本発明はこうした課題を鑑みてなされたものであり、誘導部材に加わる力を面で受けることによって誘導部材に対して大きな力が広い面積に加わるようにするとともに、パンチの先端部のみを交換可能して、パンチ本体部は長期間を使用可能とすることができる筒状ワークの周囲に複数の加工孔を穿孔することができる穿孔器具を提供することにある。
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
本発明の穿孔器具は、端部に加工部を有する柱状のパンチ部材と、
前記パンチ部材と十字状に組まれて、前記パンチ部材の進退を誘導する柱状の誘導部材と、
前記パンチ部材と前記誘導部材とをそれぞれ内部に配置可能なパンチ部材貫通溝及び誘導部材用貫通溝を有し、前記誘導部材用貫通溝内の前記誘導部材の位置に応じて前記パンチ部材の進退位置を決定する柱状のスライド部材と、
前記パンチ部材、前記誘導部材及び前記スライド部材を内部に配置する支持部材と、を備え、
前記スライド部材は前記支持部材内をスライド可能であり、
前記パンチ部材及び前記誘導部材は前記支持部材内で前記スライド部材のスライド方向への移動を防止されてなり、
前記スライド部材をスライドすることによって、前記誘導部材の前記誘導部材用貫通溝内の位置を変化させることにより、前記パンチ部材が進退することによってパイプ、管等の筒状ワークの周壁を外側から加工する穿孔器具において、
前記誘導部材用貫通溝は、長孔又は角丸長方形状に形成されており、
前記誘導部材は、前記誘導部材用貫通溝の幅と同様の幅であって、かつ長手方向の長さより短い長孔又は角丸長方形状に形成されていることを特徴とする
本発明の穿孔器具は、パンチ部材及びこのパンチ部材を誘導する誘導部材を内部に配置しているスライド部材を有し、このスライド部材を支持部材内でスライドさせることでパンチ部材を進退させて筒状ワークに穿孔する穿孔器具である。パンチ部材がスライド部材内部のパンチ部材用貫通溝に配置されているので、パンチ部材用貫通溝の内壁面によりパンチ部材の横ぶれを防止することができる。また、パンチ部材の進退をパンチ部材の中央付近で十字状に組まれている誘導部を可動させて行わせているので、パンチ部材の後端部をプレス機で進退させる場合と比較して、パンチ部材の傾く軸が後端部より加工部に近くなる。そのため、パンチ部材の横ずれを効果的に防止することができる。従って、より位置精度の高い加工孔を筒状ワークに穿孔することができる。また、誘導部材を可動させる際には、誘導部材と誘導部材用貫通孔とは面で接触することから、従来のように線で接触することがなく、誘導部材に加わる力が小さくなるため、誘導部材の摩耗や破損を防止し、誘導部材用貫通孔の摩耗をも防止することができる。
また、前記パンチ部材は、先端パンチ部材とパンチ部材本体部とから形成されていてもよい。かかる構成を採用することによって、パンチ部材の刃部が摩耗した場合であっても先端パンチ部材を交換するだけでパンチ部材本体部を交換することなく使用することができる。
さらに、パンチ部材本体部は、立方体であることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、先端パンチ部材の先端の向き、すなわち中心軸に対して回転する方向の位置決めができる(軸回転不可能に配置される)ので、一定の角度の孔を筒状ワーク部材に穿設することができる。特に先端パンチ部材が円形以外、楕円や四角形等である場合に有効である。
また、パンチ部材を移動させる機構(誘導部材及びスライド部材)が支持部材内に配置されているので、支持部材の外側にパンチ部材に直結するプレス装置等を配置する必要がなく、従来の機器と比較してコンパクトな穿孔器具とすることができる。また、プレス装置の底板側に加工孔を穿孔する場合であっても、プレス装置の底板裏側に様々な装置等を配置する必要はない。さらに、特にパンチ部材そのものを直接プレス装置に取り付ける必要がなく、スライド部材をスライドすることでパンチ部材を進退させることができるので、スライド部材のみスライド可能な器具を用いれば、通常の垂直プレス装置を利用して筒状ワークを加工することができる。
