JP6624636B2 - 窯業原料、焼成体の製造方法、及び焼成体 - Google Patents
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ところで、粉末原料に窯業原料を使用したいという要望がある。この場合は、従来の付加製造技術を適用すれば成形体が製造可能と考えられる。
すなわち、本発明の窯業原料は、付加製造方式により焼成体を製造するための窯業原料であって、無機結合剤を含有していることを特徴とする。
また、本発明の製造方法は、(1)窯業原料を用いて所定厚みの粉体層を形成する粉体層形成工程、及び(2)前記粉体層の所定領域に液体を吹き付ける吹き付け工程を順に繰り返し、積層して成形体を形成し、前記成形体を焼成する焼成体の製造方法であって、
前記窯業原料及び/又は前記液体には、無機結合剤が含有されていることを特徴とする。
また、本発明の焼成体は、(1)窯業原料を用いて所定厚みの粉体層を形成する粉体層形成工程、及び(2)前記粉体層の所定領域に液体を吹き付ける吹き付け工程を順に繰り返し、積層して成形体を形成し、前記成形体を焼成する焼成体の製造方法であって、
前記窯業原料及び/又は前記液体には、無機結合剤が含有されている焼成体の製造方法によって得られたことを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、付加製造方式を用いた形状の自由度が高い陶磁器やセラミックス製品が得られる。
本発明の焼成体は、陶磁器やセラミックス製品として有用である。
窯業原料は、無機結合剤の硬化を促進させる硬化促進剤を含有していることが好ましい。硬化促進剤を含有していると、無機結合剤の硬化が促進され、焼成体の形状保持性が高くなる。
〔1〕窯業原料
本発明の窯業原料は、付加製造方式により焼成体を製造するための窯業原料である。そして、窯業原料は、無機結合剤を含有していることを特徴とする。
ここで、せん断応力は以下のように測定された値である。すなわち、(株)ナノシーズ製 粉体せん断力測定装置NS−S500型にて測定した値である。なお、測定条件としては、試料を50gとし、荷重は50N、100N、150Nとする。
ここで、内部摩擦は以下のように測定された値である。すなわち、(株)ナノシーズ製 粉体せん断力測定装置NS−S500型にて測定した値である。なお、測定条件としては、試料を50gとし、荷重は50N、100N、150Nとする。
本発明の窯業原料は、無機結合剤を含有することを特徴とする。無機結合剤は、特に限定されない。例えば、ケイ酸塩、リン酸塩、シリカゾル、セメントを好適に用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
無機結合剤の硬化を促進させる硬化促進剤は、任意の添加物であり、無機結合剤の種類に応じて適宜選択される。硬化促進剤は、1種のみ用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
これらの中でも、トリポリリン酸アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ミョウバンが好ましく用いられる。
本発明の成形体の製造方法は、(1)窯業原料を用いて所定厚みの粉体層を形成する粉体層形成工程、及び(2)粉体層の所定領域に液体を吹き付ける吹き付け工程を順に繰り返し、積層して成形体を形成し、成形体を焼成する焼成体の製造方法である。窯業原料及び/又は液体には、無機結合剤が含有されていることを特徴とする。
粉体層形成工程では、窯業原料を用いて所定厚みの粉体層1を形成する(図1参照)。この際に、通常は、リコーターを用いて窯業原料を敷き詰めて粉体層1を形成する。
この工程は、例えば具体的には、次のように行われる。まず、成形装置の基台3の鉛直上側(z軸方向上側)に、窯業原料(立体造形用混合粉体)が例えば厚さ0.01〜5mmの層状に充填される。次に窯業原料は篦等によって擦り切られて所望の厚みの粉体層1とされる。
積層ピッチは、大型の成形体を作製するためには、0.1〜5mmが好ましい。この範囲とすることで、製造スピードの効率化が図られる。
なお、窯業原料を敷き詰めた後に、粉体層1を圧縮してもよい。
この場合における無機結合剤を含有していない窯業原料としては、窯業に用いる原料であれば特に限定されず用いることができる。原料としては、例えば、陶石、長石、珪石、蝋石、シャモット、バン土頁岩、カオリン等の骨格形成原料、蛙目粘土、木節粘土、カオリン等の可塑性原料、珪灰石、石灰石、灰長石等のカルシウム原料、長石、ドロマイト等の焼結助剤原料等が挙げられる。好ましくは、モロカイト、長石、仮焼粘土、粘土、アルミナ粉末、石英粉末、タルク、骨材等の無機材が挙げられる。これらの原料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。通常、2種以上を混合して用いられる。
無機結合剤を含有していない窯業原料においては、上述の〔1〕窯業原料における「好ましい各原料の混合割合」に関する記載、「窯業原料の最大粒度」に関する記載、「窯業原料の最大粒径」に関する記載、「窯業原料における粒度分布」に関する記載、「窯業原料の安息角」に関する記載、「窯業原料のせん断応力」に関する記載、「窯業原料の内部摩擦」に関する記載、「窯業原料のゆるみかさ密度」に関する記載、「窯業原料の混合の仕方」に関する記載は、そのまま適用することができる。
