以下に示す実施形態では、モータが搭載された車両電気アクチュエータを用いて説明するが、モータが搭載される車両の電気アクチュエータに制限するものではない。また、以下に示す実施形態では、駆動源としてモータを用いた例について説明するが、モータに制限するものではなく、他の駆動源であっても良い。
以下に、駆動源制御装置の一例として、モータを駆動制御するためのモータ制御装置について説明する。図1は、実施形態のモータ制御装置の全体構成を示した図である。
図1に示されるように、本実施形態は、回転軸180を、複数のモータ(例えば、モータ101A及びモータ101B)で駆動させる例とする。このために本実施形態の駆動源制御装置では、複数のモータの各々について、当該モータを制御するための構成を設けている。本実施形態では、モータ毎に設けられた構成を、系列(例えば第1系列100A及び第2系列100B)と称する。
図1に示される第1系列100A及び第2系列100Bは、共通する電源から電力が供給されている例とする。このため、当該電源から供給される電圧等の変化は、第1系列100A及び第2系列100Bに対してほぼ同時に影響を与える可能性がある。
第1系列100Aは、モータ101Aと、PIG平滑コンデンサプリチャージ回路102Aと、チョークコイル103Aと、ハイサイドスイッチ104Aと、逆接防止スイッチ105Aと、過電流検知用抵抗106Aと、過電流検知回路107Aと、ハイサイドスイッチプリドライバ108Aと、逆接防止スイッチプリドライバ109Aと、平滑コンデンサ110Aと、Hブリッジプリドライバ120Aと、マイコン130Aと、3相Hブリッジ回路150Aと、が設けられている。
3相Hブリッジ回路150Aは、U相と、V相と、W相と、を示す接続線が並列に接続され、駆動源となるモータ101Aを駆動させる。3相Hブリッジ回路150Aは、電圧(BPIG)が供給される電源と、グラウンドGNDと、に接続されている。
モータ101Aは、3相Hブリッジ回路150Aからの制御に従って、回転駆動を行う。また、モータ101Aは、発電機として動作し、電力(PIG)を供給する電源に対して充電する回生制御を実現できる。
そして、3相Hブリッジ回路150Aは、U相に、Huスイッチングデバイス151Aと、Luスイッチングデバイス152Aと、が直列に接続されている。そして、U相のHuスイッチングデバイス151A、及びLuスイッチングデバイス152Aの間の中間位置となる接続点から、第1の分割抵抗153Aを介して、Hブリッジプリドライバ120Aに接続されている。これにより、Hブリッジプリドライバ120Aは、U相の中間位置における電圧値を取得できる。
また、U相の上流側(中間位置を基準にグラウンドと反対側)の端部と中間位置となる接続点とに接続され、Huスイッチングデバイス151Aと並列に、第1のプルアップ抵抗154Aが設けられている。
本実施形態では、U相のみならず、3相Hブリッジ回路150Aの相毎に、直列に配置された複数のスイッチングデバイスのうち、上流側(中間位置を基準にグラウンドと反対側)のスイッチングデバイスと並列に、プルアップ抵抗が設けられている。
Hブリッジプリドライバ120Aは、U相のHuスイッチングデバイス151A及びLuスイッチングデバイス152Aがオフの場合に、第1の分割抵抗153A及び第1のプルアップ抵抗154Aで下げられた電圧値を取得できる。なお、Hブリッジプリドライバ120Aは、V相の中間位置における電圧値、及びW相の中間地点における電圧値も、同様の手法で取得できる。
3相Hブリッジ回路150Aは、V相に、Hvスイッチングデバイス161Aと、Lvスイッチングデバイス162Aと、が直列に接続されている。そして、V相のHvスイッチングデバイス161A、及びLvスイッチングデバイス162Aの間の中間位置となる接続点から、第2の分割抵抗163Aを介して、Hブリッジプリドライバ120Aに接続されている。また、V相の端部と中間位置となる接続点とに接続され、Hvスイッチングデバイス161Aと並列に、第2のプルアップ抵抗164Aが設けられている。
3相Hブリッジ回路150Aは、W相に、Hwスイッチングデバイス171Aと、Lwスイッチングデバイス172Aと、が直列に接続されている。そして、W相のHwスイッチングデバイス171A、及びLwスイッチングデバイス172Aの間の中間位置となる接続点から、第3の分割抵抗173Aを介して、Hブリッジプリドライバ120Aに接続されている。また、W相の端部と中間位置となる接続点とに接続され、Hwスイッチングデバイス171Aと並列に、第3のプルアップ抵抗174Aが設けられている。
