JP6623605B2 - 分子構造中にエポキシ基を有する新規な脂環式ジカルボン酸ジエステル - Google Patents

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本発明は、可塑剤として、また塩素含有樹脂用安定化剤として好適な分子構造中にエポキシ基を有する新規な脂環式ジカルボン酸ジエステルに関する。
一般に、樹脂やゴムには成形性を改良する目的や柔軟性を付与する目的で可塑剤が使用されることが多い。その可塑剤としては、対象の樹脂やゴムの種類によって、またその使用される用途や目的によって、様々な化合物が使用されている。その中でも、最もよく使用されているものとしては、エステル化合物が知られている。そのエステル化合物としては、脂肪族系、脂環族系、芳香族系のものがあり、また、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ポリエステル等、その種類は非常に多岐に渡るが、現在最も汎用的な可塑剤は芳香族系のジエステルであり、耐寒性や耐熱性の要求される用途では脂肪族系のジエステルや芳香族系のトリエステル、テトラエステルなども広く使用されている。また、近年環境問題等の観点から脂環族系のジエステルの使用も増えてきている。
その様な可塑剤に要求される性能は、その対象樹脂との相溶性に優れることは言うまでもなく、可塑剤としての本質的な性能である、柔軟性付与や加工性の改善等の可塑化性能だけでなく、高温での使用や低温での使用に耐えうる耐熱性や耐寒性も求められており、最近ではその様な耐熱性や耐寒性に対する要求が強くなっている。しかし、従来公知の可塑剤では、その要求を十分に満足することができていないのが現状であり、更なる耐熱性や耐寒性の向上が求められている。
一方、樹脂やゴムの多くは、耐熱性や耐光性を改善するため、また高温での加工時の劣化を防止するために様々な安定化剤を配合して使用されるのが一般的である。なかでも、塩素含有樹脂は、塩素を含むが故に成形性、物性面、更には難燃性等の優れた性能を示す反面、その塩素が熱や光による着色や物性低下等の劣化の要因となっており、その抑制が必要であり、様々な安定化剤がこれまで検討され、実際に使用されてきた。例えば、代表的なものとしては、カルシウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム等の金属の脂肪酸石鹸類や、フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤などの塩素含有樹脂に限らず使用されている汎用的な安定化剤がよく知られている。また、特に耐光性の要求される用途などでは、紫外線吸収剤等を配合されるケースもある。更に、前述の塩素に起因する劣化を抑止するものとしてエポキシ化合物が有効であることが知られており、エポキシ化大豆油等のエポキシ化天然油類が広く使われている。しかし、近年塩素含有樹脂が上述の優れた性能的な優位性より改めて見直されている状況で、従来公知の安定化剤では十分に満足されておらず、新たな安定剤の開発が待ち望まれている。
本発明の目的は、上記現状に鑑み、可塑剤本来の可塑化性能が良好であり、かつ耐熱性や耐寒性の改善された可塑剤として、また塩素含有樹脂用の安定化剤として有用な新規化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、前述の脂環族系のジエステルとエポキシ化合物に着目し、鋭意検討を行った結果、分子構造中にエポキシ基を有する特定の構造の新規な脂環式ジカルボン酸ジエステルが、その目的を満たすことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係る分子構造中にエポキシ基を有する特定の構造の脂環式ジカルボン酸ジエステルは、下記に示す化学構造を有することを特徴とする。
[項1] 下記一般式(1)で示される4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルからなり、かつ該ジカルボン酸ジエステルを構成するアルキル基の全量に対する直鎖状のアルキル基の比率(モル比)が50〜99%であることを特徴とする脂環式ジカルボン酸ジエステル。

(式中、R及びRは同一又は異なって、炭素数8〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。)
[項2] 前記アルキル基が、(i)主として炭素数9〜11のアルキル基から構成され、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である、又は(ii)ジカルボン酸ジエステルを構成するアルキル基の全量に対して90%以上(モル比)の炭素数9のアルキル基を含むものである、[項1]に記載の脂環式ジカルボン酸ジエステル。
[項3] 前記アルキル基中の直鎖状のアルキル基の比率(モル比)が、55〜95%である[項1]又は[項2]に記載の脂環式ジカルボン酸ジエステル。
[項4] プロトン核磁気共鳴分光分析で測定したシクロヘキサン環を介したオキシラン環とアルキルオキシカルボニル基の異性体比(シス体/トランス体、モル比)が5/95〜35/65である、[項1]〜[項3]の何れかに記載の脂環式ジカルボン酸ジエステル化合物。
