JP6614972B2 - 修飾ヘリカーゼ - Google Patents

修飾ヘリカーゼ

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Description

本発明は、ポリヌクレオチドからの解離が低減している修飾ヘリカーゼに関する。ヘリカーゼはポリヌクレオチドの移動を制御するために使用でき、ポリヌクレオチドを配列決定するために特に有用である。
迅速で安価なポリヌクレオチド(例えばDNAまたはRNA)配列決定および同定技術が、幅広い応用にわたって現在必要である。既存の技術は、主にそれらが、大量のポリヌクレオチドを生成するための増幅技術に依存し、シグナル検出のために多量の専門的な蛍光化学物質を必要とするために、遅く高価である。
膜貫通ポア(ナノポア)は、ポリマーおよび種々の小分子のための直接的、電気的バイオセンサーとして大きな将来性を有する。特に、将来性のあるDNA配列決定技術としてナノポアが近年注目されている。
電位がナノポア全体に印加される場合、ヌクレオチドなどの分析物が一定時間バレルに一過的に存在する場合に電流が変化する。ヌクレオチドのナノポア検出は、既知のサインおよび持続時間での電流変化をもたらす。「鎖配列決定」法では、1本のポリヌクレオチド鎖がポアを通り、ヌクレオチドのアイデンティティが得られる。鎖配列決定は、ポアを通るポリヌクレオチドの移動を制御するためのヘリカーゼなどのヌクレオチドハンドリングタンパク質の使用を含み得る。
ヘリカーゼは、ポリヌクレオチドに結合し、移動を制御できる酵素である。Hel308ヘリカーゼを含むいくつかのヘリカーゼは、少なくとも1つのコンホメーション状態で、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼに結合または解離できる開口部を有するポリヌクレオチド結合ドメインを有する。それにより、ヘリカーゼがポリヌクレオチドの末端に位置していない場合でも、ヘリカーゼがポリヌクレオチドから離れることが可能になる。
本発明者らは、ポリヌクレオチドの移動を制御するヘリカーゼの能力が、それを通ってポリヌクレオチドが解離する開口部のサイズを低減させることによって改善できることを驚くべきことに実証した。具体的にはポリヌクレオチドの移動を制御するヘリカーゼの能力は、開口部を閉じることによって改善できる。本発明によれば、ヘリカーゼの少なくとも2つの部分を繋ぐことにより、開口部のサイズは低減され、または開口部は閉鎖される。
開口部のサイズの低減または開口部の閉鎖がヘリカーゼのポリヌクレオチドへの結合を妨げないことから、この結果は驚くべきものである。本発明により修飾されたヘリカーゼがポリヌクレオチドに結合すると、解離することも離されることもなく全てではないが大部分のポリヌクレオチドの移動を制御できる。具体的には本発明者らは、本発明により修飾されたヘリカーゼが400ヌクレオチド以上を含むポリヌクレオチドなどの長いポリヌクレオチドに強く結合し、全てではないが大部分のポリヌクレオチドの移動を制御することを驚くべきことに実証した。これは、ポリヌクレオチドの移動の有効な制御を、特に鎖配列決定法の際に可能にする。
本発明者らは、ポリヌクレオチドの移動を制御するHel308ヘリカーゼの能力が特異的位置に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を導入することによって改善できることを驚くべきことに実証した。導入される残基が繋がれているかどうかに関わらず、修飾Hel308ヘリカーゼは、解離するまたは離されることなく全てではないが大部分のポリヌクレオチドの移動を制御できる。
したがって本発明は、1つまたは複数の単量体から形成され、少なくとも1つのコンホメーション状態において、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含むポリヌクレオチド結合ドメインを含むヘリカーゼであって、ヘリカーゼの同じ単量体内の2つ以上の部分が繋がれて開口部のサイズを低減するように修飾されており、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を保持しているヘリカーゼを提供する。
本発明は、
− 1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸がHel308Mbu(配列番号10)中のD272、N273、D274、G281、E284、E285、E287、S288、T289、G290、E291、D293、T294、N300、R303、K304、N314、S315、N316、H317、R318、K319、L320、E322、R326、N328、S615、K717、Y720、N721およびS724に対応する位置の1つまたは複数に導入されているHel308ヘリカーゼであって、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を保持しているHel308ヘリカーゼ;
− 本発明のヘリカーゼおよび追加的ポリヌクレオチド結合成分を含む構築物であって、ヘリカーゼがポリヌクレオチド結合成分に付着しており、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を有する構築物;
− ポリヌクレオチドの移動を制御する方法であって、ポリヌクレオチドを本発明のヘリカーゼまたは本発明の構築物と接触させ、それによりポリヌクレオチドの移動を制御するステップを含む方法;
− 標的ポリヌクレオチドを特性決定する方法であって、(a)標的ポリヌクレオチドを膜貫通ポアおよび本発明のヘリカーゼまたは本発明の構築物と、ヘリカーゼまたは構築物がポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御するように接触させるステップ、ならびに(b)ポリヌクレオチドがポアに関して移動するときに1つまたは複数の測定値を取るステップであって、測定値が標的ポリヌクレオチドの特性の1つまたは複数を示し、それにより標的ポリヌクレオチドを特性決定するステップを含む方法;
− 標的ポリヌクレオチドを特性決定するためのセンサーを形成する方法であって、(a)ポアと、(b)本発明のヘリカーゼまたは本発明の構築物との間で複合体を形成し、それにより標的ポリヌクレオチドを特性決定するためのセンサーを形成するステップを含む方法;
− (a)ポアと、(b)本発明のヘリカーゼまたは本発明の構築物との間の複合体を含む、標的ポリヌクレオチドを特性決定するためのセンサー;
− ポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御するための本発明のヘリカーゼまたは本発明の構築物の使用;
− (a)ポア、および(b)本発明のヘリカーゼまたは本発明の構築物を含む、標的ポリヌクレオチドを特性決定するためのキット;
− (a)複数のポア、および(b)複数の本発明のヘリカーゼまたは複数の本発明の構築物を含む、試料中の標的ポリヌクレオチドを特性決定するための装置;
− 本発明のヘリカーゼを産生する方法であって、(a)1つまたは複数の単量体から形成され、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含むポリヌクレオチド結合ドメインを含むヘリカーゼを提供するステップ、および(b)ヘリカーゼの同じ単量体上の2つ以上の部分が繋がれて開口部のサイズを低減するようにヘリカーゼを修飾し、それにより本発明のヘリカーゼを産生するステップを含む方法;
− 本発明の修飾Hel308ヘリカーゼを産生する方法であって、(a)Hel308ヘリカーゼを提供するステップ、ならびに(b)1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸をHel308Mbu(配列番号10)中のD272、N273、D274、G281、E284、E285、E287、S288、T289、G290、E291、D293、T294、N300、R303、K304、N314、S315、N316、H317、R318、K319、L320、E322、R326、N328、S615、K717、Y720、N721およびS724に対応する位置の1つまたは複数に導入し、それにより本発明の修飾Hel308ヘリカーゼを産生するステップを含む方法;ならびに
− 本発明の構築物を産生する方法であって、本発明のヘリカーゼを追加的ポリヌクレオチド結合成分に付着させ、それにより本発明の構築物を産生するステップを含む方法
も提供する。
Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3反応混合物(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)のクーマシー染色7.5%Tris−HClゲル(Laemmliローディング緩衝液で添加された)を示す図である。レーンXは適切なタンパク質ラダー(質量単位マーカーはゲルの左に示されている)を示す。レーンa〜cは、2μL、5μLまたは10μLの約2.5μM Hel308Mbu(E284C/S615C)単量体(変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を含有する。レーンd〜fは2μL、5μLまたは10μLの約2.5μM Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10、すなわち開口部が閉じられているヘリカーゼ)を含有し、ビスマレイミドPEG3リンカーを付着させる反応がほとんど100%収率に進んだことはゲルから明らかであった。矢印1は、Hel308Mbu(E284C/S615C)単量体(変異E284C/S615Cを有する配列番号10)に対応し、矢印2はHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10、すなわち開口部が閉じられているヘリカーゼ)に対応する。 Hel308Mbu(E284C/S615C)−mal−pep−mal(ビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS(配列番号109)−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミド)によって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)反応混合物のクーマシー染色7.5% Tris−HClゲルを示す図である。レーンXは適切なタンパク質ラダー(質量単位マーカーはゲルの左に示されている)を示す。レーンAは5μLの約10μM Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を基準として含有する。上のバンド(2と標識)はHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3に対応し、下のバンド(1と標識)はHel308Mbu(E284C/S615C)(変異E284C/S615Cを有する配列番号10)に対応する。レーンBは5μLの約10μM Hel308Mbu(E284C/S615C)−mal−pep−mal(ビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミド)によって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を含有し、Hel308Mbu(E284C/S615C)−mal−pep−mal(ビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミド)によって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)(上のバンド)およびHel308Mbu(E284C/S615C)(変異E284C/S615Cを有する配列番号10)(下のバンド)に対するバンドが観察されることから、mal−pep−malリンカーに付着する反応が完了まで進まなかったことはゲルから明らかであった。レーンCはHel308Mbu(E284C/S615C)(変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を含有する。 開口部が閉鎖されている2つのHel308Mbuヘリカーゼ(Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG11(ビスマレイミドPEG11リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10))の酵素前進性(processivity)をHel308Mbu単量体(配列番号10)のものと比較するために使用した蛍光アッセイを示す図である。通例の蛍光基質がハイブリダイズされたdsDNAを置換するヘリカーゼの能力をアッセイするために用いられた。蛍光基質(最終50nM)は3’ssDNAオーバーハングならびにハイブリダイズされたdsDNA(セクションA、配列番号110、1と標識)の80および33塩基対セクションを有する。主要な下部「テンプレート」鎖は、5’および3’末端でそれぞれカルボキシフルオレセイン(FAM、4と標識)およびブラックホールクエンチャー(BHQ−1、5と標識)塩基(配列番号112)で標識されている3’オーバーハングおよび33nt蛍光プローブ(3と標識)に隣接して、80nt「ブロッカー」鎖(配列番号111、2と標識)にハイブリダイズされる。ハイブリダイズされると、FAMはBHQ−1から離れ、基質は基本的に蛍光を発する。セクションBに示すとおり、ATP(1mM)およびMgCl(10mM)の存在下でヘリカーゼ(6と標識、10nM)は、基質の3’オーバーハング(配列番号110)に結合し、下鎖に沿って移動し80ntブロッカー鎖(配列番号111)を置換し始める。前進性の場合、ヘリカーゼは、蛍光プローブも置換する(セクションC、配列番号112、カルボキシフルオレセイン(FAM)で5’末端で、ブラックホールクエンチャー(BHQ−1)で3’末端で標識されている)。蛍光プローブは、その5’および3’末端が自己相補的であり、それにより一度置換されると動力学的に安定なヘアピンを形成しプローブのテンプレート鎖(セクションD)への再アニールを防ぐように設計される。ヘアピン産物の形成により、FAMはBHQ−1の近傍に運ばれ、その蛍光は消光される。80塩基長「ブロッカー」(配列番号111)および蛍光(配列番号112、カルボキシフルオレセイン(FAM)でその5’末端、ブラックホールクエンチャー(BHQ−1)でその3’末端で標識されている)鎖を置換できる前進性酵素は、したがって、蛍光の経時的な減少をもたらす。しかし酵素が80nt未満の前進性を有する場合は、蛍光鎖(配列番号112、カルボキシフルオレセイン(FAM)でその5’末端で、ブラックホールクエンチャー(BHQ−1)でその3’末端で標識されている)を置換することができず、したがって「ブロッカー」鎖(配列番号111)は主要な下部鎖に再アニールする(セクションE)。 制御目的にも用いられた追加的な通例の蛍光基質を示す図である。陰性対照として使用された基質は、図3に記載のものと同一であったが、3’オーバーハングを欠失している(セクションA(配列番号111(図中2と標識)、112(図中3と標識の鎖、その5’末端をカルボキシフルオレセイン(FAM、図中4と標識)で、その3’末端をブラックホールクエンチャー(BHQ−1、図中5と標識)で標識されている)ならびに図中7と標識の113))。図3に記載のものに類似しているが80塩基対セクション(配列番号112(図中3と標識の鎖、その5’末端をカルボキシフルオレセイン(図中4と標識のFAM)で、およびその3’末端をブラックホールクエンチャー(BHQ−1、図中5と標識)で標識されている)ならびに図中8と標識の114)を欠失している基質が活性だが前進性である必要はないヘリカーゼの陽性対照として用いられた(セクションB)。 Hel308Mbu、Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG11(ビスマレイミドPEG11リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を、緩衝溶液(400mM NaCl、10mM Hepes pH8.0、1mM ATP、10mM MgCl、50nM蛍光基質DNA(配列番号110、111および112(その5’末端をカルボキシフルオレセイン(FAM)で、およびその3’末端をブラックホールクエンチャー(BHQ−1)で標識された)中の図3に示す前進性基質に対して検査した際の時間依存性蛍光変化のグラフ(y軸標識=正規化された蛍光(無作為値)、x軸標識=時間(分))である。黒菱形で印を付けたデータ点は緩衝液ブランクに対応し、白四角データ点はHel308Mbu単量体(配列番号10)に対応し、黒十字データ点はHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG11(ビスマレイミドPEG11リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)に対応し、および白丸データ点はHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)に対応する。Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG11(ビスマレイミドPEG11リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)によって示された蛍光の減少は、Hel308Mbu単量体(配列番号10)と比較したこれらの複合体の前進性の増大を記す。 Hel308Mbu(配列番号10)、Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG11(ビスマレイミドPEG11リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を、緩衝溶液(400mM NaCl、10mM Hepes pH8.0、1mM ATP、10mM MgCl、50nM蛍光基質DNA(配列番号112(その5’末端をカルボキシフルオレセイン(FAM)で、およびその3’末端をブラックホールクエンチャー(BHQ−1)で標識された)および114))中の陽性対照前進性基質(図4セクションBに示す、配列番号112(その5’末端をカルボキシフルオレセイン(FAM)で、およびその3’末端をブラックホールクエンチャー(BHQ−1)で標識された)および60)に対して検査した際の時間依存性蛍光変化のグラフ(y軸標識=正規化された蛍光(無作為値)、x軸標識=時間(分))である。黒菱形で印を付けたデータ点は緩衝液ブランクに対応し、白四角データ点はHel308Mbu単量体(配列番号10)に対応し、黒十字データ点はHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG11(ビスマレイミドPEG11リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)に対応し、および白丸データ点はHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)に対応する。この陽性対照は、全ての試料に対する蛍光減少によって示されたとおり、全ての複合体が実際に活性であることを実証した。 膜中のナノポアを通るポリヌクレオチドの酵素制御移行の模式図であって、酵素は印加された場の力とは反対にポリヌクレオチドの移動を制御する。模式図は、3’から5’酵素(Aと標識)の例を示し、ポア中の5’末端でのポリヌクレオチドの捕捉は、印加された場の力とは反対のポリヌクレオチドの酵素制御移動(実施例4において使用されるポリヌクレオチド配列は配列番号115(図7においてBと標識)、配列番号116(図7においてCと標識)および配列番号117(図7においてDと標識)である)を導く。DNA捕捉の際にハイブリダイズされた鎖は開かれる。矢印1はナノポアを通るDNA移動の方向を記し、白矢印2はDNAに沿った酵素移動の方向を記し、矢印3は印加された場の方向を記す。酵素がDNAから解離しない限り膜のcis側に最終的に放されるまで酵素は、ポアの外側にDNAを引く。 膜中のナノポアを通るポリヌクレオチドの酵素制御移行の模式図であって、酵素は印加された場の力と同じ方向にポリヌクレオチドの移動を制御する。模式図は、3’から5’酵素(Aと標識)の例を示し、ポア中の3’末端でのポリヌクレオチドの捕捉は、印加された場の力でのポリヌクレオチドの酵素制御移動を導く。矢印1はナノポアを通るDNA移動の方向を記し、白矢印2はDNAに沿った酵素移動の方向を記し、矢印3は印加された場の方向を記す。酵素がDNAから解離しない限り、膜のtrans側に最終的に放されるまで酵素はポアを通してDNAを供給する。 実施例4において使用されるDNA基質設計を示す図である。900塩基長センス鎖(配列番号115)はAと標識され、4塩基対少ないリーダー(配列番号116)であるアンチセンス鎖はBと標識され、プライマー(配列番号117)はCと標識される。プライマーはDと標識される3’コレステロールタグを有する。 Hel308Mbu単量体(200nM、配列番号10)を使用して、ヘリカーゼがMspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)を通るDNAの移行を制御する場合に観察された電流トレース例を示す図である(+140mV、400mM NaCl、100mM Hepes pH8.0、10mMフェロシアン化カリウム、10mMフェリシアン化カリウム、0.1nM 900塩基長DNA(配列番号115、116および117(配列の3’末端に2個のチミン残基に付着している6個のiSp18スペーサーおよび3’コレステロールTEGを有する))、1mM ATP、1mM MgCl)。最も上の電気トレース(y軸標識=電流(pA)、x軸標識=時間(分))は、DNAが印加された電位(+140mV)の力の下で捕捉された場合にオープンポア電流(約120pA)がDNAレベル(20〜50pA)へ低下することを示す。酵素が付着しているDNAは、酵素がDNAをポアを通して移動させるときに電流における段階的変化を示す長期遮断を生じる。上のトレースは、A〜Hと印を付けた一連の8個の別々のヘリカーゼ制御DNA移動を示す。トレースのこのセクションにおける全てのヘリカーゼ制御DNA移動は、酵素によって場とは反対に(DNAは5’を下に捕捉される)ナノポアを通って移動される(詳細は図7を参照されたい)。下は、DNAがナノポアを出たときの4個のヘリカーゼ制御DNA移動の最後のセクションの拡大である。このセクションにおける8個のヘリカーゼ制御DNA移動の内、1つ(H)だけが酵素がDNAの末端に達し、DNA基質の50T5’−リーダーをポア(と標識)を通して移動させたことを示す特徴的な長いポリTレベルで終わっている。Hel308Mbu(配列番号10)での完全な実行において、ヘリカーゼ制御DNA移動の約30%がポリTで終わることが見出された(n=19 本実験におけるヘリカーゼ制御DNA移動)。 Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(10nM、ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を使用して、ヘリカーゼがMspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)を通るDNAの移行を制御する場合に観察された電流トレース例を示す図である(+140mV、400mM NaCl、100mM Hepes pH8.0、10mMフェロシアン化カリウム、10mMフェリシアン化カリウム、0.05nM 900塩基長DNA(配列番号115、116および117(配列の3’末端に2個のチミン残基に付着している6個のiSp18スペーサーおよび3’コレステロールTEGを有する))、2mM ATP、2mM MgCl)。最も上の電気トレース(y軸標識=電流(pA)、x軸標識=時間(分))は、DNAが印加された電位(+140mV)の力の下で捕捉された場合にオープンポア電流(約115pA)がDNAレベル(15〜40pA)へ低下することを示す。酵素が付着しているDNAは、酵素がDNAをポアを通して移動させるときに電流における段階的変化を示す長期遮断を生じる。上のトレースは、A〜Hと印を付けた一連の8個の別々のヘリカーゼ制御DNA移動を示す。トレースのこのセクションにおける全てのヘリカーゼ制御DNA移動は、酵素によって場とは反対に(DNAは5’を下に捕捉される)ナノポアを通って移動される(詳細は図7を参照されたい)。下は、DNAがナノポアを出たときの4個のヘリカーゼ制御DNA移動の最後のセクションの拡大である。このセクションにおける8個のヘリカーゼ制御DNA移動の内、どれもが酵素がDNAの末端に達し、DNA基質の50T5’−リーダーをポア(と標識)を通して移動させたことを示す特徴的な長いポリTレベルで終わる。Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)での完全な実行において、場と反対(5’が下)のヘリカーゼ制御DNA移動の約85%がポリTで終わることが見出された(n=27 本実験におけるヘリカーゼ制御DNA移動)。 Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(10nM、ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を使用して、ヘリカーゼがMspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)を通るDNAの移行を制御する場合に観察された電流トレース例を示す図である(+140mV、400mM NaCl、100mM Hepes pH8.0、10mMフェロシアン化カリウム、10mMフェリシアン化カリウム、0.05nM 900塩基長DNA(配列番号115、116および117(配列の3’末端に2個のチミン残基に付着している6個のiSp18スペーサーおよび3’コレステロールTEGを有する))、2mM ATP、2mM MgCl)。最も上の電気トレース(y軸標識=電流(pA)、x軸標識=時間(分))は、DNAが印加された電位(+140mV)の力の下で捕捉された場合にオープンポア電流(約120pA)がDNAレベル(15〜40pA)へ低下することを示す。酵素が付着しているDNAは、酵素がDNAをポアを通して移動させるときに電流における段階的変化を示す長期遮断を生じる。上のトレースは、A〜Dと印を付けた一連の4個の別々のヘリカーゼ制御DNA移動を示す。トレースのこのセクションにおける全てのヘリカーゼ制御DNA移動は、酵素によって場に沿って(DNAは3’を下に捕捉される)ナノポアを通って移動される(詳細は図8を参照されたい)。下は、DNAがナノポアを出たときのヘリカーゼ制御DNA移動の最後のセクションの拡大である。3’が下のDNAは、配列関係に対して異なる電流および異なる変動を伴って5’が下のDNAとは特徴的に異なるサインを示す。このセクションにおける4個のヘリカーゼ制御DNA移動の内、どれもが酵素がDNAの末端に達し、DNA基質の50T5’−リーダーをポア(と標識)を通して移動させたことを示す特徴的な長いポリTレベルで終わる。Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)での完全な実行において、場に沿った(3’が下)のヘリカーゼ制御DNA移動の約87%がポリTで終わることが見出された(n=15 本実験におけるヘリカーゼ制御DNA移動)。 Hel308Mbu(E284C/S615C)−mal−pep−mal(ビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS(配列番号109)−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミド)によって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を使用して、ヘリカーゼがMspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)を通るDNAの移行を制御する場合に観察された電流トレース例(上および下のトレースについてy軸=電流(pA)、x軸=時間(秒))を示す図である(+120mV、(625mM KCl、100mM Hepes、75mMフェロシアン化カリウム(II)、25mMフェリシアン化カリウム(III)、pH8.0、0.5nM DNA(配列番号127、その3’末端が4つのiSpC3スペーサーに、その最後が配列番号128の5’末端に付着している)1mM ATP、10mM MgCl)。最も上の電気トレースは、DNAが印加された電位(+120mV)の力の下で捕捉された場合にオープンポア電流(約400pA)がDNAレベル(250〜220pA)へ低下することを示す。酵素が付着しているDNAは、酵素がDNAをポアを通して移動させるときに電流における段階的変化を示す長期遮断を生じる。下のトレースは、上のトレースの領域を拡大したものである。 TrwC Cba−N691C/Q346C−mal−PEG11−mal(ビスマレイミドポリエチレングリコールリンカーによって繋がれ、変異N691C/Q346Cを有する配列番号126)反応混合物のクーマシー染色7.5%Tris−HClゲルを示す図である。ゲルの右のレーン(Mと標識)は適切なタンパク質ラダー(質量単位マーカーはゲルの右に示されている)を示す。レーン1は5μLの約10μM TrwC Cba−D657C/R339C単独(変異D657C/R339Cを有する配列番号126)を基準として含有する。レーン2は5μLの約10μMTrwC Cba−N691C/Q346C−ビスマレイミドPEG11(ビスマレイミドPEG11リンカーによって繋がれ、変異N691C/Q346Cを有する配列番号126)を含有する。レーン2に示されるとおり、上のバンドは二量体酵素分子種に対応し(Aと標識)、中央のバンドは閉じた複合体(Bと標識)TraI−Cba−N691C/Q346C−ビスマレイミドPEG11(ビスマレイミドPEG11リンカーによって繋がれ、変異N691C/Q346Cを有する配列番号126)に対応する。未修飾出発材料(Cと標識)TrwC Cba−N691C/Q346C(変異N691C/Q346Cを有する配列番号126)に対するバンドが観察されることから、mal−PEG11−malリンカーに付着する反応が進まなかったことはゲルから明らかであった。 dsDNA分子の代謝回転率(分−1酵素−1)を検査するための蛍光アッセイを示す図である。通例の蛍光基質がヘリカーゼ(a)のハイブリダイズdsDNAを置換する能力をアッセイするために使用された。1)蛍光基質鎖(50nM最終、配列番号151および152)は、3’および5’の両方のssDNAオーバーハングを有する。上部鎖(b)はカルボキシフルオレセイン塩基(c)を5’末端近く(カルボキシフルオレセインは配列番号151中の位置6の修飾チミンに付着している)に有し、ハイブリダイズされた相補物(d)はブラックホールクエンチャー(BHQ−1)塩基(e)を3’末端近く(ブラックホールクエンチャーは配列番号152中の位置81の修飾チミンに付着される)に有する。ハイブリダイズされた場合、フルオレセインからの蛍光は局在BHQ−1によって消光され、基質は実質的に非蛍光性である。蛍光基質鎖の下部に部分的に相補的である捕捉鎖(f、配列番号153)1μMがアッセイに含まれる。2)ATP(1mM)およびMgCl(10mM)の存在下で、基質に添加されたヘリカーゼ(10nM)は、蛍光基質の3’尾部に結合し、上部鎖に沿って移動し、示されるとおり相補鎖(d)を置換する。3)BHQ−1を有する相補鎖が完全に置換されると主要な鎖上のフルオレセインは蛍光を発する。4)置換された下部鎖(d)は過剰量の捕捉鎖(f)に優先的にアニールし、初期基質の再アニールおよび蛍光の消失を防ぐ。 多数のヘリカーゼ(Hel308Mbu(1と標識、配列番号10)、Hel308Mbu−E284C(2と標識、変異E284Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E284C/C301A(3と標識、変異E284C/C301Aを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E285C(4と標識、変異E285Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu−S288C(5と標識、変異S288Cを有する配列番号10))に関して、緩衝液(400mM KCl、100mM Hepes pH8.0、1mM ATP、10mM MgCl、50nM蛍光基質DNA(配列番号151および152)、1μM捕捉DNA(配列番号153))中でのdsDNA代謝回転(酵素−1−1)を示すグラフである。Hel308Mbu−E284C(変異E284Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E284C/C301A(変異E284C/C301Aを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E285C(変異E285Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu−S288C(変異S288Cを有する配列番号10)は、Hel308Mbu(配列番号10)と比較した場合にdsDNA分子の代謝回転速度(分−1酵素−1)の増加を示した。 多数のヘリカーゼ(Hel308Mbu(1と標識、配列番号10)、Hel308Mbu−E284C(2と標識、変異E284Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu−D274C(6と標識、変異D274Cを有する配列番号10))に関して、緩衝液(400mM KCl、100mM Hepes pH8.0、1mM ATP、10mM MgCl、50nM 蛍光基質DNA(配列番号151および152)、1μM捕捉DNA(配列番号153))中でのdsDNA代謝回転(酵素−1−1)を示す図である。Hel308Mbu−E284C(変異E284Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu−D274C(変異D274Cを有する配列番号10)はHel308Mbu(配列番号10)と比較した場合にdsDNA分子の代謝回転速度(分−1酵素−1)の増加を示した。 膜中のナノポアを通るポリヌクレオチドの酵素制御移行の模式図であって、酵素は印加された場の力とは反対にポリヌクレオチドの移動を制御する。模式図は、3’から5’酵素(Aと標識)の例を示し、5’末端でのポア中のポリヌクレオチド(実施例9において使用するポリヌクレオチド配列は配列番号154(図18においてBと標識)、配列番号155(図18においてCと標識)および配列番156(図18においてDと標識)および、配列番号117(図18においてEと標識))の捕捉は、印加された場の力とは反対のポリヌクレオチドの酵素制御移動(印加された場の方向は矢印1により示される)を導く。DNA捕捉の際にハイブリダイズされた鎖は、開かれる。矢印2はナノポアを通るDNA移動の方向を記し、矢印3はDNAに沿った酵素移動の方向を記す。酵素がDNAから解離しない限り、膜のcis側に最終的に放されるまで酵素はポアの外側にDNAを引く。 Hel308Mbu(配列番号10)がMspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)を通るDNAの移行(+120mV、(960mM KCl、25mMリン酸カリウム、3mMフェロシアン化カリウム、1mMフェリシアン化カリウム pH8.0、10mM MgClおよび1mM ATP)0.2nM DNA((その5’末端が4個のニトロインドールに、その最後が配列番号155の3’末端に付着している配列番号154)、配列番号156および配列番号117)を制御する場合に観察された電流トレース例(y軸=電流(pA)、x軸=時間(秒))を示す図である。電気トレースは、DNAが印加された電位(+120mV)の力の下で捕捉された場合にオープンポア電流(約250pA)がDNAレベル(約50pA)へ低下することを示す。酵素が付着しているDNAは、酵素がDNAをポアを通して移動させるときに電流における段階的変化を示す長期遮断を生じる。 Hel308Mbu−E284C(変異E284Cを有する配列番号10)がMspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)を通るDNAの移行(+120mV、(960mM KCl、25mMリン酸カリウム、3mMフェロシアン化カリウム、1mMフェリシアン化カリウムpH8.0、10mM MgClおよび1mM ATP)0.2nM DNA((その5’末端が4個のニトロインドールに、その最後が配列番号155の3’末端に付着している配列番号154)、配列番号156および配列番号117)を制御する場合に観察された電流トレース例(両方のトレースについてy軸=電流(pA)、x軸=時間(秒))を示す図である。上の電気トレースは、DNAが印加された電位(+120mV)の力の下で捕捉された場合のDNAレベル(約35pA)を示す。酵素が付着しているDNAは、酵素がDNAをポアを通して移動させるときに電流における段階的変化を示す長期遮断を生じる。下のトレースは、上のトレースに示すヘリカーゼ制御DNA移動に関して拡大したものを示す。 Hel308Mbu−S288C(変異S288Cを有する配列番号10)がMspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)を通るDNAの移行(+120mV、(960mM KCl、25mMリン酸カリウム、3mMフェロシアン化カリウム、1mMフェリシアン化カリウムpH8.0、10mM MgClおよび1mM ATP)0.2nM DNA((その5’末端が4個のニトロインドールに、その最後が配列番号155の3’末端に付着している配列番号154)、配列番号156および配列番号117)を制御する場合に観察された電流トレース例(両方のトレースについてy軸=電流(pA)、x軸=時間(秒))を示す図である。上の電気トレースは、DNAが印加された電位(+120mV)の力の下で捕捉された場合のDNAレベル(約40pA)を示す。酵素が付着しているDNAは、酵素がDNAをポアを通して移動させるときに電流における段階的変化を示す長期遮断を生じる。下のトレースは、上のトレースに示すヘリカーゼ制御DNA移動に関して拡大したものを示す。 Hel308Mbu−E284Faz(変異E284Fazを有する配列番号10)がMspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)を通るDNAの移行(+120mV、(960mM KCl、25mMリン酸カリウム、3mMフェロシアン化カリウム、1mMフェリシアン化カリウムpH8.0、10mM MgClおよび1mM ATP)0.2nM DNA((その5’末端が4個のニトロインドールに、その最後が配列番号155の3’末端に付着している配列番号154)、配列番号156および配列番号117)を制御する場合に観察された電流トレース例(両方のトレースについてy軸=電流(pA)、x軸=時間(秒))を示す図である。上の電気トレースは、DNAが印加された電位(+120mV)の力の下で捕捉された場合にDNAレベル(約50pA)を示す。酵素が付着しているDNAは、酵素がDNAをポアを通して移動させるときに電流における段階的変化を示す長期遮断を生じる。下のトレースは、上のトレースに示すヘリカーゼ制御DNA移動に関して拡大したものを示す。 熱処置Hel308Mbu−E284Faz(変異E284Fazを有する配列番号10、酵素は50mM Tris pH8.0、375mM NaCl、5%グリセロール緩衝液中4℃から50℃、10分間加熱され、次いでBioRad PCRブロックにおいて4℃に冷却された)がMspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)を通るDNAの移行を(+120mV、(960mM KCl、25mMリン酸カリウム、3mMフェロシアン化カリウム、1mMフェリシアン化カリウムpH8.0、10mM MgClおよび1mM ATP)0.2nM DNA((その5’末端が4個のニトロインドールに、その最後が配列番号155の3’末端に付着している配列番号154)、配列番号156および配列番号117)制御する場合に観察された電流トレース例(両方のトレースについてy軸=電流(pA)、x軸=時間(秒))を示す図である。上の電気トレースは、DNAが印加された電位(+120mV)の力の下で捕捉された場合に多数のヘリカーゼ制御DNA移動(各移動は1〜3と番号付けられている)に関してDNAレベル(約50pA)を示す。酵素が付着しているDNAは、酵素がDNAをポアを通して移動させるときに電流における段階的変化を示す長期遮断を生じる。下のトレースは、上のトレースで1と標識するヘリカーゼ制御DNA移動に関して拡大したものである。
配列表の記載
配列番号1は、MS−B1変異MspA単量体をコードするコドン最適化ポリヌクレチド配列を示す。この変異体は、シグナル配列を欠失しており、次の変異:D90N、D91N、D93N、D118R、D134RおよびE139Kを含む。
配列番号2は、MspA単量体のMS−B1変異体の成熟形態のアミノ酸配列を示す。この変異体は、シグナル配列を欠失しており、以下の変異:D90N、D91N、D93N、D118R、D134RおよびE139Kを含む。
配列番号3は、α−ヘモリジン−E111N/K147N(α−HL−NN;Stoddartら、PNAS、2009;106(19):7702-7707)の1つの単量体をコードするポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号4は、α−HL−NNの1つの単量体のアミノ酸配列を示す。
配列番号5から7は、MspB、CおよびDのアミノ酸配列を示す。
配列番号8は、Hel308モチーフのアミノ酸配列を示す。
配列番号9は、拡張Hel308モチーフのアミノ酸配列を示す。
配列番号10から58は、表1におけるHel308ヘリカーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号59はRecD様モチーフIを示す。
配列番号60から62は伸長されたRecD様モチーフIを示す。
配列番号63はRecDモチーフIを示す。
配列番号64は好ましいRecDモチーフI、すなわちG−G−P−G−T−G−K−Tを示す。
配列番号65から67は伸長されたRecDモチーフIを示す。
配列番号68はRecD様モチーフVを示す。
配列番号69はRecDモチーフVを示す。
配列番号70から77はMobFモチーフIIIを示す。
配列番号78から84はMobQモチーフIIIを示す。
配列番号85はTraI Ecoのアミノ酸配列を示す。
配列番号86はTraI EcoのRecD様モチーフIを示す。
配列番号87はTraI EcoのRecD様モチーフVを示す。
配列番号88はTraI EcoのMobFモチーフIIIを示す。
配列番号89はXPDモチーフVを示す。
配列番号90はXPDモチーフVIを示す。
配列番号91はXPD Mbuのアミノ酸配列を示す。
配列番号92はXPD MbuのXPDモチーフVを示す。
配列番号93はXPD MbuのXPDモチーフVIを示す。
配列番号94は好ましいHhHドメインのアミノ酸配列を示す。
配列番号95はgp32遺伝子によってコードされる、バクテリオファージRB69由来ssbのアミノ酸配列を示す。
配列番号96はgp2.5遺伝子によってコードされるバクテリオファージT7由来ssbのアミノ酸配列を示す。
配列番号97はヘルペスウイルス1由来UL42前進性因子のアミノ酸配列を示す。
配列番号98はPCNAのサブユニット1のアミノ酸配列を示す。
配列番号99はPCNAのサブユニット2のアミノ酸配列を示す。
配列番号100はPCNAのサブユニット3のアミノ酸配列を示す。
配列番号101はPhi29DNAポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号102はヘルペスウイルス1由来UL42前進性因子のアミノ酸配列(1から319)を示す。
配列番号103はバクテリオファージRB69由来ssbのアミノ酸配列、すなわちC末端が欠失している(gp32RB69CD)配列番号95を示す。
配列番号104はバクテリオファージT7(gp2.5T7−R211Del)由来のssbのアミノ酸配列(1から210)を示す。全長タンパク質は配列番号96において示されている。
配列番号105はHel308Hlaの第5ドメインのアミノ酸配列を示す。
配列番号106はHel308Hvoの第5ドメインのアミノ酸配列を示す。
配列番号107は(HhH)2ドメインのアミノ酸配列を示す。
配列番号108は(HhH)2−(HhH)2ドメインのアミノ酸配列を示す。
配列番号109は開口部が閉じられているヘリカーゼを形成するために使用されるペプチドリンカーのアミノ酸配列を示す。
