JP6629107B2 - インジェクタ型昇圧装置及びランキンサイクルシステム - Google Patents

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Description

本発明はインジェクタ型昇圧装置、及び該インジェクタ型昇圧装置を適用したランキンサイクルシステムに関する。
ランキンサイクルシステムを利用した発電プラントにおいて、復水器で凝縮した水は給水ポンプによって昇圧されてボイラ等の蒸気発生器に供給される。
ボイラに供給される供給水は、ボイラで発生する蒸気の圧力に対抗して送り込まれるため、発生する蒸気圧より高い圧力で供給されることが要求される。そのため、給水ポンプの消費動力が大きいという問題がある。
この給水ポンプの消費動力を低減できるものとして、例えば特許文献1には発電プラントの給水加熱システムにおいて復水器から流出する流出水をインジェクタで昇圧して蒸気発生器に供給する技術が開示されている。
また、特許文献1には、蒸気インジェクタに入力される流出水の圧力あるいは温度を調整する調整手段を設けることも記載されている(特許文献1の請求項8参照)。
特開平11−101403号公報
インジェクタが昇温・昇圧装置として機能するためには、インジェクタに供給される液体は十分な過冷却度を有している必要がある。一方、復水器からの流出水はほぼ飽和状態で過冷却度がほとんどない状態である。
そこで、特許文献1においては調整手段によって液体の過冷却度を増すようにしているものと考えられる。
しかしながら、インジェクタが実際に作動するための駆動用蒸気と該駆動用蒸気を凝縮する水の条件については何らの開示もされておらず、またこれらインジェクタに入力される蒸気や水を制御することについても開示がないため、発電プラントを安定的に運転することができないと考えられる。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、インジェクタを安定的に作動させて昇圧を確実にできるインジェクタ型昇圧装置及び該インジェクタ型昇圧装置を適用したランキンサイクルシステムを提供することを目的としている。
(1)本発明に係るインジェクタ型昇圧装置は、蒸気と液体を供給して前記液体の圧力を昇圧するインジェクタと、前記液体の圧力を前記インジェクタに供給する液体の圧力に昇圧する昇圧ポンプと、前記インジェクタに供給する蒸気の流量を調整する流量調整弁と、前記インジェクタに供給する液体の流量、温度及び圧力を検出する第1検出手段と、前記インジェクタに供給する蒸気の流量、温度及び圧力を検出する第2検出手段と、前記インジェクタにおける蒸気と液体との混合部における圧力を検出する第3検出手段と、前記第1検出手段、第2検出手段及び第3検出手段の検出値を入力して前記インジェクタに供給される液体及び蒸気の入口条件を演算して該演算結果に基づいて前記昇圧ポンプ及び/又は前記流量調整弁を制御する演算制御手段とを有することを特徴とするものである。
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記インジェクタに供給する蒸気の流量をMs、前記インジェクタに供給する蒸気の比エンタルピーをhs、蒸気と液体の混合部の圧力をP*、P*における前記液体の飽和液比エンタルピーをh*、前記インジェクタに供給する液体の流量をMw、前記インジェクタに供給する液体の比エンタルピーをhwとし、Ms(hs−h*)=xで定義されるパラメータをx、Mw(h*−hw)=yで定義されるパラメータをyとしたときに、前記演算制御手段は、前記入口条件として前記x及びyの値を演算し、1.5≦y/x≦3となるように、前記昇圧ポンプ及び/又は前記流量調整弁を制御することを特徴とするものである。
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のインジェクタ型昇圧装置を備えたランキンサイクルシステムであって、
蒸気を発生させる蒸気発生器と、該蒸気発生器で発生した蒸気によって駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンから吐出された蒸気を凝縮する凝縮器とを有し、