さらに、パンチ部材は、誘導部材によって進退方向にのみ駆動されるので、パンチ部材用貫通溝の側面に力が加わるのを防止することができる。従って、パンチ部材用貫通溝やパンチ部材の側面が摩耗するのを防止することができる。
さらに、本発明の穿孔器具は、構造が単純で、かつ構成部品が少ないためにメンテナンス性にも優れる。また、加工の際も大がかりな専用機を必要とすることなく、既存のプレス装置に装着して加工することができ、設備投資を最小限に抑えることができる。
さらに、前記貫通溝は、前記パンチ部材と同様の幅を有し、かつ前記スライド部材の長軸と同様の方向の軸を有する、前記スライド部材の周壁面から反対側の面まで貫通する長孔からなるパンチ部材用貫通溝と、前記誘導部材と同様の幅を有し、前記パンチ部材用貫通溝と直交するように前記スライド部材の周壁面から反対側の面まで貫通し、かつ前記スライド部材の長軸に対して角度を有する長孔又は弧状の長孔からなる誘導部材用貫通溝とを備えるものであってもよい。係る構成を採用することにより、スライド部材の位置に応じて誘導部材の位置を確実に制御することができ、結果として、パンチ部材の進退を制御することが可能になる。また、誘導部材用貫通溝のスライド部材の軸との傾き具合によって、スライド部材とパンチ部材との相対移動距離を変更することができる。従って、この相対移動距離を調整することによって、パンチ部材のパイプに与えるプレス圧を調整することができる。また、スライド部材の移動距離が同じであっても、パンチ部材の移動距離(ストローク)を調整することができる。
さらに、本発明に係る穿孔器具において、前記支持部材は、前記パンチ部材及び前記誘導部材を前記支持部材の外側から設置可能に構成してもよい。係る構成を採用することによって、支持部材をコンパクトに形成することができ、容易に組み立てることができるようになる。
さらに、本発明に係る穿孔器具において、前記支持部材は、前記パンチ部材の一方端部及び他方端部のいずれをも収納可能な前記パンチ部材と同径の挿通孔からなるパンチ部材用孔が設けられていてもよい。係る構成を採用することによって、パンチ部材の両端が支持部材のパンチ部材用孔によって規制されているので、進退方向以外の方向への移動が防止されることになる。従って、パンチ部材の横ぶれが抑えられ、さらに位置精度が高い加工孔を筒状ワークに空けることができる。
さらに、本発明に係る穿孔器具において、前記支持部材は、前記筒状ワークを固定可能な筒状ワーク用固定部を備えていてもよい。係る構成を採用することによって、支持部材内に筒状ワーク及びパンチ部材の両方が配置されるので、別々に設置する場合と比較して、互いの位置の誤差を最小限に抑えることができる。そのため、より位置精度の高い加工孔を筒状ワークに設けることができる。
さらに、本発明に係る穿孔器具において、前記支持部材は、内側支持部材と前記内側支持部材を収容可能な収容部を有する外側支持部材とからなり、前記内側支持部材は円筒形をなし、外側支持部材内で回動可能に設けられていてもよい。係る構成を採用することにより、外側支持部材に対して内側支持部材の位置を調整することができ、パンチ部材の位置を調整することができる。従って、筒状ワークに開ける加工孔の位置の微調整を行うことができる。
さらに、本発明に係る穿孔器具において、複数の前記パンチ部材と、前記誘導部材と、前記スライド部材とを備えてなり、前記支持部材は、複数の前記パンチ部材と、前記誘導部材と、前記スライド部材とを内部に配置可能であってもよい。係る構成を採用することによって、筒状ワークの同じ円周内又は近傍に異なる角度の加工孔を設けることができる。しかも、従来のようにカムスライドを複数設けたり、複数のプレス装置を用いる必要がないので、狭い角度の隣り合った加工孔を設けることができる。
さらに、本発明に係る穿孔器具において、前記スライド部材は、前記パンチ部材と前記誘導部材とを内部に配置する貫通溝を複数備えていてもよい。係る構成を採用することによって、筒状ワークの軸上の異なる位置に加工孔を穿孔することができる。