[項5] 異性体比が10/90〜30/70である、[項4]に記載の脂環式ジカルボン酸ジエステル。
[項6] 異性体比が15/85〜25/75である、[項5]に記載の脂環式ジカルボン酸ジエステル。
[項7] 可塑剤に使用するための、[項4]〜[項6]の何れかに記載の脂環式ジカルボン酸ジエステル。
[項8] 塩素含有樹脂の安定化剤に使用するための、[項4]〜[項6]の何れかに記載の脂環式ジカルボン酸ジエステル。
[項9] [項7]又は[項8]に記載の脂環式ジカルボン酸ジエステルを含んでなる塩素含有樹脂組成物。
[項10] 前記塩素含有樹脂が塩化ビニル系樹脂である、[項9]に記載の樹脂組成物。
本発明によれば、可塑剤や塩素含有樹脂における安定化剤に好適に使用できる、新規なエポキシ基を有する脂環式ジカルボン酸ジエステルを得ることができる。また該脂環式ジカルボン酸ジエステルを可塑剤として使用する場合、可塑剤本来の可塑化性能が良好であり、かつ耐熱性や耐寒性に優れており、近年のより厳しい要求にも適合した可塑剤として使用することができる。また該脂環式ジカルボン酸ジエステルを安定化剤として使用する場合、塩素含有樹脂系における安定化剤としての性能にも優れている。
<脂環式ジカルボン酸ジエステル>
本発明の脂環式ジカルボン酸ジエステルは、下記一般式(1)で示される4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルからなることを特徴とする。

なお、式中、R及びRは同一又は異なって、炭素数8〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、かつ式中R、Rで示されるアルキル基の全量に対する直鎖状のアルキル基の比率(モル比)が、50〜99%、好ましくは55〜95%、より好ましくは60〜95%、特に好ましくは70〜95%である。なおこの比率を満たすことは、本発明の脂環式ジカルボン酸ジエステルが4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルの混合物となる場合を含むことを意味する。そして混合物の場合の比率は、その混合物全体のアルキル基の全量に対する直鎖状のアルキル基の比率(モル比)を意味する。
更に、前記アルキル基は、好ましい態様として、主として炭素数9〜11のアルキル基から構成され、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である態様、または、脂環式ジカルボン酸ジエステルを構成するアルキル基の全量に対して90%以上(モル比)の炭素数9のアルキル基を含む態様が推奨される。
また、4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルは、シクロヘキサン環(いす型配座,舟型配座)、シクロヘキサン環に対するオキシラン環(シス体,トランス体)、シクロヘキサン環に対するアルキルオキシカルボニル基(シス体,トランス体)、及びシクロヘキサン環を介したオキシラン環とアルキルオキシカルボニル基(シス体,トランス体)において、それぞれ立体異性体が存在し得る。本発明において、所期の性能が得られるものであれば、特に制約はなく、シス体単独、トランス体単独、又はシス体とトランス体の混合物、何れであっても良い。下述の様に、一般的に4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を出発物質とした反応温度210℃付近よりも低い反応温度でのエステル化に続いてエポキシ化を行うことによって製造した場合、シクロヘキサン環に対するアルキルオキシカルボニル基の異性体構造はシス体が支配的である。
また、シクロヘキサン環を介したオキシラン環とアルキルオキシカルボニル基の異性体構造は、好ましくはプロトン核磁気共鳴分光分析で測定した異性体比(シス体/トランス体、モル比)が5/95〜35/65、より好ましく10/90〜30/70、特に好ましくは15/85〜25/75の範囲である、シス体とトランス体の混合物である態様が推奨される。
なお,ここで言うシクロヘキサン環を介したオキシラン環とアルキルオキシカルボニル基の異性体構造とは、下記構造式(2)に示す様にシクロヘキサン環に対してオキシラン環とアルキルオキシカルボニル基が同一方向に位置するものがシス体、構造式(3)に示す様に異なった方向に位置するものがトランス体を意味し、その異性体比、即ちシス体とトランス体の異性体比は、プロトン核磁気共鳴分光分析(H−NMR)の結果より求めることができる。測定は、例えば、試料を重クロロホルム溶媒等に溶解し、汎用の核磁気共鳴分光計を用いて容易に行うことができる。また、異性体比は、上記測定により得られた分析チャートの3.2ppm付近に存在するオキシラン環部位のメチン水素に帰属される2つのピークのうち、低磁場側にシフトしたピークをトランス体、低磁場側にシフトしていないピークをシス体のピークと帰属し、それぞれのピーク積分値から次式を用いて計算した。
シス体/トランス体の異性体比=[{シス体積分値/(シス体積分値+トランス体積分値)}×100]/[{トランス体積分値/(シス体積分値+トランス体積分値)×100}]
上記異性体構造は、目的に応じて、熱や化学剤によって、所期の異性体構造、即ち異性体比に異性化することもできる。