配列番号110から117は実施例において用いられるポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号118はヒトミトコンドリアSSB(HsmtSSB)のアミノ酸配列を示す。
配列番号119はPhi29 DNAポリメラーゼ由来p5タンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号120は大腸菌(E. coli)由来野生型SSBのアミノ酸配列を示す。
配列番号121は、gp32遺伝子によってコードされるバクテリオファージT4由来ssbのアミノ酸配列を示す。
配列番号122はEcoSSB−CterAlaのアミノ酸配列を示す。
配列番号123はEcoSSB−CterNGGNのアミノ酸配列を示す。
配列番号124はEcoSSB−Q152delのアミノ酸配列を示す。
配列番号125はEcoSSB−G117delのアミノ酸配列を示す。
配列番号126はTrwC Cbaのアミノ酸配列を示す。
配列番号127は実施例5において使用されるポリヌクレオチド配列の一部を示す。この配列の3’末端に付着しているのは4つのiSpC3スペーサー単位であり、その最後は配列番号128の5’末端に付着している。
配列番号128は実施例5において使用されるポリヌクレオチド配列の一部を示す。この配列の5’末端に付着しているのは4つのiSpC3スペーサー単位であり、その最後は配列番号127の3’末端に付着している。
配列番号129はトポイソメラーゼV Mka(メタノピュルス・カンドレリ(Methanopyrus Kandleri))のアミノ酸配列を示す。
配列番号130はトポイソメラーゼV Mka(メタノピュルス・カンドレリ(Methanopyrus Kandleri))のドメインH−Lのアミノ酸配列を示す。
配列番号131から139は表3に示すTraI配列のいくつかを示す。
配列番号140は変異体S(大腸菌(Escherichia coli))のアミノ酸配列を示す。
配列番号141はSso7d(スルホロブス・ソルファタリカス(Sufolobus solfataricus))のアミノ酸配列を示す。
配列番号142はSso10b1(スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)P2)のアミノ酸配列を示す。
配列番号143はSso10b2(スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)P2)のアミノ酸配列を示す。
配列番号144はトリプトファンリプレッサー(大腸菌(Escherichia coli))のアミノ酸配列を示す。
配列番号145はラムダリプレッサー(腸内細菌(Enterobacteria)ファージラムダ)のアミノ酸配列を示す。
配列番号146はCren7(ヒストン・クレンアーキア(Histone crenarchaea)Cren7 Sso)のアミノ酸配列を示す。
配列番号147はヒトヒストン(ヒト(Homo sapiens))のアミノ酸配列を示す。
配列番号148はdsbA(腸内細菌ファージT4)のアミノ酸配列を示す。
配列番号149はRad51(ヒト(Homo sapiens))のアミノ酸配列を示す。
配列番号150はPCNAスライディングクランプ(sliding clamp)(シトロミクロビウム・バチオマリヌム(Citromicrobium bathyomarinum)JL354)のアミノ酸配列を示す。
配列番号151は実施例7において使用される配列の1つを示す。この配列は、位置6に位置付けられた修飾チミンに付着しているカルボキシフルオレセインを有する。
配列番号152は実施例7において使用される配列の1つを示す。この配列は、位置81に位置付けられた修飾チミンに付着しているブラックホールクエンチャー(BHQ−1)を有する。
配列番号153は実施例7において使用される配列の1つを示す。
配列番号154は実施例9において使用される配列の1つを示す。この配列は、その5’末端で4個のニトロインドールによって配列番号155の3’末端に付着されている。
配列番号155は実施例9において使用される配列の1つを示す。この配列は、4個のニトロインドールによってその3’末端で配列番号154の5’末端に付着されている。
配列番号156は実施例9において使用される配列の1つを示す。
発明の詳細な記載
本開示の生成物および方法のさまざまな応用が当技術分野における具体的な必要性に適合され得ることは理解される。本明細書で用いられる用語は本発明の詳細な実施形態を記載する目的のためのみであり、限定されることを意図しないことも理解される。
付加的に、本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が他を明確に記す場合を除いて複数の参照物を含む。したがって例えば、「ヘリカーゼ(a helicase)」を参照することは「ヘリカーゼ(helicases)」を含み、「開口部(an opening)」を参照することは2つ以上のそのような開口部を含み、「膜貫通タンパク質ポア(a transmembrane protein pore)」を参照することは2つ以上のそのようなポアを含む、など。
本明細書に引用する全ての刊行物、特許および特許出願は(上記または下記に関わらず)それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
2つ以上の部分が繋がれた修飾ヘリカーゼ
本発明は、ポリヌクレオチドの移動を制御するために有用である修飾ヘリカーゼを提供する。修飾ヘリカーゼは、1つまたは複数の単量体を有する未修飾ヘリカーゼに基づく。換言するとヘリカーゼは単量体またはオリゴマー/多量体であってよい。これは下でより詳細に考察される。修飾ヘリカーゼは、ポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を少なくとも1つのコンホメーション状態で含むポリヌクレオチド結合ドメインを含む未修飾ヘリカーゼに基づく。本発明によりヘリカーゼは、ヘリカーゼの同じ単量体上の2つ以上の部分が繋がれて開口部のサイズを低減するように修飾される。開口部のサイズの低減は、ポリヌクレオチドへの結合についてヘリカーゼを妨げない。例えばヘリカーゼは、その1つの末端でポリヌクレオチドに結合できる。開口部のサイズの低減は、ポリヌクレオチドがへリカーゼから、特にポリヌクレオチドの内部ヌクレオチドから解離するまたは離される能力を減少させる。これは下でより詳細に考察され、修飾ヘリカーゼを長時間ポリヌクレオチドに結合したままにする。修飾ヘリカーゼは、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を有する。修飾ヘリカーゼは、人工または非天然である。
ポリヌクレオチドに結合および解離するヘリカーゼの能力は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して決定できる。好適な結合/解離アッセイは、これだけに限らないが、未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、蛍光偏光測定、熱量測定および表面プラズモン共鳴(SPR、Biacore(商標)など)を含む。ポリヌクレオチドから解離するヘリカーゼの能力は、ヘリカーゼがポリヌクレオチドの移動を制御できる時間を測定することによって当然決定できる。これも当技術分野において公知の任意の方法を使用して決定できる。ポリヌクレオチドの移動を制御するヘリカーゼの能力は、下に記載のものなどのナノポア系において典型的にはアッセイされる。ポリヌクレオチドの移動を制御するヘリカーゼの能力は、実施例において記載のとおり決定できる。
本発明の修飾ヘリカーゼは、鎖配列決定法の際にポリヌクレオチドの移動を制御するための有用な手段である。ポリヌクレオチド、特に、500ヌクレオチド以上のものを配列決定することにおいて生じる問題は、ポリヌクレオチドの移行を制御する分子モーターがポリヌクレオチドから離される場合があることである。これは、ポリヌクレオチドが印加された場の方向に急速かつ制御されない様式でポアを通って引かれるようにする。本発明の修飾ヘリカーゼは、配列決定されているポリヌクレオチドから解離または離されにくい。修飾ヘリカーゼは、ナノポアを通るポリヌクレオチドの移動をそれらが制御することからポリヌクレオチドの読み取り長さの増大を提供できる。本発明の修飾ヘリカーゼの制御下でポリヌクレオチド全体をナノポアを通して移動させる能力は、その配列などのポリヌクレオチドの特性を改善された確度でおよび公知の方法を超える速度で推定できるようにする。鎖長が長くなるにつれてこれはより重要になり、分子モーターは前進性の改善を必要とする。発明の修飾ヘリカーゼは、500ヌクレオチド以上、例えば1000ヌクレオチド、5000、10000、20000、50000、100000またはそれ以上の標的ポリヌクレオチドの移動を制御することにおいて特に有効である。
本発明の修飾ヘリカーゼは、等温ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のための有用な手段でもある。そのような方法においては、2本鎖DNAの鎖は典型的には最初に本発明のヘリカーゼによって分離され、1本鎖DNA(ssDNA)−結合タンパク質によってコートされる。第二ステップでは、2個の配列特異的プライマーが、典型的にはDNA鋳型の各辺縁にハイブリダイズする。次いでDNAポリメラーゼは鋳型にアニールしたプライマーを、2本鎖DNAを産生するように伸長するために使用でき、2個の新たに合成されたDNA産生物は、次いで本発明のヘリカーゼによって基質として使用され、次の回の反応に入ることができる。したがって鎖反応が同時に進行し、選択された標的配列の指数関数的増幅が生じる。
修飾ヘリカーゼは、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を有する。ポリヌクレオチドの移動を制御するヘリカーゼの能力は、当技術分野において公知の任意の方法を使用してアッセイできる。例えばヘリカーゼは、ポリヌクレオチドに接触されてよく、ポリヌクレオチドの位置は、標準的方法を使用して決定され得る。ポリヌクレオチドの移動を制御する修飾ヘリカーゼの能力は、下に記載のものなどのナノポア系において、具体的には実施例において記載のとおり典型的にはアッセイされる。
本発明の修飾ヘリカーゼは、単離、実質的に単離、精製または実質的に精製されていてよい。ヘリカーゼは、それが脂質、ポリヌクレオチド、ポア単量体または他のタンパク質などの任意の他の構成成分を完全に含まない場合に単離または精製されている。ヘリカーゼは、その目的の使用を妨害しない担体または希釈剤と混合されている場合に実質的に単離されている。例えばヘリカーゼは、10%未満、5%未満、2%未満または1%未満の脂質、ポリヌクレオチド、ポア単量体または他のタンパク質などの他の構成成分を含む形態で存在する場合に実質的に単離または実質的に精製されている。
本発明における使用のためのヘリカーゼは、ポリヌクレオチド結合ドメインを含む。ポリヌクレオチド結合ドメインは、ポリヌクレオチドに結合できるヘリカーゼの部分である。ポリヌクレオチドは下に定義される。ポリヌクレオチドに結合するドメインの能力は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して決定できる。公知のヘリカーゼのポリヌクレオチド結合ドメインは、当技術分野において典型的には同定されている。ドメイン(結合ポリヌクレオチドを有するまたは有さない)は、タンパク質モデリング、結晶状態におけるタンパク質のX線回折測定(Rupp B (2009). Biomolecular Crystallography: Principles、Practice and Application to Structural Biology. New York: Garland Science.)、溶液におけるタンパク質の核磁気共鳴(NMR)分光法(Mark Rance; Cavanagh、John; Wayne J. Fairbrother; Arthur W. Hunt III; Skelton、NNicholas J. (2007). Protein NMR spectroscopy: principles and practice (2nd ed.). Boston: Academic Press.)または凍結水和状態におけるタンパク質のクリオ電子顕微鏡(van Heel M、Gowen B、Matadeen R、Orlova EV、Finn R、Pape T、Cohen D、Stark H、Schmidt R、Schatz M、Patwardhan A (2000). ”Single-particle electron cryo-microscopy: towards atomic resolution.”. Q Rev Biophys. 33: 307-69を使用して同定できる。上に述べた方法によって決定されたタンパク質の構造情報は、タンパク質バンク(PDB)データベースから公開で入手可能である。
タンパク質モデリングは、相同体においてタンパク質構造がタンパク質配列よりも保存されているという事実を活用する。それにより、タンパク質の原子分解モデルを作成することは、クエリー配列の構造に類似していると考えられる1つまたは複数のタンパク質構造の同定に依存する。タンパク質モデルを構築するための「鋳型」として使用するための好適なタンパク質構造が存在するかどうかを評価するために、タンパク質データバンク(PDB)データベースの検索を実施する。タンパク質構造は、クエリー配列と合理的なレベルの配列同一性を共有している場合に好適な鋳型であると考えられる。そのような鋳型が存在する場合、次いで鋳型配列はクエリー配列と「配列比較」される、すなわちクエリー配列中の残基が鋳型残基に位置付けられる。配列の配列比較および鋳型構造は、次いでクエリー配列の構造モデルを作成するために使用される。そのためタンパク質モデルの品質は、配列の配列比較および鋳型構造の品質に依存する。
ヘリカーゼなどのタンパク質は、常に運動している動的な構造である。タンパク質が動ける(explore)コンホメーション空間は、さまざまなコンホメーションがそれらのエネルギーに基づいて存在しており、相互変換の速度が状態間のエネルギー障壁に依存するエネルギー地形によって記載されている(Vinson、Science、2009: 324(5924): 197)。ヘリカーゼは、したがって、単独であるまたはポリヌクレオチドの移動を制御しているかに関わらずいくつかのコンホメーション状態で存在できる。少なくとも1つのコンホメーション状態において、本発明における使用のための未修飾ヘリカーゼのポリヌクレオチド結合ドメインは、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含む。開口部は、ヘリカーゼの全てのコンホメーション状態において存在できるが、しかし必ずではない。例えば全てのコンホメーション状態において、ポリヌクレオチド結合ドメインはそれを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含み得る。代替的に、ヘリカーゼの1つまたは複数のコンホメーション状態ではポリヌクレオチド結合ドメインは、開口部が小さすぎるためにそれを通ってポリヌクレオチド結合ドメインがヘリカーゼから解離できない開口部を含む場合がある。ヘリカーゼの1つまたは複数のコンホメーション状態ではポリヌクレオチド結合ドメインは、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含まない場合がある。
ポリヌクレオチド結合ドメインは、少なくとも1つのコンホメーション状態において、それを通ってポリヌクレオチドの1つまたは複数の内部ヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を好ましくは含む。内部ヌクレオチドは、ポリヌクレオチド中の末端ヌクレオチドではないヌクレオチドである。例えばそれは3’末端ヌクレオチドまたは5’末端ヌクレオチドではない。環状ポリヌクレオチド中の全てのヌクレオチドは内部ヌクレオチドである。本発明による1つまたは複数の内部ヌクレオチドからの解離を低減または妨げることは、ポリヌクレオチドの一方の末端に結合でき、全てではないが大部分のポリヌクレオチドの移動を制御でき、次いで他方の末端からから解離できる修飾ヘリカーゼを生じ得ることから有利である。そのようなヘリカーゼは、鎖配列決定法のために特に有益である。
ヘリカーゼから解離する1つまたは複数の内部ヌクレオチドの能力は、競合アッセイを実行することによって決定できる。例えば対照ポリヌクレオチドAから解離するヘリカーゼの能力は、末端ヌクレオチドに付着しているブロッキング基を含む同じポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドB)から解離する能力と比較される。ブロッキング基は、鎖Bの末端ヌクレオチドでのいかなる解離も妨げ、それによりヘリカーゼの内部解離だけを可能にする。代替的に、環状ポリヌクレオチドから解離するヘリカーゼの能力はアッセイできる。解離は上に記載のとおりアッセイできる。
開口部は、ポリヌクレオチド結合ドメインにおける溝、ポケットまたは陥凹であってよい。
それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部の存在は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して決定できる。開口部の存在は、上により詳細に考察のとおり、ポリヌクレオチドから、具体的にはポリヌクレオチドの内部ヌクレオチドから解離するヘリカーゼの能力を測定することによって決定できる。ポリヌクレオチドドメインにおける開口部は、上に考察したとおり、タンパク質モデリング、X線回折、NMR分光法またはクリオ電子顕微鏡を使用して同定できる。
本発明によりヘリカーゼは、ヘリカーゼの同じ単量体上の2つ以上の部分を繋ぐことによって修飾される。ヘリカーゼがオリゴマーまたは多量体である場合、2つ以上の部分は異なる単量体上であることはできない。3つ、4つ、5つまたはそれ以上の部分などの任意の数の部分を繋ぐことができる。2つ以上の部分を繋ぐ好ましい方法は下により詳細に考察される。
2つ以上の部分は、本発明により繋がれた場合にそれらが開口部のサイズを低減させる限り単量体上のどこに位置付けられてもよい。2つ以上の部分は、ポリヌクレオチドドメインまたは開口部にあってよいが、必ずではない。例えば、2つ以上の部分の1つ、両方または全ては、ヘリカーゼの異なるドメインなどのポリヌクレオチド結合ドメインの外にあってもよい。2つ以上の部分の間の最大距離は、ヘリカーゼの外周である。
2つ以上の部分は、好ましくは空間的に近接している。2つ以上の部分は、40オングストローム(Å)未満離れている、30Å未満離れている、25Å未満離れている、20Å未満離れている、10Å未満離れているまたは10Å未満離れているなど好ましくは50Å未満離れている。
2つ以上の部分の少なくとも1つは、好ましくは開口部の部分を形成する、開口部に隣接しているまたは開口部に近い。上に記載のとおり、開口部内のアミノ酸などの開口部の部分を同定することは容易である。部分は、それらが開口部の隣にあるが部分を形成しない場合に開口部に隣接している。例えば、開口部の部分を形成するアミノ酸の隣に位置するがそれ自体は開口部の部分を形成しないアミノ酸は、開口部に隣接している。本発明の内容では「隣にある」は、ヘリカーゼのアミノ酸配列において隣にあるまたはヘリカーゼの三次元構造において続く2つであることを意味する。部分は開口部の部分を形成するアミノ酸から15Å未満、10Å未満、5Å未満または2Å未満離れているなどの、開口部の部分を形成するアミノ酸から20Å未満である場合に典型的には開口部に近い。部分は、ヘリカーゼのアミノ酸配列において開口部の部分を形成するアミノ酸の1、2、3、4または5アミノ酸以内である場合に典型的には開口部に近い。そのようなアミノ酸は、上に考察したとおり同定できる。
2つ以上の部分は、開口部の反対側にあってもよい。2つ以上の部分は、開口部の同じ側にあってもよい。本実施形態ではヘリカーゼの2つ以上の部分は繋がれて、開口部のサイズを低減するループ、蓋、狭窄またはフラップを形成してもよい。
2つ以上の部分は、単量体の表面上、すなわちヘリカーゼの表面上に好ましくはある。下により詳細に記載のとおり表面上の2つ以上の部分を繋ぐことは容易である。表面部分は、上に考察したとおりタンパク質モデリング、X線回折、NMR分光法またはクリオ電子顕微鏡を使用して決定できる。
修飾ヘリカーゼは、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を保持している。ヘリカーゼのこの能力は、そのβ鎖およびαヘリックスによって典型的には提供されるその三次元構造により典型的には提供される。αヘリックスおよびβ鎖は、ループ領域により典型的には繋がれている。ポリヌクレオチドの移動を制御するヘリカーゼの能力に影響を与えることを回避するために、2つ以上の部分は好ましくは単量体のループ領域である。具体定なヘリカーゼのループ領域は、上に考察したとおりタンパク質モデリング、X線回折、NMR分光法またはクリオ電子顕微鏡などの当技術分野において公知の方法を使用して同定できる。
Hel308ヘリカーゼ(配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55および58)に関して、β鎖は2個のRecA様エンジン(RecA-like engine)ドメイン(ドメイン1および2)においてだけ見出すことができる。これらのドメインは、燃料ヌクレオチド(通常はATP)の加水分解と移動との連関に関与する。ポリヌクレオチドに沿って徐々に動かすための重要なドメインは、ドメイン3および4であるが、中でもドメイン4である。興味深いことにドメイン3および4の両方はαヘリックスだけを含む。ドメイン4中にラチェットヘリックスと称される重要なαヘリックスがある。結果として本発明のHel308実施形態では、2つ以上の部分は好ましくはいずれのαヘリックスの中にもない。
開口部のサイズは、ヘリカーゼからのポリヌクレオチドの解離を低減する限り、任意の程度に低減されてよい。これは上に考察したとおり決定できる。開口部のサイズを低減する方法は、下により詳細に考察される.
2つ以上の部分は、開口部を閉じるように好ましくは繋がれる。開口部が閉じられる場合は、ポリヌクレオチドは開口部を通ってヘリカーゼから解離できない。ヘリカーゼは、いかなるコンホメーション状態でも開口部を含まないようにより好ましくは修飾される。ヘリカーゼのいかなるコンホメーション状態においても開口部が存在しない場合、ポリヌクレオチドは開口部を通ってヘリカーゼから解離できない。ヘリカーゼは、ポリヌクレオチド周囲に共有結合的に閉じた構造を形成できるように最も好ましくは修飾される。共有結合的に閉じた構造が、例えばポリヌクレオチドの一方の末端でポリヌクレオチドに結合すると、それが他方の末端に達するまで解離することなくポリヌクレオチドの移動を制御できる。
接続
2つ以上の部分は、任意の方法で繋がれてよい。接続は一過的、例えば非供給的であってよい。一過的接続でさえ開口部のサイズを低減し、開口部を通るヘリカーゼからのポリヌクレオチドの解離を低減する。
2つ以上の部分は、親和性分子によって好ましくは繋がれる。好適な親和性分子は、当技術分野において公知である。親和性分子は、好ましくは、(a)相補的ポリヌクレオチド(国際出願第PCT/GB10/000132号(WO2010/086602として公開)、(b)抗体またはその断片および相補的エピトープ(Biochemistry 6thEd、W.H. Freeman and co (2007) pp953-954)、(c)ペプチドジッパー(O'Sheaら、Science 254 (5031): 539-544)、(d)β−シート増強により相互作用できる(Remaut and Waksman Trends Biochem. Sci. (2006) 31 436-444)、(e)水素結合、pi−スタッキングまたは塩橋形成できる、(f)ロタキサン(Xiang Ma and He Tian Chem. Soc. Rev.、2010,39、70-80)、(g)アプタマーおよび相補的タンパク質(James、W. in Encyclopedia of Analytical Chemistry、R.A. Meyers (Ed.) pp. 4848-4871 John Wiley & Sons Ltd、Chichester、2000)または(h)ハーフキレーター(half-chelator)(Hammersteinら J Biol Chem. 2011 April 22; 286(16): 14324-14334)である。(e)に関して水素結合は電気陰性原子に結合したプロトンと別の電気陰性原子との間に生じる。pi−スタッキングは、環の平面が平行である場合に互いにスタックできる2つの芳香族環を必要とする。塩橋は、それらの電子をいくつかの原子に非局在化できる基の間、例えばアスパラギン酸とアルギニンとの間にある。
2つ以上の部分は、ヘキサhisタグまたはNi−NTAによって一過的に繋がれる場合がある。2つ以上の部分は、それらが一過的に相互に繋がれるように修飾されてもよい。
2つ以上の部分は、好ましくは永久的に繋がれている。本発明の内容では、ヘリカーゼが使用されている間に破壊されないまたは−S−S−結合を開くための還元を使用するなどの、使用者の部分への介入なしには破壊されない場合に接続は永久的である。
2つ以上の部分は好ましくは共有結合的に付着している。2つ以上の部分は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して共有結合的に付着されてよい。
2つ以上の部分は、システイン、スレオニン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸およびグルタミンなどのそれらの天然に存在するアミノ酸を介して共有結合的に付着してよい。天然に存在するアミノ酸は、付着を促進するために修飾されてよい。例えば天然に存在するアミノ酸は、アシル化、リン酸化、グリコシル化またはファルネシル化によって修飾されてよい。他の好適な修飾は、当技術分野において公知である。天然に存在するアミノ酸への修飾は、翻訳後修飾であってよい。2つ以上の部分は、それらの配列に導入されるアミノ酸を介して付着してよい。そのようなアミノ酸は、好ましくは置換によって導入される。導入されるアミノ酸は、システインまたは付着を促進する非天然アミノ酸であってよい。好適な非天然アミノ酸は、これだけに限らないが、4−アジド−L−フェニルアラニン(Faz)、Liu C. C. and Schultz P. G.、Annu. Rev. Biochem.、2010、79、413-444の図1に含まれている1〜71と番号付けられたアミノ酸のいずれか1つまたは下に列挙するアミノ酸のいずれか1つを含む。導入されるアミノ酸は、上に考察したとおり修飾されてよい。
好ましい実施形態では2つ以上の部分は、リンカーを使用して繋がれる。リンカー分子は、下により詳細に考察される。接続の1つの好適な方法は、システイン連結である。これは下でより詳細に考察される。2つ以上の部分は、好ましくは2つまたは3つなどの1つまたは複数のリンカーを使用して繋がれる。1つまたは複数のリンカーは、上に考察したとおり開口部のサイズを低減するまたは閉じるように設計されてよい。1つまたは複数のリンカーが上に考察したとおり開口部を閉じるために使用される場合、1つまたは複数のリンカーの少なくとも部分は、ヘリカーゼに結合した際にポリヌクレオチドと平行ではないように好ましくは方向付けられる。より好ましくは全てのリンカーは、この様式で方向付けられる。1つまたは複数のリンカーが上に考察したとおり開口部を閉じるために使用される場合、1つまたは複数のリンカーの少なくとも部分は、好ましくはヘリカーゼに結合した際にポリヌクレオチドと平行ではない方向で開口部に交差している。より好ましくは全てのリンカーがこの様式で開口部に交差している。これらの実施形態では1つまたは複数のリンカーの少なくとも部分は、ポリヌクレオチドに垂直であってよい。そのような方向は、ポリヌクレオチドが開口部を通ってヘリカーゼから解離できないように開口部を効果的に閉じる。
各リンカーは、2個、3個または4個の機能末端などの2個以上の機能末端を有する場合がある。リンカーにおける末端の好適な立体配置は当技術分野において十分公知である。
1つまたは複数のリンカーの1つまたは複数の末端は、好ましくはヘリカーゼに共有結合的に付着している。1つの末端が共有結合的に付着している場合、1つまたは複数のリンカーは上に考察したとおり2つ以上の部分を一過的に繋ぎ得る。両方または全ての末端が共有結合的に付着している場合、1つまたは複数のリンカーは2つ以上の部分を永久的に繋ぐ。
2つ以上の部分の少なくとも1つは、1つまたは複数のリンカーの付着を促進するために好ましくは修飾される。任意の修飾が作製されてよい。リンカーは、2つ以上の部分における1つまたは複数の反応性システイン残基、反応性リシン残基または非天然アミノ酸に付着してよい。非天然アミノ酸は、上に考察した任意のものであってよい。非天然アミノ酸は、好ましくは4−アジド−L−フェニルアラニン(Faz)である。2つ以上の部分における少なくとも1つのアミノ酸は、好ましくはシステインまたはFazなどの非天然アミノ酸で置換される。
1つまたは複数のリンカーは、好ましくはアミノ酸配列および/または化学的架橋剤である。
ペプチドリンカーなどの好適なアミノ酸リンカーは、当技術分野において公知である。アミノ酸またはペプチドリンカーの長さ、可動性および親水性は、開口部のサイズを低減するが、ヘリカーゼの機能を妨害しないように典型的には設計される。好ましい可動性ペプチドリンカーは4、6、8、10または16などの2から20のセリンおよび/またはグリシンアミノ酸のストレッチである。より好ましい可動性リンカーは(SG)、(SG)、(SG)、(SG)、(SG)、(SG)、(SG)10、(SG)15または(SG)20を含み、式中Sはセリンであり、Gはグリシンである。好ましい硬いリンカーは、4、6、8、16または24などの2から30のプロリンアミノ酸のストレッチである。より好ましい硬いリンカーは(P)12を含み、式中Pはプロリンである。リンカーのアミノ酸配列は、好ましくはポリヌクレオチド結合成分を含む。そのような成分およびそれらの使用に関連する有利点は、下に考察される。
好適な化学的架橋剤は、当技術分野において十分公知である。好適な化学的架橋剤は、これだけに限らないが、次の官能基: マレイミド、活性エステル、サクシニミド、アジド、アルキン(ジベンゾシクロオクチノール(DIBOまたはDBCO)、ジフルオロシクロアルカンおよび直鎖アルカンなど)、ホスフィン(無痕跡および無痕跡でないシュタウディンガーライゲーションにおいて使用されるものなど)、ハロアセチル(ヨードアセトアミドなど)、ホスゲン型試薬、スルホニルクロリド試薬、イソチオシアン酸、ハロゲン化アシル、ヒドラジン、ジスルフィド、ビニルスルホン、アジリジンおよび光反応性試薬(アリールアジド、ジアジリジンなど)を含むものを含む。
システイン/マレイミドなど、アミノ酸と官能基との間の反応は自発的であってよく、またはアジドと直鎖状アルキンを連結するためのCu(I)など、他の試薬を必要としてよい。
リンカーは、必要な距離にわたって伸びる任意の分子を含んでよい。リンカーは、炭素1個(ホスゲン型リンカー)から多数のオングストロームに長さが変化できる。直鎖状分子の例に含まれるのは、これだけに限らないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリペプチド、多糖、デオキシリボ核酸(DNA)、ペプチド核酸(PNA)、トレオース核酸(TNA)、グリセロール核酸(GNA)、飽和および不飽和炭化水素、ポリアミドである。これらのリンカーは不活性または反応性であってよく、具体的にはそれらは、規定の位置で化学的に切断可能であってよい、またはフルオロフォアもしくはリガンドでそれ自体が修飾されてよい。リンカーは、好ましくはジチオスレイトール(dithiothreitol)(DTT)に抵抗性である。
好ましい架橋剤は、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル3−(ピリジン−2−イルジスルファニル)プロパノエート、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル4−(ピリジン−2−イルジスルファニル)ブタノエートおよび2,5−ジオキソピロリジン−1−イル8−(ピリジン−2−イルジスルファニル)オクタノエート、ジ−マレイミドPEG 1k、ジ−マレイミドPEG 3.4k、ジ−マレイミドPEG 5k、ジ−マレイミドPEG 10k、ビス(マレイミド)エタン(BMOE)、ビス−マレイミドヘキサン(BMH)、1,4−ビス−マレイミドブタン(BMB)、1,4ビス−マレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン(BMDB)、BM[PEO]2(1,8−ビス−マレイミドジエチレングリコール)、BM[PEO]3(1,11−ビス−マレイミドトリエチレングリコール)、トリス[2−マレイミドエチル]アミン(TMEA)、DTMEジチオビスマレイミドエタン、ビスマレイミドPEG3、ビスマレイミドPEG11、DBCO−マレイミド、DBCO−PEG4−マレイミド、DBCO−PEG4−NH2、DBCO−PEG4−NHS、DBCO−NHS、DBCO−PEG−DBCO 2.8kDa、DBCO−PEG−DBCO 4.0kDa、DBCO−15原子−DBCO、DBCO−26原子−DBCO、DBCO−35原子−DBCO、DBCO−PEG4−S−S−PEG3−ビオチン、DBCO−S−S−PEG3−ビオチン、DBCO−S−S−PEG11−ビオチン、(サクシニジミル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)およびマレイミド−PEG(2kDa)−マレイミド(アルファ、オメガ−ビス−マレイミドポリ(エチレングリコール))を含む。最も好ましい架橋剤は、実施例において使用されるマレイミド−プロピル−SRDFWRS−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミドである。
1つまたは複数のリンカーは、切断可能であってよい。これは下でより詳細に考察される。
2つ以上の部分は、相互に特異的である2つの異なるリンカーを使用して繋がれる場合がある。リンカーの一方は、一方の部分に付着しており、他方は別の部分に付着している。リンカーは、本発明の修飾ヘリカーゼを形成するように反応しなければならない。2つ以上の部分は、国際出願第PCT/GB10/000132号(WO2010/086602として公開)に記載のハイブリダイゼーションリンカーを使用して繋がれてよい。具体的には2つ以上の部分は、ハイブリダイズ可能な領域および共有結合を形成できる基をそれぞれ含む2つ以上のリンカーを使用して繋がれてよい。リンカーにおけるハイブリダイズ可能な領域は、2つ以上の部分にハイブリダイズし、連結する。連結された部分は、次いで基の間の共有結合の形成を介してカップリングされる。国際出願第PCT/GB10/000132号(WO2010/086602として公開)に開示の任意の特異的リンカーは、本発明により使用できる。
2つ以上の部分は、修飾される場合があり、次いで2つの修飾に特異的である化学的架橋剤を使用して付着されてよい。上に考察した任意の架橋剤は、使用できる。
リンカーは、標識されてよい。好適な標識は、これだけに限らないが、蛍光分子(Cy3またはAlexaFluor(登録商標)555など)、放射性同位元素、例えば 125I、35S、酵素、抗体、抗原、ポリヌクレオチドおよび、ビオチンなどのリガンドを含む。そのような標識は、リンカーの量を定量できるようにする。標識は、ビオチンなどの切断可能な精製タグ、またはタンパク質自体には存在しないがトリプシン消化によって遊離されるペプチドなどの同定方法において明らかになる特異的配列であってもよい。
2つ以上の部分を繋ぐ好ましい方法は、システイン連結を介する。これは、二機能性化学的架橋剤により、または末端に存在するシステイン残基を有するアミノ酸リンカーにより調節できる。連結は、ヘリカーゼ中の天然システインを介して生じてよい。代替的にシステインは、ヘリカーゼの2つ以上の部分に導入される場合がある。2つ以上の部分がシステイン連結を介して繋がれる場合、1つまたは複数のシステインは、置換によって2つ以上の部分に好ましくは導入される。
任意の二機能性リンカーの長さ、反応性、特異性、硬さおよび溶解度は、開口部のサイズが十分に低減され、ヘリカーゼの機能が保持されることを確実にするように設計される場合がある。好適なリンカーは、1,4−ビス(マレイミド)ブタン(BMB)またはビス(マレイミド)ヘキサンなどのビスマレイミド架橋剤を含む。特異的部位での付着が好ましい場合に、表面の利用可能なシステイン残基への二機能性リンカーの結合は制御することが困難である場合があり、基質結合または活性に影響を与える場合があることから、二機能性リンカーを引き戻すものは、さらなる表面の利用可能なシステイン残基を含まないヘリカーゼの必要性である。ヘリカーゼがいくつかの利用可能なシステイン残基を含有する場合は、修飾がヘリカーゼのフォールディングまたは活性に影響を与えないことを確実にしながら、それらを除去するためにヘリカーゼの修飾が必要である場合がある。これは、国際出願第PCT/GB10/000133号(WO2010/086603として公開)において考察されている。システイン残基の反応性は隣接残基の、例えばペプチドリンカー上の修飾によって増強できる。例えば近接するアルギニン、ヒスチジンまたはリシン残基の塩基性基は、システインチオール基のpKaをさらに反応性のS基のものに変化させる。システイン残基の反応性は、5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)(dTNB)などのチオール保護基によって保護できる。これらは、リンカーが付着する前にヘリカーゼの1つまたは複数のシステイン残基と反応できる。表面の利用可能なシステインの選択的脱保護は、ビーズに固定した還元試薬(例えば固定化トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、TCEP)を使用して可能である。2つ以上の部分のシステイン連結は、下により詳細に考察される。
2つ以上の部分を付着させる別の好ましい方法は、4−アジド−L−フェニルアラニン(Faz)連結を介する。これは、二機能性化学的リンカーによってまたは末端に存在するFaz残基を有するポリペプチドリンカーによって調節できる。1つまたは複数のFaz残基は、置換によってヘリカーゼに好ましくは導入される。2つ以上のヘリカーゼのFaz連結は、下により詳細に考察される。
ヘリカーゼ
1つまたは複数の単量体で形成されており、少なくとも1つのコンホメーション状態において、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含むポリヌクレオチド結合ドメインを含む任意のヘリカーゼは、本発明により修飾されてよい。ヘリカーゼは、しばしばトランスロカーゼとして公知であり、2つの用語は互換的に使用できる。
好適なヘリカーゼは、当技術分野において十分公知である(M. E. Fairman-Williamsら、Curr. Opin. Struct Biol.、2010、20 (3)、313-324、T. M. Lohmanら、Nature Reviews Molecular Cell Biology、2008、9、391-401)。
ヘリカーゼは、好ましくはスーパーファミリー1またはスーパーファミリー2のメンバーである。ヘリカーゼは、より好ましくは次のファミリー:Pif1様、Upf1様、UvrD/Rep、Ski様、Rad3/XPD、NS3/NPH−II、DEAD、DEAH/RHA、RecG様、REcQ様、T1R様、Swi/Snf様およびRig−I様の1つのメンバーである。これらのファミリーの最初の3個は、スーパーファミリー1であり、次の10個のファミリーはスーパーファミリー2である。ヘリカーゼは、より好ましくは次のサブファミリー:RecD、Upf1(RNA)、PcrA、Rep、UvrD、Hel308、Mtr4(RNA)、XPD、NS3(RNA)、Mss116(RNA)、Prp43(RNA)、RecG、RecQ、T1R、RapAおよびHef(RNA)の1つのメンバーである。これらのサブファミリーの最初の5個は、スーパーファミリー1であり、次の11個のサブファミリーはスーパーファミリー2である。Upf1、Mtr4、NS3、Mss116、Prp43およびHefサブファミリーのメンバーは、RNAヘリカーゼである。残りのサブファミリーのメンバーはDNAヘリカーゼである。
ヘリカーゼは、多量体またはオリゴマーヘリカーゼであってよい。換言するとヘリカーゼは、機能するために二量体などの多量体またはオリゴマーを形成する必要がある場合がある。そのような実施形態においては2つ以上の部分は、異なる単量体上であることはできない。ヘリカーゼは、好ましくは単量体である。換言するとヘリカーゼは、好ましくは機能するために二量体などの多量体またはオリゴマーを形成する必要はない。Hel308、RecD、TraIおよびXPDヘリカーゼは、全て単量体ヘリカーゼである。これらは下により詳細に考察される。ヘリカーゼがオリゴマー/多量体性または単量体であるかどうかを決定するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、ヘリカーゼを使用する放射線標識または蛍光標識ポリヌクレオチドの巻き戻しの動態は、調査できる。代替的にヘリカーゼは、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して分析できる。
単量体ヘリカーゼは、一緒に付着しているいくつかのドメインを含んでよい。例えばTraIヘリカーゼおよびTraIサブグループヘリカーゼは2つのRecDヘリカーゼドメイン、レラクサーゼ(relaxase)ドメインおよびC末端ドメインを含有する場合がある。ドメインは、オリゴマーを形成することなく機能できる単量体ヘリカーゼを典型的には形成する。2つ以上の部分は、単量体ヘリカーゼの同じまたは異なるドメイン上に存在できる。本発明による修飾のために好適な未修飾ヘリカーゼは、好ましくは内部ヌクレオチドで標的ポリヌクレオチドに結合できる。内部ヌクレオチドは上に定義されている。
一般に内部ヌクレオチドで結合できるヘリカーゼは、末端ヌクレオチドでも結合できるが、いくつかのヘリカーゼについて内部ヌクレオチドで結合する傾向は、他よりも大きい。本発明による修飾に好適な未修飾ヘリカーゼは、ポリヌクレオチドへのその結合の典型的には少なくとも10%が内部ヌクレオチドにである。典型的には、その結合の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%が内部ヌクレオチドにである。末端ヌクレオチドでの結合は、末端ヌクレオチドおよび隣接ヌクレオチドの両方へ結合を同時に含み得る。本発明の目的のためにこれは、内部ヌクレオチドでの標的ポリヌクレオチドへの結合ではない。換言すると本発明を使用する修飾のためのヘリカーゼは、1つまたは複数の隣接内部ヌクレオチドとの組合せで末端ヌクレオチドに結合できるだけではない。ヘリカーゼは、末端ヌクレオチドに同時に結合することなく内部ヌクレオチドに結合できる。
内部ヌクレオチドで結合できるヘリカーゼは、1個より多い内部ヌクレオチドに結合できる。典型的にはヘリカーゼは、少なくとも2個の内部ヌクレオチド、例えば少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個または少なくとも15個の内部ヌクレオチドに結合する。典型的にはヘリカーゼは、少なくとも2個の隣接する内部ヌクレオチド、例えば少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個または少なくとも15個の隣接する内部ヌクレオチドに結合する。少なくとも2個の内部ヌクレオチドは、隣接または非隣接であってよい。
本発明による修飾が、内部ヌクレオチドからの解離が妨げられるように開口部を閉じる場合、未修飾ヘリカーゼが末端ヌクレオチドに少なくともいくらか結合できることは好ましい。これは、修飾ヘリカーゼがポリヌクレオチドの一方の末端に結合し、その全長に沿ったポリヌクレオチドの移動を解離することなく制御することを可能にする。最終的にヘリカーゼは、それが結合したのとは反対の末端でポリヌクレオチドから解離する。
内部ヌクレオチドでポリヌクレオチドに結合するヘリカーゼの能力は、競合アッセイを実行することによって決定できる。対照ポリヌクレオチドAに結合するヘリカーゼの能力は、同じだが末端ヌクレオチドに付着しているブロッキング基を含むポリヌクレオチド(ポリヌクレオチドB)に結合する能力と比較される。ブロッキング基は、鎖Bの末端ヌクレオチドでのいかなる結合も妨げ、それによりヘリカーゼの内部結合だけを可能にする。代替的に、内部ヌクレオチドに結合するヘリカーゼの能力は、環状ポリヌクレオチドを使用してもアッセイできる。
