JP6615191B2 - 温度補償された複合共振器 - Google Patents

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Description

本発明はマイクロ電気機械共振器に関する。特に、本発明は共振器の周波数温度係数(TCF)の調整に関する。
広く使用されている水晶ベース共振器は、多くの分野でマイクロ機械共振器、一般的にはシリコンベース共振器、と置き換えられる可能性がある。シリコン共振器は水晶共振器より小さくでき、シリコン共振器には複数の標準的な製造方法がある。しかしながら、シリコンベース共振器と関連する問題として、これらの共振器は共振周波数の温度ドリフトが高いという問題を有する。このドリフトは、主にシリコンのヤング率の温度依存性に起因し、約−30ppm/Cの周波数温度係数(TCF)を生じる。これは周囲温度の変化により共振周波数の変動をもたらす。
TCFに関しては、線形、即ち一次の挙動と二次の挙動の両方が実際上重要であり、その理由は、第1の挙動は温度変化による周波数の局部的変化(理想的にはゼロ)を表し、第2の挙動は低いドリフト温度範囲の幅を表す。一次項がゼロであれば、周波数ドリフトは二次項のみから生じ、TCFがその絶対最小値になる特定の「ターンオーバ温度」が存在する。二次TCFはここでは、一次係数TCF(線形TCF)と対比してTCFともいう。ATカット水晶は25℃においてほぼゼロの低いTCF及びTCFを有し、それらの総合周波数ドリフトは一般的には−40℃〜+85℃の広い温度範囲に亘って±10ppm以内である。シリコン共振器の温度性能は現時点ではかなり悪い。
温度ドリフトの問題を除去又は緩和する一つの有望な方法は極度に高濃度のシリコンドーピングである。バルク弾性波(BAW)共振挙動への1019cm−3より高濃度の均一なn型ドーピングの効果は、例えば国際公開WO2012/110708号明細書(特許文献1)において検討されている。この特許文献は、「純粋」c11−c12モード(c11,c12及びc44はシリコンのヤング率の弾性項である)のTCFはゼロより十分上にとどまり、周波数は依然として温度に大きく依存する。しかしながら、面積伸縮(SE)モード又は幅伸縮(WE)モード等の他のBAW共振モードはそのような弾性パラメータc11,c12(及びc44)への依存性を有するため、一次TCFをそれらの面内幾何学的アスペクト比の正しい選択によってゼロにすることができる。また、11*1019cm−3以上のn型ドーピングレベル(ドーピング剤ヒ素)を実際に実現できることも証明されている。
別の方法は、米国特許第8558643号明細書(特許文献2)で検討されているように、異なるドーピングレベル又は結晶方向を有する重畳層を備えた有効材料構造を形成する。この構造は、アンドープ又は均一ドープの対応シリコン元素のTCFより低いTCFを有する共振モードを実行し得る超格子を形成する。このような構造は、100℃の範囲に亘って50ppmより低い温度ドリフトが達成されるように、二次TCFをある程度減少させるために使用することもできる。
上述の文献はシリコンドーピングを利用する他の文献も援用し、温度ドリフト問題に対処する他の方法も検討している。
共振器の温度挙動はドーピング濃度に依存するのみならず、その幾何学的形状、結晶方向及びそこで励起される共振モードにも依存し、いくつかの重要な因子に言及する。さらに、考慮する必要がある因子は、共振器のQ値(共振器の固定法が重要な役割を果たす)と、共振器設計を実際に製造する能力である。低いTCFと高いQ値は、例えば一般的に種々の幾何学的レイアウトで達成されるため、既知の共振器設計において相反する設計目標になり得る。
現時点で実際に実現可能で利用可能な低TCFシリコン共振器設計は少なく、そのいくつかが特許文献1及び特許文献2に開示されているにすぎない。しかしながら、TCF特性と高いQ値を同時により良好に制御し得るように改良された実際に実現可能な新設計が必要とされている。簡単な構造及び製造プロセスも望まれている。
国際公開WO2012/110708号 米国特許第8558643号明細書
本発明の目的は、TCF特性が特定のニーズを満たすために調整可能な新規な共振器装置を提供することにある。
特に、本発明の目的は、効率的に温度補償することができ、そのターンオーバ温度を便利に設定することができる共振器を提供することにある。本発明の目的はまた、低い温度ドリフト範囲の幅を増大し得る共振器設計を提供することにある。
本発明の特定の目的は、上述した目的の一つ又はすべてを満たすにもかかわらず高いQを有する共振器を提供することにある。
本発明は、固有の共振モードを有するドーププレート共振器のTCF特性は、突出部によって共振器全体のTCFに所望の影響を与えることができ、例えば一次TCFを、場合によっては二次TCF及びそれより高次のTCFも、最小化することができるという観察に基づいている。プレートと突出部で形成された複合共振器は複合モードで共振し、単純なプレート共振器に匹敵するTCF特性にこの種の変化を可能にする。複合モードはプレートにおける第1の共振と、突出部における第1の共振と異なるTCF特性を有する第2の共振とからなるものと考えられ、プレートと突出部は結合している。本発明の追加の目的を達成するためには、プレートと突出部は共振器の高いQを維持するために固定点として作用し得る節点が共振器の外周に存在するように設計することができることも重要である。
従って、本発明は、支持構造と、少なくとも一つのアンカー素子により前記支持構造に懸架されたドープ半導体共振器と、前記共振器に共振を励起するアクチュエータとを備えるマイクロ電気機械共振器を提供する。前記共振器は、ベース部と、前記ベース部の外周から突出する少なくとも一つの突出部を備える。前記共振器は前記アクチュエータによってTCF特性を有する複合共振モードに励起することができ、そのTCF特性は前記複合共振に関与する前記ベース部と前記少なくとも一つの突出部とにより与えられる。