本発明に係る4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「本ジエステル」ということがある)は、前記特定の構造を有するものであれば、特にその製造方法により限定されるものではないが、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸またはその酸無水物と特定の構造の飽和脂肪族アルコールをエステル化反応し、得られた4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「本原料エステル」ということがある)を所定の条件でエポキシ化することにより、容易に得られる。また、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸またはその酸無水物をエポキシ化後、得られた4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸またはその酸無水物と特定の構造の飽和脂肪族アルコールをエステル化する方法で得ることもできる。更に、上記飽和脂肪族アルコールの種類によっては、予め炭素数1〜6程度の低級アルコールとエステル化後、上記飽和脂肪族アルコールを加えて、エステル交換反応により得る方法もある。簡便性等、実用性の観点から、エステル化後にエポキシ化する方法が最も好ましい。
即ち、本発明に係る4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルは、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸またはその酸無水物と飽和脂肪族アルコールをエステル化反応して得られた4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル中のシクロヘキセン環上の不飽和結合をエポキシ化した構造を有することを特徴とする。
[飽和脂肪族アルコール]
上記のエステル化反応又はエステル交換反応に用いられる飽和脂肪族アルコールは、炭素数8〜12の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールであり、好ましくは9〜11の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールであり、特に好ましくは、(i)炭素数9の飽和脂肪族アルコールを90%以上、より好ましくは95%以上の比率(モル比)で含む直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール、又は(ii)主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールからなり、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である飽和脂肪族アルコールである。なお、上記「主として」とは、飽和脂肪族アルコール全体に占める炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が90%以上、好ましくは95%以上を意味する。当該飽和脂肪族アルコールは、前記一般式(1)で示される4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを構成する飽和脂肪族アルキル基となる原料アルコールであり、即ち前記説明は該アルキル基の説明と同義となる。
また、前記飽和脂肪族アルコールは、該アルコール中に占める直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が、50〜99%、好ましくは55〜95%、より好ましくは60〜95%、特に好ましくは70〜95%の条件を満たしていることを特徴とする。
前記飽和脂肪族アルコールの好ましい態様の詳細としては、(i)炭素数8〜12の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールからなり、炭素数9の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が90%以上、好ましくは95%以上で、かつ直鎖状の飽和脂肪族アルコールの占める比率(モル比)が50〜99%、好ましくは55〜95%、より好ましくは60〜95%である態様、(ii)炭素数8〜12の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールからなり、主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールの混合物であり、更に、炭素数9、10、11の各アルコールの占める比率が10〜25/35〜50/30〜45となる範囲であり、かつ直鎖状の飽和脂肪族アルコール占める比率(モル比)が50〜99%、好ましくは55〜95%、より好ましくは60〜95%である態様等が推奨される。
