本発明によるベーン型内燃機関の一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、図面に矢印が付される場合、Fを前、Bを後ろ、Rを右、Lを左、Uを上、Dを下、とする。
実施形態のベーン型内燃機関10は、概略的には、1サイクルで爆発、膨張、排気、空気吸気、空気圧縮、過給、掃気、圧縮空気吸気、混合ガス圧縮行程を順に繰り返すように構成されている。
ベーン型内燃機関10は、図1〜5に示すように、ハウジング20と、ハウジング20に内蔵されて回動可能なロータ200と、ロータ200に装着されるベーン230と、を備えている。ハウジング20とロータ200との隙間には、図4に示すように、中空部が形成されている。
そして、ロータ200に取り付けられる前主軸260、後主軸270と、前主軸260に取り付けられる大歯付プーリ11と、ハウジング20をロータ200の回転軸方向と略平行に挿通するバルブシャフト150と、バルブシャフト150に取り付けられる小歯付プーリ12と、大歯付プーリ11から小歯付プーリ12に架け渡された歯付ベルト13により駆動力が伝達され、バルブシャフト150が駆動する。バルブシャフト150に取り付けられた、冷却ファン160、前ブロア170、後ブロア180及びハウジング20の一部を覆うシュラウド16等により、ベーン型内燃機関10は冷却可能とされている。
ハウジング20は、センターハウジング部30と、センターハウジング部30の前後方向における両側に配置された前ハウジング部50及び後ハウジング部100と、に3分割されて構成されている。
また、詳細は後述するが、ハウジング20には、燃焼ガスGを伝播可能な燃焼ガス伝播通路21と、外気を流通可能な外気流通部22と、過給気を流通可能な過給気通路23と、が配設されている。
センターハウジング部30は、図4、6〜8に示すように、略円筒状の単一の部材で形成され、中心線Cを中心に真円形に形成された内周面31を有している。センターハウジング部30の外周面には、第一の肉盛部32と、第二の肉盛部33が形成され、第一の肉盛部32と、第二の肉盛部33との間にボス部34が形成されている。
点火プラグ35は、ボス部34を、中心線Cに向かって挿通して配置されている。ボス部34には、点火プラグ35が混合ガスに点火できるように点火口36が配置されている。
また、センターハウジング部30の第一の肉盛部32には、後述するバルブ挿通孔24を構成する、前端面から後端面まで貫通するバルブ挿通孔形成孔37が配設されている。
センターハウジング部30の過給気行程が行われる領域に臨む部分には、内周面31からバルブ挿通孔形成孔37まで連通して、過給気行程で発生する圧縮空気を導入可能な空気導入孔38が配設されている。
センターハウジング部30の周壁部分の下部には、後述する圧力連通孔25を構成する、中心線Cと略平行で前端面から後端面まで貫通する圧力連通孔形成孔39が配設されている。
センターハウジング部30の外周面には、板状の冷却フィン40が、外側に突出して円周方向に沿って複数配置されている。
燃焼ガス伝播通路21に関する構成について説明する。
センターハウジング部30の前後方向における両端部には、燃焼ガス伝播通路21の一部を構成する、燃焼ガスGを導入する導入孔部41と、燃焼ガスGが流通する第一有底溝44、第二有底溝45と、燃焼ガスGを噴出する噴出孔部46と、がそれぞれ配設されている。
導入孔部41は、図7、8(a)、(b)に示すように、センターハウジング部30の内周面31の膨張行程が行われる領域に臨む部分に、上下方向に対して内側に若干傾いた断面円形状の有底孔として形成される導入細孔42と、第一有底溝44と導入細孔42とを連通させる連通細孔43と、で構成されている。
噴出孔部46は、図7、8(a)、(b)に示すように、センターハウジング部30の内周面31の混合ガス圧縮行程が行われる領域に臨む部分に、上下方向に対して内側に若干傾いた断面円形状の有底孔として形成される噴出細孔47と、第二有底溝45と噴出細孔47とを連通させる連通細孔48と、で構成されている。
第一有底溝44は、センターハウジング部30の、中心線C方向における一の端面から他の端面に向かう断面矩形状の有底溝(前端面においては前端面から後端面に向かう有底溝、後端面においては、後端面から前端面に向かう有底溝となる)として形成され、一端側で導入孔部41と連通し、他端側でバルブシャフト150を挿通可能に形成されたバルブ挿通孔形成孔37と連通している。
第二有底溝45は、センターハウジング部30の、中心線C方向における一の端面から他の端面に向かう断面矩形状の有底溝(前端面においては前端面から後端面に向かう有底溝、後端面においては、後端面から前端面に向かう有底溝となる)として形成され、一端側でバルブ挿通孔形成孔37と連通し、他端側で噴出孔部46と連通している。
また、センターハウジング部30の第二の肉盛部33には、混合ガス圧縮行程が行われる領域に向かって燃料を供給する燃料供給ノズル49が配設されている。
前ハウジング部50は、センターハウジング部30の前側に配置される前ハウジング60と、前ハウジング60の前側に配置される前ケース80と、で構成されている。後ハウジング部100は、センターハウジング部30の後側に配置される後ハウジング110と、後ハウジング110の後側に配置される後ケース130と、で構成されている。
ハウジング20に配設される外気流通部22として、後ハウジング部100に配設される第一外気流通部101と、前ハウジング部50に配設される第二外気流通部51と、がある。
前ハウジング60と後ハウジング110とは、前後方向において一対に構成され、機能作用で関連する構成についてまとめて説明する。
前ハウジング60は、図9〜11に示すように、略円盤状に形成され、中央部分に後述する前主軸260のフランジ部262を挿通可能な断面円形状の貫通孔として形成された主軸挿通孔61を有している。主軸挿通孔61の周辺近傍には、吸気口62、排気口63となる円弧孔が形成されている。
第二外気流通部51に関する構成について説明する。
前ハウジング60には、第二外気流通部51の一部を構成する、円弧溝部64と、吸引溝部65と、が配設されている。
