以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態における蓄電素子について説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
また、以下で説明する実施の形態及びその変形例のそれぞれは、本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態及びその変形例で示される形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態に及びその変形例おける構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
さらに、以下の説明及び図面中において、蓄電素子の電極体の巻回軸方向をX軸方向と定義する。つまり、X軸方向は、集電体もしくは電極端子の並び方向、または、容器の短側面の対向方向として定義できる。また、蓄電素子の上下方向をZ軸方向と定義する。つまり、Z軸方向は、集電体の足が延びる方向、または、容器の短側面の長手方向として定義できる。また、X軸方向及びZ軸方向と交差する方向をY軸方向と定義する。つまり、Y軸方向は、容器の長側面の対向方向、容器の短側面の短手方向、または、容器の厚さ方向として定義できる。
まず、図1及び図2を用いて、実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。図1は、実施の形態における蓄電素子10の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態における蓄電素子10の容器100の本体120を分離して蓄電素子10が備える各構成要素を示す斜視図である。
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。
蓄電素子10は、例えば、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、またはハイブリッド電気自動車(HEV)などに搭載される。
なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
これらの図に示すように、蓄電素子10は、容器100と、正極端子200と、負極端子400と、上部絶縁部材250及び450とを備えている。また、容器100の内部空間S1には、正極集電体500と、負極集電体600と、電極体700とが収容されている。
また、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解質)などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。なお、容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく様々なものを選択することができる。
容器100は、矩形筒状で底を備える本体120と、本体120の開口を閉塞する板状部材である蓋体110とで構成されている。また、容器100は、電極体700等を内部に収容後、蓋体110と本体120とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。なお、蓋体110及び本体120を形成する材料の種類は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。
電極体700は、正極と負極とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。正極は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる長尺帯状の金属箔である正極基材層上に正極活物質層が形成されたものである。また、負極は、銅や銅合金などからなる長尺帯状の金属箔である負極基材層上に負極活物質層が形成されたものである。また、セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートである。
正極活物質層に用いられる正極活物質、または負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質または負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。
そして、電極体700は、正極と負極との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものが巻芯(図示せず)に巻き回されて形成されている。つまり、本実施の形態では、電極体700は、巻回型の電極体である。なお、図2では、電極体700の形状としては長円形状を示したが、円形状または楕円形状でもよい。また、電極体700の形状は巻回型に限らず、平板状極板を積層した形状でもよい。
なお、電極体700は、正極側の端部である正極接続部701と負極側の端部である負極接続部702とを有している。正極接続部701は、正極の活物質層非形成部が積層されて束ねられた、電極体700の正極側の端部であり、負極接続部702は、負極の活物質層非形成部が積層されて束ねられた、電極体700の負極側の端部である。