3相Hブリッジ回路150Aに設けられたスイッチングデバイス(Huスイッチングデバイス151A、Luスイッチングデバイス152A、Hvスイッチングデバイス161A、Lvスイッチングデバイス162A、Hwスイッチングデバイス171A、Lwスイッチングデバイス172A)は、例えば、スイッチングを行うFET(Field Effect Transistor)と、FETに対して逆並列に接続されたダイオードと、を含むことが考えられるが、どのような構成であっても良い。Hブリッジ下流には各相電流を検知する各相電流検知用抵抗(シャント抵抗)155A、165A、175Aが設けられており、これらの値からベクトル制御用ip、idを算出できる。
マイコン130Aは、内部に格納されたソフトウェアを実行することで、各種制御を行う。例えば、マイコン130Aは、各種プリドライバ(例えば、Hブリッジプリドライバ120A、PIG平滑コンデンサプリチャージ回路102A、及びハイサイドスイッチプリドライバ108A、逆接防止スイッチプリドライバ109A)を制御するための制御信号を出力する。また、マイコン130Aは、過電流であるか否かの判定基準として設定された過電流基準値を、過電流検知回路107Aに出力する。
Hブリッジプリドライバ120Aは、マイコン130Aからの制御信号に従って、3相Hブリッジ回路150Aをハードウェア制御するためのドライバとする。また、Hブリッジプリドライバ120Aは、過電流検知回路107Aから出力された過電流信号が過電流を検出した旨を示している場合に、3相Hブリッジ回路150Aに設けられた全てのスイッチングデバイス(Huスイッチングデバイス151A、Luスイッチングデバイス152A、Hvスイッチングデバイス161A、Lvスイッチングデバイス162A、Hwスイッチングデバイス171A、Lwスイッチングデバイス172A)をオフにするハードウェア制御を行う。本実施形態では、ハードウェア制御で全てのスイッチングデバイスをオフにすることで、迅速に電流をオフにできるため、過電流による回路の故障等を抑止できる。
過電流検知回路107Aは、マイコン130Aから入力される過電流基準値より大きい電流が、過電流検知用抵抗106Aに流れているか否かを判定する。そして、過電流検知回路107Aは、過電流基準値より大きい電流が流れていると判定した場合に、その旨を示した過電流信号を、マイコン130A及びHブリッジプリドライバ120Aに出力する。
PIG平滑コンデンサプリチャージ回路102Aは、マイコン130Aからの制御信号に従って、平滑コンデンサ110Aを充電するための制御を行う。
ハイサイドスイッチプリドライバ108Aは、マイコン130Aからの制御信号に従って、ハイサイドスイッチ104Aのスイッチング制御を行う。
逆接防止スイッチプリドライバ109Aは、マイコン130Aからの制御信号に従って、逆接防止スイッチ105Aのスイッチング制御を行う。
第1系列100Aでは、電力(PIG)が供給される電源から、3相Hブリッジ回路150Aまでの間に、チョークコイル103Aと、ハイサイドスイッチ104Aと、逆接防止スイッチ105Aと、過電流検知用抵抗106Aと、が直列に接続されている。
過電流検知用抵抗(シャント抵抗)106Aは、3相Hブリッジ回路150A及び平滑コンデンサ110Aに対して電力(PIG)を供給する電源と、平滑コンデンサ110Aと、の間に設けられた、過電流を検知するための抵抗とする。
平滑コンデンサ110Aは、過電流検知用抵抗106Aより3相Hブリッジ回路150A側に、当該3相Hブリッジ回路150Aと並列に設けられている。これにより、平滑コンデンサ110Aは、ノイズを抑止することができる。
しかしながら、電圧が急上昇した場合に、平滑コンデンサ110Aから過電流検知用抵抗106A側に電流が流れる。このような状況は、電源電圧が急低下から元に戻った場合、換言すれば電流が大きくなった場合に、平滑コンデンサ110Aから供給される電流と、電源から供給される電流と、により、過電流検知用抵抗106Aに大きな電流が流れる。このような場合に、過電流検知回路107Aは、過電流を検出したものとして、マイコン130Aと、Hブリッジプリドライバ120Aと、に対して、過電流を検出した旨を示す過電流信号を出力する。