円弧溝部64は、前ハウジング60の前端面から後端面に向かう略円弧状の有底孔として形成されている。吸引溝部65は、前端面から後端面に向かう略円弧状の有底孔として形成され、吸引開口部66において、円弧溝部64と連通している。
円弧溝部64の略中央部部分には、円弧溝部64の底面から前ハウジング60の後端面まで貫通した断面円形状の圧力連通孔形成孔67が形成されている。
前ハウジング60には、前端面から後端面に向かう断面円形状の有底孔として形成されたブロア室形成孔68と、ブロア室形成孔68の底面から後端面まで貫通する断面円形状のバルブ挿通孔形成孔69と、が形成されている。
ブロア室形成孔68は、前ハウジング60の前端面からの深さが吸引溝部65より浅く形成され、吸引溝部65と段差を有し、その段差部分において、吸引溝部65と連通している。
吸引溝部65は、ブロア室形成孔68から遠ざかるにしたがって幅が狭小となるように形成され、吸引接続孔70と接続されている。
吸引接続孔70は、吸引溝部65の底面から前ハウジング60の後端面及び主軸挿通孔61まで貫通する貫通孔として形成されている。
後ハウジング110は、図12〜14に示すように、略円盤状に形成され、中央部分に後述する後主軸270のフランジ部272を挿通可能な断面円形状の貫通孔として形成された主軸挿通孔111を有している。
主軸挿通孔111の周辺近傍には、吸気口112、排気口113となる円弧孔が形成されている。
後ハウジング110には、第一外気流通部101の一部を構成する、円弧溝部114と、吹込み溝部115と、が配設されている。
円弧溝部114は、後ハウジング110の後端面から前端面に向かう略円弧状の有底孔として形成されている。吹込み溝部115は、後端面から前端面に向かう略三角形状の有底孔として形成され、吹込み開口部116において、円弧溝部114と連通している。
円弧溝部114の略中央部部分には、円弧溝部114の底面から後ハウジング110の前端面まで貫通した断面円形状の圧力連通孔形成孔117が形成されている。
圧力連通孔25は、それぞれ前後方向に沿って貫通する、センターハウジング部30の圧力連通孔形成孔39と、前ハウジング60の圧力連通孔形成孔67と、後ハウジング110の圧力連通孔形成孔117が、前後方向(ハウジング20の中心線C方向、ロータ200の軸線方向)に沿って連通することで形成される。
第一外気流通部101と、第二外気流通部51とは、図5に示すベーン型内燃機関10が組み付けられた状態において、圧力連通孔25により連通されることになる。
後ハウジング110には、後端面から前端面に向かう有底孔として形成された断面円形状のブロア室形成孔118と、ブロア室形成孔118の底面から前端面まで貫通する断面円形状のバルブ挿通孔形成孔119と、が形成されている。
ブロア室形成孔118は、後ハウジング110の前端面からの深さが吹込み溝部115より浅く形成され、吹込み溝部115と段差を有し、その段差部分において、吹込み溝部115と連通している。
吹込み溝部115は、ブロア室形成孔118から遠ざかるにしたがって幅が狭小となるように形成され、吹込み接続孔120と接続されている。
吹込み接続孔120は、吹込み溝部115の底面から後ハウジング110の前端面及び主軸挿通孔111まで貫通する貫通孔として形成されている。
過給気通路23に関連する構成について説明する。
図9〜11に示すように、前ハウジング60の前端面には、前端面から後端面に向かう有底溝として形成された、過給気通路23の一部を構成する過給気通路形成溝71が配設されている。
過給気通路形成溝71は、主軸挿通孔61の外周縁に略沿った円弧状に形成され、一端において、ブロア室形成孔68及び過給気導入孔72と連通するように形成され、他端において、接続孔73と連通するように形成されている。接続孔73は、吸気口62と連通するように形成されている。
図12〜14に示すように、後ハウジング110の後端面には、後端面から前端面に向かう有底溝として形成された、過給気通路23の一部を構成する過給気通路形成溝121が配設されている。
過給気通路形成溝121は、主軸挿通孔111の外周縁に略沿った円弧状に形成され、一端において、ブロア室形成孔118及び過給気導入孔122と連通するように形成され、他端において、接続孔123と連通するように形成されている。接続孔123は、吸気口112と連通するように形成されている。
換言すれば、バルブ挿通孔形成孔69、119と、過給気通路形成溝71、121とは、過給気導入孔72、122を介してそれぞれ連通可能とされていることになる。
過給気通路形成溝71、121は、ブロア室形成孔68、118、円弧溝部114及び吹込み溝部115、円弧溝部64及び吸引溝部65、より前ハウジング60、後ハウジング110の前端面、後端面からの深さが深くなるようにそれぞれ形成されている。
さらに、ブロア室形成孔68、118、円弧溝部114及び吹込み溝部115と円弧溝部64及び吸引溝部65、過給気通路形成溝71、121の順に、前ハウジング60、後ハウジング110の前端面、後端面から底部までの深さが深くなるようにそれぞれ形成されている。
前ケース80と後ケース130とは、前後方向において一対に構成され、機能作用で関連するのでまとめて説明する。
なお、図17では冷却フィン90を、図20では冷却フィン141を省略している。
前ケース80は、図15〜17に示すように、主軸挿通孔81を有した円筒状のボス部82と、フランジ部83と、を有している。
ボス部82の主軸挿通孔81は、前主軸260の大径部261を挿通可能な貫通孔としてそれぞれ形成され、前主軸260の大径部261との間にシール部材、軸受部材が配設されて前主軸260の回転を許容可能とされている(図5参照)。
フランジ部83には、厚みが他の部分より若干厚く形成された取付ベース部84が設けられている。取付ベース部84には、吸気口62と接続される吸気接続口85と、排気口63と接続される排気接続口86と、が配設されている。
また、フランジ部83には、前側に円柱状に突出する肉厚部87が配設されている。肉厚部87には、前ケース80の後端面から前端面に向かう有底孔として形成されたブロア室形成孔88と、ブロア室形成孔88の底面から前端面まで貫通して形成されたバルブ挿通孔形成孔89と、が配設されている。