なお、正極の活物質層非形成部とは、正極のうち正極活物質が塗工されず正極基材層が露出した部分であり、負極の活物質層非形成部とは、負極のうち負極活物質が塗工されず負極基材層が露出した部分である。
また、正極端子200は、上部絶縁部材250を介して蓋体110に取り付けられている。負極端子400は、上部絶縁部材450を介して蓋体110に取り付けられている。
上部絶縁部材250及び450は、電極端子と容器100との間に配置され、電極端子と容器100とを絶縁する絶縁部材である。具体的には、上部絶縁部材250は、正極端子200と容器100の蓋体110との間に配置され、上部絶縁部材450は、負極端子400と蓋体110との間に配置されている。上部絶縁部材250及び450は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリプロピレン(PP)などの樹脂で形成されている。
本実施の形態における上部絶縁部材250は、第一絶縁部材260と第二絶縁部材270とで構成されている。第一絶縁部材260と第二絶縁部材270との間には、破断または溶断可能な導電部材が配置されており、この導電部材を含む、蓄電素子10における導通路を断つ機構(安全機構)が正極端子200の下方に配置されている。本実施の形態における安全機構の詳細については、図3〜図8を用いて後述する。
正極集電体500は、電極体700の正極と容器100の本体120の側壁との間に配置され、正極端子200と電極体700の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、正極集電体500は、電極体700の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されている。
負極集電体600は、電極体700の負極と容器100の本体120の側壁との間に配置され、負極端子400と電極体700の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、負極集電体600は、電極体700の負極基材層と同様、銅または銅合金などで形成されている。
なお、蓋体110を挟んで上部絶縁部材250及び450それぞれの反対側には下部絶縁部材が配置されており、これにより、正極集電体500及び負極集電体600と、容器100とは電気的に絶縁されている。
次に、実施の形態における蓄電素子10の特徴である、安全機構及びその周辺の構造について図3〜図8を用いて説明する。なお、本実施の形態では、正極側に安全機構が配置されているため、以下では、正極端子200の周辺の構造についてのみ説明する。負極端子400の周辺の構造については、従来と同じ構造が採用されてもよく、また、以下で説明される、正極端子200の周辺と同じ構造が採用されてもよい。
図3は、実施の形態における蓄電素子10の正極端子200の周辺の構造を示す断面図である。具体的には、図3では、図2に示された蓄電素子10におけるIII−III断面が図示されている。また、図3では、電極体700の図示は省略されており、このことは、後述する図7〜図12についても同じである。
図4は、実施の形態における蓄電素子10の正極端子200の周辺の構造を示す分解斜視図である。図5は、実施の形態における導電部材300の外観を示す斜視図であり、図6は、実施の形態における第二絶縁部材270の外観を示す斜視図である。
本実施の形態における蓄電素子10は、蓄電素子10の導通路を断つ機構である安全機構180を備える。安全機構180は、導電部材300と反転部280とを含む。
具体的には、図3及び図4に示すように、蓄電素子10において、正極集電体500と正極端子200とは、導電部材300及び放電用端子290を介して電気的に接続されている。
導電部材300は、蓋体110に備えられた反転部280が反転した場合に、反転部280によって押されることで破断する。これにより、正極集電体500と正極端子200との間の導通が断たれ、その結果、例えば、過充電の状態に陥った蓄電素子10への充電が停止される。このように動作する安全機構180及びその周辺の構造を、以下に詳細に説明する。
本実施の形態の蓄電素子10では、蓋体110の上部に、第一絶縁部材260及び第二絶縁部材270で構成される上部絶縁部材250が配置され、第二絶縁部材270の上面に正極端子200が配置される。
蓋体110には、固定部116が突設されており、固定部116が、第一絶縁部材260の貫通孔264を貫通した状態でかしめられる。これにより、第一絶縁部材260が蓋体110に固定される。なお、図4では、固定部116は、かしめられた後の状態が図示されている。
また、第一絶縁部材260には、複数の突起261が設けられており、複数の突起261のそれぞれが、第二絶縁部材270の貫通孔271及び正極端子200の貫通孔201を貫通した状態で熱かしめされる。これにより、第二絶縁部材270が第一絶縁部材260に固定される。なお、図4では、複数の突起261のそれぞれは熱かしめが行われた後の状態が図示されている。
第一絶縁部材260にはさらに、反転部280による導電部材300の破断を可能とする、破断用開口263が形成されている。反転部280が反転した場合、反転部280は、破断用開口263を介して、導電部材300を押すことができる。
