以下、本発明に係るマスクブランクス、フォトマスク、その製造方法の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるマスクブランクスを示す平面図(a)、断面図(b)であり、図2は、本実施形態におけるマスクブランクスの注入部を示す断面図であり、図3は、本実施形態におけるマスクブランクスにおける分離工程を示す断面図であり、図4は、本実施形態におけるマスクブランクスにおける注入状態を示す平面図であり、図5は、本実施形態におけるマスクブランクスにおける注入状態を説明するための平面図であり、図6は、本実施形態における洗浄工程におけるマスクブランクスを示す平面図であり、図7は、本実施形態におけるマスクブランクスにおける浸漬型の洗浄状態を示す正面図であり、図において、符号10は、マスクブランクスである。
本実施形態に係るマスクブランクス10は、図1に示すように、平板状の第1のガラス11と、マスクパターンMが形成可能な遮光層M0の形成される第2のガラス12とが剥離可能として直接接合されてマスクブランクス用のガラス基板とされるとともに、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離するための注入部14が設けられている。第1のガラス11と第2のガラス12との二つの部材の貼り合わせは剥離可能な方法、たとえばオプティカルコンタクト(直接接合)により行われている。
第1のガラス11は第2のガラス12よりも厚く設定され、マスクブランクス10あるいはフォトマスクとして再生される。
第2のガラス12はフォトマスク10としての使用が終了した後、廃棄されることになる。第2のガラス12には、マスクパターンM、または、このマスクパターンMを形成するための遮光層M0が形成される。
本実施形態において、注入部14は第2のガラス12に貫通して設けられる。注入部14が、図1(a)に示すように、マスクパターンMのない周縁部15に配置するとともに、矩形輪郭とされた第2のガラス12におけるいずれか一辺の中央位置に配置されている。
注入部14は、図1(b)に概略示すように、平板状とされる第2のガラス12の法線方向に貫通する単純形状とされることもできるが、図2、図6に示すように、貼り合わせ面13に位置する一方の開口14aよりも注入口となる他方の開口14bが、第2のガラス12の平面視した輪郭外縁側に近接している状態が好ましい。つまり、注入部14は、第2のガラス12を貫通する貫通孔が、貼り合わせ面13側開口14aからマスクパターンMを設ける表面側開口14bに向かって第2のガラス12の平面視した輪郭外縁側方向に傾斜するように設けられること、または、流体を注入する注入ノズルNに当接する側の開口14bから貼り合わせ面13側開口14aに向かって注入部14が第2のガラス12の中心側に向けて傾斜していることが好ましい。
また、注入部14は、図2に示すように、注入部14から流体を注入する際に、この注入ノズルNを当接する注入部14の開口14bが、ノズルNの先端N1形状に対応して密閉可能なように拡径されかつノズルNの先端N1形状に対応した凹形状とされている。
本実施形態に係るマスクブランクス10は、図3に示すように、注入部14に当接したノズルNにより、注入部14から貼り合わせ面13に流体を注入することで、容易に第1のガラス11と第2のガラス12とを剥離して分離することができる。
注入部14が、図4に示すように、矩形輪郭とされた第2のガラス12におけるいずれか一辺の中央位置に配置されていることにより、注入工程において注入された流体が、注入部を中心として略円形に拡大して拡がってゆき、第1のガラス11と第2のガラス12との剥離した部分が増大してゆく。
また、図5に示すように、注入部14が、矩形輪郭とされた第2のガラス12におけるいずれか一の角付近となる位置に配置されていることにより、図4に示す例に比べて、流体の注入量に対する第1のガラス11と第2のガラス12との剥離した部分の増大比は少ないものとなるが、例えば、図6に示すように、第2のガラス12の法線方向と回転軸線とするスピン回転による洗浄工程にマスクブランクス10を供した場合には、この注入部14内の洗浄液に起因する影響が小さくなるため好ましい。
さらに、本実施形態に係るマスクブランクス10は、図6に示すように、第2のガラス12の法線方向と回転軸線とするスピン回転による洗浄工程において、マスクブランクス10を矢印sp方向に回転させた場合に、注入部14内の洗浄液が回転によって容易に排出可能なように、貼り合わせ面13側開口14aからマスクパターンMを設ける表面側開口14bに向かって回転方向に合わせて注入部14を傾斜させることができる。この場合、図6に示すように、回転速度等、洗浄条件に対応して、傾斜方向をθの範囲とすることが可能である。ここで、角度θは回転sp方向に対して、後方に向かうように設定することができる。
本実施形態に係るマスクブランクス10は、図7に示すように、浸漬型の洗浄状態においては、矩形輪郭とされた第2のガラス12における注入部14が配置されている辺を下側位置として洗浄液に浸漬することが好ましい。また、浸漬型の洗浄状態においては、図5に示すように、矩形輪郭とされた第2のガラス12における注入部14が配置されている角付近を下側位置として洗浄液に浸漬することが好ましい。
本実施形態に係るマスクブランクス10は、図8(c)に示すように、第2のガラス12の表面にマスクパターンMを形成することでフォトマスク10となる。
以下、本実施形態に係るマスクブランクス、フォトマスクの製造方法を図面に基づいて説明する。
図8は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクの製造方法を示す工程図であり、図9は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクの製造方法を示すフローチャートである。
本実施形態に係るマスクブランクス、フォトマスクの製造方法は、図9に示すように、第1のガラス11を再生してマスクブランクス(フォトマスク)10を製造するものであり、第1準備工程S11と、第2準備工程S21と、注入部加工・外形加工工程S02と、第1洗浄処理工程S13と、第2洗浄処理工程S23と、貼り合わせ工程S04と、洗浄工程S05と、遮光層形成工程S06と、レジスト形成工程S06aと、パターン形成工程S06bと、露光工程S07と、分離前工程S08と、分離工程S09と、再生処理工程S10と、廃棄工程S20と、を有する。
本実施形態に係るマスクブランクス、フォトマスクの製造方法は、図9に示す第1準備工程S11として、第1のガラス11を新規のものあるいは、再生されたものを準備する。第1のガラス11としては、一般的にフォトマスク用に用いられる石英または青板、硼珪酸ガラスなどのガラス基板が用いられる。
同時に、図9に示す第2準備工程S21として、第2のガラス12を準備する。このとき、第2のガラス12として、主にFPD(フラットパネルディスプレイ)用途に用いられる無アルカリガラスに代表される、フュージョン法またはダウンフロー法を用いて製造された薄板ガラス(例えばコーニング社のフュージョン法を用いて製造されているEagle XGなど)を使用することができる。
オプティカルコンタクト(直接接合)を行うためには十分小さな表面粗さ(Ra>0.5nm)が要求されるが、これらの製法を用いて製造されたガラスは研磨を行わなくとも充分に平滑な表面を有している。そのため、高額な研磨費用を節約することが可能となる。さらに、高精細フォトマスク用途でさらに低欠陥が要求された場合に、第1のガラス11と第2のガラス12との接合後に第2のガラス12の表面に対して研磨を行うことが可能であるが、これらの製法を用いて製造されたガラスはすでに良好な表面を有しているために研磨量を少なくすることができるため、研磨にかかるコストを削減することが可能となる。
次いで、図9に示す注入部加工・外形加工工程S02として、図2に示すように、第2のガラス12に貫通孔となる注入部14を形成する。本実施形態では、第2のガラス12のみに貫通する注入部14とされるが、第1のガラス11のみ、あるいは、第1のガラス11と第2のガラス12とに形成することもできる。
注入部加工・外形加工工程S02においては、第2のガラス(薄板ガラス)12にはパターンエリアMに掛からない周縁部15に注入部14としてφ1mm程度の貫通孔をドリル加工により形成した。注入部14としての貫通孔の加工方法はマイクロブラスト、エッチング等の他の方法でもよい。この加工に際して、あらかじめ薄板ガラス12の両面に樹脂製の保護フィルムを貼り付けた状態で切断・端面処理等の外形加工及び貫通孔加工をおこなうことで、第2のガラス12に対してキズ等の表面欠陥が生じることを防止できるため望ましい。