凝縮器で凝縮された液体を昇圧ポンプで昇圧した中間昇圧液と前記蒸気タービンから抽出した蒸気を前記インジェクタに供給して前記中間昇圧液をさらに昇圧して前記蒸気発生器に供給することを特徴とするものである。
本発明に係るインジェクタ型昇圧装置においては、蒸気と液体を供給して前記液体の圧力を昇圧するインジェクタと、前記液体の圧力を前記インジェクタに供給する液体の圧力に昇圧する昇圧ポンプと、前記インジェクタに供給する蒸気の流量を調整する流量調整弁と、前記インジェクタに供給する液体の流量、温度及び圧力を検出する第1検出手段と、前記インジェクタに供給する蒸気の流量、温度及び圧力を検出する第2検出手段と、前記インジェクタにおける蒸気と液体との混合部における圧力を検出する第3検出手段と、前記第1検出手段、第2検出手段及び第3検出手段の検出値を入力して前記インジェクタに供給される液体及び蒸気の入口条件を演算して該演算結果に基づいて前記昇圧ポンプ及び/又は前記流量調整弁を制御する演算制御手段とを有することにより、インジェクタが常に適正に作動する条件に制御でき、これによってインジェクタを常に適正に作動させて液体の昇圧をすることができる。
本発明の一実施の形態におけるランキンサイクルシステムの説明図である。 本発明の一実施の形態に用いるインジェクタの構造及び作動原理の説明図である。 実施例の実験で用いたインジェクタの説明図である。 実施例の実験で用いた実験装置の全体構成を説明する説明図である。 実施例の実験結果を示すグラフである。 図5に示した3つのグラフを一つにまとめたグラフである。
本発明のインジェクタ型昇圧装置をランキンサイクルシステムに適用したものを例示して以下説明する。
本実施の形態に係るランキンサイクルシステム1は、図1に示すように、蒸気を発生させる蒸気発生器3と、蒸気発生器3で発生した蒸気によって駆動する蒸気タービン5と、蒸気タービン5から流出された蒸気を凝縮する凝縮器7と、蒸気タービン5から抽出した蒸気と凝縮器7で凝縮された液体を供給して凝縮器で凝縮された液体を昇圧して蒸気発生器3に供給するインジェクタ型昇圧装置20とを備えている。
インジェクタ型昇圧装置20は、凝縮器7で凝縮された液体を所定の圧力に昇圧する昇圧ポンプ9と、蒸気タービン5から抽出した蒸気の流量を調整する流量調整弁11と、昇圧ポンプ9から所定の圧力に昇圧した液体の供給を受けると共に流量調整弁11で流量調整された蒸気の供給を受けるインジェクタ13と、インジェクタ13に供給する液体の流量、温度及び圧力を検出する第1検出手段15と、インジェクタ13に供給する蒸気の流量、温度及び圧力を検出する第2検出手段17と、インジェクタ13における蒸気と液体との混合部における圧力を検出する第3検出手段18と、第1検出手段15、第2検出手段17及び第3検出手段18の検出値を入力してインジェクタ13に供給される液体及び蒸気の入口条件を演算して該演算結果に基づいて昇圧ポンプ9及び/又は流量調整弁11を制御する演算制御手段19とを有している。
以下、各構成を詳細に説明する。
<蒸気発生器>
蒸気発生器3は、蒸気タービン5の駆動源となる蒸気を発生させるものであり、一般的にはボイラである。
<蒸気タービン>
蒸気タービン5は、蒸気発生器3で発生させた蒸気を供給して回転駆動するものであり、発電機等(図示せず)が連結される。
なお、蒸気タービン5からはインジェクタ13に供給する蒸気を抽出できるようになっている。
<凝縮器>
凝縮器7は蒸気タービン5から流出した蒸気を、海水などの冷却媒体(図示せず)で冷却して凝縮するものであり、凝縮器7で凝縮された液体はほぼ飽和液状態にある。
<昇圧ポンプ>
昇圧ポンプ9は、凝縮器7で凝縮された液体(流出して昇圧ポンプに供給される液は以下、供給液という)を所定の中間圧力に昇圧するものである(中間圧力まで昇圧された液体は以下、中間昇圧液という)。昇圧ポンプ9の目的は、供給液の圧力を昇圧することで、インジェクタに供給される液体の過冷却度を増すことにあり、蒸気発生器3に供給される液体に要求される圧力(以下、蒸気発生器圧力という)よりも低くてよい。