後ケース130は、図18〜20に示すように、主軸挿通孔131を有した円筒状のボス部132と、フランジ部133と、を有している。
ボス部132の主軸挿通孔131は、後主軸270の大径部271を挿通可能な貫通孔としてそれぞれ形成され、後主軸270の大径部271との間にシール部材、軸受部材が配設されて後主軸270の回転を許容可能とされている(図5参照)。
フランジ部133には、厚みが他の部分より若干厚く形成された取付ベース部134が設けられている。取付ベース部134には、吸気口112と接続される吸気接続口135と、排気口113と接続される排気接続口136と、が配設されている。
また、フランジ部133には、外側が四角柱状で内側が半円柱状に後側に突出して、噴射ポンプ190を取り付け可能とする噴射ポンプ取付部137が配設されている。噴射ポンプ取付部137には、後端面から前端面に向かう有底孔として形成されたシャフト収容孔138と、シャフト収容孔138の底面から前端面まで貫通するバルブ挿通孔形成孔139と、が配設されている。
噴射ポンプ取付部137には、シャフト収容孔138から噴射ポンプ取付部137の外側の端面まで貫通して、噴射ポンプ190を螺合可能な噴射ポンプ取付孔140が配設されている。
前ケース80のフランジ部83の前面、後ケース130のフランジ部133の後面には、前後方向(軸線方向)からみて、前主軸260、後主軸270の軸心と同心円周上となるように冷却フィン90、141が、それぞれ複数設けられている。
バルブ挿通孔形成孔89とブロア室形成孔88、ブロア室形成孔68、バルブ挿通孔形成孔69と、バルブ挿通孔形成孔37、バルブ挿通孔形成孔119、ブロア室形成孔118、バルブ挿通孔形成孔139、シャフト収容孔138と、が連通することで、ハウジング20に前後方向に沿ってバルブ挿通孔24が形成されることになる。
バルブシャフト150は、図21、22に示すように、大径部151と、大径部151より小径に形成された中径部152と、中径部152より小径に形成された小径部153と、大径部151と中径部152の間に配設される偏心カム部154と、を有し、センターハウジング部30と、前ハウジング部50と、後ハウジング部100と、を前後方向において、挿通可能に形成されている。
バルブシャフト150は、大径部151から中径部152の前部に至る有底孔として形成される通気孔155と、通気孔155に直交するとともに連通して形成された導入連通孔156及び排出連通孔157と、を有している。
導入連通孔156は、センターハウジング部30の空気導入孔38と連通可能に二つ形成され、ハウジング20の中空部分と連通可能とされている。
排出連通孔157は、前ハウジング60、後ハウジング110に配設された過給気導入孔72、122と連通可能、かつ、導入連通孔156の外側に一つずつ形成され、過給気導入孔72、122を介して過給気通路形成溝71、121と連通可能とされている。
中径部152の中央後寄りの部分であって、センターハウジング部30のバルブ挿通孔形成孔37と連通する第一有底溝44、第二有底溝45と連通可能な位置には、バルブシャフト150の軸線方向からみて外周縁部から軸線方向に向かう凹部159が形成されている。
本実施形態では、凹部159は、軸線から周方向における端部を結ぶ二つ線の開き角度が約70度となるように形成されている。換言すれば、ロータ200が一回転するとバルブシャフト150が2.5回転するように設定され、ロータ200が約72度回転するとバルブシャフト150は180度回転する。膨張行程の移動領域内にある時間の180分の70の間、第一有底溝44、第二有底溝45と凹部159が連通するようこととされている。
通気孔155の後端部には、ねじが形成され、ねじ部材158が螺合可能とされ、ねじ部材158が螺合されることにより、通気孔155の後端が閉塞される。
通気孔155と、導入連通孔156と、排出連通孔157と、で通気通路150Aが構成される。
バルブシャフト150の中径部152の前側には、冷却ファン160が取り付けられている。冷却ファン160は、図22、23に示すように、円形の平板をプレス機でプレス加工等して形成される。冷却ファン160は、四つの略扇状の扇片部161を有している。
扇片部161は、回転方向前側の外周縁の二点を結ぶ仮想線上を後側に折り曲げた折り曲げ部162と、回転方向後側が後側に湾曲して形成された湾曲部163と、を有している。冷却ファン160は、バルブシャフト150に取り付けられた状態において、後側、かつ、回転方向外側に向かって空気の流れを発生可能とされている。
中径部152の冷却ファン160より後ろ側のブロア室形成孔88、118に対応する部分には、前ブロア170、後ブロア180がそれぞれ取り付けられる。
前ブロア170、後ブロア180は、図22、24に示すように、円形の平板をプレス機でプレス加工等して形成され、回転方向前側の外周縁部が後側に折り曲げられた八か所の折り曲げ部171、181を有している。
折り曲げ部171、181は、円形の平板に径方向に沿って切り込み172、182を形成し、外周縁の二点を結ぶ仮想線上を切込みまで後側に折り曲げて形成される。
前ブロア170、後ブロア180は、バルブシャフト150に取り付けられた状態において、回転方向外側に向かって空気の流れを発生可能とされている。
バルブシャフト150の、冷却ファン160と前ブロア170が取り付けられる間には、バルブ挿通孔形成孔89との間に軸受部材91が嵌め込まれ、前ケース80に対してバルブシャフト150が回転可能とされている(図25参照)。
偏心カム部154は、中径部152より大きく大径部151より小さい円柱状に形成され、回転中心が中径部152の回転中心と同一とされている。
偏心カム部154の外側には、軸受部材142が嵌め込まれている。偏心カム部154は、軸受部材142を介して、噴射ポンプ190のプランジャ191と当接するように配置されている。そして、偏心カム部154の回転により、プランジャ191が図25に紙面における上下方向に移動して、図示しない燃料タンクからの燃料を取り入れて、燃料供給ノズル49に燃料を送り出し可能とされている。
図25に示す組み付けられた状態において、バルブシャフト150は、大径部151において、後ケース130のシャフト収容孔138に配設された軸受部材143の内側に嵌め込まれ、ハウジング20に対して回転可能とされている。