さらに、本発明に係る穿孔器具において、前記スライド部材の可動方向と異なる方向からのプレスを前記スライド部材のスライド方向へ変換するカム器具をさらに備えていてもよい。係る構成を採用することによって、従来の垂直型のプレス装置に取り付けるだけでスライド部材をスライドさせることができ、筒状ワークの穿孔加工を行うことができる。
また、本発明に係る穿孔器具において、複数の前記誘導部材用貫通溝の少なくとも1つは、長孔の角度又は形状が異なるものであってもよい。係る構成を採用することにより、誘導部材用加工孔の形状に応じて、それぞれ複数のパンチ部材の移動距離、移動開始時期を異ならせることができ、筒状ワークに対してパンチ部材が加工するタイミングをずらすことができる。そのため、複数の加工孔を穿孔する場合に、一度に同じタイミングで加工孔を開ける場合と比較して、弱い圧力でスライド部材を移動することができる。
本発明に係る穿孔器具によれば、パンチ部材が筒状ワークに当接する直前までパンチ部材の横ずれを防止することができて、加工精度の高い加工孔を開けることができる。また、1つのプレス装置によって、筒状ワークの周囲に複数の加工孔を穿孔することができる。
(実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。また、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
図1は、実施形態に係る複数の穿孔器具100(第1穿孔器具100a、第2穿孔器具100b、第3穿孔器具100c)を備えた穿孔用型110を示す斜視図である。穿孔用型110は、主として、複数の穿孔器具100と、垂直プレスのプレス方向を水平方向への移動に変換するカム器具90と、これらの器具を固定する底板120とを備えている。
図2は、第1穿孔器具100a、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cを構成する部品を図示した斜視図である。図3は、第1穿孔器具100a、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cを構成する部品を分解した分解斜視図である。
第1穿孔器具100aは、図2及び図3に示すように、第1パンチ部材11、第2パンチ部材12、これらのパンチを誘導する第1誘導部材21及び第2誘導部材22、これら第1誘導部材21及び第2誘導部材22の動きをそれぞれ制御する第1スライド部材31及び第2スライド部材32、並びにこれらを支持する第1支持用部材41を備えている。
第1パンチ部材11は、図4Aに示すように、第1先端パンチ部材11dと第1パンチ部材本体部11eとを備えている。第1先端パンチ部材11dは先端が鉄パイプ等の筒状ワークに対して穿設するための部材であり、所望のパンチ穴に対応して、円形、四角形、楕円形等種々の断面形態に形成される。本実施形態においては、楕円形の断面に形成されている。第1パンチ部材本体部11eは、全体が四角柱状をなしており、中央に第1誘導部材21を内側に挿入するための第1誘導部材挿入用貫通孔11aが軸αと直交するように設けられている。第2パンチ部材12も第1パンチ部材11と同様に、先端の第2先端パンチ部材12dと第2パンチ部材本体部12eとを備えている。第2先端パンチ部材12dは、パンチ穴の形状に対応した種々の断面形態に形成される。本実施形態においては、円形の断面形状に形成されている。第2パンチ部材本体部12eは、全体が四角柱状をなしており、中央に第2誘導部材22を内側に挿入するための第2誘導部材挿入用貫通孔12aが軸βと直交するように設けられている。第1パンチ部材11及び第2パンチ部材12の端部は、加工される鉄パイプ80(図3)の孔の大きさ、形状等と同様の断面を有する刃部11b、12bがそれぞれ備えられていて、それぞれ加工部を形成する。