凝縮器7からの供給液は、蒸気タービン5から抽出される蒸気よりは低温であるが、ほぼ飽和状態であり過冷却度がほとんどない。換言すると、加熱されたり減圧されたりするとすぐに沸騰する状態である。そのため、凝縮器7からの供給液で蒸気を冷却して凝縮させようとすると、逆に供給液が蒸気により加熱されて沸騰してしまい、蒸気を凝縮することができない。昇圧ポンプ9は、供給液を昇圧して過冷却度を増すことが目的である。
<インジェクタ>
インジェクタ13は、昇圧ポンプ9から吐出された中間昇圧液と蒸気タービン5から抽出した蒸気を供給し、中間昇圧液をさらに昇圧して蒸気発生器3に供給するものである(インジェクタ13によりさらに昇圧された液は以下、昇圧液という)。
インジェクタ13の基本構成と作動原理を、図2に基づいて説明する。
インジェクタ13は、液体が供給される筒状の液体供給部21と、液体供給部21を覆うように設けられ、蒸気が供給される蒸気供給部23と、液体と蒸気が混合される混合部25と、混合部25の下流側で縮径されたスロート部27と、スロート部27の下流側で拡径されたディフューザ部29とを備えている。
なお、インジェクタ13に供給される液体の種類は特に問わないが、工業的に広く用いられている液種として、例えば水の他、フロン、ペンタンなどの炭化水素が挙げられる。
上記のように構成されたインジェクタ13において、液体供給部21に液体を、蒸気供給部23に蒸気を供給すると、混合部25において蒸気と液体が接触して蒸気が凝縮する。蒸気の凝縮によってインジェクタ13の内部(混合部25)の圧力が低下することにより、液体と蒸気を吸引する作用が発生する。
蒸気が吸引される際に高速流となり、この運動エネルギーが中間昇圧液に凝縮する際に中間昇圧液に受け渡され、中間昇圧液を加速する。この液体がスロート部27を通過後に拡径されたディフューザ部29において流速が低下し、これによって圧力回復されて、中間昇圧液はさらに昇圧されて蒸気発生器圧力で吐出されることになる。
なお、上述したインジェクタは、蒸気供給部23が液体供給部21を覆うように設けられているが、これに限定されるものではなく、供給された液体と蒸気が互いに接触しながら同一方向に流出する構造となっていればよい。例えば、上述したものとは逆に、液体供給部21が筒状の蒸気供給部23を覆うように設けても良い。
上記のようなインジェクタ13を作動させるには、中間昇圧液で供給蒸気を凝縮させることが前提となるため、中間昇圧液と供給蒸気の入口条件が重要となる。この点、本実施の形態の演算制御手段19がこの入口条件を適正値にするように昇圧ポンプ9及び/又は流量調整弁11を制御する。
<第1検出手段>
第1検出手段15は、昇圧ポンプ9によって昇圧された中間昇圧液をインジェクタ13に供給する給液管34に設けられて中間昇圧液の流量、温度及び圧力をそれぞれ検出する第1流量検出器35、第1温度検出器37及び第1圧力検出器39によって構成されている。
第1検出手段15によって検出された各検出値は演算制御手段19に入力される。
なお、図1に示した例では、第1流量検出器35、第1温度検出器37及び第1圧力検出器39の全てを昇圧ポンプ9の下流側に配置した例を示したが、第1流量検出器35については昇圧ポンプ9の上流側であってもよい。
<第2検出手段>
第2検出手段17は、蒸気タービン5から抽出された蒸気をインジェクタ13に供給する蒸気供給管47に設けられて蒸気の流量、温度及び圧力をそれぞれ検出する第2流量検出器41、第2温度検出器43及び第2圧力検出器45によって構成されている。
第2検出手段17によって検出された各検出値は演算制御手段19に入力される。
なお、図1に示した例では、第2流量検出器41、第2温度検出器43及び第2圧力検出器45の全てを流量調整弁11の下流側に配置した例を示したが、第2流量検出器41については流量調整弁11の上流側であってもよい。
<第3検出手段>
第3検出手段18は、インジェクタ13における蒸気と液体との混合部における圧力を検出する圧力検出手段によって構成されている。第3検出手段18によって検出された検出値は演算制御手段19に入力される。
<流量調整弁>
