JP6621636B2 - マイクロチップ - Google Patents

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Description

本発明は、注入された試料溶液を試薬と反応させるマイクロチップに関する。
近年、遺伝子検査として、PCR(Polymerase Chain Reaction)法やLAMP(Loop−mediated Isothermal Amplification)法などを利用した核酸増幅装置が利用されている。そして、この核酸増幅装置を用いた遺伝子検査において、マイクロチップ内で核酸を増幅させる技術が開発された(例えば、特許文献1参照)。
このマイクロチップは、第一板状部、第二板状部及び第三板状部の三層構造となっている。第一板状部及び第三板状部はガス不透過性を有し、第二板状部は自己封止性を有する。そして、第二板状部の両面に第一板状部及び第三板状部が積層されており、第一板状部と第二板状部との間に、大気圧に対して減圧された反応空間が形成されている。反応空間は、ニードルにより試料溶液が穿刺注入される注入空間と、核酸を増幅させる試薬が封入された複数の試薬封入空間と、注入空間と各反応空間とを連通する流路と、に分けられる。
そして、試料溶液を注入するニードル(中空針)を第二板状部に穿刺すると、試料溶液は、反応空間の陰圧により、ニードルから注入空間に導入され、更に流路を通って各反応空間に導入される。そして、試料溶液に含まれる核酸は、各反応空間において試薬と混合し、昇温された所定の温度でインキュベーションすることにより増幅する。
特許第5218443号
このようなマイクロチップでは、第二板状部に穿刺したニードルがぶれると、ニードルと第二板状部との間に隙間が生じ、この隙間から空気が注入空間に流れ込む可能性がある。また、ニードルの穿刺により形成される穿刺穴からクラックが伸長し、この伸長したクラックから空気が注入空間に流れ込む可能性もある。試料溶液は、陰圧により流路を通じて反応空間に導入される。このため、このような隙間やクラックから注入空間に空気が流入すると、試料溶液が反応空間に行き渡らず、核酸増幅反応に支障が生じる。このような問題は、第二板状部が薄くなるほど発生しやすくなるため、第二板状部はできるだけ厚い方が好ましい。
一方、マイクロチップが厚くなるほど、加熱又は冷却した際の応答性が悪くなるとともに、全体的に均一な熱分布が得られ難くなる。また、各試薬封入空間の昇温速度が異なると、各試薬封入空間における核酸の増幅速度も異なる。このため、マイクロチップが厚すぎると、高精度の検査を行うことが難しくなる。
そこで、マイクロチップ全体の厚さを抑制しつつ、第二板状部を厚くすることで、熱分布が不均一になるのを抑制し、空気が流入するのを抑制することが考えられる。しかしながら、従来のマイクロチップでは、第二板状部の両面に第一板状部及び第三板状部が積層された三層構造であるため、マイクロチップ全体の厚さを抑制しつつ、第二板状部を厚くするのには限界がある。
そこで、本発明は、熱分布が不均一になるのを抑制しつつ、ニードルの穿刺により空気が流入するのを抑制することができるマイクロチップを提供することを目的とする。
本発明に係るマイクロチップは、大気圧に対して減圧された反応空間が形成されたチップ本体を備えるマイクロチップであって、チップ本体は、ガス不透過性を有する第一板状部と、第一板状部の一方の面に積層されて自己封止性を有する第二板状部と、の二層構造であり、反応空間は、第一板状部と第二板状部との間に形成される。
本発明に係るマイクロチップでは、チップ本体が第一板状部と第二板状部との二層構造であるため、チップ本体が三層構造である従来のマイクロチップに比べて、マイクロチップ全体の厚さを抑制しつつ、第二板状部を厚くすることができる。これにより、第二板状部によるニードルの押え付け力が大きくなるため、第二板状部に穿刺したニードルのぶれが抑制される。このため、熱分布が不均一になるのを抑制しつつ、ニードルの穿刺により空気が流入するのを抑制することができる。
本発明に係るマイクロチップにおいて、第二板状部の第一板状部とは反対側の面に貼り付けられる補強フィルムと、を備えてもよい。このマイクロチップでは、第二板状部の第一板状部とは反対側の面に補強フィルムが貼り付けられるため、補強フィルムが貼り付けられた位置では、第二板状部の変形が抑制される。これにより、第二板状部に穿刺されたニードルのぶれを抑制することができ、また、穿刺穴からクラックが伸長するのを抑制することができる。これにより、ニードルの穿刺により空気が流入するのを更に抑制することができる。