そして、Hブリッジプリドライバ120Aは、過電流信号に従って、3相Hブリッジ回路150Aに含まれている全てのスイッチングデバイスをオフにするハードウェア制御を行う。同様に、マイコン130Aは、過電流信号に従って、3相Hブリッジ回路150Aに含まれている全てのスイッチングデバイスをオフにするソフトウェア制御を行う。本実施形態では、オフにする旨の制御信号を出力する。
そして、マイコン130Aは、3相Hブリッジ回路150Aに設けられたスイッチングデバイスをオフにするソフトウェア制御を行った後、3相Hブリッジ回路150Aに設けられたスイッチングデバイスをオフにされた状態で、異常検出を開始する。本実施形態では、異常検出として、スイッチングデバイスの全オフ時のチェックと、下流スイッチングデバイスの通電チェックと、上流スイッチングデバイスの通電チェックと、を行う。
本実施形態では、スイッチングデバイスの全オフ時に、異常であるか否かのチェックを行う。スイッチングデバイスの全オフ時に行うチェックを、全オフチェックとも称する。当該全オフチェックでは、モータ101Aの回転数に応じて、チェック手法を切り替える。本実施形態では、チェック手法を切り替える基準となる回転数を、1300rpmとする。なお、本実施形態は、1300rpm以上であるか否かに基づいて、チェック手法を切り替える手法について説明するが、1300rpmは例として示したもので、実施の態様に応じて適切な回転数を設定する。
ところで、本実施形態では、モータ制御装置が搭載されたアクチュエータが起動中に、換言すればモータ101Aの回転中に、ブレーキモードになった場合に、当該モータ101Aから回生エネルギーが生じる。ところで、モータ101Aの回転中に、ブレーキモードになった場合に、3相Hブリッジ回路150Aでスイッチングデバイスが全てオフであれば、当該スイッチングデバイスを介した電流は流れない。そこで、本実施形態では、モータ101Aが1300rpm以上回転している場合に、3相Hブリッジ回路150Aでスイッチングデバイスが全てオフであるにもかかわらず、回生エネルギーによる電流が予め定められた基準値以上生じている場合に、マイコン130Aは、モータ101Aを含む駆動系で異常が生じていると判定する。
本実施形態では、以下の式(1)を満たすか否かに応じて異常であるか否かを判定する。
sign(iqref)*iq<―5A ∨ 各相電圧<0.1V…(1)
本実施形態では、iqrefをq軸電流指令値、iqをq軸電流値とする。なお、iqref及びiqは、従来と同様の手法で、マイコン130Aに入力される値とする。
マイコン130Aは、モータ101Aの回転数が1300rpm以上であれば、式(1)を満たした場合に、3相Hブリッジ回路150Aに異常が生じていると判定する。このように、本実施形態では、マイコン130Aは、モータ101Aの回転数が1300rpm以上の場合に、モータ101Aに対するq軸電流指令値iqrefと、モータ101Aに流れる電流値iqと、に基づいて、モータ101Aが異常であるか否かを判定する。特に、q軸電流指令値iqrefと、モータ101Aに流れる電流値iqと、の正負が逆の場合には、q軸電流指令値iqrefと異なる回生電流iqが流れていると推測できる。
次に、モータ101Aの回転数が1300rpmより小さい場合の異常の判定手法について説明する。本実施形態のマイコン130Aは、3相Hブリッジ回路150Aの相毎に、複数のスイッチング素子が直列に配置された中間地点の電圧を計測することで、異常であるか否かを判定する。本実施形態のマイコン130Aは、U相のチェックとして以下の式(2)及び式(3)のうちいずれか一方を満たした場合に、異常と判定する。
U相スイッチングデバイス中間電圧値>変数P×電圧PIG−変数Q+0.5V…(2)
U相スイッチングデバイス中間電圧値<変数P×電圧PIG−変数Q−0.5V…(3)
なお、電圧PIGは、電源の電圧とする。また、変数P、変数Q、及び0.5Vは実施の態様に応じて設定される値とする。
同様に、本実施形態のマイコン130Aは、V相のチェックとして以下の式(4)及び式(5)のうちいずれか一方を満たした場合に、異常と判定する。
V相スイッチングデバイス中間電圧値>変数P×電圧PIG−変数Q+0.5V…(4)
V相スイッチングデバイス中間電圧値<変数P×電圧PIG−変数Q−0.5V…(5)
同様に、本実施形態のマイコン130Aは、W相のチェックとして以下の式(6)及び式(7)のうちいずれか一方を満たした場合に、異常と判定する。
W相スイッチングデバイス中間電圧値>変数P×電圧PIG−変数Q+0.5V…(6)
W相スイッチングデバイス中間電圧値<変数P×電圧PIG−変数Q−0.5V…(7)