流量調整弁11は、蒸気供給管47に設けられてインジェクタ13に供給する蒸気の流量を調整する。流量調整弁11は演算制御手段19によって制御される。
<演算制御手段>
演算制御手段19は、第1検出手段15、第2検出手段17及び第3検出手段18の検出値を入力し、下式で定義されるパラメータx、yを演算すると共に、演算結果に基づいて1.5≦y/x≦3となるように昇圧ポンプ9及び/又は前記流量調整弁11を制御する。
Ms(hs−h*)=x、Mw(h*−hw)=y ・・・(1)
但し、Ms:供給蒸気の流量
hs:供給蒸気の比エンタルピー
P*:蒸気と液体の混合部の圧力
h*:P*における液体の飽和液比エンタルピー
Mw:中間昇圧液の流量
hw:中間昇圧液の比エンタルピー
供給蒸気の比エンタルピーhsは、第2検出手段17の第2温度検出器43の検出温度及び第2圧力検出器45の検出圧力に基づいて、演算制御手段19に記憶されている関係式から算出する。また、中間昇圧液の比エンタルピーhwは、第1検出手段15の第1温度検出器37の検出温度及び第1圧力検出器39の検出圧力に基づいて、演算制御手段19に記憶されている関係式から算出する。混合部における液体の飽和液比エンタルピーh*は、P*を検出する第3検出手段18の検出圧力に基づいて、演算制御手段19に記憶されている関係式から算出する。
パラメータx、yを1.5≦y/x≦3となるように昇圧ポンプ9及び/又は流量調整弁11を制御して中間昇圧液の流量及び/又は供給蒸気の供給量を調整することで、インジェクタ13を常に作動可能にすることができ、ランキンサイクルシステム1を常時安定して稼働させることができる。
なお、1.5≦y/x≦3となるように入口条件を制御するのは発明者らが独自に実施したインジェクタ13作動実験の結果を根拠とするものであるが、この点については、後述の実施例で詳細に説明する。
上記のように構成されたランキンサイクルシステム1においては、蒸気発生器3で発生させた蒸気が蒸気タービン5に供給され、蒸気タービン5が稼働することで、図示しない発電機が駆動される。
蒸気タービン5で仕事をした蒸気は凝縮器7で凝縮され、昇圧ポンプ9に供給される。昇圧ポンプ9に供給された供給液は、蒸気発生器3に供給する液圧よりも低い中間圧力に昇圧されてインジェクタ13に供給される。凝縮器7からの供給液は、通常ほぼ飽和状態にあり、過冷却度がほとんど無い状態であるが、供給液を一旦昇圧ポンプ9で中間圧力まで昇圧することにより、過冷却度が大きい状態となる。
また、インジェクタ13には蒸気タービン5から抽出された蒸気が供給され、インジェクタに中間昇圧液と蒸気が供給されると、上述した原理により中間昇圧液が中間圧力から蒸気発生器圧力にまでさらに昇圧されて蒸気発生器3に供給される。
昇圧ポンプ9から中間圧力に昇圧された中間昇圧液をインジェクタ13に供給しているとき、供給する中間昇圧液の流量、温度及び圧力が第1検出手段15によって検出されて演算制御手段19に入力される。また、第2検出手段17ではインジェクタ13に供給される蒸気の流量、温度及び圧力が検出されて演算制御手段19に入力される。
演算制御手段19では、第1検出手段15、第2検出手段17及び第3検出手段18から入力された検出値に基づいて入口条件となる上述したパラメータx、yを演算し、演算結果に基づいて1.5≦y/x≦3となるように昇圧ポンプ9及び/又は流量調整弁11を制御する。
制御の具体例を示すと、例えば、y/x<1.5の場合には、y/x≧1.5となるようにyを大きくするか、xを小さくするように制御する。逆に、y/x>3の場合には、y/x≦3となるようにyを小さくするか、xを大きくするように制御する。
ここで、x=Ms(hs−h*)、y=Mw(h*−hw)であるが、供給蒸気の比エンタルピーhsや中間昇圧液の比エンタルピーhwは短時間で制御することが困難なパラメータであり、また、P*における液体の飽和液比エンタルピーh*も独立した制御が出来ないため、実用上は、供給蒸気の流量Msと中間昇圧液の流量Mwを制御することになる。供給蒸気の流量Msは流量調整弁11、中間昇圧液の流量Mwは昇圧ポンプ9でそれぞれ制御する。さらに、ランキンサイクルにおいては、中間昇圧液の流量Mwは他の条件に基づき決まってしまっている場合が多いので、実運用上、供給蒸気の流量Msを制御することになる。