本発明に係るマイクロチップにおいて、反応空間は、試料溶液が穿刺注入される注入空間を有しており、補強フィルムは、注入空間と対向する位置に貼り付けられてもよい。このマイクロチップでは、補強フィルムが注入空間と対向する位置に貼り付けられるため、ニードルを穿刺する際に、反応空間に空気が流入するのを効率的に抑制することができる。
本発明に係るマイクロチップにおいて、第一板状部と第二板状部との間には、反応空間から独立した確認空間が形成されており、補強フィルムは、確認空間と対向する位置に貼り付けられていてもよい。このマイクロチップでは、補強フィルムが確認空間と対向する位置に貼り付けられるため、確認空間にニードルの挿入する際に、確認空間に空気が流入するのを効率的に抑制することができる。
本発明に係るマイクロチップにおいて、補強フィルムは、注入空間と対向する位置と確認空間と対向する位置とに一体的に貼り付けられていてもよい。このマイクロチップでは、補強フィルムが注入空間と対向する位置と確認空間と対向する位置とに一体的に貼り付けられるため、両位置に補強フィルムを貼り付ける際の作業性が向上する。
本発明に係るマイクロチップにおいて、補強フィルムは、第二板状部の第一板状部とは反対側の面の全面に貼り付けられていてもよい。このマイクロチップでは、補強フィルムが第二板状部の第一板状部とは反対側の面の全面に貼り付けられるため、第二板状部側から反応空間及び確認空間に空気が透過するのを抑制することができる。しかも、補強フィルムは、第二板状部の反応空間及び確認空間とは対向しない余剰位置にも貼り付けられるため、補強フィルムのうち、当該余剰位置に貼り付けられる部分に、マイクロチップの識別情報等を示す文字や符号を印字することができる。これにより、別途マイクロチップにラベルを貼り付ける作業を削減することができる。
本発明に係るマイクロチップにおいて、補強フィルムは、第二板状部の第一板状部とは反対側の面の50%以上に貼り付けられていてもよい。このマイクロチップでは、補強フィルムが第二板状部の第一板状部とは反対側の面の50%以上に貼り付けられるため、第二板状部側から反応空間に空気が透過するのを効果的に抑制することができる。しかも、補強フィルムは、第二板状部の反応空間及び確認空間とは対向しない余剰位置にも貼り付けられるため、補強フィルムのうち、当該余剰位置に貼り付けられる部分に、マイクロチップの識別情報等を示す文字や符号を印字することができる。これにより、別途マイクロチップにラベルを貼り付ける作業を削減することができる。
本発明に係るマイクロチップにおいて、補強フィルムは、基材と、基材を第二板状部に貼り付ける粘着部と、を備え、基材の素材は、ポリウレタン又はポリエステルであり、基材の厚さは、10μm以上30μm以下であってもよい。このマイクロチップでは、補強フィルムを構成する基材の素材及び厚さを上記とすることで、高い伸縮性が得られる。このため、第二板状部に生じた穿刺穴が広がるのを抑制することができるとともに、穿刺穴からクラックが伸長するのを抑制することができる。
本発明に係るマイクロチップにおいて、補強フィルムは、基材と、基材を第二板状部に貼り付ける粘着部と、を備え、基材の素材は、ポリプロピレン又はポリエステルであり、基材の厚さは、20μm以上100μm以下であってもよい。このマイクロチップでは、補強フィルムを構成する基材の素材及び厚さを上記とすることで、適切な剛性が得られる。これにより、第二板状部に貼り付ける作業性が向上する。更には、第二板状部に生じた穿刺穴が広がるのを抑制することができるとともに、穿刺穴からクラックが伸長するのを抑制することができる。
本発明に係るマイクロチップにおいて、補強フィルムは、第二板状部側が暗色に着色された着色層を有してもよい。このマイクロチップでは、補強フィルムに着色層が形成されることで、核酸の増幅を検出する際の迷光を抑制することができる。
本発明によれば、熱分布が不均一になるのを抑制しつつ、ニードルの穿刺により空気が流入するのを抑制することができる。