また、第一絶縁部材260と第二絶縁部材270との間には、放電用端子290及び導電部材300が配置されている。
放電用端子290は、正極集電体500と電気的に接続され、かつ、少なくとも一部が容器100の外部に配置された部材である。放電用端子290は、導電部材300が破断等されることで、電極体700と正極端子200との間の導通が断たれた場合に、電極体700に蓄積された電力を放電するために用いられる端子である。放電用端子290を覆う上部絶縁部材250には、外部から放電用端子290にアクセス可能なように、放電用開口265が設けられている。
つまり、非常用の電極端子として用いられる放電用端子290が、正極集電体500と導電部材300との電気的な接続の役割を担うため、例えば、蓄電素子10の構造を複雑化させずに、過充電状態の解消を図る仕組みを備えさせることができる。
また、放電用端子290は、電極体700の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成された部材であり、導電部材300と接続される第一接続部291と、正極集電体500と接続される第二接続部292とを有する。
第一接続部291と、導電部材300における導通方向(本実施の形態では導電部材300の長手方向と同じ)の両端部のうちの一方の端部である第一端部301とは接合され、これにより、放電用端子290と導電部材300とは、機械的及び電気的に接続される。
また、第二接続部292は、第一絶縁部材260に設けられた貫通孔(図示せず)、蓋体110に設けられた貫通孔113、及び、正極集電体500の端子接続部510に設けられた貫通孔511を貫通し、この状態でかしめられる。これにより、正極集電体500と放電用端子290とは、機械的及び電気的に接続される。なお、図4では、第二接続部292は、かしめられた後の状態が図示されている。
また、端子接続部510と蓋体110との間には、図3に示すように下部絶縁部材255が配置されており、これにより正極集電体500と蓋体110(容器100)とは電気的に絶縁される。
正極集電体500は、端子接続部510から電極体700の方向に延設された一対の脚部520を有しており、一対の脚部520と、電極体700の正極接続部701(図2参照)とは超音波溶接等によって接合される。これにより、正極集電体500と電極体700とは機械的及び電気的に接続される。
導電部材300の導通方向の両端部のうちの、第一端部301とは反対側の端部である第二端部302は、第二絶縁部材270に設けられた導通用開口272を介して、正極端子200と接合される。これにより、導電部材300と正極端子200とは機械的及び電気的に接続される。
なお、放電用端子290と導電部材300との接合の手法、及び、導電部材300と正極端子200との接合の手法としては、レーザー溶接、スポット溶接、クリンチ接合等の各種の手法を採用し得る。
本実施の形態では、上記構造により、正極集電体500と正極端子200との導通路が形成され、その導通路の一部が導電部材300によって形成されている。
具体的には、導電部材300は、正極集電体500及び正極端子200を電気的に接続する部材であり、容器100の外部に配置されている。
導電部材300は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属で構成されており、全体として所定の強度を有し、かつ、一部に脆弱部305を有している。
具体的には、導電部材300は、反転部280に押される部分と当接部275が当接する部分との間に、脆弱部305を有する。本実施の形態では、脆弱部305は、導電部材300において、他の部分より断面積の小さな部分である。
つまり、導電部材300には、正極集電体500との電気的な接続部分(本実施の形態では第一端部301)と、正極端子200との電気的な接続部分(本実施の形態では第二端部302)との間の一部に、他の部分より断面積の小さな脆弱部305が設けられている。
より詳細には、図5に示すように、導電部材300は板状であり、脆弱部305の厚みは、他の部分の厚みより小さい。つまり、金属製の導電部材300の一部を薄くすることで、機械的に弱い部分である脆弱部305が設けられている。
また、本実施の形態では、脆弱部305は、例えば図3及び図5に示されるように、導電部材300における、反転部280とは反対側の面である上面300aに溝305aが設けられることで形成されている。
つまり、導電部材300における導通方向に交差する方向に延びる溝305aを、導電部材300の上面300aに形成することで、線状の脆弱部305が導電部材300に設けられている。
このように、導電部材300に設けられた溝305aによって脆弱部305を形成することで、例えば、導電部材300が分断される位置を制御することができる。そのため、例えば、反転部280が反転した場合に、予期せぬ位置で導電部材300に亀裂が生じ、これにより導電部材300の破断が失敗する等の不具合の発生が抑制される。
また、本実施の形態では、脆弱部305の位置において、導電部材300の幅(導通方向及び厚み方向に直交する方向の長さ)も他の部分よりも狭められており、このことによっても、脆弱部305の断面積が他の部分よりも小さくされている。