上記のように、演算制御手段19によって昇圧ポンプ9及び/又は流量調整弁11が制御されることで、インジェクタ13が常に作動可能な状態となる。
本実施の形態のランキンサイクルシステム1においては、凝縮器圧力から蒸気発生器圧力まで昇圧幅の一部をインジェクタ13で分担することになるため、昇圧ポンプ9で昇圧幅全てを昇圧する場合に比べて、昇圧ポンプ9の動力が削減できる。
また、昇圧ポンプ9及び/又は流量調整弁11を演算制御手段19で制御するようにしているので、インジェクタ13を常に適正に作動させることができ、ランキンサイクルシステム1を安定的に稼働することができる。
なお、他の流体機器同様、一般的に、インジェクタ単機において運転可能な中間昇圧液の流量Mwの範囲(ターンダウン比)にも制約がある。中間昇圧液の流量Mwの大幅な変動に対応する必要がある場合には、インジェクタを複数台並列に設置しておいて台数制御するか、インジェクタと並列に別途並列昇圧ポンプを設置しておき、この並列昇圧ポンプへの流量比率を制御するなどして対応することになる。
また、インジェクタ13からの吐出圧力が蒸気発生器圧力に満たない場合は、インジェクタ13と蒸気発生器3の間に昇圧ポンプをさらに配設してもよい。
さらに、蒸気発生器3に供給する液温の調整が必要な場合は、インジェクタ13と蒸気発生器3の間に熱交換器を配設してもよい。
上記の実施の形態においてはインジェクタ型昇圧装置をランキンサイクルシステムに適用した例を示したが、本発明のインジェクタ昇圧装置の適用例はこれに限定されるものではなく、蒸気と液体を供給して該液体の圧力を昇圧するような場合には広く適用できる。
インジェクタ13を安定的に作動させるためには供給する液体および供給する蒸気の入口条件(圧力、温度、流量)の制御機構が必要である。
そこで、発明者らはその制御のため、形状の異なる複数のインジェクタ13(13L、13M、13S)を作製し、実験により供給する液体および供給する蒸気の作動条件を探ったので、この点を以下説明する。実験では供給する液体として水を、供給する蒸気として水蒸気を用いた。なお、実施例を説明する図3〜図5において実施の形態を説明した図1、図2と同一又は対応する部分には同一の符号を付してある。
実験に用いたインジェクタ13を図3に示す。実験に用いたインジェクタ13は、スケール効果を調べるためにスロート部27の径の異なる大型インジェクタ13L(図3(a))、中型インジェクタ13M(図3(b))、小型インジェクタ13S(図3(c))の3種類をそれぞれ製作した。
大型インジェクタ13L、中型インジェクタ13M、小型インジェクタ13Sにおけるスロート部27の内径は、それぞれ、8.0mm、6.5mm、4.0mmである。小型インジェクタ13Sと大型インジェクタ13Lの混合部25の長さは、中型インジェクタ13Mの混合ノズル部寸法に対して相似形となるように決定した。また混合部25下流部にはドレイン49を設けた。各インジェクタ(13L、13M、13S)の出口部には背圧弁51を設け、背圧弁51の開度によって出口部分にかかる負荷(背圧)の調整を可能にした。
図4に、実験装置全体ループ図を示す。実験装置は大きく分けて、水蒸気を供給するボイラ53、水を供給するタンク55とポンプ57、そしてインジェクタ13の3つで構成される。
なお、配管の各部には流量計(「F」と表記)、圧力計(「P」と表記)、温度計(「T」と表記)、減圧弁(「R」と表記)を設けている。また、インジェクタ13の出口側には排出タンク59を設け、この排出タンク59にはボイラ53からインジェクタ13に供給する水蒸気の一部や、ドレイン49からドレイン管31を通じて排出される排水を供給できるようになっている。なお、ドレイン管31には逆止弁33を設置し、外気の混入を防止している。