刃部11bは断面が楕円形であり、刃部12bは断面が円形である。それぞれ、第1先端パンチ部材11d及び第2先端パンチ部材12dは、第1パンチ部材本体部11e及び第2パンチ部材本体部12eに対して交換可能に設けられている。そのため、刃部11b及び刃部12bが摩耗して、パンチ能力が劣化した場合であっても、それぞれ第1先端パンチ部材11d及び第2先端パンチ部材12dのみを交換するだけで再度使用することが可能になる。それぞれ第1先端パンチ部材11d及び第2先端パンチ部材12dは、第1パンチ部材本体部11e及び第2パンチ部材本体部12eの先端に設けられた孔に挿入された状態で側方方向からイモネジ12g等で固定することができる。
第1誘導部材挿入用貫通孔11a及び第2誘導部材挿入用貫通孔12aは、図4Bに示すように、第1パンチ部材本体部11e及び第2パンチ部材本体部12eのスライド方向の軸α又は軸βに対して斜めに配置された長方形、角丸長方形状又は長孔が形成されている。第1誘導部材21及び第2誘導部材22は、第1誘導部材挿入用貫通孔11a及び第2誘導部材挿入用貫通孔12aの孔と同様の形態の断面を有する柱状部材で形成されている。第1誘導部材挿入用貫通孔11a及び第2誘導部材挿入用貫通孔12aの内側に挿入された第1誘導部材21及び第2誘導部材22は、図4Bに示すように、第1誘導部材固定ネジ11c及び第2誘導部材固定用ネジ12c(螺合部は省略してある。)によって第1パンチ部材11の後端のネジ孔11f及びネジ孔11f12fを通して固定され、第1パンチ部材11及び第1誘導部材21、第2パンチ部材12と第2誘導部材22は、十字状の部材をなす。
第1スライド部材31は、図5Aに示すように、四角柱状の長尺の部材で形成されている。第1スライド部材31は、一つの周壁面から反対側の周壁面まで貫通する第1パンチ部材用貫通溝31aが設けられている。この第1パンチ部材用貫通溝31aは、第1パンチ部材11の第1パンチ部材本体部11eの幅と同じ幅であって、長手方向の長さが長い断面の貫通孔で形成されており、第1スライド部材31の長軸方向γと直交するように設けられている。第1パンチ部材11は組み立てられた際に、図5Bに示すように、第1パンチ部材用貫通溝31a内に配置され、第1パンチ部材用貫通溝31a内をスライドすることができる。一方、第1パンチ部材用貫通溝31aと直交するように周壁面から反対側の周壁面に貫通する第1誘導部材用貫通溝31bが設けられている。第1誘導部材用貫通溝31bの長軸δ方向の長さは、第1誘導部材21の長さより長く形成されており、幅は、第1誘導部材21の幅とほぼ同様の幅に形成された長方形、角丸長方形状又は長孔に設けられており、第1スライド部材31の長軸方向γに対して、角度(ε)を有するように斜めに配置されている。第1誘導部材用貫通溝31bは、第1誘導部材21を長軸方向にスライドさせることができる。第2スライド部材32も第1スライド部材31と同様に、第2貫通溝32a及び第2スライド溝32bが設けられる(図3参照)
第1支持用部材41は、図6、図7に示すように、主として、鉄パイプ80等の筒状ワークを挿入し、周囲を位置決めして挿入方向ζ以外の方向への移動を防止するための第1筒状ワーク用挿入孔41aと、第1スライド部材31を挿入し、周囲を位置決めして挿入方向以外の方向への移動を防止するための第1スライド部材用孔41bと、第2スライド部材32を挿入し、周囲を位置決めして挿入方向以外の方向への移動を防止するための第2スライド部材用孔41cと、第1パンチ部材11を挿入し、周囲を位置決めし、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第1パンチ部材用孔41dと、第1誘導部材21を、第1パンチ部材11の進退方向と同じ方向へ一定距離移動可能であるが、第1スライド部材31の軸方向への移動を防止する第1誘導部材用スライド孔41eと、第2パンチ部材12を挿入し、周囲を位置決めして挿入方向以外の方向への移動を防止するための第2パンチ部材用孔41fと、第2誘導部材22を第2パンチ部材12の進退方向と同じ方向へ一定距離移動可能であるが、第2スライド部材32の軸方向へ移動を防止するための第2誘導部材用スライド孔41gと、を備えている。