吹き付け工程では、粉体層1の所定領域に液体7を吹き付ける(図2参照)。粉体層1において固化されるべき部分、すなわち成形対象となる立体造形物の一部に相当する位置に対してヘッド5から液体(造形液)7が射出(滴下)され、その部分が層状の固化物として形成される。図2においては、粉体層1のうち固化された部分を斜線で示している。
無機結合剤を含有していない窯業原料を用いた場合には、液体7としては、無機結合剤を溶媒に溶解させた溶液を用いる。
焼成工程においては、成形体を焼成して焼成体とする。
焼成温度は特に限定されない。例えば、600〜1350℃とすることができる。本発明では、結合剤が無機系材料であるから、焼成工程においても成形体の形状が崩れることなく維持される。
本発明の焼成体は、(1)窯業原料を用いて所定厚みの粉体層を形成する粉体層形成工程、及び(2)粉体層の所定領域に液体を吹き付ける吹き付け工程を順に繰り返し、積層して成形体を形成し、成形体を焼成する焼成体の製造方法であって、窯業原料及び/又は液体には、無機結合剤が含有されている焼成体の製造方法によって得られる。焼成体の製造方法に記載された各用語については、〔2〕焼成体の製造方法の記載をそのまま適用することができる。
なお、焼成体のかさ密度は、通常2.5g/cm3以下である。
かさ密度をこの範囲内とすることで、幅広い用途に実用可能な焼成体となる。
なお、かさ密度は、質量と体積を測定して、これらから算出した値である。
空隙率をこの範囲内とすることで、幅広い用途に実用可能な焼成体となる。
なお、空隙率は、かさ密度と真比重より算出できる。
<実験例1〜5>
モロカイト50質量部、増井長石50質量部の原料調合系に各種無機結合剤を5質量部添加し、市販3DプリンタProJet160(3D Systems社製)で5cm角、厚み1cmにて成形体(積層造形物)を造形し、これを600℃で焼成した。そして、成形体の形状維持が可能であるかを確認した。
実験例1〜5の条件と結果を表1に記載する。評価は以下の通りである。なお、実験例2〜5が実施例であり、実験例1は参考例である。
○:形状維持可能である。
×:形状維持できない。
<実験例6〜11>
モロカイト50質量部、増井長石50質量部の原料調合系に無機結合剤(珪酸ナトリウム)を5質量部添加し、簡易積層造形装置を使用して(5cm角、厚み1cm)の成形体を造形した。これらの成形体のかさ密度を測定した。そして、これらの成形体を600℃で焼成し、成形体の形状維持が可能であるか否かを確認した。
実験例6〜11の条件と結果を表2に記載する。評価は以下の通りである。なお、実験例6〜11が実施例である。
◎:形状維持は可能である。成形体のハンドリング性も非常に良好である。
○:形状維持は可能である。成形体のハンドリング性がやや不良である。
△:形状維持がやや難しい。
また、この結果から、成形体のかさ密度が1.2g/cm3以上である場合には、600℃での焼結状態が特に良好であることが確認された。さらに、成形体のかさ密度が1.5g/cm3以上である場合には、600℃での焼結状態が非常に良好であることが確認された。
<実験例12〜16>
モロカイト50質量部、増井長石50質量部の原料調合系に、ケイ酸ナトリウム5質量部、各種硬化促進剤5質量部を添加し、市販3DプリンタProJet160(3D Systems社製)で5cm角、厚み1cmの成形体を造形し、造形1時間後の成形体硬さをJIS K6253A ISO 7619Aに準拠するTYPE Aゴム硬度計により測定した。
<実験例17〜18>
モロカイト50質量部、増井長石50質量部の原料調合系に、ケイ酸ナトリウム5質量部、又はポリビニルアルコール(PVA)5質量部を添加し、市販3DプリンタProJet160(3D Systems社製)で5cm角、厚み1cmの成形体を造形し、造形後、成形体の表面に施釉した。そして、外観を目視にて確認した。
○:外観は良好である。
×:外観は不良である。
<実験例19〜22>
モロカイト50質量部、増井長石50質量部の原料調合系に、ケイ酸ナトリウム5質量部を添加し、市販3DプリンタProJet160(3D Systems社製)で1cm×10cm、厚み1cmの成形体を造形し、造形後、1220℃で焼成した。そして、焼成体のかさ密度と曲げ強度の関係を検討した。
<実験例23〜26>
モロカイト50質量部、増井長石50質量部の原料調合系に、ケイ酸ナトリウム5質量部を添加し、市販3DプリンタProJet160(3D Systems社製)で1cm×10cm、厚み1cmの成形体を造形し、造形後、1220℃で焼成した。そして、焼成体の寸法精度、外観の様子を確認した。なお、成形体の作製において、積層ピッチを、それぞれ0.1mm(実験例23)、0.5mm(実験例24)、1.0mm(実験例25)、5mm(実験例26)とした。なお、実験例23〜26が実施例である。
本実施例の窯業原料を用いると、600℃以上での焼成によっても、形状崩壊を起こすことなく、実用的な陶磁器やセラミックス製品が得られる。
また、本実施例の製造方法によれば、付加製造方式を用いた形状の自由度が高い陶磁器やセラミックス製品が得られる。