注入部加工・外形加工工程S02において第1のガラス11には外形加工及び注入部加工を行った後に、研磨工程S02aとして、フォトマスクブランクスとして求められる低欠陥表面とするために精密研磨を行うことができる。
次いで、図9に示す第1洗浄処理工程S13と第2洗浄処理工程S23として、第1のガラス11と第2のガラス12とのそれぞれにおいて、保護フィルムの剥離、ガラス用洗浄剤による洗浄、清浄度を上げるための洗浄、リンス液による洗浄、オゾン水や水素水などの機能水または硫酸過水、アンモニア過水による洗浄、および、スピン乾燥、後述するIPAベーパー乾燥の乾燥等によりパーティクルのない清浄な表面とする。
次いで、図9に示す貼り合わせ工程S04として、所定の注入部14形成加工および表面処理の終了した第1のガラス11と第2のガラス12とを貼り合わせる。このとき、第1のガラス11と第2のガラス12との位置を合わせて接触させる際に、矩形となっている四辺のうち所定の一辺から接触させ、徐々に全体を接触させることで界面(貼り合わせ面)13に気泡が残留しないように接合する。
貼り合わせ工程S04においては、第1のガラス11の一面(表面)に第2のガラス12を貼り合わせたが、第1のガラス11の他の面(裏面)にも第2のガラス12と同等な薄板ガラスを貼り付けることができる。これにより、熱膨張係数の違いによるソリを低減し、かつ、精密な研磨をおこなった第1のガラス(厚板ガラス)11の両面を保護することが可能になる。さらに、貼り付けを行う際の温度をフォトマスクとして使用される温度と同じ条件とすることにより、さらなるソリ発生の低減を実現可能とすることができるために好ましい。
貼り合わせ工程S04においては、高精細用途でさらに低欠陥が要求される場合は貼り合わされた状態における研磨をおこなうこともできる。この場合第2のガラス12または裏面の薄板ガラス表面はすでに良好な表面状態を有しているために研磨量を少なくすることができる。
次いで、図9に示す洗浄工程S05として、図6に示したスピン洗浄または図7に示した洗浄槽への浸漬法、等など、所定の方法により貼り合わせされた第1のガラス11と第2のガラス12とを洗浄する。なお、図6に示したスピン洗浄においては、図の紙面法線方向から洗浄液を滴下または噴射するとともに、矢印sp方向にガラス基板を回転させる洗浄方法である。さらに、IPAベーパー乾燥(Iso-Propyl Alcohol 蒸気乾燥)などをおこなうこともできる。
次いで、図9に示す遮光層形成工程S06として、洗浄処理の終了した第2のガラス12の表面に、図8(a)に示すように、遮光層M0を形成する。
遮光層M0は、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデンシリサイド(MoSi)またはそれらの積層膜などが成膜される。
次いで、図9に示すレジスト形成工程S06aとして、第2のガラス12側の上面に、図8(b)に示すように、遮光層M0上にフォトレジストC0を塗布・プリベークしてマスクブランクス10とする。
次いで、図9に示すパターン形成工程S06bとして、第2のガラス12側の遮光層M0に対して、フォトレジストC0を用いて露光・除去するフォトリソ工程により、図8(c)に示すように、遮光層M0にマスクパターンMを形成してフォトマスク10とする。具体的には、マスクパターンを描画し、フォトレジストC0を露光・現像し、遮光膜M0をエッチングし、フォトレジストC0の剥離し、マスクブランクス10を洗浄して、フォトマスクパターンを形成することでフォトマスクとして完成する。ここで、必要ならば、ペリクルやの貼り付けや接着剤による枠の取り付けなどをおこなう。
次いで、図9に示す露光工程S07として、マスクパターンMを用いて露光・パターニングをおこないフォトマスク10としての利用をする。
次いで、図9に示す分離前工程S08として、フォトマスク10のリサイクルを開始する。
分離前工程S08は、フォトマスク10としての利用が終了したものまたは、マスクパターンの欠陥等何らかの理由によりフォトマスクとして利用されないものに適用される。具体的には、フォトマスクとして使用済みとなった後に、フォトマスクとして廃棄(デザイン変更やパターンのカケなどにより利用しなくなったマスクを廃棄)すると判断されたものとされる。
分離前工程S08においては、まず、パーティクル等が原因によるキズの発生を防止するためにフォトマスク10に対して、ガラス用洗剤による洗浄、純水によるリンス、IPAベーパー乾燥による洗浄をおこなった。
分離前工程S08における洗浄後、図8(d)に示すように、薄板ガラス(第2のガラス)12の表面に破損防止用として樹脂フィルムSを貼り付けた。樹脂フィルムSは、注入部14を閉塞しないように、注入部14近傍領域のみ切断除去されていることができる。
さらに、この分離前工程S08として、貼り合わされた第1のガラス11と第2のガラス12とをクリーンルーム内または、クリーンブース下のパーティクルの少ない環境に保持する。
図10は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクの製造方法での分離前工程S08における保持状態を示す断面図である。
具体的には、分離前工程S08として、図10に示すように、第1のガラス11が下側に、かつ、第2のガラス12が上側になるように平坦面に載置し、先端で吸着可能な保持具H1により上側の第2のガラス12を保持し、矢印s1方向に第2のガラス12を剥離可能としておく。
図11は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクの製造方法での分離前工程S08における保持状態を示す断面図である。
分離前工程S08として、図11に示すように、第2のガラス12が下側に、かつ、第1のガラス11が上側になるように主面が水平面都平行になるように位置させるとともに、先端で吸着可能な保持具H1により上側の第1のガラス11を保持し、矢印s2方向に第2のガラス12が剥離して落下した場合に柔らかい保持部材H2により捕獲可能としておく。
図12は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクの製造方法での分離前工程S08における保持状態を示す断面図である。
FPDなど大型のマスクの場合には、分離前工程S08として、図12に示すように、フォトマスク10をその主面が概略鉛直方向と平行になるように立てた状態で、第2のガラス12がわずかに下側に向くように傾斜させて、その四隅を保持具H3,H4によって保持するとともに、先端で吸着可能な保持具H1により下側の第2のガラス12を保持し、矢印s3方向に第2のガラス12を回動させて剥離可能としておく。この場合、注入部14は上側に位置する水平方向に延在する辺の中央となるようにフォトマスク10を立設しておく。また、矢印s3方向に第2のガラス12が剥離して落下した場合にも図示しない保持部材により捕獲可能としておく。この場合、保持具H1によって第2のガラス12を保持せずに、第2のガラス12の自重により剥離させることもできる。
図13は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクの製造方法での分離前工程S08における保持状態を示す断面図である。
さらに、PDなど大型のマスクの場合には、分離前工程S08として、図13に示すように、フォトマスク10をその主面が概略鉛直方向と平行になるように立てた状態で、第1のガラス11がわずかに上側に向くように傾斜させて、その四隅を保持具H4によって保持するとともに、先端で吸着可能な保持具H1により上側の第2のガラス12を保持し、矢印s4方向に第2のガラス12を回動させて剥離可能としておく。この場合、注入部14は左右のいずれかに位置する略鉛直方向に傾斜して延在する辺の中央となるようにフォトマスク10を立設しておく。
このように、図9に示す分離前工程S08として、フォトマスク10の保持工程が完了したら、図8(e)に示すように、注入部14に、流体を注入するためのノズルNを当接させ、ノズルNに接続された流体供給手段N0からノズルNに流体を供給可能としておく。
次いで、図9に示す分離工程S09として、図8(e)に示すように、注入口14に当接したノズルNに、所定の圧力に(0.5MPa)に加圧した流体として、パーティクルを除去した窒素ガスまたはクリーンエアー、純水等の液体を供給することができる。
なお、分離工程S09として行う剥離プロセスはパーティクルの少ない純水などの液体中でおこなうことができ、その場合には注入口14に供給する流体として、気体ではなく純水等の液体を用いることになる。
