JP6617620B2 - インバータの搭載構造 - Google Patents

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Description

本発明は、走行用のモータに電力を供給するインバータのフロントコンパートメントへの搭載構造に関する。
電気自動車やハイブリッド車では、走行用のモータと、そのモータに電力を供給するインバータがフロントコンパートメント(車両の乗員室より前の空間)に搭載されることが多い。ハイブリッド車の場合には、走行用のモータとインバータに加え、エンジンもフロントコンパートメントに搭載される(例えば特許文献1)。
特開2010−083317号公報
走行用のモータやエンジンなどの駆動ユニットは体格が大きく、また、その筐体は強度が高い。狭いフロントコンパートメントでは、駆動ユニットとインバータが隣り合うように搭載されることが多く、衝突の際に駆動ユニットが後退すると、駆動ユニットとインバータが接触する可能性がある。駆動ユニットとインバータが接触すると、インバータがダメージを受ける虞がある。インバータは、内部に高電圧部品を収容しているため、インバータの筐体が破壊されると内部の高電圧部品が露出する虞がある。高電圧部品の一例は、バッテリの高電圧が印加される平滑コンデンサである。本明細書は、走行用のモータに電力を供給するインバータのフロントコンパートメントへの搭載構造に関し、駆動ユニットとインバータが接触したときにインバータが受ける衝撃を緩和する技術を提供する。
フロントコンパートメントには、モータとエンジンの少なくとも一方を収容している駆動ユニットが搭載されている。本明細書が開示する搭載構造では、インバータは、フロントコンパートメントを平面視したときに駆動ユニットの斜め後ろに隣り合うように配置される。インバータの筐体の駆動ユニットに近い部位に、筐体の本体の側面から突出している突起が設けられている。そして、突起には、その先端面に開口しており、インバータを車両に固定するボルトが螺合するボルト孔が設けられている。そのボルト孔が、突起の中心線よりも車両後方側に偏って設けられている。そのため、この搭載構造では、車両前方から突起に所定値以上の荷重が加わった場合に、筐体が破損する前に、突起の車両後方側の付け根が破断する。より詳細には、衝突の際に駆動ユニットが後退し、インバータと接触した場合、インバータの車両への締結点の一つである突起に荷重が加わる。インバータを車両に固定するボルトが螺合するボルト孔が車両後方側に偏って突起に設けられているので、突起が荷重を受けると突起の車両後方側の付け根に応力が集中し、そこが突起破断の起点となる。破断は突起の付け根全体に広がり、突起が筐体から離脱する。突起が離脱することで、インバータの筐体が受ける衝撃が緩和される。また、インバータの筐体が、車両との連結点に相当する突起から自由になるのでインバータの移動が許容される。インバータの移動が許容されることも衝撃緩和に貢献する。本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
実施例の搭載構造を採用したハイブリッド車のフロントコンパートメントの平面図である。 図1の破線Aの範囲の拡大図である。 突起が破断した様子を示す拡大図である(模式図)
図面を参照して実施例の搭載構造を説明する。実施例の搭載構造は、ハイブリッド車90に適用されている。図1に、ハイブリッド車90のフロントコンパートメント91の平面図を示す。なお、図1では、インバータ2の搭載構造10を説明する上で必要な部品のみを示しており、他のいくつかの部品は省略している。図1の座標系において、F軸が車両前方を示し、H軸は車幅方向を示し、V軸は車両上方を示す。
ハイブリッド車90は、走行用のモータ31とエンジン32をフロントコンパートメント91に搭載している。なお、フロントコンパートメント91は、ダッシュパネル92よりも前の空間、別言すれば乗員室よりも前の空間を意味する。