内部ヌクレオチドで結合できるヘリカーゼの例は、これだけに限らないが、Hel308Tga、Hel308MhuおよびHel308Csyを含む。したがってヘリカーゼは、好ましくは(a)Hel308Tga(すなわち配列番号33)の配列もしくはその変種または(b)Hel308Csy(すなわち配列番号22)の配列もしくはその変種または(c)Hel308Mhu(すなわち配列番号52)の配列もしくはその変種を含む。これらの配列の変種は、下により詳細に考察される。変種は、上に考察したとおり付着を促進するために1つもしくは複数の置換システイン残基および/または1つもしくは複数の置換Faz残基を好ましくは含む。
ヘリカーゼは、好ましくはHel308ヘリカーゼである。本発明に従って、任意のHel308ヘリカーゼを使用し得る。Hel308ヘリカーゼはski2様ヘリカーゼとしても公知であり、2つの用語は互換的に用いられ得る。好適なHel308ヘリカーゼは、米国特許出願第61,549,998号の表4および第61/599,244ならびに国際出願第PCT/GB2012/052579号(WO2013/057495として公開)に開示されている。
Hel308ヘリカーゼは、アミノ酸モチーフQ−X1−X2−G−R−A−G−R(本明細書以下でHel308モチーフと称する;配列番号8)を典型的には含む。Hel308モチーフは、典型的にはヘリカーゼモチーフVIの部分である(Tuteja and Tuteja、Eur.J.Biochem.271 1849-1863(2004))。X1は、C、MまたはLであってよい。X1は、好ましくはCである。X2は、任意のアミノ酸残基であってよい。X2は、典型的には疎水性または中性残基である。X2は、A、F、M、C、V、L、I、S、T、PまたはRであってよい。X2は、好ましくはA、F、M、C、V、L、I、S、TまたはPである。X2は、より好ましくはA、MまたはLである。X2は、最も好ましくはAまたはMである。
Hel308ヘリカーゼは、好ましくはモチーフQ−X1−X2−G−R−A−G−R−P(本明細書以下で伸張されたHel308モチーフと称される;配列番号9)を含み、式中X1およびX2は上に記載のとおり。
最も好ましいHel308ヘリカーゼ、Hel308モチーフおよび伸張されたHel308モチーフは、下の表1に示される。
最も好ましいHel308モチーフは、配列番号17に示されている。最も好ましい伸長されたHel308モチーフは、配列番号18に示されている。
Hel308ヘリカーゼは、配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55もしくは58の配列またはその変種を好ましくは含む。
Hel308ヘリカーゼではポリヌクレオチドドメインおよび開口部は、ドメイン2(ATPaseドメインの1つ)とドメイン4(ラッチェットドメイン)の間およびドメイン2とドメイン5(分子ブレーキ)の間に見出すことができる。本発明により繋がれている2つ以上の部分は、好ましくは(a)ドメイン2中の任意のアミノ酸とドメイン4中の任意のアミノ酸または(b)ドメイン2中の任意のアミノ酸とドメイン5中の任意のアミノ酸とである。種々のHel308ヘリカーゼにおいてドメイン2、4および5を定義するアミノ酸残基は、下の表2に記載されている。
Hel308ヘリカーゼは、Hel308Mbu(すなわち配列番号10)の配列またはその変種を好ましくは含む。Hel308Mbuではポリヌクレオチドドメインおよび開口部は、ドメイン2(ATPaseドメインの1つ)とドメイン4(ラッチェットドメイン)の間およびドメイン2とドメイン5(分子ブレーキ)の間に見出すことができる。Hel308Mbuの繋がれている2つ以上の部分は、好ましくは(a)ドメイン2中の任意のアミノ酸とドメイン4中の任意のアミノ酸または(b)ドメイン2中の任意のアミノ酸とドメイン5中の任意のアミノ酸とである。Hel308Mbuにおいてドメイン2、4および5を定義するアミノ酸残基は、上の表2に記載されている。繋がれているHel308Mbuの2つ以上の部分は配列番号10中の好ましくはアミノ酸284と615とである。これらのアミノ酸は、それらがシステイン連結によって繋がれ得るように好ましくはシステインで置換されている(すなわちE284CおよびS615C)。
本発明は、E284およびS615が修飾されている配列番号10の変種を含む変異体Hel308Mbuタンパク質も提供する。E284およびS615は好ましくは置換されている。E284およびS615は、より好ましくはシステインで置換されている(すなわちE284CおよびS615C)。変種は、E284およびS615が修飾されている限りE284およびS615以外の位置で配列番号10から異なっていてもよい。変種は、下により詳細に考察されるとおりアミノ酸同一性に基づいて配列番号10に好ましくは少なくとも30%相同性である。E284およびS615は繋がれていない。本発明の変異体Hel308Mbuタンパク質は、E284およびS615が繋がれている本発明の修飾ヘリカーゼを形成するために使用できる。
Hel308ヘリカーゼは、より好ましくは(a)Hel308Tgaの配列(すなわち、配列番号33)もしくはその変種、(b)Hel308Csyの配列(すなわち、配列番号22)もしくはその変種、または(c)Hel308Mhuの配列(すなわち配列番号52)もしくはその変種を含む。
Hel308ヘリカーゼの変種は、野生型ヘリカーゼの配列から変化しているアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持している酵素である。特に、配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55または58の変種は、配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55または58の配列から変化しているアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持している酵素である。ポリヌクレオチド結合活性は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して決定できる。好適な方法は、これだけに限らないが、蛍光偏光測定、トリプトファン蛍光および電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を含む。例えば1本鎖ポリヌクレオチドに結合する変種の能力は、実施例に記載のとおり決定できる。
変種はヘリカーゼ活性を保持している。これは、種々の方法において測定できる、例えばポリヌクレオチドに沿って移行させる変種の能力は電気生理化学、蛍光アッセイまたはATP加水分解を使用して測定され得る。
変種は、ヘリカーゼをコードするポリヌクレオチドの操作を促進するならびに/または高塩濃度および/もしくは室温でのその活性を促進する修飾を含む場合がある。変種は、上で考察したHel308モチーフまたは伸張されたHel308モチーフの外の領域において野生型ヘリカーゼとは典型的には異なる。しかし変種は、これらのモチーフ(複数可)内に修飾を含む場合がある。
配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55または58のアミノ酸配列全長にわたって、変種は好ましくは、アミノ酸同一性に基づいてその配列に対して少なくとも30%相同である。より好ましくは、変種ポリペプチドは、配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55または58のアミノ酸配列に対して、配列全長にわたるアミノ酸同一性に基づいて、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同であってよい。少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%のアミノ酸同一性が150以上のストレッチ、例えば200、300、400、500、600、700、800、900または1000以上の連続するアミノ酸にわたってあり得る(「高い相同性」)。相同性は上に記載のとおり決定される。変種は配列番号2および4を参照して下に考察したいずれの方法においても野生型配列と異なっていてよい。
配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55または58の変種は、上で表1に示されたとおり、野生型配列のHel308モチーフまたは伸張されたHel308モチーフを好ましくは含む。しかし変種は、異なる野生型配列由来のHel308モチーフまたは伸長されたHel308モチーフを含む場合がある。例えば配列番号10の変種は、Hel308モチーフまたは配列番号13から伸張されたHel308モチーフ(すなわち配列番号14または15)を含んでもよい。配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55または58の変種は、関連する野生型配列のHel308モチーフまたは伸長されたHel308モチーフ内に修飾を含む場合もある。X1およびX2での好適な修飾は、2つのモチーフを定義する際に上に考察されている。配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55または58の変種は、上に考察したとおり付着を促進するために1つもしくは複数の置換システイン残基および/または1つもしくは複数の置換Faz残基を好ましくは含む。
配列番号10の変種は、配列番号10の最初の19アミノ酸を欠失しているおよび/または配列番号10の最後の33アミノ酸を欠失している場合がある。配列番号10の変種は、配列番号10のアミノ酸20から211または20から727にアミノ酸同一性に基づいて少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%またはより好ましくは少なくとも95%、少なくとも97%もしくは少なくとも99%相同である配列を好ましくは含む。
配列番号10(Hel308Mbu)は5個の天然システイン残基を含有する。しかし、これらの残基の全ては酵素のDNA結合グローブ(grove)内または周辺に位置付けられている。DNA鎖が酵素内に結合されると、これらの天然システイン残基は、外からの修飾に関して利用しにくくなる。これは、上に考察したとおり配列番号10の特異的システイン変異体の設計を可能にし、システイン連結を使用して成分に付着できるようにする。配列番号10の好ましい変種は、次の置換:A29C、Q221C、Q442C、T569C、A577C、A700CおよびS708Cの1つまたは複数を有する。これらの位置の1つまたは複数でのシステイン残基の導入は、上に考察したとおりシステイン連結を促進する。配列番号10の他の好ましい変種は次の置換:M2Faz、R10Faz、F15Faz、A29Faz、R185Faz、A268Faz、E284Faz、Y387Faz、F400Faz、Y455Faz、E464Faz、E573Faz、A577Faz、E649Faz、A700Faz、Y720Faz、Q442FazおよびS708Fazの1つまたは複数を有する。これらの位置の1つまたは複数でのFaz残基の導入は、上に考察したとおりFaz連結を促進する。
ヘリカーゼは、好ましくはRecDヘリカーゼである。任意のRecDヘリカーゼが本発明により使用できる。RecDヘリカーゼの構造は、当技術分野において公知である(FEBS J. 2008 Apr;275(8):1835-51. Epub 2008 Mar 9. ATPase activity of RecD is essential for growth of the Antarctic Pseudomonas syringae Lz4W at low temperature. Satapathy AK、Pavankumar TL、Bhattacharjya S、Sankaranarayanan R、Ray MK; EMS Microbiol Rev. 2009 May;33(3):657-87. The diversity of conjugative relaxases and its application in plasmid classification. Garcillan-Barcia MP、Francia MV、de la Cruz F; J Biol Chem. 2011 Apr 8;286(14):12670-82. Epub 2011 Feb 2. Functional characterization of the multidomain F plasmid TraI relaxase-helicase. Cheng Y、McNamara DE、Miley MJ、Nash RP、Redinbo MR)。
RecDヘリカーゼは、アミノ酸モチーフX1−X2−X3−G−X4−X5−X6−X7(本明細書以下でRecD様モチーフIと称する;配列番号59)を典型的には含み、式中X1はG、SまたはAであり、X2は任意のアミノ酸であり、X3はP、A、SまたはGであり、X4はT、A、V、SまたはCであり、X5はGまたはAであり、X6はKまたはRおよびX7はTまたはSである。X1は好ましくはGである。X2は好ましくはG、I、YまたはAである。X2はより好ましくはGである。X3は好ましくはPまたはAである。X4は好ましくはT、A、VまたはCである。X4は好ましくはT、VまたはCである。X5は好ましくはGである。X6は好ましくはKである。X7は好ましくはTまたはSである。RecDヘリカーゼは、Q−(X8)16〜18−X1−X2−X3−G−X4−X5−X6−X7(本明細書以下で伸長されたRecD様モチーフIと称する;配列番号60、61および62)を好ましくは含み、式中X1からX7は上に定義のとおりであり、X8は任意のアミノ酸である。好ましくは伸長されたRecD様モチーフI中に16個のX8残基がある(すなわち(X8)16)(配列番号60)。(X8)16についての好適な配列は、米国特許出願第61/581,332号の配列番号14、17、20、23、26、29、32、35、38、41、44、47および50ならびに国際出願第PCT/GB2012/053274号(WO2012/098562として公開)の配列番号18、21、24、25、28、30、32、35、37、39、41、42および44で同定できる。
RecDヘリカーゼは、アミノ酸モチーフG−G−P−G−Xa−G−K−Xb(本明細書以下でRecDモチーフIと称する;配列番号63)を好ましくは含み、式中XaはT、VまたはCであり、XbはTまたはSである。Xaは好ましくはTである。Xbは好ましくはTである。RecDヘリカーゼは、配列G−G−P−G−T−G−K−T(配列番号64)を好ましくは含む。RecDヘリカーゼは、アミノ酸モチーフQ−(X8)16〜18−G−G−P−G−Xa−G−K−Xb(本明細書以下で伸長されたRecDモチーフIと称する;配列番号65、66および67)をより好ましくは含み、式中XaおよびXbは上に定義のとおりであり、X8は任意のアミノ酸である。伸長されたRecDモチーフI中に好ましくは16個のX8残基がある(すなわち(X8)16)(配列番号65)。(X8)16についての好適な配列は、米国特許出願第61/581,332号の配列番号14、17、20、23、26、29、32、35、38、41、44、47および50ならびに国際出願第PCT/GB2012/053274号(WO2012/098562として公開)の配列番号18、21、24、25、28、30、32、35、37、39、41、42および44で同定できる。
RecDヘリカーゼは、アミノ酸モチーフX1−X2−X3−X4−X5−(X6)−Q−X7(本明細書以下でRecD様モチーフVと称する;配列番号68)を典型的には含み、式中X1はY、WまたはFであり、X2はA、T、S、M、CまたはVであり、X3は任意のアミノ酸であり、X4はT、NまたはSであり、X5はA、T、G、S、VまたはIであり、X6は任意のアミノ酸であり、X7はGまたはSである。X1は好ましくはYである。X2は好ましくはA、M、CまたはVである。X2はより好ましくはAである。X3は好ましくはI、MまたはLである。X3はより好ましくはIまたはLである。X4は好ましくはTまたはSである。X4はより好ましくはTである。X5は好ましくはA、VまたはIである。X5はより好ましくはVまたはIである。X5は最も好ましくはVである。(X6)は好ましくはH−K−S、H−M−A、H−G−AまたはH−R−Sである。(X6)はより好ましくはH−K−Sである。X7は好ましくはGである。RecDヘリカーゼは、アミノ酸モチーフXa−Xb−Xc−Xd−Xe−H−K−S−Q−G(本明細書以下でRecDモチーフVと称する;配列番号69)を好ましくは含み、式中XaはY、WまたはFであり、XbはA、M、CまたはVであり、XcはI、MまたはLであり、XdはTまたはSであり、XeはVまたはIである。Xaは好ましくはYである。Xbは好ましくはAである。Xdは好ましくはTである。Xdは好ましくはVである。好ましいRecDモチーフIは米国特許出願第61/581,332号の表5に示されている。好ましいRecD様モチーフIは米国特許出願第61/581,332号の表7および国際出願第PCT/GB2012/053274号(WO2012/098562として公開)に示されている。好ましいRecD様モチーフVは米国特許出願第61/581,332号の表5および7ならびに国際出願第PCT/GB2012/053274号(WO2012/098562として公開)に示されている。
RecDヘリカーゼは、好ましくは米国特許出願第61/581,332号の表4もしくは5および国際出願第PCT/GB2012/053274号(WO2012/098562として公開)に示されているヘリカーゼの1つまたはその変種である。変種は米国特許出願第61/581,332号および国際出願第PCT/GB2012/053274号(WO2012/098562として公開)に記載されている。
RecDヘリカーゼは、好ましくはTraIヘリカーゼまたはTraIサブグループヘリカーゼである。TraIヘリカーゼおよびTraIサブグループヘリカーゼは、2つのRecDヘリカーゼドメイン、レラクサーゼドメインおよびC末端ドメインを含有する場合がある。TraIサブグループヘリカーゼは、好ましくはTrwCヘリカーゼである。TraIヘリカーゼまたはTraIサブグループヘリカーゼは、好ましくは米国特許出願第61/581,332号の表6および国際出願第PCT/GB2012/053274号(WO2012/098562として公開)に示すヘリカーゼの1つまたはその変種である。変種は、米国特許出願第61/581,332号および国際出願第PCT/GB2012/053274号(WO2012/098562として公開)に記載されている。
TraIヘリカーゼまたはTraIサブグループヘリカーゼは、上に定義のRecD様モチーフI(配列番号59)および/または上に定義のRecD様モチーフV(配列番号68)を典型的には含む。TraIヘリカーゼまたはTraIサブグループヘリカーゼは、RecD様モチーフI(配列番号59)およびRecD様モチーフV(配列番号68)の両方を好ましくは含む。TraIヘリカーゼまたはTraIサブグループヘリカーゼは、次の2つのモチーフの1つを典型的にはさらに含む:
− アミノ酸モチーフH−(X1)−X2−R−(X3)5〜12−H−X4−H(本明細書以下でMobFモチーフIIIと称する;配列番号70から77)、式中X1およびX2は任意のアミノ酸であり、X2およびX4はD、E、KおよびRを除く任意のアミノ酸から独立に選択される。(X1)は当然ながらX1a−X1bである。X1aおよびX1bは、同じまたは異なるアミノ酸であってよい。X1aは、好ましくはDまたはEである。X1bは、好ましくはTまたはDである。(X1)は、好ましくはDTまたはEDである。(X1)は、最も好ましくはDTである。(X3)5〜12中の5から12個のアミノ酸は同じまたは異なっていてよい。X2およびX4はG、P、A、V、L、I、M、C、F、Y、W、H、Q、N、SおよびTから独立に選択される。X2およびX4は、好ましくは荷電していない。X2およびX4は、好ましくはHではない。X2は、より好ましくはN、SまたはAである。X2は、最も好ましくはNである。X4は、最も好ましくはFまたはTである。(X3)5〜12は、好ましくは長さ6または10残基である。(X3)5〜12の好適な実施形態は、米国特許出願第61/581,332号の表7に示す配列番号58、62、66および70、ならびに国際出願第PCT/GB2012/053274号(WO2012/098562として公開)の配列番号61、65、69、73、74、82、86、90、94、98、102、110、112、113、114、117、121、124、125、129、133、136、140、144、147、151、152、156、160、164および168由来であってよい。
− アミノ酸モチーフG−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−H−(X8)6〜12−H−X9(本明細書以下でMobQモチーフIIIと称する;配列番号78から84)、式中X1、X2、X3、X5、X6、X7およびX9はD、E、KおよびRを除く任意のアミノ酸から独立に選択され、X4はDまたはEであり、X8は任意のアミノ酸である。X1、X2、X3、X5、X6、X7およびX9はG、P、A、V、L、I、M、C、F、Y、W、H、Q、N、SおよびTから独立に選択される。X1、X2、X3、X5、X6、X7およびX9は、好ましくは荷電していない。X1、X2、X3、X5、X6、X7およびX9は、好ましくはHではない。(X8)6〜12中の6から12個のアミノ酸は、同じまたは異なっていてよい。好ましいMobFモチーフIIIは、米国特許出願第61/581,332号の表7および国際出願第PCT/GB2012/053274号(WO2012/098562として公開)に示されている。
TraIヘリカーゼまたはTraIサブグループヘリカーゼは、より好ましくは米国特許出願第61/581,332号の表6または7および国際出願第PCT/GB2012/053274号(WO2012/098562として公開)に示すヘリカーゼの1つまたはその変種である。TraIヘリカーゼは、配列番号85に示す配列またはその変種を最も好ましくは含む。配列番号85はTraI Eco(NCBI参照配列:NP_061483.1;Genbank AAQ98619.1;配列番号85)である。TraI Ecoは、次のモチーフ:RecD様モチーフI(GYAGVGKT;配列番号86)、RecD様モチーフV(YAITAHGAQG;配列番号87)およびMob FモチーフIII(HDTSRDQEPQLHTH;配列番号88)を含む。
TraIヘリカーゼまたはTraIサブグループヘリカーゼは、下の表3に示すヘリカーゼの1つの配列、すなわち配列番号85、126、134および138の1つまたはその変種をより好ましくは含む。
繋がれているTrwC Cbaの2つ以上の部分は、好ましくは(a)配列番号126中のアミノ酸691および346;(b)配列番号126中のアミノ酸657および339;(c)配列番号126中のアミノ酸691および350;または(d)配列番号126中のアミノ酸690および350である。これらのアミノ酸は、それらがシステイン連結で繋がれ得るように、システインで好ましくは置換されている。
本発明はアミノ酸691および346;657および339;691および350;または690および350が修飾されている配列番号126の変種を含む変異体TrwC Cbaタンパク質も提供する。アミノ酸は好ましくは置換されている。アミノ酸は、より好ましくはシステインで置換されている。変種は、関連するアミノ酸が修飾されている限り、691および346;657および339;691および350;または690および350以外の位置で配列番号126とは異なっていてよい。変種は、下により詳細に考察されるとおりアミノ酸同一性に基づいて配列番号126に好ましくは少なくとも10%相同性である。アミノ酸691および346;657および339;691および350;または690および350は、繋がれていない。本発明の変異体TrwC Cbaタンパク質は、修飾されるアミノ酸が繋がれている本発明の修飾ヘリカーゼを形成するために使用できる。
RecDヘリカーゼ、TraIヘリカーゼまたはTraIサブグループヘリカーゼの変種は、野生型ヘリカーゼのものから変化しているアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持している酵素である。これは、上に記載のとおり測定され得る。具体的には配列番号85、126、134または138の変種は、配列番号85、126、134または138のものから変化しているアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持している酵素である。変種は、ヘリカーゼ活性を保持している。変種は、下に考察する2つのモードの少なくとも1つで作動しなければならない。好ましくは、変種は両方のモードで作動する。変種は、ヘリカーゼをコードするポリヌクレオチドの操作を促進するならびに/または高塩濃度および/もしくは室温でのその活性を促進する修飾を含む場合がある。変種は、上で考察したモチーフの外の領域において野生型ヘリカーゼとは典型的には異なる。しかし変種は、これらのモチーフ(複数可)内に修飾を含む場合がある。
配列番号85、126、134および138の任意の1つのアミノ酸配列の全長にわたって、変種はアミノ酸同一性に基づいてその配列に好ましくは少なくとも10%相同性である。より好ましくは変種ポリペプチドは、配列全長にわたるアミノ酸同一性に基づいて配列番号85、126、134および138の任意の1つのアミノ酸配列に少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同性であってよい。少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%のアミノ酸同一性が150以上のストレッチ、例えば200、300、400、500、600、700、800、900または1000以上の連続するアミノ酸にわたってあり得る(「高い相同性」)。相同性は上に記載のとおり決定される。変種は配列番号2および4を参照して上に考察したいずれの方法においても野生型配列と異なっていてよい。
配列番号85、126、134および138の任意の1つの変種は、野生型配列のRecD様モチーフIおよび/またはRecD様モチーフVを好ましくは含む。しかし配列番号85、126、134または138の変種は、野生型配列とは異なるRecD様モチーフIおよび/または伸長されたRecD様モチーフVを含んでよい。例えば変種は、米国特許出願第61/581,332号の表5および7ならびに国際出願第PCT/GB2012/053274号(WO2012/098562として公開)に示す好ましいモチーフの任意の1つを含んでよい。配列番号85、126、134および138の変種は、野生型配列のRecD様モチーフIおよびV内に修飾を含んでよい。配列番号85、126、134または138の変種は、上に考察したとおり付着を促進するために1つもしくは複数の置換システイン残基および/または1つもしくは複数の置換Faz残基を好ましくは含む。
ヘリカーゼは好ましくはXPDヘリカーゼである。任意のXPDヘリカーゼが本発明により使用できる。XPDヘリカーゼはRad3ヘリカーゼとしても公知であり、2つの用語は互換的に使用できる。
XPDヘリカーゼの構造は、当技術分野において公知である(Cell. 2008 May 30;133(5):801-12. Structure of the DNA repair helicase XPD. Liu H、Rudolf J、Johnson KA、McMahon SA、Oke M、Carter L、McRobbie AM、Brown SE、Naismith JH、White MF)。XPDヘリカーゼは、アミノ酸モチーフX1−X2−X3−G−X4−X5−X6−E−G(本明細書以下でXPDモチーフVと称する;配列番号89)を典型的には含む。X1、X2、X5およびX6はD、E、KおよびRを除く任意のアミノ酸から独立に選択される。X1、X2、X5およびX6は、G、P、A、V、L、I、M、C、F、Y、W、H、Q、N、SおよびTから独立に選択される。X1、X2、X5およびX6は、好ましくは荷電していない。X1、X2、X5およびX6は、好ましくはHではない。X1は、より好ましくはV、L、I、SまたはYである。X5は、より好ましくはV、L、I、NまたはFである。X6は、より好ましくはSまたはAである。X3およびX4は、任意のアミノ酸残基であってよい。X4は、好ましくはK、RまたはTである。
XPDヘリカーゼは、アミノ酸モチーフQ−Xa−Xb−G−R−Xc−Xd−R−(Xe)−Xf−(Xg)−D−Xh−R(本明細書以下でXPDモチーフVIと称する;配列番号90)を典型的には含む。Xa、XeおよびXgは任意のアミノ酸残基であってよい。Xb、XcおよびXdはD、E、KおよびRを除く任意のアミノ酸から独立に選択される。Xb、XcおよびXdは、典型的にはG、P、A、V、L、I、M、C、F、Y、W、H、Q、N、SおよびTから独立に選択される。Xb、XcおよびXdは、好ましくは荷電していない。Xb、XcおよびXdは、好ましくはHではない。Xbは、より好ましくはV、A、L、IまたはMである。Xcは、より好ましくはV、A、L、I、MまたはCである。Xdは、より好ましくはI、H、L、F、MまたはVである。Xfは、DまたはEであってよい。(Xg)はXg1、Xg2、Xg3、Xg4、Xg5、Xg6およびXg7である。Xg2は、好ましくはG、A、SまたはCである。Xg5は、好ましくはF、V、L、I、M、A、WまたはYである。Xg6は、好ましくはL、F、Y、M、IまたはVである。Xg7は、好ましくはA、C、V、L、I、MまたはSである。
XPDヘリカーゼは、XPDモチーフVおよびVIを好ましくは含む。最も好ましいXPDモチーフVおよびVIは、米国特許出願第61/581,340号の表5および国際出願第PCT/GB2012/053273号(WO2012/098561として公開)に示されている。
XPDヘリカーゼは、硫化鉄(FeS)コアを2つのウォーカーAおよびBモチーフ(モチーフIおよびII)の間に好ましくはさらに含む。FeSコアは、システイン残基のスルフィド基の間に配位した鉄原子を典型的には含む。FeSコアは、典型的には四面体である。
XPDヘリカーゼは、好ましくは米国特許出願第61/581,340号の表4または5および国際出願第PCT/GB2012/053273号(WO2012/098561として公開)に示されているヘリカーゼの1つまたはその変種である。XPDヘリカーゼは、配列番号91に示されている配列またはその変種を最も好ましくは含む。配列番号91は、XPD Mbu(メタノコッコイデス・ブルトニイ(Methanococcoides burtonii);YP_566221.1;GI:91773529)である。XPD Mbuは、YLWGTLSEG(モチーフV;配列番号92)およびQAMGRVVRSPTDYGARILLDGR(モチーフVI;配列番号93)を含む。
XPDヘリカーゼの変種は、野生型ヘリカーゼのものから変化しているアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持している酵素である。これは、上に記載のとおり測定され得る。具体的には配列番号91の変種は、配列番号91のものから変化しているアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持している酵素である。変種は、ヘリカーゼ活性を保持している。変種は、下に考察する2つのモードの少なくとも1つで作動しなければならない。好ましくは、変種は両方のモードで作動する。変種は、ヘリカーゼをコードするポリヌクレオチドの操作を促進するならびに/または高塩濃度および/もしくは室温でのその活性を促進する修飾を含む場合がある。変種は、上で考察したXPDモチーフVおよびVIの外の領域において野生型ヘリカーゼとは典型的には異なる。しかし変種は、これらのモチーフの1つまたは両方の内に修飾を含む場合がある。
配列番号91のアミノ酸配列の全長にわたって、配列番号10などの変種は、アミノ酸同一性に基づいてその配列に好ましくは少なくとも10%、好ましくは30%相同性である。より好ましくは変種ポリペプチドは、配列番号91のアミノ酸配列に配列全体にわたるアミノ酸同一性に基づいて少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同性であってよい。少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%のアミノ酸同一性が150以上のストレッチ、例えば200、300、400、500、600、700、800、900または1000以上の連続するアミノ酸にわたってあり得る(「高い相同性」)。相同性は上に記載のとおり決定される。変種は配列番号2および4を参照して上に考察したいずれの方法においても野生型配列と異なっていてよい。
配列番号91の変種は、野生型配列のXPDモチーフVおよび/またはXPDモチーフVIを好ましくは含む。配列番号91の変種は、配列番号91のXPDモチーフVおよびVIの両方をより好ましくは含む。しかし、配列番号91の変種は、野生型配列とは異なるXPDモチーフVおよび/またはVIを含む場合がある。例えば、配列番号91の変種は、米国特許出願第61/581,340号の表5および国際出願第PCT/GB2012/053273号(WO2012/098561として公開)に示されている好ましいモチーフの任意の1つを含む場合がある。配列番号91の変種は、野生型配列のXPDモチーフVおよび/またはXPDモチーフVI内に修飾も含む場合がある。これらのモチーフへの好適な修飾は、2つのモチーフを定義する際に上に考察されている。配列番号91の変種は、上に考察したとおり付着を促進するために1つもしくは複数の置換システイン残基および/または1つもしくは複数の置換Faz残基を好ましくは含む。
修飾Hel308ヘリカーゼ
本発明は、ポリヌクレオチドの移動を制御するために有用である修飾Hel308ヘリカーゼも提供する。本発明によりヘリカーゼは、Hel308Mbu(配列番号10)中のD272、N273、D274、G281、E284、E285、E287、S288、T289、G290、E291、D293、T294、N300、R303、K304、N314、S315、N316、H317、R318、K319、L320、E322、R326、N328、S615、K717、Y720、N721およびS724に対応する1つまたは複数の位置への1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸の導入によって修飾され、ここでヘリカーゼはポリヌクレオチドの移動を制御する能力を保持している。1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸は、好ましくは置換によって導入される。
これらの修飾は、ポリヌクレオチドへの結合についてヘリカーゼを妨げない。例えばヘリカーゼは、内部ヌクレオチドを介してまたはその末端の1つでポリヌクレオチドに結合できる。これらの修飾は、ヘリカーゼから、特にポリヌクレオチドの内部ヌクレオチドから解離するまたは離されるポリヌクレオチドの能力を減少させる。換言すると1つまたは複数の修飾は、ポリヌクレオチド鎖からの離脱を妨げることによってHel308ヘリカーゼの前進性を増大させる。酵素の熱安定性も1つまたは複数の修飾によって増大され、鎖配列決定法において有益である改善された構造的安定性をもたらす。本発明の修飾Hel308ヘリカーゼは、上に考察した全ての有利点および使用を有する。
修飾Hel308ヘリカーゼは、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を有する。これは、上に考察したとおり測定できる。修飾Hel308ヘリカーゼは人工または非天然である。
本発明の修飾Hel308ヘリカーゼは、上に考察したとおり、単離、実質的に単離、精製または実質的に精製されていてよい。
Hel308ヘリカーゼは、Hel308Mbu(配列番号10)中のD272、N273、D274、G281、E284、E285、E287、S288、T289、G290、E291、D293、T294、N300、R303、K304、N314、S315、N316、H317、R318、K319、L320、E322、R326、N328、S615、K717、Y720、N721およびS724に対応する位置の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む、上の表1に示すヘリカーゼの1つの変種を好ましくは含む。Hel308ヘリカーゼは、Hel308Mbu(配列番号10)中のD272、N273、D274、G281、E284、E285、E287、S288、T289、G290、E291、D293、T294、N300、R303、K304、N314、S315、N316、H317、R318、K319、L320、E322、R326、N328、S615、K717、Y720、N721およびS724に対応する位置の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む、配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55および58の1つの変種を好ましくは含む。
Hel308ヘリカーゼは、Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、E287、S288、T289、G290、E291、N316、K319、S615、K717またはY720に対応する位置の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む、配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55および58の1つの変種を好ましくは含む。
下の表4aおよび4bは、Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288、S615、K717、Y720、E287、T289、G290、E291、N316およびK319に対応する、他のHel308ヘリカーゼにおける位置を示す。例えば、Hel308 Hvo(配列番号16)では、E283はHel308MbuにおけるD274に対応し、E293はHel308MbuにおけるE284に対応し、I294はHel308MbuにおけるE285に対応し、V297はHel308MbuにおけるS288に対応し、D671はHel308MbuにおけるS615に対応し、K775はHel308MbuにおけるK717に対応し、およびE778はHel308MbuにおけるY720に対応する。別のHel308ヘリカーゼにおける対応する位置の欠如は「−」と印を付ける。
Hel308ヘリカーゼは、Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288、S615、K717およびY720に対応する位置の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む、配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55および58の1つの変種をより好ましくは含む。関連する位置は、上の表4aのカラムAからGに示されている。
ヘリカーゼは、Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288、S615、K717およびY720に対応する位置の1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個にシステイン残基を含んでよい。これらの位置の任意の組合せは、システインで置換されてよい。例えば上の表4aの各列について本発明のヘリカーゼは、列においてAからGと標識の位置の次の組合せのいずれにもシステインを含んでよい:{A}、{B}、{C}、{D}、{G}、{E}、{F}、{AおよびB}、{AおよびC}、{AおよびD}、{AおよびG}、{AおよびE}、{AおよびF}、{BおよびC}、{BおよびD}、{BおよびG}、{BおよびE}、{BおよびF}、{CおよびD}、{CおよびG}、{CおよびE}、{CおよびF}、{DおよびG}、{DおよびE}、{DおよびF}、{GおよびE}、{GおよびF}、{EおよびF}、{A、BおよびC}、{A、BおよびD}、{A、BおよびG}、{A、BおよびE}、{A、BおよびF}、{A、CおよびD}、{A、CおよびG}、{A、CおよびE}、{A、CおよびF}、{A、DおよびG}、{A、DおよびE}、{A、DおよびF}、{A、GおよびE}、{A、GおよびF}、{A、EおよびF}、{B、CおよびD}、{B、CおよびG}、{B、CおよびE}、{B、CおよびF}、{B、DおよびG}、{B、DおよびE}、{B、DおよびF}、{B、GおよびE}、{B、GおよびF}、{B、EおよびF}、{C、DおよびG}、{C、DおよびE}、{C、DおよびF}、{C、GおよびE}、{C、GおよびF}、{C、EおよびF}、{D、GおよびE}、{D、GおよびF}、{D、EおよびF}、{G、EおよびF}、{A、B、CおよびD}、{A、B、CおよびG}、{A、B、CおよびE}、{A、B、CおよびF}、{A、B、DおよびG}、{A、B、DおよびE}、{A、B、DおよびF}、{A、B、GおよびE}、{A、B、GおよびF}、{A、B、EおよびF}、{A、C、DおよびG}、{A、C、DおよびE}、{A、C、DおよびF}、{A、C、GおよびE}、{A、C、GおよびF}、{A、C、EおよびF}、{A、D、GおよびE}、{A、D、GおよびF}、{A、D、EおよびF}、{A、G、EおよびF}、{B、C、DおよびG}、{B、C、DおよびE}、{B、C、DおよびF}、{B、C、GおよびE}、{B、C、GおよびF}、{B、C、EおよびF}、{B、D、GおよびE}、{B、D、GおよびF}、{B、D、EおよびF}、{B、G、EおよびF}、{C、D、GおよびE}、{C、D、GおよびF}、{C、D、EおよびF}、{C、G、EおよびF}、{D、G、EおよびF}、{A、B、C、DおよびG}、{A、B、C、DおよびE}、{A、B、C、DおよびF}、{A、B、C、GおよびE}、{A、B、C、GおよびF}、{A、B、C、EおよびF}、{A、B、D、GおよびE}、{A、B、D、GおよびF}、{A、B、D、EおよびF}、{A、B、G、EおよびF}、{A、C、D、GおよびE}、{A、C、D、GおよびF}、{A、C、D、EおよびF}、{A、C、G、EおよびF}、{A、D、G、EおよびF}、{B、C、D、GおよびE}、{B、C、D、GおよびF}、{B、C、D、EおよびF}、{B、C、G、EおよびF}、{B、D、G、EおよびF}、{C、D、G、EおよびF}、{A、B、C、D、GおよびE}、{A、B、C、D、GおよびF}、{A、B、C、D、EおよびF}、{A、B、C、G、EおよびF}、{A、B、D、G、EおよびF}、{A、C、D、G、EおよびF}、{B、C、D、G、EおよびF}、または{A、B、C、D、G、EおよびF}。
ヘリカーゼは、Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288、S615、K717およびY720に対応する位置の1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個にFazなどの非天然アミノ酸を含んでよい。これらの位置の任意の組合せは、Fazなどの非天然アミノ酸で置換されてよい。例えば上の表4aの各列について本発明のヘリカーゼは、上にAからGと標識の位置の任意の組合せにFazなどの非天然アミノ酸を含んでよい。
ヘリカーゼは、Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288、S615、K717およびY720に対応する位置の2つ以上に1つまたは複数のシステインおよび1つまたは複数のFazなどの非天然アミノ酸の組合せを含んでよい。1つまたは複数のシステイン残基および1つまたは複数のFazなどの非天然アミノ酸の任意の組合せが関連する位置に存在してよい。例えば上の表4aおよび4bの各列について本発明のヘリカーゼは、上にAからGと標識の位置の任意の組合せに1つまたは複数のシステインおよび1つまたは複数のFazなどの非天然アミノ酸を含んでよい。
Hel308ヘリカーゼは、Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288およびS615に対応する位置の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む、配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55および58の1つの変種をより好ましくは含む。関連する位置は、上の表4aのカラムAからEに示されている。