第1実施形態のマイクロチップを示す平面図である。 図1に示すII−II線における概略断面図である。 図1に示すIII−III線における概略断面図である。 確認空間に試料溶液を穿刺注入している状態を示す概略断面図である。 反応空間に試料溶液を穿刺注入している状態を示す概略断面図である。 比較例のマイクロチップにおいてニードルを穿刺している状態を示す概略断面図である。 第1実施形態のマイクロチップにおいてニードルを穿刺している状態を示す概略断面図である。 第2実施形態のマイクロチップを示す平面図である。 図8に示すIX−IX線における概略断面図である。 補強フィルムの概略断面図である。 反応空間に試料溶液を穿刺注入している状態を示す概略断面図である。 第2実施形態のマイクロチップにおいてニードルを穿刺している状態を示す概略断面図である。 第3実施形態のマイクロチップを示す平面図である。 第4実施形態のマイクロチップを示す平面図である。 補強フィルムの構成を示す概略断面図である。 補強フィルムの第二板状部側を示す底面図である。 補強フィルムの第二板状部側を示す底面図である。
以下、図面を参照して、本発明に係るマイクロチップの実施形態を説明する。実施形態に係るマイクロチップは、核酸を増幅して遺伝子検査を行うために、ニードル(中空針)により核酸を含む試料溶液が穿刺注入されるマイクロチップである。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のマイクロチップを示す平面図である。図2は、図1に示すII−II線における概略断面図である。図3は、図1に示すIII−III線における概略断面図である。図1〜図3に示すように、本実施形態のマイクロチップ1は、透明なチップ本体2に、互いに独立した反応空間3及び確認空間4が形成されている。本実施形態において透明とは、完全な透明の他に、光透過性を有する程度の半透明も含む意味である。
反応空間3は、マイクロチップ1の内部に形成された密閉空間である。反応空間3は、大気圧に対して減圧されており、例えば、1/100気圧以下とすることができる。反応空間3には、注入される試料溶液と反応させるための試薬5が封入されている。本実施形態では、試薬5として、試料溶液に含まれる核酸に対応する試薬を用いる。
反応空間3は、注入空間3aと、複数の試薬封入空間3bと、流路3cと、を有する。
注入空間3aは、試料溶液が穿刺注入される空間であり、セル、またはウェルとも呼ばれる。注入空間3aの空間形状は、特に限定されないが、例えば、略円柱状の空間とすることができる。
試薬封入空間3bは、試薬5が封入された空間であり、セル、またはウェルとも呼ばれる。試薬封入空間3bの数及び配置は、特に限定されないが、例えば、縦方向(図1における上下方向)に5列、横方向(図1における左右方向)に5列の、合計25個とすることができる。試薬封入空間3bが複数である場合、各試薬封入空間3bに、それぞれ異なる核酸を増幅反応させる試薬を封入することが好ましい。これにより、注入空間3aに穿刺注入した試料溶液に含まれる核酸に対応する試薬5が封入された試薬封入空間3bにおいてのみ、核酸を増幅反応させることができる。試薬封入空間3bの空間形状は、特に限定されないが、例えば、略円柱状の空間とすることができる。
流路3cは、注入空間3aと各試薬封入空間3bとを連通する流路であり、ルート、またはチャンネルとも呼ばれる。具体的に説明すると、注入空間3aから一本の流路3cが延び、注入空間3aから試薬封入空間3bに至る途中で流路3cが試薬封入空間3bの個数に分岐し、分岐した各流路3cが各試薬封入空間3bに接続される。流路3cの断面形状は、特に限定されないが、例えば、半円形とすることができる。
確認空間4は、マイクロチップ1の内部に形成された密閉空間である。確認空間4は、大気圧に対して減圧されており、例えば、1/100気圧以下とすることができる。確認空間4には、試料溶液が混ざると変色する変色剤6が封入されている。確認空間4は、変色剤6が封入された空間であり、セル、またはウェルとも呼ばれる。確認空間4の空間形状は、特に限定されないが、例えば、略円柱状の空間とすることができる。
チップ本体2は、薄い略矩形板状に形成されている。チップ本体2は、第一板状部7と、第一板状部7の一方の面に積層された第二板状部8と、の二層構造である。第一板状部7と第二板状部8とは、互いに重ね合わされた状態で接合されている。
第一板状部7は、薄い略矩形板状に形成されている。第一板状部7の第二板状部8側の面には、反応空間用凹部7aと、確認空間用凹部7bと、が形成されている。反応空間用凹部7aは、反応空間3を形成するための凹部である。反応空間用凹部7aの形状は、注入空間3a、複数の試薬封入空間3b及び流路3cのそれぞれの形状に対応する。確認空間用凹部7bは、確認空間4を形成するための凹部である。確認空間用凹部7bの形状は、確認空間4の形状に対応する。