また、中径部152において、後ケース130のバルブ挿通孔形成孔139に配設された軸受部材144の内側に嵌め込まれ、ハウジング20に対して回転可能とされている。
小径部153には、小歯付プーリ12が取り付けられ、ベーン型内燃機関10から発生する駆動力を、前主軸260に取り付けられた大歯付プーリ11、歯付ベルト13を介してバルブシャフト150に伝達可能とされている。
ロータ200を駆動させる主軸部分は、図30に示すように、ロータ200に嵌め込み可能に、前後一対の前主軸260、後主軸270に分割されて構成されている。前主軸260、後主軸270は大径部261、271と、大径部261、271より大径に形成されたフランジ部262、272と、大径部261、271より小径に形成されたロータ軸部264、274と、をそれぞれ備えている。
フランジ部262、272のロータ軸部264、274側には、外気を流通可能とする分配切り欠き263、273がそれぞれ形成されている。分配切り欠き263、273は、ロータ200側の端面から反対側の端面に向かうとともに、外周縁から軸心に向かう、有底溝として形成されている。分配切り欠き263は吸引接続孔70と、分配切り欠き273は吹込み接続孔120と、それぞれ連通可能されている。
前主軸260は、大径部261において、大歯付プーリ11が取り付けられ、歯付ベルト13を介してバルブシャフト150に取り付けられた小歯付プーリ12に、ベーン型内燃機関10から発生する駆動力を伝達する。後主軸270は、大径部271において被駆動装置等に接続される。
一方、センターハウジング部30の内周面31に対向するように、前主軸260、後主軸270とともに回転されるロータ200が配設されている。ロータ200は、図26に示すように、センターロータ210とセンターロータ210の両側に配置されるサイドロータ220A、220Bとに3分割して形成されている。
それぞれのサイドロータ220A、220Bは後述する前主軸260、後主軸270のフランジ部262、272にねじ締結にて固定され、センターロータ210とそれぞれのサイドロータ220A、220Bとはロータセットピン204で一体的に組み付けらいる。
センターロータ210は、図26に示すように、略円柱状に形成され、中心部に前主軸260、後主軸270のロータ軸部264、274、が挿入可能な軸孔形成孔211、外周縁から軸線に向かい、かつ、放射状に複数個(実施形態では5個)のベーン溝形成溝212が等間隔に形成され、外周面に、それぞれのベーン溝形成溝212付近に、外周面から軸心に向う湾曲部213(実施形態では5か所)が形成されている。また、ベーン溝形成溝212と湾曲部213との間にはロータセットピン204が嵌入されるロータセットピン孔214(実施形態では5か所)が形成されている。
サイドロータ220A、220Bは、図26、27に示すように、略円柱状に形成され、中心部に前主軸260、後主軸270のロータ軸部264、274が挿入可能な軸孔形成孔221がそれぞれ形成され、軸孔形成孔221から外部に向かって放射線方向に複数個(実施形態では5個)のベーン溝形成溝222が等間隔にそれぞれ形成されている。また、外周面に、それぞれのベーン溝形成溝222付近に、外周面から軸心に向かう湾曲部223(実施形態では5か所)がそれぞれ形成されている。
軸孔形成孔211、軸孔形成孔221は、センターロータ210、サイドロータ220A、220Bが組み付けられた状態において連通することで1個の軸孔201が形成される。
また、ベーン溝形成溝222と湾曲部223との間には、それぞれロータセットピン204が嵌入されるロータセットピン孔224(実施形態では5か所)が形成されている。
ロータセットピン孔214、ロータセットピン孔224は、センターロータ210、サイドロータ220A、220Bが組み付けられた状態において連通することで1個のロータセットピン孔203が形成される。
また、サイドロータ220A、220Bのセンターロータ210との対向面(内側となる面)には、軸孔形成孔221と同心上に、内側の面から外側の面に向かう円形の有底孔として形成され後述の弾性リング250が配設されるリング収容室形成凹部225A、225Bが、それぞれ内端面から所定深さとなるように形成されている。
各ベーン溝形成溝212、222は、センターロータ210、サイドロータ220A、220Bが組み付けられた状態において連通することで1個のベーン溝202が形成され、ベーン溝202に1個のベーン230が嵌入される。
ベーン230は、直方体状に形成されたベーン本体部231、と一端がアール状に形成された底部232と、底部232と反対側の先端側に形成される先端ベーン用溝部233とを有して形成されている。
ロータ200の各ベーン溝202には、ベーン230が各ベーン溝202内を摺動可能に配置されている。先端ベーン用溝部233には、ベーン先端シール240が嵌入されている。
図5に示すようにベーン230の、ロータ200の軸線方向における幅方向の長さは、センターロータ210、サイドロータ220A、220Bの軸線方向における長さを合わせた長さに略一致する。
ベーン先端シール240の先端部は、ハウジング20の内周面に摺接するため、例えば、カーボンに金属を含浸させた角柱状に形成され、先端部側の端部は内周面側に突出する円弧状に形成された摺動面を有しているものであればよい。
ベーン230の底部232は、前主軸260、後主軸270のロータ軸部264、274にすべり対偶で嵌められた弾性リング250の外端部に食い込むように当接している。そのため、ベーン230はその先端側のベーン先端シール240の先端部でハウジング20内周面を押圧することになる。
弾性リング250は、リング収容室形成凹部225A、225B内に配設され、ベーン230のセンターロータ210から両側に突出した部位と当接することになり、ベーン230をロータ200の径方向外側に押圧することになる。
なお、リング収容室形成凹部225A、225Bは、前後方向における底面までの深さが、弾性リング250の前後方向(軸線方向)の厚みより、若干深く形成され、弾性リング250との間に隙間が発生するようにそれぞれ形成されている。また、リング収容室形成凹部225A、225Bは、ベーン溝202と連通して形成されている。