ヘリカーゼは、Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288、S615、K717およびY720に対応する位置の1個、2個、3個、4個または5個、6個または7個にシステイン残基を含んでよい。これらの位置の任意の組合せは、システインで置換されてよい。例えば上の表4aの各列について本発明のヘリカーゼは、その列にAからEと標識の位置の次の組合せ:{A}、{B}、{C}、{D}、{E}、{AおよびB}、{AおよびC}、{AおよびD}、{AおよびE}、{BおよびC}、{BおよびD}、{BおよびE}、{CおよびD}、{CおよびE}、{DおよびE}、{A、BおよびC}、{A、BおよびD}、{A、BおよびE}、{A、CおよびD}、{A、CおよびE}、{A、DおよびE}、{B、CおよびD}、{B、CおよびE}、{B、DおよびE}、{C、DおよびE}、{A、B、CおよびD}、{A、B、CおよびE}、{A、B、DおよびE}、{A、C、DおよびE}、{B、C、DおよびE}または{A、B、C、DおよびE}のいずれにもシステインを含んでよい。
ヘリカーゼは、Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288、S615、K717およびY720に対応する位置の1個、2個、3個、4個または5個にFazなどの非天然アミノ酸を含んでよい。これらの位置の任意の組合せは、Fazなどの非天然アミノ酸で置換されてよい。例えば上の表4aの各列について本発明のヘリカーゼは、上にAからEと標識の位置の任意の組合せにFazなどの非天然アミノ酸を含んでよい。
ヘリカーゼは、Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288およびS615に対応する位置の2つ以上に1つまたは複数のシステインおよび1つまたは複数のFazなどの非天然アミノ酸の組合せを含んでよい。1つまたは複数のシステイン残基および1つまたは複数のFazなどの非天然アミノ酸の任意の組合せは、関連する位置に存在してよい。例えば上の表4aの各列について本発明のヘリカーゼは、上にAからEと標識の位置の任意の組合せに1つまたは複数のシステインおよび1つまたは複数のFazなどの非天然アミノ酸を含んでよい。
Hel308ヘリカーゼはD272、N273、D274、G281、E284、E285、E287、S288、T289、G290、E291、D293、T294、N300、R303、K304、N314、S315、N316、H317、R318、K319、L320、E322、R326、N328、S615、K717、Y720、N721およびS724に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含むHel308Mbu(すなわち配列番号10)の配列の変種を好ましくは含む。変種は好ましくはD272C、N273C、D274C、G281C、E284C、E285C、E287C、S288C、T289C、G290C、E291C、D293C、T294C、N300C、R303C、K304C、N314C、S315C、N316C、H317C、R318C、K319C、L320C、E322C、R326C、N328C、S615C、K717C、Y720C、N721CまたはS724Cを含む。変種は好ましくはD272Faz、N273Faz、D274Faz、G281Faz、E284Faz、E285Faz、E287Faz、S288Faz、T289Faz、G290Faz、E291Faz、D293Faz、T294Faz、N300Faz、R303Faz、K304Faz、N314Faz、S315Faz、N316Faz、H317Faz、R318Faz、K319Faz、L320Faz、E322Faz、R326Faz、N328Faz、S615Faz、K717Faz、Y720Faz、N721FazまたはS724Fazを含む。
Hel308ヘリカーゼは、D274、E284、E285、S288、S615、K717およびY720に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含むHel308Mbu(すなわち配列番号10)の配列の変種を好ましくは含む。本発明のヘリカーゼは、上にAからGと標識の位置の任意の組合せに1つまたは複数のシステイン、1つまたは複数のFazなどの非天然アミノ酸またはこれらの組合せを含んでよい。
Hel308ヘリカーゼは、D274、E284、E285、S288およびS615の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含むHel308Mbu(すなわち配列番号10)の配列の変種を好ましくは含む。例えばHel308Mbu(配列番号10)に関して、本発明のヘリカーゼは、位置の次の組合せ:{D274}、{E284}、{E285}、{S288}、{S615}、{D274およびE284}、{D274およびE285}、{D274およびS288}、{D274およびS615}、{E284およびE285}、{E284およびS288}、{E284およびS615}、{E285およびS288}、{E285およびS615}、{S288およびS615}、{D274、E284およびE285}、{D274、E284およびS288}、{D274、E284およびS615}、{D274、E285およびS288}、{D274、E285およびS615}、{D274、S288およびS615}、{E284、E285およびS288}、{E284、E285およびS615}、{E284、S288およびS615}、{E285、S288およびS615}、{D274、E284、E285およびS288}、{D274、E284、E285およびS615}、{D274、E284、S288およびS615}、{D274、E285、S288およびS615}、{E284、E285、S288およびS615}または{D274、E284、E285、S288およびS615}のいずれにもシステインまたはFazなどの非天然アミノ酸を含んでよい。
ヘリカーゼは、(a)E284CおよびS615C、(b)E284FazおよびS615Faz、(c)E284CおよびS615Fazまたは(d)E284FazおよびS615Cを含む配列番号10の変種を好ましくは含む。
ヘリカーゼは、E284CおよびS615Cを含む配列番号10に示される配列をより好ましくは含む。
本発明における使用のための好ましい非天然アミノ酸は、これだけに限らないが4−アジド−L−フェニルアラニン(Faz)、4−アセチル−L−フェニルアラニン、3−アセチル−L−フェニルアラニン、4−アセトアセチル−L−フェニルアラニン、O−アリル−L−チロシン、3−(フェニルセラニル)−L−アラニン、O−2−プロピン−1−イル−L−チロシン、4−(ジヒドロキシボリル)−L−フェニルアラニン、4−[(エチルスルファニル)カルボニル]−L−フェニルアラニン、(2S)−2−アミノ−3−{4−[(プロパン−2−イルスルファニル)カルボニル]フェニル}プロパン酸、(2S)−2−アミノ−3−{4−[(2−アミノ−3−スルファニルプロパノイル)アミノ]フェニル}プロパン酸、O−メチル−L−チロシン、4−アミノ−L−フェニルアラニン、4−シアノ−L−フェニルアラニン、3−シアノ−L−フェニルアラニン、4−フルオロ−L−フェニルアラニン、4−ヨード−L−フェニルアラニン、4−ブロモ−L−フェニルアラニン、O−(トリフルオロメチル)チロシン、4−ニトロ−L−フェニルアラニン、3−ヒドロキシ−L−チロシン、3−アミノ−L−チロシン、3−ヨード−L−チロシン、4−イソプロピル−L−フェニルアラニン、3−(2−ナフチル)−L−アラニン、4−フェニル−L−フェニルアラニン、(2S)−2−アミノ−3−(ナフタレン−2−イルアミノ)プロパン酸、6−(メチルスルファニル)ノルロイシン、6−オキソ−L−リシン、D−チロシン、(2R)−2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸、(2R)−2−アンモニオオクタノエート3−(2,2’−ビピリジン−5−イル)−D−アラニン、2−アミノ−3−(8−ヒドロキシ−3−キノリル)プロパン酸、4−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、S−(2−ニトロベンジル)システイン、(2R)−2−アミノ−3−[(2−ニトロベンジル)スルファニル]プロパン酸、(2S)−2−アミノ−3−[(2−ニトロベンジル)オキシ]プロパン酸、O−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)−L−セリン、(2S)−2−アミノ−6−({[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}アミノ)ヘキサン酸、O−(2−ニトロベンジル)−L−チロシン、2−ニトロフェニルアラニン、4−[(E)−フェニルジアゼニル]−L−フェニルアラニン、4−[3−(トリフルオロメチル)−3H−ジアジレン−3−イル]−D−フェニルアラニン、2−アミノ−3−[[5−(ジメチルアミノ)−1−ナフチル]スルホニルアミノ]プロパン酸、(2S)−2−アミノ−4−(7−ヒドロキシ−2−オキソ−2H−クロメン−4−イル)ブタン酸、(2S)−3−[(6−アセチルナフタレン−2−イル)アミノ]−2−アミノプロパン酸、4−(カルボキシメチル)フェニルアラニン、3−ニトロ−L−チロシン、O−スルホ−L−チロシン、(2R)−6−アセトアミド−2−アンモニオヘキサノエート、1−メチルヒスチジン、2−アミノノナン酸、2−アミノデカン酸、L−ホモシステイン、5−スルファニルノルバリン、6−スルファニル−L−ノルロイシン、5−(メチルスルファニル)−L−ノルバリン、N−{[(2R,3R)−3−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール−2−イル]カルボニル}−L−リシン、N−[(ベンジルオキシ)カルボニル]リシン、(2S)−2−アミノ−6−[(シクロペンチルカルボニル)アミノ]ヘキサン酸、N−[(シクロペンチルオキシ)カルボニル]−L−リシン、(2S)−2−アミノ−6−{[(2R)−テトラヒドロフラン−2−イルカルボニル]アミノ}ヘキサン酸、(2S)−2−アミノ−8−[(2R,3S)−3−エチニルテトラヒドロフラン−2−イル]−8−オキソオクタン酸、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−リシン、(2S)−2−ヒドロキシ−6−({[(2−メチル−2−プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ヘキサン酸、N−[(アリルオキシ)カルボニル]リシン、(2S)−2−アミノ−6−({[(2−アジドベンジル)オキシ]カルボニル}アミノ)ヘキサン酸、N−L−プロリル−L−リシン、(2S)−2−アミノ−6−{[(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)カルボニル]アミノ}ヘキサン酸およびN−[(2−アジドエトキシ)カルボニル]−L−リシンを含む。
最も好ましい非天然アミノ酸は、4−アジド−L−フェニルアラニン(Faz)である。
上に考察したとおり、Hel308ヘリカーゼの変種は、野生型ヘリカーゼのものから変化しているアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持している酵素である。本発明のHel308ヘリカーゼでは、配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55および58の1つの変種は、それがHel308Mbu(配列番号10)中のD272、N273、D274、G281、E284、E285、E287、S288、T289、G290、E291、D293、T294、N300、R303、K304、N314、S315、N316、H317、R318、K319、L320、E322、R326、N328、S615、K717、Y720、N721およびS724に対応する位置の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む限り追加的修飾を含んでよい。好適な修飾および変種は、2つ以上の部分の接続を伴う実施形態を参照して上に考察されている。
変種は、Woodmanら(J. Mol. Biol. (2007)374、1139-1144)に開示のドメイン5中に変異を含んでよい。これらの変異は、配列番号10中のR685A、R687AおよびR689Aに対応する。
本発明のHel308ヘリカーゼの2つ以上の部分の接続
本発明において修飾されたHel308ヘリカーゼは、ポリヌクレオチド結合ドメインを含む。ポリヌクレオチド結合ドメインは、上に定義されている。本発明における使用のための未修飾Hel308ヘリカーゼのポリヌクレオチド結合ドメインは、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含む。
好ましい実施形態ではHel308ヘリカーゼは、ヘリカーゼの2つ以上の部分が繋がれて、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できるポリヌクレオチド結合ドメイン中の開口部のサイズを低減するようにさらに修飾されている。2つ以上の部分は、上に考察した方法のいずれで繋がれてもよい。
非接続
別の実施形態ではHel308ヘリカーゼは、ヘリカーゼの2つ以上の部分が繋がれて、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できるポリヌクレオチド結合ドメイン中の開口部のサイズを低減するように修飾されていない。好ましくは、1つまたは複数のシステインまたは1つまたは複数の非天然アミノ酸はいずれもヘリカーゼ中の別のアミノ酸に繋がれない。好ましくは、ヘリカーゼ中の2つのアミノ酸は、それらの天然または非天然R基を介して併せて繋がれない。
構築物
本発明は、本発明のヘリカーゼおよび追加的ポリヌクレオチド結合成分を含む構築物であって、ヘリカーゼがポリヌクレオチド結合成分に付着しており、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を有する構築物も提供する。ヘリカーゼは、追加的ポリヌクレオチド結合成分に付着している。構築物は人工または非天然である。
本発明の構築物は、鎖配列決定法の際にポリヌクレオチドの移動を制御するための有用な手段である。本発明の構築物は、本発明の修飾ヘリカーゼよりも配列決定されているポリヌクレオチドから離されにくい。構築物は、それがナノポアを通るポリヌクレオチドの移行を制御することから、ポリヌクレオチドのさらに長い読み取り長を提供できる。
特異的ポリヌクレオチド配列に結合する標的化構築物も設計できる。下により詳細に考察されるとおりポリヌクレオチド結合成分は、特異的ポリヌクレオチド配列に結合でき、それにより構築物のヘリカーゼ部分を特異的配列に標的化できる。
構築物は、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を有する。これは、上に考察したとおり決定できる。
本発明の構築物は、単離、実質的に単離、精製または実質的に精製されていてよい。構築物は、それが脂質、ポリヌクレオチドまたはポア単量体などの任意の他の構成成分を完全に含まない場合に単離または精製されている。構築物は、その目的の使用を妨害しない担体または希釈剤と混合されている場合に実質的に単離されている。例えば構築物は、10%未満、5%未満、2%未満または1%未満の脂質、ポリヌクレオチドまたはポア単量体などの他の構成成分を含む形態で存在する場合に実質的に単離または実質的に精製されている。
ヘリカーゼは、好ましくは共有結合的に追加的ポリヌクレオチド結合成分に付着している。ヘリカーゼは、2個または3個などの1個以上の点で成分に付着していてよい。
ヘリカーゼは、当技術分野において公知の任意の方法を使用して成分に共有結合的に付着できる。好適な方法は、2つ以上の部分を繋ぐことを参照して上に考察されている。
ヘリカーゼおよび成分は、別々に産生され、次いで一緒に付着されてよい。2つの構成成分は、任意の立体配置で付着されてよい。例えばそれらは、それらの末端(すなわちアミノまたはカルボキシ末端)アミノ酸を介して付着してよい。好適な立体配置は、これだけに限らないが、成分のアミノ末端がヘリカーゼのカルボキシ末端に付着しているおよびその逆を含む。代替的に2つの構成成分は、それらの配列内のアミノ酸を介して付着され得る。例えば成分は、ヘリカーゼのループ領域中の1つまたは複数のアミノ酸に付着する場合がある。好ましい実施形態では成分の末端アミノ酸は、ヘリカーゼのループ領域中の1つまたは複数のアミノ酸に付着する。
好ましい実施形態ではヘリカーゼは、例えば上に考察した1つまたは複数のリンカー分子を介して、成分に化学的に付着する。別の好ましい実施形態ではヘリカーゼは、成分に遺伝子的に融合される。構築物全体が1本のポリヌクレオチド配列から発現される場合にヘリカーゼは、遺伝子的に成分に融合されている。ヘリカーゼおよび成分のコード配列は、構築物をコードしている1本のポリヌクレオチド配列を形成するために任意の方法で組み合わされてよい。核酸結合タンパク質へのポアの遺伝子的融合は、国際出願第PCT/GB09/001679号(WO2010/004265として公開)において考察されている。
ヘリカーゼおよび成分は、任意の立体配置で遺伝的に融合され得る。ヘリカーゼおよび成分は、それらの末端アミノ酸を介して融合され得る。例えば成分のアミノ末端はヘリカーゼのカルボキシ末端に融合でき、逆も同様である。成分のアミノ酸配列は、ヘリカーゼのアミノ酸配列にインフレームで好ましくは付加される。換言すると成分は、ヘリカーゼの配列内に好ましくは挿入される。そのような実施形態ではヘリカーゼおよび成分は、2つの点で、すなわち成分のアミノおよびカルボキシ末端アミノ酸を介して典型的には付着される。成分がヘリカーゼの配列内に挿入される場合、成分のアミノおよびカルボキシ末端アミノ酸が近接近にあり、ヘリカーゼまたはその変種の配列内の隣接アミノ酸にそれぞれ付着していることは好ましい。好ましい実施形態では成分は、ヘリカーゼのループ領域に挿入される。
構築物は、ポリヌクレオチドの移動を制御するヘリカーゼの能力を保持している。ヘリカーゼのこの能力は、そのβ鎖およびαヘリックスによって典型的には提供されるその三次元構造により典型的には提供される。αヘリックスおよびβ鎖は、ループ領域により典型的には繋がれている。ポリヌクレオチドの移動を制御するヘリカーゼの能力に影響を与えることを回避するために、成分は好ましくはヘリカーゼのいずれかの末端に遺伝子的に融合される、またはヘリカーゼの表面露出ループに挿入される。特異的ヘリカーゼのループ領域は、当技術分野において公知の方法を使用して同定できる。本発明のHel308実施形態では成分は、αヘリックスのいずれにも好ましくは遺伝子的に融合されない。
ヘリカーゼは、成分に直接付着され得る。ヘリカーゼは、上に考察したとおり2つまたは3つなどの1つまたは複数のリンカーを使用して成分に好ましくは付着される。1つまたは複数のリンカーは、成分の移動性を限定するように設計され得る。ヘリカーゼおよび/または成分は、上に考察したとおり1つまたは複数のリンカーの付着を促進するように修飾され得る。
切断可能なリンカーは、非付着構成成分からの構築物の分離への補助として使用でき、合成反応をさらに制御するために使用できる。例えばヘテロ二機能性リンカーは、ヘリカーゼと反応できるが、成分とはできない。ヘリカーゼタンパク質を表面に結合するためにリンカーの遊離末端が使用できる場合、最初の反応由来の未反応ヘリカーゼは混合物から除去され得る。続いてリンカーは、成分と反応する基を露出させるために切断され得る。付加的に、一連の連結反応に続いて、条件は最初にヘリカーゼへの反応のために、次いでリンカーの切断後の成分への反応のために最適化され得る。第二の反応は、リンカーが既に付着している領域に限定されることから、成分との正確な反応部位に向けてさらに方向付けられる。
ヘリカーゼは、ヘリカーゼ/架橋剤複合体が成分に共有結合的に付着する前に、二機能性架橋剤に共有結合的に付着されてよい。代替的に成分は、二機能性架橋剤/成分複合体がヘリカーゼに付着する前に、二機能性架橋剤に共有結合的に付着してよい。ヘリカーゼおよび成分は、化学的架橋剤に同時に共有結合的に付着してよい。
ヘリカーゼの成分への付着の好ましい方法は、上に記載のとおりシステイン連結およびFaz連結である。好ましい実施形態では反応性システインは、成分に遺伝子的に付着しているペプチドリンカー上に存在する。これは、成分から他の利用可能なシステイン残基を除去するために追加的修飾が必ずしも必要ではないことを意味する。
ヘリカーゼまたは成分のそれ自体への交差結合は、リンカーの濃度をヘリカーゼおよび/または成分の大過剰に維持することによって妨げることができる。代替的に「鍵と鍵穴」配置は、2つのリンカーが使用される場合に使用できる。各リンカーの一方の末端だけが長いリンカーを形成するために併せて反応でき、リンカーの他方の末端は構築物の異なる部分(すなわちヘリカーゼまたは成分)とそれぞれ反応する。これは下でより詳細に考察される。
付着の部位は、構築物がポリヌクレオチドと接触する場合に、ヘリカーゼおよび成分の両方がポリヌクレオチドに結合でき、その移動を制御できるように選択される。
付着は、ヘリカーゼおよび成分のポリヌクレオチド結合活性を使用して促進され得る。例えば相補的ポリヌクレオチドは、ヘリカーゼおよび成分を、それらがハイブリダイズすることから、併せて運ぶために使用できる。ヘリカーゼは一方のポリヌクレオチドに結合でき、成分は相補的ポリヌクレオチドに結合できる。次いで2つのポリヌクレオチドは、相互にハイブリダイズできるようになる。これは、ヘリカーゼを成分と密接に接触するようにして、連結反応をさらに効率的にする。これは、標的ポリヌクレオチドの移動を制御するための正確な方向で2つ以上のヘリカーゼを付着させるために特に有益である。使用できる相補的ポリヌクレオチドの一例は、下に示されている。
ヘリカーゼ−Phi29構築物に関して、下のDNAは使用され得る。
構築物の精製を容易にするためにタグが構築物に付加され得る。これらのタグは、次いでそれらの除去が必要である場合に、化学的にまたは酵素的に切断除去され得る。フルオロフォアまたはクロモフォアも含まれる場合があり、これらも切断可能であってよい。
構築物を精製するための簡単な方法は、各タンパク質(すなわちヘリカーゼおよび成分)上に、ヘキサ−His−タグおよびStrep−タグ(登録商標)などの異なる精製タグを含むことである。2つのタンパク質が互いに異なる場合、この方法は特に有用である。2つのタグの使用は、両方のタグを含む分子種だけが容易に精製されるようにする。
2つのタンパク質が2つの異なるタグを有さない場合、他の方法が使用できる。例えば遊離表面システインを有するタンパク質または構築物を形成するために反応していない付着リンカーを有するタンパク質は、例えばマレイミドリンカーに対するヨードアセトアミドレジンを使用して除去され得る。
本発明の構築物は、未反応タンパク質から異なるDNA前進性特徴に基づいても精製され得る。具体的には本発明の構築物は、未反応タンパク質からポリヌクレオチドに対する親和性の増大、既に結合したポリヌクレオチドから離れる可能性の低減および/またはナノポアを通るポリヌクレオチドの移行を制御するときのポリヌクレオチドの読み取り長さの増大に基づいて精製され得る。
特異的ポリヌクレオチド配列に結合する標的化構築物も設計され得る。下により詳細に考察されるとおりポリヌクレオチド結合成分は、特異的ポリヌクレオチド配列に結合でき、それにより構築物のヘリカーゼ部分を特異的配列に標的化する。
ポリヌクレオチド結合成分
本発明の構築物は、ポリヌクレオチド結合成分を含む。ポリヌクレオチド結合成分は、ポリヌクレオチドに結合できるポリペプチドである。成分は、規定のポリヌクレオチド配列に好ましくは特異的結合できる。換言すると成分は、特異的ポリヌクレオチド配列に好ましくは結合するが、少なくとも10分の1の結合を異なる配列に、またはより好ましくは少なくとも100分の1の結合を異なる配列に、または最も好ましくは少なくとも1000分の1の結合を異なる配列に示す。異なる配列は無作為配列であってよい。いくつかの実施形態では成分は、特異的ポリヌクレオチド配列に結合するが、異なる配列への結合は測定できない。特異的配列に結合する成分は、そのような配列に標的化される構築物を設計するために使用され得る。
成分は、典型的にはポリヌクレオチドの少なくとも1つの特徴と相互作用および改変する。成分は、個々のヌクレオチドまたは、ジまたはトリヌクレオチドなどのヌクレオチドの短い鎖を形成するように切断することによってポリヌクレオチドを修飾できる。成分は、ポリヌクレオチドを特異的位置に方向付けるまたは移動させること、すなわちその移動を制御することによってそれを修飾できる。
核酸などのポリヌクレオチドは、2個以上のヌクレオチドを含む巨大分子である。ポリヌクレオチドまたは核酸は、任意のヌクレオチドの任意の組合せを含み得る。ヌクレオチドは、天然に存在するものまたは人工的であってよい。標的ポリヌクレオチド中の1つまたは複数のヌクレオチドは、酸化またはメチル化され得る。標的ポリヌクレオチド中の1つまたは複数のヌクレオチドは、損傷をうけ得る。例えばポリヌクレオチドは、ピリミジン二量体を含む場合がある。そのような二量体は、紫外光による障害に典型的には関連し、皮膚メラノーマの主原因である。標的ポリヌクレオチド中の1つまたは複数のヌクレオチドは、例えば標識またはタグで、修飾され得る。好適な標識は、上に記載されている。標的ポリヌクレオチドは、1つまたは複数のスペーサーを含み得る。
ヌクレオチドは、典型的には、核酸塩基、糖および少なくとも1つのリン酸基を含有する。核酸塩基は典型的には複素環である。核酸塩基は、これだけに限らないがプリンおよびピリミジンならびにより具体的にはアデニン、グアニン、チミン、ウラシルおよびシトシンを含む。糖は典型的には五炭糖である。ヌクレオチド糖は、これだけに限らないがリボースおよびデオキシリボースを含む。ヌクレオチドは、典型的にはリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは典型的には一リン酸、二リン酸または三リン酸を含有する。リン酸は、ヌクレオチドの5’または3’側に付着できる。
ヌクレオチドは、これだけに限らないがアデノシン一リン酸(AMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、チミジン一リン酸(TMP)、ウリジン一リン酸(UMP)、シチジン一リン酸(CMP)、5−メチルシチジンモノホスフェート、5−メチルシチジンジホスフェート、5−メチルシチジントリホスフェート、5−ヒドロキシメチルシチジンモノホスフェート、5−ヒドロキシメチルシチジンジホスフェート、5−ヒドロキシメチルシチジントリホスフェート、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)およびデオキシシチジン一リン酸(dCMP)を含む。ヌクレオチドは、好ましくはAMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP、dCMPおよびdUMPから選択される。
ヌクレオチドは、塩基を持たない場合がある(すなわち核酸塩基を欠失している)。ヌクレオチドは、核酸塩基および糖も欠失している場合がある(すなわちC3スペーサーである)。
ポリヌクレオチド中のヌクレオチドは、任意の様式で相互に付着されてよい。ヌクレオチドは、核酸においてと同様にそれらの糖およびリン酸基により典型的には付着されている。ヌクレオチドは、ピリミジン二量体においてと同様にそれらの核酸塩基を介して繋がれてよい。
ポリヌクレオチドは、1本鎖または2本鎖であってよい。ポリヌクレオチドの少なくとも一部は、好ましくは2本鎖である。
ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などの核酸であってよい。標的ポリヌクレオチドは、DNAの1本鎖にハイブリダイズしたRNAの1本鎖を含む場合がある。ポリヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)またはヌクレオチド側鎖を有する他の合成ポリマーなどの当技術分野において公知の任意の合成核酸であってよい。
成分の三次構造が公知であることは好ましい。成分の三次元構造の知識は、本発明の構築物におけるその機能を促進するために成分に修飾を作製できるようにする。
成分は、任意のサイズであってよく、任意の構造を有してよい。例えば成分は、二量体または三量体などのオリゴマーである場合がある。成分は、好ましくは1つの単量体から形成された小さな球状ポリペプチドである。そのような成分は操作が容易であり、ポリヌクレオチドの移動を制御するヘリカーゼの能力を、特にヘリカーゼの配列に融合または挿入された場合に、干渉しにくい。
成分のアミノおよびカルボキシ末端は、好ましくは近接近にある。成分のアミノおよびカルボキシ末端は、成分の同じ面により好ましくは存在する。そのような実施形態は、ヘリカーゼの配列中への成分の挿入を促進する。例えば成分のアミノおよびカルボキシ末端が近接近にある場合、それぞれはヘリカーゼの配列中の隣接アミノ酸への遺伝子的融合によって付着され得る。
成分の活性部位の位置および機能が公知であることも好ましい。これは、成分の活性を消滅させる活性部位に修飾が作製されることを防ぐ。これは成分がヘリカーゼに付着できるようにし、成分はポリヌクレオチドに結合し、その移動を制御する。成分がポリヌクレオチドに結合および方向付けられる方法の知識は、有効な構築物を設計できるようにする。
本発明の構築物は鎖配列決定法において有用である。成分は、鎖配列決定法およびヌクレオチドの識別に適合性である緩衝液バックグラウンドにおいてポリヌクレオチドに好ましくは結合する。成分は、100mMから2Mなどの通常の生理学的レベルを大幅に上回る塩濃度において少なくとも残存活性を好ましくは有する。成分は、高塩濃度でのその活性を増大させるためにより好ましくは修飾される。成分は、その前進性、安定性および有効期間を改善するために修飾されてもよい。
好適な修飾は、好塩性、中度好塩性細菌、好熱性および中等度好熱性生物などの好極限性細菌(extremphile)、ならびに中温性または好熱性エキソヌクレアーゼの耐塩性、安定性および温度依存性を変更するための定向進化手法由来のポリヌクレオチド結合成分の特性決定から決定され得る。
ポリヌクレオチド結合成分は、ヘリックス−ヘアピン−ヘリックス(helix-hairpin-helix)(HhH)ドメイン、真核生物1本鎖結合タンパク質(single-stranded binding protein)(SSB)、細菌性SSB、古細菌SSB、ウイルス性SSB、2本鎖結合タンパク質、スライディングクランプ、前進性因子(processivity factor)、DNA結合ループ、複製開始タンパク質、テロメア結合タンパク質、リプレッサー、亜鉛フィンガーおよび増殖細胞核抗原(proliferating cell nuclear antigen)(PCNA)から独立に選択される1つまたは複数のドメインを好ましくは含む。
ヘリックス−ヘアピン−ヘリックス(HhH)ドメインは、DNAに配列非特異的様式で結合するポリペプチドモチーフである。それらは、ポリメラーゼに融合された場合に塩安定性および前進性を付与し、それらの熱安定性を増大させることが示されている。好適なドメインは、メタノピュルス・カンドレリ(Methanopyrus kandleri)由来のトポイソメラーゼV(配列番号129)由来のドメインH(残基696〜751)およびドメインHI(残基696〜802)を含む。下の考察のとおり、ポリヌクレオチド結合成分は、配列番号130に示す配列番号129のドメインH〜Lであってよい。メタノピュルス・カンドレリ(Methanopyrus kandleri)由来のトポイソメラーゼVは、下に考察の2本鎖結合タンパク質の一例である。
HhHドメインは、配列番号94もしくは107もしくは108に示す配列またはその変種を好ましくは含む。このドメインは、本発明の構築物において使用された場合にヘリカーゼの前進性および耐塩性を増大させる。配列番号94もしくは107もしくは108の変種は、配列番号94または107または108のものから変化しているアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持しているタンパク質である。これは、上に記載のとおり測定され得る。変種は、アミノ酸同一性に基づいてその配列全体にわたって、配列番号94または107または108に少なくとも50%相同性(またはヘリカーゼと関連して上に考察した任意の%相同性)を典型的には有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持している。変種はヘリカーゼと関連して上にまたはポアと関連して下に考察したいずれの方法においても配列番号94または107または108と異なっていてよい。変種は、上に考察したとおりヘリカーゼへの付着を促進するために1つもしくは複数の置換システイン残基および/または1つもしくは複数の置換Faz残基を好ましくは含む。
SSBは、高親和性で配列非特異的様式で1本鎖DNAに結合する。それらは、全ての生き物に種々の形態で存在し、単量体または多量体としてDNAに結合する。アミノ酸配列の配列比較およびアルゴリズム(Hidden Markovモデルなど)を使用して、SSBはそれらの配列相同に従って分類され得る。Pfamファミリー、PF00436は、全てが公知のSSBに配列類似性を示すタンパク質を含む。SSBのこの群は、次いでタンパク質の構造分類(Structural Classification of Proteins)(SCOP)に従ってさらに分類され得る。SSBは、次の系列に分けられる:クラス;全てのベータタンパク質、フォールド;OB−フォールド、スーパーファミリー:核酸結合タンパク質、ファミリー;1本鎖DNA結合ドメイン、SSB。このファミリー内でSSBは、各サブファミリー内でしばしば特性決定されるいくつかの型の分子種を含むサブファミリーに分類され得る。
SSBは、ヒト、マウス、ラット、真菌、原虫または植物など由来の真核生物由来、細菌および古細菌などの原核生物由来またはウイルス由来であってよい。
真核性SSBは、複製タンパク質A(RPA)として公知である。多くの場合それらは、さまざまなサイズの単位から形成されたヘテ三量体である。大きな単位(例えばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のRPA70)のいくつかは安定であり、単量体形態でssDNAに結合する。
細菌性SSBは安定なホモ四量体(例えば大腸菌(E.coli)、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)およびヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))またはホモ二量体(例えばディノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)およびサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima))としてDNAに結合する。古細菌ゲノム由来のSSBは、真核RPAと関連すると考えられている。クレン古細菌門スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)によってコードされるSSBなどのそのいくつかは、ホモ四量体である。他の大部分の種由来のSSBは、真核生物由来の複製タンパク質に密接に関連しており、RPAと称される。これらの種のいくつかにおいて、それらは単量体であることが示されている(メタノコッカス・ジャンナスキイ(Methanococcus jannaschii)およびメタノサーモバクター・サーモオートトロフィクカム(Methanothermobacter thermoautotrophicum)。さらに、アーケオグロブス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)およびメタノコッコイデス・ブルトニイ(Methanococcoides burtonii)を含む古細菌の他の種は、RPAに配列類似性を有する2つのオープンリーディングフレームをそれぞれ含有すると考えられている。タンパク質レベルでの証拠はなく、それらのDNA結合能力またはオリゴマー状態に関する公表されたデータもない。しかし、これらの各遺伝子中の2つのオリゴヌクレオチド/オリゴ糖(oligonucleotide/oligosaccharide)(OB)フォールドの存在(M.ブルトニイ(M.burtonii)ORFの1つの場合にはOBフォールド3個)はそれらも1本鎖DNAに結合することを示唆している。
ウイルス性SSBは、単量体としてDNAに結合する。このことおよびそれらの比較的小さなサイズは、それらを、例えば可動性ペプチドリンカーを介して他のタンパク質に遺伝子的に融合しやすくする。代替的にSSBは、別々に発現され、化学的方法(例えばシステイン、非天然アミノ酸)によって他のタンパク質に付着される場合がある。これは下でより詳細に考察される。
SSBは、好ましくは(i)正味の負電荷を有さないカルボキシ末端(C末端)領域を含むSSB(ii)C末端領域の正味の負電荷を減少させる1つまたは複数の修飾をそのC末端領域に含む修飾SSBのいずれかである。そのようなSSBは、膜貫通ポアを遮断せず、したがって標的ポリヌクレオチドの特性決定を可能にする。
正味の負電荷を有さないC末端領域を含むSSBの例は、これだけに限らないが、ヒトミトコンドリアSSB(HsmtSSB;配列番号118、ヒト複製タンパク質A 70kDaサブユニット、ヒト複製タンパク質A 14kDaサブユニット、オキシトリカ・ノバ(Oxytricha nova)由来テロメア末端結合タンパク質アルファサブユニット、オキシトリカ・ノバ(Oxytricha nova)由来テロメア末端結合タンパク質ベータサブユニットのコアドメイン、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)由来のテロメアタンパク質1(Pot1)の保護、ヒトPot1、マウスまたはラット由来BRCA2のOB−フォールドドメイン、phi29由来のp5タンパク質(配列番号119)またはこれらのタンパク質のいずれかの変種を含む。変種は、野生型タンパク質から変化したアミノ酸配列を有し、1本鎖ポリヌクレオチド結合活性を保持しているタンパク質である。ポリヌクレオチド結合活性は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して決定できる(上に記載のとおり)。例えば、1本鎖ポリヌクレオチドに結合する変種の能力は、実施例に記載のとおり決定され得る。
配列番号118または119の変種は、アミノ酸同一性に基づいてその配列全体にわたって、配列番号118または119に少なくとも50%相同性(またはヘリカーゼと関連して上に考察した任意の%相同性)を典型的には有し、1本鎖ポリヌクレオチド結合活性を保持している。変種はヘリカーゼと関連して上に考察したいずれの方法においても配列番号118または119と異なっていてよい。具体的には変種は、表8および9に示す1つまたは複数の保存的置換を有する場合がある。
正味の負電荷を減少させる1つまたは複数の修飾をそれらのC末端領域に必要とするSSBの例は、これだけに限らないが、大腸菌(E. coli)のSSB(EcoSSB;配列番号120、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)のSSB、ディノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)のSSB、サーマス・サーモフィラルス(Thermus thermophiles)のSSB、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)由来SSB、ヒト複製タンパク質A 32kDaサブユニット(RPA32)断片、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来CDC13 SSB、大腸菌(E. coli)由来プライモソーム複製タンパク質N(Primosomal replication protein N)(PriB)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来PriB、仮説タンパク質At4g28440、T4由来SSB(gp32;配列番号121)、RB69由来SSB(gp32;配列番号95)、T7由来SSB(gp2.5;配列番号96)またはこれらの任意のタンパク質の変種を含む。したがって本発明の方法において使用されるSSBは、これらのタンパク質のいずれかに由来してよい。
C末端領域中の1つまたは複数の修飾に加えて、方法において使用されるSSBはC末端領域の外側にあるまたはC末端領域の正味の負電荷を減少させない追加的修飾を含んでよい。換言すると本発明の方法において使用されるSSBは、野生型タンパク質の変種に由来する。変種は、野生型タンパク質のものから変化しているアミノ酸配列を有し、1本鎖ポリヌクレオチド結合活性を保持しているタンパク質である。ポリヌクレオチド結合活性は、上に考察したとおり決定され得る。
本発明において使用されるSSBは、配列番号95、96、120または121の変種に由来してよい。換言すると配列番号95、96、120または121の変種は、本発明において使用されるSSBのための出発点として使用できるが、実際に使用されるSSBは、C末端領域の正味の負電荷を減少させる1つまたは複数の修飾をそのC末端領域にさらに含む。配列番号95、96、120または121の変種は、配列番号95、96、120または121にアミノ酸同一性に基づいてその配列全体にわたって少なくとも50%相同性(またはヘリカーゼと関連して上に考察した任意の%相同性)を典型的には有し、1本鎖ポリヌクレオチド結合活性を保持している。変種はヘリカーゼと関連して上に考察したいずれの方法においても配列番号95、96、120または121と異なっていてよい。具体的には変種は、表8および9に示す1つまたは複数の保存的置換を有してよい。
通常のタンパク質NからCへの命名法に従ってSSBのC末端領域を同定することは容易である。SSBのC末端領域は、SSBのC末端の最後の3分の1などの好ましくはSSBのC末端の最後の約3分の1である。SSBのC末端領域は、より好ましくはSSBのC末端の最後の4分の1、5分の1または8分の1などのSSBのC末端の最後の約4分の1、5分の1または8分の1である。SSBの最後の3分の1、4分の1、5分の1または8分の1は、アミノ酸の数を単位としてまたはSSBタンパク質の一次構造の実際の長さを単位として測定されてよい。NからC方向での種々のアミノ酸の長さは、当技術分野において公知である。
C末端領域は、好ましくはSSBのC末端の最後の約10から最後の約60アミノ酸である。C末端領域は、より好ましくはSSBのC末端の最後の約15、最後の約20、最後の約25、最後の約30、最後の約35、最後の約40、最後の約45、最後の約50または最後の約55アミノ酸である。
C末端領域は、グリシンおよび/またはプロリンのリッチ領域を典型的には含む。このプロリン/グリシンリッチ領域は、C末端領域に可動性を与え、C末端領域を同定するために使用され得る。
正味の負電荷を減少させるための好適な修飾は、米国仮特許出願第61/673,457号(2012年7月19日出願)、米国仮特許出願第61/774,688号(2013年3月8日出願)および本出願と同時に出願された国際出願に開示されている(Oxford Nanopore Ref:ONT IP 035)。SSBは、米国仮特許出願および国際出願に開示されているいずれのSSBであってもよい。
修飾SSBは、配列番号103、104、122から125に示されるものから選択される配列を最も好ましくは含む。
2本鎖結合タンパク質は高親和性で2本鎖DNAに結合する。好適な2本鎖結合タンパク質は、これだけに限らないがミューテーターS(MutS;NCBI参照配列:NP_417213.1;配列番号140)、Sso7d(スルホロブス・ソルファタリカス(Sufolobus solfataricus)P2;NCBI参照配列:NP_343889.1;配列番号141;Nucleic Acids Research、2004、Vol 32、No. 3、1197-1207)、Sso10b1(NCBI参照配列:NP_342446.1;配列番号142)、Sso10b2(NCBI参照配列:NP_342448.1;配列番号143)トリプトファンリプレッサー(Trpリプレッサー;NCBI参照配列:NP_291006.1;配列番号144)、ラムダリプレッサー(NCBI参照配列:NP_040628.1;配列番号145)、Cren7(NCBI参照配列:NP_342459.1;配列番号146)、主なヒストンクラスH1/H5、H2A、H2B、H3およびH4(NCBI参照配列:NP_066403.2;配列番号147)、dsbA(NCBI参照配列:NP_049858.1;配列番号148)、Rad51(NCBI参照配列:NP_002866.2;配列番号149)、スライディングクランプおよびトポイソメラーゼV Mka(配列番号129)またはこれらのタンパク質のいずれかの変種を含む。配列番号129、140、141、142、143、144、145、146、147、148または149の変種は、アミノ酸同一性に基づいてその配列全体にわたって、配列番号129、140、141、142、143、144、145、146、147、148または149に少なくとも50%相同性(またはヘリカーゼと関連して上に考察した任意の%相同性)を典型的には有し、1本鎖ポリヌクレオチド結合活性を保持している。変種は、ヘリカーゼと関連して上に考察したいずれの方法においても配列番号129、140、141、142、143、144、145、146、147、148または149と異なっていてよい。具体的には変種は、表8および9に示す1つまたは複数の保存的置換を有する場合がある。大部分のポリメラーゼは、スライディングクランプと相互作用することにより前進性を達成している。一般にこれらは、dsDNAの周囲を囲む多量体タンパク質(ホモ二量体またはホモ三量体)である。これらのスライディングクランプは、ATP依存性プロセスでそれらをDNAヘリックスの周囲に会合させるためにアクセサリータンパク質(クランプローダー)を必要とする。それらもDNAと直接接触せず、形態的テザーとして作用する。スライディングクランプがポリメラーゼドメインを介する特異的様式で同族ポリメラーゼと相互作用することから、この断片はヘリカーゼのスライディングクランプへの動員刺激のためにヘリカーゼに融合され得る。この相互作用は共有結合の作製によってさらに安定化され得る(システインまたは非天然アミノ酸の導入)。