第一板状部7は、ガス不透過性を有する。第一板状部7の素材としては、特に限定されないが、ガス不透過性を有するガラス、合成樹脂などを用いることができる。合成樹脂としては、PMMA(ポリメチルメタアクリレート:アクリル樹脂)、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、COPもしくはCOC(環状ポリオレフィン)等が挙げられる。
第二板状部8は、薄い略矩形板状に形成されている。第二板状部8は、少なくとも反応空間用凹部7a及び確認空間用凹部7bを覆っている。この場合、第二板状部8は、第一板状部7の全面を覆うことが好ましい。第二板状部8は、反応空間用凹部7aを覆うことで、第一板状部7との間に反応空間3の注入空間3a、複数の試薬封入空間3b及び流路3cを形成する。また、第二板状部8は、確認空間用凹部7bを覆うことで、第一板状部7との間に確認空間4を形成する。
第二板状部8は、自己封止性を有する。自己封止性とは、穿刺等により穴が開けられても、自己の弾性変形による復元力により、この穴が自然に封止される性質をいう。第二板状部8に用いる弾性素材としては、シリコーン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー等を挙げることができる。第二板状部は、更に、ガス透過性を有することが好ましく、自己封止性及びガス透過性を有する弾性素材であるPDMS(ポリジメチルシロキサン)を採用することができる。
このように構成されるマイクロチップ1は、次のように製造できる。まず、第一板状部7の第二板状部8と接合される側の面にSiO2、Al2O3、TiOなどの透明誘電体膜をコーティングする。透明誘電体膜のコーティングは、例えば、スパッタリング又は真空蒸着により行うことができる。次に、反応空間用凹部7aの試薬封入空間3bに対応する凹部に試薬5を滴下するとともに、確認空間用凹部7bに変色剤6を滴下し、試薬5及び変色剤6を真空凍結乾燥する。次に、第一板状部7の第二板状部8と接合される側の面と、第二板状部8の第一板状部7と接合される側の面とを、プラズマ洗浄する。次に、減圧雰囲気下(大気圧に対して減圧された状態)において、第一板状部7と第二板状部8とを重ね合せる。これにより、第一板状部7と第二板状部8とが接合されるとともに、第一板状部7と第二板状部8との間に、大気圧に対して減圧された反応空間3及び確認空間4が形成される。なお、反応空間3及び確認空間4は、略同じ気圧となる。
次に、マイクロチップ1を用いた遺伝子検査の方法について説明する。
この遺伝子検査では、確認空間4に試料溶液を穿刺注入する確認工程(S1)を経た後に、反応空間3に試料溶液を穿刺注入する反応工程(S2)を行う。
図4は、確認空間に試料溶液を穿刺注入している状態を示す概略断面図である。図4に示すように、確認工程(S1)では、試料溶液が充填された容器(不図示)に接続されたニードルNを用いて、試料溶液を確認空間4に穿刺注入する。具体的に説明すると、ニードルNを、第二板状部8に穿刺し、ニードルNの先端部分を確認空間4に挿入する。
すると、確認空間4の減圧状態が十分に保持されている場合、試料溶液は、確認空間4の陰圧により、ニードルNから確認空間4に吸引されて、確認空間4全体に行き渡る。そして、変色剤6は、試料溶液と混合されて、変色する。このため、使用済みのマイクロチップ1では、確認空間4における変色剤6が変色した状態となっている。一方、確認空間4の減圧状態が十分に保持されていない場合、確認空間4の陰圧が弱くなっているため、試料溶液を確認空間4に吸引する力が弱くなる。このため、試料溶液が確認空間4に吸入されないで変色剤6が変色しないか、吸入されたとしても変色剤6と十分混合されず変色むらが生じる。また、ニードルNの管内に空気が残っていた場合、ニードルNの先端部を確認空間4に挿入することで、この空気も試料溶液と一緒に確認空間4に吸引される。これにより、ニードルNから空気が排出される。
図5は、反応空間に試料溶液を穿刺注入している状態を示す概略断面図である。図5に示すように、反応工程(S2)では、確認工程(S1)と同じニードルNを用いて、試料溶液を注入空間3aに穿刺注入する。具体的に説明すると、ニードルNを、第二板状部8に穿刺し、ニードルNの先端部分を注入空間3aに挿入する。
すると、反応空間3の減圧状態が十分に保持されている場合、試料溶液は、反応空間3の陰圧により、ニードルNから注入空間3aに吸引されて、注入空間3aから流路3cを伝って全ての試薬封入空間3bに行き渡る。そして、試薬5は、各試薬封入空間3bにおいて、試料溶液と混合される。その後所定の温度でインキュベーションすることにより核酸が増幅する。