炭素数7未満の飽和脂肪族アルコールが含まれると、十分な安定化効果が得られ難いだけでなく、耐揮発性も低下し、フォギング等の問題が生ずる可能性がある。また炭素数13を超えた飽和脂肪族アルコールが含まれると、樹脂との相溶性が悪くなり、樹脂との混合むらが生じ、その結果安定化効果にばらつきが生ずる懸念があり、いずれも好ましくない。同様に、直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率が50%未満の場合には、耐揮発性が低下する傾向にあり、直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率が99%を超えると樹脂との相溶性が悪くなり、安定化の効果にばらつきが生ずる懸念が出てくるため、いずれも好ましくない。
90%以上の炭素数9の飽和脂肪族アルコールを含み、かつ直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率が50〜99%である飽和脂肪族アルコールは、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造することができ、その製造方法で得られた飽和脂肪族アルコールをそのまま用いるか又は含有させることにより、前記の飽和脂肪族アルコールとすることができる。
前記工程(1)のヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9のアルデヒドを製造することができる。
前記工程(2)の水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9のアルデヒドを水素加圧下で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。市販品の具体例としては、シェルケミカルズ社のリネボール9などが挙げられる。
同じく、主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールからなり、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である飽和脂肪族アルコールで、直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が50〜99%である飽和脂肪族アルコールは、(1)1−オクテン、1−ノネン、1−デセンと一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9〜11のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9〜11のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造することができ、その製造方法で得られた飽和脂肪族アルコールをそのまま用いるか又は含有させることにより、前記の飽和脂肪族アルコールとすることができる。
前記工程(1)のヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9〜11のアルデヒドを製造することができる。
前記工程(2)の水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9〜11のアルデヒドを水素加圧下で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。市販品の具体例としては、シェルケミカルズ社のネオドール911などが挙げられる。
[エステル化反応]
エステル化反応とは、本ジエステルを得るためのエポキシ化反応の原料である4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(原料エステル)を得るための上記原料アルコールと4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその酸無水物とのエステル化反応を意味し、そのエステル化反応を行うに際し、該原料アルコールは、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその酸無水物1モルに対して、好ましくは2.00モル〜5.00モル、より好ましくは2.01モル〜3.00モル、特に2.02モル〜2.50モルを使用することが推奨される。
エステル化反応に触媒を使用する場合、その触媒としては、鉱酸、有機酸、ルイス酸類等が例示される。より具体的には、鉱酸として、硫酸、塩酸、燐酸等が例示され、有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が例示され、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体等が例示され、これらの1種又は2種以上を併用することが可能である。
それらの中でも、p−トルエンスルホン酸、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して、好ましくは0.01重量%〜5.0重量%、より好ましくは0.02重量%〜4.0重量%、特に0.03重量%〜3.0重量%を使用することが推奨される。
エステル化温度としては、100℃〜230℃が例示され、通常、3時間〜30時間で反応は完結する。