なお、本実施の形態における脆弱部305は、導電部材300によって形成される導通路(第一端部301と第二端部302との間)の一部に設けられた、導通方向に直交する断面の面積が最も小さい部分である、ということもできる。
本実施の形態における蓄電素子10では、上記のように導通方向の一部に脆弱部305を有する導電部材300に対向する位置に、所定の条件下において導電部材300を破断する反転部280が備えられている。
具体的には、蓄電素子10は、容器100の、導電部材300と対向する位置に設けられた反転部280を備える。より詳細には、蓄電素子10は、容器100の内部に向けて凸状に形成された反転部280であって、容器100の外部に向けて凸状に変形可能に形成された反転部280を備えている。
また、反転部280の、導電部材300の側に、絶縁性を有する突起部282が配置されており、反転部280は、突起部282を介して導電部材300を押すことができる。
なお、突起部282は、例えばPPSまたはPPなどの樹脂で形成された絶縁性部材であり、反転部280の中央部に設けられた突出部281に嵌るキャップ状の形状を有している。
反転部280は、本実施の形態では、容器100とは別体の部品として作製され、容器100に設けられた孔を塞ぐように配置されている。具体的には、反転部280は、蓋体110に設けられた取付孔114を塞ぐように配置されている。
反転部280は、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金等の弾性を有する材料を、図3及び図4に示すように全体として、容器100の内部に向けて凸状(容器100の表面に対して凹状)になるように成形することで作製される。また、反転部280の周縁と、取付孔114の周縁とが例えばレーザー溶接によって接合され、これにより、反転部280の位置における容器100の気密性が保たれる。
つまり、反転部280は、蓄電素子10において、容器100の一部を構成し、容器100の内部空間S1と、容器100の外部との圧力差を受ける部材(容器100の一部分)である。
そのため、例えば蓄電素子10(電極体700)に対する過充電に起因して、電解液の一部が気化し、これにより容器100の内圧が上昇した場合、反転部280は、内圧を受けることで容器100の外部に向けて凸状に変形する。
なお、反転部280は、容器100とは別体であるため、例えば、各種の素材の中から、強度、反転動作のしやすさ、絶縁性、または容器100との接合性等に着目して、反転部280に適切な素材を選択することができる。
図7は、実施の形態における安全機構180の動作例を示す断面図である。なお、図7では、図3に示される断面と同じ位置の断面の一部を拡大した図が示されており、このことは、後述する図8〜図10のそれぞれについても同じである。
また、図7の(a)は、通常時における安全機構180の状態を示し、図7の(b)は、安全機構180が作動した状態を示している。
図7の(a)に示すように、通常時では、反転部280は、容器100の内部に向けて凸状であり、導電部材300の側に配置された突起部282は、導電部材300から離れた位置に存在する。
また、上述のように、例えば過充電に起因して容器100の内圧が上昇した場合、容器100の内部空間S1の圧力と、容器100の外部の圧力(例えば大気圧)との差(差圧)が大きくなる。その結果、差圧を受けた反転部280が、図7の(b)に示すように反転し、容器100の外部に向けて凸状に変形する。
反転部280が外部に向けて凸状に変形した場合、導電部材300は、図7の(b)に示すように、反転部280に押されることで破断する。
具体的には、導電部材300は脆弱部305を有し、脆弱部305は、導電部材300において、反転部280に押される部分、つまり、反転部280に設けられた突起部282が衝突する部分の側方に設けられている。
そのため、導電部材300は、脆弱部305において破断が生じ、図7の(b)に示すように、第二端部302を含む部分(電極端子側の部分)、及び、第一端部301を含む部分(集電体側の部分)の2つに分断される。
なお、通常時において、突起部282と導電部材300とは離されて配置されているため、反転部280は反転動作を開始しやすい状態にある。また、突起部282は、加速を開始した後に導電部材300に接触(衝突)するため、導電部材300に対し、局部的に衝撃を与えることができる。このことは、導電部材300の破断の確実化にとって有利である。また、突起部282と導電部材300とが離れて配置されていることで、例えば、通常時において蓄電素子10に振動が加えられた場合に、突起部282と導電部材300との干渉が抑制される。
また、本実施の形態では、導電部材300の上面300aに設けられた溝305aによって脆弱部305が形成されており、導電部材300は、上面300aの反対側から反転部280によって押し上げられる。
そのため、導電部材300は、溝305aの幅(上面300aにおける、溝305aの延設方向に直交する方向の幅)を広げるように変形する。これにより、溝305aの底の部分(肉厚が薄くされた部分)の破断が効率よく実行される。すなわち、脆弱部305における破断がより確実化される。
さらに、本実施の形態では、導電部材300の幅が、脆弱部305の位置において狭く形成されている。そのため、脆弱部305に応力が集中しやすく、このことによっても、脆弱部305における破断がより確実化される。