本実施形態のマイコン130Aは、3相Hブリッジ回路150Aのスイッチングデバイスを全てオフ時のチェックが終了した後、3相Hブリッジ回路150Aの各相に設けられたスイッチングデバイス毎にオンにする制御を行った場合に、異常の検出を行う。まず、本実施形態のマイコン130Aは、3相Hブリッジ回路150Aの各相の下流側(中間位置を基準としてグラウンド側)のスイッチングデバイスをオンにして異常の検出を行う。この下流側のスイッチングデバイスをオンにして行う異常の検出を、下流チェックとも称する。
本実施形態のマイコン130Aは、下流側のU相のスイッチングデバイスのチェックとして、Luスイッチングデバイス152Aをオンにする制御を行った後、Hブリッジプリドライバ120Aを介して、U相の中間電圧値を取得する。そして、マイコン130Aは、下の式(8)を満たしているか否かを判定し、U相の下流チェックを行う。なお、0.8Vは過電圧か否かの基準値として定められたものであり、実施態様に応じて適切な値が設定されれば良い。下記の式(8)の条件を満たしている場合には、異常が生じているものと判定する。
U相スイッチングデバイス中間電圧値>0.8V…(8)
次に、マイコン130Aは、下流側のV相のスイッチングデバイスのチェックとして、Lvスイッチングデバイス162Aをオンにする制御を行った後、Hブリッジプリドライバ120Aを介して、V相の中間電圧値を取得する。そして、マイコン130Aは、下の式(9)を満たしているか否かを判定し、V相の下流チェックを行う。マイコン130Aは、下記の式(9)の条件を満たしている場合に、異常が生じているものと判定する。
V相スイッチングデバイス中間電圧値>0.8V…(9)
次に、マイコン130Aは、下流側のW相のスイッチングデバイスのチェックとして、Lwスイッチングデバイス172Aをオンにする制御を行った後、Hブリッジプリドライバ120Aを介して、W相の中間電圧値を取得する。そして、マイコン130Aは、下の式(10)を満たしているか否かを判定し、W相の下流チェックを行う。下記の式(10)の条件を満たしている場合には、異常が生じているものと判定する。
W相スイッチングデバイス中間電圧値>0.8V…(10)
上述した制御により、下流側によるチェックが完了する。次に、マイコン130Aは、上流側(中間位置を基準としてグラウンドと反対側)のスイッチングデバイスをオンにして異常であるか否かの判定を行う。この上流側のスイッチングデバイスをオンにして行う異常の検出を、上流チェックとも称する。
本実施形態のマイコン130Aは、上流側のU相のスイッチングデバイスのチェックとして、Huスイッチングデバイス151Aをオンにする制御を行った後、Hブリッジプリドライバ120Aを介して、U相の中間電圧値を取得する。そして、マイコン130Aは、下の式(11)または式(12)を満たしているか否かを判定し、U相の上流チェックを行う。なお、4.1Vは過電圧か否かの基準値、2.7Vは低電圧か否かの基準値として定められたものであり、実施態様に応じて適切な値が設定されれば良い。下記の式(11)及び式(12)のいずれかの条件を満たしている場合には、異常が生じているものと判定する。
U相スイッチングデバイス中間電圧値>4.1V…(11)
U相スイッチングデバイス中間電圧値<2.7V…(12)
本実施形態のマイコン130Aは、上流側のV相のスイッチングデバイスのチェックとして、Hvスイッチングデバイス161Aをオンにする制御を行った後、Hブリッジプリドライバ120Aを介して、V相の中間電圧値を取得する。そして、マイコン130Aは、下の式(13)または式(14)を満たしているか否かを判定し、V相の上流チェックを行う。下記の式(13)及び式(14)のいずれかの条件を満たしている場合には、異常が生じているものと判定する。
V相スイッチングデバイス中間電圧値>4.1V…(13)
V相スイッチングデバイス中間電圧値<2.7V…(14)
本実施形態のマイコン130Aは、上流側のW相のスイッチングデバイスのチェックとして、Hwスイッチングデバイス171Aをオンにする制御を行った後、Hブリッジプリドライバ120Aを介して、W相の中間電圧値を取得する。そして、マイコン130Aは、下の式(15)または式(16)を満たしているか否かを判定し、W相の上流チェックを行う。下記の式(15)及び式(16)のいずれかの条件を満たしている場合には、異常が生じているものと判定する。
W相スイッチングデバイス中間電圧値>4.1V…(15)
W相スイッチングデバイス中間電圧値<2.7V…(16)