分離工程S09として、図8(f)に示すように、注入部14を介してノズルNから供給された流体を貼り合わせ面13に注入すると、流体が注入部14から貼り合わせ面13に沿って拡がり、流体注入部分における第1のガラス11と第2のガラス12とを離間させる。同時に、この貼り合わせ面13の流体注入部分において、貼り合わされて直接接合された第1のガラス11と第2のガラス12との接合を解除するとともに、第1のガラス11と第2のガラス12とが離間した領域を徐々に拡大して、最終的に第1のガラス11と第2のガラス12とを剥離する。
このとき、第1のガラス11と第2のガラス12との離間領域拡大に際して、同時に、図における矢印s1〜s4までの方向に保持具H1等を用いて第2のガラス12を離間方向に移動するように力をかけて、剥離を補助する。
具体的には、分離工程S09として、図10に示すように、保持具H1の先端で吸着・保持した上側の第2のガラス12を、矢印s1方向に引張して、流体の注入した注入部14近傍の貼り合わせ面13が離間した領域を拡大するように移動させる。これにより、第2のガラス12が上方に移動するとともに、平坦面に載置された下側の移動しない(厚板ガラス)第1のガラス11から離間して、第2のガラス12が剥離される。
または、分離工程S09として、図11に示すように、下側に位置する第2のガラス12が、重力により下方向である矢印s2方向に引張されているので、貼り合わせ面13に流体が注入部14から注入されると、自重により矢印s2方向に第2のガラス12が落下して、保持具H1により上側に保持された第1のガラス11から分離する。落下した第2のガラス12は、柔らかい保持部材H2により捕獲される。
または、FPDなど大型のマスクの場合には、分離工程S09として、図12に示すように、フォトマスク10をその主面が概略鉛直方向と平行になるように立てた状態で、第2のガラス12がわずかに下側に向くように傾斜させて、その四隅を保持具H3,H4によって保持するとともに、先端で吸着可能な保持具H1により下側の第2のガラス12を保持し、矢印s3方向に第2のガラス12を引張して、貼り合わされて直接接合された第1のガラス11と第2のガラス12との接合を解除するとともに、第1のガラス11と第2のガラス12とが離間した領域を徐々に拡大可能としておく。
この場合、注入部14が上側で水平方向に延在する辺の中央に位置していることにより、まず、上端部分が剥離して、重力により矢印s3方向への回動を補助することができる。
また、矢印s3方向に第2のガラス12が剥離して落下した場合にも図示しない保持部材により捕獲する。この場合、貼り合わされて直接接合された第1のガラス11と第2のガラス12との接合を解除された領域がある程度拡がったら、保持具H1によって第2のガラス12を保持して矢印s3方向に引張せずに、第2のガラス12の自重のみにより剥離させることもできる。
または、FPDなど大型のマスクの場合には、分離工程S09として、図13に示すように、フォトマスク10をその主面が概略鉛直方向と平行になるように立てた状態で、第1のガラス11がわずかに上側に向くように傾斜させて、その四隅を保持具H4によって保持するとともに、先端で吸着可能な保持具H1により上側の第2のガラス12を保持し、矢印s4方向に第2のガラス12を回動させて、貼り合わされて直接接合された第1のガラス11と第2のガラス12との接合を解除された領域を拡大する。この場合、注入部14は左右のいずれかに位置する略鉛直方向に傾斜して延在する辺の中央となるようにフォトマスク10を立設しておくことで、左右方向に剥離領域が拡大してゆき、第2のガラス12全体に流体が流入して、第2のガラス12が第1のガラス11から接続解除されてから、第2のガラス12を第1のガラス11から移動・分離することが好ましい。
次いで、図9に示す再生処理工程S10として、図8(g)に示すように、第2のガラス12から移動・分離した第1のガラス11を再生するための選別処理をおこない、再生可能なものは第1洗浄処理工程S13へと送られる。
次いで、図9に示す廃棄工程S20として、図8(g)に示すように、第1のガラス11から移動・分離した第2のガラス12を廃棄するための処理をおこなう。
本実施形態によれば、このように、分離した第1のガラス11は再生してリサイクルすることができる。このとき、第1のガラス11には遮蔽層M0またはマスクパターンMが直接形成されていないため、リサイクル時に、これらの膜を除去する必要がないので、高精細用の研磨をおこなう必要がない。これにより、研磨にかかる作業時間・コストを削減することができる。
上述したように、剥離分離後に第1のガラス11を第1洗浄処理工程S13に送って再生することができるため、再研磨をおこなうことなく表面欠陥の少ないフォトマスク用ガラス基板(第1のガラス)11を再生可能とすることができる。これにより、基板再生コストを低減可能として、マスクブランクスあるいはフォトマスクの製造および再生を容易におこなうことが可能となる。
マスクブランクスあるいはフォトマスクを再生する際に、高精細用の再研磨を重ねる必要がないため、研磨によりガラス基板(第1のガラス)11の厚みが減少することがない。これにより、第1のガラス11における再生可能回数に対する制限を無くすことができる。従って、マスクブランクスあるいはフォトマスクにおける基板再生コストを低減できる。
仮にマスクとしての使用中またはリサイクル作業中に第1のガラス11に再研磨による修正が必要とされるようなダメージを受け、第1のガラス11に対する再研磨を繰り返し行って第1のガラス11の厚みが規格値を超える程薄くなった場合には、貼り合わせる第2のガラス12として上記の厚みよりもさらに厚いものを使用することで規格値に合わせたマスクブランクスあるいはフォトマスクの厚みを維持することも可能である。
第1のガラス11に貼り合わせる第2のガラス12として、フュージョン法またはダウンフロー法により製造された薄板ガラスとして採用することにより、研磨を必要とせずにオプティカルコンタクトによる接合が可能となり、高価な研磨コストを低減あるいはなくしてしまうことができる。
青板(ソーダライムガラス)を用いたフォトマスクではガラスのアルカリ成分が原因となるマウスニップと呼ばれるCrパターンが欠ける不具合が発生する場合があるが、本実施形態においては、表面に貼り合わせる薄板ガラス(第2のガラス)12をアルカリ成分を含まない、例えば無アルカリガラスとすることによって、このマウスニップの発生を防止することが可能となる。
注入部14の設置位置は、フォトマスク10におけるマスクパターンMにかからない周縁部15でかつ、辺の中央付近が望ましい。コーナー部(角部)に近いと、注入した流体がコーナー周辺の2辺より外部に漏れてしまい、基板中央まで流体が入り込んで行きづらくなり、作業時間が増大し作業効率が低下する可能性がある。
なお、周縁部15の幅寸法は、小型フォトマスク10では5mm以下、大型フォトマスク10では20mm以下として設定される。
図7に示すように、フォトマスク(マスクブランクス)10を縦にして水槽に漬け込む方式であるディップ式洗浄によってフォトマスク10を洗浄する場合、注入部14を下端になる辺にのみ設けることにより、洗浄液の垂れ染みが作られてしまい、フォトマスク(マスクブランクス)10の歩留まりが低下してしまうことを防止できる。
図6に示すように、スピン洗浄・スピン乾燥の場合は、一般的に水平にガラス基板(第2のガラス)12が置かれるので、ガラス基板12の4辺に注入部14を設けることもできる。厚板ガラス(第1のガラス)11に注入口を設ける場合には、スピンによる回転方向を考慮して、注入部14を回転に対して径方向外向き方向から回転逆向き方向に傾斜した貫通孔とすることが望ましい。これにより、注入部14内の洗浄液がスピン洗浄・スピン乾燥として回転した場合に排出され易いようにすることができる。
図6に示すように、スピン洗浄・スピン乾燥の場合は、ガラス基板(第2のガラス)12の回転により洗浄液が注入部14より排出され易くなるように、図2に示すように、注入部14の貼り合わせ面13に位置する一方の開口14aよりも注入口となる他方の開口14bが、より輪郭縁部に近接するように設けられる。
注入部14において、流体を注入するノズルNとの接点部分となる開口14bの内側形状は、図2に示すように、順テーパーとすることで、ノズルNと開口14bとの密着度を向上して、注入時の流体の漏れやノズルNと第2のガラス12との接触による欠け発生を防止することができる。
図14、図15は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクにおけるベベリング面を示す断面図である。
厚板ガラス(第1のガラス)11および薄板ガラス(第2のガラス)12においては、マスク用基板としてその端面にべべリング(C面)16を形成することがある。ここで、図15に示すように、厚板ガラス(第1のガラス)11および薄板ガラス(第2のガラス)12のそれぞれにベベリング面16aを設けて、貼り合わせた薄板ガラス12と厚板ガラス11の端面における境界部分に段差がある場合には、洗浄工程において、この段差となるベベリング16aの部分において充分な洗浄がしづらくパーティクルの発生原因となるため好ましくない。したがって、本実施形態においては、図14に示すように、薄板ガラス12と厚板ガラス11とを合わせた断面がその境界部分で面一となるように一体化された形状とする。このベベリング面の加工工程としては貼り合わせ工程S04後で遮光層形成工程S05前にこの端面加工を入れる製造方法とすることができる。