本エステルの原料である、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸若しくはその酸無水物は、特に制限はなく、公知の方法で製造したものや、市販品、試薬等で入手できるものなどが使用できる。例えば、市販品としてリカシッドTH(商品名,新日本理化(株))などが例示される。4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物は、通常、無水マレイン酸と1,3−ブタジエンとをディールス・アルダー反応して得られる。エステル化反応の観点から、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を使用することが推奨される。
エステル化においては、反応により生成する水の留出を促進するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの水同伴剤を使用することが可能である。
又、エステル化反応時に原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物を生成すると耐熱性、耐光性等に悪影響を与えるため、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にて反応を行うことが望ましい。エステル化反応終了後、過剰若しくは原料アルコールを減圧下または常圧下にて留去することが推奨される。
上記エステル化方法により得られた原料エステルは、引き続き、必要に応じて塩基処理(中和処理)→水洗処理、液液抽出、蒸留(減圧、脱水処理)、吸着処理等により精製してもよい。
塩基処理に用いる塩基としては、塩基性の化合物であれば特に制約はなく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが例示される。
吸着処理に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。それらを1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
上記エステル化後の精製処理は、常温で行なっても良いが、40〜90℃程度に加温して行なうこともできる。
[エポキシ化反応]
エポキシ化反応とは、本ジエステルを得るための上記原料エステル中のシクロヘキセン環上の不飽和結合のエポキシ化反応を意味し、通常、「有機合成化学、第23巻第7号、612〜619頁(1985)」等に記載されているよく知られたエポキシ化反応を用いて、容易に行うことができる。
例えば、(i)エポキシ化剤に過酢酸や過蟻酸の様な有機過酸を用いる方法や(ii)エポキシ化剤に過酸化水素を用いる方法などが挙げられる。
より具体的には、(i)の方法の場合、例えば、過酸化水素と無水酢酸または酢酸を硫酸のような強酸を触媒として反応させて得られた過酢酸を、原料エステルに加え、20〜30℃で数時間攪拌した後、徐々に温度を上げていき、50〜60℃に到達した後、2〜3時間その温度を保持して反応を完結させることができる。上記有機過酸としては、上記以外にも、モノ過フタル酸、メタクロル過安息香酸、トリフルオル過酢酸なども使うことができる。
また、(ii)の方法の場合、例えば、蟻酸などの酸素キャリアーや硫酸などの強酸触媒の共存下、本エステルに反応させることによりエポキシ化することができる。より具体的には、過酸化水素1モルに対して、酢酸または蟻酸を0.5モル以下、触媒として硫酸を0.05モル以下の少量用いて、40〜70℃で2〜15時間その温度を保持して反応させることにより、容易に本エステルをエポキシ化させることができる。上記触媒としては、上記以外にも、燐酸、塩酸、硝酸、硼酸、またはその塩などがよく知られており、また、スルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂や酸化アルミニウムなども有効である。
上記エポキシ化方法により得られた本ジエステルは、引き続き、必要に応じて必要に応じて液液抽出、減圧蒸留、吸着処理等により精製してもよい。
吸着処理に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。それらを1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
前記エポキシ化後の精製処理は、常温で行なっても良いが、40〜100℃程度に加温して行なうこともできる。
上述の方法、条件の範囲で得られたジエステルのシクロヘキサン環に対するアルキルオキシカルボニル基の異性体構造は、ほとんどの化合物がシス体であることが、プロトン核磁気共鳴分光分析の結果より確認されている。
<可塑剤としての使用>
本ジエステルは、可塑剤として好適に使用することができる。即ち、該可塑剤は、本発明に係る特定の構造を有する上記脂環式ジカルボン酸ジエステルからなることを特徴とする。好ましい態様として、プロトン核磁気共鳴分光分析で測定したシクロヘキサン環を介したオキシラン環とアルキルオキシカルボニル基の異性体比(シス体/トランス体、モル比)が5/95〜35/65である脂環式ジカルボン酸ジエステル化合物を可塑剤として使用することが推奨される。
<塩素含有樹脂用安定化剤としての使用>
