本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)オレフィン系アイオノマー樹脂と、(B)変性ナノセルロースとを含有し、前記(B)変性ナノセルロースが、ナノセルロースを構成するセルロースが有する水酸基の水素の少なくとも一部が、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基よりなる群から選択される少なくとも一種の疎水性基を含有する置換基で置換されたものであることを特徴とする。
前記ゴルフボール用樹脂組成物は、構成部材を成形する際に、(B)変性ナノセルロースの外周に、(A)オレフィン系アイオノマー樹脂のポリエチレン鎖のラメラ結晶が生成しやすく、またラメラ結晶が大きく成長しやすい。ポリエチレンの結晶成分は非結晶成分に比べて変形しにくいため、結晶成分を増加させることで、構成部材を高反発化できる。また、(A)オレフィン系アイオノマー樹脂は、ポリエチレンの結晶成分と非結晶成分が混在している。ここで、硬度は局所的な力学的性質である。そのため、材料硬度には、非結晶成分の柔らかさが大きく反映され、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成される構成部材の硬度は低くなる。よって、前記ゴルフボール用樹脂組成物を使用することで、硬度が低く、かつ、反発性が高い構成部材を形成できる。このような構成部材を有するゴルフボールは、打球感が良く、かつ、高反発となる。
[(A)オレフィン系アイオノマー樹脂]
前記(A)オレフィン系アイオノマー樹脂は、オレフィンおよび不飽和カルボン酸の共重合体をベースポリマーとし、この共重合体が有するカルボキシ基が金属イオンにより中和されたアイオノマー樹脂である。なお、前記共重合体は、オレフィンおよび不飽和カルボン酸以外の他の単量体成分を含有してもよい。
前記(A)オレフィン系アイオノマー樹脂としては、(a1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物(以下、「(a1)二元系アイオノマー樹脂」と称する場合がある。)、および/または、(a2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物(以下、「(a2)三元系アイオノマー樹脂」と称する場合がある。)が好ましい。
前記オレフィンとしては、エチレン、プロピレンが挙げられ、特にエチレンが好ましい。前記炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などが挙げられ、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。
α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、炭素数が3〜8個α,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸またはマレイン酸のアルキルエステルがより好ましく、特にアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。エステルを構成するアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが挙げられる。
前記(a1)二元系アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。前記(a2)三元系アイオノマー樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
前記(a1)二元系アイオノマー樹脂を構成する二元共重合体、および、(a2)三元系アイオノマー樹脂を構成する三元共重合体は、共重合体中のオレフィン成分の含有率が、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、95質量%以下が好ましく、より好ましくは92質量%以下、さらに好ましくは87質量%以下である。オレフィン成分の含有率が、50質量%以上であれば変性ナノセルロースの周辺にラメラ結晶がより生成しやすくなり、ゴルフボール用樹脂組成物から形成される部材がより高反発となり、95質量%以下であればゴルフボール用樹脂組成物から形成される部材が硬くなり過ぎず、得られるゴルフボールの打球感が良好となる。
前記(a1)二元系アイオノマー樹脂を構成する二元共重合体、および、(a2)三元系アイオノマー樹脂を構成する三元共重合体は、共重合体中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率が、4質量%以上が好ましく、より好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率が、4質量%以上であればゴルフボール用樹脂組成物の反発性がより向上し、50質量%以下であればゴルフボール用樹脂組成物から形成される部材が硬くなり過ぎず、得られるゴルフボールの打球感が良好となる。
前記(a1)二元系アイオノマー樹脂、および/または、(a2)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記(a1)二元系アイオノマー樹脂、および、(a2)三元系アイオノマー樹脂は、Na+、Mg2+、Ca2+、および、Zn2+よりなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンにより中和されていることが好ましい。
前記(a1)二元系アイオノマー樹脂、および、(a2)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、50モル%以上が好ましく、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは100モル%である。中和度が50モル%以上であれば、得られるゴルフボールの反発性および耐久性が良好になる。なお、前記アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×共重合体中の中和されているカルボキシル基のモル数/共重合体中のカルボキシル基の総モル数
前記(a1)二元系アイオノマー樹脂、および、(a2)三元系アイオノマー樹脂は、予め中和されたアイオノマー樹脂を用いてもよいし、オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、および/または、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体と、後述する(E)金属化合物とを混合して用いてもよい。また、(a1)二元系アイオノマー樹脂および(a2)三元系アイオノマー樹脂は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記(a1)二元系アイオノマー樹脂としては、ハイミラン(登録商標)1555(Na)、1557(Zn)、1605(Na)、1706(Zn)、1707(Na)、AM7311(Mg)、AM7329(Zn)(三井・デュポン・ポリケミカル社製);サーリン(登録商標)8945(Na)、9945(Zn)、8140(Na)、8150(Na)、9120(Zn)、9150(Zn)、6910(Mg)、6120(Mg)、7930(Li)、7940(Li)、AD8546(Li)(デュポン社製);アイオテック(登録商標)8000(Na)、8030(Na)、7010(Zn)、7030(Zn)(エクソンモービル化学社製)などが挙げられる。