特に、このように形成された複合共振器はベース部と突出部における異なる種類の共振、例えばベース部におけるBAW共振と突出部における屈曲共振とよりなる複合共振モードに励起することができる。
特に、ベース部及び突出部のTCFは反対符号にすることができ、それによって低損失の懸架を可能にするベース部の幾何学的構成を用いて総合TCFを最小にすることができる。よって、この実施形態では、共振器は可補償の主要部と不十分補償の突出部を備え、またその逆もあり得る。
より具体的には、本発明の特徴は独立請求項に記載されている。
本発明によれば、多大な利点が達成される。特に、本発明によれば、注意深く選択した突出部を用いることによって、共振器の品質係数Qを損なうことなくシリコン共振器のTCF特性を調整することができる。
本発明は、例えばWE、LE又はラーメモード共振器などのBAWモード共振器の幾何学的構成を、節点懸架と線形TCFの略ゼロ化が同時に達成されるように修正することによって、TCF及び品質係数の問題を解消する。節点懸架とは、アンカー素子を共振器素子に共振モードの節点で位置させることを意味する。節点での懸架は高い品質係数動作の必須要件である。実際には、これは、一般的な製造プロセスに対して、節点は共振器の外周になければならないことを意味し、本発明の設計はこれを可能にする。
本発明の実際の応用に関しては、本共振器は能動温度補償を必要としないために超低電力の基準発振器として使用できる。
本発明はまた、実際に証明可能で達成可能なn型ドーピング濃度を用いて実現可能である。互いに積み重ねられた異なる層に異なる材料特性を有する超格子構造と比較して、本共振器素子はモノリシック単層素子として製造でき、よってその製造は簡単である。また、必要とされるドーパント濃度も超格子実装の場合に必要とされるものより小さい。また、本共振器は本質的に所要の周波数安定度を満たすように設計されているので、共振器の周囲の複雑な能動温度補償回路を不要にし得る。
従属請求項は選ばれた好ましい実施形態に向けられている。
ベース部と突出部との間に強い音響結合が存在するが、ベース部は第1のTCF特性を有する第1の共振モードを備えるが、突出部は第1の共振モードとは異なる第2のTCF特性を有する第2の共振モードを備える、と考えられる。第2のTCF特性は一般的に第1のTCF特性と異なり、よってベース部と突出部の共同作用は複合モードで振動する共振器の総合温度性能を決定する。突出部は好ましくはベース部から横方向に突出する。
一つの好ましい実施形態では、第1の共振モードはバルク音響波(BAW)モードであり、第2の共振モードは屈曲モードである。
一つの好ましい実施形態では、第1及び第2の共振モードは互い異なる共振周波数を有する。
一実施形態によれば、ベース部は1より大きいアスペクト比を有する長方形プレートである。このようなプレートにはWEモード又はLEモードを励起することができ、適切な辺長であれば、最適な懸架点として作用する2つの節点がプレートの辺に存在する。
一実施形態によれば、主要部はその両長手方向端の中間に節点を生じるアスペクト比を有するWEモード共振器である。アンカー素子はこれらの点で主要部に結合する。更に、突出部は共振器のTCFを調整するためにビーム状の屈曲突出部を備える。この設計では、屈曲突出部に対して十分な自由度(水平エッジの幅、長さ、位置)があるため、節点を維持したままTCFの所望の変化(所定の範囲内)を達成することができる解決策が存在する。共振器全体は好ましくは、少なくとも2.3*1019cm−3の平均ドーピング濃度にドープされる。これらのドーピング濃度では、ゼロTCFを達成できる。設計はTCFがゼロである同じ点においてTCFもゼロにするのが好ましい。
代替実施形態によれば、主要部はLEモード共振器であり、その対向長辺に懸架点を有し、突出部は屈曲ビームを備える。この実施形態は、いくつかの構成においてTCFがゼロであるドーピングレベルにおいてWEモード共振器のTCFが低くなりすぎるために有益である。従って、WE−SE分枝に関してはTCF=TCF=0を満足し得る幾何学的構成(すべてのアスペクト比に対してTCF<0)は存在し得ない。この場合、TCF=TCF=0を有する幾何学的構成はラーメ−LEモード分枝に見つけることができる。また、この幾何学的構成をわずかに修正することによってこの分枝のモードの線形TCFを減少させるのも有利でありうる。
TCF及びTCFがゼロのとき、総合周波数ドリフトは極めて小さい。特に、本発明の実施形態による共振器の総合周波数ドリフトは少なくとも50℃の範囲、特に125℃、好ましくはT=−40℃,...85℃の範囲(いわゆる工業範囲)に亘って±10ppm以内にすることができ、これは水晶の温度性能レベルに相当する。
一実施形態によれば、突出部の数は4以上であり、この数はそれらを主プレートの周囲に対称に配置することによって共振器全体を左右対称にすることを容易にする。
上述したように、一実施形態によれば、少なくとも一つの突出部は一般にWE及びLEモードと異なるTCF特性を有する一つの屈曲ビーム又は屈曲モードに励起し得る複数のビームを備える。
一実施形態では、ビームはベース部の主軸に対するベース部の結晶配向と異なるビームの長手方向軸に対する結晶配向を有する。ベース部の主軸に対する各ビームの角度は20−70℃、好ましくは[110]結晶方向に対応する45℃である。
代替実施形態では、突出部はベース部からベース部の主軸の一つの方向に突出する複数の屈曲ビームを備える。この場合にはビームの結晶方向は主要部と同じであるが、屈曲モードと選択した幾何学的構成とによって主要部と異なるTCF特性を有する突出部がもたらされる。
一実施形態では、共振器素子のベース部は、その外周に節点をもたらす約1:1.5、1:2.7,1:4.3,1:5.5,1:7.0,1:8.7のアスペクト比又は任意の他のアクセス比を有し、一つの主軸が半導体材料の[100]結晶方向に(±5℃の精度で)向けられた長方形プレートである。突出部は本質的に、共振器の温度挙動に対する突出部の所望の効果に応じて、半導体材料の[110]又は[100]結晶方向に(同様に±5℃の精度で)向けられている。