モータ31とエンジン32はひとつのケースに収められており、そのケースを駆動ユニット7と称する。駆動ユニット7は、車両前後方向に延びる2本のフロントサイドメンバ8a、8bの間に配置されている。駆動ユニット7は、防振機能を有するエンジンマウント17を介して、2本のフロントサイドメンバ8a、8bの間に懸架されている。2本のフロントサイドメンバ8a、8bの前端は、フロントバンパリインフォースメント12で連結されている。なお、2本のフロントサイドメンバ8a、8bは、その途中で不図示のクロスメンバでも連結されている。2本のフロントサイドメンバ8a、8bは、車両の強度を確保するフレームの一部である。
駆動ユニット7の斜め後ろにインバータ2が搭載されている。図1は平面図であるので、より詳しくは、インバータ2は、フロントコンパートメント91を平面視したときに、駆動ユニット7の斜め後ろに搭載されている。なお、車両前後方向でインバータ2の最前部は、駆動ユニット7の最後部とオーバーラップしている。本実施例において、「インバータ2が駆動ユニット7の斜め後ろに搭載されている」とは、少なくとも、インバータ2の最前部が車両前後方向で駆動ユニット7の中央より後に位置し、インバータ2の最後部が駆動ユニット7の最後部よりも後ろに位置していることを意味する。
インバータ2は、不図示のバッテリの直流電力を交流電力に変換してモータ31に供給する。図1では、インバータ2とバッテリを接続するパワーケーブル、及び、インバータ2とモータ31(駆動ユニット7)を接続するパワーケーブルは図示を省略している。
インバータ2には、バッテリの直流電流の脈動を除去する平滑コンデンサ21が内蔵されている。走行用のモータ31を駆動するための電力は大電力であり、平滑コンデンサ21には、例えば300ボルト以上の電圧が印加される。そのような高電圧が印加されている平滑コンデンサ21は、衝突の際に速やかに放電することが望ましい。そこで、インバータ2は、衝突を検知すると平滑コンデンサ21を放電する放電回路22を備えている。車両の衝突は、不図示のエアバックセンサや、いわゆるプリクラッシュセンサなどで検知され、その信号はインバータ2に通知される。
インバータ2の筐体20は、ボルト4、14a〜14dとブラケット5、15a〜15dにより車両に固定されている。インバータ2の駆動ユニット7に近い部位には突起3が設けられている。突起3は、駆動ユニット7に向かって筐体20から突出している。突起3の先端面にボルト孔(図1では不図示)が開口しており、そのボルト孔にボルト4が螺合している。ボルト4は、ブラケット5をインバータ2に固定している。ブラケット5の下端はフロントサイドメンバ8aに固定されている。即ち、インバータ2の筐体20は、ブラケット5を介してフロントサイドメンバ8aに固定されている。また、インバータ2の筐体20は、ブラケット15a〜15cを介して、ボルト14a〜14cにより、フロントエプロン6に固定されている。さらに、インバータ2の筐体20は、ブラケット15dを介して、ボルト14dによりサスペンションタワー16に固定されている。インバータ2の筐体20は、合計5か所で車両に固定されている。
図1に示すように、インバータ2は、駆動ユニット7の斜め後ろに隣り合うように配置されている。車両が前方衝突すると駆動ユニット7が後退し、インバータ2と接触する。駆動ユニット7は、体格が大きく、また、エンジンやモータなどを収容するケースであるから強度も高い。インバータ2は、駆動ユニット7と比較して体格が小さく、強度も低い。それゆえ、駆動ユニット7がインバータ2と接触すると、インバータ2がダメージを受ける虞がある。搭載構造10は、駆動ユニット7との接触によってインバータ2が受けるダメージを低減するメカニズムを採用している。以下、そのメカニズムを説明する。
図1において破線Aで囲んだ範囲の拡大図を図2と図3に示す。図3は、衝突荷重を受けた突起3が筐体20から離脱する様子を模式的に示している。なお、図2、図3では、駆動ユニット7は図示を省略している。そのかわり、前方衝突の際に後退する駆動ユニット7がインバータ2に接触して加える荷重を矢印W1(衝突荷重W1)で示している。なお、想定され得る衝突の態様の一つに、斜め前方から障害物が衝突する態様がある。図2の破線矢印W2は、斜め前方から障害物が衝突したときに突起3に加わる荷重を示している。衝突荷重の方向が矢印W1の場合であっても矢印W2の場合であっても、以下の説明は成立する。