また、破断後における導電部材300の集電体側の部分は、外部に向けて凸状に変形した反転部280によって、押し上げられた状態に維持される。
より詳細には、反転部280が反転した場合、反転部280を容器100の内部に向けて凸状に戻すような力が作用しない限り、反転した状態が維持される。そのため、導電部材300が破断することで断たれた導通の復活が実質的に防止される。
なお、導電部材300の集電体側の部分に直接的に接触している突起部282は、電気的な絶縁性を有しているため、反転部280を介した導通は生じない。
また、脆弱部305は、断面積が小さな部分であるため、大電流が流れた場合において、導電部材300において最も溶断しやすい部分として機能する。
図8は、実施の形態における導電部材300が溶断した状態を示す断面図である。
例えば蓄電素子10を搭載した自動車の事故などの外的な要因によって、蓄電素子10において外部短絡が生じた場合を想定する。例えば容器100に金属製の部材が刺さることで電極体700において短絡が生じた場合、導電部材300に大電流が流れることが考えられる。
この場合、容器100の内外で差圧が生じないため、反転部280による、図7の(b)に示す動作(反転部280の反転)は期待できない。
しかし、脆弱部305は、金属製の導電部材300における断面積の小さな部分であり、大電流が流れることで高熱となり、その結果、導電部材300は、脆弱部305の位置で溶断する。これにより、蓄電素子10における電流の流れが停止され、蓄電素子10の更なる温度上昇を抑制することができる。
このように、本実施の形態における、導電部材300及び反転部280を含む安全機構180は、例えば、過充電に起因する内圧の上昇、及び、外部短絡に起因する大電流の発生、という互いに異なる2つの事象に対応する安全対策のための機構として機能することができる。
また、本実施の形態では、導電部材300は、反転部280によって押される方向に配置された第二絶縁部材270によって、当該方向への移動が規制されている。
具体的には、例えば図6及び図8に示すように、第二絶縁部材270は、当接部275と押さえ部276とを有している。
当接部275は、反転部280とは反対側から導電部材300に当接する部分である。本実施の形態では、平面視(Z軸プラスの方向から見た場合)において、導電部材300の脆弱部305を挟んで、反転部280によって押される部分とは反対側に、当接部275が配置される。
つまり、脆弱部305は、導電部材300において、反転部280に押される部分と当接部275が当接する部分との間に位置する。また、導電部材300の、集電体側の部分は、押さえ部276によって押さえられている。
これにより、反転部280が容器100の外部に向けて凸状に変形した場合、反転部280と当接部275とで、導電部材300を効率よくせん断することができる。
具体的には、当接部275と、反転部280によって押される部分との間の部分、つまり、本実施の形態では脆弱部305に、せん断応力を集中させることができる。
より詳細には、導電部材300は、脆弱部305を中心として一方の側に反転部280からの負荷がかけられ、かつ、他方の側が当接部275によって位置規制される。
その結果、外部に向けて凸状に変形した反転部280による脆弱部305の破断(せん断破壊)がより確実に行われる。そのため、例えば、反転部280のストローク(内部に向けて凸状から外部に向けて凸状に変形する場合の最大変位量)が比較的に小さい場合であっても、反転部280による導電部材300の破断が可能となる。つまり、安全機構180の小型化が可能となり、このことは、蓄電素子10の小型化にとって有利である。
また、導電部材300の全体を、伸びの大きな材料である金属で構成した場合であっても、脆弱部305及び当接部275の少なくとも一方が存在することで、反転部280の比較的に小さなストロークによる導電部材300の破断が可能である。
つまり、導電部材300に、全体としての所定の強度を持たせつつ、導電部材300及び反転部280を含む安全機構180の小型化が図られる。
このように、本実施の形態における蓄電素子10は、容器100の外部に配置された導電部材300と、容器100の導電部材300と対向する位置に設けられた反転部280と、反転部280とは反対側から導電部材300に当接する当接部275とを備える。
反転部280は、容器100の内部に向けて凸状に形成されている。当接部275は、導電部材300における、反転部280に押される部分と、正極集電体500または正極端子200との電気的な接続部分(第一端部301または第二端部302)との間に位置している。
本実施の形態では、当接部275は、導電部材300における、反転部280に押される部分と、正極端子200との電気的な接続部分(第二端部302)との間の位置において、反転部280とは反対側から導電部材300に当接している(例えば図7の(b)参照)。
上記構造を有する蓄電素子10において、容器100の内部に向けて凸状に形成された反転部280は、容器100の外部に向けて凸状に変形した場合(反転した場合)に、導電部材300を押すことができる。