DNAスライディングクランプに関して前進性因子は、それらの同族ポリメラーゼをDNAに固着させるウイルス性タンパク質であり、作製される断片の長さの劇的な増大を導く。それらは、単量体(単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)1由来UL42についての場合)または多量体(サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)由来UL44は二量体である)であってよく、それらはDNA鎖周囲に閉じた環を形成せず、それらはDNAに直接接触する。UL42は、その対応するポリメラーゼの速度を低減することなく前進性を増大させることが示されており、それがSSBとは異なるモードでDNAと相互作用することを示唆している。UL42は、配列番号97もしくは配列番号102に示す配列またはその変種を好ましくは含む。配列番号97または102の変種は、配列番号97または102のものから変化しているアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持しているタンパク質である。これは、上に記載のとおり測定され得る。変種は、アミノ酸同一性に基づいてその配列全体にわたって、配列番号97または102に少なくとも50%相同性(またはヘリカーゼと関連して上に考察した任意の%相同性)を典型的には有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持している。変種はヘリカーゼと関連して上にまたはポアと関連して下に考察したいずれの方法においても配列番号97または配列番号102と異なっていてよい。変種は、上に考察したとおりヘリカーゼへの付着を促進するために1つもしくは複数の置換システイン残基および/または1つもしくは複数の置換Faz残基を好ましくは含む。
UL42をヘリカーゼに付着させることは、遺伝子的融合または化学的付着(システイン、非天然アミノ酸)を介して行われ得る。UL42に結合しているポリメラーゼポリペプチドが結晶構造において観察できることから、これらの35アミノ酸(残基1200〜1235)はヘリカーゼのC末端に融合でき、このポリペプチドと前進性因子との間の天然の親和性は複合体を形成するために使用される。相互作用は、共有結合相互作用(システインまたは非天然アミノ酸)を導入することによって安定化され得る。選択肢の1つは、ポリペプチド相互作用部位近くに位置付けられている天然UL42システイン(C300)を利用し、ポリメラーゼポリペプチドに点変異(例えばL1234C)を導入することである。
ポリメラーゼ前進性を増大する報告された方法は、大腸菌(E.coli)チオレドキシン(Trx)とバクテリオファージT7DNAポリメラーゼのチオレドキシン結合ドメイン(TBD)(残基258〜333)との間の相互作用を活用することである。TrxからTBDへの結合は、DNAに結合するものへのコンホメーション変化をポリペプチドに生じさせる。TBDは、DNA鎖上に固定され、ポリメラーゼオフ速度を限定し、それにより前進性を増大させると考えられている。キメラポリメラーゼは、TBDを非前進性ポリメラーゼに転移することによって作製され、重合された断片長の1000倍増加を生じる。TBDを任意の他のクラスのタンパク質に付着させる試みはなかったが、TBDとTrxとの間の共有結合は操作され、相互作用を安定化するために使用できる。
いくつかのヘリカーゼは、前進性を達成するためにアクセサリータンパク質をin−vivoで使用する(例えば大腸菌(E.coli)Repヘリカーゼに関して、ファージΦx174由来cisAおよびファージM13由来gene IIタンパク質)。これらのタンパク質のいくつかは、1つより多いヘリカーゼと相互作用することが示されている(例えばMutLは同程度ではないがUvrDおよびRepの両方に作用する)。これらのタンパク質は内在性DNA結合能力を有し、それらのいくつかは特異的DNA配列を認識する。いくつかのこれらのアクセサリータンパク質のそれら自体を特異的DNA配列に共有結合的に付着させる能力は、ヘリカーゼ活性についての一連の開始点を作出するためにも使用できる。
染色体の末端を保護するタンパク質は、テロメアssDNA配列に高特異性の様式で結合する。この能力は、そのまままたは配列特異性を消滅させる点変異を使用することによってのいずれかで活用され得る。
小さなDNA結合モチーフ(ヘリックス−ターン−ヘリックスなど)は、特異的DNA配列を認識する。バクテリオファージ434リプレッサーの場合、62残基断片が操作され、DNA結合能力および特異性を保持していることが示されている。
真核生物タンパク質における豊富なモチーフ、亜鉛フィンガーは特異的様式でDNAに結合するおよそ30アミノ酸からなる。典型的には各亜鉛フィンガーは3個のDNA塩基だけを認識するが、マルチプルフィンガーはより長い配列を認識するために連結されてよい。
増殖細胞核抗原(PCNA)は、dsDNAまたはssDNAを引き上げるおよび下げる非常に堅固なクランプ(ドーナツ)を形成する。クレン古細菌門(crenarchaeota)由来PCNAは、ヘテロ三量体になることが特有であり、それにより1つのサブユニットを機能化し、活性を保持することが可能である。そのサブユニットは、配列番号98、99および100に示されている。PCNAは、好ましくは配列番号98、99および100に示す配列またはその変種を含む三量体である。PCNAスライディングクランプ(NCBI参照配列:ZP_06863050.1;配列番号150)は二量体を形成する。PCNAは、好ましくは配列番号150またはその変種を含む二量体である。変種は、配列番号98、99、100または150から変化しているアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持しているタンパク質である。これは、上に記載のとおり測定され得る。変種は、アミノ酸同一性に基づいてそれぞれその配列全体にわたって配列番号98、99および100に少なくとも50%相同性を有する配列を含む典型的には三量体または、配列番号150に少なくとも50%相同性(またはヘリカーゼと関連して上に考察した任意の%相同性)を有する配列を含む二量体であり、ポリヌクレオチド結合活性を保持している。変種はヘリカーゼと関連して上にまたはポアと関連して下に考察したいずれの方法においても配列番号98、99、100または150と異なっている配列を含んでよい。変種は、上に考察したとおりヘリカーゼへの付着を促進するために1つもしくは複数の置換システイン残基および/または1つもしくは複数の置換Faz残基を好ましくは含む。好ましい実施形態では、クレン古細菌門(crenarchaeota)由来PCNAのサブユニット1および2(すなわち配列番号98および99またはその変種)は、遺伝子的に融合されるなど付着し、得られたタンパク質は本発明の構築物を形成するようにヘリカーゼに付着される。構築物の使用の際にサブユニット3(すなわち配列番号100またはその変種)は、構築物がポリヌクレオチドに結合すると、PCNAクランプ(またはドーナツ)を完了するために付加される場合がある。好ましい実施形態では、PCNAスライディングクランプ(すなわち配列番号150またはその変種)の1つの単量体は、遺伝子的に融合されているなど、本発明の構築物を形成するようにヘリカーゼに付着されている。構築物の使用の際に第二の単量体(すなわち配列番号150またはその変種)は、構築物がポリヌクレオチドに結合すると、PCNAクランプ(またはドーナツ)を完了するために付加される場合がある。
ポリヌクレオチド結合モチーフは、下の表5に示すもののいずれかから選択されてよい。
ポリヌクレオチド結合成分は、ポリヌクレオチド結合酵素に好ましくは由来する。ポリヌクレオチド結合酵素は、ポリヌクレオチドに結合でき、ポリヌクレオチドの少なくとも1つの特徴と相互作用し、修飾するポリペプチドである。酵素は、個々のヌクレオチドまたは、ジまたはトリヌクレオチドなどのヌクレオチドの短い鎖を形成するように切断することによってポリヌクレオチドを修飾できる。酵素は、ポリヌクレオチドを特異的位置に方向付けるまたは移動させることによってそれを修飾できる。ポリヌクレオチド結合成分は、ポリヌクレオチドに結合でき、その移動を制御できる限り酵素活性を示す必要はない。例えば成分は、その酵素活性を除去するように修飾されている酵素由来であってよく、またはそれが酵素として作用することを妨げる条件下で使用されてよい。
ポリヌクレオチド結合成分は、好ましくは核酸分解酵素由来である。酵素は、より好ましくは酵素分類(EC)群3.1.11、3.1.13、3.1.14、3.1.15、3.1.16、3.1.21、3.1.22、3.1.25、3.1.26、3.1.27、3.1.30および3.1.31のいずれかのメンバー由来である。酵素は、国際出願第PCT/GB10/000133号(WO2010/086603として公開)に開示のもののいずれかであってよい。
好ましい酵素は、エキソヌクレアーゼ、ポリメラーゼ、ヘリカーゼおよび、ジャイレースなどのトポイソメラーゼである。好適なエキソヌクレアーゼは、これだけに限らないが、大腸菌(E. coli)由来エキソヌクレアーゼI、大腸菌(E. coli)由来エキソヌクレアーゼIII酵素、高度好熱菌(T. thermophilus)由来RecJならびにバクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼおよびその変種を含む。
ポリメラーゼは、好ましくは成分分類(EC)群2.7.7.6、2.7.7.7、2.7.7.19、2.7.7.48および2.7.7.49のいずれかのメンバーである。ポリメラーゼは、好ましくはDNA依存性DNAポリメラーゼ、RNA依存性DNAポリメラーゼ、DNA依存性RNAポリメラーゼまたはRNA依存性RNAポリメラーゼである。ポリヌクレオチド結合成分は、好ましくはPhi29 DNAポリメラーゼ(配列番号101)由来である。成分は、配列番号101に示す配列またはその変種を含む場合がある。配列番号101の変種は、配列番号101のものから変化しているアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持している酵素である。これは、上に記載のとおり測定され得る。変種は、ポリヌクレオチドの結合を促進するならびに/または高塩濃度および/もしくは室温での活性を促進する修飾を含む場合がある。
配列番号101のアミノ酸配列の全長にわたって変種は、アミノ酸同一性に基づいてその配列に好ましくは少なくとも50%相同性である。より好ましくは変種ポリペプチドは、アミノ酸同一性に基づいて配列の全長にわたって配列番号101のアミノ酸配列に少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同性であってよい。少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%または95%のアミノ酸同一性が200以上のストレッチ、例えば230、250、270または280以上の連続するアミノ酸にわたってあり得る(「高い相同性」)。相同性は下に記載のとおり決定される。変種は配列番号2および4を参照して下に考察したいずれの方法においても野生型配列と異なっていてよい。
ヘリカーゼは、上に考察したもののいずれであってもよい。ヘリカーゼ二量体および多量体は下に詳細に考察される。ポリヌクレオチド結合成分は、ヘリカーゼ由来のポリヌクレオチド結合ドメインであってよい。例えばポリヌクレオチド結合成分は、配列番号105または106に示す配列またはその変種を好ましくは含む。配列番号105または106の変種は、配列番号105または106のものから変化しているアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド結合活性を保持しているタンパク質である。これは、上に記載のとおり測定され得る。変種は、ポリヌクレオチドの結合を促進するならびに/または高塩濃度および/もしくは室温での活性を促進する修飾を含む場合がある。
配列番号105または106のアミノ酸配列の全長にわたって変種は、アミノ酸同一性に基づいてその配列に好ましくは少なくとも50%相同性である。より好ましくは変種ポリペプチドは、アミノ酸同一性に基づいて配列番号105または106のアミノ酸配列の配列の全長にわたって少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同性であってよい。少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%または95%のアミノ酸同一性が40以上のストレッチ、例えば50、60、70または80以上の連続するアミノ酸にわたってあり得る(「高い相同性」)。相同性は下に記載のとおり決定される。変種は配列番号2および4を参照して下に考察したいずれの方法においても野生型配列と異なっていてよい。
トポイソメラーゼは、好ましくは成分分類(EC)群5.99.1.2および5.99.1.3のいずれかのメンバーである。
ポリヌクレオチド結合成分は、上に考察したいずれの酵素であってもよい。
成分は、明示用標識(revealing label)で標識されてよい。標識は、上に記載のもののいずれであってもよい。
成分は、大腸菌(E. coli)、T.サーモフィルス(T. thermophilus)またはバクテリオファージ、などの任意の成分産生生物から単離され得る、または合成的もしくは組換え的手段によって作製できる。例えば成分は、下に記載のとおりin vitro 翻訳および転写によって合成出来る。成分は、下に記載のとおり大規模に産生されてよく、精製が続く。
ヘリカーゼオリゴマー
上の考察から明らかであるとおり、ポリヌクレオチド結合成分は、ヘリカーゼに好ましくは由来する。例えばそれは、ヘリカーゼ由来ポリヌクレオチドドメインであってよい。成分は、1つまたは複数のヘリカーゼをより好ましくは含む。ヘリカーゼは、本発明のヘリカーゼを含む上に考察したもののいずれであってもよい。そのような実施形態では本発明の構築物は、ヘリカーゼの少なくとも1つが本発明により修飾されており、互いに付着している2個以上のヘリカーゼを当然ながら含む。構築物は、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上のヘリカーゼを含んで良い。換言すると本発明の構築物は、ヘリカーゼ二量体、ヘリカーゼ三量体、ヘリカーゼ四量体、ヘリカーゼ五量体などを含んでよい。
2つ以上のヘリカーゼは、任意の方向で互いに付着していてよい。同一または類似のヘリカーゼは、各ヘリカーゼ中の同一のアミノ酸位置または空間的に近接しているアミノ酸位置を介して付着してよい。これは、「ヘッドトゥーヘッド」編成と呼ばれる。代替的に同一または類似のヘリカーゼは、各ヘリカーゼの反対または異なる側の位置を介して付着してよい。これは、「ヘッドトゥーテール」編成と呼ばれる。3つの同一のまたは類似のヘリカーゼを含むヘリカーゼ三量体は、ヘッドトゥーヘッドおよびヘッドトゥーテール編成の両方を含む場合がある。
2つ以上のヘリカーゼは、互いに異なっていてよい(すなわち構築物はヘテロ二量体、三量体、四量体または五量体などである)。例えば本発明の構築物は:(a)1つもしくは複数のHel308ヘリカーゼおよび1つもしくは複数のXPDヘリカーゼ;(b)1つもしくは複数のHel308ヘリカーゼおよび1つもしくは複数のRecDヘリカーゼ;(c)1つもしくは複数のHel308ヘリカーゼおよび1つもしくは複数のTraIヘリカーゼ;(d)1つもしくは複数のXPDヘリカーゼおよび1つもしくは複数のRecDヘリカーゼ;(e)1つもしくは複数のXPDヘリカーゼおよび1つもしくは複数のTraIヘリカーゼ;または(f)1つもしくは複数のRecDヘリカーゼおよび1つもしくは複数のTraIヘリカーゼを含む場合がある。構築物は、同じヘリカーゼの2つの異なる変種を含む場合がある。例えば構築物は、各変種において異なる位置に導入された1つまたは複数のシステイン残基またはFaz残基を有する、上に考察したヘリカーゼの内の1つの2つの変種を含む場合がある。この場合ヘリカーゼは、ヘッドトゥーテール編成であってよい。好ましい実施形態では、Q442Cを含む配列番号10の変種はシステイン連結を介してQ557Cを含む配列番号10の変種に付着されてよい。Hel308MbuのCys変異体は、必要に応じてヘテロ二量体に作製されてもよい。この手法ではHel308Mbu−Q442CおよびHel308Mbu−Q577Cなどの2つの異なるCys変異体対は、ヘッドトゥーテール様式で連結されてよい。ヘテロ二量体は、2つの可能な方法で形成されてもよい。第一は、上に考察したホモ二機能性リンカーの使用を含む。ヘリカーゼ変種の1つは、1つのリンカーがタンパク質の1分子に付着されるように大過剰量のリンカーで修飾されてよい。このリンカー修飾変種は、次いで未修飾タンパク質、潜在的ホモ二量体、および他のヘリカーゼ変種と反応する未反応リンカーから精製されてよい。得られた二量体は、次いで他の分子種から精製されてよい。
第二は、ヘテロ二機能性リンカーの使用を含む。例えばヘリカーゼ変種の1つは、一方の末端にマレイミドまたはヨードアセトアミド官能基および他方の末端にシクロオクチン官能基(DIBO)を含有する第一のPEGリンカーで修飾されてよい。この一例は下に示される:
第二のヘリカーゼ変種は、一方の末端にマレイミドまたはヨードアセトアミド官能基および他方の末端にアジド官能基を含有する第二のPEGリンカーで修飾されてよい。一例を下に示す:
2つの異なるリンカーを有する2つのヘリカーゼ変種は、次いで精製され、二量体を作製するために合わせてクリック(銅フリークリックケミストリーを使用する)されてよい。銅フリークリックケミストリーは、その望ましい特徴によりこれらの応用において使用されている。例えばそれは、迅速、清潔およびタンパク質に無毒である。しかし他の好適な生体直交型化学は、これだけに限らないが、シュタウディンガー化学、ヒドラジンまたはヒドラジド/アルデヒドまたはケトン試薬(HyNic+4FB化学、全てのSolulink(商標)試薬を含む)、ディール・アルダー試薬対およびボロン酸/サリチルヒドロキサム酸試薬を含む。
同じヘリカーゼの2つの異なる変種を連結するこれらの2つの方法は、2つの異なるヘリカーゼの二量体およびヘリカーゼポリメラーゼ二量体などのヘリカーゼと成分とが互いに異なっている上に考察した構築物のいずれについても有効である。
類似の方法がさまざまなFaz変種を連結するために使用され得る。1つのFaz変種(Q442Fazを含む配列番号10など)は、1つのリンカーがタンパク質の1つの分子に付着されるように大過剰量のリンカーで修飾されてよい。このリンカー修飾Faz変種は、次いで未修飾タンパク質、潜在的ホモ二量体、および第二のFaz変種(Q577Fazを含む配列番号10など)と反応する未反応リンカーから精製されてよい。得られた二量体は、次いで他の分子種から精製されてよい。
ヘテロ二量体は、同じヘリカーゼまたは異なるヘリカーゼのシステイン変種とFaz変種とを連結することによっても作製できる。例えば任意の上のシステイン変種(Q442Cを含む配列番号10など)は、任意の上のFaz変種(Q577Fazを含む配列番号10など)と二量体を作製するために使用できる。一方の末端にマレイミドまたはヨードアセトアミド官能性および他方の末端にDBCO官能性を有するヘテロ二機能性PEGリンカーは、この変異体の組合せにおいて使用できる。そのようなリンカーの一例は、下に示されている(DBCO−PEG4−マレイミド):
リンカーの長さは、2つの官能基間のPEG単位の数を変えることによって変更できる。
ヘリカーゼヘテロ三量体は、Hel308ヘリカーゼ、XPDヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、TraIヘリカーゼおよびこれらの変種から選択される3種の異なる型のヘリカーゼを含んでよい。3個より多いヘリカーゼを含むオリゴマーについても同様である。構築物中の2つ以上のヘリカーゼは、配列番号10、22、33または52の異なる変種などの同じヘリカーゼの異なる変種であってよい。異なる変種は、異なる位置を介する付着を促進するために異なる位置で修飾されてよい。ヘテロ三量体は、したがってヘッドトゥーテールおよびヘッドトゥーヘッド編成である場合がある。
本発明の構築物中の2つ以上のヘリカーゼは、互いに同じであってよい(すなわち構築物はホモ二量体、三量体、四量体または五量体などである)。ホモオリゴマーは、2つ以上のHel308ヘリカーゼ、2つ以上のXPDヘリカーゼ、2つ以上のRecDヘリカーゼ、2つ以上のTraIヘリカーゼまたは2つ以上の上に考察した任意の変種を含んでよい。そのような実施形態ではヘリカーゼは、各ヘリカーゼ中の同じ位置を使用して好ましくは付着している。ヘリカーゼは、したがってヘッドトゥーヘッドで付着している。ヘリカーゼは、同じ位置でヘリカーゼに置換されているシステイン残基またはFaz残基を使用して連結されてよい。同一のヘリカーゼ変種中のシステイン残基は、マレイミドまたはヨードアセトアミドなどのチオール反応性基を含有するホモ二機能性リンカーを使用して連結されてよい。これらの官能基は、次の例のとおりポリエチレングリコール(PEG)鎖の末端にあってよい:
リンカーの長さは、必要とされる応用に合わせて変更できる。例えばnは、2、3、4、8、11、12、16またはそれ以上であってよい。PEGリンカーは、水溶性などの好都合な特徴を有することから好適である。他の非PEGリンカーもシステイン連結において使用できる。
同様の手法を使用することによって同一のFaz変種は、ホモ二量体に作製され得る。DIBO官能基を有するホモ二機能性リンカーは、Cu2+フリークリック化学を使用してホモ二量体を作製するために、同じFaz変種の2分子を連結するために使用できる。リンカーの一例は下に示されている:
PEGリンカーの長さは、2、4、8、12、16またはそれ以上のPEG単位を含んで変化してよい。そのようなリンカーは、定量を容易にするために蛍光タグを組み込んで作製されてもよい。そのような蛍光タグは、マレイミドリンカーにも組み込まれ得る。
本発明は、本発明のヘリカーゼおよび、配列番号130(メタノピュルス・カンドレリ(Methanopyrus kandleri)由来トポイソメラーゼV由来H−Lドメイン;配列番号129)を含むアミノ酸配列または配列番号130の配列全体にわたってアミノ酸同一性に基づいて配列番号130に少なくとも80%相同を有するその変種を含む構築物であって、ヘリカーゼがアミノ酸配列に付着しており、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を有する構築物も提供する。ヘリカーゼは上に考察した任意の方法でアミノ酸配列に付着してよい。
本発明の好ましい構築物は、下の表6に示されている。各列は、左側のカラムのヘリカーゼが右側のカラムの追加的ポリヌクレオチド結合成分に本発明により付着している好ましい構築物を示す。右側のカラムのポリヌクレオチド結合成分がヘリカーゼである場合、それも本発明のヘリカーゼであり得る。
ポリヌクレオチド配列
本明細書に記載の任意のタンパク質は、当技術分野において公知の方法を使用して発現され得る。ポリヌクレオチド配列は、当技術分野における標準的方法を使用して単離および複製され得る。染色体DNAは、メタノコッコイデス・ブルトニイ(Methanococcoides burtonii)などのヘリカーゼ産生生物からおよび/または大腸菌(E. coli)などのSSB産生生物から抽出され得る。目的の配列をコードしている遺伝子は、特異的プライマーを伴うPCRを使用して増幅され得る。増幅された配列は、次いでクローニングベクターなどの組換え複製可能ベクターに組み込まれてよい。ベクターは、適合性の宿主細胞においてポリヌクレオチドを複製するために使用され得る。したがってポリヌクレオチド配列は、目的の配列をコードしているポリヌクレオチドを複製可能ベクターに導入し、ベクターを適合性の宿主細胞に導入し、ベクターの複製をもたらす条件下で宿主細胞を増殖させることによって作製され得る。ベクターは宿主細胞から回収され得る。ポリヌクレオチドのクローニングのために好適な宿主細胞は、当技術分野において公知であり、下により詳細に記載される。
ポリヌクレオチド配列は、好適な発現ベクターにクローニングされてよい。発現ベクターではポリヌクレオチド配列は、典型的には、宿主細胞によるコード配列の発現をもたらすことができる制御配列に作動可能に連結される。そのような発現ベクターは構築物を発現するために使用され得る。
用語「作動可能に連結する」は、記載される構成成分がそれらが意図する様式で機能する関係の近位にあることを指す。コード配列に「作動可能に連結される」制御配列は、コード配列の発現が制御配列と適合性である条件下で達成されるような方法でライゲーションされる。同じまたは異なるポリヌクレオチドの複数のコピーは、ベクターに導入されてよい。
発現ベクターは、次いで好適な宿主細胞に導入されてよい。それにより構築物は、構築物をコードしているポリヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入し、ベクターを適合性の細菌宿主細胞に導入し、ポリヌクレオチド配列の発現をもたらす条件下で宿主細胞を増殖させることによって産生され得る。
ベクターは、複製開始点、場合により前記ポリヌクレオチド配列の発現のためのプロモーターおよび場合によりプロモーターのレギュレーターと共に提供される例えば、プラスミド、ウイルスまたはファージベクターであってよい。ベクターは、1つまたは複数の選択可能マーカー遺伝子、例えばアンピリシン耐性遺伝子を含有してよい。プロモーターおよび他の発現調節シグナルは、発現ベクターが設計された宿主細胞に適合性であるように選択されてよい。T7、trc、lac、araまたはλプロモーターは典型的には使用される。
宿主細胞は、典型的には高いレベルで構築物を発現する。ポリヌクレオチド配列で形質転換される宿主細胞は、細胞を形質転換するために使用される発現ベクターに適合性であるように選ばれる。宿主細胞は、典型的には細菌性、好ましくは大腸菌(E. coli)である。λDE3溶原菌を有する任意の細胞、例えばC41(DE3)、BL21(DE3)、JM109(DE3)、B834(DE3)、TUNER、OrigamiおよびOrigami Bは、T7プロモーターを含むベクターを発現できる。
本発明の方法
本発明は、標的ポリヌクレオチドの移動を制御する方法を提供する。方法は、標的ポリヌクレオチドを本発明のヘリカーゼまたは本発明の構築物と接触させ、それによりポリヌクレオチドの移動を制御するステップを含む。方法は、好ましくはポアに電位が印加されて実行される。下により詳細に考察されるとおり、印加された電位は、ポアとヘリカーゼまたは構築物との複合体の形成を典型的には生じる。印加された電位は、電圧電位であってよい。代替的に印加された電位は、化学電位であってよい。この一例は、両親媒性層全体に塩勾配を用いている。塩勾配は、Holdenら、J Am Chem Soc. 2007 Jul 11;129(27):8650-5に開示されている。
本発明は標的ポリヌクレオチドを特性決定する方法も提供する。方法は、
(a)標的ポリヌクレオチドを膜貫通ポアおよび本発明のヘリカーゼまたは本発明の構築物に接触させて、ヘリカーゼまたは構築物がポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御するステップを含む。方法は、(b)ポリヌクレオチドがポアに関して移動するときに1つまたは複数の測定値を取るステップであって、測定値が標的ポリヌクレオチドの1つまたは複数の特性の指標であり、それにより標的ポリヌクレオチドを特性決定するステップも含む。
ステップ(a)および(b)は、上に考察したとおり好ましくはポアに電位が印加されて実行される。いくつかの場合では、ポリヌクレオチドがポアに関して移動するときにポアを通る電流が標的ポリヌクレオチドの配列を決定するために使用される。これは、鎖配列決定法である。
本発明の方法は、標的ポリヌクレオチドを特性決定するためである。ポリヌクレオチドは上に定義されている。
標的ポリヌクレオチドの全体または部分だけは、本方法を用いて特性付けられ得る。標的ポリヌクレオチドは、任意の長さであってよい。例えばポリヌクレオチドは、長さ少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400または少なくとも500ヌクレオチド対であってよい。ポリヌクレオチドは、1000ヌクレオチド対以上、長さ5000ヌクレオチド対以上または長さ100000ヌクレオチド対以上であってよい。
標的ポリヌクレオチドは、任意の好適な試料中に存在する。本発明は、標的ポリヌクレオチドを含有することが公知であるまたは含有すると考えられる試料について典型的には実行される。代替的に本発明は、1つまたは複数の標的ポリヌクレオチドの同一性を確認するために試料中でのその存在が公知であるまたは期待される試料について実行され得る。
試料は生物学的試料であってよい。本発明は、任意の生物または微生物から得られたまたは抽出された試料についてin vitroで実行されてよい。生物または微生物は典型的には古細菌のもの、原核性または真核性であり、典型的には五界:植物界、動物界、菌界、モネラ界および原生生物界の1つに属する。本発明は、任意のウイルスから得られたまたは抽出された試料についてin vitroで実行されてよい。試料は、好ましくは液体試料である。試料は典型的には、患者の体液を含む。試料は尿、リンパ液、唾液、粘液または羊水であってよいが、好ましくは血液、血漿または血清である。典型的には試料は、ヒト由来であるが、代替的に、ウマ、ウシ、ヒツジまたはブタなどの商業的に飼育される動物由来などの別の哺乳動物由来であってもよく、代替的にネコまたはイヌなどの愛玩動物であってもよい。代替的に植物由来の試料は、穀類、マメ、果実または野菜などの商品作物(例えばコムギ、オオムギ、カラスムギ、セイヨウアブラナ、トウモロコシ、ダイズ、イネ、バナナ、リンゴ、トマト、ジャガイモ、ブドウ、タバコ、マメ、レンズマメ、サトウキビ、ココア、ワタ)から典型的には得られる。
試料は、非生物学的試料であってよい。非生物学的試料は、好ましくは液体試料である。非生物学的試料の例は、手術用液(surgical fluids)、水(飲料水、海水または河川水など)および検査室検査のための試薬を含む。
試料は、典型的にはアッセイされる前に例えば遠心分離によってまたは、不要の分子または細胞(赤血球細胞など)をろ過して除く膜を通すことによって処理される。試料は採取されてから直ちに測定されてよい。試料は、典型的にはアッセイの前に好ましくは−70℃より低くで、保存されてもよい。
膜貫通ポアは、ある程度膜を超える構造である。それは印加された電位によって駆動された水和イオンが膜を超えてまたは膜内に流れるようにする。膜貫通ポアは、典型的には膜全体を超え、それにより水和イオンは膜の一方の側から膜の他方の側へ流れられる。しかし膜貫通ポアは、膜を超えている必要はない。それは、一方の端で閉じていてもよい。例えばポアは、水和イオンが膜に沿ってまたは膜内に流れ得る穴であってもよい。
任意の膜貫通ポアが本発明において使用され得る。ポアは、生物学的または人工であってよい。好適なポアは、これだけに限らないが、タンパク質ポア、ポリヌクレオチドポアおよびソリッドステートポアを含む。
任意の膜が本発明により用いられ得る。好適な膜は、当技術分野において周知である。膜は、好ましくは両親媒性層である。両親媒性層は、少なくとも1つの親水性の部分および少なくとも1つの親油性または疎水性の部分の両方を有するリン脂質などの両親媒性分子から形成される層である。両親媒性分子は合成または天然に存在するものでよい。天然に存在しない両親媒性物質、および単層を形成する両親媒性物質は当技術分野において公知であり、例えば7s(Gonzalez-Perezら、Langmuir、2009、25、10447-10450)を含む。ブロック共重合体は、2つ以上の単量体サブユニットが1本のポリマー鎖を作るように併せて重合されている重合体材料である。ブロック共重合体は、典型的には各単量体サブユニットによって寄与される特徴を有する。しかし、ブロック共重合体は、個々のサブユニットから形成されたポリマーが有さない特有の特徴を有する場合がある。ブロック共重合は、単量体サブユニットの1つが疎水性(すなわち親油性)である一方で他のサブユニット(複数可)が水性媒体中では親水性であるように操作されてよい。この場合ブロック共重合体は、両親媒性特徴を有する場合があり、生物学的膜を模倣する構造を形成できる。ブロック共重合体は、ジブロック(2個の単量体サブユニットからなる)であってよいが、両親媒性物質として振る舞うさらに複雑な配置を形成するために2個より多い単量体サブユニットから構築されてもよい。共重合体はトリブロック、テトラブトックまたはペンタブロック共重合体であってもよい。
両親媒性層は、単層または二重層であってよい。両親媒性層は、典型的には平面状脂質二重層または支持された二重層である。
両親媒性層は典型的には、脂質二重層である。脂質二重層は細胞膜のモデルであり、さまざまな実験研究のための優れたプラットフォームとして役立つ。例えば、脂質二重層は、単一チャネル記録による膜タンパク質のin vitro調査のために用いられ得る。代替的に脂質二重層は、さまざまな物質の存在を検出するためのバイオセンサーとして用いられ得る。脂質二重層は、任意の脂質二重層であってよい。好適な脂質二重層は、これだけに限らないが平面状脂質二重層、支持された二重層またはリポソームを含む。脂質二重層は好ましくは平面状脂質二重層である。好適な脂質二重層は、国際出願第PCT/GB08/000563号(WO2008/102121として公開)、国際出願第PCT/GB08/004127号(WO2009/077734として公開)および国際出願第PCT/GB2006/001057号(WO2006/100484として公開)に開示されている。
脂質二重層を形成するための方法は、当技術分野において公知である。好適な方法は実施例に開示する。脂質二重層は、脂質単層が水溶液/空気界面にその界面に垂直である開口部のいずれかの端を通って運ばれる、モンタルおよびミューラーの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、1972;69:3561-3566)によって一般的には形成される。
モンタルおよびミューラーの方法は、タンパク質ポア挿入のために好適である良質な脂質二重層を形成する対費用効果が高くて比較的簡単な方法であることから一般的である。二重層形成の他の一般的方法は、チップディッピング、ペインティング二重層およびリポソーム二重層のパッチクランピングを含む。
好ましい実施形態では、脂質二重層は国際出願第PCT/GB08/004127号(WO2009/077734として公開)に記載のとおり形成される。
別の好ましい実施形態では、膜は、ソリッドステート層である。ソリッドステート層は生物由来ではない。換言すると、ソリッドステート層は、生物または細胞などの生物学的環境由来でなく、またはそれから単離されず、生物学的に入手可能な構造の合成的に製造されたバージョンでもない。ソリッドステート層は、これだけに限らないがミクロ電子材料、Si、A1およびSiOなどの絶縁材料、ポリアミドなどの有機および無機ポリマー、Teflon(登録商標)などのプラスチックまたは2要素添加硬化シリコンゴム(two-component addition-cure silicone rubber)などのエラストマーならびにガラスを含む有機材料ならびに無機材料の両方から形成され得る。ソリッドステート層は、グラフェン(graphene)などの一原子層からまたは数原子厚だけである層から形成され得る。好適なグラフェン(graphene)層は、国際出願第PCT/US2008/010637号(WO2009/035647として公開)に開示されている。
方法は、(i)ポアを含む人工両親媒性層、(ii)ポアを含む単離された天然に存在する脂質二重層、または(iii)挿入されたポアを有する細胞を用いて典型的には実行される。方法は、人工脂質二重層などの人工両親媒性層を用いて典型的には実行される。両親媒性層は、ポアに加えて他の膜貫通タンパク質および/または膜内タンパク質ならびに他の分子を含んでもよい。好適な装置および条件は、下に考察される。本発明の方法は、典型的にはin vitroで実行される。
ポリヌクレオチドは、膜にカップリングされ得る。これは、任意の公知の方法を用いてされ得る。膜が脂質二重層などの両親媒性層である場合は(下に詳細に考察されるとおり)、ポリヌクレオチドは、膜に存在するポリペプチドまたは膜に存在する疎水性アンカーを介して膜に好ましくはカップリングされる。疎水性アンカーは、好ましくは脂質、脂肪酸、ステロール、カーボンナノチューブまたはアミノ酸である。
ポリヌクレオチドは膜に直接カップリングされ得る。ポリヌクレオチドは好ましくは膜にリンカーを介してカップリングされる。好ましいリンカーは、これだけに限らないがポリヌクレオチド、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリペプチドなどのポリマーを含む。ポリヌクレオチドが膜に直接カップリングされる場合、膜とヘリカーゼとの間の距離のためにポリヌクレオチドの末端まで特性決定が継続できないことから、いくらかのデータが失われる。リンカーが用いられる場合、ポリヌクレオチドは完了まで処理され得る。リンカーが用いられる場合、リンカーはポリヌクレオチドの任意の位置に付着され得る。リンカーは、テールポリマーでポリヌクレオチドに典型的には付着される。
カップリングは、安定または一過的であってよい。ある種の応用に関してカップリングの一過的な性質は好ましい。安定カップリング分子がポリヌクレオチドの5’末端または3’末端のいずれかに直接付着された場合、二重層とヘリカーゼ活性部位との間の距離のためにポリヌクレオチドの末端まで特性決定が継続できないことから、いくらかのデータが失われる。カップリングが一過的である場合、カップリングされた端は無作為に二重層から遊離し、ポリヌクレオチドは完了まで処理され得る。安定なまたは一過的連結を膜と形成する化学基は、下により詳細に考察される。ポリヌクレオチドは、コレステロール(cholesterol)または脂肪酸アシル鎖を用いて脂質二重層などの両親媒性層に一過的にカップリングされ得る。ヘキサデカン酸などの長さ6から30までの炭素原子を有する任意の脂肪酸アシル鎖は用いられ得る。
好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは、両親媒性層にカップリングされる。合成脂質二重層へのポリヌクレオチドのカップリングは、種々の異なるテザーリング戦略で既に実行されている。これらを下の表7に要約する。
ポリヌクレオチドは、合成反応において修飾ホスホラミダイトを用いて官能基化されることができ、チオール、コレステロール(cholesterol)、脂質およびビオチン基などの反応基の付加に容易に適合される。これらのさまざまな付着化学物質は、ポリヌクレオチドに一連の付着選択肢をもたらす。さまざまな各修飾基は、わずかに異なる方法でポリヌクレオチドを繋ぎ止め、カップリングは常に永久的ではなく、二重層へのさまざまな残存時間をポリヌクレオチドにもたらす。一過的カップリングの有利点は、上に考察される。
ポリヌクレオチドのカップリングは、反応基がポリヌクレオチドに付加され得る限り多数の他の手段によっても達成され得る。DNAのいずれかの端への反応基の付加は既に報告されている。チオール基はポリヌクレオチドキナーゼおよびATPγSを用いてssDNAの5’に付加され得る(Grant,G.P.およびP.Z.Qin (2007) "A facile method for attaching nitroxide spin labels at the 5' terminus of nucleic acids." Nucleic Acids Res 35(10):e77)。ビオチン、チオールおよびフルオロフォア(fluorophore)などの化学基のより多様な選択は、修飾オリゴヌクレオチドをssDNAの3’に組み込むためにターミナルトランスフェラーゼを用いて付加され得る(Kumar,A.,P.Tchenら、(1988)."Nonradioactive labeling of synthetic oligonucleotide probes with terminal deoxynucleotidyl transferase." Anal Biochem 169(2):376-82)。
代替的に反応基は、二重層に既にカップリングされたものに相補的なDNAの短片の付加のために考慮される場合があり、付着はハイブリダイゼーションを介して達成され得る。ssDNAの短片のライゲーションは、T4RNAリガーゼIを用いて報告されている(Troutt,A.B.,M.G.McHeyzer-Williamsら、(1992)."Ligation-anchored PCR: a simple amplification technique with single-sided specificity." Proc Natl Acad Sci U S A 89(20):9823-5)。代替的にssDNAまたはdsDNAのいずれかは、天然dsDNAにライゲーションされることができ、次いで2本鎖は熱的または化学的変性によって分離された。天然dsDNAについて、ssDNAの1片を二重鎖の1つもしくは両方の端に、またはdsDNAを1つまたは両方の端へのいずれかで付加できる。次いで、二重鎖が融解される際に、ssDNAが5’末端、3’末端もしくは両端でのライゲーションもしくは修飾のために用いられ、dsDNAがライゲーションのために用いられた場合、各一重鎖は5’または3’修飾のいずれかを有する。ポリヌクレオチドが合成鎖である場合、カップリング化学はポリペプチドの化学合成の際に組み込まれ得る。ここ例えばポリヌクレオチドは、付着された反応基を有するプライマーを用いて合成され得る。
ゲノムDNAのセクションの増幅のための一般的技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いている。本明細書では、2個の合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いてDNAの同じセクションの多数の複製物が作製される場合があり、各複製物について二重鎖中の各鎖の5’は合成ポリヌクレオチドである。コレステロール(cholesterol)、チオール(thiol)、ビオチン(biotin)または脂質などの反応基を有するアンチセンスプライマーを用いるステップによって、増幅された標的DNAの各複製物は、カップリングのための反応基を含有する。
膜貫通ポアは、好ましくは膜貫通タンパク質ポアである。膜貫通タンパク質ポアは、分析物などの水和イオンが膜の一方の側から膜の他方の側へ流れるようにするポリペプチドまたはポリペプチドの集積物である。本発明では膜貫通タンパク質ポアは、水和イオンが印加された電位によって膜の一方の側から他方へ流れるように駆動されるようにするポアを形成できる。膜貫通タンパク質ポアは、ヌクレオチドなどの分析物が膜(脂質二重層など)の一方の側から他方へ流れるように好ましくはする。膜貫通タンパク質ポアは、DNAまたはRNAなどのポリヌクレオチドがポアを通って移動されることを可能にする。
膜貫通タンパク質ポアは、単量体またはオリゴマーであってよい。ポアは、いくつかの反復サブユニット(6、7、8または9サブユニット)から好ましくは作られる。ポアは好ましくは六量体、七量体、八量体または九量体ポアである。
膜貫通タンパク質ポアは、イオンが通って流れることができるバレルまたはチャネルを典型的には含む。ポアのサブユニットは、典型的には中央軸を取り囲み、膜貫通βバレルもしくはチャネルまたは膜貫通αヘリックス束もしくはチャネルに鎖を供する。
膜貫通タンパク質ポアのバレルまたはチャネルは、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸などの分析物との相互作用を促進するアミノ酸を典型的には含む。これらのアミノ酸は、バレルまたはチャネルの狭窄部付近に好ましくは位置する。膜貫通タンパク質ポアは、アルギニン、リシンもしくはヒスチジンなどの1つもしくは複数の正に荷電したアミノ酸またはチロシンもしくはトリプトファンなどの芳香族アミノ酸を典型的には含む。これらのアミノ酸は、ポアとヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸との間の相互作用を典型的には促進する。