前記(a2)三元系アイオノマー樹脂としては、ハイミランAM7327(Zn)、1855(Zn)、1856(Na)、AM7331(Na)(三井・デュポン・ポリケミカル社製);サーリン6320(Mg)、8120(Na)、8320(Na)、9320(Zn)、9320W(Zn)、HPF1000(Mg)、HPF2000(Mg)(デュポン社製);アイオテック7510(Zn)、7520(Zn)(エクソンモービル化学社製)などが挙げられる。
前記二元共重合体としては、ニュクレル(登録商標)N1050H、N2050H、N1110H、N0200H、N1560、N2060(三井・デュポン・ポリケミカル社製);プリマコール(登録商標)5980I(ダウ・ケミカル社製)などが挙げられる。前記三元共重合体としては、ニュクレルAN4318、AN4319(三井・デュポン・ポリケミカル社製)、プリマコールAT310、AT320(ダウ・ケミカル社製)などが挙げられる。前記商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
前記ゴルフボール用樹脂組成物は、樹脂成分として、前記(A)オレフィン系アイオノマー樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。この場合、樹脂成分中の前記(A)オレフィン系アイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上である。前記樹脂成分として、前記(A)オレフィン系アイオノマー樹脂のみを含有することも好ましい。
前記他の熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性オレフィン共重合体、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性スチレン系樹脂、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性アクリル樹脂(ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリルなど)、熱可塑性ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレンなど)、熱可塑性ポリジエン(ポリブタジエンなど)、熱可塑性ポリエーテルなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。また、これらの熱可塑性樹脂を、塩素、臭素、無水マレイン酸、アンモニアなどで変性したものも使用できる。
[(B)変性ナノセルロース]
前記ゴルフボール用樹脂組成物は、(B)変性ナノセルロースを含有する。成型時に変性ナノセルロースの外周にラメラ結晶が生成される理由は、以下のように考えられる。(B)変性ナノセルロースは、疎水性基が導入されているため(A)オレフィン系アイオノマー樹脂との密着性(接着性)に優れている。ここで、射出成形などの成形時には、(A)オレフィン系アイオノマー樹脂が、(B)変性ナノセルロースの周囲を流動する。この際、(A)オレフィン系アイオノマー樹脂の分子鎖は、(B)変性ナノセルロースと接触している部分が、(B)変性ナノセルロースに引っ張られるようになる。そのため、(B)変性ナノセルロースの周囲において、(A)オレフィン系アイオノマー樹脂の分子鎖にせん断応力が働き、延伸結晶が生成すると考えられる。
前記(B)変性ナノセルロースを構成するナノセルロースとは、セルロース繊維を含む材料(木材、芝生、落ち葉、綿、麻など)を原料とし、これらに含まれるセルロース繊維をナノサイズまで解きほぐしたものであり、セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタルが挙げられる。
前記セルロースナノファイバーは、セルロース繊維をリファイナーやビーターを用いて機械的に開繊することで得られる。前記セルロースナノファイバーの平均繊維径は、4nm以上が好ましく、200nm以下が好ましく、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。前記セルロースナノファイバーの平均繊維長は、特に限定されないが、通常1μm〜10μm程度である。
前記セルロースナノクリスタルは、セルロース繊維を酸(硫酸、塩酸など)により加水分解することで得られる結晶である。前記セルロースナノクリスタルの平均結晶幅は4nm以上が好ましく、より好ましくは10nm以上であり、50nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。前記セルロースナノクリスタルの平均結晶長は、25nm以上が好ましく、より好ましくは100nm以上であり、500nm以下が好ましく、より好ましくは200nm以下である。
前記平均繊維径、平均繊維長、平均結晶幅、平均結晶長は、ナノセルロースを電子顕微鏡で観察し、視野内のナノセルロースを50本以上測定し、平均値を求める。
前記(B)変性ナノセルロースは、ナノセルロースを構成するセルロースが有する水酸基の水素の少なくとも一部が、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基よりなる群から選択される少なくとも一種の疎水性基を含有する置換基で置換されたものである。
前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。前記アルキル基の炭素数は、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは18以下である。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、アダマンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
前記アルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。前記アルケニル基の炭素数は、2以上が好ましく、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは18以下である。前記アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基などが挙げられる。
前記アルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。前記アルキレン基の炭素数は、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは18以下である。前記アルキル基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などが挙げられる。