その後、各試薬封入空間3bで増幅生成物の有無を検出する。例えば、予め試薬に増幅生成物と特異的に結合する蛍光標識プローブを含有させておき、反射法又は透過法等により各試薬封入空間3bに励起光を照射することで増幅生成物を検出する。反射法は、各試薬封入空間3bに励起光を照射するとともに、マイクロチップ1に対して光源と同じ側に位置する検出部で蛍光を検出することにより、増幅生成物を検出する方法である。透過法は、各試薬封入空間3bに励起光を照射するとともに、マイクロチップ1に対して光源と反対側に位置する検出部で蛍光を検出することにより、増幅生成物を検出する方法である。
また、増幅反応後だけではなく、増幅反応を経時的に観察して増幅生成物を検出することも可能である。さらに各試薬封入空間3bに封入するプライマーセットを異なったものにすることで、多項目の核酸増幅反応を実施することも可能である。
ここで、チップ本体が三層構造となる比較例のマイクロチップとの比較において、本実施形態のマイクロチップ1の作用を説明する。図6は、比較例のマイクロチップにおいてニードルを穿刺している状態を示す概略断面図である。図7は、実施形態のマイクロチップにおいてニードルを穿刺している状態を示す概略断面図である。なお、図6及び図7では、ニードルNを第二板状部8に穿刺して、ニードルNの先端部分を反応空間3の注入空間3aに挿入する状態を示している。
図6に示すように、比較例のマイクロチップ100は、チップ本体が三層構造であることを除き、本実施形態のマイクロチップ1と同様である。詳しく説明すると、比較例のマイクロチップ100では、チップ本体102が、第一板状部7、第二板状部8及び第三板状部109と、の三層構造である。
第三板状部109は、薄い略矩形板状に形成されている。第三板状部109は、第二板状部8の第一板状部7とは反対側に重ね合わされて、第一板状部7と対向している。第三板状部109は、第一板状部7と同様に、ガス不透過性を有する。第三板状部109の素材は、第一板状部7と同じ素材を用いることができる。第三板状部109には、注入空間3a及び確認空間4のそれぞれに対応する位置に、ニードルNを貫通させる貫通穴109aが形成されている。
このように構成されるマイクロチップ100では、チップ本体102が第一板状部7、第二板状部8及び第三板状部109と、の三層構造であるため、全体の厚さが一定である場合、第三板状部109の厚さの分だけ、第二板状部8を薄くする必要がある。例えば、マイクロチップ100全体の厚さを4.0mmとすると、第一板状部7の厚さが2.1mm、第二板状部8の厚さが1.4mm、第三板状部109の厚さが0.5mmとなる。
第二板状部8が薄くなると、第二板状部8がニードルNを押え付ける力が弱くなるため、第二板状部8に穿刺したニードルNがぶれやすくなる。これにより、ニードルNと第二板状部8との間に隙間Gが生じ、この隙間Gから空気が反応空間に流れ込む可能性がある。また、ニードルNの穿刺により形成される穿刺穴Hからクラックが伸長し、この伸長したクラックから空気が反応空間に流れ込む可能性もある。
これに対し、本実施形態のマイクロチップ1では、チップ本体2が第一板状部7及び第二板状部8の二層構造である。このため、全体の厚さが一定である場合、比較例のマイクロチップ100に比べて、第二板状部8を厚くすることができる。例えば、マイクロチップ1全体の厚さを4.0mmとすると、第一板状部7の厚さが2.1mm、第二板状部8の厚さが1.9mmとなり、比較例のマイクロチップ100に比べて、第二板状部8の厚さを0.5mm大きくすることができる。
このため、図7に示すように、比較例のマイクロチップ100に比べて、第二板状部8がニードルNを押え付ける力が強くなるため、第二板状部に穿刺したニードルのぶれが抑制される。これにより、ニードルNと第二板状部8との間に隙間が生じるのを抑制することができるとともに、ニードルNの穿刺により形成される穿刺穴Hからクラックが伸長するのも抑制することができる。
このように、本実施形態のマイクロチップ1では、チップ本体2が第一板状部7と第二板状部8との二層構造であるため、チップ本体2が三層構造である比較例のマイクロチップ100に比べて、マイクロチップ1全体の厚さを抑制しつつ、第二板状部8を厚くすることができる。これにより、第二板状部8によるニードルNの押え付け力が大きくなるため、第二板状部8に穿刺したニードルNのぶれが抑制される。このため、熱分布が不均一になるのを抑制しつつ、ニードルNの穿刺により空気が流入するのを抑制することができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、基本的に第1実施形態と同様であり、チップ本体に補強フィルムが貼り付けられる点のみ第1実施形態と相違する。このため、以下では、第1実施形態と相違する事項のみを説明し、第1実施形態と同様の事項の説明を省略する。