アンカー素子は好ましくは、共振器素子と、一般的には駆動手段の少なくとも一部分も周囲の構造に懸架する細長いブリッジを備える。アンカー素子の数は少なくとも2つであり、それらを支持構造と共振器の主要部で生じる第1のBAW共振の2以上の節点との間に掛け渡すのが好ましい。
ラーメモードで共振する正方形の主プレートを使用することもできる。この場合にも、屈曲突出部が共振器の総合TCF特性を修正する。プレートの隅部の節点はラーメモードに固有であって、突出部があっても維持することができ、よってプレートの四隅にアンカーを配置することができる。
好ましい実施形態では、共振器素子はモノリシックシリコン結晶を備える。シリコン母材は好ましくは、n型ドーピング剤が少なくとも2.3*1019cm−3、特に2.3...20*1019cm−3の平均濃度にドープされる。好ましいWE−屈曲及びLE/ラーメ−屈曲複合共振器に関しては、最も良いドーピング範囲は7〜20*1019cm−3であり、完全な一次温度補償のみならず、完全な二次温度補償も同時に可能にする。上記のドーピング範囲は、実際の設計では、例えば圧電アクチュエータのようなアクチュエータは一般的に総合TCF1及びTCF2を減少するので、TCF及びTCFが十分な余裕をもってゼロより上になるようにシリコン結晶は(例えばアクチュエータを無視した理論的推定値と比較して)「オーバドープ」されなければならいことを考慮している。
ドーピング濃度は共振器素子の全体に亘って本質的に均一にし得るが、シリコンウェハの特に深さ方向の均質性は絶対に必要というわけではない。しかしながら、平均ドーピング濃度は上述の範囲内に維持するのが好ましい。
本発明による主要部及び突出部は音響的に結合され、よってこれらの構成要素の両方により影響された複合共振モードが共振器に形成される。しかしながら、複合モードは、異なる共振モードがそれぞれの構成要素で優勢であり、それらの機械的運動及びTCF特性をほぼ決定するものである。複合モードのこれらのサブモードは、他の部分から音響的に絶縁された対応する形状部に励起される理想(純粋)モードに類似する。実際には、特に異なる部分の交差部における理想的挙動からの偏差が存在し得る。「ベース部における(突出部における)第1の(第2の)共振モードを本質的に備える複合共振モード」という用語はこのような非理想的共振をカバーする。当業者であれば、異なるモード、例えばBAWモード(特にWE,LE及びラーメモード)と屈曲モードを、それらが純粋な形で存在しなくても区別することができる。
用語「TCF特性」は、共振器の周波数対温度曲線の形状、特に共振器の共振周波数の温度に対する一次及び二次変化の組み合わせを意味する。本共振器のTCF特性はベース部と突出部によって与えられ、つまりそのTCF特性は他の部分から絶縁されたこれらの部分のいずれのTCF特性とも異なるものになる。実際上、TCF特性という語は、複合共振器の一部分のみに言及するとき、その部分がその部分を他の部分に接続する仮想線に強固に固定された類似の部分のTCF特性を意味する。
「異なるTCF特性」(共振器の2つの音響的に結合された部分の間)と言う語は一次、二次挙動又はその両方が(両部分の間で)異なることを意味する。TCF及びTCFの定義は、共振器の温度依存周波数fを表すべき級数から数学的に公式化して得ることができる。
f(T)=f0[1+TCF1×ΔT+TCF2×ΔT2]
ここで、ΔT=T−T0は温度差であり、f0は基準温度T0における周波数である(更なる詳細は、例えば、A. K. Samarao at al, "Passive TCF compensation in high q silicon micromechanical resonators, " in IEEE International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (MEMS 2010), Hong Kong, Jan. 2010, pp. 116-119,を参照されたい)。特に断りがなければ、ここではT0=25℃を使用する。
特に、本発明は、別々に研究されたベース部及び突出部のTCFは少なくとも一つの温度範囲において反対符号であること、それによって複合一次TCF成分を(その温度範囲で)最小にすること、共振器のターンオーバ温度点を調整すること、及び総合二次TCF成分を最小にすることもでき、即ち共振器に広い安定動作温度範囲を、必要に応じ共振器の節点懸架の可能性を維持したまま与えることができるという状況を保護するものである。
「ベース部」は、一般的には長方形、正方形又はディスク状(円形又は楕円形)プレートである。「突出部」は、ベースから特に横方向面内に突出し、それとともに共振する特徴部を意味する。通常、突出部はベース部より小さい側面積を有し、一般的には最大でその30%である。本発明の一実施形態によれば、主要部はBAW共振するが、突出部は屈曲共振に励起し得る特徴部であってBAW−屈曲複合共振モードを形成する。
本明細書において「横方向」は共振器の平面内の方向、即ち一般的には共振器装置が製造されたウェハと同一平面内の方向を意味する。
要素の「主軸」は要素の長手方向軸及び/又は対称軸を意味する。例えば、長方形又は正方形の主軸は長方形又は正方形の辺の方向に向き、その対称軸と一致する。ビームの主軸はビームの長手方向に沿う。
共振モードの「節点」は、当技術分野で準節点として知られている点も包含する。
次に、本発明の選ばれた実施形態及びそれらの利点が添付図面を参照してより詳しく説明される。