前記アルケニレン基、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。前記アルケニレン基の炭素数は、2以上が好ましく、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは18以下である。前記アルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基、ノネニレン基、デセニレン基、ウンデセニレン基、ドデセニレン基、トリデセニレン基、テトラデセニレン基、ペンタデセニレン基、ヘキサデセニレン基、ヘプタデセニレン基、オクタデセニレン基などが挙げられる。
前記アルキル基、アルケニル基、アルキレン基およびアルケニレン基は、芳香環構造を有していてもよい。芳香環構造としては、ベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、ビフェニレン環などの縮合ベンゼン環;トロピリウム環、シクロプロペニウム環などの非ベンゼン系芳香環;ピリジン環、ピリミジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環などの複素芳香環などが挙げられる。
前記アリーレン基の炭素数は、6以上が好ましく、より好ましくは7以上、さらに好ましくは8以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは18以下である。前記アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
前記疎水性基を含有する置換基は、置換基全体の原子の個数が、95以下が好ましく、より好ましくは80以下、さらに好ましくは71以下である。
前記(B)変性ナノセルロースは、セルロースが有する水酸基の水素が置換基で置換されている割合が、5モル%以上が好ましく、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上であり、90モル%以下が好ましく、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。前記割合が5モル%以上であれば(B)変性ナノセルロースの外周縁にラメラ結晶が生成しやすくなり、ゴルフボール用樹脂組成物から形成される部材の反発性がより向上する。また、前記割合が90モル%以下であればセルロース固有の環状ポリアセタール構造に由来する剛直性が維持され、ゴルフボール用樹脂組成物が高反発となる。
前記(B)変性ナノセルロースは、ナノセルロースを構成するセルロースが有する水酸基の水素の少なくとも一部が、下記式(1)で表される置換基で置換されたものであることが好ましい。
前記式(1)中、Rは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、芳香環構造を含むアルキレン基、または、芳香環構造を含むアルケニレン基を表す。Xは、ハロゲン、ビニル基(−CH=CH2)、エチニル基(−C≡CH)、アジド基(−N3)、アミノ基(−NH2)、チオール基(−SH)、スルフィド基(−SR1)、ジスルフィド基(−S−S−R2)、マレイミド基(下記式(2))、フタルイミド基(下記式(3))、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド基(下記式(4))、−O−p−トルエンスルホニル基(下記式(5))、−O−メタンスルホニル基(下記式(6))、または、−O−ベンゼンスルホニル基(下記式(7))を表す。なお、式(1)〜(7)において、*は結合手を表す。
式(1)中のアルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。前記アルキレン基の炭素数は、2以上が好ましく、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは18以下である。
式(1)中のアルケニレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。前記アルケニレン基の炭素数は、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは18以下である。
式(1)中のアリーレン基の炭素数は、6以上が好ましく、より好ましくは7以上、さらに好ましくは8以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは18以下である。
式(1)中のアルキレン基、アルケニレン基が有する芳香環構造としては、ベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、ビフェニレン環などの縮合ベンゼン環;トロピリウム環、シクロプロペニウム環などの非ベンゼン系芳香環;ピリジン環、ピリミジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環などの複素芳香環などが挙げられる。
式(1)のRはグラフト鎖を有していてもよい。前記グラフト鎖としては、オレフィン系単量体、スチレン系単量体および/またはアクリル系単量体の重合体が挙げられる。前記重合体の繰返し単位数は、10以上が好ましく、100以下が好ましく、より好ましくは30以下である。
式(1)中のハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
式(1)中のスルフィド基のR1およびジスルフィド基のR2は、アルキル基(炭素数1〜30)、アルケニル基(炭素数2〜30)が挙げられる。これらのアルキル基およびアルケニル基は芳香環構造を有していてもよい。式(1)中のXがスルフィド基またはジスルフィド基の場合、式(1)で表される置換基が他の置換基とスルフィド結合、ジスルフィド結合を形成していてもよい。
式(1)中のRとしては、アルキレン基、アルケニレン基が好ましい。式(1)中のXとしては、ハロゲン、アジド基、アミノ基が好ましい。
前記(B)変性ナノセルロースは、ナノセルロースと変性剤とを反応させる、あるいは、セルロースと変性剤とを反応させた後、開繊することで得られる。前記変性剤としては、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基よりなる群から選択される少なくとも一種の疎水性基を含有し、かつ、セルロースの水酸基と反応し得る化学構造を有するものが使用できる。前記セルロースの水酸基と反応し得る化学構造としては、カルボキシル基、酸無水物基(−CO−O−CO−)、カルボン酸ハロゲン化物(−COX1(X1=塩素、臭素、ヨウ素))、ハロゲン基(−X1)、エポキシ基が挙げられる。
前記変性剤としては、下記式(8)または(9)で表される化合物が好ましい。
式(8)および(9)中のRは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、芳香環構造を含むアルキレン基、または、芳香環構造を含むアルケニレン基を表す。なお、式(9)において、複数あるRは同一でも異なっていてもよい。式(8)中のXは、ハロゲン、ビニル基、エチニル基、アジド基、アミノ基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、マレイミド基、フタルイミド基、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド基、−O−p−トルエンスルホニル基、−O−メタンスルホニル基、または、−O−ベンゼンスルホニル基を表す。式(8)および(9)中のYは、塩素、臭素、ヨウ素、水酸基、−O−p−トルエンスルホニル基、−O−メタンスルホニル基、−O−ベンゼンスルホニル基を表す。