第1筒状ワーク用挿入孔41aは、鉄パイプ80の外径とほぼ同様の内径を有する。これによって、第1筒状ワーク用挿入孔41aに挿入された鉄パイプ80は位置決めされ、第1パンチ部材11又は第2パンチ部材12によって加工孔が穿孔される際に、鉄パイプ80に圧力が加わっても、鉄パイプ80の移動が防止される。これにより、精度の高い加工孔を設けることができる。
第1スライド部材用孔41bは、第1スライド部材31の断面とほぼ同様の断面を有する貫通孔に形成されており、挿入された第1スライド部材31は、長軸方向への可動は可能であるが、それ以外の方向への移動が防止される。第2スライド部材用孔41cも同様に、第2スライド部材32の断面とほぼ同様の断面を有する貫通孔に形成されており、挿入された第2スライド部材32は、長軸方向への可動は可能であるが、それ以外の方向への移動が防止される。第1スライド部材用孔41bと第1筒状ワーク用挿入孔41aとの距離ηと、第2スライド部材用孔41cと第1筒状ワーク用挿入孔41aとの距離θは、異なる距離を有する。このように異なる距離にすることによって、第1スライド部材31及び第2スライド部材32が干渉するのを防止でき、鉄パイプ80の同一円周上に近い距離で加工孔を開けることができる。
第1パンチ部材用孔41dは、外壁面から第1スライド部材用孔41bを経由して、第1筒状ワーク用挿入孔41aまで貫通する貫通孔である。第1パンチ部材用孔41dは、第1スライド部材用孔41bまでは第1パンチ部材本体部11eの外形とほぼ同様形状の貫通孔に形成され、第1スライド部材用孔41bより先は第1先端パンチ部材11dの外径とほぼ同様の内径を有する貫通孔に形成され、挿入方向への可動は可能であるが、それ以外の方向への移動は防止される。第1パンチ部材用孔41d内を第1パンチ部材11が進み、第1筒状ワーク用挿入孔41aに突き出ることで、鉄パイプ80に加工孔を穿孔することになる。
第1誘導部材用スライド孔41eは、外壁面から第1スライド部材用孔41bを経由して、反対側まで連通する孔に形成される。第1誘導部材用スライド孔41eは、第1誘導部材21が第1スライド部材31のスライド方向へは可動しないが、第1パンチ部材11の進退方向へ移動可能となるような形態に形成される。
第2パンチ部材用孔41fは、外壁面から第2スライド部材用孔41cを経由して、第1筒状ワーク用挿入孔41aまで貫通する貫通孔である。第2パンチ部材用孔41fは、第2スライド部材用孔41cまでは第2パンチ部材本体部12eの外形とほぼ同様形状の貫通孔に形成され、第2スライド部材用孔41cより先は第2先端パンチ部材12dの外径とほぼ同様の内径を有する貫通孔に形成され、挿入方向への可動は可能であるが、それ以外の方向への移動は防止される。第2パンチ部材12は、第2パンチ部材用孔41f内を進み、第1筒状ワーク用挿入孔41aに突き出ることで、鉄パイプ80に加工孔を穿孔することになる。
第2誘導部材用スライド孔41gは、外壁面から第2スライド部材用孔41cを経由して、反対側の連通する孔に形成される。第2誘導部材用スライド孔41gは、第2誘導部材22が第2スライド部材32のスライド方向へは可動しないが、第2パンチ部材12の進退方向へ移動可能となるように形成されている。すなわち、図6中の矢印Bの方向には移動しないが、矢印Aの方向には移動できるように設けられている。
以上のようにして形成された第1穿孔器具100aの構成部品は、以下のようにして組み立てられる。まず、図7に示すように、第1スライド部材31を矢印Aの方向へ移動して第1支持用部材41の第1スライド部材用孔41bに、第1パンチ部材用貫通溝31aの一部が第1パンチ部材用孔41dと重なり合う位置まで挿入する。