実験は、まずタンク55に貯められた水を、ポンプ57を用いてインジェクタ13に供給する。このときインジェクタ13内は水で満たされ、ドレイン49からの排水が生じる。続いて、ボイラ53から水蒸気をインジェクタ13に供給する。インジェクタ13が起動に成功すると、インジェクタ13の内部に水噴流が形成され、ドレイン49からの排水は停止する。排水の停止は混合部25で生じた凝縮によって内部が負圧になり、逆止弁33が閉止したためであると考えられ、これにより供給された水を全量吐出することが可能となる。また、その負圧によりインジェクタ13内に水を引き込む作用が促進され、作動に成功すると作動前と比べ供給される水の流量は増加する。
この作動に至った状態から、背圧弁51の開度を徐々に減少させた場合、ある開度まで閉じるとドレイン49からの排水が再開してインジェクタ13が不作動状態となり、また、この不作動状態から背圧弁開度を開いていくと、再び作動状態に復帰することを確認した。混合ノズル内の噴流挙動を観察すると、水噴流が形成されていない時にはドレイン49からの排水があり、水噴流が形成されている時にはドレイン49からの排水が停止することから、水噴流形成時においては混合ノズル内部が負圧になっており、インジェクタ13が作動状態に至っているものと考えられる。そこで、本実験では、ドレイン49からの排水が停止することで供給される水を全量吐出できている状態を作動状態と定義することとした。また、インジェクタ13には出口部分にかかる負荷(背圧)に対して、作動を維持できる限界が存在するものと考えられる。
図5に、3つのインジェクタ13(13L、13M、13S)を用いて各入口条件に対して各インジェクタ13(13L、13M、13S)が作動に至るか至らないかを実験的に判定した結果を示す。実験は入口水蒸気流量と入口水流量を変更して行った。
図5の横軸xは水蒸気が水に与えるエネルギーと考えられる凝縮潜熱[kJ/s]、縦軸yは水が蒸発しない範囲で受け取ることが可能なエネルギーと考えられる供給水サブクール熱[kJ/s]である。
ここで、x:凝縮潜熱[kJ/s]は、供給水蒸気の流量をMs[kg/s]、供給水蒸気の比エンタルピーをhs[kJ/kg]、インジェクタ13の混合部25の圧力P*における水の飽和液比エンタルピーをh*[kJ/kg]としたときにx=Ms(hs−h*)として定義される。なお、実用的には、(hs−h*)は供給水蒸気の潜熱と同等としてよい。
また、y:供給水サブクール熱[kJ/s]は、供給水の流量をMw[kg/s]、インジェクタ13の混合部25の圧力P*における水の飽和液比エンタルピーをh*[kJ/kg]、供給水の比エンタルピーをhw[kJ/kg]としたときに、y=Mw(h*−hw)として定義される。なお、実用的には、供給水の温度をTw[℃]、インジェクタ13の混合部25の圧力P*における水の飽和温度をT*[℃]、定圧比熱をCp[kJ/kg/℃]とすると、(h*−hw)=Cp(T*−Tw)としてよい。
図5において、図5(a)が大型インジェクタ13L、図5(b)が中型インジェクタ13M、図5(c)が小型インジェクタ13Sの実験結果を示しており、各図において作動に至った条件を●、作動に至らなかった条件を×で示した。
水蒸気の凝縮潜熱が大きく水のサブクール熱が小さい条件において不作動となる範囲が現れた。これは、供給水流に、水蒸気を凝縮させるのに十分なサブクール熱がなかったためであると考えられる。
また、水蒸気の凝縮潜熱が小さく水のサブクール熱が大きい条件においても不作動となる範囲が現れた。この条件は、入口水蒸気流量が小さく、入口水流量が大きいことに対応するが、ある流量の水噴流を駆動するための水蒸気のエネルギーが不足し、作動することが出来なかったものと考えられる。
いま、水蒸気の凝縮潜熱:xと、水のサブクール熱:yがバランスしているとすると、y=xが成り立つ。
y=x(y/x=1)となる条件を、図5中に直線で示す。中型インジェクタ13Mおよび小型インジェクタ13Sにおいては、y/x=1の結果を下回る条件において、各インジェクタ13(13M、13S)は作動できないことが分かる。これは、水が水蒸気を凝縮するための十分なサブクール熱を持っておらず、混合部25で飽和温度に達してしまい、水蒸気を凝縮しきれなくなってしまったことを裏付ける結果である。
図6は、図5(a)〜(c)の3つの図を一つにまとめたものであり、発明者は、図6を用いて大型、中型及び小型の全てのインジェクタ13(13L、13M、13S)において作動可能な入口条件を検討した。