本発明による使用のための膜貫通タンパク質ポアは、β−バレルポアまたはα−ヘリックス束ポアから生じ得る。β−バレルポアは、β−鎖から形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なβ−バレルポアは、これだけに限らないが、α−ヘモリジン(hemolysin)、炭疽毒素およびロイコシジン(leukocidin)などのβ−毒素、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)ポリン(porin)(Msp)、例えばMspA、MspB、MspCまたはMspD、外膜ポリン(porin)F(OmpF)、外膜ポリン(porin)G(OmpG)、外膜ホスホリパーゼAおよびナイセリア(Neisseria)オートトランスポーターリポタンパク質(NalP)などの細菌の外膜タンパク質/ポリン(porin)を含む。α−ヘリックス束ポアは、α−ヘリックスから形成されたバレルまたはチャネルを含む。好適なα−ヘリックス束ポアは、これだけに限らないが内膜タンパク質ならびに、WZAおよびClyA毒などのα外膜タンパク質を含む。膜貫通ポアは、Msp由来またはα−ヘモリジン(α−HL)由来である場合がある。
膜貫通タンパク質ポアは、好ましくはMspに由来し、好ましくはMspAに由来する。そのようなポアはオリゴマーであり、典型的にはMsp由来の7、8、9または10個の単量体を含む。ポアは、同一の単量体を含むMsp由来のホモオリゴマーポアであってよい。代替的にポアは、少なくとも1個の他とは異なる単量体を含むMsp由来のヘテロオリゴマーポアであってもよい。好ましくはポアは、MspAまたはその相同体もしくはパラログ由来である。
Msp由来の単量体は典型的には、配列番号2に示す配列またはその変種を含む。配列番号2はMspA単量体のMS−(B1)8変異体である。それは次の変異:D90N、D91N、D93N、D118R、D134RおよびE139Kを含む。配列番号2の変種は、配列番号2のものから変化し、ポアを形成する能力を保持しているアミノ酸配列を有するポリペプチドである。ポアを形成する変種の能力は、当技術分野において公知の任意の方法を用いてアッセイされ得る。例えば変種は、他の適切なサブユニットと共に両親媒性層に挿入されることができ、ポアを形成するためにオリゴマー化するその能力は測定され得る。サブユニットを両親媒性層などの膜に挿入するための方法は、当技術分野において公知である。例えばサブユニットは、脂質二重層に拡散し、脂質二重層に結合するステップおよび機能的状態に会合するステップによって挿入されるように脂質二重層を含有する溶液中に精製された形態で懸濁され得る。代替的にサブユニットは、M.A.Holden,H.Bayley.J.Am.Chem.Soc.2005、127、6502-6503および国際出願第PCT/GB2006/001057号(WO2006/100484として公開)に記載の「ピックアンドプレース」法を用いて膜に直接挿入され得る。
配列番号2のアミノ酸配列の全長にわたって変種は、アミノ酸同一性に基づいてその配列に好ましくは少なくとも50%相同である。より好ましくは変種は、配列全体にわたって配列番号2のアミノ酸配列にアミノ酸同一性に基づいて少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同である。少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%または95%のアミノ酸同一性が100以上(例えば125、150、175もしくは200またはそれ以上)のストレッチの連続アミノ酸にわたってある場合がある(「高い相同性」)。
相同性を決定するために当技術分野における標準的方法が用いられ得る。例えばUWGCGパッケージは、相同性を算出するために用いられ得るBESTFITプログラム(例えばその初期設定で用いられる)を提供する(Devereuxら、(1984) Nucleic Acids Research 12、387-395頁)。PILEUPおよびBLASTアルゴリズムは、相同性を算出するためまたは配列を列挙するために(等価残基または対応する配列を同定するステップなど(典型的にはその初期設定で))用いられ得る、例えばAltschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290-300;Altschul,S.Fら、(1990) J Mol Biol 215:403-10に記載のとおり。BLAST分析を実施するためのソフトウエアは、the National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公開で入手可能である。
配列番号2は、MspA単量体のMS−(B1)8変異体である。変種は、MspAと比較してMspB、CまたはD単量体中の任意の変異を含み得る。MspB、CおよびDの成熟形態は配列番号5から7に示される。詳細には変種は、MspBに存在する次の置換:A138Pを含む場合がある。変種は、MspCに存在する次の置換:A96G、N102EおよびA138Pの1つまたは複数を含む場合がある。変種はMspDに存在する次の置換:G1の欠失、L2V、E5Q、L8V、D13G、W21A、D22E、K47T、I49H、I68V、D91G、A96Q、N102D、S103T、V104I、S136KおよびG141Aの1つまたは複数を含む場合がある。変種は、MspB、CおよびD由来の1つまたは複数の変異および置換の組合せを含み得る。変種は、好ましくは変異L88Nを含む。配列番号2の変種は、MS−(B1)8の全変異に加えて変異L88Nを有し、MS−(B2)8と称される。本発明において用いられるポアは、好ましくはMS−(B2)8である。さらに好ましい変種は、変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを含む。配列番号2の変種は変異G75S/G77S/L88N/Q126RをMS−(B1)8の全ての変異に加えて含み、MS−(B2C)8と称される。本発明において使用されるポアは、好ましくはMS−(B2)8またはMS−(B2C)8である。
アミノ酸置換は、上に考察したものに加えて配列番号2のアミノ酸配列に作出され得る(例えば1、2、3、4、5、10、20または30置換まで)。保存的置換は、アミノ酸を同様の化学構造、同様の化学的特性または同様の側鎖容積を有する他のアミノ酸で置き換える。導入されるアミノ酸は、それらが置き換えるアミノ酸と同様の極性、親水性、疎水性、塩基性度、酸性度、中性度または電荷を有してよい。代替的に保存的置換は、既存の芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入する場合がある。保存的アミノ酸変更は、当技術分野において周知であり、下の表8に定義のとおり20種の主なアミノ酸の特性に従って選択され得る。アミノ酸が同様の極性を有する場合、これは表9におけるアミノ酸側鎖についてのハイドロパシースケールを参照することによっても決定され得る。
配列番号2のアミノ酸配列の1つまたは複数のアミノ酸残基は、上に記載のポリペプチドから追加的に欠失され得る。1、2、3、4、5、10、20または30残基までまたはそれ以上が欠失され得る。
変種は、配列番号2の断片を含み得る。そのような断片は、ポア形成活性を保持する。断片は、長さ少なくとも50、100、150または200アミノ酸であってよい。そのような断片は、ポアを生成するために用いられ得る。断片は、配列番号2のポア形成ドメインを好ましくは含む。断片は、配列番号2の残基88、90、91、105、118および134の1つを含まなければならない。典型的には断片は、配列番号2の残基88、90、91、105、118および134の全てを含む。
1つまたは複数のアミノ酸は、上に記載のポリペプチドに代替的または追加的に付加され得る。伸長は、配列番号2のアミノ酸配列またはそのポリペプチド変種もしくは断片のアミノ末端またはカルボキシ末端に与えられ得る。伸長は極めて短い(例えば長さ1から10アミノ酸)場合がある。代替的に伸長はより長くても(例えば50または100アミノ酸まで)よい。担体タンパク質は、本発明によるアミノ酸配列に融合され得る。他の融合タンパク質は、下により詳細に考察される。
上に考察したとおり変種は、配列番号2から変更され、ポアを形成する能力を保持しているアミノ酸配列を有するポリペプチドである。変種は、ポア形成に関与する配列番号2の領域を典型的には含有する。β−バレルを含有するMspのポア形成能力は、各サブユニットのβシートによって与えられる。配列番号2の変種は、β−シートを形成する配列番号2中の領域を典型的には含む。1つまたは複数の修飾が、得られる変種がポアを形成する能力を保持する限り、β−シートを形成する配列番号2の領域に作出され得る。配列番号2の変種は、置換、付加または欠失などの1つまたは複数の修飾をα−ヘリックスおよび/またはループ領域内に好ましくは含む。
Msp由来の単量体は、それらの同定または精製を支援するために、例えばヒスチジン残基(histタグ)、アスパラギン酸残基(aspタグ)、ストレプトアビジンタグもしくはフラッグタグの付加によって、または(細胞からのそれらの分泌を促進するためのシグナル配列の付加によってポリペプチドが天然でそのような配列を含有しない場合に)修飾され得る。遺伝子タグを導入するための別法は、ポア上の天然のまたは操作された位置にタグを化学的に反応させることである。この例は、ポアの外側に操作されたシステインにゲルシフト試薬を反応させることである。これは、ヘモリジンヘテロ−オリゴマーを分離するステップのための方法として実証されている(Chem Biol.1997 Jul;4(7):497-505)。
Msp由来の単量体は、明示標識(revealing label)で標識され得る。明示標識は、ポアが検出されるようにする任意の好適な標識であってよい。好適な標識は、上に記載されている。
Msp由来の単量体は、D−アミノ酸を用いても生成され得る。例えばMsp由来の単量体は、L−アミノ酸とD−アミノ酸との混合物を含み得る。これは、そのようなタンパク質またはペプチドを生成するための当技術分野における従来法である。
Msp由来の単量体は、ヌクレオチド識別を促進するために1つまたは複数の特異的修飾を含有する。Msp由来の単量体は、他の非特異的な修飾をそれらがポア形成を干渉しない限り含有できる。多数の非特異的側鎖修飾が当技術分野において公知であり、Msp由来の単量体の側鎖に作出され得る。そのような修飾は、例えばアルデヒドとの反応に続くNaBHでの還元によるアミノ酸の還元的アルキル化、メチルアセトイミデート(methylacetimidate)でのアミジン化または無水酢酸でのアシル化を含む。
Msp由来の単量体は、当技術分野において公知の標準的方法を用いて生成され得る。Msp由来の単量体は、合成的にまたは組換え手段によって作出され得る。例えばポアはin vitro翻訳および転写(IVTT)によって合成され得る。ポアを生成するための好適な方法は、国際出願第PCT/GB09/001690号(WO2010/004273として公開)、第PCT/GB09/001679号(WO2010/004265として公開)または第PCT/GB10/000133号(WO2010/086603として公開)に考察されている。ポアを膜に挿入するための方法は考察されている。
膜貫通タンパク質ポアは、好ましくはα−ヘモリジン(α−HL)由来でもある。野生型α−HLポアは、7個の同一単量体またはサブユニットから形成される(すなわち七量体である)。α−ヘモリジン−NNの1個の単量体またはサブユニットの配列は配列番号4に示されている。膜貫通タンパク質ポアは、配列番号4に示す配列またはその変種をそれぞれ含む7個の単量体を好ましくは含む。配列番号4のアミノ酸1、7から21、31から34、45から51、63から66、72、92から97、104から111、124から136、149から153、160から164、173から206、210から213、217、218、223から228、236から242、262から265、272から274、287から290および294はループ領域を形成する。配列番号4の残基113および147はα−HLのバレルまたはチャネルの狭窄の一部を形成する。
そのような実施形態では、配列番号4に示す配列またはその変種をそれぞれ含む7個のタンパク質または単量体を含むポアは、本発明の方法において好ましくは用いられる。7個のタンパク質は、同じ(ホモ七量体)または異なっていて(ヘテロ七量体)よい。
配列番号4の変種は、配列番号4のものから変化したアミノ酸配列を有し、ポア形成能力を保持しているタンパク質である。ポアを形成する変種の能力は、当技術分野において公知の任意の方法を用いてアッセイされ得る。例えば変種は、他の適切なサブユニットと共に脂質二重層などの両親媒性層に挿入されることができ、ポアを形成するためにオリゴマー化するその能力は決定され得る。サブユニットを脂質二重層などの両親媒性層に挿入するための方法は当技術分野において公知である。好適な方法は上に考察されている。
変種は、ヘリカーゼまたは構築物への共有結合付着または相互作用を促進する修飾を含み得る。変種は、ヘリカーゼまたは構築物への付着を促進する1つまたは複数の反応性システイン残基を好ましくは含む。例えば変種は、配列番号4の位置8、9、17、18、19、44、45、50、51、237、239および287ならびに/またはアミノ末端もしくはカルボキシ末端の1つまたは複数にシステインを含み得る。好ましい変種は、配列番号4の位置8、9、17、237、239および287の残基のシステインでの置換を含む(A8C、T9C、N17C、K237C、S239CまたはE287C)。変種は、好ましくは国際出願第PCT/GB09/001690号(WO2010/004273として公開)、第PCT/GB09/001679号(WO2010/004265として公開)、または第PCT/GB10/000133号(WO2010/086603として公開)に記載の変種のいずれか1つである。
変種は、ヌクレオチドとの任意の相互作用を促進する修飾も含み得る。
変種は、生物(例えば細菌ブドウ球菌(Staphylococcus))によって天然で発現される天然に存在する変種であってよい。代替的に変種は、大腸菌(Escherichia coli)などの細菌によってin vitroでまたは組換え的に発現されてもよい。変種は、組換え技術によって生成される天然に存在しない変種も含む。配列番号4のアミノ酸配列の全長にわたって変種は、アミノ酸同一性に基づいてその配列に好ましくは少なくとも50%相同である。より好ましくは変種ポリペプチドは、配列全体にわたって配列番号4のアミノ酸配列にアミノ酸同一性に基づいて少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同である。少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%または95%のアミノ酸同一性が200以上(例えば230、250、270もしくは280またはそれ以上)のストレッチの連続アミノ酸にわたってある場合がある(「高い相同性」)。相同性は上に考察のとおり決定され得る。
アミノ酸置換は、上に考察したものに加えて配列番号4のアミノ酸配列に作出され得る(例えば1、2、3、4、5、10、20または30置換まで)。保存的置換は、上に考察の通り作出され得る。
配列番号4のアミノ酸配列の1つまたは複数のアミノ酸残基は、上に記載のポリペプチドから追加的に欠失され得る。1、2、3、4、5、10、20または30残基までまたはそれ以上が欠失され得る。
変種は、配列番号4の断片であり得る。そのような断片はポア形成能力を保持する。断片は、長さ少なくとも50、100、200または250アミノ酸であってよい。断片は、配列番号4のポア形成ドメインを好ましくは含む。断片は典型的には配列番号4の残基119、121、135、113および139を含む。
1つまたは複数のアミノ酸は、上に記載のポリペプチドに代替的にまたは追加的に付加され得る。伸長は、配列番号4のアミノ酸配列またはその変種もしくは断片のアミノ末端またはカルボキシ末端に与えられ得る。伸長は極めて短い(例えば長さ1から10アミノ酸)場合がある。代替的に伸長は、より長くても(例えば50または100アミノ酸まで)良い。担体タンパク質は、ポアまたは変種に融合されてもよい。
上に考察したとおり、配列番号4の変種は、配列番号4のものから変更され、ポアを形成する能力を保持しているアミノ酸配列を有するサブユニットである。変種は、ポア形成に関与する配列番号4の領域を典型的には含有する。β−バレルを含有するα−HLのポア形成能力は、各サブユニットのβシートによって与えられる。配列番号4の変種は、β鎖を形成する配列番号4の領域を典型的には含む。β鎖を形成する配列番号4のアミノ酸は上に考察されている。1つまたは複数の修飾が、得られる変種がポアを形成する能力を保持する限りβ−鎖を形成する配列番号4の領域に作出され得る。配列番号4のβ鎖領域に作られ得る具体的な修飾は、上に考察されている。
配列番号4の変種は、置換、付加または欠失などの1つまたは複数の修飾をα−ヘリックスおよび/またはループ領域内に好ましくは含む。α−ヘリックスおよびループを形成するアミノ酸は、上に考察されている。
変種は、上に考察のとおり、その同定または精製を支援するために修飾され得る。
α−HL由来のポアは、Msp由来のポアに関連して上に考察のとおり作出され得る。
いくつかの実施形態では膜貫通タンパク質ポアは、化学的に修飾される。ポアは、任意の方法および任意の部位で化学的に修飾され得る。膜貫通タンパク質ポアは、1つもしくは複数のシステインへの分子の付着(システイン連結)、1つもしくは複数のリシンへの分子の付着、1つもしくは複数の非天然アミノ酸への分子の付着、エピトープの酵素修飾または末端の修飾によって好ましくは化学的に修飾される。そのような修飾を実行するための好適な方法は、当技術分野において周知である。膜貫通タンパク質ポアは、任意の分子の付着によって化学的に修飾され得る。例えばポアは、色素またはフルオロフォアの付着によって化学的に修飾され得る。
ポア中の任意の数の単量体は、化学的に修飾され得る。1つまたは複数(2、3、4、5、6、7、8、9または10個など)の単量体は、上に考察のとおり好ましくは化学的に修飾される。
システイン残基の反応性は、隣接残基の修飾によって増強され得る。例えば近接アルギニン、ヒスチジンまたはリシン残基の塩基性基は、システインチオール基のpKaをより反応性のS基のものに変化させる。システイン残基の反応性は、dTNBなどのチオール保護基によって保護され得る。これらは、リンカーが付着する前にポアの1つまたは複数のシステイン残基と反応できる。
(ポアが化学的に修飾される)分子は、国際出願第PCT/GB09/001690号(WO2010/004273として公開)、第PCT/GB09/001679号(WO2010/004265として公開)または第PCT/GB10/000133号(WO2010/086603として公開)に開示のとおりポアに直接付着され得るか、またはリンカーを介して付着され得る。
ヘリカーゼまたは構築物は、ポアに共有結合的に付着されていてもよい。ヘリカーゼまたは構築物は、好ましくはポアに共有結合的に付着されていない。ポアおよびヘリカーゼまたは構築物への電圧の印加は、典型的には標的ポリヌクレオチドを配列決定できるセンサーの形成を生じる。これは、下により詳細に考察される。
本明細書に記載の任意のタンパク質、すなわちヘリカーゼ、膜貫通タンパク質ポアまたは構築物は、それらの同定または精製を支援するために、例えばヒスチジン残基(hisタグ)、アスパラギン酸残基(aspタグ)、ストレプトアビジンタグ、フラッグタグ、SUMOタグ、GSTタグもしくはMBPタグの付加によって、または、それらの細胞からの分泌を促進するために(ポリペプチドが天然でそのような配列を含有していない場合に)シグナル配列の付加によって修飾され得る。遺伝子タグを導入するための別法は、ヘリカーゼ、ポアまたは構築物上の天然のまたは操作された位置にタグを化学的に反応させることである。この例は、ポアの外側の操作されたシステインにゲルシフト試薬を反応させることである。これは、ヘモリジンヘテロ−オリゴマーを分離するステップのための方法として実証されている(Chem Biol.1997 Jul;4(7):497-505)。
ヘリカーゼ、ポアまたは構築物は明示標識(revealing label)で標識され得る。明示標識は、ポアが検出されるようにする任意の好適な標識であってよい。好適な標識は、これだけに限らないが蛍光分子、放射性同位元素(例えば125I、35S)、酵素、抗体、抗原、ポリヌクレオチドおよびリガンド(ビオチンなど)を含む。
タンパク質は、合成的にまたは組換え手段によって作出され得る。例えばヘリカーゼ、ポアまたは構築物は、in vitro翻訳および転写(IVTT)によって合成され得る。ヘリカーゼ、ポアまたは構築物のアミノ酸配列は、天然に存在しないアミノ酸を含むようにまたはタンパク質の安定性を増大させるように修飾され得る。タンパク質が合成的手段によって生成される場合、そのようなアミノ酸は、生成の際に導入され得る。ヘリカーゼ、ポアまたは構築物は、合成的にまたは組換え生成のいずれかに続いて変更され得る。
ヘリカーゼ、ポアまたは構築物は、D−アミノ酸を用いても生成し得る。例えばポアまたは構築物は、L−アミノ酸とD−アミノ酸との混合物を含み得る。これは、そのようなタンパク質またはペプチドを生成するための当技術分野における従来法である。
ヘリカーゼ、ポアまたは構築物は、他の非特異的修飾もそれらがポア形成またはヘリカーゼまたは構築物機能を干渉しない限り含有できる。多数の非特異的側鎖修飾が当技術分野において公知であり、タンパク質(複数可)の側鎖に作出され得る。そのような修飾は、例えばアルデヒドとの反応に続くNaBHでの還元によるアミノ酸の還元的アルキル化、メチルアセトイミデート(methylacetimidate)でのアミジン化または無水酢酸でのアシル化を含む。
ヘリカーゼ、ポアおよび構築物は、当技術分野において公知の標準的方法を用いて生成され得る。ヘリカーゼ、ポアまたは構築物をコードするポリヌクレオチド配列は、当技術分野における標準的方法を用いて得られ、複製され得る。ヘリカーゼ、ポアまたは構築物をコードするポリヌクレオチド配列は、当技術分野における標準的技術を用いて細菌宿主細胞において発現され得る。ヘリカーゼ、ポアおよび/または構築物は、組換え発現ベクターからのポリペプチドの原位置での発現によって細胞において生成され得る。場合により発現ベクターは、ポリペプチドの発現を制御するために誘導性プロモーターを保持する。これらの方法は、Sambrook,J.and Russell,D.(2001).Molecular Cloning:A Laboratory Manual、3rd Edition.Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYに記載されている。
ヘリカーゼ、ポアおよび/または構築物は、大規模に生成されることができ、タンパク質生成生物または組換え発現からの任意のタンパク質液体クロマトグラフィー系による精製が続く。典型的なタンパク質液体クロマトグラフィー系は、FPLC、AKTA systems、Bio−Cad system、Bio−Rad BioLogic systemおよびGilson HPLC systemを含む。
本発明の方法は、標的ポリヌクレオチドの1つまたは複数の特性を測定するステップを含む。方法は、標的ポリヌクレオチドの2つ、3つ、4つまたは5つ以上の特性を測定するステップを含み得る。1つまたは複数の特性は、好ましくは(i)標的ポリヌクレオチドの長さ、(ii)標的ポリヌクレオチドの同一性、(iii)標的ポリヌクレオチドの配列、(iv)標的ポリヌクレオチドの二次構造および(v)標的ポリヌクレオチドが修飾されているか否か、から選択される。(i)から(v)の任意の組合せは本発明により測定され得る。
(i)に関して、ポリヌクレオチドの長さは、例えば標的ポリヌクレオチドとポアとの間の相互作用の数または標的ポリヌクレオチドとポアとの間の相互作用の持続時間を測定することによって測定され得る。
(ii)に関して、ポリヌクレオチドの同一性は、多数の方法において測定され得る。ポリヌクレオチドの同一性は、標的ポリヌクレオチドの配列の測定を伴ってまたは標的ポリヌクレオチドの配列の測定を伴わずに測定され得る。前者は、簡単であり、ポリヌクレオチドは配列決定され、それにより同定される。後者は、いくつかの方法で行われ得る。例えばポリヌクレオチド中の具体的なモチーフの存在は(ポリヌクレオチドの残りの配列を測定するステップを伴わずに)測定され得る。代替的に、方法における具体的な電気的および/または光学的シグナルの測定は、標的ポリヌクレオチドを具体的な供給源由来であるとして同定できる。
(iii)に関して、ポリヌクレオチドの配列は、以前記載されたとおり決定され得る。好適な配列決定方法、詳細には電気的測定を用いるものは、Stoddart Dら、Proc Natl Acad Sci、12;106(19):7702-7、Lieberman KRら、J Am Chem Soc.2010;132(50):17961-72および国際出願第WO2000/28312号に記載されている。
(iv)に関して、二次構造は、種々の方法において測定され得る。例えば方法が電気的測定を含む場合、二次構造は残存時間における変化またはポアを通って流れる電流における変化を用いて測定され得る。これは、1本鎖と2本鎖のポリヌクレオチドの領域を区別できるようにする。
(v)に関して、任意の修飾の存在または非存在は、測定され得る。方法は、好ましくは標的ポリヌクレオチドが、メチル化によって、酸化によって、損傷によって、1つまたは複数のタンパク質でまたは1つまたは複数の標識、タグもしくはスペーサーで修飾されているかどうかを決定するステップを含む。具体的な修飾は、下に記載の方法を用いて測定され得るポアとの特異的な相互作用を生じる。例えばメチルシトシンは、各ヌクレオチドとのその相互作用の際にポアを通って流れる電流に基づいてシトシンから区別され得る。
種々の異なる種類の測定が作出されてよい。これは、非限定的に:電気的測定および光学的測定を含む。可能性のある電気的測定は、電流測定:インピーダンス測定、トンネル測定(Ivanov APら、Nano Lett.2011 Jan 12;11(1):279-85)およびFET測定(国際出願第WO2005/124888号)を含む。光学的測定は、電気的測定(Soni GVら、Rev Sci Instrum. 2010 Jan;81(1):014301)と組み合わされ得る。測定は、ポアを通って流れるイオン電流の測定などの膜貫通電流測定であってよい。
電気的測定は、Stoddart Dら、Proc Natl Acad Sci、12;106(19):7702-7、Lieberman KRら、J Am Chem Soc.2010;132(50):17961-72および国際出願第WO−2000/28312号に記載の標準的単一チャネル記録機器を用いて作出され得る。代替的に電気的測定は、例えば国際出願第WO−2009/077734号および国際出願第WO−2011/067559号に記載のマルチチャネル系を用いても作出され得る。
好ましい実施形態では、方法は、
(a)標的ポリヌクレオチドを膜貫通ポアおよび本発明のヘリカーゼまたは本発明の構築物と、標的ポリヌクレオチドがポアを通って移動し、ヘリカーゼまたは構築物がポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御するように接触させるステップ、ならびに
(b)ポリヌクレオチドがポアに関して移動するときにポアを通る電流を測定するステップであって、電流が標的ポリヌクレオチドの特性の1つまたは複数を示し、それにより標的ポリヌクレオチドを特性決定するステップ
を含む。
方法は、ポアが膜内に存在している膜/ポア系を調べるのに好適である任意の装置を用いて実行され得る。方法は、膜貫通ポアセンシングに好適である任意の装置を用いて実行され得る。例えば装置は、水性溶液および、チャンバーを2つのセクションに分離する障壁を含むチャンバーを含む。障壁は典型的にはポアを含有する膜が形成される開口部を有する。代替的に障壁は、ポアが存在する膜を形成する。
方法は、国際出願第PCT/GB08/000562号(WO2008/102120)に記載の装置を用いて実行され得る。
方法は、ポリヌクレオチドがポアに関して移動するときにポアを通る電流を測定するステップを含んでよい。したがって装置は、電位を印加でき、膜およびポアを通る電気シグナルを測定できる電気回路も含む。方法は、パッチクランプまたは電圧クランプを用いても実行され得る。方法は、電圧クランプの使用を好ましくは含む。
本発明の方法は、ポリヌクレオチドがポアに関して移動するときにポアを通過する電流の測定を含み得る。膜貫通タンパク質ポアを通るイオン電流を測定するための好適な条件は、当技術分野において公知であり、実施例で開示される。方法は、膜およびポア全体に印加される電圧と共に典型的には実行される。用いられる電圧は典型的には、+2Vから−2Vまで、典型的には−400mVから+400mVまでである。好ましくは用いられる電圧は、−400mV、−300mV、−200mV、−150mV、−100mV、−50mV、−20mVおよび0mVから選択される下限値および+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mVおよび+400mVから独立に選択される上限値を含む範囲内である。用いられる電圧は、より好ましくは100mVから240mVまでの範囲内、最も好ましくは120mVから220mVまでの範囲内である。印加される電位を増加させることによってポアによるさまざまなヌクレオチド間の識別を向上させることは可能である。
方法は、金属塩(例えばアルカリ金属塩)、ハロゲン化塩(例えばアルカリ金属塩化物塩などの塩化物塩)などの任意の電荷担体の存在下で典型的には実行される。電荷担体は、イオン液体または有機塩、例えばテトラメチル塩化アンモニウム、トリメチルフェニル塩化アンモニウム、フェニルトリメチル塩化アンモニウムもしくは1−エチル−3メチルイミダゾリウムクロリド(1-ethyl-3-methyl imidazolium chloride)を含み得る。上に考察した例示的装置では、塩はチャンバー中の水性溶液中に存在する。塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化セシウム(CsCl)またはフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムとの混合物が典型的には使用される。KCl、NaClおよびフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムとの混合物は 好ましい。塩濃度は飽和であってよい。塩濃度は、3M以下があり得、典型的には0.1から2.5Mまで、0.3から1.9Mまで、0.5から1.8Mまで、0.7から1.7Mまで、0.9から1.6Mまでまたは1Mから1.4Mまでである。塩濃度は、好ましくは150mMから1Mまでである。Hel308、XPD、RecDおよびTraIヘリカーゼは、高塩濃度下で驚くべきことに作用する。方法は、少なくとも0.4M、少なくとも0.5M、少なくとも0.6M、少なくとも0.8M、少なくとも1.0M、少なくとも1.5M、少なくとも2.0M、少なくとも2.5Mまたは少なくとも3.0Mなどの少なくとも0.3Mの塩濃度を用いて好ましくは実行される。高塩濃度は、高い信号対雑音比を提供し、通常の電流変動のバックグラウンドに対してヌクレオチドの存在を示す電流が同定されることを可能にする。
方法は、緩衝剤の存在下で典型的には実行される。上に考察した例示的装置では、緩衝剤はチャンバー中の水性溶液に存在する。任意の緩衝剤が本発明の方法において用いられ得る。典型的には、緩衝剤はHEPESである。別の好適な緩衝剤はTris−HCl緩衝剤である。方法は、4.0から12.0まで、4.5から10.0まで、5.0から9.0まで、5.5から8.8まで、6.0から8.7までまたは7.0から8.8までまたは7.5から8.5までのpHで典型的には実行される。用いられるpHは好ましくは約7.5である。
方法は、0Cから100Cまで、15Cから95Cまで、16Cから90Cまで、17Cから85Cまで、18Cから80Cまで、19Cから70Cまでまたは20Cから60Cまでで実行され得る。方法は典型的には室温で実行される。方法は、約37℃などの酵素機能を支持する温度で場合により実行される。
方法は、遊離ヌクレオチドまたは遊離ヌクレオチド類似物および/またはヘリカーゼもしくは構築物の作用を促進する酵素補因子の存在下で実行されてもよい。方法は、遊離ヌクレオチドまたは遊離ヌクレオチド類似物の非存在下でおよび酵素補因子の非存在下で実行されてもよい。遊離ヌクレオチドは、上に考察した個々のヌクレオチドの任意の1つまたは複数であってよい。遊離ヌクレオチドは、これだけに限らないがアデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)およびデオキシチジン三リン酸(dCTP)を含む。遊離ヌクレオチドは、好ましくはAMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMPまたはdCMPから選択される。遊離ヌクレオチドは、好ましくはアデノシン三リン酸(ATP)である。酵素補因子は、ヘリカーゼまたは構築物を機能させる因子である。酵素補因子は、好ましくは二価金属カチオンである。二価金属カチオンは好ましくはMg2+、Mn2+、Ca2+またはCo2+である。酵素補因子は、最も好ましくはMg2+である。
標的ポリヌクレオチドは、ヘリカーゼまたは構築物およびポアと任意の順序で接触され得る。標的ポリヌクレオチドがヘリカーゼまたは構築物およびポアと接触される場合、標的ポリヌクレオチドは最初にヘリカーゼまたは構築物と複合体を形成することは好ましい。ポアに電圧が印加される場合、標的ポリヌクレオチド/ヘリカーゼまたは構築物複合体は次いでポアと複合体を形成し、ポアを通るポリヌクレオチドの移動を制御する。
上に考察したとおり、ヘリカーゼは、ポアに関して2つのモードで作動できる。本発明のヘリカーゼまたは本発明の構築物は、2つのモードでも作動できる。第一に、方法は、印加された電圧から生じる場に沿ってポアを通って標的配列を移動させるようにヘリカーゼまたは構築物を用いて好ましくは実行される。このモードでは、DNAの3’末端が最初にポア(3’から5’ヘリカーゼ)に捕捉され、標的配列が最終的に二重層のtrans側に移行されるまで場に沿ってポアを通るようにヘリカーゼまたは構築物は、DNAをポア中に移動させる(図8を参照されたい)。代替的に、方法は、印加された電圧から生じる場とは反対にヘリカーゼまたは構築物が標的配列をポアを通して移動させるように好ましくは実行される。このモードでは、DNAの5’末端が最初にポア(3’から5’ヘリカーゼ)に捕捉され、ヘリカーゼまたは構築物は、標的配列が最終的に二重層のcis側に戻って放されるまで印加された場とは反対にポアの外側へ引かれるようにDNAをポアを通して移動させる(図7を参照されたい)。
他の方法
本発明は、標的ポリヌクレオチドを特性決定するためのセンサーの形成方法も提供する。方法は、ポアと本発明のヘリカーゼまたは本発明の構築物との複合体を形成するステップを含む。複合体は、ポアとヘリカーゼまたは構築物とを標的ポリヌクレオチドの存在下で接触させ、次いで、ポアに電位を印加するステップによって形成され得る。印加される電位は、上に記載のとおり化学電位または電圧電位であってよい。代替的に複合体は、ポアをヘリカーゼまたは構築物に共有結合的に付着するステップによっても形成され得る。共有結合付着のための方法は、当技術分野において公知であり、例えば国際出願第PCT/GB09/001679号(WO2010/004265として公開)および第PCT/GB10/000133号(WO2010/086603として公開)において開示されている。複合体は、標的ポリヌクレオチドを特性決定するためのセンサーである。方法は、Msp由来のポアと本発明のヘリカーゼまたは本発明の構築物との複合体を形成するステップを好ましくは含む。本発明の方法を参照して上に考察した任意の実施形態は、この方法に等しく適用される。本発明は、本発明の方法を使用して産生されるセンサーも提供する。
キット
本発明は、標的ポリヌクレオチドを特性決定するためのキットも提供する。キットは、(a)ポアおよび(b)本発明のヘリカーゼまたは本発明の構築物を含む。本発明の方法に関連して上に考察された任意の実施形態は、キットに等しく適用する。
キットは、脂質二重層などの両親媒性層を形成するために必要なリン脂質などの膜の構成成分をさらに含んでよい。
本発明のキットは、上に述べた任意の実施形態が実行されるようにする1つまたは複数の他の試薬または器具を追加的に含んでよい。そのような試薬または器具は、次の:好適な緩衝剤(複数可)(水性溶液)、対象から試料を得るための手段(容器もしくは、針を含む器具など)、ポリヌクレオチドを増幅および/もしくは発現するための手段、上に定義の膜または電圧もしくはパッチクランプ装置、の1つまたは複数を含む。試薬は、液体試料が試薬を再懸濁するように乾燥状態でキット中に存在する場合がある。キットは、キットが本発明の方法において用いられ得るようにする説明書、またはいずれの患者に方法が用いられ得るかに関する詳細も場合により含む場合がある。キットは、場合によりヌクレオチドを含み得る。
装置
本発明は、標的ポリヌクレオチドを特性決定するための装置も提供する。装置は、複数のポアおよび複数の本発明のヘリカーゼまたは複数の本発明の構築物を含む。装置は、本発明の方法を実行するための説明書を好ましくはさらに含む。装置は、アレイまたはチップなどのポリヌクレオチド分析のための任意の従来装置であってよい。本発明の方法に関連して上に考察された任意の実施形態は、本発明の装置に等しく適用可能である。
装置は、本発明の方法を実行するために好ましくはセットアップされている。
装置は、好ましくは:
複数のポアを支持でき、ポアおよび構築物を用いてポリヌクレオチド特性決定を実施するために作動可能であるセンサーデバイス;ならびに
特性決定を実施するための材料を保持するための少なくとも1つのリザーバー;
を含む。
装置は、好ましくは:
複数のポアを支持でき、ポアおよびヘリカーゼまたは構築物を用いてポリヌクレオチド特性決定を実施するために作動可能であるセンサーデバイス;ならびに
特性決定を実施するための材料を保持するための少なくとも1つのリザーバー;
を含む。
装置は、
膜および複数のポアを支持でき、ポアおよびヘリカーゼまたは構築物を用いてポリヌクレオチド特性決定を実施するために作動可能であるセンサーデバイス;
特性決定を実施するための材料を保持するための少なくとも1つのリザーバー;
少なくとも1つのリザーバーからセンサーデバイスに材料を制御可能に供給するように構成された流体系;および
各試料を受けるための1つまたは複数の容器を好ましくは含み、
流体系は、1つまたは複数の容器からセンサーデバイスに試料を選択的に供給するように構成されている。装置は、国際出願第PCT/GB08/004127号(WO2009/077734として公開)、第PCT/GB10/000789号(WO2010/122293として公開)、国際出願第PCT/GB10/002206号(未公開)または国際出願第PCT/US99/25679号(WO00/28312として公開)において記載の任意のものであってよい。
本発明のヘリカーゼを産生する方法
本発明は、本発明のヘリカーゼを産生する方法も提供する。一実施形態では方法は、1つまたは複数の単量体から形成され、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含むポリヌクレオチド結合ドメインを含むヘリカーゼを提供するステップを含む。上に考察した任意のヘリカーゼは、方法において使用できる。
方法は、ヘリカーゼの同じ単量体上の2つ以上の部分が繋がれて開口部のサイズを低減するようにヘリカーゼを修飾するステップも含む。接続の部位および方法は、上に考察したとおり選択される。
別の実施形態では方法は、Hel308ヘリカーゼを提供するステップを含む。上に考察した任意のHel308ヘリカーゼは使用できる。
方法は、Hel308Mbu(配列番号10)中のD272、N273、D274、G281、E284、E285、E287、S288、T289、G290、E291、D293、T294、N300、R303、K304、N314、S315、N316、H317、R318、K319、L320、E322、R326、N328およびS615に対応する位置の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を導入するステップをさらに含む。
方法は、(c)例えば50℃、10分間加熱することにより修飾ヘリカーゼを加熱するステップ、(d)例えば修飾ヘリカーゼを高強度UV光に254nmで約10から約15分間曝露することによる修飾ヘリカーゼをUV光に曝露するステップ、または(e)フェロシアン化カリウムおよびフェリシアン化カリウムなどのフェロシアン化物およびフェリシアン化物に修飾ヘリカーゼを曝露するステップを好ましくはさらに含む。ステップ(c)、(d)および(e)の任意の組合せ、(c)、(d)、(e)、(c)および(d)、(d)および(e)、(c)および(e)または(c)、(d)および(e)などは実施できる。
方法は、ヘリカーゼがポリヌクレオチドの移動を制御できるかどうかを決定するステップを好ましくはさらに含む。これを行うためのアッセイは、上に記載されている。ポリヌクレオチドの移動が制御され得る場合、ヘリカーゼは正しく修飾されており、本発明のヘリカーゼが産生されている。ポリヌクレオチドの移動が制御され得ない場合、本発明のヘリカーゼは産生されていない。
本発明の構築物を産生する方法
本発明は、本発明の構築物を産生する方法も提供する。方法は、本発明のヘリカーゼを追加的ポリヌクレオチド結合成分に付着、好ましくは共有結合的に付着させるステップを含む。上に考察した任意のヘリカーゼおよび成分が方法において使用できる。共有結合的付着の部位および方法は上に考察したとおり選択される。
方法は、構築物がポリヌクレオチドの移動を制御できるかどうかを決定するステップを好ましくはさらに含む。これを行うためのアッセイは、上に記載されている。ポリヌクレオチドの移動が制御され得る場合、ヘリカーゼおよび成分は正しく付着され、本発明の構築物が産生されている。ポリヌクレオチドの移動が制御され得ない場合、本発明の構築物は産生されていない。
次の実施例は本発明を例示する。
実施例
本実施例は、Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を合成する方法を記載する。この場合、Hel308Mbu(配列番号10)の一次配列中の位置284および615のシステイン間の共有結合は、これらの位置をビスマレイミドPEG3リンカー(長さおよそ3.7nm)と反応させることによって作製した。
詳細には、1M DTT 6μlをHel308Mbu(E284C/S615C)(変異E284C/S615Cを有する配列番号10、50mM Tris−HCl pH8.0、421mM NaCl、10%グリセロール、10mM DTT中に保存)600μLに加え、混合物を室温、20rpmで回転している10”ホイールで30分間インキュベートした。この混合物をPierce 2mL Zeba脱塩カラム7k MWCOを通して、100mMリン酸カリウム、500mM NaCl、5mM EDTA、0.1%Tween−20 pH8.0に緩衝液交換し、試料550μLを得た。これにビスマレイミドPEG3(QuantaBiodesign、製品番号=10215)5.5μLを加え、混合物を室温、20rpmで回転している10”ホイールで120分間インキュベートした。反応を止めるために、残っているマレイミドを消光するための1M DTT 5.5μLを添加した。反応の分析は、7.5%ポリアクリルアミドゲルによってまたは逆相HPLC(Jupiter C5 300A 5μm 150x4.6mmカラムでのクロマトグラフ、0.1% TFA中のアセトニトリルグラジエントを使用)によってであった。図1は、Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)反応混合物のクーマシー染色7.5% Tris−HClゲル(Laemmliローディング緩衝液で添加された)を示す。レーンXは、適切なタンパク質ラダー(質量単位マーカーはゲルの左に示されている)を示す。レーンa〜cは、2μL、5μLまたは10μLの約2.5μM Hel308Mbu(E284C/S615C)単量体(E284C/S615Cを有する配列番号10)を含有する。レーンd〜fは2μL、5μLまたは10μLの約2.5μM Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を含有し、ビスマレイミドPEG3リンカーに付着させる反応がほとんど100%収率に進んだことはゲルから明らかであった。Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を次いで50mM Tris、500mM NaCl、2mM DTT、10%グリセロールpH8.0に緩衝液交換した。