次に、図8に示すように、第1パンチ部材11を矢印Bの方向へ移動し、第1パンチ部材用孔41dに挿入し、第1スライド部材31の第1パンチ部材用貫通溝31aを介して、第1パンチ部材用孔41d奥側まで挿入する。この際に、第1パンチ部材11の第1誘導部材挿入用貫通孔11aと第1誘導部材用スライド孔41eが重なり合うようにする。さらに、図9に示すように、第1誘導部材21を矢印Cの方向へ移動して、第1誘導部材用スライド孔41eに挿入し、第1誘導部材用貫通溝31b及び第1誘導部材挿入用貫通孔11aを介して反対側まで挿入する。
同様にして、第2スライド部材32を矢印Dの方向へ移動して第1支持用部材41の第2スライド部材用孔41cに第2貫通溝32aの一部が第2パンチ部材用孔41fと重なり合う位置まで挿入する。次に、第2パンチ部材12を矢印Eの方向へ移動し、第2パンチ部材用孔41fに挿入し、第2スライド部材32の第2貫通溝32aを介して第2パンチ部材用孔41f奥側まで挿入する。さらに、第2誘導部材22を矢印Fの方向へ移動して、第2誘導部材用スライド孔41gに挿入し、第2スライド溝32b及び第2誘導部材挿入用貫通孔12aを介して反対側まで挿入する。
その後、鉄パイプ80を第1筒状ワーク用挿入孔41aに挿入し(図10)、この鉄パイプ80に芯金70を挿入して、第1穿孔器具100aの組み立ては終了する(図11)。こうして例えば、第1支持用部材41に取り付けられた、第2パンチ部材12、第2誘導部材22及び第2スライド部材32は、図12に示すような状態で、第1支持用部材41内に配置されることになる。
次に、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cについて説明する。第2穿孔器具100bは、図3に示すように第3パンチ部材13、このパンチを誘導する第3誘導部材23、この第3誘導部材23の動きを制御する第3スライド部材33、並びにこれらを支持する第3支持用部材44を備えている。第3パンチ部材13及び第3誘導部材23は、第1実施形態の第1パンチ部材11及び第1誘導部材と同様の構成であるので説明を省略する。
第3スライド部材33は、図3に示すように、四角柱状の鉄の部材からなり、周壁の一つの周壁面から反対側の周壁面まで貫通する複数の第3パンチ部材用貫通溝33a及び第3誘導部材用貫通溝33bが設けられている。この第3パンチ部材用貫通溝33a及び第3誘導部材用貫通溝33bの形態は、第1パンチ部材用貫通溝13a及び第1誘導部材貫通溝13bと同様であるので、説明を省略する。
第2支持用部材43は、図3に示すように、鉄パイプ80を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第2筒状ワーク用挿入孔43aと、第3スライド部材33を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第3スライド部材用孔43bと、第3パンチ部材13を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第3パンチ部材用孔43dと、第3誘導部材23を第3パンチ部材13の進退方向へ一定距離移動可能に形成された第3誘導部材用スライド孔43eと、を有する。それぞれの構成は、第1支持用部材41の各構成と同様であるので説明を省略する。
一方、第3穿孔器具100cは、図3に示すように第4パンチ部材14、この第4パンチ部材を誘導する第4誘導部材24、この第4誘導部材24の動きを制御する第3スライド部材33、並びにこれらを支持する第3支持用部材44を備えている。第4パンチ部材14及び第4誘導部材24は、第1実施形態の第1パンチ部材11及び第1誘導部材21と同様であるので説明を省略する。