その結果、y/x<1及び4<y/xの範囲では、インジェクタ13は作動せず、1≦y/x≦4の範囲では、インジェクタ13が作動する場合と不作動の場合が混在していることが分かった。従って、インジェクタを作動させるためには少なくとも1≦y/x≦4を満たすように制御する必要があると言える。この境界を示す直線y/x=1及びy/x=4を図6に表示している。
また、全てのインジェクタ13(13L、13M、13S)が常に作動可能な範囲として、1.5≦y/x≦3であることが分かった。この境界を示す直線y/x=1.5及びy/x=3を図6に表示している。
以上から、インジェクタ13の入口条件として、インジェクタを作動させるためには少なくとも1≦y/x≦4を満たすように制御する必要があり、さらに、1.5≦y/x≦3を満たすように制御することで、インジェクタ13の大きさによらず、確実に作動可能であることが分かる。本発明は、この実験結果に基づくものである。
1 ランキンサイクルシステム
3 蒸気発生器
5 蒸気タービン
7 凝縮器
9 昇圧ポンプ
11 流量調整弁
13 インジェクタ
13L 大型インジェクタ(実施例)
13M 中型インジェクタ(実施例)
13S 小型インジェクタ(実施例)
15 第1検出手段
17 第2検出手段
18 第3検出手段
19 演算制御手段
20 インジェクタ型昇圧装置
21 液体供給部
23 蒸気供給部
25 混合部
27 スロート部
29 ディフューザ部
31 ドレイン管
33 逆止弁
34 給液管
35 第1流量検出器
37 第1温度検出器
39 第1圧力検出器
41 第2流量検出器
43 第2温度検出器
45 第2圧力検出器
47 蒸気供給管
49 ドレイン
51 背圧弁
53 ボイラ
55 タンク
57 ポンプ
59 排出タンク

Claims (3)

  1. 蒸気と液体を供給して前記液体の圧力を昇圧するインジェクタと、前記液体の圧力を前記インジェクタに供給する液体の圧力に昇圧する昇圧ポンプと、前記インジェクタに供給する蒸気の流量を調整する流量調整弁と、前記インジェクタに供給する液体の流量、温度及び圧力を検出する第1検出手段と、前記インジェクタに供給する蒸気の流量、温度及び圧力を検出する第2検出手段と、前記インジェクタにおける蒸気と液体との混合部における圧力を検出する第3検出手段と、前記第1検出手段、第2検出手段及び第3検出手段の検出値を入力して前記インジェクタに供給される液体及び蒸気の入口条件を演算して該演算結果に基づいて前記昇圧ポンプ及び/又は前記流量調整弁を制御する演算制御手段とを有することを特徴とするインジェクタ型昇圧装置。
  2. 前記インジェクタに供給する蒸気の流量をMs、前記インジェクタに供給する蒸気の比エンタルピーをhs、蒸気と液体の混合部の圧力をP*、P*における前記液体の飽和液比エンタルピーをh*、前記インジェクタに供給する液体の流量をMw、前記インジェクタに供給する液体の比エンタルピーをhwとし、Ms(hs−h*)=xで定義されるパラメータをx、Mw(h*−hw)=yで定義されるパラメータをyとしたときに、前記演算制御手段は、前記入口条件として前記x及びyの値を演算し、1.5≦y/x≦3となるように、前記昇圧ポンプ及び/又は前記流量調整弁を制御することを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ型昇圧装置。
  3. 請求項1又は2に記載のインジェクタ型昇圧装置を備えたランキンサイクルシステムであって、
    蒸気を発生させる蒸気発生器と、該蒸気発生器で発生した蒸気によって駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンから吐出された蒸気を凝縮する凝縮器とを有し、
    凝縮器で凝縮された液体を昇圧ポンプで昇圧した中間昇圧液と前記蒸気タービンから抽出した蒸気を前記インジェクタに供給して前記中間昇圧液をさらに昇圧して前記蒸気発生器に供給することを特徴とするランキンサイクルシステム。
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