本実施形態のマイコン103Aは、過電流検知回路107Aが過電流を検知した後、全オフチェック、下流チェック、上流チェック等の処理を行うことで、第1系列100Aの異常判定を実現できる。これにより、過電流検知回路107Aにより検出された過電流が誤検出であったのか否かを判定できる。
第2系列100Bは、モータ101Bと、PIG平滑コンデンサプリチャージ回路102Bと、チョークコイル103Bと、ハイサイドスイッチ104Bと、逆接防止スイッチ105Bと、過電流検知用抵抗106Bと、過電流検知回路107Bと、ハイサイドスイッチプリドライバ108Bと、逆接防止スイッチプリドライバ109Bと、平滑コンデンサ110Bと、Hブリッジプリドライバ120Bと、マイコン130Bと、3相Hブリッジ回路150Bと、が設けられている。
3相Hブリッジ回路150Bに設けられたスイッチングデバイス(Huスイッチングデバイス151B、Luスイッチングデバイス152B、Hvスイッチングデバイス161B、Lvスイッチングデバイス162B、Hwスイッチングデバイス171B、Lwスイッチングデバイス172B)は、例えば、スイッチングを行うFET(Field Effect Transistor)と、FETに対して逆並列に接続されたダイオードと、を含むことが考えられるが、どのような構成であっても良い。Hブリッジ下流には各相電流を検知する各相電流検知用抵抗(シャント抵抗)155B、165B、175Bが設けられており、これらの値からベクトル制御用ip、idを算出できる。
3相Hブリッジ回路150Bは、Huスイッチングデバイス151Bと並列に、第1のプルアップ抵抗154Aが設けられ、Hvスイッチングデバイス161Bと並列に、第2のプルアップ抵抗164Bが設けられ、Hwスイッチングデバイス171Bと並列に、第2のプルアップ抵抗174Bが設けられている。3相Hブリッジ回路150Bは、第1の分割抵抗153B、第2の分割抵抗163B、第3の分割抵抗173Bのそれぞれを介して、Hブリッジプリドライバ120Aに接続されている。
そして、これら第2系列100Bの構成は、1つの処理を除いて、第1系列100Aの各構成と同様の制御を行うこととする。
次に、第1系列100A及び第2系列100Bが行う処理のうち、異なる処理について説明する。本実施形態の第1系列100A及び第2系列100Bは、電源が共通している。このため、両方で過電流を検知された場合に、第1系列100A及び第2系列100Bにおいて、上述したチェックを同時に行うと、誤検出が生じる可能性がある。そこで、本実施形態では、第1系列100Aのマイコン130Aが行う異常を検出するためのチェックと、第2系列100Bのマイコン130Bが行う異常を検出するためのチェックと、のタイミングをずらす制御を行うこととした。
まずは、各系列で行われるチェックのタイミングについて説明する。図2は、第1系列100Aにおいて、異常検知のために行われた各種チェックのタイムチャートを例示した図である。図2に示される例では、第1系列100Aにおいて、過電流を検知した場合とする。過電流を検知した時点でタイマを0にリセットして、チェックを開始する。本実施形態では、第1系列100Aのみで過電流を検知した場合のため、第2系列100Bは、モータ101Bによる通常動作を継続する。一方、第1系列100Aにおいては、マイコン130Aは、モータ101Aを通常動作からフリーにする制御を行う。その後に、各種チェックを開始する。
図2に示される例では、系列毎に40ms内でチェックを終了するように制御を行う。また、系列でチェックを行う際に、40msのうち、最初の8ms、及び最後の8msは、マージンとして設けられたものであり、特に処理を行わない。
図2に示される例では、マイコン130Aは、8ms〜16msの間に、3相Hブリッジ回路150Aの全てのスイッチングデバイスをオフにした上で、上述した手法で全オフチェックを行う。
そして、マイコン130Aは、16ms〜24msの間に、3相Hブリッジ回路150Aのうち相毎に下流のスイッチングデバイスをオンにした上で、上述した手法で下流チェックを行う。
そして、マイコン130Aは、24ms〜32msの間に、3相Hブリッジ回路150Aのうち相毎に上流のスイッチングデバイスをオンにした上で、上述した手法で上流チェックを行う。
そして、マイコン130Aが異常を検出できなかった場合に、モータ101Aを通常動作に切り替えられる。一方、マイコン130Aが異常を検出した場合に、モータ101Aのフリーの状態を維持する。