また、本実施例の焼成体は、陶磁器やセラミックス製品として有用である。
なお、本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではない。
3…基台
5…ヘッド
7…液体(造形液)
9…成形体
11…釉層
Claims (8)
- 付加製造方式により焼成体を製造するための窯業原料であって、無機結合剤及び硬化促進剤を含有しており、
前記無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸を含有し、
前記硬化促進剤は、Zn(亜鉛)の酸化物、Mg(マグネシウム)の酸化物、Ca(カルシウム)の酸化物、Zn(亜鉛)の水酸化物、Mg(マグネシウム)の水酸化物、Ca(カルシウム)の水酸化物、Al(アルミニウム)の水酸化物、Na(ナトリウム)のケイ化物、K(カリウム)のケイ化物、Ca(カルシウム)のケイ化物、Na(ナトリウム)のケイフッ化物、K(カリウム)のケイフッ化物、Ca(カルシウム)のケイフッ化物、Al(アルミニウム)のリン酸塩、Zn(亜鉛)のリン酸塩、Ca(カルシウム)のホウ酸塩、Ba(バリウム)のホウ酸塩、Mg(マグネシウム)のホウ酸塩、及びミョウバンからなる群から選択される1種以上の化合物を含有することを特徴とする窯業原料。 - 前記硬化促進剤は、トリポリリン酸アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、及びミョウバンからなる群から選択される1種以上の化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の窯業原料。
- (1)窯業原料を用いて所定厚みの粉体層を形成する粉体層形成工程、及び(2)前記粉体層の所定領域に液体を吹き付ける吹き付け工程を順に繰り返し、積層して成形体を形成し、前記成形体を焼成する焼成体の製造方法であって、
前記窯業原料及び/又は前記液体には、無機結合剤及び硬化促進剤が含有されており、
前記無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸を含有し、
前記硬化促進剤は、Zn(亜鉛)の酸化物、Mg(マグネシウム)の酸化物、Ca(カルシウム)の酸化物、Zn(亜鉛)の水酸化物、Mg(マグネシウム)の水酸化物、Ca(カルシウム)の水酸化物、Al(アルミニウム)の水酸化物、Na(ナトリウム)のケイ化物、K(カリウム)のケイ化物、Ca(カルシウム)のケイ化物、Na(ナトリウム)のケイフッ化物、K(カリウム)のケイフッ化物、Ca(カルシウム)のケイフッ化物、Al(アルミニウム)のリン酸塩、Zn(亜鉛)のリン酸塩、Ca(カルシウム)のホウ酸塩、Ba(バリウム)のホウ酸塩、Mg(マグネシウム)のホウ酸塩、及びミョウバンからなる群から選択される1種以上の化合物を含有することを特徴とする焼成体の製造方法。 - 前記硬化促進剤は、トリポリリン酸アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、及びミョウバンからなる群から選択される1種以上の化合物を含有することを特徴とする請求項3に記載の焼成体の製造方法。
- (1)窯業原料を用いて所定厚みの粉体層を形成する粉体層形成工程、及び(2)前記粉体層の所定領域に液体を吹き付ける吹き付け工程を順に繰り返し、積層して成形体を形成し、前記成形体を焼成する焼成体の製造方法であって、
前記窯業原料及び/又は前記液体には、無機結合剤及び硬化促進剤が含有されており、
前記無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸を含有し、
前記硬化促進剤は、Zn(亜鉛)の酸化物、Mg(マグネシウム)の酸化物、Ca(カルシウム)の酸化物、Zn(亜鉛)の水酸化物、Mg(マグネシウム)の水酸化物、Ca(カルシウム)の水酸化物、Al(アルミニウム)の水酸化物、Na(ナトリウム)のケイ化物、K(カリウム)のケイ化物、Ca(カルシウム)のケイ化物、Na(ナトリウム)のケイフッ化物、K(カリウム)のケイフッ化物、Ca(カルシウム)のケイフッ化物、Al(アルミニウム)のリン酸塩、Zn(亜鉛)のリン酸塩、Ca(カルシウム)のホウ酸塩、Ba(バリウム)のホウ酸塩、Mg(マグネシウム)のホウ酸塩、及びミョウバンからなる群から選択される1種以上の化合物を含有することを特徴とする焼成体の製造方法によって得られた焼成体。 - 前記硬化促進剤は、トリポリリン酸アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、及びミョウバンからなる群から選択される1種以上の化合物を含有することを特徴とする請求項5に記載の焼成体。
- かさ密度が1.0g/cm3以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載の焼成体。
- 断面に積層痕が残っており、積層ピッチが5mm以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の焼成体。
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