弾性リング250は、実施形態においては、図26、29に示すように、転がり軸受251の外輪252の外側に転がり軸受251と同心円環状の外部弾性リング254を圧入し、転がり軸受251の内輪253の内側に略円形の内部弾性リング255を圧入している。
内部弾性リング255は、転がり軸受251の軸心と偏心した位置において、前主軸260、後主軸270のロータ軸部264、274をそれぞれ挿通している。また、内部弾性リング255は、下側の一部が切り取られた切り欠き部256が設けられ、転がり軸受251の内輪253との間に隙間Sが形成され、ロータ200の軸線方向に空気が流通することを可能としている。
外部弾性リング254と内部弾性リング255は、ベーン230の底部232が食い込むことができ、さらにその弾力でベーン230をハウジング20の内周面に押圧させるために適度な柔軟性を有するもの、例えばウレタンゴム系のもので形成されていることが望ましい。また、内部弾性リング255は、特に弾性体に限定するものではないが、外部弾性リング254と同様の材料であれば、ハウジング20の内周面と、ベーン先端シール240の先端部との間との隙間をより多く吸収できる。
なお、転がり軸受251は、グリス封入型を使用することによって摩耗がなくメンテナンスフリーとなる。
次に、上記のように構成されたベーン型内燃機関10の組み付け手順に付いて説明する。
図26に参照するように、先ず、分割されているサイドロータ220A、220Bに、転がり軸受251に外部弾性リング254と内部弾性リング255とを装着した弾性リング250を、前主軸260、後主軸270のロータ軸部264、274をサイドロータ220A、220Bの軸孔形成孔221にそれぞれ取り付け、サイドロータ220A、220Bのリング収容室形成凹部225A、225B内にそれぞれ配置する。
次に、弾性リング250を取り付けたそれぞれのサイドロータ220A、220Bを、前主軸260、後主軸270のロータ軸部264、274とセンターロータ210の軸孔形成孔211にそれぞれ挿入することによって、センターロータ210に組み付ける。
このとき、ベーン溝202と、前主軸260、後主軸270の分配切り欠き263、273と、が軸線方向において揃うように組み付けられる。また、リング収容室形成凹部225A、225Bとセンターロータ210とで囲まれる領域がリング収容室205となり、リング収容室205内に弾性リング250が配設されることになる。
一方、センターロータ210には、ベーン溝形成溝212にベーン230が挿入されていて、センターロータ210の両側に突出したベーン230がはみ出している。サイドロータ220A、220Bをセンターロータ210に組み付ける際には、センターロータ210からはみ出したベーン230の突出した部位をサイドロータ220A、220Bのベーン溝形成溝222内に嵌合するように組み付ける。
そして、一方のサイドロータ220Aのロータセットピン孔224から5本のロータセットピン204をセンターロータ210のロータセットピン孔214、他方のサイドロータ220Bのロータセットピン孔224を貫通させ、ベーン230を摺動可能に嵌入して一体化されたロータ200を構成する。
図5に参照するように、一体化されたロータ200を、センターハウジング部30内に配置する。
バルブシャフト150に、軸受部材142、143、144をそれぞれ嵌め込んだ状態とし、シャフト収容孔138、バルブ挿通孔形成孔139内にバルブシャフト150を挿通して、軸受部材142、143、144を介して後ケース130にバルブシャフト150を嵌め込んだうえで、後ブロア180を取り付ける。
一方、噴射ポンプ190を噴射ポンプ取付孔140と螺合させて、噴射ポンプ取付部137に取り付ける。
そして、後ハウジング110と後ケース130とを、重ね合わせて、後ハウジング部100を形成する。このとき、ブロア室形成孔118と後ケース130とで囲まれた領域がブロア室104となり、ブロア室104内に後ブロア180が配設される。
後主軸270は、大径部271が後ケース130の主軸挿通孔131に挿通された状態にあり、フランジ部272が後ハウジング110の主軸挿通孔111に配された状態にある。
そして、センターハウジング部30と後ハウジング部100とをネジ締結して一体化させる。一体化されたセンターハウジング部30と後ハウジング部100とロータ200に前ハウジング60を取り付ける。バルブシャフト150に前ブロア170を取り付けて、さらに、前ケース80を取り付ける。
ブロア室形成孔68とブロア室形成孔88とで、ブロア室54が形成され、ブロア室54内に前ブロア170が配設される。
バルブシャフト150の、中径部152の前部に冷却ファン160を取り付け、小径部153に小歯付プーリ12を取り付ける。
一方、前主軸260は、大径部261が前ケース80の主軸挿通孔81に挿通された状態にあり、フランジ部262が前ハウジング60の主軸挿通孔61に配置された状態にある。
前主軸260の大径部261に大歯付プーリ11を取り付ける。大歯付プーリ11と小歯付プーリ12に歯付ベルト13を架け渡す。これにより、図示しないベーン型内燃機関10で発生した駆動力がバルブシャフト150に伝達可能となる。
図1、2に示すように、INパイプ14を吸気接続口85、135に、OUTパイプ15を排気接続口86、136に、接続させて、シュラウド16で冷却ファン160から噴射ポンプ190にかけてハウジング20の外側を覆うことで、一体化されたハウジング20内に内蔵されたロータ200を有するベーン型内燃機関10が完成する。
組み付けられて完成した状態においては、図5等に参照するように、前ケース80、後ケース130で、過給気通路形成溝71、121の開放部分が覆われて、過給気通路23の周壁部分の一部が形成される。
過給気通路23は、前ハウジング60、後ハウジング110に形成された過給気通路形成溝71、121と前ケース80、後ケース130とで囲まれる領域と、過給気導入孔72、122と、バルブシャフト150に形成された通気孔155、導入連通孔156及び排出連通孔157、センターハウジング部30の空気導入孔38と、が連通することで形成される。