WEモードの長方形プレート共振器を示す。 本発明の一実施形態による複合共振器を示す。 本発明の一実施形態による複合共振器を示す。 本発明の一実施形態による複合共振器を示す。 本発明の一実施形態による複合共振器を示す。 本発明の一実施形態による複合共振器を示す。 本発明の一実施形態による複合共振器を示す。 本発明の一実施形態による複合共振器を示す。 本発明の一実施形態による複合共振器を示す。 図2Aは、異なるnドーピング濃度における、最適化された横方向アスペクト比(W/L)を有するSE/WEモード共振器の総合周波数ドリフト対温度のグラフを示す。図2Bは、その一次TCFが最適設計によりゼロにされたWE共振器の二次TCF対ドーピング濃度のグラフを示す。 図3Aは、SE/WEモードの一次TCFを長方形プレート共振器の辺長(アスペクト比)の関数として示すグラフである。図3Bは、ビーム共振器の屈曲モードの一次TCFを[100]結晶方向に対するビーム角度の関数として示すグラフである。 LE−ラーメ分枝共振器の周波数対アスペクト比のグラフである。 2つの異なるドーピングレベルにおけるLE−ラーメ共振器のTCF対アスペクト比のグラフである。 シミュレーションモデルを用いた本発明の一実施形態による共振器の四分割の一つを示す。 複数のシミュレーションした幾何学的構成に関する、図1Bの複合WE−屈曲モード共振器の、純粋WE共振器に対する節点の変位及びTCFの変化を示す。 複数のシミュレーションした幾何学的構成に関する、図1Bの複合WE−屈曲モード共振器の、純粋WE共振器に対する節点の変位及びTCFの変化を示す。 複数のシミュレーションした幾何学的構成に関する、図1Bの複合WE−屈曲モード共振器の、純粋WE共振器に対する節点の変位及びTCFの変化を示す。 複数のシミュレーションした幾何学的構成に関する、図1Bの複合WE−屈曲モード共振器の、純粋WE共振器に対する節点の変位及びTCFの変化を示す。 複数のシミュレーションした幾何学的構成に関する、図1Bの複合WE−屈曲モード共振器の、純粋WE共振器に対する節点の変位及びTCFの変化を示す。 最適節点懸架と効率的な温度補償が同時に可能であることを示すために、複数のWE−屈曲モード複合共振器の幾何学的構成に対するシミュレーション結果を示す。 最適節点懸架と効率的な温度補償が同時に可能であることを示すために、複数のWE−屈曲モード複合共振器の幾何学的構成に対するシミュレーション結果を示す。 最適節点懸架と効率的な温度補償が同時に可能であることを示すために、複数のWE−屈曲モード複合共振器の幾何学的構成に対するシミュレーション結果を示す。 最適節点懸架と効率的な温度補償が同時に可能であることを示すために、複数のWE−屈曲モード複合共振器の幾何学的構成に対するシミュレーション結果を示す。 最適節点懸架と効率的な温度補償が同時に可能であることを示すために、複数のWE−屈曲モード複合共振器の幾何学的構成に対するシミュレーション結果を示す。 最適節点懸架と効率的な温度補償が同時に可能であることを示すために、複数のWE−屈曲モード複合共振器の幾何学的構成に対するシミュレーション結果を示す。 最適節点懸架と効率的な温度補償が同時に可能であることを示すために、複数のLE−屈曲モード複合共振器の幾何学的構成に対するシミュレーション結果を示す。 シリコンの弾性パラメータCijの温度係数をドーピング濃度nの関数として示すグラフである。 図8Cの結果の計算に使用されるb11-12(n)に対する外挿部分(破線)を示す。 WEモード共振器のTCF=0及びTCF=0曲線を共振器のベース部のドーピング濃度及び面内アスペクト比の関数として示す。
幅伸縮ベース部、長さ伸縮ベース部又はラーメモードベース部と、該ベース部から横方向に突出する複数の屈曲ビームとを組み合わせた複合共振器が好ましい実施形態として以下に詳細に説明される。いくつかの変形例も例証として説明される。本発明による設計は多数あり、図示の実施形態から逸脱してもよい。
複合WE−屈曲モード共振器
一つの主実施形態として、本発明は幅伸縮(WE)/長さ伸縮(LE)モード分枝で動作する共振器プレートに適用することができる。
図1Aは幅W及び長さLを有する長方形プレート共振器素子20を示す。長さ方向は結晶軸の[100]結晶方向に沿って向けられている。このような共振器のための、共振器素子の低損失懸架のために、最適アスペクト比(W:Lとして表される)は1:1.5、1:2.7,1:4.3,1:5.5,1:7.0,1:8.7,...(5%の精度で)である。これらのアスペクト比において、純粋WEモードが素子20に励起される場合には、2つの節点N1及びN2が素子20の外周、より詳しくは対向長手方向端、に位置する。これらの点N1及びN2は共振器の理想的な(不動の)固定点として作用し、共振器の高いQをもたらす。他方、上述したように、WE共振器に対して、二次補償、即ちTCF=TCF=0を生じる単一のドーピングレベル及び単一のアスペクト比が存在する可能性ある。しかしながら、このアスペクト比は一般的に懸架のために最適なアスペクト比と相違し、即ち節点を共振器の外周に生じない。この点に関する更なる考察は本明細書において後で与えられる。
一実施形態によれば、節点懸架と一緒にTCF=TCF=0を有するWE共振器を作製するために、共振器素子20の長方形主要部に屈曲突出部が設けられる。屈曲突出部は主要部と同じモノリシック構造の一部分であり、WEモードの長方形主要部20と異なるTCF特性を有する屈曲モードで共振し得る。いくつかのこのような設計が図1B−1Eに示され、以下に詳しく説明される。主要部及び突出部は図では明瞭のために線で分離されているが、実際には一般にモノリシック一体構造を構成する。
図1Bに示す実施形態によれば、長方形主要部21の外周から[110]方向に横方向面内で向けられた互いに離れる(外向き配置)4つの対称屈曲ビーム22A−Dが設けられている。ビームの各々は長さl、幅wを有し、主要部の長辺においてその隅から距離dに設置される。所定のドーピング濃度及びパラメータ値L,W,l,w及びdにおいて、ビーム22A−Dは、主要部21と反対符号のTCFを有する屈曲モードで共振し、複合共振器の総合TCFをほぼゼロにする。懸架部(図示せず)は好ましくは図1Aに示すような主要部21の長さ方向端に配置される。
