JP6618810B2 - 等速自在継手 - Google Patents

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Description

本発明は、等速自在継手に関し、特に、ドライブアクスルに使用される等速自在継手に関する。
建機やトラクターなどの車輪を駆動して、操舵が必要なドライブアクスルでは自在継手としてカルダンが適用されている。カルダンジョイントはクロス軸(スパイダー)を有し、スパイダーのジャーナル部にニードルころを転動体としたベアリングがスパイダー1個当り計8個使用されている。このベアリングは転動体を保持する保持器と転動体をコの字形状の外輪及び転動面をシールするオイルシールで構成されている。
ベアリングは潤滑剤としてグリースが使用されているが、転動体の空間容積が少なく適宜給脂が必要で、これを怠ると耐久性能を損ねるという問題がある。そのため、スパイダー中央部一箇所に給脂用ニップルを設け、このニップルからスパイダーの各ジャーナルの給脂穴を介して給脂する構造となっている。
ところがベアリング(ジャーナル)部は4箇所あり、一箇所のグリースニップルから給脂しても4箇所のベアリング部に均等に十分なグリースが行き渡らないという問題がある。このため4個のベアリングに潤滑剤が行き渡るようベアリング外輪部に給脂用グリースニップルを設けたものがある。
しかし、この場合にはスパイダー当り4箇所、カルダンASSYでは8箇所の給脂が必要で、給脂に手間が掛かるという問題がある。等速自在継手を使用していた場合でも、ハウジング内の等速自在継手はむき出しで、ハウジング内へのゴミの侵入等で等速自在継手の損傷に繋がる。また、ハウジング全体にグリース量を添付することでグリース量が多くなる。
このため、樹脂ブーツやゴムブーツ(CRブーツ)にて開口部をシールする等速自在継手があり(特許文献1及び特許文献2)、さらには、金属球面シール構造にて密封される等速自在継手が提案されている(特許文献3)。金属球面シール構造は、凸球面状のシール面を有する球面シール内環と、この球面シール内環のシール面と相対的に摺接する凹球面状のシール面を有する球面シール外環とを備えたものである。
特開2007−155002号公報 特開2008−25742号公報 特開2013−96545号公報
しかしながら、樹脂ブーツやゴムブーツを用いたものでは、ハウジング全体にグリース量を添付することでグリース量が多くなること等で、樹脂ブーツやゴムブーツが破れることある。しかも、樹脂ブーツやゴムブーツを装着した場合、ブーツをハウジング内で使用する為、軸方向や径方向の制限を受けやすく成立が困難である。
また、金属球面シール構造のものでは、樹脂ブーツやゴムブーツを用いるものに比べて、耐久性に優れる。しかしながら、このような金属球面シール構造では、金属製シール面同士の球面接触であるので、回転数や作動角度によるが、安定したシール性能を発揮しにくいおそれがある。そこで、金属製シール面間にOリング等のシール部材を介装することが提案された。
このようなシール部材を介装する場合に、車両のドライブアクスルに用いた場合には、シール部材が外れるおそれがあった。このため、シール部材を有する金属球面シール構造では、このようなドライブアクスルに用いることができない場合があった。
そこで、本発明では、樹脂ブーツやゴムブーツを用いることができない環境下で使用されるドライブアクスルに最適な等速自在継手を提供する。
本発明の等速自在継手は、外側継手部材と、この外側継手部材との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、前記外側継手部材の開口部が金属球面シール構造にて密封される等速自在継手であって、前記金属球面シール構造は、凸球面状のシール面を有する球面シール内環と、この球面シール内環のシール面と相対的に摺接する凹球面状のシール面を有する球面シール外環とを備え、前記球面シール内環のシール面が外側継手部材の開口端側の外径面にて構成され、かつ、この球面シール内環に、前記球面シール外環のシール面に摺接するシール部材を装着し、シール脱落防止のための角度規制手段を設けたものである。
本発明の等速自在継手によれば、シール脱落防止のための角度規制手段を設けたので、球面シール内環に、前記球面シール外環のシール面に摺接するシール部材を装着しても、外れることを有効に防止できる。しかも、樹脂ブーツやゴムブーツを用いる必要がない。