図8は、第2実施形態のマイクロチップを示す平面図である。図9は、図8に示すIX−IX線における概略断面図である。図8及び図9に示すように、第2実施形態のマイクロチップ1Aは、チップ本体2と、補強フィルム10Aと、を備える。
補強フィルム10Aは、第二板状部8の第一板状部7とは反対側の面8aに貼り付けられる。補強フィルム10Aは、薄いフィルム状又はテープ状に形成された、透明性を有する樹脂部材である。
補強フィルム10Aは、第二板状部8の面8aを補強して、第二板状部8の面8aの変形を抑制する(形状維持を図る)。具体的に説明すると、第二板状部8において、第二板状部8に穿刺されたニードルNのぶれは、面8aが最も大きくなる。そこで、補強フィルム10Aは、第二板状部8に穿刺されたニードルNのぶれが最も大きくなる面8aにおいて、ニードルNを半径方向内側に向けて押え付けることで、ニードルNのぶれを抑制する。このため、補強フィルム10Aは、伸縮性に優れたフィルムや、形状保持性に優れたフィルムであることが好ましい。
図10は、補強フィルムの概略断面図である。図8〜図10に示すように、補強フィルム10Aは、補強フィルム10Aの本体を成す基材10aと、第二板状部8に貼り付けられる粘着部10bと、を備える。基材10a及び粘着部10bの素材及び厚さは、例えば、以下の第一条件及び第二条件とすることができる。但し、基材10a及び粘着部10bの素材及び厚さは、以下の条件に限定されるものではない。
第一条件は、基材10aの素材を、ポリウレタン又はポリエステル(PET)とし、粘着部10bの素材を、アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤とする。また、基材10aの厚さを、10μm以上30μm以下とし、粘着部10bの厚さを、20μm以上120μm以下とする。基材10a及び粘着部10bの素材及び厚さを第一条件とすることで、伸縮性に優れた補強フィルム10Aが得られる。
第二条件は、基材10aの素材を、ポリプロピレン又はポリエステル(PET)とし、粘着部10bの素材を、シリコーン系粘着剤とする。また、基材10aの厚さを、20μm以上100μm以下とし、粘着部10bの厚さを、20μm以上100μm以下とする。基材10a及び粘着部10bの素材及び厚さを第二条件とすることで、形状保持性に優れた補強フィルム10Aが得られる。
補強フィルム10Aは、第二板状部8の面8aのうち、注入空間3aと対向する位置と、確認空間4と対向する位置と、にそれぞれに貼り付けられる。つまり、補強フィルム10Aは、ニードルNが穿刺される位置に貼り付けられる。補強フィルム10Aは、それぞれ注入空間3a及び確認空間4と対向する位置を囲む円形に形成されることが好ましいが、その形状は特に限定されるものではない。
次に、図11及び図12を参照して、マイクロチップ1Aを用いた遺伝子検査の方法について説明する。図11は、反応空間に試料溶液を穿刺注入している状態を示す概略断面図である。図12は、第2実施形態のマイクロチップにおいてニードルを穿刺している状態を示す概略断面図である。なお、図11及び図12では、ニードルNを第二板状部8に穿刺して、ニードルNの先端部分を反応空間3の注入空間3aに挿入する状態を示している。
本実施形態では、第1実施形態と同様に、確認工程(S1)及び反応工程(S2)を行う。これらの各工程では、図11に示すように、ニードルNを第二板状部8の補強フィルム10Aが貼り付けられた位置に穿刺して、ニードルNの先端部分を注入空間3a又は確認空間4に挿入する。
このとき、図12に示すように、ニードルNは、第二板状部8により押え付けられ、更に、補強フィルム10Aによっても押え付けられる。しかも、穿刺穴Hの周囲は、第二板状部8の面8aに補強フィルム10Aが貼り付けられているため、穿刺穴Hからクラックが伸長するのも抑制される。
そして、注入空間3aから吸引された試料溶液が各試薬封入空間3bにおいて試薬5と混合され、所定の温度でインキュベーションすることにより核酸が増幅する。
このように、本実施形態のマイクロチップ1Aでは、第二板状部8の面8aに補強フィルム10Aが貼り付けられるため、補強フィルム10Aが貼り付けられた位置では、第二板状部8の変形が抑制される。これにより、第二板状部8に穿刺されたニードルNのぶれを抑制することができ、また、穿刺穴Hからクラックが伸長するのを抑制することができる。これにより、ニードルNの穿刺により空気が流入するのを更に抑制することができる。