図1Cは代替構成例を示し、本例では共振器は、主要部23及び主要部23の外周から本質的に(110)方向に向けられるがペアごとに互いに向かい合う(内向き配置)4つの対称に配置された屈曲ビーム24A−Dを備える。懸架部(図示せず)は好ましくは主要部23の長手方向端に配置される。この内向き配置の屈曲ビーム24A−Dの効果は本質的に外向き配置と同じであるが、はウェハ上で共振器に必要とされる空間が小さくなる。
ビーム22A−D又は24A−Dは[110]方向に正確に向ける必要はなく、例えばプレートの長手方向軸に対して20〜70°、特に30~60°、好ましくは40〜50°の方向に向けてもよい。
ビームの数は4以外の数にしてもよいことにも留意すべきである。しかしながら、ベース部のWEモードをできるだけ純粋に維持するためにベース部の2つの主軸に対して対称の形態を保つのが好ましい。特に、3つ以上、例えば4つの小さいビームをベース部の各長辺に設けてもよい。
更に、ビームは図に示すような台形にする必要はなく、それらの一次TCFが反対符号を有する限り、他の形状にしてもよいことにも留意されたい。図1F及び1Gはこのような2つの変形例を示し、前者は長方形ベースプレート29から突出する先細ビーム30を備え、後者は長方形ベースプレート30から突出する拡開ビーム32を備える。
最後に、全結晶面は本明細書の詳細例で使用される100結晶面と異なる結晶面にしてもよいことに留意されたい。例えば、場合によっては、設計の要求を満たすために構造全体をその垂直軸を中心に回転させるのが望ましいこともある。なぜなら、この回転は共振器のTCF特性に影響を与えるからである。加えて、本明細書で述べるものと同様のモードは110ウェハにも存在し得る。従って、ベースプレートの主軸の向きは[100]方向から0,..45°偏倚させてもよい。
図1Dは本発明の代替実施形態を示す。この共振器はベース部25を備え、このベース部も先と同様にドープ長方形プレートであり、その長手方向端で理想的な懸架を可能とするアスペクト比を有する。突出部として、[100]方向に向けられた主軸を有する4つの屈曲ビーム26A−Dが設けられている。この実施形態では、ベース部25及び屈曲ビーム26A−Dの幾何学的構成及びドーピングレベルは、WEモードのベース部が不十分補償(TCF<0)され、屈曲ビームが過補償(TCF>0)されるように選択される。この場合にも、複合共振器は特定の温度においてゼロ又はほぼゼロの総合TCF及び該温度の近くで小さいTCFを示し得る。
図1Eは本発明のさらなる実施形態を示す。その構成は原理的に図1Dの構成に類似するが、屈曲突出部28A−Dは(図1Dに示すような端辺の代わりにベース部27の長辺から突出する。突出部28A−Dは[100]方向からある角度で偏倚する短い中間部分と[100]方向の長いビームを備える。TCFに関して、これらの突出部の主な貢献はビームの[100]方向部分からもたらされ、よって実効補償は図1Dの実施形態に対して述べたものと同等である。
図1B及び1Cの実施形態について上述したように、図1D及び1Eにおいても、ビームの角度、数、幾何学的構成及び結晶面に関して柔軟性が存在する。例えば、ビーム26A−D及び28A−Dは、それらの一次TCFがベース部25,27のTCFとそれぞれ反対のままである限り、[100]方向に対して±15°、特に±5°の角度に配置してもよい。
本発明による共振器に対する模範的に適切なドーピングレベルは、2*1019cm−3より高いドーピング濃度、例えば2.3,..20*1019cm−3を備える。このような濃度の場合、WEモードにおける懸架のために最適なアスペクト比(例えば1:1.5)を有する長方形プレート共振器は正のTCF(過補償)を有する。適切なサイズパラメータを有する図1B又は1Cによるビームは同じ周波数において屈曲モードで負のTCF(不十分補償)を有し、それゆえ複合共振器の総合TCFに所望の貢献をもたらし、TCFを減少もしくはゼロにする。パラメータを適切に選択することによって、TCFをゼロにするのみならず、TCFもゼロに近づけることができ、共振器に広い安定動作温度範囲を与えることができる。
図2Aは、3つの異なるnドーピング濃度における、最適化SE/WEモード共振器に対する総合周波数ドリフトΔf対温度Tを示す。図から明らかなように、TCF曲線の開始曲率(即ちTCF)はドーピングレベルの増加とともに減少する。より詳細には、TCFの漸進的変化は図2Bに示される。この最適ケースにおいて線形近似を使用すると、TCFは約12*1019cm−3でゼロになることが推定され得る。ドーピング濃度が増加するとTCFはゆっくり飽和するという実際的な要因を考慮すると、TCFは12*1019cm−3と20*1019cm−3の間のどこかでゼロになる。二次TCFはドーピング濃度が11*1019cm−3より大きくなると単調に増大し、同時に一次TCFが小さくなると仮定すると、TCFとTCFの両方がゼロになる一つのドーピングレベル及び単一点(=確定アスペクト比)がWE−SE連続分枝に存在する。
本発明は、ベースプレート及び突出部の多数の異なる共振周波数、ドーピング濃度、幾何学的構成(横方向形状及び厚さ等)の一部が図面に示され、明細書に記載されるのみであるが、その全部を包含するものと理解すべきである。それらに共通していることは、本共振器は共振器の総合TCFを低減するように協働する異なるTCF特性を有する少なくとも2つの異なる部分を備えることにある。すべての可能な組み合わせを微に入り細に亘り包含することは不可能であるが、いくつかの更なる設計原理、ガイドライン及び模範的なパラメータ値が以下で与えられる。