前記式(8)および(9)中のYは、塩素が好ましい。前記式(8)および(9)中のRはアルキレン基、アルケニレン基、芳香環構造を含むアルキレン基が好ましい。前記式(8)中のXは、ハロゲン(塩素、臭素)、ビニル基、マレイミド基、フタルイミド基、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド基が好ましい。
前記変性剤としては、モノクロロアセチルクロリド、モノブロモアセチルクロリド、3−クロロプロピオニルクロリド、3−ブロモプロピオニルクロリド、4−クロロブチロイルクロリド、4−ブロモブチロイルクロリド、5−クロロペンタノイルクロリド、6−ブロモヘキサノイルクロリド、7−ブロモヘプタノイルクロリド、8−ブロモオクタノイルクロリド、9−ブロモノナノイルクロリド、10−ブロモデカノイルクロリド、11−ブロモウンデカノイルクロリド、4−(クロロメチル)ベンゾイルクロリド、3−ブテノイルクロリド、4−ペンテノイルクロリド、3−メチルペンテノイルクロリド、5−ヘキセノイルクロリド、10−ウンデセノイルクロリド、3−シクロペンテン−1−カルボン酸クロリド、5−ノルボルネン−2−カルボン酸クロリドなどが挙げられる。
ナノセルロースまたはセルロースと変性剤とを反応させる温度は、変性剤に応じて適宜調整すればよいが、20℃〜200℃が好ましい。
前記(B)変性ナノセルロースは市販品を使用してもよい。前記(B)変性ナノセルロースとしては、星光PMC社製のT−NP109、T−NP132などが挙げられる。
前記(B)変性ナノセルロースの配合量は、前記(A)オレフィン系アイオノマー樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、60質量部以下が好ましく、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。前記(B)変性ナノセルロースの配合量が、1質量部以上であればゴルフボール用樹脂組成物の反発性がより向上し、60質量部以下であればゴルフボール用樹脂組成物が硬くなり過ぎず、得られるゴルフボールの打球感が良好となる。
[(C)両性界面活性剤]
前記ゴルフボール用樹脂組成物は、上記(A)成分と(B)成分に加えて、(C)両性界面活性剤を含有してもよい。(C)両性界面活性剤は、(A)オレフィン系アイオノマー樹脂のイオン会合体に取り込まれ、イオン会合体による主鎖の拘束を弱めたりすると考えられる。この作用により、本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、分子鎖の運動性が高くなり、柔軟性がより高くなる。
前記(C)両性界面活性剤は、分子内にカチオン性部位とアニオン性部位とを含有し、水にとけて表面張力を低下させる作用を有するものであれば特に限定されない。両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン型、アミドベタイン型、イミダゾリウムベタイン型、アルキルスルホベタイン型、アミドスルホベタイン型などのベタイン型両性界面活性剤;アミドアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルアミノ脂肪酸塩;アルキルアミンオキシド;β−アラニン型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤;スルホベタイン型両性界面活性剤;ホスホベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。(C)両性界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
両性界面活性剤の具体例としては、ジメチルラウリルベタイン、オレイルジメチルアミノ酢酸ベタイン(オレイルベタイン)、ジメチルオレイルベタイン、ジメチルステアリルベタイン、ステアリルジヒドロキシメチルベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウリルジヒドロキシメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、ミリスチルジヒドロキシメチルベタイン、ベヘニルジヒドロキシメチルベタイン、パルミチルジヒドロキシエチルベタイン、オレイルジヒドロキシメチルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドアルキルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシアルキルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドアルキルヒドロキシスルホベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドジアルキルヒドロキシアルキルスルホベタイン、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸塩、N−アルキル−β−イミノジプロピオン酸塩、アルキルジアミノアルキルグリシン、アルキルポリアミノアルキルグリシン、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、N,N−ジメチルオクチルアミンオキサイド、N,N-ジメチルラウリルアミンオキサイド、N,N-ジメチルステアリルアミンオキサイドなどを挙げることができる。
(C)前記両性界面活性剤の配合量は、(A)オレフィン系アイオノマー樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1.0質量部以上、さらに好ましくは5.0質量部以上であり、60質量部以下が好ましく、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。(C)両性界面活性剤の配合量が前記範囲内であれば、界面活性剤分子がアイオノマー樹脂のイオン会合体に取り込まれやすくなり、分子鎖の運動性が高くなり、柔軟性を維持したまま反発性が高くなるからである。
[(D)脂肪酸]
前記ゴルフボール用樹脂組成物は、さらに(D)脂肪酸を含有してもよい。(D)脂肪酸を含有することにより、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が向上し、薄い層の形成が容易となる。前記(D)脂肪酸としては、特に限定されず、飽和脂肪酸、あるいは、不飽和脂肪酸のいずれも使用できる。また、前記(D)脂肪酸は、直鎖脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸のいずれであってもよい。前記(D)脂肪酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記(D)脂肪酸の炭素数は、3以上が好ましく、より好ましくは8以上、さらに好ましくは16以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは28以下、さらに好ましくは24以下である。