図2、図3は、突起3に設けられたボルト孔3aを通り、F軸方向とH軸方向に拡がる平面(水平方向に拡がる平面)でインバータ2をカットした断面を示している。図2によく示されているように、突起3は、その先端面に開口するボルト孔3aを有している。ボルト孔3aは、突起3の延設方向に沿って延びている。ボルト孔3aの軸線CL1は、突起3の中心線CL2から、距離dLだけ車両後方に偏っている。別言すると、ボルト孔3aは、突起3の中心線CL2よりも車両後ろ側に偏って設けられている。ボルト孔3aの偏りにより、ボルト孔3aの内面と突起3の車両後側の側面との間の距離(後方肉厚Ta)が、ボルト孔3aの内面と突起3の車両前側の側面との間の距離(前方肉厚Tb)よりも薄くなる。この肉厚の相違により、突起3の前方から荷重W1(あるいは荷重W2)が加わると、突起3の車両後ろ側の付け根3bに応力が集中し付け根3bが破断の起点となる。突起3の付け根のどこかで破断が始まると、瞬く間に破断が突起3の付け根全体に拡がり、突起3が筐体20から離脱する(図3)。荷重W1(あるいは荷重W2)を受けた突起3が筐体20から離脱することで、筐体20が受ける衝撃が緩和される。こうして、衝突時に、後退する駆動ユニット7からインバータ2が受ける衝撃が緩和される。インバータ2が受ける衝撃が緩和されることで、筐体20の内部の高電圧部品が露出する可能性が小さくなる。また、衝突時にインバータ2の筐体20が破損せずに、放電回路22が平滑コンデンサ21を放電する確実性が高まる。
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例の搭載構造10では、突起3は、一つのボルト孔3aを備えている。突起3は、複数のボルト孔を備え、夫々のボルト孔に、インバータ2を車両に固定するボルトが螺合しているものであってもよい。その場合、夫々のボルト孔を通る水平面において、そのボルト孔の軸線が突起の中心線よりも車両後方側に偏るようにボルト孔が設けられていればよい。
実施例の搭載構造10においては、駆動ユニット7は、走行用のモータ31とエンジン32の両方を収容している。インバータ2が隣り合う駆動ユニットは、走行用のモータのみを収容するものであってもよい。また、走行用のモータが車両後部に搭載される場合には、インバータ2が隣り合う駆動ユニットは、エンジンのみを収容するものであってもよい。本明細書が開示する搭載構造は、ハイブリッド車のほか、電気自動車や燃料電池車に適用することも好適である。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
2:インバータ
3:突起
3a:ボルト孔
3b:付け根
4、14a−14d:ボルト
5、15a−15d:ブラケット
6:フロントエプロン
7:駆動ユニット
8a、8b:フロントサイドメンバ
10:搭載構造
12:フロントバンパリインフォースメント
16:サスペンションタワー
17:エンジンマウント
20:筐体
21:平滑コンデンサ
22:放電回路
31:モータ
32:エンジン
90:ハイブリッド車
91:フロントコンパートメント
92:ダッシュパネル

Claims (1)

  1. 走行用のモータに電力を供給するインバータのフロントコンパートメントへの搭載構造であり、
    前記フロントコンパートメントに、前記モータとエンジンの少なくとも一方を収容している駆動ユニットが搭載されており、
    前記インバータは、前記フロントコンパートメントを平面視したときに前記駆動ユニットの斜め後ろに隣り合うように配置されており、
    前記インバータの筐体の前記駆動ユニットに近い部位に、前記筐体の本体の側面から突出している突起が設けられており、
    前記突起に、その先端面に開口しており、前記インバータを車両に固定するボルトが螺合するボルト孔が設けられており、
    当該ボルト孔が、突起の中心線よりも車両後方側に偏って設けられており、車両前方から前記突起に所定値以上の荷重が加わった場合に、前記筐体が破損する前に、前記突起の車両後方側の付け根が破断する、インバータの搭載構造。
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