以下、本発明に係るマスクブランクス、フォトマスクの第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
本実施形態において上述した第1実施形態と異なるのは注入部24が第1のガラス11に設けられた点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
図16は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクを示す平面図(a)、断面図(b)である。
本実施形態におけるマスクブランクス10は、図16に示すように、平板状の第1のガラス11と、マスクパターンMが形成可能な遮光層M0の形成される第2のガラス12とが剥離可能として直接接合されてマスクブランクス用のガラス基板とされるとともに、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離するための注入部24が第1のガラス11を厚さ方向に貫通する貫通孔として設けられている。
本実施形態において、注入部24は第1のガラス11に貫通して設けられる。注入部24が、図16(a)に示すように、マスクパターンMのない周縁部15に配置するとともに、矩形輪郭とされた第1のガラス11におけるいずれか一辺の中央位置に配置されている。
注入部24は、図16(b)に概略示すように、平板状とされる第1のガラス11の法線方向に貫通する単純形状とされることもできるが、図2、図6に示した第1実施形態に対応して、貼り合わせ面13に位置する一方の開口よりも注入口となる他方の開口が、第1のガラス11の平面視した輪郭外縁側に近接するように傾斜していることが好ましい。
また、注入部14は、図2に示した第1実施形態に対応して、注入部24から流体を注入する際に、この注入ノズルNを当接する注入部24の開口が、ノズルNの先端N1形状に対応して密閉可能なように拡径されかつノズルNの先端N1形状に対応した凹形状とされることができる。
本実施形態に係るマスクブランクス10は、注入部24に当接したノズルNにより、注入部24から貼り合わせ面13に流体を注入することで、容易に第1のガラス11と第2のガラス12とを剥離して分離することができる。
注入部24が、図4に示した第1実施形態に対応して、矩形輪郭とされた第1のガラス11におけるいずれか一辺の中央位置に配置されていることにより、注入工程において注入された流体が、注入部を中心として略円形に拡大して拡がってゆき、第1のガラス11と第2のガラス12との剥離した部分が増大してゆく。
また、図5に示した第1実施形態に対応して、注入部24が、矩形輪郭とされた第1のガラス11におけるいずれか一の角付近となる位置に配置されていることにより、図4に示す例に比べて、流体の注入量に対する第1のガラス11と第2のガラス12との剥離した部分の増大比は少ないものとなるが、例えば、図6に示した第1実施形態に対応して、第1のガラス11の法線方向と回転軸線とするスピン回転による洗浄工程にマスクブランクス10を供した場合には、この注入部24内の洗浄液に起因する影響が小さくなるため好ましい。
さらに、本実施形態に係るマスクブランクス10は、図6に示した第1実施形態に対応して、第1のガラス11の法線方向と回転軸線とするスピン回転による洗浄工程において、マスクブランクス10を矢印sp方向に回転させた場合に、注入部24内の洗浄液が回転によって容易に排出可能なように、貼り合わせ面13側開口からマスクパターンMを設ける表面側開口に向かって回転方向に合わせて注入部24を傾斜させることができる。この場合、図6に示した第1実施形態に対応して、回転速度等、洗浄条件に対応して、傾斜方向をθの範囲とすることが可能である。ここで、角度θは回転sp方向に対して、後方に向かうように設定することができる。
本実施形態に係るマスクブランクス10は、図7に示した第1実施形態に対応して、矩形輪郭とされた第1のガラス11における注入部24が配置されている辺を下側位置として洗浄液に浸漬することが好ましい。
本実施形態に係るマスクブランクス10は、図8(c)に示した第1実施形態に対応して、第2のガラス12の表面にマスクパターンMを形成することでフォトマスク10となる。
本実施形態に係るマスクブランクス10またはフォトマスク10では、厚板ガラス(第1のガラス)11を厚さ方向に貫通するように注入部24が設けられている。
第2の薄板ガラス12へ注入部24を設ける場合には、描画される予定のパターンデザインに合わせて注入部24の位置を変更できるので、位置設定の自由度を高くすることができる。
一方、第1の厚板ガラス11に注入部24を加工する場合には、第1の厚板ガラス11がリサイクルされる部分であるため、一度注入口24を設ける位置を設定して注入口24を設けたら、次のリサイクルの時、注入口24を設ける位置を変更する自由度はない。
また、注入部24を加工した第1のガラス11を再生して複数回使用することができるため、再生時には、注入部24加工の工程を省略することができ、作業工程の省略および処理時間の短縮を図ることができる。
以下、本発明に係るマスクブランクス、フォトマスクの第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
本実施形態において上述した第1および第2実施形態と異なるのは注入部34が第1のガラス11に屈曲して設けられた点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
図17は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクを示す平面図(a)、断面図(b)である。
本実施形態におけるマスクブランクス10は、図17に示すように、平板状の第1のガラス11と、マスクパターンMが形成可能な遮光層M0の形成される第2のガラス12とが剥離可能として直接接合されてマスクブランクス用のガラス基板とされるとともに、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離するための注入部34が、貼り合わせ面13側から第1のガラス11の端面11aまで屈曲して第1のガラス11をL字状に貫通する貫通孔として設けられている。
本実施形態において、注入部34は第1のガラス11にL字状に貫通して設けられる。注入部34は、図17(a)に示すように、貼り合わせ面13側の開口34bがマスクパターンMのない周縁部15に配置されるとともに、矩形輪郭とされた第1のガラス11におけるいずれか一辺の中央位置に配置されて、貼り合わせ面13位置から厚さ方向中央位置付近まで設けられるとともに、図17(b)に示すように、開口34bと反対側の注入部34の厚さ方向中央位置に連通して、横開口34cが第1のガラス11の中心から外縁に向かう径方向として貼り合わせ面13の面に方向と平行な向きに延在して端面11aまで連通するように設けられ、この横開口34cは、矩形輪郭とされた第1のガラス11における開口34aの設けられた一辺に対応した端面11aに配置されている。
注入部34は、図17(b)に概略示すように、平板状とされる第1のガラス11において、貼り合わせ面13側から端面11a側へ屈曲したL字状の貫通形状とされることもできるが、L字状ではなく、図25(a)に示すように、開口34bから横開口34cまでの最短距離を結ぶ傾斜貫通孔34dとすることや、図25(b)に示すように、開口34bから横開口34cまでを結ぶ円弧状の貫通孔34eとすることもできる。この注入部34は、図2、図6に示した第1実施形態に対応して、貼り合わせ面13に位置する一方の開口34bよりも注入口となる他方の横開口34cが、第1のガラス11の平面視した輪郭外縁側に近接するように傾斜している。
また、注入部34は、図2に示した第1実施形態に対応して、注入部34から流体を注入する際に、この注入ノズルNを当接する注入部34の開口34aが、図18に示すように、ノズルNの先端N1形状に対応して密閉可能なように拡径されかつノズルNの先端N1形状に対応した凹形状とされることができる。
本実施形態に係るマスクブランクス10は、端面11aの注入部34開口34aに当接したノズルNにより、注入部34から貼り合わせ面13に流体を注入することで、容易に第1のガラス11と第2のガラス12とを剥離して分離することができる。