前記飽和脂肪酸としては、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸などが挙げられる。
不飽和脂肪酸としては、ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、ノナデセン酸、イコセン酸、ヘンイコセン酸、ドコセン酸、トリコセン酸、テトラコセン酸、ペンタコセン酸、ヘキサコセン酸、ヘプタコセン酸、オクタコセン酸、ノナコセン酸、トリアコンテン酸などが挙げられる。
前記(D)脂肪酸の配合量は、(A)オレフィン系アイオノマー樹脂100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、180質量部以下が好ましく、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは120質量部以下である。(D)脂肪酸の配合量が5質量部以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性がより向上し、180質量以下であれば脂肪酸のブリードアウトを抑制できる。
[(E)金属化合物]
前記ゴルフボール用樹脂組成物は、さらに(E)金属化合物を含有してもよい。(E)金属化合物を含有することにより、(A)オレフィン系アイオノマー樹脂の中和度を一層高めることができ、ゴルフボール用樹脂組成物の反発性がより向上する。
前記(E)金属化合物としては、カルボキシル基を中和することができるものであれば、特に限定されず、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。
また、前記(E)金属化合物として、塩基性脂肪酸金属塩を使用することもできる。塩基性脂肪酸金属塩としては、塩基性ラウリン酸マグネシウム、塩基性ラウリン酸カルシウム、塩基性ラウリン酸亜鉛、塩基性ミリスチン酸マグネシウム、塩基性ミリスチン酸カルシウム、塩基性ミリスチン酸亜鉛、塩基性パルミチン酸マグネシウム、塩基性パルミチン酸カルシウム、塩基性パルミチン酸亜鉛、塩基性オレイン酸マグネシウム、塩基性オレイン酸カルシウム、塩基性オレイン酸亜鉛、塩基性ステアリン酸マグネシウム、塩基性ステアリン酸カルシウム、塩基性ステアリン酸亜鉛、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、塩基性ベヘニン酸マグネシウム、塩基性ベヘニン酸カルシウム、塩基性ベヘニン酸亜鉛などが挙げられる。
(E)金属化合物の配合量は、(A)オレフィン系アイオノマー樹脂の中和度や後述する当量比に応じて適宜調整すればよい。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)成分および(D)成分が有するカルボキシ基に対するゴルフボール用樹脂組成物中の金属イオンの当量比(金属イオンの当量/カルボキシ基の当量)が、0.5以上が好ましく、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1.0以上であり、2.5以下が好ましく、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.4以下である。前記当量比が0.5以上であればゴルフボール用樹脂組成物の反発性がより向上し、2.5以下であればゴルフボール用樹脂組成物が硬くなり過ぎず、得られるゴルフボールの打球感が良好となる。
なお、前記カルボキシ基の当量は、(A)成分および(D)成分が有するカルボキシ基の総モル数である。前記金属イオンの当量は、(A)成分が有する金属イオンのモル数と金属イオンの価数との積、ならびに、(E)金属化合物が有する金属イオンのモル数とその金属イオンの価数との積の合計である。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、さらに、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などの添加剤を含有することができる。前記重量調整剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。
前記ゴルフボール用樹脂組成物のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.5g/10min以上、さらに好ましくは1.0g/10min以上であり、60g/10min以下が好ましく、より好ましくは30g/10min以下、さらに好ましくは15g/10min以下である。メルトフローレイトが0.1g/10min以上であれば流動性が良好となり、薄い層の成形が可能となり、60g/10min以下であれば得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
[製法]
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、例えば、(A)オレフィン系アイオノマー樹脂、(B)変性ナノセルロース、および必要に応じて(C)両性界面活性剤、(D)脂肪酸、(E)金属化合物並びにその他の添加剤などを、溶融混合することにより得られる。溶融混合は、ニーダー、押出機(一軸押出機、二軸押出機、二軸一軸押出機など)を使用することができる。
[ゴルフボール]
本発明のゴルフボールは、前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成された構成部材を有する。上述したように、前記ゴルフボール用樹脂組成物を使用することで、硬度が低く、かつ、反発性が高い構成部材を形成できる。このような構成部材を有するゴルフボールは、打球感が良く、かつ、高反発となる。
ゴルフボールの構造は、特に限定されず、例えば、単層コアと、前記コアを被覆するカバーとを有するツーピースゴルフボール;コアと前記コアを被覆する一以上の中間層と、前記中間層を被覆するカバーを有するマルチピースゴルフボール(スリーピースゴルフボール、フォーピースゴルフボール、ファイブピースゴルフボールなど)などが挙げられる。
前記構成部材のスラブ硬度(H)は、ショアD硬度で40以上が好ましく、より好ましくは43以上、さらに好ましくは46以上であり、75以下が好ましく、より好ましくは72以下、さらに好ましくは67以下、特に好ましくは65以下である。スラブ硬度が、前記範囲内であれば、ゴルフボールの打球感がより良好となる。
前記構成部材の曲げ剛性(R)が、500kgf/cm2(49.0MPa)以上が好ましく、より好ましくは800kgf/cm2(78.4MPa)以上、さらに好ましくは1,200kgf/cm2(118MPa)以上であり、20,000kgf/cm2(1,961MPa)以下が好ましく、より好ましくは13,000kgf/cm2(1,275MPa)以下、さらに好ましくは9,000kgf/cm2(882MPa)以下である。前記曲げ剛性が、500kgf/cm2以上であれば、打撃時のボール変形が小さくなり、打撃のエネルギーを効率よくボールの加速に変換できるため、ゴルフボールが高反発となる。また、前記曲げ剛性が、20,000kgf/cm2以下であれば、柔軟性が良好となり、打撃時の衝撃を抑制でき、打球感が良好なゴルフボールが得られる。