第3支持用部材44は、図3に示すように、鉄パイプ80を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第3筒状ワーク用挿入孔44aと、第3スライド部材33を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第4スライド部材用孔44bと、第4パンチ部材14を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第4パンチ部材用孔44dと、第4誘導部材24を第4パンチ部材用孔44dの進退方向へ一定距離移動可能に形成された第4誘導部材用スライド孔44eと、を有する。それぞれの構成は、第1支持用部材41の各構成と同様であるので説明を省略する。
このようにして構成された第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cは、第1穿孔器具100aと同様にして組み付けられる。但し、第1穿孔器具100aと異なるのは、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cのいずれもが1本の第3スライド部材33を共有している点が異なる。
次にカム器具90について説明する。カム器具90は、図13に示すように、プレス等の押圧装置(図示しない。)からの力Jを受ける被押圧部材91と、押圧装置から受けた力Jの方向を直角方向(K)へ変換する変換部材92と、この変換部材92を穿孔器具側へ付勢するバネ93と、これらの動きをスライド部材に伝達するベースプレート94とを備えている。
被押圧部材91は、プレス等の力を受ける被押圧面91aと、プレスの力の方向Jを変化させるためにプレス方向に対し、80°の傾斜面を有する変換部材押圧面91bと、を備えている。
変換部材92は、変換部材押圧面91bと同様の角度を有し、変換部材押圧面91bと摺動する摺動面92aを備えている。変換部材押圧面92bからの力によって、プレス方向に対して直角方向(K)へスライド移動される。変換部材92は、K方向へスライド自在のベースプレート94と連結されており、ベースプレート94はバネ93と接触されて、プレスによる変換部材のスライド方向(K)と反対の方向へ付勢されている。従って、プレスによる圧力がなくなると、ベースプレート94及び変換部材92は−K方向(初期位置)へ戻されることになる。ベースプレート94は、スライド部材固定部94aで第1スライド部材31及び第2スライド部材32と固定することができる。
こうして構成されたカム器具90によれば、プレス装置によって矢印Jの方向に押圧すると、変換部材92は矢印Kの方向へスライド移動する。このスライド移動によって、第1スライド部材31及び第2スライド部材32も同様に矢印Kの方向に移動させることができる。
同様に形成されたカム器具90が、反対側にも設置され、第3スライド部材33を可動可能に設置されている(図1参照)
次に、芯金固定部材60について説明する。芯金固定部材60は、図14に示すように、カム器具90に隣接して配置され、芯金70を固定する機能を有する部材である。芯金固定部材60は、芯金70の端部を固定することができる芯金固定孔61を備え、この芯金固定孔61に差し込まれた芯金70は、芯金固定孔61まで連通しているネジ孔62を介して、芯金固定ネジ63によって固定される。
以上のように構成された第1穿孔器具100a、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cは、図1に示すように、底板120に取り付けられる。その両端には、カム器具90及び芯金固定部材が配置されて穿孔用型110をなす。
次に、こうして組み立てられた穿孔用型110が鉄パイプ80に加工孔を開ける工程を以下に説明する。図15〜図17には、鉄パイプ80に加工孔が穿孔される一連の工程が示されている。説明の便宜のため、第1支持用部材41の第1パンチ部材11、第1誘導部材21及び第1スライド部材31を利用して一連の動きを説明する。