また、このマイクロチップ1Aでは、補強フィルム10Aが注入空間3aと対向する位置及び確認空間4と対向する位置のそれぞれに貼り付けられるため、ニードルを穿刺する際に、反応空間3及び確認空間4に空気が流入するのを効率的に抑制することができる。
また、このマイクロチップ1Aでは、補強フィルム10Aの素材及び厚さを第一条件とすることで、高い伸縮性が得られる。このため、第二板状部8に生じた穿刺穴が広がるのを抑制することができるとともに、穿刺穴からクラックが伸長するのを抑制することができる。
また、このマイクロチップ1Aでは、補強フィルム10Aの素材及び厚さを第二条件とすることで、適切な剛性が得られる。このため、第二板状部に貼り付ける作業性が向上する。更には、第二板状部に生じた穿刺穴が広がるのを抑制することができるとともに、穿刺穴からクラックが伸長するのを抑制することができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、基本的に第2実施形態と同様であり、補強フィルムの形状のみ第2実施形態と相違する。このため、以下では、第2実施形態と相違する事項のみを説明し、第2実施形態と同様の事項の説明を省略する。
図13は、第3実施形態のマイクロチップを示す平面図である。図13に示すように、第3実施形態のマイクロチップ1Bは、チップ本体2と、補強フィルム10Bと、を備える。
補強フィルム10Bは、第二板状部8の面8aのうち、注入空間3aと対向する位置と確認空間4と対向する位置とに一体的に貼り付けられる。つまり、マイクロチップ1Bでは、一枚の補強フィルム10Bが、注入空間3aと対向する位置と確認空間4と対向する位置とを覆うように、第二板状部8の面8aに貼り付けられている。補強フィルム10Bは、注入空間3a及び確認空間4と対向する位置を囲む矩形又は楕円形に形成されることが好ましいが、その形状は特に限定されるものではない。補強フィルム10Bの構成、素材及び厚さは、第2実施形態の補強フィルム10Aと同様である。
このように、第3実施形態のマイクロチップ1Bでは、補強フィルム10Bが注入空間3aと対向する位置と確認空間4と対向する位置とに一体的に貼り付けられるため、両位置に補強フィルム10Bを貼り付ける際の作業性が向上する。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態は、基本的に第2実施形態と同様であり、補強フィルムの形状のみ第2実施形態と相違する。このため、以下では、第2実施形態と相違する事項のみを説明し、第2実施形態と同様の事項の説明を省略する。
図14は、第4実施形態のマイクロチップを示す平面図である。図14に示すように、第4実施形態のマイクロチップ1Cは、チップ本体2と、補強フィルム10Cと、を備える。
補強フィルム10Cは、第二板状部8の面8aの全面に貼り付けられる。つまり、補強フィルム10Cは、第二板状部8の面8aのうち、反応空間3(注入空間3a、試薬封入空間3b、流路3c)及び確認空間4と対向する位置の他に、反応空間3及び確認空間4とは対向しない余剰位置にも貼り付けられる。なお、補強フィルム10Cは、第二板状部8の面8aの全面に貼り付けられていなくてもよく、第二板状部8の面8aの50%以上、更には75%以上の領域に貼り付けられていればよい。補強フィルム10Cの構成、素材及び厚さは、第2実施形態の補強フィルム10Aと同様である。
補強フィルム10Cには、マイクロチップ1Cの識別情報等を示す文字や符号Lを印字することができる。文字や符号Lは、反応空間3及び確認空間4とは対向しない余剰位置に印字されることが好ましいが、反応空間3及び確認空間4と対向する位置に印字されていてもよい。また、文字や符号Lは、補強フィルム10Cの何れの位置に印字されていてもよく、補強フィルム10Cの全体に印字されていてもよい。
また、増幅生成物を検出する際の迷光を抑制する観点から、図15に示すように、補強フィルム10Cは、第二板状部8側が黒色等の暗色に着色された着色層11を有することが好ましい。
そして、核酸の増幅の検出に反射法を用いる場合、図16に示すように、着色層は、第二板状部8側の全面において黒色等の暗色に着色されていることが好ましい。これにより、各試薬封入空間3bに照射する光の迷光を抑制することができるため、検出精度を高めることができる。この場合、補強フィルム10Cの第二板状部8とは反対側の面の全面又は一部に、文字や符号Lを印字してもよい。