図3Aは、WE共振器のTCFをその面内アスペクト比の関数として示す。異なる曲線は異なるn型ドーピングレベルに対応する。2.3...11*1019cm−3の範囲のn型ドーピングレベルにおいて、線形TCFはアスペクト比を正しく設定することによってゼロにし得る。最適アスペクト比(L:W)は10:1(細長ビーム)から1:1(正方形プレート)の間である。他方、屈曲ビーム共振器のTCFは図3Bに示すようにシリコン結晶格子に対するその向きに依存する。0°の回転は[100]方向に対応し、45°の回転は[110]方向に対応する。ビーム状の突出部がWE共振器に(対称に)に付加されると、複合共振器のTCFは変化することが期待される。複合共振器のTCFは構成要素のTCFのある種の平均になるはずである。特に、先に例示したように、伸縮が[110]方向と一致する場合にはTCFは減少し、突出部が[100]方向と一致する場合にはTCFは増加するはずである。このように、節点懸架を維持しながらTCFの所望の変化を生成することができるということが極めて重要なことである。
一つの設計ガイドラインとして、屈曲ビームとWEモードの共振周波数の衝突を避けること、即ちベース部と突出部は異なる周波数で共振するようにその構造を設計することが好ましい。これは、所望のTCF変化を利用する多数の方法が存在し得るので、一般に可能である。
複合LE−屈曲モード共振器
上述した複合WE−屈曲モード分枝共振器の代替例として、本発明は長さ伸縮(LE)/ラーメモード分枝で動作する共振器プレートに適用することができる。
WE/LE共振分枝の場合と同様に、ラーメ/長さ伸縮共振器のTCFは共振器の面内アスペクト比の関数として変化する。図4A及び図4Bはこの効果を示す。図4Aの線形TCFが十分低くなると、TCF=TCF=0となる点をラーメ/LEモード分枝上で見つけることができる。
しかしながら、ラーメ/LE分枝とWE/SE分枝との間にギャップ(線形TCF空間内において)が存在する。従って、LE共振器の線形TCFを僅かに低減するのが望ましい。これは、本発明の精神に従って、即ち屈曲突出部を本来[100]方向のLE共振器に「110」方向に付加することによって達成することができる。この場合の幾何学的構成は図1B又は1Cに示す形態に原理的に類似する(しかし異なるパラメータ値を有する)。
図1H及び1Iは、正方形ベースプレート33,35と、それらからそれぞれ45度の角度で突出する複数のビーム34,36を備えるラーメモード共振器の追加の例を示す。傾斜配向で示されているが、[100]結晶方向は好ましくはベースプレートの辺に沿っている。図IHの形態では、ビーム34はベースプレート33の各隅部の両側に2つ一組で同じ方向に配置されている。図1Iの形態では、ビーム36はベースプレート35の各隅部の両側に2つ一組で反対方向に配置されている。両形態において、ビームの形状及びベースプレートの辺上のそれらの位置を適切に選択することによって、懸架用の節点をベースプレートの隅部に維持することができる。前述の例と同様に、ビームの角度及び形状も図示のものから相違させてもよい。
本発明のマイクロ電気機械共振器(WE−屈曲、LE−屈曲、ラーメ−屈曲又は任意の他のタイプ)のアクチュエータは、例えば圧電アクチュエータ又は静電アクチュエータとすることができ、またそれ自体周知のBAW共振モードを励起するのに適した任意の他のアクチュエータとしてもよい。一実施形態によれば、アクチュエータはベース部の上に配置された圧電アクチュエータとする。圧電アクチュエータは、例えば窒化アルミニウム(AlN)層及びモリブデン電極を備えてもよい。複合共振モードは単一のアクチュエータで励起することができ、即ちベース部及び突出部のために別々のアクチュエータを必要としない。圧電アクチュエータも静電アクチュエータもそれ自体は周知であり、当業者によって本発明の共振器設計に適用し得るので、その詳細な記載は省略する。屈曲突出部はこれらの一般に知られているアクチュエーション方法とコンパチブルであることはシミュレーションされている。
数値検証
本発明の原理は広範なシミュレーションによって数値的に検証した。検証方法は以下の通りである。
WEモード及び110方向屈曲突出部
[110]方向の突出部を有するWE共振器のパラメトリックモデルを構成した。このモデルを図5に示す。図1Bによる共振器の北東コーナがこのモデルに含められ、x/y軸において対称境界条件が適用されている。
WE共振器の寸法は一定に維持し(長方形WE共振器に対して210×315μm)、突出部寸法は変化させた。
・ビーム幅dWは10から50マイクロメートルまで10μmステップで変化させた。
・ビーム位置dxをWE共振器の上縁上をコーナから5μmステップで変化させた。
・ビーム長さdLを5μmから80μmまで5μmステップで変化させた。
モード解析をパラメータのすべての組み合わせについて行った。WEモードの周波数は図6Aのプロットマトリクスに示されている。サブプロットはパラメータdW及びdLのすべての変化を含む。図6A−6Gのすべてにおいて、dWの値は最上行のdW=30から最下行のdW=−10まで5のステップで変化し、dLの値は最左列のdL=0から最右列dL=80まで20のステップで変化する。軸はすべてのプロットに対して同一であり、それらは南西サブプロットにのみ示されている。水平軸はパラメータdxを示し、モード周波数が垂直軸に示されている。
非摂動WEモードのTCFはTCFWE=+4.3ppm/Cである(5*1019cm−3のドーピングに対して計算されている)。図6Bのプロットの陰影はTCFWEからのTCFの変化を示し、即ちビーム突出部が複合共振器のTCFをどのように変化するかを示す。
TCF変化の全範囲を示すために、図6Bのプロットが図6Cにおいて反復され、ここでは(−4から0までの代わりに)−10から0までの範囲の陰影コードを有している。
次に、「節点FOM」、即ちどのぐらい良い節点が位置Bに形成されるかを定量化する性能指数を定義する(図5参照)。
節点FOM=dx(B)/dy(A)
これは点Bにおけるx方向変位を点Aにおけるy方向変位で正規化したものである。完全な節点に対して節点FOMはゼロになるはずである。
図6Dは節点FOMがdx,dW及びdLの異なる組み合わせに対してどのように変化するかを陰影コードで示す。