前記球面シール外環は、内側継手部材から延びる軸部材に装着され、かつ、この球面シール外環のシール面を球面シール内環のシール面に押し付ける弾性部材を配設するのが好ましい。このように、弾性部材を配設するものでは、シールの信頼性の向上を図ることができる。
前記弾性部材が、前記球面シール外環の外部に配設されるものであっても、前記球面シール外環の内部に配設されるものであってもよい。球面シール外環の外部に配設されるものでは、圧縮コイルバネ等にて構成でき、球面シール外環の内部に配設されるものでは、引張コイルバネ等にて構成できる。
前記球面シール外環は、内側継手部材から延びる軸部材に外嵌される短筒部と、この短筒部に連設される椀形状部とを備え、この椀形状部の内周面を前記シール面として、短筒部の内径面と前記軸部材の外径面との間にオイルシールを配設したものであってもよい。このように、オイルシールを配設したものでは、このオイルシールによって、継手内部からのグリース漏れや継手内部へのダスト侵入等を有効に防止することができる。
金属球面シール構造がハウジング内に収納され、このハウジングの内径部と、金属球面シール構造の外径部との間にラビリンスシール構造を設けてもよい。このようにラビリンスシール構造を設ければ、水や泥等の異物の侵入を防止できる。
球面シール内環に、前記球面シール外環のシール面に摺接するシール部材を装着しても、外れることなく、しかも、金属球面シール構造であるので、樹脂ブーツやゴムブーツを用いることができない環境下で使用されるドライブアクスルに最適な等速自在継手を提供できる。
本発明の第1の等速自在継手の断面図である。 図1に示す等速自在継手の要部拡大断面図である。 図1に示す等速自在継手が作動角を取った状態の断面図である。 本発明の第2の等速自在継手の断面図である。 図4に示す等速自在継手の要部断面図である。
以下本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1は、本発明に係る等速自在継手を示し、この等速自在継手は、軸方向に延びる複数のトラック溝1が内径面2に円周方向等間隔で形成された外側継手部材3と、その外側継手部材3のトラック溝1と対応させて軸方向に延びる複数のトラック溝4が外径面5に円周方向等間隔で形成された内側継手部材6と、外側継手部材3のトラック溝1と内側継手部材6のトラック溝4とが協働して形成されたボールトラックに配されたトルク伝達部材である複数のボール7と、外側継手部材3の内径面2と内側継手部材6の外径面5との間に介在してボール7を保持するケージ8とを備えている。
外側継手部材3は、内径面2にトラック溝1が形成されたマウス部3aと、このマウス部3aの底部から突設されるステム部3bとを備える。この外側継手部材3の開口部、つまり、マウス部3aの開口部を金属球面シール構造Mにて密封している。
金属球面シール構造Mは、凸球面状のシール面10aを有する球面シール内環10と、この球面シール内環10のシール面10aと相対的に摺接する凹球面状のシール面11aを有する球面シール外環11とを備える。
球面シール内環10のシール面10aが外側継手部材3の開口端側の外径面にて構成される。なお、外側継手部材3の外径面には、前記シール面10aより後方側に切欠部9が設けられている。これは、球面シール外環11のシール面11aとの摺接面積を少なくしている。
球面シール外環11は、内側継手部材6から延びる軸部材12に外嵌される短筒部13と、この短筒部13に連設される椀形状部14とを備え、この椀形状部14の内周面を前記シール面11aとしている。内側継手部材6の中心孔6aの内径面には、雌スプライン15が設けられ、軸部材12の端部には雄スプライン16が設けられ、軸部材12の雄スプライン16が内側継手部材6の中心孔6aに嵌入され、この雄スプライン16が内側継手部材6の雌スプライン15に噛合している。
軸部材12の雄スプライン16の近傍に外環嵌着用円筒面17が設けられ、この外環嵌着用円筒面17に球面シール外環11の短筒部13が外嵌される。また、短筒部13の内径面の反継手側に周方向切欠部20が設けられ、この周方向切欠部20にオイルシール18が嵌合されている。
球面シール外環11の椀形状部14の開口側の外径部には、図2に示すように、外径側に膨出する周方向膨出部21が設けられ、この周方向膨出部21が凸球面とされる。ところで、この等速自在継手はハウジングHに収容される。このため、周方向膨出部21の外径面21aと、ハウジングHの内径面22との間に微小隙間C(例えば、0.10mm〜0.20mm程度の隙間が好ましく、さらには、0.15mm程度の隙間)が設けられる。このため、ハウジングHの内径部と、金属球面シール構造Mの外径部との間にラビリンスシール構造Sが設けられることになる。