注入部34が、図4に示した第1実施形態に対応して、矩形輪郭とされた第1のガラス11におけるいずれか一辺の中央位置の端面11aに配置されていることにより、注入工程において注入された流体が、注入部を中心として略円形に拡大して拡がってゆき、第1のガラス11と第2のガラス12との剥離した部分が増大してゆく。
また、図5に示した第1実施形態に対応して、注入部34が、矩形輪郭とされた第1のガラス11におけるいずれか一の角付近となる位置に配置されていることにより、図4に示す例に比べて、流体の注入量に対する第1のガラス11と第2のガラス12との剥離した部分の増大比は少ないものとなるが、例えば、図6に示した第1実施形態に対応して、第1のガラス11の法線方向と回転軸線とするスピン回転による洗浄工程にマスクブランクス10を供した場合には、この注入部34内の洗浄液に起因する影響が小さくなるため好ましい。
さらに、本実施形態に係るマスクブランクス10は、図6に示した第1実施形態に対応して、第1のガラス11の法線方向と回転軸線とするスピン回転による洗浄工程において、マスクブランクス10を矢印sp方向に回転させた場合に、注入部34内の洗浄液が回転によって容易に排出可能なように、貼り合わせ面13側開口から端面11a側開口34aに向かって回転方向に合わせて注入部34を傾斜させることができる。この場合、図6に示した第1実施形態に対応して、回転速度等、洗浄条件に対応して、傾斜方向をθの範囲とすることが可能である。ここで、角度θは回転sp方向に対して、後方に向かうように設定することができる。
本実施形態に係るマスクブランクス10は、図7に示した第1実施形態に対応して、矩形輪郭とされた第1のガラス11における注入部34が配置されている辺の端面11aを下側位置として洗浄液に浸漬することで、端面11aに位置する開口34aが下向きに開口した状態で洗浄液に浸漬するため、洗浄液による影響をより一層低減することが可能となる。
本実施形態に係るマスクブランクス10は、図8(c)に示した第1実施形態に対応して、第2のガラス12の表面にマスクパターンMを形成することでフォトマスク10となる。
洗浄及び乾燥時には、注入部34をマスクパターンMが設けられる表面に設けるよりも、厚板ガラス11の端面11aに設けることで、ガラス基板10表面に液滴が生じないようにすることができる。
厚板ガラス11側に注入部24,34を設ける場合は、マスクパターンMのデザインや洗浄方式に合わせて注入部の位置を変更することができないが、薄板ガラス12に注入部14を設ける場合は、マスクパターンMのデザインや洗浄方式等、注入部34を設けた後での要求に合わせて変更することが可能となる。
本実施形態に係るマスクブランクスまたはフォトマスクの製造方法では、図9に示した第1実施形態に対応して、分離前工程S08においては、まず、パーティクル等が原因によるキズの発生を防止するためにフォトマスク10に対して、ガラス用洗剤による洗浄、純水によるリンス、IPAベーパー乾燥による洗浄をおこなった。
分離前工程S08における洗浄後、図8(d)に示した第1実施形態に対応して、薄板ガラス(第2のガラス)12の表面に破損防止用として樹脂フィルムSを貼り付けた。樹脂フィルムSは、注入部14を閉塞しないように、注入部14近傍領域のみ切断除去されていることができる。分離前工程S08として、貼り合わされた第1のガラス11と第2のガラス12とをクリーンルーム内または、クリーンブース下のパーティクルの少ない環境に保持する。
図19は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクの製造方法での分離前工程S08における保持状態を示す断面図である。
具体的には、分離前工程S08として、図19に示すように、第1のガラス11が下側に、かつ、第2のガラス12が上側になるように平坦面に載置し、先端で吸着可能な保持具H1により上側の第2のガラス12を保持し、矢印s5方向に第2のガラス12を剥離可能としておく。
図20は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクの製造方法での分離前工程S08における保持状態を示す断面図である。
または、分離前工程S08として、図20に示すように、第2のガラス12が下側に、かつ、第1のガラス11が上側になるように主面が水平面都平行になるように位置させるとともに、先端で吸着可能な保持具H1により上側の第1のガラス11を保持し、分離工程S09で、矢印s6方向に第2のガラス12が剥離して落下した場合に、下側位置に設けた柔らかい保持部材H2により捕獲可能としておく。
図21は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクの製造方法での分離前工程S08における保持状態を示す断面図である。
FPDなど大型のマスクに適用する場合には、分離前工程S08として、図21に示すように、フォトマスク10をその主面が概略鉛直方向と平行になるように立てた状態で、第2のガラス12がわずかに下側に向くように傾斜させて、その四隅を保持具H3,H4によって保持するとともに、先端で吸着可能な保持具H1により下側の第2のガラス12を保持し、矢印s7方向に第2のガラス12を回動して剥離可能としておく。この場合、注入部34は上側に位置する水平方向に延在する辺の中央となるようにフォトマスク10を立設しておく。また、矢印s7方向に第2のガラス12が剥離して落下した場合にも図示しない保持部材により捕獲可能としておく。この場合、保持具H1によって第2のガラス12を保持せずに、第2のガラス12の自重により剥離させることもできる。
図22は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクの製造方法での分離前工程S08における保持状態を示す断面図である。
FPDなどの大型マスクを再生する場合には、分離前工程S08として、図22に示すように、フォトマスク10をその主面が概略鉛直方向と平行になるように立てた状態で、第1のガラス11がわずかに上側に向くように傾斜させて、その四隅を保持具H4によって保持するとともに、先端で吸着可能な保持具H1により上側の第2のガラス12を保持し、矢印s8方向に第2のガラス12を回動して剥離可能としておく。この場合、注入部34は左右のいずれかに位置する略鉛直方向に傾斜して延在する辺の中央となるようにフォトマスク10を立設しておく。
このように、図9に示した第1実施形態の分離前工程S08と同様にして、フォトマスク10の保持工程が完了したら、図19〜図22に示すように、注入部34に、流体を注入するためのノズルNを当接させ、図8(e)に示したノズルNに接続された流体供給手段N0からノズルNに流体を供給可能としておく。
次いで、図9に示した第1実施形態の分離工程S09と同様にして、図19〜図22に示すように、注入口部4に当接したノズルNに、所定の圧力に(0.5MPa)に加圧した流体として、パーティクルを除去した窒素ガスまたはクリーンエアー、純水等の液体を供給する。なお、剥離プロセスはパーティクルの少ない純水などの液体中でおこなうことができ、その場合には、ノズルNに供給する流体として気体ではなく純水等の液体を用いることになる。この場合、水の浮力を利用できるので、大型のマスク10であってもハンドリングしやすくなる。
分離工程S09として、図19〜図22に示すように、注入部34を介してノズルNから供給された流体を貼り合わせ面13に注入すると、流体が注入部34から貼り合わせ面13に沿って拡がり、流体注入部分における第1のガラス11と第2のガラス12とを離間させる。同時に、この貼り合わせ面13の流体注入部分において、貼り合わされて直接接合された第1のガラス11と第2のガラス12との接合を解除するとともに、図21(a),図22(a)に破線の矢印で示すように、第1のガラス11と第2のガラス12とが離間した領域を徐々に拡大してゆき、最終的に第1のガラス11と第2のガラス12とを剥離する。
このとき、第1のガラス11と第2のガラス12との離間領域拡大に際して、同時に、図における矢印s5〜s8までの方向に保持具H1等を用いて第2のガラス12を離間方向に移動するように力をかけて、剥離を補助する。
具体的には、分離工程S09として、図19に示すように、保持具H1の先端で吸着・保持した上側の第2のガラス12を矢印s5方向に引き上げて、図21(a),図22(a)に示す破線の矢印と同様に、流体を注入した注入部34近傍の貼り合わせ面13が離間している領域を拡大するように上向きの引張力を作用させる。これにより、第2のガラス12が、上方に移動するとともに、作業台等の図示しない平坦面に載置された下側の厚板ガラス(第1のガラス)11から離間して、第2のガラス12が剥離される。