図6A−6Dのプロットから、ほぼゼロ値の節点FOMを同時に達成しながら、範囲−4...0内で所望のTCF変化を見つけることができるdx,dW及びdLの多くの組み合わせが存在すること明らかである。これは以下の3つのプロットで実証され、小さい節点FOMは白の四角で示され、所望のTCF変化はドットで示される(第1のプロット:所望のTCF変化は約−3ppm/C、第2のプロット:約−2ppm/C、第3のプロット:約−1ppm/C)。最適設計は(dL、dW、dxパラメータ空間内で)点で見つかり、ドットが四角で囲まれる。dL、dW、dxパラメータ空間のより緻密な離散化によって新たな最適設計を見つけることができる(例えば、上述のシミュレーションにおいてはdLの離散化はかなり粗かった(20μm))。
一例として、図6Fに1−4として分類された幾何学的構成及びモードシェープが図6H−6Kにそれぞれ示されている。
LEモード及び110方向屈曲突出部
修正されたLE共振器幾何学的構成に対して同様のパラメータ解析を実行した。図7Aは0...−5の範囲内でTCF変化(dTCF)が現れる得ることを示す。
ゼロTCFを有する長方形WEモード共振器の形状に関する追加の考察
同時の一次及び二次TCFのゼロ化及び節点懸架は本発明による突出部のないWEモード設計(図1A)では不可能であることを示すために、図8A−8C及び以下の考察を提示する。
図8Aは弾性パラメータcijの温度係数をキャリア濃度nの関数として示す。第1、第2及び第3列は、T=25℃における定数項c0 ij、一次係数aij及び二次係数bijをそれぞれ示す。c0 11-12、11-12及びb11-12はc11-12の係数の省略表現である。依存係数a12は、a12=(a110 11−a11-120 11-12)/c0 12として容易に評価され、b12に対しても同様の等式が成立する。7.5*1019cm−3より低いキャリア濃度におけるデータ点は文献(Jaakkola et al, "Determination of doping and temperature dependent elastic constants of degenerately doped silicon from MEMS resonators, " IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control . IEEE. Vol. 61 (2014) No: 7, 1063 - 1074)からのデータを表す。10*1019cm−3及び11*1019cm−3のキャリア濃度における一次及び二次係数a11-12及びb11-12に関するデータ点も丸で示されている。これらのデータ点は図8Bに示す本出願人の最近の測定結果に基づいており、重要なことに、5*1019cm−3より低いドーパント濃度から出発する正勾配に続くb11-12の特性値を示す。図8Cの結果を生じる計算には、図8Aの破線曲線で表される補間値及び外挿値が使用されている。
キャリア濃度0<n<7.5*1019cm−3におけるフィッティングは、プロットで示される全9項に関するキャリア濃度0<n<7.5*1019cm−3におけるデータ点への三次多項式フィッティングに基づいている。n>=7.5*1019cm−3のキャリア濃度におけるa11-12及びb11-12のフィッティングはこの範囲で利用可能な3つのデータ点への線形フィッティングに基づいている。a11-12及びb11-12以外の他の項に関しては、それらの値はn=7.5*1019cmにおける実験データと同じレベルのままであるとみなす。従って、これらの場合には、破線はn>7.5*1019cmに対して水平になる。この選択の理由は、7.5*1019cmより上のキャリア濃度では項a11-12及びb11-12以外に実験データが存在しないためである。結果として、図8Cの結果は定性的に完全に正確に予測されないが、それらはTCF1及びTCFを同時にゼロにし得る最適構成の存在を証明している。また、本明細書で議論されている共振モードの温度係数に寄与する主な項はa11-12及びb11-12であるので、図8Cの予測はかなり有効であるとみなして正当である。
図8Bは、モード周波数が弾性パラメータ差分項c11-12にのみ依存するように[100]結晶方向と整列したラーメモード共振器に対して測定された実験データを示す。ドーピング濃度n<7.5*1019cmに対するデータ点は、文献(Jaakkola et al, "Determination of doping and temperature dependent elastic constants of degenerately doped silicon from MEMS resonators, " IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control . IEEE. Vol. 61 (2014) No: 7, 1063 - 1074)からのものであるが、最高ドーピング濃度に対する2つのデータ点はこれまで公表されていない。この実験データに基づいて、[100]整列ラーメモード共振器の二次TCFは高いドーパントレベルにおいてさらに大きな正値に達することが予測され得る。これは図8Aにおいて確かに推測され、b11-12項の挙動が推定される
図8Cにおいて、TCF=0曲線とTCF=0曲線は約n=13*1019cm−3の濃度及び1.3のアスペクトL/Wで交差する。この最適点において、総合周波数偏差Δftotalはゼロに成る。しかしながら、このような共振器はプレートの外周に節点が存在しないので、低損失の懸架が不可能である。節点懸架に関しては、好ましいアスペクト比は1:1.5,1:2.7,1:4.3,1:5.5,1:7.0,1:8.7(5%の精度で)であるが、これらのアスペクト比はTCFを零にしえない。これは、追加の突出部をプレートの外周に設ける本発明の設計が極めて有益であることを証明している。

Claims (16)

  1. 支持構造と、
    ドープシリコン半導体共振器と、
    前記共振器を前記支持構造に懸架する少なくとも一つのアンカーと、前記共振器に共振を励起するアクチュエータと、
    を備えるマイクロ電気機械共振器において、