本ジエステルは、塩素含有樹脂用安定化剤として好適に使用することができる。即ち、該安定化剤は、本発明に係る特定の構造を有する上記脂環式ジカルボン酸ジエステルからなることを特徴とする。好ましい態様として、プロトン核磁気共鳴分光分析で測定したオキシラン環部位の異性体比(シス体/トランス体、モル比)が5/95〜35/65である脂環式ジカルボン酸ジエステル化合物を該安定化剤として使用することが推奨される。
本発明に係るエポキシを有する特定の構造の脂環式ジカルボン酸ジエステルを含む樹脂組成物及びその成形体は、自動車アンダーボディコート、インストルメントパネル、コンソール、ドアシート、アンダーカーペット、トランクシート、ドアトリム類などの自動車装材、各種レザー類、装飾シート、農業用フィルム、食品包装用フィルム、電線被覆、各種発泡製品、ホース、医療用チューブ、食品用チューブ、冷蔵庫用ガスケット、パッキン類、壁紙、床材、ブーツ、カーテン、靴底、手袋、止水板、玩具、化粧板、血液バック、輸液バック、ターポリン、マット類、シーリング材、遮水シート、土木シート、ルーフィング、防水シート、絶縁シート、工業用テープ、ガラスフィルム、字消し等に有用である。
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や応用例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
(1)アルキル基の炭素数と直鎖状アルキル基の比率
実施例及び応用例で用いる4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル及び4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル中のアルキル基の炭素数と直鎖状アルキル基の比率は、その製造に用いた原料アルコール中の組成をガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)によって測定し、その結果を原料エステル又は本ジエステル中のアルキル基の炭素数と直鎖状アルキル基の比率とした。前記GCによる原料アルコールの測定方法は次のとおりである。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム ZB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μl
定量:安息香酸n−プロピルを内部標準物質として用い定量した。
前記内部標準物質の選定に当たっては、原料アルコール中の安息香酸n−プロピルがGCで検出限界以下であることを予め確認している。
なお、上述のエステル化反応において、本発明の範囲内では原料アルコールの構造による反応性に差異はなく、用いた原料アルコール中の組成比と原料エステル及び本ジエステル中のアルキル基の組成比に差異がないことは、予め確認している。
(2)原料エステル及びジエステルの分析
下記の実施例で得られたジエステルは次の方法で分析を行った。なお、中間原料である原料エステルに関しても、下記分析方法を適用した。
元素分析
<炭素・水素>
有機元素分析装置:商品名「CHNコーダーMT−5」、ヤナコ分析工業社製)
試料量:2mg
燃焼炉温度:970℃
酸化炉温度:850℃
還元炉温度:590℃
燃焼時ガス流量:Heガス200ml/min.
ガス20ml/min.
<酸素>
有機元素分析装置:商品名「元素分析装置JM−10」、ジェイ・サイエンス・ラボ社製)
試料量:2mg
燃焼炉温度:950℃
酸化炉温度:850℃
還元炉温度:550℃
燃焼時ガス流量:Heガス200ml/min.
ガス20ml/min.
核磁気共鳴分光分析(NMR分析)
NMR分析装置:商品名「DRX−500」、Bruker社製
溶媒:重クロロホルム(CDCl
内部標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
試料管:5mm
H−NMR・・・共鳴周波数:500.1MHz、積算回数4回
13C−NMR・・・共鳴周波数:125.8MHz、積算回数71回
なお、測定試料は、20mgの試料を0.8mlの溶媒で希釈して調整した。
赤外線分光分析(IR分析)
FT−IR装置:商品名「Spectrum One」、パーキンエルマー社製
測定範囲:650〜4000cm−1
測定方法:ATR法
積算回数:4回
分解能:4.00cm−1
なお、測定はサンプルを装置のセル上に直接滴下して分析を行った。
化学分析
エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
ヨウ素価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
オキシラン酸素:基準油脂分析試験法 2.3.7.1-2013「オキシラン酸素定量方法(その1)」に準拠して測定した。
色相:JIS K−0071(1998)に準拠して測定して、ハーゼン単位色数を求めた。
[実施例1]
エステル化反応