または、分離工程S09として、図20に示すように、下側に位置する第2のガラス12が、下方向である矢印s6方向に重力が作用しているので、注入部34から流体が貼り合わせ面13に注入されると、自重により矢印s6方向に第2のガラス12が落下して、保持具H1により上側に保持された第1のガラス11から分離する。落下した第2のガラス12は、柔らかい保持部材H2などにより捕獲される。
または、FPDなど大型のマスクの場合には、分離工程S09として、図21に示すように、フォトマスク10をその主面が概略鉛直方向と平行になるように立てた状態で、第2のガラス12がわずかに下側に向くように傾斜させて、その四隅を保持具H3,H4によって保持するとともに、先端で吸着可能な保持具H1により下側の第2のガラス12を保持し、矢印s7方向に第2のガラス12を引張して、貼り合わされて直接接合された第1のガラス11と第2のガラス12との接合を解除するとともに、図21(a)に破線の矢印で示すように、第1のガラス11と第2のガラス12とが離間した領域を注入部34を中心として周辺に徐々に拡大していき、持具H1の先端で吸着・保持した上側の第2のガラス12を矢印s7方向に引き上げて、第2のガラス12の下端部に位置する端辺を回動中心として、第2のガラス12の上端部に位置する端辺を矢印s7方向に移動するように、第2のガラス12を回動させる。
この場合、注入部34が上側で水平方向に延在する辺の中央に位置していることにより、まず、上端部分が剥離して、下端辺を中心とした矢印s7方向への第2のガラス12の回動を、重力および保持具H1の引張力により補助することができる。
また、矢印s7方向に第2のガラス12が剥離して落下した場合にも、保持部材H2と同等の図示しない保持部材により捕獲する。この場合、貼り合わされて直接接合された第1のガラス11と第2のガラス12との接合を解除された領域がある程度拡がったら、保持具H1による第2のガラス12の保持を解除して、矢印s7方向に引張することなく、第2のガラス12の自重のみにより剥離させることもできる。
さらに、FPDなど大型のマスクの場合には、分離工程S09として、図22に示すように、フォトマスク10をその主面が概略鉛直方向と平行になるように立てた状態で、第1のガラス11がわずかに上側に向くように傾斜させて、その四隅を保持具H4によって保持するとともに、先端で吸着可能な保持具H1により上側の第2のガラス12を保持し、矢印s4方向に第2のガラス12を回動させて、貼り合わされて直接接合された第1のガラス11と第2のガラス12との接合を解除された領域を拡大する。この場合、注入部14は左右のいずれかに位置する略鉛直方向に傾斜して延在する辺の中央となるようにフォトマスク10を立設しておくことで、左右方向に剥離領域が拡大してゆき、第2のガラス12全体に流体が流入して、第2のガラス12が第1のガラス11から接続解除されてから、第2のガラス12を第1のガラス11から移動・分離することが好ましい。
次いで、図9に示した第1実施形態に対応して、再生処理工程S10、廃棄工程S20として、処理をおこなう。
本実施形態に係るマスクブランクス10またはフォトマスク10では、厚板ガラス(第1のガラス)11の端面11aに設けられた横開口34cから、厚板ガラス11の主面と平行な方向に貫通し、貼り合わせ面13に設けられた開口34bまで連続するように注入部34が設けられているので、平面視した際の注入部34の形成位置を、マスクパターンMの設置範囲に縛られることなく、より配置の自由度を高めることができる。また、端面11aに設けられた開口34aから流体を注入することができるので、厚板ガラス11の破損等の発生を低減することが可能となる。
さらに、注入部34を加工した第1のガラス11を再生して複数回使用することができるため、再生時には、注入部34加工の工程を省略することができ、作業工程の省略および処理時間の短縮を図ることができる。
本実施形態によれば、このように、分離した第1のガラス11は再生してリサイクルすることができる。このとき、第1のガラス11には遮蔽層M0またはマスクパターンMが直接形成されていないため、リサイクル時に、これらの膜を除去する必要がないので、高精細用の研磨をおこなう必要がない。これにより、研磨にかかる作業時間・コストを削減することができる。
図23、図24は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクにおけるベベリング面を説明するための断面図である。
厚板ガラス(第1のガラス)11および薄板ガラス(第2のガラス)12においては、マスク用基板としてその端面にべべリング(C面)16を形成してもよい。
ここで、図24に示すように、厚板ガラス(第1のガラス)11および薄板ガラス(第2のガラス)12のそれぞれにベベリング面16aを設けて、貼り合わせた薄板ガラス12と厚板ガラス11の端面における境界部分に段差がある場合には、洗浄工程において、この段差となるベベリング16aの部分において充分な洗浄がしづらくパーティクルの発生原因となるため好ましくない。特に、端面11aが面一になっていないと、洗浄液および汚染物が凹部に溜まる等の悪影響があるため好ましくない。
したがって、本実施形態においては、図23に示すように、薄板ガラス12と厚板ガラス11とを合わせた断面がその境界部分で面一となるように一体化された形状とする。このベベリング面16の加工工程としては貼り合わせ工程S04後で遮光層形成工程S05前にこの端面加工を入れる製造方法とすることができる。
なお、マスクブランクス、フォトマスク10の主面を水平にするとともに、薄板ガラス12を上にして剥離した場合、流体の注入を停止すると、薄板ガラス12の自重により再度貼り付いてしまう。また、剥離時にパーティクルが薄板ガラス12と厚板ガラス11との間に入るとキズ発生の原因となるため好ましくない。これらを防止するために以下の方法を採用することができる。
薄板ガラス12を下側位置として、厚板ガラス11を吸着可能な保持具H1等で保持した状態で流体を注入する。これにより、薄板ガラス12は自重により下側に下がり、剥離が全体に進むと同時に薄板ガラス12が落下する。
または、薄板ガラス12を上側位置として、薄板ガラス12を吸着可能な保持具H1等で保持して上に引っ張る。
さらに、ガラス基板サイズが大きくなった場合は水平位置での保持が難しくなるため、基板を立てて流体の注入を上または左右の辺より行うことが望ましい。
このとき、90度よりも大きく傾けた場合は、薄板ガラス12の自重により再貼り付きを防止可能であるが、ガラス基板重量等により保持が難しい。また、90度以下の傾きとした場合は、薄板ガラス12を外側に引っ張ることで再貼り付きを防止することができる。
大気中よりも水槽などに貯留した水中(液体中)にガラス基板11,12を沈めて剥離処理をおこなうほうが好ましい。その理由として、大気中で剥離処理をおこなった場合には、パーティクルが剥離中の基板間に挟まった場合に、薄板ガラス12にキズが発生し易いのに対し、水中で剥離処理をおこなった場合には、パーティクルが剥離中の基板間に挟まった場合でも、潤滑その他の効果により、比較的キズが発生しにくいになりづらいためである。
さらに、水中で剥離処理をおこなった場合には、水の抵抗により、剥離したガラス基板11,12の動きをゆっくりとすることができ、これにより、急激な落下などによる衝突に起因したダメージ発生を軽減することが可能である。
なお、大気中での処理をおこなう装置のほうが提供は容易である。
また、パーティクル等に対する潤滑の効果に加え、流体としての水は、気体よりも密度が高いので圧縮されず厚板ガラス11と薄板ガラス12との界面を広げる力が強いため、注入部14,24,34から注入する流体は気体よりも液体が好ましい。
さらに、流体として水等の液体を採用する場合、純水よりも、表面活性剤を含む洗剤等を用いたほうが、潤滑の効果を高めることができるため、より好ましい。
以下、本発明に係るマスクブランクス、フォトマスクの第4実施形態を、図面に基づいて説明する。
本実施形態において上述した第1から第3のいずれかの実施形態と異なるのは注入部44が第1のガラス11および第2のガラスに設けられた点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
図26は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクを示す平面図(a)、断面図(b)である。
本実施形態におけるマスクブランクス10は、図26(a),図26(b)に示すように、平板状の第1のガラス11と、マスクパターンMが形成可能な遮光層M0の形成される第2のガラス12とが剥離可能として直接接合されてマスクブランクス用のガラス基板とされるとともに、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離するための注入部44が、第1のガラス11の端面11aから貼り合わせ面13と平行かつこの貼り合わせ面13をまたいで、第1のガラス11と第2のガラス12との両方に設けられた溝として設けられている。