    前記共振器は、ベース部と、前記ベース部から外側に突出する少なくとも一つの突出部から形成されたモノリシック構造を備え、前記モノリシック構造は、n型ドーピング剤により少なくとも2.3*1019cm−3の平均ドーピング濃度にドープされ、前記ベース部は、長方形、正方形、又はディスク状プレートを備え、
    前記共振器は、前記アクチュエータによって、前記ベース部におけるバルク音響波(BAW)共振モードと前記少なくとも一つの突出部における屈曲共振モードとを備える複合共振モードに、励起され、
    前記複合共振モードは、周波数温度係数(TCF)特性を有し、そのTCF特性は前記ベース部と前記少なくとも一つの突出部との両方により与えられ、前記少なくとも一つの突出部のTCF特性は、−40℃から85℃の範囲内で、前記ベース部のTCF特性に対して反対符号を有する、ことを特徴とする共振器装置。
  2. 前記複合共振モードは、本質的に、前記ベース部における第1の共振モードと、前記少なくとも一つの突出部における前記第1の共振モードと異なる第2の共振モードを備え、
    前記第1の共振モードは第1のTCF特性を有し、前記第2の共振モードは前記第1のTCFと異なる第2のTCF特性を有する、ことを特徴とする請求項1記載の共振器装置。
  3. 前記ベース部は1より大きいアスペクト比を有する長方形プレートを備える、ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の共振器装置。
  4. 前記突出部の数は4又はそれ以上である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共振器装置。
  5. 前記少なくとも一つの突出部は、前記ベース部の主軸と一致しない長手方向軸を有する屈曲ビーム、好ましくは複数の屈曲ビーム、を備える、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の共振器装置。
  6. 前記突出部は、前記ベース部から異なる横方向に突出する複数の屈曲ビームを備え、前記ベース部の主軸に対する各ビームの角度は、20−70°である、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の共振器装置。
  7. 前記突出部は、それぞれが前記ベース部から前記ベース部の主軸の一つの横方向に突出する複数の屈曲ビームを備える、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の共振器装置。
  8. 前記複数の突出部は前記ベース部の周囲に対称に配置されている、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の共振器装置。
  9. 前記支持構造と前記複合共振モードにおける前記ベース部の2以上の節点との間に延在する2以上の前記アンカーを備える、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の共振器装置。
  10. 前記共振器の前記ベース部は、1より大きいアスペクト比、特に約1:1.5、1:2.7、1:4.3、1:5.5、1:7.0、1:8.7(5%の精度)を有し且つ一つの主軸が半導体材料の[100]結晶方向に+/−5°の範囲内で向けられた、長方形プレートであり、
    前記突出部は、前記ベース部の外周に対称に配置され且つ半導体材料の「110」結晶方向に本質的に+/−5°の範囲内で向けられた4つ以上の屈曲ビームを備える、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の共振器装置。
  11. 前記共振器の前記ベース部は、1より大きいアスペクト比を有し且つ一つの主軸が半導体材料の[100]結晶方向に+/−5°の範囲内で向けられた、長方形プレートであり、
    前記突出部は、前記ベース部の外周に対称に配置され且つ半導体材料の「100」結晶方向に本質的に+/−5°の範囲内で向けられた4つ以上の屈曲ビームを備える、ことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の共振器装置。
  12. 前記複合共振モードは、本質的に、前記ベース部における幅伸縮(WE)バルク音響波(BAW)モードと前記少なくとも一つの突出部における屈曲モードを備える、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の共振器装置。
  13. 前記複合共振モードは、本質的に、前記ベース部における長さ伸縮(LE)バルク音響波(BAW)モードと前記少なくとも一つの突出部における屈曲モードを備える、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の共振器装置。
  14. 前記複合共振モードは、本質的に、前記ベース部におけるラーメバルク音響波(BAW)モードと前記少なくとも一つの突出部における屈曲モードを備える、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の共振器装置。
  15. 前記複合共振モードにおいて、前記少なくとも一つの突出部は前記ベース部と異なる周波数で共振するように構成される、ことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の共振器装置。
  16. 前記共振器はn型ドーピング剤が少なくとも2.3*1019cm−3、例えば7〜20*1019cm−3の平均ドーピング濃度にドープされたモノリシックシリコン母材を備え、前記ドーピング濃度は好ましくは前記共振器全体に本質的に均一である、ことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の共振器装置。
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