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた2L四ツ口フラスコに、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物182.6g(1.2モル,新日本理化(株)製:リカシッドTH)、炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコール重量85.1%と炭素数9の分岐鎖状の飽和族飽和アルコール重量11.7%を含む飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9、直鎖率(モル比)85%)416g(2.9モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.24gを加え、反応温度を200℃としてエステル化反応を実施した。減圧下アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とする4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「原料エステル1」という。)449gを得た。
得られた原料エステル1は、エステル価:262mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色相:15であった。
エポキシ化反応
次に、温度計、攪拌羽、冷却管を備えた1L四ツ口フラスコに、前記原料エステル1を423g(1.0モル)仕込み、60〜70℃に昇温した。昇温後、60%過酸化水素水76.6g(1.35モル)、76%蟻酸18.3g(0.30モル)、及び75%燐酸1.47g(0.01モル)を2.25時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、更に4時間上記温度を保持し、熟成して反応を完了した。反応終了後、水相を系外へ除去した後、常法に従って、水洗、脱水して目的とする4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「ジエステル1」という。)397gを得た。
得られたジエステル1は、透明液体であり、エステル価:256mgKOH/g、酸価:0.06mgKOH/g、ヨウ素価:2.5gI2/100g、オキシラン酸素:3.5%、色相:10であった。
得られたジエステル1に関して、元素分析、NMR分析、IR分析を行い、結果をまとめて表1に示した。
表1のH−NMR分析の結果より計算されたジエステル1のオキシラン環部位の異性体比(シス体/トランス体、モル比)は、20/80であった。
[実施例2]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりに、炭素数9/10/11の比率(モル比)が18/42/38であり、全体の直鎖率が84%である炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:ネオドール911)400g(2.5モル)を加えた以外は実施例1と同様に実施して、4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「ジエステル2」という。)404gを得た。
得られたジエステル2は、エステル価:242mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、ヨウ素価:1.9gI2/100g、オキシラン酸素:3.1%、色相:10であった。
得られたジエステル2に関して、元素分析、NMR分析、IR分析を行い、結果をまとめて表1に示した。
表1のH−NMR分析の結果より計算されたジエステル2のオキシラン環部位の異性体比(シス体/トランス体、モル比)は、20/80であった。
[応用例1]
汎用の塩化ビニル樹脂(商品名「Zest1000z」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、カルシウムステアレート(ナカライテスク(株)製)及びジンクステアレート(ナカライテスク(株)製)を各々0.3及び0.2重量部を配合し、モルタルミキサーで攪拌混合後、実施例1で得られたジエステル1又は実施例2で得られたジエステル2を50重量部加え、均一になるまで更に混合し、塩化ビニル系樹脂組成物とした。この樹脂組成物を5×12インチの二本ロールを用いて160〜166℃で4分間溶融混練しロールシートを作製し、続いて162〜168℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約1mmのプレスシートを作製した。
次に、本発明に係るジエステルの代わりに汎用のフタル酸エステルであるフタル酸ジ−2−エチルへキシル(以下、DOP)、分子構造中にエポキシ基を含まない脂環式ジカルボン酸ジエステルである1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(以下、DINCH)、本発明の範囲外の構造である4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジ−2エチルヘキシルエステル(以下、E−DEHTH)を加えて、同様に実施して、塩化ビニルシート(プレスシート)を作製した。
上記で得られた塩化ビニルシートを用いて、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行ない、本発明に係るジエステルを配合した塩化ビニルシートと本発明外のDOP、DINCH、E−DEHTHを配合した塩化ビニルシートの物性を比較した。