以上のことより、ハウジング20の過給行程が行われる領域に臨む部分と吸気口62、112との間には、過給行程時に発生する圧縮空気が流入する過給気通路23が形成されていることになる。
また、バルブシャフト150に形成された凹部159と、第一有底溝44と、第二有底溝45とが連通することで、燃焼ガスGが、ハウジング20の、膨張行程が行われる領域から、混合ガス圧縮行程が行われる領域に伝播可能となる。
前ハウジング60、後ハウジング110で、第一有底溝44、第二有底溝45の開放部分を覆うことで、燃焼ガス伝播通路21の周壁部分の一部が形成される。
センターハウジング部30と対向して配置される、前ハウジング60、後ハウジング110と第一有底溝44及び第二有底溝45で囲まれる領域と、導入孔部41及び噴出孔部46と、バルブシャフト150に形成された凹部159と、一対の前ハウジング60、後ハウジング110で断面矩形状の燃焼ガス伝播通路21が形成される。
換言すれば、燃焼ガス伝播通路21は、ハウジング20の膨張行程が行われる領域に臨む部分と、ハウジング20の混合ガス圧縮行程が行われる領域に臨む部分と、を連通可能に配設されていることになる。
前ハウジング60と前ケース80が重ね合わされることで、円弧溝部64と、吸引溝部65の開放部分が閉塞され第二外気流通部51の周壁の一部が形成される。換言すれば、組み付けられた状態において、円弧溝部64と、吸引溝部65と、前ケース80と、で第二外気流通部51が形成されることになる。円弧溝部64と前ケース80とで囲まれる領域が、第二外気流通部51の円弧部52とされ、吸引溝部65と前ケース80とで囲まれる領域が、第二外気流通部51の吸引部53とされる。
後ハウジング110と後ケース130が重ね合わされることで、円弧溝部114と、吹込み溝部115の開放部分が閉塞され第一外気流通部101の周壁の一部が形成される。換言すれば、組み付けられた状態において、円弧溝部114と、吹込み溝部115と、後ケース130と、で第一外気流通部101が形成されることになる。円弧溝部114と後ケース130とで囲まれる領域が、第一外気流通部101の円弧部102とされ、吹込み溝部115と後ケース130とで囲まれる領域が、第一外気流通部101の吹込み部103とされる。
なお、ハウジング20は、センターハウジング部30と前ハウジング部50、後ハウジング部100と一体となるため、一体化された状態のハウジング20を説明する場合には、以下、単にハウジング20とし、ベーン230との摺接面を内周面とする。また、ロータ200の場合も同様に、一体化された状態のロータ200を説明する場合には、以下、単にロータ200とする。
ハウジング20の中空部内には、ベーン230が複数個(実施形態においては5個)配設されている。ベーン230は、弾性リング250の弾力でハウジング20の内周面を押圧しているから、ハウジング20とロータ200との間の中空部は、ベーン230によって仕切られて、複数(実施形態においては5室)の室(5A、5B、5C、5D、5E)を構成することになる。
また、内部弾性リング255の軸心は、ハウジング20の軸心に対して偏心された位置にあり、前主軸260、後主軸270が回転しても、弾性リング250がロータ200内のリング収容室205内にあるため、内部弾性リング255はハウジング20内で固定され、外部弾性リング254は、転がり軸受251に装着されていることから、前主軸260、後主軸270の回転と共にハウジング20内を回転する。
上記のように構成された実施形態のベーン型内燃機関10では、図4に示すように、ベーン230で区分けされた各室5において、ロータ200の回転でそれぞれの行程が行われる。この場合、各室5においてはロータ200の2回転で1回爆発が起こり、その間に膨張、排気、空気吸気、空気圧縮、過給、掃気、圧縮空気吸気、混合ガス圧縮のそれぞれの行程が行われる。
ベーン型内燃機関10は、本出願人が先にした、特願2006−223338号(特開平2008−45513号公報)のベーン型内燃機関を改良したものである。上述したベーン型内燃機関10の各行程は、本願発明においても同じであるので詳細な説明は省略する。
本発明のベーン型内燃機関10では、過給気行程を過給気通路23等が異なるが、作動原理は同様である。
ベーン型内燃機関10の燃焼構造について、膨張行程が行われる領域で発生する燃焼ガスGが、混合ガス圧縮行程が行われる領域に伝播させる作用について説明する。
図31(a)は、室5Aが爆発行程から膨張行程に進行中の状態を示している。燃焼ガス伝播通路21は、ハウジング20の膨張行程が行われる領域(室5A)に臨む部分と、ハウジング20の混合ガス圧縮行程が行われる領域(室5C)に臨む部分と、を連通して形成されている。
図31(b)に示すように、バルブシャフト150の凹部159が第一有底溝44及び第二有底溝45と連通することで、ハウジング20内の膨張行程で発生する燃焼ガスGが、膨張行程が行われる領域(室5A)に臨む部分と、ハウジング20内の混合ガス圧縮行程が行われる領域(室5C)に送られる。これにより、混合ガス圧縮行程において、予め混合ガスに温度と、圧力を付与して、爆発行程において、完全燃焼をさせ、燃費向上と排気ガス浄化をし、さらに、出力を向上させることが可能となる。
詳説すると、燃焼ガス伝播通路21は、センターハウジング部30の導入孔部41から、燃焼ガスGを取り入れ、第一有底溝44、凹部159、第二有底溝45を経て、噴出孔部46から燃焼ガスGを流出させる。
そして、バルブシャフト150は、主軸が1回転すると、2.5回転する、換言すると、バルブシャフト150が二分の一回転すると前主軸260、後主軸270(ロータ200)が72度回転する。つまり、前主軸260、後主軸270(ロータ200)が144度回転すると膨張行程と、空気圧縮行程は、略同一の領域で順に行われることになる。
図31(c)に参照するように、膨張行程においてバルブシャフト150の凹部159が第一有底溝44及び第二有底溝45と連通するように設定し、空気圧縮行程において凹部159が連通しないように設定することで、膨張行程で燃焼ガスGを導入し、空気圧縮行程で圧縮空気を導入しない構成としている。
ベーン型内燃機関10の過給気通路23の開閉構造について説明する。