本実施例は、Hel308Mbu(E284C/S615C)−mal−pep−mal(ビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミドによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10、配列番号109はペプチド配列SRDFWRSに対応する))を合成する方法を記載する。この場合Hel308Mbu(配列番号10)の一次配列中の位置284および615のシステイン間に共有結合を、これらの位置をビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミド、配列番号109はペプチド配列SRDFWRSに対応する)と反応させることによって作製した。
詳細には、1M DTT 2μLをHel308Mbu(E284C/S615C)(変異E284C/S615Cを有する配列番号10、50mM Tris−HCl pH8.0、421mM NaCl、10%グリセロール、10mM DTT中に保存)200μLに加え、混合物を室温、20rpmで回転している10”ホイールで30分間インキュベートした。混合物をPierce 2mL Zeba脱塩カラム7k MWCOを通して、100mMリン酸カリウム、500mM NaCl、5mM EDTA、0.1%Tween−20 pH8.0に緩衝液交換し、試料540μLを得た。100ulの一定分量に、10mMマレイミド−プロピル−SRDFWRS−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミド(PPRL、製品番号=16450)0.5ulを添加し、混合物を室温、20rpmで回転している10”ホールで120分間インキュベートした。反応を止めるために、残っているマレイミドを消光するための1M DTT 1uLを添加した。反応の分析は7.5% ポリアクリルアミドゲルによってまたは逆相HPLC(Jupiter C5 300A 5μm 150x4.6mmカラムでのクロマトグラフ、0.1%TFA中のアセトニトリルグラジエントを使用)によってである。図2は、Hel308Mbu(E284C/S615C)−mal−pep−mal(ビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミド)によって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)反応混合物のクーマシー染色7.5% Tris−HClゲルを示す。レーンXは適切なタンパク質ラダー(質量単位マーカーはゲルの左に示されている)を示す。レーンAは5μLの約10μM Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を基準として含有する。上のバンドはHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3に対応し、下のバンドはHel308Mbu(E284C/S615C)(変異E284C/S615Cを有する配列番号10)に対応する。レーンBは5μLの約10μM Hel308Mbu(E284C/S615C)−mal−pep−mal(ビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミド)によって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を含有し、Hel308Mbu(E284C/S615C)−mal−pep−mal(ビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミド)によって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)(上のバンド)およびHel308Mbu(E284C/S615C)(変異E284C/S615Cを有する配列番号10)(下のバンド)に対するバンドが観察されることから、mal−pep−malリンカーに付着する反応が完了まで進まなかったことはゲルから明らかであった。レーンCはHel308Mbu(E284C/S615C)(変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を含有する。
Hel308Mbu(E284C/S615C)−mal−pep−mal(ビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミドによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10、配列番号109はペプチド配列SRDFWRSに対応する))を次いで50mM Tris、500mM NaCl、2mM DTT、10%グリセロールpH8.0に緩衝液交換した。
本実施例は、その開口部が閉じている2つのHel308Mbuヘリカーゼ(Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG11(ビスマレイミドPEG11によって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3)(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)の酵素前進性をHel308Mbu単量体(配列番号10)のものと蛍光に基づくアッセイを使用して比較する。
材料および方法
配列番号110から114。配列番号112は5’末端にカルボキシフルオレセインを、および3’末端にブラックホールクエンチャーを有する。
通例の蛍光基質をハイブリダイズされたdsDNAを置換するヘリカーゼの能力をアッセイするために用いた(図3)。蛍光基質(最終50nM)は、3’ssDNAオーバーハングならびにハイブリダイズされたdsDNAの80および33塩基対セクション(図3セクションA、配列番号110)を有する。主要な下部「テンプレート」鎖は、80nt「ブロッカー」鎖(配列番号111)にハイブリダイズされ、その3’オーバーハングおよび33nt蛍光プローブに隣接し、その5’および3’末端をカルボキシフルオレセイン(FAM)およびブラックホールクエンチャー(BHQ−1)塩基でそれぞれ標識される(配列番号112)。ハイブリダイズされると、FAMはBHQ−1から離れ、基質は基本的に蛍光性である。ATP(1mM)およびMgCl(10mM)の存在下でヘリカーゼ(10nM)は、図3セクションBに示すとおり基質の3’オーバーハング(配列番号110)に結合し、下部鎖に沿って移動し、80ntブロッカー鎖(配列番号111)を置換し始める。前進性である場合、ヘリカーゼは、蛍光プローブ(その5’末端をカルボキシフルオレセイン(FAM)でおよびその3’末端をブラックホールクエンチャー(BHQ−1)で標識された配列番号112)も置換する(図3セクションC)。蛍光プローブは、その5’および3’末端が自己相補的であり、それにより一度置換されると動力学的に安定なヘアピンを形成し、プローブのテンプレート鎖への再アニーリングを防ぐように設計される(図3セクションD)。ヘアピン産物の形成ではFAMはBHQ−1の近傍に運ばれ、その蛍光は消光される。80塩基長「ブロッカー」(配列番号111)および蛍光(その5’末端をカルボキシフルオレセイン(FAM)でおよびその3’末端をブラックホールクエンチャー(BHQ−1)で標識された配列番号112)鎖を置換できる前進性酵素は、したがって経時的な蛍光における減少をもたらす。しかし酵素が80nt未満の前進性を有する場合は、蛍光鎖(その5’末端をカルボキシフルオレセイン(FAM)でおよびその3’末端をブラックホールクエンチャー(BHQ−1)で標識された配列番号112)を置換することができず、それにより「ブロッカー」鎖(配列番号111)は主要な下部鎖(図3セクションE、配列番号110)に再アニールする。
追加的な通例の蛍光基質を対照目的のためにも使用した。陰性対照として使用した基質は、図3に記載のものと同一であったが、3’オーバーハング(図4セクションA(配列番号111、112(その5’末端をカルボキシフルオレセイン(FAM)で、その3’末端をブラックホールクエンチャー(BHQ−1)で標識された)ならびに113))を欠失している。図3に記載のものと同様だが80塩基対セクションを欠失している基質を活性だが前進性である必要はないヘリカーゼ(図4セクションB、(配列番号112(その5’末端をカルボキシフルオレセイン(FAM)で、その3’末端をブラックホールクエンチャー(BHQ−1)で標識された)および114))の陽性対照として使用した。
図5は、緩衝溶液(400mM NaCl、10mM Hepes pH8.0、1mM ATP、10mM MgCl、50nM蛍光基質DNA(配列番号110、111および112(その5’末端をカルボキシフルオレセイン(FAM)でおよびその3’末端をブラックホールクエンチャー(BHQ−1)で標識された)中での図3に示す前進性基質に対するHel308Mbu単量体(配列番号10)、Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG11(ビスマレイミドPEG11リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)の試験での時間依存性蛍光変化のグラフを示す。Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG11(ビスマレイミドPEG11リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)によって示された蛍光の減少は、Hel308Mbu単量体(配列番号10)と比較したこれらの複合体の前進性の増大を示す。図6は、全ての試料に関して蛍光が減少したことから全てのヘリカーゼが実際に活性であったことを実証する陽性対照を示す。
本実施例は、ナノポアを通るインタクトなDNA鎖(900塩基長)の移動を制御するHel308Mbu単量体(配列番号10)の能力をHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、次の変異E284C/S615Cを有する配列番号10)のものと比較する。図7に場と反対および図8に場に沿ったDNA移行の制御のための一般的方法を示す。
材料および方法
50−ポリT5’リーダーをPhiX dsDNAの約900塩基断片にライゲーションすることによって、DNAを形成した。リーダーは、DNAが二重層に挿入されるようにするために配列番号117(配列の3’末端に2個のチミン残基に付着している6個のiSp18スペーサーおよび3’コレステロールTEGを有する)がハイブリダイズされた相補性セクションも含有する。最後にACGTの4nt 3’−オーバーハングを得るためにPhiX dsDNAの3’末端をAatII消化酵素で消化した(DNA基質設計の図に関して図9を参照されたい)。
Hel308Mbuについて使用した緩衝溶液:400mM NaCl、100mM Hepes、10mM フェロシアン化カリウム、10mMフェリシアン化カリウムpH8.0、1mM ATP、1mM MgCl
Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3について使用した緩衝溶液: 400mM NaCl、100mM Hepes、10mMフェロシアン化カリウム、10mMフェリシアン化カリウムpH8.0、2mM ATP、2mM MgCl
ナノポア:大腸菌(E.coli)MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)
酵素:Hel308Mbu(配列番号10)は最終200nMで加え、Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミド3PEGリンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)は最終10nMで添加した。
1,2−ジフィタノイル−グリセロ−3−ホスホコリン脂質(Avanti Polar Lipids)二重層に挿入された単一のMspAナノポアから電気計測値を得た。二重層は、モンタル−ミューラー技術によって開口部直径約100um、厚さ20umのPTFEフィルム(Delrin chambers注文生産)で形成され、2個の1mL緩衝溶液に分けた。全ての実験は、上記の緩衝溶液中で実行した。単一チャネル電流を1440Aデジタイザーを備えたAxopatch 200B amplifiers(Molecular Devices)で測定した。白金電極を緩衝溶液に繋ぎ、cisコンパートメント(ナノポアおよび酵素/DNAの両方が添加されている)をAxopatch headstageのアースに繋ぎ、transコンパートメントをheadstageの探査電極に繋ぐ。
二重層中に単一ポアを達成後、DNA複合体(配列番号115、116および117(配列の3’末端に2個のチミン残基に付着している6個のiSp18スペーサーおよび3’コレステロールTEGを有する))、DNA=Hel308Mbu単量体(配列番号10)について0.1nMおよびHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)について0.05nM、MgCl(2mM)ならびにATP(2mM)を電気生理化学チャンバーのcisコンパートメントに添加した。対照実験を+140mVで行った。次いでヘリカーゼHel308Mbu単量体(配列番号10、200nM)またはHel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10、10nM)をcisコンパートメントに添加した。実験は、+140mVの一定電位で実行した。
結果および考察
図10に示すとおり、ヘリカーゼ−単量体DNA基質のMspAナノポア(図7に示す)への添加は、特徴的電流遮断を生じる。ヘリカーゼHel308Mbu単量体(配列番号10)は制御された様式でナノポアを通してDNAを移動させることができ、DNAがナノポアを通って移動するときに電流に段階的変化を生じさせる。Hel308Mbu(200nM、配列番号10)を使用して、ヘリカーゼがMspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)を通してDNAの移行を制御するときに観察された電流トレース例(+140mV、400mM NaCl、100mM Hepes pH8.0、10mMフェロシアン化カリウム、10mMフェリシアン化カリウム、0.1nM 900塩基長DNA(配列番号115、116および117(配列の3’末端に2個のチミン残基に付着している6個のiSp18スペーサーおよび3’コレステロールTEGを有する))、1mM ATP、1mM MgCl)を図10に示す。最も上の電気トレースは、DNAが印加された電位(+140mV)の力の下で捕捉された場合にオープンポア電流(約120pA)がDNAレベル(20〜50pA)へ低下することを示す。酵素が付着しているDNAは、酵素がDNAをポアを通して移動させるときに電流における段階的変化を示す長期遮断を生じる。上のトレースは、A〜Hと印を付けた一連の8個の別々のヘリカーゼ制御DNA移動を示す(図10を参照されたい)。トレースのこのセクションにおける全てのヘリカーゼ制御DNA移動は、酵素によって場とは反対に(DNAは5’を下に捕捉される)ナノポアを通って移動される(詳細は図7を参照されたい)。下は、DNAがナノポアを出たときの4個のヘリカーゼ制御DNA移動の最後のセクションの拡大である。このセクションにおける8個のヘリカーゼ制御DNA移動の内、1つ(H)だけが酵素がDNAの末端に達し、DNA基質の50T5’−リーダーをポアを通して移動させることを示す特徴的な長いポリTレベルで終わる。Hel308Mbu単量体(配列番号10)での完全な実行において、ヘリカーゼ制御DNA移動の約30%がポリTで終わることが見出された(n=19 本実験におけるヘリカーゼ制御DNA移動)。
Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(10nM、ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)は、場とは反対に制御された様式でナノポアを通してDNAを移動させることができ、DNAがナノポアを通って移動するときに電流に段階的変化を生じさせる。Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3リンカー(10nM、ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を使用して、ヘリカーゼがMspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)を通してDNAの移行を制御するときに観察された電流トレース例(+140mV、400mM NaCl、100mM Hepes pH8.0、10mMフェロシアン化カリウム、10mMフェリシアン化カリウム、0.05nM 900塩基長DNA(配列番号115、116および117(配列の3’末端に2個のチミン残基に付着している6個のiSp18スペーサーおよび3’コレステロールTEGを有する))、2mM ATP、2mM MgCl)を図11に示す。最も上の電気トレースは、DNAが印加された電位(+140mV)の力の下で捕捉された場合にオープンポア電流(約115pA)がDNAレベル(15〜40pA)へ低下することを示す。酵素が付着しているDNAは、酵素がDNAをポアを通して移動させるときに電流における段階的変化を示す長期遮断を生じる。上のトレースは、A〜Hと印を付けた一連の8個の別々のヘリカーゼ制御DNA移動を示す(図11を参照されたい)。トレースのこのセクションにおける全てのヘリカーゼ制御DNA移動は、酵素によって場とは反対に(DNAは5’を下に捕捉される)ナノポアを通って移動される(詳細は図7を参照されたい)。下は、DNAがナノポアを出たときの4個のヘリカーゼ制御DNA移動の最後のセクションの拡大である。このセクションにおける8個のヘリカーゼ制御DNA移動のどれもが酵素がDNAの末端に達し、DNA基質の50T5’−リーダーをポアを通して移動させたことを示す特徴的な長いポリTレベルで終わる。Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)での完全な実行において、場と反対(5’が下)のヘリカーゼ制御DNA移動の約85%がポリTで完了することが見出され(n=27 本実験におけるヘリカーゼ制御DNA移動)、それにより未修飾Hel308Mbuと比較して前進性の実質的な改善を実証している。この実験は、ヘリカーゼ制御DNA移動を観察するために酵素10nMだけを必要とする、しかしHel308Mbu単量体(配列番号10)実験は200nM酵素を使用した。したがって、開口部が閉じられているヘリカーゼのより低い酵素濃度が長い読み取り長を達成しながら使用できる。
Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)は印加された場の力に沿ってナノポアを通してDNAを移動させることができる増強された能力を示し(詳細は図8を参照されたい)、DNAがナノポアを通って移動するときに電流に段階的変化を生じさせる。Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(10nM、ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を使用して、ヘリカーゼがMspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)を通してDNAの移行を制御するときに観察された電流トレース例(+140mV、400mM NaCl、100mM Hepes pH8.0、10mMフェロシアン化カリウム、10mMフェリシアン化カリウム、0.05nM 900塩基長DNA(配列番号115、116および117(配列の3’末端に2個のチミン残基に付着している6個のiSp18スペーサーおよび3’コレステロールTEGを有する))、2mM ATP、2mM MgCl)を図12に示す。最も上の電気トレースは、DNAが印加された電位(+140mV)の力の下で捕捉された場合にオープンポア電流(約120pA)がDNAレベル(15〜40pA)へ低下することを示す。酵素が付着しているDNAは、酵素がDNAをポアを通して移動させるときに電流における段階的変化を示す長期遮断を生じる。上のトレースは、A−Dと印を付けた一連の4個の別々のヘリカーゼ制御DNA移動を示す(図12を参照されたい)。トレースのこのセクションにおける全てのヘリカーゼ制御DNA移動は、酵素によって場に沿って(DNAは3’を下に捕捉される)ナノポアを通って移動される(詳細は図8を参照されたい)。下は、DNAがナノポアを出たときのヘリカーゼ制御DNA移動の最後のセクションの拡大である。3’が下のDNAは、配列に関連して異なる電流および異なる変動を有して5’が下のDNAとは特徴的に異なるサインを示す。このセクションにおける4個のヘリカーゼ制御DNA移動のどれもが酵素がDNAの末端に達し、DNA基質の50T5’−リーダーをポアを通して移動させることを示す特徴的な長いポリTレベルで終わる。Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)での完全な実行において、場に沿った(3’が下)ヘリカーゼ制御DNA移動の約87%がポリTで完了することが見出された(n=15 本実験におけるヘリカーゼ制御DNA移動)。比較して、3’が下のヘリカーゼ制御DNA移動は、Hel308Mbu単量体(配列番号10)を使用する場合にはほとんど観察されず、その場合移動は典型的には50未満の状態が観察されて短く、この方向での高いレベルでの酵素解離を示唆している。Hel308Mbu(E284C/S615C)−ビスマレイミドPEG3(ビスマレイミドPEG3リンカーによって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)での3’が下の長いリカーゼ制御DNA移動は、3’が下のモードでの前進性における驚くべき改善を示す。
本実施例は、Hel308Mbu(E284C/S615C)−mal−pep−mal(ビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS(配列番号109)−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミド)によって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)がナノポアを通るインタクトなDNA鎖(その3’末端で4個のiSpC3スペーサーに付着している配列番号127、その最後は配列番号128の5’末端に付着している)の移動を制御する能力を有することを示す。図7に場と反対におよび図8に場に沿った制御されたDNA移行のための一般的方法を示す。
材料および方法
実験を設定する前に、DNA(0.5nM、(その3’末端で4個のiSpC3スペーサーに付着している配列番号127、その最後は配列番号128の5’末端に付着している)およびHel308Mbu(E284C/S615C)−mal−pep−mal(ビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS(配列番号109)−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミド)によって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)を合わせて1時間、予備インキュベートした。
緩衝液(625mM KCl、100mM Hepes、75mMフェロシアン化カリウム(II)、25mMフェリシアン化カリウム(III)、pH8)中のブロック共重合体に挿入された単一MspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)から電気測定値を得た。MgCl(10mM)およびATP(1mM)を緩衝液(625mM KCl、100mM Hepes、75mMフェロシアン化カリウム(II)、25mMフェリシアン化カリウム(III)、pH8)と一緒に混合し、次いでDNA(その3’末端で4個のiSpC3スペーサーに付着している配列番号127、その最後は配列番号128の5’末端に付着している)、Hel308Mbu(E284C/S615C)−mal−pep−mal(ビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS(配列番号109)−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミド)によって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)予備混合物と合わせて混合した。二重層中に単一ポアを達成した後、予備混合物を単一ナノポア実験系に添加した。実験は、+120mVの一定電位で実行し、ヘリカーゼ制御DNA移動をモニターした。
結果および考察
ヘリカーゼ制御DNA移動を閉じた複合体Hel308Mbu(E284C/S615C)−mal−pep−mal(ビスマレイミドペプチドリンカー(マレイミド−プロピル−SRDFWRS(配列番号109)−(1,2−ジアミノエタン)−プロピル−マレイミド)によって繋がれ、変異E284C/S615Cを有する配列番号10)について観察した。ヘリカーゼ制御DNA移動の一例を図13に示す。
本実施例は、TrwC Cba−N691C/Q346C−PEG11(PEG11リンカーによって繋がれ、変異N691C/Q346Cを有する配列番号126)を合成する方法を記載する。この場合TrwC Cba(配列番号126)の一次配列中の位置346および691のシステイン間に共有結合を、これらの位置をPEG11リンカーと反応させることによって作製した。
材料および方法
詳細には、DTT(2μl、1M)をTrwC Cba−N691C/Q346C(200μl、変異N691C/Q346Cを有する配列番号126、50mM Hepes、10%グリセロール、10mM DTT、692mM NaCl pH7.5中に保存)に添加し、混合物を室温、20rpmで回転している10”ホールで30分間インキュベートした。この混合物をPierce 2mL Zeba脱塩カラム7k MWCOを通して、100mMリン酸カリウム、500mM NaCl、5mM EDTA、0.1%Tween−20 pH8.0に緩衝液交換し、同じ緩衝液に希釈し、10μL一定分量の試料を得た。マレイミド−PEG11−マレイミド(50uM最終濃度、Quanta Biodesign、製品番号10397)を一定分量の1つに添加し、混合物を室温、20rpmで回転している10”ホールで120分間インキュベートした。反応を止めるために、残っているマレイミドを消光するためのDTT(1Mを1ul)を添加した。反応の分析は7.5%ポリアクリルアミドゲルによってである。図14は、TrwC Cba−N691C/Q346C−mal−PEG11−mal(ビスマレイミドポリエチレングリコールリンカーによって繋がれ、変異N691C/Q346Cを有する配列番号126)反応混合物の7.5%Tris−HClゲルのクーマシー染色を示す。ゲルの右側のレーン(Mと標識)は適切なタンパク質ラダー(質量単位マーカーはゲルの右に示されている)を示す。レーン1は、およそ10μM TrwC Cba−D657C/R339C単独(変異D657C/R339Cを有する配列番号126)の5μLを基準として含有する。レーン2は、およそ10μM TrwC Cba−N691C/Q346C−ビスマレイミドPEG11(ビスマレイミドPEG11リンカーによって繋がれ、変異N691C/Q346Cを有する配列番号126)の5μLを含有する。レーン2に示すとおり、上のバンドは二量体酵素分子種(Aと標識)に対応する、中央のバンドは閉じた複合体(Bと標識)TraI−Cba−N691C/Q346C−ビスマレイミドPEG11(ビスマレイミドPEG11リンカーによって繋がれ、変異N691C/Q346Cを有する配列番号126)に対応する。未修飾出発材料(Cと標識)TrwC Cba−N691C/Q346C(変異N691C/Q346Cを有する配列番号126)に対するバンドが観察されたことから、mal−PEG11−malリンカーに付着する反応が完了まで進まなかったことはゲルから明らかであった。
TrwC Cba−N691C/Q346C−PEG11(PEG11リンカーによって繋がれ、変異N691C/Q346Cを有する配列番号126)を次いで50mM Tris、500mM NaCl、2mM DTT、pH8.0に緩衝液交換した。
本実施例において記載したものと類似の手順を使用して、下の表10に列挙する次の閉じた複合体を作製できる。
本実施例は多数のヘリカーゼ(Hel308Mbu(配列番号10)、Hel308Mbu−E284C(変異E284Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E284C/C301A(変異E284C/C301Aを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E285C(変異E285Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−S288C(変異S288Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu−D274C(変異D274Cを有する配列番号10)を蛍光アッセイを使用してdsDNA分子の代謝回転速度(分−1酵素−1)について調査した場合に、検査した変異体ヘリカーゼ(Hel308Mbu−E284C(変異E284Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E284C/C301A(変異E284C/C301Aを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E285C(変異E285Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−S288C(変異S288Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu−D274C(変異D274Cを有する配列番号10))がHel308Mbu(配列番号10)と比較してdsDNA分子の増大した代謝回転速度(分−1酵素−1)を有することを例示する。
材料および方法
通例の蛍光基質を多数のHel308Mbuヘリカーゼ(Hel308Mbu−E284C(変異E284Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E284C/C301A(変異E284C/C301Aを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E285C(変異E285Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−S288C(変異S288Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu−D274C(変異D274Cを有する配列番号10))のハイブリダイズされたdsDNAを置換する能力をアッセイするために使用した。図15の1)に示すとおり、蛍光基質鎖(最終50nM)は3’および5’ssDNAオーバーハングの両方、ならびにハイブリダイズされたdsDNAの44塩基セクションを有する。3’ssDNAオーバーハングを含有する上部鎖は、カルボキシフルオレセイン塩基(カルボキシフルオレセイン(図15においてcと標識)が配列番号151中の位置6でチミンに付着している)を5’末端に有し、ハイブリダイズされた相補物は、ブラックホールクエンチャー(BHQ−1、図15においてeと標識)塩基(ブラックホールクエンチャーは配列番号152中の位置81でチミンに付着している)を3’末端に有する。2本の鎖がハイブリダイズされると、フルオレセインからの蛍光は局在BHQ−1によって消光され、基質は実質的に非蛍光性である。さらに下の蛍光基質鎖に部分的に相補的である捕捉鎖(配列番号153)1μMはアッセイに含まれる。2)に示すとおりATP(1mM)およびMgCl(1mM)の存在下で、基質に添加された適切なヘリカーゼ(10nM)は、蛍光基質の3’尾部に結合し、上部鎖に沿って移動し、相補鎖を置換する。3)に示すとおりBHQ−1を有する相補鎖が完全に置換されると主要な鎖上のフルオレセインは蛍光を発する。4)に示すとおり置換された鎖は過剰量の捕捉鎖に優先的にアニールし、初期基質の再アニールおよび蛍光の消失を防ぐ。
結果および考察
図16および17のグラフは、多数のヘリカーゼ(Hel308Mbu(図16および17で1と標識、配列番号10)、Hel308Mbu−E284C(図16および17で2と標識、変異E284Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E284C/C301A(図16で3と標識、変異E284C/C301Aを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E285C(図16で4と標識、変異E285Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−S288C(図16で5と標識、変異S288Cを有する配列番号10)ならびにHel308Mbu−D274C(図17で6と標識、変異D274Cを有する配列番号10))について緩衝液(400mM KCl、100mM Hepes pH8.0、1mM ATP、10mM MgCl、50nM蛍光基質DNA(配列番号151および152)、1μM捕捉DNA(配列番号153))中でのdsDNA代謝回転(酵素−1−1)を示す。調査した塩濃度(400mM KCl)では、次のヘリカーゼHel308Mbu−E284C(図16および17で2と標識、変異E284Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E284C/C301A(図16で3と標識、変異E284C/C301Aを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E285C(図16で4と標識、変異E285Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−S288C(図16で5と標識、変異S288Cを有する配列番号10)およびHel308Mbu−D274C(図17で6と標識、変異D274Cを有する配列番号10)は、対照Hel308Mbu(図16および17で1と標識、配列番号10)よりも高いdsDNA代謝回転速度を示した(図16および17を参照されたい)。これは、調査した条件下でHel308Mbu対照(配列番号10)と比較した場合にこれらの酵素がdsDNA分子の増大した代謝回転速度(分−1酵素−1)を示すことを示唆している。
本実施例は、Hel308Mbu−E284Faz(変異E284Fazを有する配列番号10)およびHel308Mbu−S288Faz(変異S288Fazを有する配列番号10)の光処置のための2つの手順を記載する。
手順1−UV光への曝露
保存緩衝液(50mM Tris pH8.0、4℃、NaCl(360〜390mM)および5%グリセロール)中のHel308Mbu−E284Faz(変異E284Fazを有する配列番号10)またはHel308Mbu−S288Faz(変異E288Fazを有する配列番号10)をPCRチューブ(Fisher 0.2mL thin wallチューブ)にピペットで取った。試料を氷上に置き、254nmの高強度UV光(Spectroline Longlife Filter lamp(254nmおよび365nm)に4.5cmの距離で上から曝露した。Hel308Mbu−E284Faz(変異E284Fazを有する配列番号10)試料を15分間曝露し、Hel308Mbu−S288Faz(変異E288Fazを有する配列番号10)試料を10分間曝露した。次いであらゆる沈殿タンパク質を除去するために両方の試料を5分間、16000gで遠心分離した。可溶性画分を不溶性沈殿からピペットで慎重に除去した。
手順2−白色光への曝露(LED源)
保存緩衝液(50mM Tris pH8.0、4℃、NaCl(370mM)および5%グリセロール)中のHel308Mbu−S288Faz(変異E288Fazを有する配列番号10)を微量遠心管(Eppendorf、1.5mL、Protein Lo Bind)にピペットで取った。試料を(キャップを開けて)氷上に置き、LED光源(Schott A20960.1)に全出力で3cmの距離で上から曝露した。Hel308Mbu−S288Faz(変異E288Fazを有する配列番号10)試料を3時間曝露した。
手順3−白色光(LED源)への曝露および加熱
保存緩衝液(50mM Tris pH8.0、4℃、NaCl(370mM)および5%グリセロール)中のHel308Mbu−S288Faz(変異E288Fazを有する配列番号10)を微量遠心管(Eppendorf、1.5mL、Protein Lo Bind)にピペットで取った。試料を(キャップを開けて)氷上に置き、LED光源(Schott A20960.1)に全出力で1cmの距離で上から曝露した。Hel308Mbu−S288Faz(変異E288Fazを有する配列番号10)試料を1時間曝露した。試料をPCRチューブ(Fisher 0.2mL thin wallチューブ)に移し、4℃にする前に50℃で10分間加熱し、次いであらゆる沈殿タンパク質を除去するために5分間、16000gで遠心分離した。可溶性画分を不溶性沈殿からピペットで慎重に除去した。
本実施例は、ナノポアを通るインタクトなDNA鎖(3.6kb)の移動を制御するHel308Mbu(配列番号10)の能力を、多数のHel308Mbu変異体(Hel308Mbu−E284C(変異E284Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−S288C(変異S288Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E284Faz(変異E284Fazを有する配列番号10)および熱処置Hel308Mbu−E284Faz(変異E284Fazを有する配列番号10、酵素は50mM Tris pH8.0、375mM NaCl、5%グリセロール緩衝液中で4℃から50℃で10分間加熱され、次いでBioRad PCRブロックで4℃に冷却された))のものと比較する。図18に場と反対の制御されたDNA移行のための一般的方法を示す。
材料および方法
実験を設定する前に、DNA(0.2nM、(その5’末端で4個のニトロインドールに付着している配列番号154(図18においてxと標識)、その最後は配列番号155の3’末端に付着している)、配列番号156および配列番号117)ならびに適切なヘリカーゼ(Hel308Mbu(100nM、配列番号10)、Hel308Mbu−E284C(100nM、変異E284Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−S288C(100nM、変異S288Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E284Faz(100nM、変異E284Fazを有する配列番号10)および熱処置Hel308Mbu−E284Faz(500nM、変異E284Fazを有する配列番号10、酵素は50mM Tris pH8.0、375mM NaCl、5%グリセロール緩衝液中で4℃から50℃で10分間加熱され、次いでBioRad PCRブロックで4℃に冷却された))を緩衝液(960mM KCl、25mMリン酸カリウム、3mMフェロシアン化カリウム、1mMフェリシアン化カリウムpH8.0、10mM MgClおよび1mM ATP)中に溶解した。
緩衝液(960mM KCl、25mMリン酸カリウム、3mMフェロシアン化カリウム、1mMフェリシアン化カリウムpH8.0)中のブロック共重合体に挿入された単一MspAナノポア(MS(B1−G75S/G77S/L88N/Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)から電気測定値を得た。ブロック共重合体中に単一ポアを達成した後、次いで緩衝液(3mL 960mM KCl、25mMリン酸カリウム、3mMフェロシアン化カリウム、1mMフェリシアン化カリウムpH8.0)を系を通して流した。最終に、予備混合物(上に記載)を単一ナノポア実験系に添加した。実験は、+120mVの一定電位で実行し、ヘリカーゼ制御DNA移動をモニターした。
結果および考察
検査した全ての酵素、Hel308Mbu(配列番号10)、Hel308Mbu−E284C(変異E284Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−S288C(変異S288Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E284Faz(変異E284Fazを有する配列番号10)および熱処置Hel308Mbu−E284Faz(変異E284Fazを有する配列番号10、酵素は50mM Tris pH8.0、375mM NaCl、5%グリセロール緩衝液中で4℃から50℃で10分間加熱され、次いでBioRad PCRブロックで4℃に冷却された)からヘリカーゼ制御DNA移動を観察した。ヘリカーゼ制御DNA移動を示す電流トレース例を図19〜23に示す。しかし変異体Hel308Mbuヘリカーゼ(Hel308Mbu−E284C(変異E284Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−S288C(変異S288Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E284Faz(変異E284Fazを有する配列番号10)および熱処置Hel308Mbu−E284Faz(変異E284Fazを有する配列番号10、酵素は50mM Tris pH8.0、375mM NaCl、5%グリセロール緩衝液中で4℃から50℃で10分間加熱され、次いでBioRad PCRブロックで4℃に冷却された))はHel308Mbu(配列番号10)と比較して増大した前進性を示した、表11を参照されたい。実験において観察されたヘリカーゼ制御DNA移動の内、鎖の末端(ポリT領域に)まで全てDNAを処理した移動の%は変異体ヘリカーゼ(Hel308Mbu−E284C(変異E284Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−S288C(変異S288Cを有する配列番号10)、Hel308Mbu−E284Faz(変異E284Fazを有する配列番号10)および熱処置Hel308Mbu−E284Faz(変異E284Fazを有する配列番号10、酵素は50mM Tris pH8.0、375mM NaCl、5%グリセロール緩衝液中で4℃から50℃で10分間加熱され、次いでBioRad PCRブロックで4℃に冷却された))についてHel308Mbu(配列番号10)と比較した場合に顕著に高かった。


本発明はまた以下を提供する。
[1] 1つまたは複数の単量体から形成され、少なくとも1つのコンホメーション状態において、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含むポリヌクレオチド結合ドメインを含むヘリカーゼであって、ヘリカーゼの同じ単量体内の2つ以上の部分が繋がれて開口部のサイズを低減するように修飾されており、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を保持しているヘリカーゼ。
[2] 2つ以上の部分が開口部を閉じるように繋がれている、[1]に記載のヘリカーゼ。
[3] いかなるコンホメーション状態でも開口部を含まないように修飾されている、[1]または[2]に記載のヘリカーゼ。
[4] ポリヌクレオチド周囲の共有結合的に閉じた構造を形成できるように修飾されている、[1]から[3]のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[5] 2つ以上の部分が一過的に繋がれている、[1]から[3]のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[6] ポリヌクレオチド結合ドメインが、少なくとも1つのコンホメーション状態において、それを通ってポリヌクレオチドの内部ヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含む、前記のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[7] 2つ以上の部分の少なくとも1つが開口部の部分を形成する、開口部に隣接しているまたは開口部に近い、前記のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[8] 開口部の部分を形成するまたは開口部に隣接している2つ以上アミノ酸を連結することによって修飾されている、前記のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[9] 2つ以上の部分が親和性分子によって繋がれている、前記のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[10] 親和性分子が、(a)相補的ポリヌクレオチド、(b)抗体またはその断片および相補的エピトープ、(c)ペプチドジッパー、(d)β−シート増強により相互作用できる、(e)水素結合、pi−スタッキングまたは塩橋形成できる、(f)ロタキサン、(g)アプタマーおよび相補的タンパク質または(h)ハーフキレーターである、[9]に記載のヘリカーゼ。