前記スラブ硬度(H)と前記曲げ剛性(R)の比(H/R)は、0.002以上が好ましく、より好ましくは0.004以上、さらに好ましくは0.005以上であり、0.100以下が好ましく、より好ましくは0.080以下、さらに好ましくは0.056以下である。前記比(H/R)が0.002以上であれば構成部材の反発性がより向上し、0.100以下であれば構成部材が硬くなり過ぎず、ゴルフボールの打球感が良好となる。なお、構成部材のスラブ硬度および曲げ剛性は、前記ゴルフボール用樹脂組成物を用いて、前記構成部材を形成する際と同条件で作製したスラブについての測定値である。
前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成された構成部材に含有される(B)変性ナノセルロースは、外周縁の少なくとも一部に、長手方向の最大長さが11nm以上であるポリエチレン鎖のラメラ結晶が存在することが好ましい。このように(B)変性ナノセルロースの外周縁に大きなポリエチレン鎖のラメラ結晶が存在することで、構成部材の反発性が向上し、得られるゴルフボールが高反発となる。
なお、外周縁にポリエチレン鎖のラメラ結晶が存在する(B)変性ナノセルロースは、少なくとも一つあればよい。また、外周縁にポリエチレン鎖のラメラ結晶が存在する(B)変性ナノセルロースは、その外周縁の10%以上にラメラ結晶が存在することが好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは70%以上である。
前記構成部材の製造方法は、特に限定されないが、前記ゴルフボール用樹脂組成物を材料温度120℃〜240℃で溶融成形した後、冷却速度60℃/s以上で、材料温度100℃以下に冷却することが好ましい。このように溶融成形後、急冷することで(B)変性ナノセルロースの外周縁に生成したポリエチレン鎖のラメラ結晶が、成形完了後の余熱によって消失することを抑制できる。
前記溶融成形時の材料温度は、130℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上であり、200℃以下が好ましく、より好ましくは190℃以下である。前記冷却速度は、60℃/s以上が好ましく、より好ましくは100℃/s以上である。前記冷却時の温度は80℃以下が好ましく、より好ましくは30℃以下である。
前記ゴルフボール用樹脂組成物を用いて、射出成形により構成部材を形成する場合、ノズル温度を120℃〜240℃とし、金型温度(キャビティ表面温度)を100℃以下(好ましくは50℃以下、より好ましくは20℃以下)とすればよい。
前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成される部材としては、コア、中間層、カバーのいずれでもよいが、中間層が好ましい。なお、前記ゴルフボールは、前記ゴルフボール用樹脂組成物から成形された構成部材以外の部分は、従来公知の材料を用いることができる。
前記コアには、公知のゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を用いることができ、例えば、基材ゴム、共架橋剤および架橋開始剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
前記基材ゴムとしては、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。前記共架橋剤としては、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩が好ましく、アクリル酸の金属塩またはメタクリル酸の金属塩がより好ましい。金属塩の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムが好ましく、より好ましくは亜鉛である。共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。架橋開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、3質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下である。
また、前記コア用ゴム組成物は、さらに、有機硫黄化合物を含有してもよい。前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類、チオフェノール類、チオナフトール類を好適に使用することができる。有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。前記コア用ゴム組成物は、さらにカルボン酸および/またはその塩を含有してもよい。カルボン酸および/またはその塩としては、炭素数が1〜30のカルボン酸および/またはその塩が好ましい。カルボン酸および/またはその塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上、40質量部以下である。
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、有機硫黄化合物に加えて、さらに、酸化亜鉛や硫酸バリウムなどの重量調整剤、老化防止剤、色粉などを適宜配合することができる。前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成型条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130℃〜200℃で10分間〜60分間加熱するか、あるいは130℃〜150℃で20分間〜40分間加熱した後、160℃〜180℃で5分間〜15分間と2段階加熱することが好ましい。
中間層材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂;スチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ゴム組成物の硬化物などが挙げられる。ここで、アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものが挙げられる。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステンなどの比重調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。
中間層を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、中間層用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いて球体を包み、加圧成形する方法、または、中間層用組成物を直接球体上に射出成形して球体を包み込む方法などを挙げることができる。
中間層用組成物を球体上に射出成形して中間層を成形する場合、成形用上下金型としては、半球状キャビティを有しているものを使用することが好ましい。射出成形による中間層の成形は、ホールドピンを突き出し、被覆球体を投入してホールドさせた後、加熱溶融された中間層用組成物を注入して、冷却することにより中間層を成形することができる。