また、球面シール内環10に、球面シール外環11のシール面11aに摺接するOリング等からなるシール部材23が装着されている。すなわち、球面シール内環10のシール面10aに周方向凹溝24を設け、この周方向凹溝24にシール部材23を嵌合させている。
ところで、この等速自在継手では、図1に示すように、球面シール外環11のシール面11aを球面シール内環10のシール面10aに押し付ける弾性部材25を配設している。図1に示す実施形態では、軸部材12の外環嵌着用円筒面17よりも反雄スプライン側の軸部材本体26における外環嵌着用円筒面17近傍に支持リング27が外嵌され、この支持リング27と球面シール外環11の椀形状部14の基端肩部14aとの間に介在される。この場合、支持リング27は、リング本体部27aと、このリング本体部27aの外径面の反継手側から外径側へ突出する外鍔部27bとからなる。なお、ハウジングHは、金属球面シール構造Mが収納されるシール構造収納室30と、前記支持リング27の外鍔部27bが収納されるリング収納部31と、軸部材本体26に装着されるオイルシール32を収納するシール収納部33を備える。
弾性部材25は図例では、圧縮コイルバネ25Aからなり、球面シール外環11の短筒部13及び支持リング27のリング本体部27aに外嵌され、基端肩部14aと支持リング27の外鍔部27bとの間に配設される。このため、弾性部材25の弾性押圧力によって、球面シール外環11を継手側へ押圧することになり、シール面10a,11aとの密着性を高めることができる。
図3は、作動角を取った場合を示し、この場合の作動角θは22.5°であり、この等速自在継手の最大作動角である。このように、最大作動角を取った際に、外側継手部材3に装着されたシール部材23は、球面シール外環11の椀形状部14の内径面(シール面11a)の開口側に位置している部位において、球面シール外環11の椀形状部14からはみ出すことがなく、このシール部材23が球面シール外環11のシール面11aから外れることがない。また、ハウジングHのシール構造収納室30の開口部には内鍔部34が設けられ、図3に示すように、作動角を取った場合、外側継手部材3の外径面の段付部3cが内鍔部34の内端エッジ部34aに当接する状態となる。このため、この外側継手部材3の段付部3cとシール構造収納室30の内端エッジ部34aとで、シール脱落防止のための角度規制手段50が構成される。
このように、金属球面シール構造Mは、球面シール内環10のシール面10aと球面シール外環11のシール面11aとが摺接するものであるので、球面シール内環10のシール面10aと球面シール外環11のシール面11aは、耐腐食性に優れたSUS系材料が好適であるが、耐熱性を目的とする場合には機械構造用炭素鋼であってもよく、さらに炭素鋼に自己潤滑性のあるテフロン(登録商標)系コーティングを施すようにしてもよい。
本発明では、シール脱落防止のための角度規制手段50を設けたので、球面シール内環10に、球面シール外環11のシール面11aに摺接するシール部材23を装着しても、外れることなく、しかも、金属球面シール構造Mであるので、樹脂ブーツやゴムブーツを用いることができない環境下で使用されるドライブアクスルに最適な等速自在継手を提供できる。
球面シール外環11は、内側継手部材6から延びる軸部材12に装着され、かつ、この球面シール外環11のシール面11aを球面シール内環10のシール面10aに押し付ける弾性部材25を配設しているので、等速自在継手が作動角を取った場合でも、シールに優れ、安定したシール機能を発揮する。
短筒部13の内径面と軸部材12の外径面との間にオイルシール18を配設したことによって、継手内部からのグリース漏れや継手内部へのダスト侵入等を有効に防止することができる。また、このハウジングHの内径部と、金属球面シール構造Mの外径部との間にラビリンスシール構造Sが設けられ、これによって、水や泥等の異物の侵入を防止できる。
前記実施形態では、弾性部材25が球面シール外環の外部に配設されていたが、図4に示すように、弾性部材25が、前記球面シール外環の内部に配設されるものであってもよい。この場合、弾性部材25に引張りコイルバネ25Bを用いている。
引張りコイルバネ25Bは、内側継手部材6側から球面シール外環11の椀形状部14の基端肩部に向って拡径するコイル部35と、コイル部35の内側継手部材6側の端部に連設されるフック部36と、コイル部35の椀形状部14の基端肩部側の端部に連設されるフック部37とからなる。
