演算制御手段19は、第1検出手段15、第2検出手段17及び第3検出手段18の検出値を入力し、下式で定義されるパラメータx、yを演算すると共に、演算結果に基づいて1.5≦y/x≦3となるように昇圧ポンプ9及び/又は前記流量調整弁11を制御する。
Ms(hs−h*)=x、Mw(h*−hw)=y ・・・(1)
但し、Ms:供給蒸気の流量
hs:供給蒸気の比エンタルピー
P*:蒸気と液体の混合部の圧力
h*:P*における液体の飽和液比エンタルピー
Mw:中間昇圧液の流量
hw:中間昇圧液の比エンタルピー
なお、1.5≦y/x≦3となるように入口条件を制御するのは発明者らが独自に実施したインジェクタ13作動実験の結果を根拠とするものであるが、この点については、後述の実施例で詳細に説明する。
蒸気タービン5で仕事をした蒸気は凝縮器7で凝縮され、昇圧ポンプ9に供給される。昇圧ポンプ9に供給された供給液は、蒸気発生器3に供給する液圧よりも低い中間圧力に昇圧されてインジェクタ13に供給される。凝縮器7からの供給液は、通常ほぼ飽和状態にあり、過冷却度がほとんど無い状態であるが、供給液を一旦昇圧ポンプ9で中間圧力まで昇圧することにより、過冷却度が大きい状態となる。
また、インジェクタ13には蒸気タービン5から抽出された蒸気が供給され、インジェクタに中間昇圧液と蒸気が供給されると、上述した原理により中間昇圧液が中間圧力から蒸気発生器圧力にまでさらに昇圧されて蒸気発生器3に供給される。
制御の具体例を示すと、例えば、y/x<1.5の場合には、y/x≧1.5となるようにyを大きくするか、xを小さくするように制御する。逆に、y/x>3の場合には、y/x≦3となるようにyを小さくするか、xを大きくするように制御する。
また、昇圧ポンプ9及び/又は流量調整弁11を演算制御手段19で制御するようにしているので、インジェクタ13を常に適正に作動させることができ、ランキンサイクルシステム1を安定的に稼働することができる。
また、インジェクタ13からの吐出圧力が蒸気発生器圧力に満たない場合は、インジェクタ13と蒸気発生器3の間に昇圧ポンプをさらに配設してもよい。
さらに、蒸気発生器3に供給する液温の調整が必要な場合は、インジェクタ13と蒸気発生器3の間に熱交換器を配設してもよい。
そこで、発明者らはその制御のため、形状の異なる複数のインジェクタ13(13L、13M、13S)を作製し、実験により供給する液体および供給する蒸気の作動条件を探ったので、この点を以下説明する。実験では供給する液体として水を、供給する蒸気として水蒸気を用いた。なお、実施例を説明する図3〜図5において実施の形態を説明した図1、図2と同一又は対応する部分には同一の符号を付してある。
なお、配管の各部には流量計(「F」と表記)、圧力計(「P」と表記)、温度計(「T」と表記)、減圧弁(「R」と表記)を設けている。また、インジェクタ13の出口側には排出タンク59を設け、この排出タンク59にはボイラ53からインジェクタ13に供給する水蒸気の一部や、ドレイン49からドレイン管31を通じて排出される排水を供給できるようになっている。なお、ドレイン管31には逆止弁33を設置し、外気の混入を防止している。
図5の横軸xは水蒸気が水に与えるエネルギーと考えられる凝縮潜熱[kJ/s]、縦軸yは水が蒸発しない範囲で受け取ることが可能なエネルギーと考えられる供給水サブクール熱[kJ/s]である。
また、y:供給水サブクール熱[kJ/s]は、供給水の流量をMw[kg/s]、インジェクタ13の混合部25の圧力P*における水の飽和液比エンタルピーをh*[kJ/kg]、供給水の比エンタルピーをhw[kJ/kg]としたときに、y=Mw(h*−hw)として定義される。なお、実用的には、供給水の温度をTw[℃]、インジェクタ13の混合部25の圧力P*における水の飽和温度をT*[℃]、定圧比熱をCp[kJ/kg/℃]とすると、(h*−hw)=Cp(T*−Tw)としてよい。
また、水蒸気の凝縮潜熱が小さく水のサブクール熱が大きい条件においても不作動となる範囲が現れた。この条件は、入口水蒸気流量が小さく、入口水流量が大きいことに対応するが、ある流量の水噴流を駆動するための水蒸気のエネルギーが不足し、作動することが出来なかったものと考えられる。