次に、第1系列100A及び第2系列100Bで異常を検出した場合について説明する。図3は、第1系列100A及び第2系列100Bにおいて異常検知のための各種チェックを行った場合のタイムチャートを例示した図である。図3に示される例では、第1系列100A及び第2系列100Bにおいて、過電流を同時に検知した場合とする。このため、第1系列100A及び第2系列100Bは、同時にオフ制御が行われる。そして、第1系列100Aのマイコン130Aは、過電流を検知した直後から40ms以内にチェックを行い、第2系列100Bのマイコン130Bは、過電流を検知してから40ms経過した後に、チェックを行う。
上述したように、第1系列100A及び第2系列100Bのチェックは、最初の8ms、最後の8msはマージンとして設けられている。第1系列100A及び第2系列100Bのチェックは別々に行われるため、処理を行うタイミングがずれる可能性がある。これに対して、8msをマージンとして設けることで、第1系列100Aのチェックと、第2系列100Bのチェックと、が同時に行われることを抑止できる。
図3に示す例では、第1系列100Aでショート検知し、第2系列100Bでショートを誤検知した例とする。
そして、第1系列100Aのマイコン130Aは、3相Hブリッジ回路150Aのスイッチングデバイスを全てオフにした後、全オフチェック、下流チェック、上流チェックの順に行う。図3に示される例では、マイコン130Aは、上流チェックの段階で、4.1V以上の電圧を検出し、ショート検知する。その後、モータ101Aをフリーにする制御を行う。
第2系列100Bのマイコン130Bは、3相Hブリッジ回路150Bのスイッチングデバイスを全てオフにし、40ms経過した後に、全オフチェック、下流チェック、上流チェックの順に行う。図3に示される例では、異常を検出しなかったものとして、モータ101Bをフリーから通常動作にした後、当該通常動作を継続する。
本実施形態では、上述した処理を行うことで、第1系列100Aと第2系列100Bとの異常検出がタイミングをずらして実行されるため、同時に異常検出が行われることによる誤検出等を抑止できる。さらに、本実施形態では、第1系列100A及び第2系列100Bの異常検出が80msで終了するため、迅速に通常の状態に復帰できる。
次に、本実施形態のモータ制御装置における、異常検知のための各種チェックの処理手順について説明する。図4は、本実施形態のモータ制御装置における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
まず、過電流検知回路107Aは、過電流基準値より大きい電流が、過電流検知用抵抗106Aに流れることによるショートを検知したか否かを判定する(S401)。ショートを検知していないと判定した場合(S401:No)、S408に遷移する。
一方、過電流検知回路107Aは、ショートを検知したと判定した場合(S401:Yes)、マイコン130A、及びHブリッジプリドライバ120Aに過電流信号で、その旨を通知する。
そして、Hブリッジプリドライバ120Aは、当該通知に従って、3相Hブリッジ回路150Aの全スイッチングデバイスをオフにするハードウェア制御を行う(S402)。これにより、モータ101Aの制御がフリーとなる。
次に、マイコン130Aは、当該通知に従って、3相Hブリッジ回路150Aの全スイッチングデバイスをオフにするソフトウェア制御を行う(S403)。
その後、マイコン130Aは、ハイサイドスイッチ104Aをオフにするソフトウェア制御を行う(S404)。
そして、マイコン130Aは、i=1を設定し(S405)、タイマの開始制御を行う(S406)。さらに、PIG平滑コンデンサプリチャージ回路102Aが、マイコン130Aからの制御に従って、平滑コンデンサ110Aの充電を開始する(S407)。なお、変数iは、系列を識別する数値とする。
そして、マイコン130Aは、i>0か否かを判定する(S408)。i≦0の場合(S408:No)には、S401に遷移する。なお、S401〜S408の処理は、第1系列100A内のみならず、第2系列100Bでも同様の処理が行われているものとする。
そして、マイコン130Aは、i>0と判定した場合(S408:Yes)、マイコン(マイコン130A又はマイコン130B)が、(i−1)×40と8〜16m秒の間に、第i系列における、全スイッチングデバイスオフ制御時による全オフチェックを行う(S409)。例えばi=1であれば、マイコン130Aが、カウンタが8〜16m秒の間に第1系列100Aの全オフチェックを行い、i=2であれば、マイコン130Bが、カウンタが48〜56m秒の間に第2系列100Bの全オフチェックを行う。