圧縮成形法により中間層を成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。中間層用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、中間層用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いて中間層を成形する方法としては、例えば、球体を2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形して中間層に成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、中間層用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みを有する中間層を成形できる。
なお、成形温度とは、型締めから型開きの間に、下型の凹部の表面が到達する最高温度を意味する。また組成物の流動開始温度は、島津製作所の「フローテスター CFT−500」を用いて、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を、プランジャー面積:1cm2、DIE LENGTH:1mm、DIE DIA:1mm、荷重:588.399N、開始温度:30℃、昇温速度:3℃/分の条件で測定することができる。
前記中間層の厚みは、0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.4mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、2.5mm以下が好ましく、より好ましくは2.4mm以下、さらに好ましくは2.3mm以下である。複数の中間層の場合は、複数の中間層の合計厚みが上記範囲であることが好ましい。
カバー材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、アイオノマー樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレンなどが挙げられ、ポリウレタン、アイオノマー樹脂が好ましい。
前記カバー材料の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポン・ポリケミカル(株)から商品名「ハイミラン(Himilan)(登録商標)」で市販されている」アイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーまたは商品名「プリマロイ」で市販されている熱可塑性ポリエステル系エラストマーなどを挙げることができる。前記カバー材料は、単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
前記カバーは、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
カバー用組成物を用いてカバーを成形する態様は、特に限定されないが、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する態様、あるいは、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する態様(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)を挙げることができる。カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、マークを形成することもできる。
前記カバーの厚みは、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。カバーの厚みが4.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、さらに好ましくは0.5mm以上である。カバーの厚みが0.3mm未満では、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合がある。
カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
カバーが成形されたゴルフボールは、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が50μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
本発明のゴルフボールの直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、ゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
本発明のゴルフボールは、直径40mm〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向にゴルフボールの縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.4mm以上であり、さらに好ましくは2.5mm以上であり、最も好ましくは2.8mm以上であり、5.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは4.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を5.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール1は、球状コア2と、この球状コア2の外側に配設された中間層3と、この中間層3の外側に配設されたカバー4とを有する。前記カバー4の表面には、多数のディンプル41が形成されている。このカバー4の表面のうち、ディンプル41以外の部分は、ランド42である。そして、前記中間層3が前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されている。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)スラブ硬度(ショアD硬度)
ゴルフボール用樹脂組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。なお、射出成形時のノズル温度および金型温度は、構成部材(中間層)を成形する際の射出成形条件と同様とした。このシートを、測定基板などの影響が出ないように3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore D」を用いた。
(2)曲げ剛性(kgf/cm2)
ゴルフボール用樹脂組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mm、幅20mm、長さ100mmのテストピースを作製した。なお、射出成形時のノズル温度および金型温度は、構成部材(中間層)を成形する際の射出成形条件と同様とした。このテストピースを、温度23±2℃、相対湿度50±5%で、14日間保存した。作製したテストピースについて、オルゼン剛性度試験機(東洋精機製作所製)を用いて、曲げ角度3°、12°における荷重値を測定し、横軸に曲げ角度(°)、縦軸に荷重目盛の読みをプロットし、これらの点を通る直線の傾きを求めた。測定条件は、温度23±2℃、相対湿度50±5%、曲げ速度60°/min、支点間距離50mmとした。曲げ剛性は、前記傾きの値に8.7078を乗じ、試験片の厚み(cm)の三乗で除することで算出した。