これにより、例えば、過充電に起因して容器100の内圧が上昇した場合に、反転部280が容器100の外部に向けて凸状に変形する。つまり、反転部280が反転し、これにより生じる力を利用して、導電部材300が破断される。つまり、電極体700と正極端子200との間の導通路が機械的に切断される。
より具体的には、反転部280が反転した場合、導電部材300の一部に反転部280からの負荷がかけられ、かつ、当該一部の側方の部分は当接部275と当接することで位置規制される。これにより、反転部280と当接部275とで、導電部材300を効率よく破断(せん断破壊)することができる。
そのため、導電部材300の全体を、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属で構成した場合であっても、反転部280が反転することで生じる力を利用して、導電部材300を破断することができる。つまり、導電部材300全体として所定の強度を有し、かつ、反転部280に押されることによる破断の確実性が担保される。
従って、通常時における導電部材300の信頼性を損なわず、かつ、容器100の内圧が過度に上昇した場合、蓄電素子10における電流の流れを停止させることができる。その結果、その後の容器100の内圧の上昇を抑制することができる。
また、本実施の形態における導電部材300は、反転部280に押される部分と当接部275が当接する部分との間に、脆弱部305を有する。つまり、導電部材300において、反転部280が反転することで生じるせんだん応力が集中する部分に脆弱部305が設けられる。そのため、反転部280及び当接部275による導電部材300の破断がより確実化される。
本実施の形態では、脆弱部305は、導電部材300において、他の部分より断面積の小さな部分として設けられる。そのため、上述のように、例えば外部短絡に起因して導電部材300に大電流が流れた場合、脆弱部305の位置で溶断され、これにより、蓄電素子10の温度上昇が抑制される。つまり、導電部材300を含む安全機構180は、必ずしも容器100の内圧の上昇を伴わない事象(大電流の発生)に対する安全性確保のための機構としても機能する。
また、導電部材300は、容器100の外部に配置されるため、安全機構180を、容器100の内部容量を実質的に消費しない態様で蓄電素子10に配置することができる。また、導電部材300が破断または溶断することで金属片またはスパッタ等の異物が発生した場合であっても、その異物が、例えば電極体700の内部に侵入することがない。つまり、金属製の導電部材300が分断されることで発生する異物によって生じ得る、蓄電素子10における内部短絡の発生が抑制される。
さらに、導電部材300は、上部絶縁部材250によって覆われている。そのため、例えば複数の蓄電素子10を並べて蓄電モジュールを構成した場合において、1つの蓄電素子10の導電部材300が分断された場合であっても、当該分断によって発生する異物が、他の蓄電素子10及び他の構成要素等に悪影響を及ぼさない。
また、例えば容器100に安全弁(図示せず)が備えられている場合に、安全弁が開放する前に、上昇した内圧を利用して蓄電素子10における電流の流れを停止させ、これにより内圧の上昇を停止させることも可能である。つまり、過充電等に起因した安全弁の開放(外部へのガスの放出)の可能性を低減させることができる。
以上説明したように、本実施の形態における蓄電素子10は、容器100と容器100に収容された電極体700とを備える蓄電素子10であって、安全性の高い蓄電素子10である。
なお、蓄電素子10は、図3〜図8に示す安全機構180とは異なる態様の安全機構を有してもよい。そこで、以下に、実施の形態における安全機構180に関する各種の変形例を説明する。
(変形例1)
図9は、実施の形態の変形例1における安全機構180aの構造を示す断面図である。図9に示す安全機構180aは、上記実施の形態における安全機構180と比較すると、導電部材300に対して当接部275が配置されていない点で異なる。
この場合であっても、例えば、導電部材300の脆弱部305以外の部分の厚みを厚くすること、または、反転部280のストロークを大きくすることなどにより、反転部280の反転によって生じる力を利用して、導電部材300を破断させることは可能である。
また、例えば外部短絡に起因して導電部材300に大電流が流れた場合において、脆弱部305が溶断される点については、上記実施の形態における安全機構180と同じである。
従って、蓄電素子10が、変形例1における安全機構180aを備えた場合であっても、蓄電素子10の安全性は向上される。
(変形例2)
図10は、実施の形態の変形例2における安全機構180bの動作例を示す断面図である。具体的には、図10の(a)は、通常時における安全機構180bの状態を示し、図10の(b)は、安全機構180bが作動した状態を示している。
図10の(a)及び(b)に示す安全機構180bは、上記実施の形態における安全機構180と比較すると、導電部材310が脆弱部を有しない点で異なる。
具体的には、本変形例における導電部材310は、第一端部301と第二端部302との間において断面積が実質的に均一である。
つまり、本変形例における導電部材310は、上記実施の形態における溝305a等の、厚みを薄くするため(断面積を小さくするため)の部位を有していない。
この場合であっても、反転部280の反転によって生じる力を効率よく利用して、導電部材300を破断させることは可能である。