本実施形態において、注入部44は端面11aがわから見た輪郭は略円形とされており、周縁部15の幅寸法以下の長さとして、端面11aから平面視した第1のガラス11中心方向に形成された一端の開口した孔部とされている。注入部44は、図26(a)に示すように、貼り合わせ面13において、マスクパターンMのない周縁部15に配置されるとともに、矩形輪郭とされた第1のガラス11におけるいずれか一辺の中央位置に配置されて、貼り合わせ面13位置から厚さ方向の第1のガラス11と第2のガラス12との両方に穿たれるように設けられるとともに、図26(b)に示すように、開口44aが端面11aに配置されている。
注入部44は、図26(b)に概略示すように、図17〜図25に示した第3実施形態と同様に、端面11aの開口44aにノズルNを当接して流体を注入するものとされる。
本実施形態では、上記の実施形態における作用効果と同等の効果を奏するとともに、注入部44が貼り合わせ面13位置から厚さ方向の第1のガラス11と第2のガラス12との両方に穿たれるように設けられることにより、分離工程S09をより効率的におこなうことができるためフォトマスクの再生をおこなうことが容易になる。
また、本実施形態におけるマスクブランクス10は、図26(c)に示すように、注入部44が、貼り合わせ面13よりも第1のガラス11側のみに設けられた溝44gとして設けられることができる。
また、本実施形態におけるマスクブランクス10は、図26(d)に示すように、注入部44が、貼り合わせ面13よりも第2のガラス12側のみに設けられた溝44hとして設けられることができる。
以下、本発明に係るマスクブランクス、フォトマスクの第5実施形態を、図面に基づいて説明する。
本実施形態において上述した第1から第4のいずれかの実施形態と異なるのは、第1のガラス11の裏面に第2の裏ガラス52が貼り着けられるとともに、注入部54が第2のガラス52側の貼り合わせ面53にも貫通するようにした点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
図27は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクを示す平面図(a)、断面図(b)である。
本実施形態におけるマスクブランクス10は、図27に示すように、平板状の第1のガラス11と、マスクパターンMが形成可能な遮光層M0の形成される第2のガラス12と第2の裏ガラス52とが剥離可能として直接接合されてマスクブランクス用のガラス基板とされるとともに、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離するとともに、第1のガラス11と第2の裏ガラス52との貼り合わせ面53に流体を注入して剥離するための注入部54が、貼り合わせ面13と貼り合わせ面53との間を結ぶように第1のガラス11の厚さ方向に貫通する貫通孔と、この貫通孔の中央から端面11aまで連通する貫通孔からなるT字状として設けられている。
本実施形態において、注入部54は第1のガラス11にT字状として3方向に貫通するように設けられる。
注入部54は、図27(a)に示すように、貼り合わせ面13側の開口54bがマスクパターンMのない周縁部15に配置されるとともに、矩形輪郭とされた第1のガラス11におけるいずれか一辺の中央位置に配置されている。また注入部54は、貼り合わせ面53側の開口54dが、平面視して開口54bと重なる位置に配される。
また注入部54は、図27(b)に示すように、開口54dと開口54bとを連通して第1のガラス11の厚さ方向全長に亘る貫通孔と、この貫通孔の開口54dと開口54bとの厚さ方向中央位置から第1のガラス11の主面と平行な方向で、第1のガラス11の中心から外縁に向かう径方向として貼り合わせ面13の面に方向と平行な向きに延在して端面11aの横開口54cまで連通するように設けられ、この横開口54cは、矩形輪郭とされた第1のガラス11における開口54aの設けられた一辺に対応した端面11aに配置されている。
また、注入部54は、図2に示した第1実施形態に対応して、注入部54から流体を注入する際に、この注入ノズルNを当接する注入部54の開口54aが、図27(b)に示すように、ノズルNの先端N1形状に対応して密閉可能なように拡径されかつノズルNの先端N1形状に対応した凹形状とされることができる。
本実施形態に係るマスクブランクス10は、端面11aに設けられた注入部54の開口54aに当接させたノズルNにより流体を注入することで、横開口54cから分岐した注入部54内部で2方向に分岐した貫通孔に沿って流体が分かれて、開口54dと開口54bとに到達する。これにより、端面11aの注入部54から貼り合わせ面13および貼り合わせ面53に流体を注入することで、容易に第1のガラス11と第2のガラス12とを剥離するとともに、第1のガラス11と第2の裏ガラス52とを剥離して分離することができる。
注入部54が、図4に示した第1実施形態に対応して、矩形輪郭とされた第1のガラス11におけるいずれか一辺の中央位置の端面11aに配置されていることにより、注入工程において注入された流体が、貼り合わせ面13および貼り合わせ面53において注入部54を中心として略円形に拡大して拡がってゆき、第1のガラス11と第2のガラス12との剥離した部分が増大してゆくとともに、第1のガラス11と第2の裏ガラス52との剥離した部分が増大してゆく。
また、図5に示した第1実施形態に対応して、注入部54が、矩形輪郭とされた第1のガラス11におけるいずれか一の角付近となる位置に配置されていることにより、図6に示した第1実施形態に対応して、第1のガラス11の法線方向と回転軸線とするスピン回転による洗浄工程にマスクブランクス10を供した場合には、この注入部54内の洗浄液に起因する影響が小さくなるため好ましい。
さらに、本実施形態に係るマスクブランクス10は、図2,図6に示した第1実施形態に対応して、第1のガラス11の法線方向と回転軸線とするスピン回転による洗浄工程において、マスクブランクス10を矢印sp方向に回転させた場合に、注入部54内の洗浄液が回転によって容易に排出可能なように、貼り合わせ面13側の開口54bから横開口34cに向かって回転方向に合わせて注入部34を傾斜させるとともに、貼り合わせ面53側の開口54dから横開口34cに向かって回転方向に合わせて注入部34を傾斜させることができる。
さらに、本実施形態に係るマスクブランクス10は、図6に示した第1実施形態に対応して、第1のガラス11の法線方向と回転軸線とするスピン回転による洗浄工程において、
回転速度等、洗浄条件に対応して、横開口54cを内部から開口54aに向かって、回転方向に合わせて傾斜させて、その傾斜方向をθの範囲とすることが可能である。ここで、角度θは回転sp方向に対して、後方に向かうように設定することができる。
本実施形態に係るマスクブランクス10は、図7に示した第1実施形態に対応して、矩形輪郭とされた第1のガラス11における注入部34が配置されている辺の端面11aを下側位置として洗浄液に浸漬することで、端面11aに位置する開口34aが下向きに開口した状態で洗浄液に浸漬するため、洗浄液による影響をより一層低減することが可能となる。
注入部54は、図27に概略示すように、図17〜図25に示した第3実施形態と同様に、端面11aの開口54aにノズルNを当接して流体を注入するものとされる。
本実施形態に係るマスクブランクス10、フォトマスク10は、図27に示すように、第2のガラス12および第2の裏ガラス52を1工程の注入処理によって同時に剥離して、
第1のガラス11を容易に再生することが可能となる。なお、剥離工程においては、図21(b),図22(b)に示した第3実施形態に対応して、ガラス11,12,52を立位として保持具H3,H4による保持、ノズルNによる注入、保持具H1による剥離をおこなうことが好ましい。
洗浄及び乾燥時には、注入部54をマスクパターンMが設けられる表面に設けるよりも、厚板ガラス11の端面11aに設けることで、ガラス基板10表面に液滴が生じないようにすることができる。
本実施形態において、注入部54における横開口54cは、端面11a側から見た輪郭は略円形とされており、周縁部15の幅寸法以下の長さとして、端面11aから平面視した第1のガラス11中心方向に形成された一端の開口した孔部とされている。
本実施形態では、上記の実施形態における作用効果と同等の効果を奏するとともに、注入部54が端面11aから厚さ方向の貼り合わせ面13位置と貼り合わせ面53位置とにまで連通することで、分離工程S09をより効率的におこなうことができるためフォトマスクの再生をおこなうことが容易になる。
以下、本発明に係るマスクブランクス、フォトマスクの第6実施形態を、図面に基づいて説明する。