マイコン(マイコン130A又はマイコン130B)は、チェックで異常を検出したか否かを判定する(S410)。チェックで異常を検出した場合(S410:Yes)、S416に遷移する。
また、マイコン(マイコン130A又はマイコン130B)は、チェックで異常を検出しなかったと判定した場合(S410:No)、マイコン(マイコン130A又はマイコン130B)が、(i−1)×40と16〜24m秒の間に、第i系列において、PIG平滑コンデンサプリチャージ回路(PIG平滑コンデンサプリチャージ回路102A又はPIG平滑コンデンサプリチャージ回路102B)における充電オフ制御と、ハイサイドスイッチ(ハイサイドスイッチ104A又はハイサイドスイッチ104B)のオン制御を行う(S411)。
さらに、マイコン(マイコン130A又はマイコン130B)が、(i−1)×40と16〜24m秒の間に、第i系列において、下流スイッチングデバイスの通電チェックを行う(S412)。例えばi=1であれば、マイコン130Aが、カウンタが16〜24m秒の間に第1系列100Aの下流チェックを行い、i=2であれば、マイコン130Bが、カウンタが56〜64m秒の間に第2系列100Bの下流チェックを行う。
マイコン(マイコン130A又はマイコン130B)は、チェックで異常を検出したか否かを判定する(S413)。チェックで異常を検出した場合(S413:Yes)、S416に遷移する。
また、マイコン(マイコン130A又はマイコン130B)は、チェックで異常を検出しなかったと判定した場合(S413:No)、マイコン(マイコン130A又はマイコン130B)が、(i−1)×40と24〜32m秒の間に、第i系列において、上流スイッチングデバイスの通電チェックを行う(S414)。例えばi=1であれば、マイコン130Aが、カウンタが24〜32m秒の間に第1系列100Aの上流チェックを行い、i=2であれば、マイコン130Bが、カウンタが64〜72m秒の間に第2系列100Bの上流チェックを行う。
マイコン(マイコン130A又はマイコン130B)は、チェックで異常を検出したか否かを判定する(S415)。チェックで異常を検出した場合(S415:Yes)、S416に遷移する。
そして、マイコン(マイコン130A又はマイコン130B)は、異常を検出したと判定した場合、異常検知時制御を行う(S416)。異常検知時制御としては、例えば、異常が検出された系列のモータ(モータ101A又はモータ101B)を、フリーにする制御を継続する等が考えられる。
一方、チェックで異常を検出しなかった場合(S415:No)、マイコン(マイコン130A又はマイコン130B)は、第i系列のHブリッジ回路を通常動作に切り替える(S417)。
その後、マイコン(マイコン130A又はマイコン130B)は、変数iに1加算する(S418)。そして、マイコン(マイコン130A及びマイコン130B)は、変数i>2であるか否かを判定する(S419)。変数i>2ではないと判定した場合(S419:No)、S401に遷移する。
一方、マイコン(マイコン130A及びマイコン130B)は、変数i>2であると判定した場合(S419:Yes)、変数i=0で初期化して(S420)、再びショートを検知するまで、処理を行わない。
上述した処理手順により、ショートを検知した場合に、モータをオフにする制御を行った後に、各構成の異常検知制御が行われる。
本実施形態のモータ制御装置においては、上述した構成を備えることで、過電流を検知した場合に、3相Hブリッジ回路のスイッチングデバイスをオフにする制御を行った後に、過電流が生じたか否かをチェックする。これにより、過電流の誤検知等を抑止して、モータなどの駆動源を用いた制御を再開できる。
本実施形態のモータ制御装置においては、第1系列100A及び第2系列100Bのチェックを合計80msで完了するために、モータに異常が生じていない場合に、早期にモータ制御の復帰を実現できる。
本実施形態のモータ制御装置においては、3相Hブリッジ回路の全てのスイッチングデバイスがオフになっている状態で、モータの回転数に応じて、異常の検出手法を切り替えることとした。これにより、モータの状態に応じて、適切に異常を検出できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。