例えば、図10の(a)に示すように、平面視における当接部275と、導電部材310の、反転部280に押される部分との間の距離Lを小さくする。
これにより、反転した反転部280に押されることで導電部材310に生じるせん断応力を、狭い範囲(図10の(a)におけるLの範囲)に集中させることができる。
その結果、導電部材310に脆弱部がない場合であっても、図10の(b)に示すように、導電部材310は破断(せん断破壊)される。
簡単に言うと、安全機構180bでは、導電部材310に対して、導電部材310に直接的に接触する突起部282と、当接部275とを、はさみが有する2つの刃のように機能させることで、導電部材310を切断することができる。
従って、蓄電素子10が、変形例2における安全機構180bを備えた場合であっても、蓄電素子10の安全性は向上される。
(変形例3)
図11は、実施の形態の変形例3における安全機構180cの構造を示す断面図である。図11に示す安全機構180cは、上記実施の形態における安全機構180と比較すると、反転部280aが、容器100の一部を加工することで容器100に設けられている点で異なる。
具体的には、本変形例における反転部280aは、容器100の一部(蓋体110の一部)を内部に向けて凸状(容器100の表面に対して凹状)に形成することで容器100に設けられている。
例えば、金属製の蓋体110を形成する際のプレス加工により、蓋体110としての形状を整えるとともに、その一部に、図11に示す、反転部280aに相当する、容器100の内部に向けて凸状の部分を形成する。これにより、突出部281を含む反転部280aが蓋体110に設けられ、その後、突出部281に、突起部282が取り付けられる。
このように、反転部280aは、容器100の一部に対する加工によって容器100に設けられるため、例えば、蓄電素子10の部品点数の増加が抑制される。また、例えば、容器100における反転部280aの周辺に、気密性についての問題が生じない。
また、容器100は、上述のように、ステンレス鋼等の弾性変形可能な材料によって形成される。そのため、反転部280aが容器100と一体の部材である場合であっても、反転部280の反転によって生じる力を利用して、導電部材300を破断させることは可能である。
従って、蓄電素子10が、変形例3における安全機構180cを備えた場合であっても、蓄電素子10の安全性は向上される。
(変形例4)
図12は、実施の形態の変形例4における安全機構180dの構造を示す断面図である。図12に示す安全機構180dは、上記実施の形態における安全機構180(例えば図3参照)と比較すると、当接部275が正極集電体500側に配置されている点で異なる。
具体的には、本変形例における当接部275は、導電部材300における、反転部280に押される部分と、正極集電体500との電気的な接続部分(第一端部301)との間に配置されている。
つまり、当接部275が、電極端子(正極端子200)側ではなく、集電体(正極集電体500)側に配置されている。このように、当接部275が集電体側に配置されている場合であっても、反転部280が反転した場合、導電部材300の一部に反転部280からの負荷がかけられ、かつ、当該一部の側方の部分は当接部275によって位置規制される。
そのため、反転部280が反転した場合、反転部280と当接部275とで、導電部材300を効率よく破断(せん断破壊)することができる。
また、本変形例では、導電部材300の、反転部280に押される部分と、当接部275が当接する部分との間に、脆弱部305が設けられている。これにより、上記実施の形態等で説明したように、反転部280が反転した場合における導電部材300の破断がより確実化される。
従って、蓄電素子10が、変形例4における安全機構180dを備えた場合であっても、蓄電素子10の安全性は向上される。
(変形例5)
図13は、実施の形態の変形例5における蓄電素子10の安全機構181の周辺構造を示す模式図である。
なお、図13において、容器100、正極端子200、上部絶縁部材850、容器100、及び安全機構181については、Y軸方向における容器100の中心を通るXZ平面に平行な断面が模式的に図示されている。また、正極集電体500及び電極体700については、Y軸方向の側面が模式的に図示されている。さらに、正極集電体500と導電部材300との間の導通路、及び、導電部材300と正極端子200との間の導通路は、点線によって模式的に図示されている。
本変形例における安全機構181は、反転部280と、正極集電体500及び正極端子200を電気的に接続する導電部材300とを有し、反転部280が容器100の内圧を受けて反転することで、導電部材300が破断される。この動作については、上記実施の形態における安全機構180と共通する。
しかしながら、本変形例における安全機構181は、図13に示すように、容器100の内部空間S1に全体が収容されており、この点で、上記実施の形態における安全機構180と異なる。
具体的には、安全機構181は、内部空間S2の気密性を維持した状態で、反転部280と導電部材300とを保持する保持体800を有しており、保持体800は、導電部材300に対し、反転部280とは反対側から当接する当接部875を有している。なお、保持体800は、例えばPPSまたはPPなどの樹脂で形成されている。