本実施形態において上述した第5実施形態と異なるのは、注入部64が貼り合わせ面13および貼り合わせ面53用に、それぞれ別々に設けられた点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
図28は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクを示す断面図である。
本実施形態におけるマスクブランクス10は、図28に示すように、平板状の第1のガラス11と、マスクパターンMが形成可能な遮光層M0の形成される第2のガラス12と第2の裏ガラス52とが剥離可能として直接接合されてマスクブランクス用のガラス基板とされるとともに、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離する注入部64Aが、端面11aに連通するように設けられるとともに、第1のガラス11と第2の裏ガラス52との貼り合わせ面53に流体を注入して剥離するための注入部64Bが、端面11aまで連通するように設けられる。
注入部64A,64Bはいずれも、図28に概略示すように、図17〜図25に示した第3実施形態と同様に、端面11aの開口64Aa,64BaにノズルNを当接して流体を注入するものとされる。注入部64A,64Bはそれぞれ、分離されているので、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離する工程と、第1のガラス11と第2の裏ガラス52との貼り合わせ面53に流体を注入して剥離する工程とを、別々におこなうことができる。
以下、本発明に係るマスクブランクス、フォトマスクの第7実施形態を、図面に基づいて説明する。
本実施形態において上述した第6実施形態と異なるのは、注入部64が貼り合わせ面13および貼り合わせ面53用に、それぞれ別々に設けられた点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
図29は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクを示す断面図である。
本実施形態におけるマスクブランクス10は、図29に示すように、平板状の第1のガラス11と、マスクパターンMが形成可能な遮光層M0の形成される第2のガラス12と第2の裏ガラス52とが剥離可能として直接接合されてマスクブランクス用のガラス基板とされるとともに、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離する注入部64Aが、端面11aに連通するように設けられるとともに、第1のガラス11と第2の裏ガラス52との貼り合わせ面53に流体を注入して剥離するための注入部64Bが、端面11aまで連通するように設けられる。
注入部64A,64Bはいずれも、図29に概略示すように、図25(a)に示した第3実施形態と同様に、端面11aの開口64Aa,64BaにノズルNを当接して流体を注入するものとされる。注入部64Aは、開口64Aaから開口64Abに連通する傾斜孔とされ、注入部64Bは、開口64Baから開口64Bbに連通する傾斜孔とされている。注入部64A,64Bはそれぞれ、分離されているので、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離する工程と、第1のガラス11と第2の裏ガラス52との貼り合わせ面53に流体を注入して剥離する工程とを、別々におこなうことができる。
以下、本発明に係るマスクブランクス、フォトマスクの第8実施形態を、図面に基づいて説明する。
本実施形態において上述した第6実施形態と異なるのは、注入部74A,74Bが貼り合わせ面13および貼り合わせ面53用に、それぞれ別々に設けられた点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
図30は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクを示す断面図である。
本実施形態におけるマスクブランクス10は、図30に示すように、平板状の第1のガラス11と、マスクパターンMが形成可能な遮光層M0の形成される第2のガラス12と第2の裏ガラス52とが剥離可能として直接接合されてマスクブランクス用のガラス基板とされるとともに、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離する注入部74Aが、第2のガラス12表面に連通するように設けられるとともに、第1のガラス11と第2の裏ガラス52との貼り合わせ面53に流体を注入して剥離するための注入部74Bが、第2の裏ガラス52表面まで連通するように設けられる。
注入部74A,74Bはいずれも、図30に概略示すように、図1(b)に示した第1実施形態と同様に、第2のガラス12,52表面の開口74BbにノズルNを当接して流体を注入するものとされる。注入部74Aは、開口74Aaから開口74Abに連通する貫通孔とされ、注入部74Bは、開口74Baから開口74Bbに連通する貫通孔とされている。注入部74A,74Bはそれぞれ、分離されているので、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離する工程と、第1のガラス11と第2の裏ガラス52との貼り合わせ面53に流体を注入して剥離する工程とを、別々におこなうことができる。
以下、本発明に係るマスクブランクス、フォトマスクの第9実施形態を、図面に基づいて説明する。
本実施形態において上述した第7実施形態と異なるのは、注入部84A,84Bが貼り合わせ面13および貼り合わせ面53用に、それぞれ別々に設けられた点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
図31は、本実施形態におけるマスクブランクス、フォトマスクを示す断面図である。
本実施形態におけるマスクブランクス10は、図31(a)に示すように、平板状の第1のガラス11と、マスクパターンMが形成可能な遮光層M0の形成される第2のガラス12と第2の裏ガラス52とが剥離可能として直接接合されてマスクブランクス用のガラス基板とされるとともに、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離する注入部84Aが、第2のガラス12表面に連通するように設けられるとともに、第1のガラス11と第2の裏ガラス52との貼り合わせ面53に流体を注入して剥離するための注入部84Bが、第2の裏ガラス52表面まで連通するように設けられる。
注入部84A,84Bはいずれも、図31に概略示すように、図26(b)に示した第4実施形態と同様に、第2のガラス12,52表面の開口84BbにノズルNを当接して流体を注入するものとされる。注入部78Aは、開口84Aaから開口84Abに連通する貫通孔とされ、注入部84Bは、開口84Baから開口84Bbに連通する貫通孔とされている。注入部84A,84Bはそれぞれ、分離されているので、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離する工程と、第1のガラス11と第2の裏ガラス52との貼り合わせ面53に流体を注入して剥離する工程とを、別々におこなうことができる。なお、注入部84A,84Bはいずれも、第1のガラス11にのみ溝を設けたものとすることもできる。
また、本実施形態におけるマスクブランクス10は、図31(b)に示すように、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離する注入部84Aが、貼り合わせ面13よりも第1のガラス11側のみに設けられた溝84Agとして設けられることができる。
また、本実施形態におけるマスクブランクス10は、図31(c)に示すように、第1のガラス11と第2のガラス12との貼り合わせ面13に流体を注入して剥離する注入部84Aが、貼り合わせ面13よりも第2のガラス12側のみに設けられた溝84Ahとして設けられることができる。
また、本実施形態におけるマスクブランクス10は、図31(d)に示すように、第1のガラス11と第2のガラス52との貼り合わせ面53に流体を注入して剥離する注入部84Aが、貼り合わせ面53よりも第1のガラス11側のみに設けられた溝84Bgとして設けられることができる。
また、本実施形態におけるマスクブランクス10は、図31(e)に示すように、第1のガラス11と第2のガラス52との貼り合わせ面53に流体を注入して剥離する注入部84Aが、貼り合わせ面53よりも第2のガラス12側のみに設けられた溝84Bhとして設けられることができる。
さらに、これら溝84Ag、溝84Ah、溝84Bg、溝84Bhを適宜組み合わせて設けることもできる。