ベーン型内燃機関10が、過給気行程が行われる領域が過給気行程でないとき、ハウジング20の空気導入孔38に圧縮空気が入ろうとするが、バルブシャフト150により通気通路150Aは閉塞されて圧縮空気は導入されない。過給気行程が行われる領域が過給気行程のときに、バルブシャフト150が回転して導入連通孔156と空気導入孔38とが連通し、図32、33に示すように、導入連通孔156と空気導入孔38と、通気通路150A、排出連通孔157、前ハウジング60の過給気導入孔72、後ハウジング110の過給気導入孔122、過給気通路形成溝71、過給気通路形成溝121、接続孔73、接続孔123、吸気口62、112の順に圧縮空気が流れていく。
そして、圧縮空気行程が行われる領域に圧縮空気が流入して、圧縮空気の分配と過給により吸気効率を向上させる。
また、膨張行程が行われる領域にある燃焼ガスGは、バルブシャフト150により導入連通孔156と空気導入孔38とは連通せず、通気通路150Aが閉塞されるため、吸気行程が行われる領域に入らないので、燃焼ガスGが吸気行程に影響を与えることはない。
次に、ベーン型内燃機関10の冷却構造について説明する。
ベーン型内燃機関10では、過給気通路23を介して、接続孔73、123が吸気口62、112と連通し、かつ、過給気通路23と、吹込み部103、吸引部53が連通していることから、吸気口62、112から取り入れた外気を過給気行程で圧縮した圧縮空気を取り入れ可能とされ、つまり、外気(空気)を取り入れて、ハウジング20内で循環可能とされている。
また、本実施形態のベーン型内燃機関10では、前主軸260、大歯付プーリ11、小歯付プーリ12、歯付ベルト13、バルブシャフト150、前ブロア170、後ブロア180、で流れ発生手段17が構成されることになる。
後ハウジング部100において、図34に示すように、ブロア室104内で後ブロア180が回転すると、矢印の方向に空気の流れが発生する。この流れは、過給気通路23に向かって流れるため、吹込み開口部116を介して吹込み部103内の空気が円弧部102に流れていくとともに、吹込み接続孔120に向かって流れていく。
このとき、吹込み部103は、ブロア室形成孔118から遠ざかるにしたがって幅が狭小となるように形成されているので、流路の断面積が小さくなり流れる空気の流速は次第に速くなって冷却効果を向上させる。
一方、前ハウジング部50においては、図33に示すように、ブロア室54内で前ブロア170が回転すると、矢印の方向に空気の流れが発生する。この流れは、過給気通路23に向かって流れるため、第二外気流通部51の吸引部53が負圧状態となり、吸引開口部66を介して円弧部52内の空気が吸引部53に流れていくとともに、吸引接続孔70から第一外気流通部101の吹込み部103内の空気が吸引される。
このとき、吸引部53は、吸引接続孔70から遠ざかるにしたがって幅が広くとなるように形成されているので、流路の断面積が次第に大きくなり吸引部53内の圧力が低下する。よって、後述するように、第二外気流通部51から流れ込む空気を吸引し易くなって冷却効果を向上させる。
また、圧力連通孔25を介して、第一外気流通部101の円弧部102内の空気が、第二外気流通部51の円弧部52内に流れていく。これにより、前ハウジング60、後ハウジング110の冷却が可能となる。さらに、吹込み接続孔120、吸引接続孔70を介して、第一外気流通部101の吹込み部103内の空気が、吸引部53に流れていく。これにより、ロータ200の冷却が可能となる。つまり、二系統の空気の流れが発生することになる。
吹込み接続孔120から、吸引接続孔70までの空気の流れを詳説すると、吸引接続孔70と、吹込み接続孔120とは、前後方向からみて、投影される位置が略同一となっているので、前主軸260、後主軸270のフランジ部262、272に形成された分配切り欠き263、273が、吹込み接続孔120と連通すると、空気は、吹込み接続孔120から、ベーン溝202、リング収容室205、内部弾性リング255と転がり軸受251の内輪253との隙間S、ベーン溝202、リング収容室205、内部弾性リング255と転がり軸受251の内輪253との隙間S、ベーン溝202、の順に通って、吸引接続孔70まで空気が流れる。
この空気の流れによって、ロータ200、ロータ200内に配設される弾性リング250が冷却される。
[発明A−1]
本実施形態のベーン型内燃機関10の発明としては、ハウジング20と、ハウジング20の軸心に対して偏心して内蔵されハウジング20内で回動可能なロータ200と、ハウジング20の内周面に摺接する複数のベーン230と、ベーン230が摺動する複数のベーン溝202と、を備えるベーン型内燃機関の冷却構造であって、ハウジング20には、外気を流通可能な外気流通部22が配設されるとともに、外気流通部22内の外気の流れを発生させる流れ発生手段17が配設されている。
これによれば、流れ発生手段17により、外気流通部22内の外気の流れを発生させることで、ハウジング20の冷却を介して、ハウジング20内のロータ200を冷却可能となり、簡易な構造で冷却効率が良いベーン型内燃機関の冷却構造を提供することができる。
[発明A−2]
また、ハウジング20は、筒状のセンターハウジング部30と、センターハウジング部30を閉塞する一対の前ハウジング部50、後ハウジング部100と、を備え、外気流通部22として、一のサイドハウジング部(後ハウジング部100)に配設される第一外気流通部101と、他のサイドハウジング部(前ハウジング部50)に配設される第二外気流通部51と、があり、第一外気流通部101と、第二外気流通部51と、が連通して形成され、流れ発生手段17により、第一外気流通部101から、第二外気流通部51に向かって外気が流通可能とされている。
これによれば、第一外気流通部101から、第二外気流通部51に向かって外気を流通可能とすることで、サイドハウジング部(前ハウジング部50、後ハウジング部100)を冷却することが可能となり、サイドハウジング部と接するロータ200、ベーン230等の潤滑不良を抑制することができる。
[発明A−3]
また、ロータ200は、ロータ200の回転軸線方向に沿って外気が流通可能に形成され、第一外気流通部101から、ロータ200が配置される領域を経て、第二外気流通部51に向かって外気が流通可能とされている。