一方、核酸の増幅の検出に透過法用いる場合、図17に示すように、塗りつぶす着色層は、第二板状部8側の面のうち、試薬封入空間3bと対向しない位置のみ黒色等の暗色に着色されていることが好ましい。なお、試薬封入空間3bと対向する位置は透明である。これにより、各試薬封入空間3bに照射した光を透過させることができるとともに、各試薬封入空間3bに照射する光の迷光を抑制することができるため、検出精度を高めることができる。この場合、補強フィルム10Cにおける、黒色等の暗色に着色した部分の第二板状部8とは反対側の面の全面又は一部に、文字や符号Lを印字してもよい。
このように、本実施形態のマイクロチップ1Cでは、補強フィルム10Cが第二板状部8の面8aの全面、又は面8aの50%以上に貼り付けられるため、第二板状部8側から反応空間3及び確認空間4に空気が透過するのを抑制することができる。しかも、補強フィルム10Cは、第二板状部8の反応空間3及び確認空間4とは対向しない余剰位置にも貼り付けられるため、補強フィルム10Cのうち、当該余剰位置に貼り付けられる部分に、文字や符号Lを印字することができる。これにより、別途マイクロチップ1Cにラベルを貼り付ける作業を削減することができる。
また、このマイクロチップ1Cでは、補強フィルム10Cに着色層11が形成されることで、核酸の増幅を検出する際の迷光を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではない。例えば、核酸を増幅させる遺伝子検査以外の検査に用いるマイクロチップに適用してもよく、また、チップ本体も適宜構成を変更してもよい。また、チップ本体に確認空間が形成されていなくてもよい。
1,1A,1B,1C…マイクロチップ、2…チップ本体、3…反応空間、3a…注入空間、3b…試薬封入空間、3c…流路、4…確認空間、5…試薬、6…変色剤、7…第一板状部、7a…反応空間用凹部、7b…確認空間用凹部、8…第二板状部、8a…面、10A,10B,10C…補強フィルム、10a…基材、10b…粘着部、100…マイクロチップ、102…チップ本体、109…第三板状部、109a…貫通穴、G…隙間、H…穿刺穴、L…文字や符号、N…ニードル。

Claims (8)

  1. 大気圧に対して減圧された反応空間が形成されたチップ本体を備えるマイクロチップであって、
    前記チップ本体は、ガス不透過性を有する第一板状部と、前記第一板状部の一方の面に積層されて自己封止性を有する第二板状部と、の二層構造であり、
    前記反応空間は、前記第一板状部と前記第二板状部との間に形成され
    前記第二板状部の前記第一板状部とは反対側の面に貼り付けられる補強フィルムを備え、
    前記反応空間は、試料溶液が穿刺注入される注入空間を有しており、
    前記補強フィルムは、前記注入空間と対向する位置に貼り付けられる、
    マイクロチップ。
  2. 前記第一板状部と前記第二板状部との間には、前記反応空間から独立した確認空間が形成されており、
    前記補強フィルムは、前記確認空間と対向する位置に貼り付けられる、
    請求項に記載のマイクロチップ。
  3. 前記補強フィルムは、前記注入空間と対向する位置と前記確認空間と対向する位置とに一体的に貼り付けられる、
    請求項に記載のマイクロチップ。
  4. 前記補強フィルムは、前記第二板状部の前記第一板状部とは反対側の面の全面に貼り付けられる、
    請求項の何れか一項に記載のマイクロチップ。
  5. 前記補強フィルムは、前記第二板状部の前記第一板状部とは反対側の面の50%以上に貼り付けられる、
    請求項の何れか一項に記載のマイクロチップ。
  6. 前記補強フィルムは、基材と、前記基材を前記第二板状部に貼り付ける粘着部と、を備え、
    前記基材の素材は、ポリウレタン又はポリエステルであり、
    前記基材の厚さは、10μm以上30μm以下である、
    請求項の何れか一項に記載のマイクロチップ。
  7. 前記補強フィルムは、基材と、前記基材を前記第二板状部に貼り付ける粘着部と、を備え、
    前記基材の素材は、ポリプロピレン又はポリエステルであり、
    前記基材の厚さは、20μm以上100μm以下である、
    請求項1〜の何れか一項に記載のマイクロチップ。
  8. 前記補強フィルムは、前記第二板状部側が暗色に着色された着色層を有する、
    請求項の何れか一項に記載のマイクロチップ。

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