このため、内側継手部材6の端面(球面シール外環11の椀形状部14の基端肩部側の端面)6bに一方のフック部36が嵌入する孔部38が設けられ、球面シール外環11の椀形状部14の基端肩部に他方のフック部37が嵌入する孔部39が設けられている。この場合、フック部36は、コイル部35の小径側端部から径方向外方に延びる径方向直線部36aと、この径方向直線部36aから軸方向に延びる軸方向直線部36bとからなり、孔部38は軸方向直線部36bが嵌入する軸方向孔を有するものである。また、他方のフック部37は、コイル部35の大径側端部から径方向外方に延びる径方向直線部37aと、この径方向直線部37aから軸方向に延びる軸方向直線部37bとからなり、この孔部39は軸方向直線部37bが嵌入する軸方向孔を有するものである。なお、コイル部35の大径側端部が、短円筒部13の椀形状部内部部位に外嵌されている。
このため、球面シール外環11が、内側継手部材6に対して、離間する方向に押圧され、シール面10a,11aとの密着性を高めることができる。したがって、このように、弾性部材25が球面シール外環11の内部に配設される場合であっても、前記図1に示すように、弾性部材25が球面シール外環11の外側に配設されている場合と同様、等速自在継手が作動角を取った場合でも、シールに優れ、安定したシール機能を発揮する。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、等速自在継手として、固定式等速自在継手であっても、摺動式等速自在継手であってもよい。また、固定式等速自在継手として、バーフィールドタイプであってもアンダーカットフリータイプであってもよく、摺動式等速自在継手として、ダブルオフセットタイプであっても、クロスグルーブタイプであっても、トリポードタイプであってもよい。なお、トリポードタイプである場合、シングルローラタイプであっても、ダブルローラタイプであってもよい。また、本発明の等速自在継手としては、土砂の飛散にあるような条件下で使用されるドライブアクスルに最適であるが、これに限るものではない。
3 外側継手部材
6 内側継手部材
10 球面シール内環
10a,11a シール面
11 球面シール外環
12 軸部材
13 短筒部
14 椀形状部
18 オイルシール
23 シール部材
25 弾性部材
50 角度規制手段
H ハウジング
M 金属球面シール構造
S ラビリンスシール構造

Claims (6)

  1. 外側継手部材と、この外側継手部材との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、前記外側継手部材の開口部が金属球面シール構造にて密封される等速自在継手であって、
    前記金属球面シール構造は、凸球面状のシール面を有する球面シール内環と、この球面シール内環のシール面と相対的に摺接する凹球面状のシール面を有する球面シール外環とを備え、前記球面シール内環のシール面が外側継手部材の開口端側の外径面にて構成され、かつ、この球面シール内環に、前記球面シール外環のシール面に摺接するシール部材を装着し、シール脱落防止のための角度規制手段を設けたことを特徴とする等速自在継手。
  2. 前記球面シール外環は、内側継手部材から延びる軸部材に装着され、かつ、この球面シール外環のシール面を球面シール内環のシール面に押し付ける弾性部材を配設したことを特徴とする請求項1に記載の等速自在継手。
  3. 前記弾性部材が、前記球面シール外環の外部に配設されることを特徴とする請求項2に記載の等速自在継手。
  4. 前記弾性部材が、前記球面シール外環の内部に配設されることを特徴とする請求項2に記載の等速自在継手。
  5. 前記球面シール外環は、内側継手部材から延びる軸部材に外嵌される短筒部と、この短筒部に連設される椀形状部とを備え、この椀形状部の内周面を前記シール面として、短筒部の内径面と前記軸部材の外径面との間にオイルシールを配設したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の等速自在継手。
  6. 金属球面シール構造がハウジング内に収納され、このハウジングの内径部と、金属球面シール構造の外径部との間にラビリンスシール構造を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の等速自在継手。
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