また、反転部280は、容器100の内部空間S1と、保持体800の内部空間S2との境界に位置している。つまり、反転部280は、容器100の内部空間S1の圧力と、保持体800の内部空間S2の圧力との差圧を受ける位置に配置されている。
そのため、例えば電極体700に対する過充電に起因して、電解液の一部が気化し、これにより容器100の内圧(S1の圧力)が上昇した場合、反転部280は、当該差圧(S1の圧力−S2の圧力)が過大になることで、導電部材300に向けて凸状に変形する。
すなわち、反転部280の、容器100の内圧を直接的に受ける面とは反対側の面が、容器100の内部空間S1とは隔離された空間にさらされていれば、反転部280は、容器100の内圧の上昇に伴って増加する当該差圧(S1の圧力−S2の圧力)を受ける。これにより、反転部280が反転する。
なお、本変形例では、安全機構181の全体が容器100の内部であって、蓋体110と電極体700との間に配置されているが、安全機構181の位置はこれに限定されない。例えば、保持体800の一部または全部が、容器100の外部に露出するように、安全機構181が配置されてもよい。
この場合であっても、容器100の内部空間S1の気密性が維持され、かつ、保持体800の内部空間S2の圧力が、容器100の内圧(内部空間S1の圧力)の上昇に追随して上昇しなければよい。この状態であれば、容器100の内圧が上昇した場合に、反転部280を反転させることは可能である。
つまり、保持体800は、保持体800の内部空間S2と、容器100の内部空間S1とを隔離していれば、例えば、内部空間S2と容器100の外部とを連通する孔または開口を有していてもよい。すなわち、保持体800の内部空間S2の圧力は、容器100の外部の圧力(例えば大気圧)と同一であってもよい。
なお、保持体800の内部空間S2と、容器100の外部とが連通した状態にある場合、保持体800自体が、容器100の内部空間S1に収容されている場合であっても、保持体800の内部空間S2は、容器100の外部とみなすこともできる。
(他の実施の形態)
以上、本発明における蓄電素子について、実施の形態及びその変形例に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態またはその変形例に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
例えば、上記実施の形態における突起部282の形状は、円錐台に近い形状(例えば図3及び図4参照)であるが、突起部282の形状に特に限定はない。例えば、突起部282の上端面(導電部材300に当接する端面)を、導電部材300の溝305aの延設方向に細長い長方形に形成してもよい。
これにより、反転部280が反転することで生じる力を、導電部材300の溝305aに沿った領域に集中して与えることができる。このことは、反転部280のストロークの短縮化(安全機構180の小型化)等の効果を生じ得る。
つまり、突起部282は、導電部材300のサイズ及び脆弱部305の形状等に応じたサイズ及び形状に作製することができる。これにより、例えば、導電部材300の破断の確実性を向上させることができる。
また、反転部280に、突起部282が配置されていなくてもよい。例えば、導電部材300の、反転部280によって押される部分に、樹脂製のシート等の絶縁部材を配置する。また、反転部280が反転した場合に、反転部280が絶縁部材を介して導電部材300を押すように、反転部280のストロークを調整する。これにより、反転部280が反転することによる導電部材300の破断が可能であり、かつ、反転した状態の反転部280と導電部材300とは電気的に絶縁される。
また、反転部280によって押される部分が、例えば図7の(a)に示すように、脆弱部305の側方である場合、当該押される部分に絶縁部材を配置した場合であっても、脆弱部305の脆弱性(破断の確実性)は損なわれない。
また、例えば上記変形例4における安全機構180dにおいて、導電部材300は、脆弱部305を有しなくてもよい。つまり、安全機構180dが、導電部材300に換えて、上変形例2における導電部材310を有してもよい。
この場合であっても、例えば上記変形例2で説明したように、導電部材310の、当接部275に当接する部分と反転部280に押される部分との距離を小さくすることで、反転部280からの力を効率よく利用して、導電部材300を破断させることは可能である。
また、通常時において、突起部282及び導電部材300は互いに接触した状態で配置されてもよい。この場合であっても、反転部280が反転することで生じる力を利用して導電部材300を破断することは可能である。
また、上記実施の形態では、正極集電体500と正極端子200との間の導通路は、放電用端子290及び導電部材300によって形成されているが、放電用端子290は、当該導通路の一部を形成しなくてもよい。つまり、導電部材300と正極集電体500とが直接的に接続されていてもよい。
また、当該導通路の一部が、放電用端子290及び導電部材300以外の部材によって形成されてもよい。例えば、導電部材300と正極端子200との間に別の金属部材が接続されていてもよい。