組み付けられた直後の状態では、図15に示すように、第1誘導部材21は、第1誘導部材用貫通溝31bの端に配置されていて、第1パンチ部材11を鉄パイプ80から最も離れた位置となるように位置決めしている。この状態からプレス装置(図示しない。)によってカム器具90の被押圧部材91を押圧すると、第1スライド部材31が矢印Gの方向へスライド移動される。すると、図16に示すように、第1誘導部材21は、第1誘導部材用スライド孔41eによって第1スライド部材31のスライド方向への移動は防止されているので、第1誘導部材21は第1誘導部材用貫通溝31bの反対側への端部へとスライドさせられることになる。このスライドに伴って、これに伴い第1パンチ部材11は、第1パンチ部材用孔41d内を矢印Hの方向へスライドするように進行して鉄パイプ80を穿孔する。さらに、第1スライド部材31を矢印Gの方向へ移動させると、図17に示すように、第1誘導部材21は、反対の端部まで移動されて、第1誘導部材用貫通溝31b内でも最も鉄パイプ80に近い側へ移動させられる。この移動に伴い、第1パンチ部材11は、最下点まで移動して芯金70内へスクラップを落として、鉄パイプ80の穿孔は終了する。以上のようにして、鉄パイプ80に加工孔が穿孔されることになる。加工処理が終了し、プレス装置が上昇すると、バネ93により、第1スライド部材31は初期位置に復帰し、第1誘導部材21は、初期の位置まで復帰され、それに伴い第1パンチ部材11も初期位置まで復帰する。第1誘導部材21が移動する際には、第1誘導部材21の側面と第1誘導部材用貫通溝31bの側面とで平面で接触して押圧される。すなわち、第1誘導部材21に対して広い面積で押圧するので、第1誘導部材21が摩耗したり、欠損する可能性を低減することができる。
第2パンチ部材12、第2誘導部材22、及び第2スライド部材32も同様にして、第2スライド部材32をスライドさせることによって、鉄パイプ80を加工することができる。
第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cは、反対側のカム器具90によって第3スライド部材33がスライドされて、上述の第1穿孔器具100aと同様の方法で鉄パイプ80に加工孔を穿孔することができる。
第1実施形態によれば、第1パンチ部材11は、第1スライド部材31内に配置されるため、第1パンチ部材用貫通溝31aによって、スライド方向以外の方向の横ぶれが抑えられる。また、第1誘導部材21によって、第1パンチ部材11中央付近の横ぶれが防止される。さらに、第1パンチ部材用孔41dによって、第1パンチ部材11の先端及び後端で進退以外の方向への移動が防止されているため、ほぼ完全に第1パンチ部材11の横ぶれを抑えることができる。また、第1パンチ部材用孔41dは、鉄パイプ80の側面まで設けられているため、第1パンチ部材11が鉄パイプ80に当接した際の横ずれを防止することができる。第2パンチ部材12、第3パンチ部材及び第4パンチも同様の理由で横ぶれを防止することができる。そのため加工精度の高い加工孔を穿孔することができる。
また、第1実施形態によれば、誘導部材がスライド部材を移動する際に、スライド部材の誘導部材用貫通溝に対して面で接触しているため、力が分散されることになり、誘導部材及び誘導部材用貫通溝の損傷を低減することができる。
また、第1パンチ部材11、第1誘導部材21及び第1スライド部材31はすべて第1支持用部材41内に配置されているため、第1穿孔器具100aはコンパクトな器具とすることができる。
また、第1実施形態においては、第1支持用部材41内に第1パンチ部材11及び第2パンチ部材12の2つのパンチを設置した例を用いて説明したが、これらのパンチの数は限定するものではなく、3以上設けても構わない。これによって、異なる角度を有する加工孔を複数穿孔することが可能になる。
また、第1実施形態においては、1つの第3スライド部材33が第2支持用部材43及び第3支持用部材44内に設置されるようにしたが、これに限定されるものではなく、さらに、支持用部材を設置すれば、さらに多くの加工孔を開けることができる。
このように、本発明においては、支持用部材内におけるパンチの数、スライド部材が収容される支持用部材の数を変更することによって、鉄パイプの様々な位置に加工孔を開けることが可能になる。