y=x(y/x=1)となる条件を、図5中に直線で示す。中型インジェクタ13Mおよび小型インジェクタ13Sにおいては、y/x=1の結果を下回る条件において、各インジェクタ13(13M、13S)は作動できないことが分かる。これは、水が水蒸気を凝縮するための十分なサブクール熱を持っておらず、混合部25で飽和温度に達してしまい、水蒸気を凝縮しきれなくなってしまったことを裏付ける結果である。
その結果、y/x<1及び4<y/xの範囲では、インジェクタ13は作動せず、1≦y/x≦4の範囲では、インジェクタ13が作動する場合と不作動の場合が混在していることが分かった。従って、インジェクタを作動させるためには少なくとも1≦y/x≦4を満たすように制御する必要があると言える。この境界を示す直線y/x=1及びy/x=4を図6に表示している。
また、全てのインジェクタ13(13L、13M、13S)が常に作動可能な範囲として、1.5≦y/x≦3であることが分かった。この境界を示す直線y/x=1.5及びy/x=3を図6に表示している。
3 蒸気発生器
5 蒸気タービン
7 凝縮器
9 昇圧ポンプ
11 流量調整弁
13 インジェクタ
13L 大型インジェクタ(実施例)
13M 中型インジェクタ(実施例)
13S 小型インジェクタ(実施例)
15 第1検出手段
17 第2検出手段
18 第3検出手段
19 演算制御手段
20 インジェクタ型昇圧装置
21 液体供給部
23 蒸気供給部
25 混合部
27 スロート部
29 ディフューザ部
31 ドレイン管
33 逆止弁
34 給液管
35 第1流量検出器
37 第1温度検出器
39 第1圧力検出器
41 第2流量検出器
43 第2温度検出器
45 第2圧力検出器
47 蒸気供給管
49 ドレイン
51 背圧弁
53 ボイラ
55 タンク
57 ポンプ
59 排出タンク
Claims (3)
- 蒸気と液体を供給して前記液体の圧力を昇圧するインジェクタと、前記液体の圧力を前記インジェクタに供給する液体の圧力に昇圧する昇圧ポンプと、前記インジェクタに供給する蒸気の流量を調整する流量調整弁と、前記インジェクタに供給する液体の流量、温度及び圧力を検出する第1検出手段と、前記インジェクタに供給する蒸気の流量、温度及び圧力を検出する第2検出手段と、前記インジェクタにおける蒸気と液体との混合部における圧力を検出する第3検出手段と、前記第1検出手段、第2検出手段及び第3検出手段の検出値を入力して前記インジェクタに供給される液体及び蒸気の入口条件を演算して該演算結果に基づいて前記昇圧ポンプ及び/又は前記流量調整弁を制御する演算制御手段とを有することを特徴とするインジェクタ型昇圧装置。
- 前記インジェクタに供給する蒸気の流量をMs、前記インジェクタに供給する蒸気の比エンタルピーをhs、蒸気と液体の混合部の圧力をP*、P*における前記液体の飽和液比エンタルピーをh*、前記インジェクタに供給する液体の流量をMw、前記インジェクタに供給する液体の比エンタルピーをhwとし、Ms(hs−h*)=xで定義されるパラメータをx、Mw(h*−hw)=yで定義されるパラメータをyとしたときに、前記演算制御手段は、前記入口条件として前記x及びyの値を演算し、1.5≦y/x≦3となるように、前記昇圧ポンプ及び/又は前記流量調整弁を制御することを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ型昇圧装置。
- 請求項1又は2に記載のインジェクタ型昇圧装置を備えたランキンサイクルシステムであって、
蒸気を発生させる蒸気発生器と、該蒸気発生器で発生した蒸気によって駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンから吐出された蒸気を凝縮する凝縮器とを有し、
凝縮器で凝縮された液体を昇圧ポンプで昇圧した中間昇圧液と前記蒸気タービンから抽出した蒸気を前記インジェクタに供給して前記中間昇圧液をさらに昇圧して前記蒸気発生器に供給することを特徴とするランキンサイクルシステム。
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