これによれば、サイドハウジング部(前ハウジング部50、後ハウジング部100)に加え、ハウジング20内に配置されるロータ200を冷却可能となり、例えば、ロータ200に摺動可能に配されるベーン230を付勢する弾性体への熱影響を抑制することができる。
[発明A−4]
また、ハウジング20に、ハウジング20を外側から冷却する冷却ファン160を配設する構成とし、流れ発生手段17を、冷却ファン160の回転軸と同軸駆動させることしているので、流れ発生手段17を駆動させる駆動手段を別途設ける必要がなくなり、簡易な構成で製造コストを低減させることができる。
[発明B−1]
また別の観点の発明として、ハウジング20と、ハウジング20の軸心に対して偏心して内蔵されハウジング20内で回動可能なロータ200と、ハウジング20の内周面に摺接する複数のベーン230と、ベーン230が摺動する複数のベーン溝202と、を備え、
1サイクルで爆発、膨張、排気、空気吸気、空気圧縮、過給、掃気、圧縮空気吸気、混合ガス圧縮行程を順に繰り返すように構成されたベーン型内燃機関の燃焼構造であって、
ハウジング20の膨張行程が行われる領域に臨む部分と、ハウジング20の混合ガス圧縮行程が行われる領域に臨む部分との間には、膨張行程において膨張する燃焼ガスGが流入可能な燃焼ガス伝播通路21が配設されている。
これによれば、燃焼ガスGを、膨張行程が行われている領域から、混合ガス圧縮行程が行われる領域に送ることが可能となり、予め混合ガスに温度と、圧力を付与して完全燃焼をさせ、燃費向上と排気ガス浄化をし、さらに、出力を向上させることができる。
[発明B−2]
また、燃焼ガス伝播通路21には、過給行程時に発生する圧縮空気を燃焼ガス伝播通路21に流入させず、膨張行程時に燃焼ガス伝播通路21に燃焼ガスGを流入させる、切り替え機能を有した開閉部材としてのバルブシャフト150が配設されている。
これによれば、膨張行程を行うときだけ、燃焼ガスGを、燃焼ガス伝播通路21に流入させ、混合ガス圧縮行程をサポートすることができる。換言すれば、膨張行程に対応する領域で行われる、過給行程が行われる領域にある圧縮された空気が、空気圧縮行程が行われる領域に入らなくして、圧縮空気が空気圧縮行程に影響を与えることをなくすことができる。
[発明B−3]
また、バルブシャフト150は、円柱状に形成され燃焼ガス伝播通路21を閉鎖するように配置され、軸線方向からみて外周縁部から軸線方向に向かう凹部159が形成され、バルブシャフト150が回転して凹部159と燃焼ガス伝播通路21とが連通することにより、燃焼ガス伝播通路21を開放可能とされている。
これによれば、例えば、ベーン型内燃機関10の回転を利用してバルブシャフト150を回転させることにより、燃焼ガス伝播通路21を開放、閉鎖させることができるので、別途複雑な機構を適用することなく、ベーン型内燃機関10の燃焼構造を簡易な構造とし製造コストを低減させることが可能となる。
[発明C−1]
また別の観点の発明として、ハウジング20と、ハウジング20の軸心に対して偏心して内蔵されハウジング20内で回動可能なロータ200と、ハウジング20の内周面に摺接する複数のベーン230と、ベーン230が摺動する複数のベーン溝202と、を備え、
1サイクルで爆発、膨張、排気、空気吸気、空気圧縮、過給、掃気、圧縮空気吸気、混合ガス圧縮行程を順に繰り返すように構成されたベーン型内燃機関の過給気通路開閉構造であって、
ハウジング20の圧縮空気吸気行程が行われる領域に臨む部分には、大気側と連通する吸気口62、112が形成され、
ハウジング20の過給行程が行われる領域に臨む部分と吸気口62、112との間には、過給行程時に発生する圧縮空気が流入する過給気通路23が形成され、
過給気通路23には、爆発行程により発生する高圧の燃焼ガスGを過給気通路23に流入させず、過給行程時に過給気通路23に圧縮空気を流入させる、切り替え機能を有した開閉部材としてのバルブシャフト150が配設され、
バルブシャフト150は、円柱状に形成され過給気通路23を閉鎖するように配置され、内部(通気通路150A、導入連通孔156、排出連通孔157)において圧縮空気を流通可能とされ、
バルブシャフト150が回転することにより、過給気通路23を開閉可能とされている。
これによれば、圧縮空気の分配と過給により吸気効率を向上させることができる。また、過給行程を行うときだけ、圧縮空気を過給気通路23に流入させ、吸気行程をサポートすることができる。換言すれば、過給行程に対応する領域で行われる、膨張行程が行われる領域にある燃焼ガスGが、吸気行程が行われる領域に入らなくして、燃焼ガスGが吸気行程に影響を与えることをなくすことができる。
[発明C−2]
また、ハウジング20には燃料を噴射する噴射ポンプ190に配されるプランジャ191が配設され、バルブシャフト150には、偏心カム部154が配設され、偏心カム部154がプランジャ191と当接するように配置され、偏心カム部154の動作により燃料を送給可能とされている。
これによれば、ベーン型内燃機関10の回転を利用してバルブシャフト150を回転させることにより、偏心カム部154がプランジャ191を移動させ、プランジャ191の移動により燃料を送給可能となるので、別途複雑な機構を適用することなく、ベーン型内燃機関10を簡易な構造とし製造コストを低減させることが可能となる。
[発明C−3]
また、ハウジング20には外気を流通可能な外気流通部22が配設されるとともに、ハウジング20の膨張行程が行われる領域に臨む部分と、ハウジング20の混合ガス圧縮行程が行われる領域に臨む部分との間には、膨張行程において膨張する燃焼ガスGが流入可能な燃焼ガス伝播通路21が配設され、
バルブシャフト150には、
外気流通部22内の外気の流れを発生させる流れ発生手段17と、
軸線方向からみて外周縁部から軸線方向に向かい燃焼ガス伝播通路21を開放可能とする凹部159と、の少なくとも一つが配設されている。
これによれば、バルブシャフト150と、ハウジング20に、吸気、燃料供給、冷却機能を組み込んで簡易かつ確実な構造でコストを低減したベーン型内燃機関とすることができる。
以上、実施形態に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。