本発明のジエステルを配合した塩化ビニルシートは、他の可塑剤を配合した塩化ビニルシートと比較して、引張試験結果の100%モデュラスや伸びで示される柔軟性、可塑化性能が同等か、それ以上と非常に良好であり、可塑剤としての性能に優れていることが確認された。
また、耐寒性試験結果より、本発明のジエステルを配合した塩化ビニルシートの柔軟温度がE−DEHTH等の他の可塑剤を配合した塩化ビニルシートと比較して、10℃以上低く、非常に耐寒性に優れていることが確認された。
更に、耐熱性試験の結果より、本発明のジエステルを配合した塩化ビニルシートの170℃における揮発減量は、他の可塑剤を配合した塩化ビニルシートと比較して、1/4〜1/7まで低減されており、非常に耐熱性に優れていることが確認された。
同時に、上記耐熱性試験における塩化ビニルシートの着色を確認したところ、他の可塑剤を配合した塩化ビニルシートが1時間程度で著しく着色するのに対して、本発明のジエステルを配合した塩化ビニルシートはほとんど着色せず、可塑剤としての効果と同時に安定化剤としても作用していることが確認された。
[応用例2]
汎用の塩化ビニル樹脂(商品名「Zest1000z」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、実施例1で得られたジエステル1を19重量部又は実施例2で得られたジエステル2を10重量部配合し、更にカルシウム−亜鉛系複合安定剤3.0重量部を加えて、モルタルミキサーで攪拌混合して塩化ビニル系樹脂組成物とした。この樹脂組成物を5×12インチの二本ロールを用いて170〜176℃で4分間溶融混練しロールシートを作製し、続いて172〜178℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約0.5mmのプレスシートを作製した。
上記で得られた塩化ビニルシートを用いて、引張試験及び耐熱性試験を行ない、本発明のジエステルを配合した塩化ビニルシートと配合していない本発明外の塩化ビニルシートの物性を比較した。
本発明のジエステルを配合していない塩化ビニルシートが、170℃の高温下では30分程度で着色が始まり、1時間程度で著しく着色するのに対しては、本発明のジエステルを配合した塩化ビニルシートは1時間後でもほとんど着色がなく、安定化剤として有効に作用していることが確認された。
以上の結果より、本発明のジエステルが可塑剤として、また安定化剤として非常に有用であることは、明らかである。
本発明の分子構造中にエポキシ基を有する新規な脂環式ジカルボン酸ジエステルは、熱可塑性樹脂やゴム等の可塑剤として、可塑剤本来の可塑化性能は良好であり、かつ耐熱性や耐寒性に優れており、近年益々厳しくなる耐寒性や耐熱性の要求にも対応可能な可塑剤であり、又は塩素含有樹脂における安定化剤として非常に有用である。特に、本発明の脂環式ジカルボン酸ジエステルは、塩化ビニルを代表とする塩素含有樹脂において、安定化剤としての性能を併せ持つ可塑剤として、また、硬質、半硬質、更には他の可塑剤を配合した軟質材料等、様々な材料系における安定化剤として使用することができる。そのような性能を有する該脂環式ジカルボン酸ジエステルを配合した樹脂組成物及び樹脂成形体は電線被覆用途や自動車用部材用途、水道管などのパイプ類、パイプ用の継手類、雨樋などの樋類、窓枠サイディング、平板、波板、一般フィルムシート(ラミネート、包装、車両、雑貨等)用途、農業用フィルム用途、レザー用途、コンパウンド用途、床材用途、壁紙用途、履物用途、シーリング材用途、繊維用途、ホース用途、ガスケット用途、建築資材用途、塗料用途、接着剤用途、ペースト用途、医療用途などに利用することができる。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で示される4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルからなり、該ジカルボン酸ジエステルを構成するアルキル基の全量に対する直鎖状のアルキル基の比率(モル比)が70〜95%であり、
    前記アルキル基が、(i)主として炭素数9〜11のアルキル基から構成され、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である、又は(ii)ジカルボン酸ジエステルを構成するアルキル基の全量に対して90%以上(モル比)の炭素数9のアルキル基を含むものであり、かつ、
    プロトン核磁気共鳴分光分析で測定したシクロヘキサン環を介したオキシラン環とアルキルオキシカルボニル基の異性体比(シス体/トランス体、モル比)が15/85〜25/75であることを特徴とする脂環式ジカルボン酸ジエステル混合物
    (式中、R1及びR2は同一又は異なって、炭素数8〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。)
  2. 可塑剤に使用するための、請求項に記載の脂環式ジカルボン酸ジエステル混合物
  3. 塩素含有樹脂の安定化剤に使用するための、請求項に記載の脂環式ジカルボン酸ジエステル混合物
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