(3)メルトフローレイト(MFR)(g/10min)
MFRは、フローテスター(島津製作所社製、島津フローテスターCFT−100C)を用いて、JIS K7210(1999)に準じて測定した。なお、測定は、測定温度190℃、荷重2.16kgの条件で行った。
(4)ラメラ結晶
フィラー(変性ナノセルロース、未変性ナノセルロース、綿繊維、アラミド繊維、シリカ粉末、造核剤)の外周縁のラメラ結晶の存在率は、画像イメージング法で測定した。具体的には、構成部材の成形条件と同じ成形条件により作製した樹脂スラブについて、顕微鏡写真(倍率:10,000倍、視野:10μm×10μm)を撮影した。次に、得られた顕微鏡写真を画像解析ソフト(日機装社、Viewtrac(登録商標))で解析し、視野内に存在する全てのフィラーについて、長手方向の長さおよび外周縁のラメラ結晶の存在の有無を確認した。解析結果に基づいて、ラメラ結晶の長手方向の最大長さ、ラメラ結晶の存在率を求めた。ラメラ結晶の存在率は、下記式により算出した。
[ラメラ結晶の存在率(%)]=100×[画像中の全てのフィラーの外周縁のうち、ラメラ結晶が接触している部分の長さの合計]÷[画像中の全てのフィラーの外周縁の長さの合計]。
(5)圧縮変形量(mm)
ゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にゴルフボールが縮む量)を測定した。
(6)反発係数
ゴルフボールに198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の前記円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および質量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの反発係数とした。
(7)打球感
アマチュアゴルファー(上級者)10人により、ドライバーを用いた実打テストを行って、各人の打撃時のフィーリングを下記基準で評価させた。10人の評価のうち、最も多い評価をそのゴルフボールの打球感とした。
評価基準
優:衝撃が少なくてフィーリングが良い。
良:普通。
劣:衝撃が大きくてフィーリングが悪い。
[ゴルフボールの作製]
(1)球状コアの作製
表1に示す配合のコア用ゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより、直径39.8mmの球状コアを得た。
ポリブタジエンゴム:JSR社製、「BR730(シス結合含有率:95質量%)」
アクリル酸亜鉛:シグマアルドリッチ社製
ジクミルパーオキサイド:東京化成工業社製
チオナフトール:東京化成工業社製
(2)中間層の作製
表2、3に示した配合となるように、(A)成分ならびに必要に応じて(C)成分、(D)成分および(E)成分をニーダーに入れて、220℃、15分間混練した。ゴルフボールNo.1〜20、23および24については、その後、(B)成分またはその他のフィラー成分を投入し、さらに190℃、10分間混練してゴルフボール用樹脂組成物を調製した。得られたゴルフボール用樹脂組成物を球状コア上に射出成形して中間層(厚さ1.0mm)を成形した。射出成形は、表2、3に示す条件で行った。
表2、表3で用いた材料は下記のとおりである。
ニュクレルN1560:三井・デュポン・ポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含有率:15質量%、エチレン含有率:85質量%)
ニュクレルAN4319:三井・デュポン・ポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ブチル共重合体(メタクリル酸含有率:8質量%、エチレン含有率:92質量%)
ニュクレルN2060:三井・デュポン・ポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含有率:20質量%、エチレン含有率:80質量%)
T−NP132:星光PMC社製、変性セルロースナノファイバー(粒径20μm〜50μmのセルロースナノファイバーの凝集体、平均繊維径4nm〜200nm、平均繊維長0.1μm〜50μm、セルロースナノファイバーを構成するセルロースが有する水酸基の水素の少なくとも一部が、式(1)で表される置換基で置換されたもの)
T−NP109:星光PMC社製、変性セルロースナノファイバー(粒径20μm〜50μmのセルロースナノファイバーの凝集体、平均繊維径4nm〜200nm、平均繊維長0.1μm〜50μm、セルロースナノファイバーを構成するセルロースが有する水酸基の水素の少なくとも一部が、式(1)で表される置換基で置換されたもの)
未変性ナノセルロース:日本製紙製、KCフロック(登録商標)W−250(粒径28〜32nm)
綿繊維:川本産業製の医療用脱脂綿を細断し、平均繊維長を1mm以下にしたもの
アラミド繊維:帝人インダストリー社製、トワロン(登録商標)(平均繊維長250μm、平均繊維径10μm)
シリカ粉末:日産化学工業社製、スノーテックOXS(粒径4〜6nm)
炭素粉末:仁科マテリアル製、酸化グラフェン
造核剤:ADEKA社製、NA−27
オレイルベタイン:ルーブリゾール社製「Chembetaine OL」から水分と塩分を除去したもの
オレイン酸:東京化成工業社製
水酸化マグネシウム:和光純薬工業社製
水酸化ナトリウム:和光純薬工業製
酸化亜鉛:シグマアルドリッチ社製
水酸化カルシウム:東京化成工業社製
(3)カバーの作製
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(BASFジャパン社製、エラストラン(登録商標) XNY85A)100質量部に、酸化チタン(石原産業社製、A220)4質量部を加えて、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。カバー用組成物の押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。
カバー成形時には、ホールドピンを突き出し、中間層が形成された球体を投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に260℃に加熱したカバー用組成物を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きしてゴルフボールを取り出した(カバー厚さ0.5mm)。得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、ゴルフボールを得た。
各ゴルフボールの評価結果を表2、3に示した。また、図2に、ゴルフボールNo.1の中間層の顕微鏡写真を示した。図3に、ゴルフボールNo.10の中間層の顕微鏡写真を示した。ゴルフボールNo.1〜5、12〜20、23および24は、中間層が、(A)オレフィン系アイオノマー樹脂と、(B)変性ナノセルロースとを含有するゴルフボール用樹脂組成物から形成されている。これらのゴルフボールは、反発性および打球感に優れている。ゴルフボールNo.6〜11、21および22は、中間層を構成するゴルフボール用樹脂組成物が(B)変性ナノセルロースを含有しない。これらのゴルフボールは反発性が劣る。