[11] 2つ以上の部分が1つまたは複数のリンカーを使用して繋がれている、前記のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[12] 1つもしくは複数のリンカーがアミノ酸配列および/または1つもしくは複数の化学的架橋剤である、[11]に記載のヘリカーゼ。
[13] アミノ酸配列がポリヌクレオチド結合成分を含む、[12]に記載のヘリカーゼ。
[14] 1つまたは複数のリンカーの一方の末端または両方の末端がヘリカーゼに共有結合的に付着されている、[11]から[12]のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[15] 2つ以上の部分の少なくとも1つが、1つまたは複数のリンカーの付着を促進するために修飾されている、[11]から[13]のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[16] 2つ以上の部分の少なくとも1つのアミノ酸がシステインまたは非天然アミノ酸で置換されている、[15]に記載のヘリカーゼ。
[17] 非天然アミノ酸が4−アジド−L−フェニルアラニン(Faz)である、[16]に記載のヘリカーゼ。
[18] 2つ以上の部分が、単量体の表面上にあるおよび/または単量体のループ領域である、前記のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[19] 2つ以上の部分が単量体中で空間的に近接している、前記のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[20] スーパーファミリー1またはスーパーファミリー2由来である、前記のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[21] Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、Tralヘリカーゼ、Tralサブグループヘリカーゼ、XPDヘリカーゼまたはその変種である、前記のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[22] Hel308ヘリカーゼが表1に示すヘリカーゼの1つもしくはその変種である、またはTraIヘリカーゼが表3に示すヘリカーゼの1つもしくはその変種である、[21]に記載のヘリカーゼ。
[23] 1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸がHel308Mbu(配列番号10)中のD272、N273、D274、G281、E284、E285、E287、S288、T289、G290、E291、D293、T294、N300、R303、K304、N314、S315、N316、H317、R318、K319、L320、E322、R326、N328、S615、K717、Y720、N721およびS724に対応する位置の1つまたは複数に導入されているHel308ヘリカーゼであって、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を保持している、Hel308ヘリカーゼ。
[24] ヘリカーゼの2つ以上の部分が繋がれて、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できるポリヌクレオチド結合ドメイン中の開口部のサイズを低減するようにさらに修飾されている、[23]に記載のヘリカーゼ。
[25] ヘリカーゼの2つ以上の部分が繋がれて、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できるポリヌクレオチド結合ドメイン中の開口部のサイズを低減するように修飾されていない、[24]に記載のヘリカーゼ。
[26] 1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸が、(a)Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288、S615、K717、Y720、E287、T289、G290、E291、N316およびK319に対応する位置の1つもしくは複数に、(b)Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288、S615、K717およびY720に対応する位置の1つもしくは複数にまたは(c)Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288およびS615に対応する位置の1つまたは複数に導入されている、[23]から[25]のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[27] 配列番号10、13、16、19、22、25、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55および58のいずれか1つに示す配列の変種を含み、Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288、S615、K717、Y720、E287、T289、G290、E291、N316およびK319に対応する位置が表4aおよび4bに示されている、[26]に記載のヘリカーゼ。
[28] (a)位置L265、E275、L276、S279、P585、K690およびE693の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号13(Hel308Pfu)に示す配列の変種;
(b)位置E283、E293、I294、V297、D671、K775およびE778の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号16(Hel308Hvo)に示す配列の変種;
(c)位置E283、E293、I294、G297、D668、R775およびE778の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号19(Hel308Hla)に示す配列の変種;
(d)位置D280、K290、I291、S294、P589、T694およびN697の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号22(Hel308Csy)に示す配列の変種;
(e)位置L281、K291、Q292、D295、D596、K702およびQ705の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号25(Hel308Sso)に示す配列の変種;
(f)位置H264、E272、K273、A276、G576、K678およびE681の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号28(Hel308Mfr)に示す配列の変種;
(g)位置S279、L289、S290、D293、P649、K753およびR756の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号29(Hel308Mok)に示す配列の変種;
(h)位置Y276、L286、S287、D290、P579、K679およびK682の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号32(Hel308Mig)に示す配列の変種;
(i)位置L266、S276、L277、Q280、P583、K689およびD692の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号33(Hel308Tga)に示す配列の変種;
(j)位置L287、E297、L298、S301、S604、K710およびE713の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号34(Hel308Tba)に示す配列の変種;
(k)位置L289、Q299、L300、G303、N606、G712およびE715の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号37(Hel308Tsi)に示す配列の変種;
(l)位置E274、D284、E285、E288、S589、K691およびD694の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号38(Hel308Mba)に示す配列の変種;
(m)位置E274、D284、E285、E288、P590、K692およびE695の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号39(Hel308Mac)に示す配列の変種;
(n)位置H272、L282、S283、D286、P621、K725およびK728の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号40(Hel308Mmah)に示す配列の変種;
(o)位置E274、D284、E285、E288、P590、K692およびE698の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号41(Hel308Mmaz)に示す配列の変種;
(p)位置A269、L279、A280、L283、H575、K677およびE680の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号42(Hel308Mth)に示す配列の変種;
(q)位置H274、Q284、E285、E288、P596、K699およびQ702の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号43(Hel308Mzh)に示す配列の変種;
(r)位置G274、E284、E285、E288、T590、K691およびY694の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号44(Hel308Mev)に示す配列の変種;
(s)位置H272、L282、S283、D286、P621、K725およびK728の1つまたは複数にシステイン残基または非天然アミノ酸を含む配列番号45(Hel308Mma)に示す配列の変種;
(t)位置G277、T287、E288、E291、D634、K737およびE740の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号46(Hel308Nma)に示す配列の変種;
(u)位置A270、E277、R278、E281、S583、G685およびE688の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号47(Hel308Mbo)に示す配列の変種;
(v)位置Q264、F267、E268、E271、P559、K663およびK666の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号48(Hel308Fac)に示す配列の変種;
(w)位置R275、L285、S286、E289、P576、K676およびK679の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号49(Hel308Mfe)に示す配列の変種;
(x)位置I273、L283、S284、E287、P574、K674およびK677の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号50(Hel308Mja)に示す配列の変種;
(y)位置R257、L267、S268、D271、P554、K651およびK654の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号51(Hel308Min)に示す配列の変種;
(z)位置S269、Q277、E278、R281、S583、G685およびR688の1つまたは複数にシステイン残基または非天然アミノ酸を含む配列番号52(Hel308Mhu)に示す配列の変種;
(aa)位置K268、K277、A278、E281、D575、R677およびE680の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号53(Hel308Afu)に示す配列の変種;
(ab)位置D277、D287、D288、D291、D626、K729およびE732の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号54(Hel308Htu)に示す配列の変種;
(ac)位置D276、D286、Q287、D290、D595、K707およびE710の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号55(Hel308Hpa)に示す配列の変種;
(ad)位置E286、E296、I297、V300、D633、A737およびE740の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号58(Hel308Hsp(ski2様ヘリカーゼ))に示す配列の変種;または
(ae)D274、E284、E285、S288、S615、K717およびY720の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号10に示す配列の変種
を含む、[26]に記載のヘリカーゼ。
[29] 1つまたは複数の非天然アミノ酸が、4−アジド−L−フェニルアラニン(Faz)、4−アセチル−L−フェニルアラニン、3−アセチル−L−フェニルアラニン、4−アセトアセチル−L−フェニルアラニン、O−アリル−L−チロシン、3−(フェニルセラニル)−L−アラニン、O−2−プロピン−1−イル−L−チロシン、4−(ジヒドロキシボリル)−L−フェニルアラニン、4−[(エチルスルファニル)カルボニル]−L−フェニルアラニン、(2S)−2−アミノ−3−{4−[(プロパン−2−イルスルファニル)カルボニル]フェニル}プロパン酸、(2S)−2−アミノ−3−{4−[(2−アミノ−3−スルファニルプロパノイル)アミノ]フェニル}プロパン酸、O−メチル−L−チロシン、4−アミノ−L−フェニルアラニン、4−シアノ−L−フェニルアラニン、3−シアノ−L−フェニルアラニン、4−フルオロ−L−フェニルアラニン、4−ヨード−L−フェニルアラニン、4−ブロモ−L−フェニルアラニン、O−(トリフルオロメチル)チロシン、4−ニトロ−L−フェニルアラニン、3−ヒドロキシ−L−チロシン、3−アミノ−L−チロシン、3−ヨード−L−チロシン、4−イソプロピル−L−フェニルアラニン、3−(2−ナフチル)−L−アラニン、4−フェニル−L−フェニルアラニン、(2S)−2−アミノ−3−(ナフタレン−2−イルアミノ)プロパン酸、6−(メチルスルファニル)ノルロイシン、6−オキソ−L−リシン、D−チロシン、(2R)−2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸、(2R)−2−アンモニオオクタノエート3−(2,2’−ビピリジン−5−イル)−D−アラニン、2−アミノ−3−(8−ヒドロキシ−3−キノリル)プロパン酸、4−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、S−(2−ニトロベンジル)システイン、(2R)−2−アミノ−3−[(2−ニトロベンジル)スルファニル]プロパン酸、(2S)−2−アミノ−3−[(2−ニトロベンジル)オキシ]プロパン酸、O−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)−L−セリン、(2S)−2−アミノ−6−({[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}アミノ)ヘキサン酸、O−(2−ニトロベンジル)−L−チロシン、2−ニトロフェニルアラニン、4−[(E)−フェニルジアゼニル]−L−フェニルアラニン、4−[3−(トリフルオロメチル)−3H−ジアジレン−3−イル]−D−フェニルアラニン、2−アミノ−3−[[5−(ジメチルアミノ)−1−ナフチル]スルホニルアミノ]プロパン酸、(2S)−2−アミノ−4−(7−ヒドロキシ−2−オキソ−2H−クロメン−4−イル)ブタン酸、(2S)−3−[(6−アセチルナフタレン−2−イル)アミノ]−2−アミノプロパン酸、4−(カルボキシメチル)フェニルアラニン、3−ニトロ−L−チロシン、O−スルホ−L−チロシン、(2R)−6−アセトアミド−2−アンモニオヘキサノエート、1−メチルヒスチジン、2−アミノノナン酸、2−アミノデカン酸、L−ホモシステイン、5−スルファニルノルバリン、6−スルファニル−L−ノルロイシン、5−(メチルスルファニル)−L−ノルバリン、N −{[(2R,3R)−3−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール−2−イル]カルボニル}−L−リシン、N −[(ベンジルオキシ)カルボニル]リシン、(2S)−2−アミノ−6−[(シクロペンチルカルボニル)アミノ]ヘキサン酸、N −[(シクロペンチルオキシ)カルボニル]−L−リシン、(2S)−2−アミノ−6−{[(2R)−テトラヒドロフラン−2−イルカルボニル]アミノ}ヘキサン酸、(2S)−2−アミノ−8−[(2R,3S)−3−エチニルテトラヒドロフラン−2−イル]−8−オキソオクタン酸、N −(tert−ブトキシカルボニル)−L−リシン、(2S)−2−ヒドロキシ−6−({[(2−メチル−2−プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ヘキサン酸、N −[(アリルオキシ)カルボニル]リシン、(2S)−2−アミノ−6−({[(2−アジドベンジル)オキシ]カルボニル}アミノ)ヘキサン酸、N −L−プロリル−L−リシン、(2S)−2−アミノ−6−{[(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)カルボニル]アミノ}ヘキサン酸およびN −[(2−アジドエトキシ)カルボニル]−L−リシンから選択される、[23]から[28]のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
[30] [1]から[29]のいずれか一項に記載のヘリカーゼおよび追加的ポリヌクレオチド結合成分を含む構築物であって、ヘリカーゼがポリヌクレオチド結合成分に付着しており、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を有する構築物。
[31] ポリヌクレオチドの移動を制御する方法であって、ポリヌクレオチドを[1]から[29]のいずれか一項に記載のヘリカーゼまたは[30]に記載の構築物と接触させ、それによりポリヌクレオチドの移動を制御するステップを含む方法。
[32] 標的ポリヌクレオチドを特性決定する方法であって
(a)標的ポリヌクレオチドを膜貫通ポアおよび[1]から[29]のいずれか一項に記載のヘリカーゼまたは[30]に記載の構築物と、ヘリカーゼまたは構築物がポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御するように接触させるステップ;ならびに
(b)ポリヌクレオチドがポアに関して移動するときに1つまたは複数の測定値を取るステップであって、測定値が標的ポリヌクレオチドの特性の1つまたは複数を示し、それにより標的ポリヌクレオチドを特性決定するステップ
を含む方法。
[33] 1つまたは複数の特性が、(i)標的ポリヌクレオチドの長さ、(ii)標的ポリヌクレオチドの同一性、(iii)標的ポリヌクレオチドの配列、(iv)標的ポリヌクレオチドの二次構造および(v)標的ポリヌクレオチドが修飾されているか否か、から選択される、[32]に記載の方法。
[34] 標的ポリヌクレオチドがメチル化によって、酸化によって、損傷によって、1つまたは複数のタンパク質でまたは1つまたは複数の標識、タグもしくはスペーサーで修飾されている、[33]に記載の方法。
[35] 標的ポリヌクレオチドの1つまたは複数の特性が電気的測定および/または光学的測定によって測定される、[32]から[34]のいずれか一項に記載の方法。
[36] 電気的測定が電流測定、インピーダンス測定、トンネル測定または電界効果トランジスタ(FET)測定である、[35]に記載の方法。
[37] (a)標的ポリヌクレオチドを膜貫通ポアおよび[1]から[29]のいずれか一項に記載のヘリカーゼまたは[30]に記載の構築物に接触させて、ヘリカーゼまたは構築物がポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御するようにするステップ;および
(b)ポリヌクレオチドがポアに関して移動するときにポアを通過する電流を測定するステップであって、電流が標的ポリヌクレオチドの1つまたは複数の特性を示し、それにより標的ポリヌクレオチドを特性決定するステップ
を含む、[35]に記載の方法。
[38] ポアに電圧を印加して、ポアとヘリカーゼとの複合体を形成するステップをさらに含む、[32]から[37]のいずれか一項に記載の方法。
[39] ポリヌクレオチドの少なくとも一部が2本鎖である、[32]から[38]のいずれか一項に記載の方法。
[40] ポアが、膜貫通タンパク質ポアまたはソリッドステートポアである、[32]から[39]のいずれか一項に記載の方法。
[41] 膜貫通タンパク質ポアが、ヘモリジン(hemolysin)、ロイコシジン(leukocidin)、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)ポリン(porin)A(MspA)、MspB、MspC、MspD、外膜ポリン(porin)F(OmpF)、外膜ポリン(porin)G(OmpG)、外膜ホスホリパーゼA、ナイセリア(Neisseria)オートトランスポーターリポタンパク質(NalP)およびWZA由来である、[40]に記載の方法。
[42] 膜貫通タンパク質が、(a)配列番号2に示す8個の同一のサブユニットから形成されている、または(b)8個のサブユニットの1つもしくは複数が配列全体にわたるアミノ酸同一性に基づいて配列番号2に対して少なくとも50%の相同性を有し、ポア活性を保持しているその変種である、[41]に記載の方法。
[43] 膜貫通タンパク質が、(a)配列番号4に示す7個の同一サブユニットから形成されているα−ヘモリジンである、または(b)7個のサブユニットの1つまたは複数が配列全体にわたるアミノ酸同一性に基づいて配列番号4に対して少なくとも50%の相同性を有し、ポア活性を保持しているその変種である、[41]に記載の方法。
[44] (a)ポアと、(b)[1]から[29]のいずれか一項に記載のヘリカーゼまたは[30]に記載の構築物との複合体を形成し、それにより標的ポリヌクレオチドを特性決定するためのセンサーを形成するステップを含む、標的ポリヌクレオチドを特性決定するためのセンサーの形成方法。
[45] 複合体が、(a)標的ポリヌクレオチドの存在下でポアとヘリカーゼまたは構築物とを接触させるステップおよび(a)ポアに電位を印加するステップによって形成される、[44]に記載の方法。
[46] 電位が、電圧電位または化学電位である、[45に記載の方法。
[47] 複合体が、ポアをヘリカーゼまたは構築物に共有結合的に付着するステップによって形成される、[45]に記載の方法。
[48] (a)ポアと、(b)[1]から[29]のいずれか一項に記載のヘリカーゼまたは[30]に記載の構築物との間の複合体を含む、標的ポリヌクレオチドを特性決定するためのセンサー。
[49] ポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御するための[1]から[29]のいずれか一項に記載のヘリカーゼまたは[30]に記載の構築物の使用。
[50] (a)ポアおよび(b)[1]から[29]のいずれか一項に記載のヘリカーゼまたは[30]に記載の構築物を含む、標的ポリヌクレオチドを特性決定するためのキット。
[51] 両親媒性膜を含むチップをさらに含む、[50]に記載のキット。
[52] (a)複数のポア、および(b)[1]から[29]のいずれか一項に記載の複数のヘリカーゼまたは[30]に記載の複数の構築物を含む、試料中の標的ポリヌクレオチドを特性決定するための装置。
[53] 複数のポアを支持でき、ポアおよび構築物を使用してポリヌクレオチド特性決定を実施するために作動可能であるセンサーデバイス;ならびに
特性決定を実施するための材料を保持するための少なくとも1つのリザーバー
を含む、[52]に記載の装置。
[54] 複数のポアを支持でき、前記ポアおよびヘリカーゼまたは構築物を用いてポリヌクレオチド特性決定を実施するために作動可能であるセンサーデバイス;
特性決定を実施するための材料を保持するための少なくとも1つのリザーバー;
前記少なくとも1つのリザーバーから前記センサーデバイスに材料を制御可能に供給するように構成された流体系;および
各試料を受けるための1つまたは複数の容器
を含み、前記流体系が1つまたは複数の容器から前記センサーデバイスに前記試料を選択的に供給するように構成されている、[52]または[53]に記載の装置。
[55] [1]から[22]または[24]のいずれか一項に記載のヘリカーゼを産生する方法であって、
(a)1つまたは複数の単量体から形成され、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含むポリヌクレオチド結合ドメインを含むヘリカーゼを提供するステップ、ならびに
(b)ヘリカーゼの同じ単量体内の2つ以上の部分が繋がれて開口部のサイズを低減するようにヘリカーゼを修飾し、それにより[1]から[22または24]のいずれか一項に記載のヘリカーゼを産生するステップ
を含む方法。
[56] [23]に記載のヘリカーゼを産生する方法であって、
(a)Hel308ヘリカーゼを提供するステップ;ならびに
(b)Hel308Mbu(配列番号10)中のD272、N273、D274、G281、E284、E285、E287、S288、T289、G290、E291、D293、T294、N300、R303、K304、N314、S315、N316、H317、R318、K319、L320、E322、R326、N328、S615、K717、Y720、N721およびS724に対応する位置の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を導入し、それにより[23に記載のヘリカーゼを産生するステップを含む方法。
[57] (c)得られたヘリカーゼがポリヌクレオチドの移動を制御できるかどうかを決定するステップをさらに含む、[55]または[56]に記載の方法。
[58] [30]に記載の構築物を産生する方法であって、[1]から[29]のいずれか一項に記載のヘリカーゼを追加的ポリヌクレオチド結合成分に付着させ、それにより本発明の構築物を産生するステップを含む方法。
[59] 得られた構築物がポリヌクレオチドの移動を制御できるかどうかを決定するステップをさらに含む、[58]に記載の方法。

Claims (26)

  1. 増大した前進性を有するヘリカーゼを製造する方法であって、
    (a)1つまたは複数の単量体から形成され、少なくとも1つのコンホメーション状態において、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含むポリヌクレオチド結合ドメインを含むスーパーファミリー1またはスーパーファミリー2ヘリカーゼを提供するステップ、
    (b)前記ヘリカーゼを修飾し、前記開口部の反対側にある前記単量体の2つ以上の部分を繋ぎ、前記開口部を閉じるステップ、
    (c)前記ヘリカーゼが、ナノポアを通るポリヌクレオチドの移動を制御する能力を保持しているかを決定するステップ、
    (d)ナノポアを通るポリヌクレオチドの移動を制御するときのポリヌクレオチドの読み取り長さを決定するステップであって、ポリヌクレオチドの読み取り長さが、ステップ(a)で提供されるヘリカーゼと比べて増大している場合に、ヘリカーゼは増大した前進性を有する、ステップ
    を含む、方法。
  2. 2つ以上の部分が、単量体の表面上にある、および/または、単量体のループ領域にある、請求項1に記載の方法。
  3. ステップ(b)の前に、タンパク質モデリング、X線回折、NMR分光法またはクリオ電子顕微鏡を用いて1つまたは複数のアミノ酸を選択し、開口部、表面部分および/またはループ領域を同定することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 2つ以上の部分が、(a)相互に相補的なポリヌクレオチド、(b)抗体またはその断片およびそのエピトープ、(c)ロイシンジッパー、(d)β−シート増強、(e)水素結合、pi−スタッキングまたは塩橋、(f)ロタキサン、(g)アプタマーおよびこれに結合するタンパク質または(h)ハーフキレーター、によって繋がれている、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  5. 2つ以上の部分が1つまたは複数のリンカーを使用して繋がれており、前記リンカーが、アミノ酸リンカー、および/または1つもしくは複数の化学的架橋剤である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  6. 2つ以上の部分の少なくとも1つが、1つまたは複数のリンカーの前記2つ以上の部分への付着を促進するために修飾されている、または2つ以上の部分の少なくとも1つのアミノ酸がシステインもしくは非天然アミノ酸で置換されている、請求項に記載の方法。
  7. ヘリカーゼが、Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、Tralヘリカーゼ、Tralサブグループヘリカーゼ、またはXPDヘリカーゼである、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載の方法により製造されたヘリカーゼ。
  9. 標的ポリヌクレオチドを特性決定する方法であって、
    (a)標的ポリヌクレオチドを、膜貫通ポアおよびスーパーファミリー1またはスーパーファミリー2ヘリカーゼと接触させるステップであって、前記ヘリカーゼは、1つまたは複数の単量体から形成され、少なくとも1つのコンホメーション状態において、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含むポリヌクレオチド結合ドメインを含み、前記ポアを通るポリヌクレオチドの移動を、未修飾ヘリカーゼに比べ前記ポリヌクレオチドのより長い長さにわたって制御することができるように、前記開口部の反対側にある前記単量体の2つ以上の部分が修飾により繋がれて前記開口部が閉じている、ステップ、ならびに
    (b)ポリヌクレオチドがポアに関して移動するときに1つまたは複数の測定値を取るステップであって、測定値が標的ポリヌクレオチドの特性の1つまたは複数を示し、それにより標的ポリヌクレオチドを特性決定する、ステップ
    を含む方法。
  10. ステップ(a)および(b)が、ポアに電位を印加して実行される、請求項9に記載の方法。
  11. ポアに電位を印加し、ポアとヘリカーゼとの複合体を形成するステップをさらに含む、請求項または10に記載の方法。
  12. 1つまたは複数の単量体から形成され、少なくとも1つのコンホメーション状態において、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できる開口部を含むポリヌクレオチド結合ドメインを含むスーパーファミリー1またはスーパーファミリー2ヘリカーゼであって、ヘリカーゼの同じ単量体内の2つ以上の部分が、開口部の反対側にある、開口部の部分を形成するまたは開口部に隣接している2つ以上のアミノ酸を連結することによって繋がれて、開口部を閉じるように修飾されており、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を保持しており、未修飾ヘリカーゼに比べポリヌクレオチドからの解離が低減しているヘリカーゼ。
  13. 2つ以上の部分が、単量体中で空間的に近接しており、単量体の表面上にあるおよび/または単量体のループ領域であり、かつ、開口部を閉じるように繋がれている、請求項12に記載のヘリカーゼ。
  14. ポリヌクレオチド周囲の共有結合的に閉じた構造を形成できるように修飾されている、または2つ以上の部分が一過的に繋がれている、請求項12または13に記載のヘリカーゼ。
  15. 2つ以上の部分が、(a)相互に相補的なポリヌクレオチド、(b)抗体またはその断片およびそのエピトープ、(c)ロイシンジッパー、(d)β−シート増強、(e)水素結合、pi−スタッキングまたは塩橋、(f)ロタキサン、(g)アプタマーおよびこれに結合するタンパク質または(h)ハーフキレーター、によって繋がれている、請求項1214のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
  16. 2つ以上の部分が1つまたは複数のリンカーを使用して繋がれており、前記リンカーが、アミノ酸リンカー、および/または1つもしくは複数の化学的架橋剤である、請求項1215のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
  17. 2つ以上の部分の少なくとも1つが、1つまたは複数のリンカーの前記2つ以上の部分への付着を促進するために修飾されている、または2つ以上の部分の少なくとも1つのアミノ酸がシステインもしくは非天然アミノ酸で置換されている、請求項16に記載のヘリカーゼ。
  18. ドメイン2中のアミノ酸とドメイン4中のアミノ酸とが連結されている、請求項12〜17のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
  19. Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、Tralヘリカーゼ、Tralサブグループヘリカーゼ、またはXPDヘリカーゼである、請求項1218のいずれか一項に記載のヘリカーゼ。
  20. 請求項1219のいずれか一項に記載のヘリカーゼであって、ヘリカーゼが、ヘリカーゼの2つ以上の部分が繋がれて、それを通ってポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離できるポリヌクレオチド結合ドメイン中の開口部が閉じるように、1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸がHel308Mbu(配列番号10)中のD272、N273、D274、G281、E284、E285、E287、S288、T289、G290、E291、D293、T294、N300、R303、K304、N314、S315、N316、H317、R318、K319、L320、E322、R326、N328、S615、K717、Y720、N721およびS724に対応する位置の1つまたは複数に導入された、Hel308ヘリカーゼであり、ヘリカーゼが、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を保持している、前記ヘリカーゼ。
  21. 1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸が、(a)Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288、S615、K717、Y720、E287、T289、G290、E291、N316およびK319に対応する位置の1つもしくは複数に、(b)Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288、S615、K717およびY720に対応する位置の1つもしくは複数にまたは(c)Hel308Mbu(配列番号10)中のD274、E284、E285、S288およびS615に対応する位置の1つまたは複数に導入されている、請求項20に記載のヘリカーゼ。
  22. (a)位置L265、E275、L276、S279、P585、K690およびE693の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号13(Hel308Pfu)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号13に対して少なくとも90%同一である変種;
    (b)位置E283、E293、I294、V297、D671、K775およびE778の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号16(Hel308Hvo)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号16に対して少なくとも90%同一である変種;
    (c)位置E283、E293、I294、G297、D668、R775およびE778の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号19(Hel308Hla)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号19に対して少なくとも90%同一である変種;
    (d)位置D280、K290、I291、S294、P589、T694およびN697の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号22(Hel308Csy)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号22に対して少なくとも90%同一である変種;
    (e)位置L281、K291、Q292、D295、D596、K702およびQ705の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号25(Hel308Sso)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号25に対して少なくとも90%同一である変種;
    (f)位置H264、E272、K273、A276、G576、K678およびE681の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号28(Hel308Mfr)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号28に対して少なくとも90%同一である変種;
    (g)位置S279、L289、S290、D293、P649、K753およびR756の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号29(Hel308Mok)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号29に対して少なくとも90%同一である変種;
    (h)位置Y276、L286、S287、D290、P579、K679およびK682の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号32(Hel308Mig)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号32に対して少なくとも90%同一である変種;
    (i)位置L266、S276、L277、Q280、P583、K689およびD692の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号33(Hel308Tga)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号33に対して少なくとも90%同一である変種;
    (j)位置L287、E297、L298、S301、S604、K710およびE713の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号34(Hel308Tba)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号34に対して少なくとも90%同一である変種;
    (k)位置L289、Q299、L300、G303、N606、G712およびE715の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号37(Hel308Tsi)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号37に対して少なくとも90%同一である変種;
    (l)位置E274、D284、E285、E288、S589、K691およびD694の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号38(Hel308Mba)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号38に対して少なくとも90%同一である変種;
    (m)位置E274、D284、E285、E288、P590、K692およびE695の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号39(Hel308Mac)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号39に対して少なくとも90%同一である変種;
    (n)位置H272、L282、S283、D286、P621、K725およびK728の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号40(Hel308Mmah)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号40に対して少なくとも90%同一である変種;
    (o)位置E274、D284、E285、E288、P590、K692およびE698の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号41(Hel308Mmaz)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号41に対して少なくとも90%同一である変種;
    (p)位置A269、L279、A280、L283、H575、K677およびE680の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号42(Hel308Mth)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号42に対して少なくとも90%同一である変種;
    (q)位置H274、Q284、E285、E288、P596、K699およびQ702の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号43(Hel308Mzh)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号43に対して少なくとも90%同一である変種;
    (r)位置G274、E284、E285、E288、T590、K691およびY694の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号44(Hel308Mev)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号44に対して少なくとも90%同一である変種;
    (s)位置H272、L282、S283、D286、P621、K725およびK728の1つまたは複数にシステイン残基または非天然アミノ酸を含む配列番号45(Hel308Mma)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号45に対して少なくとも90%同一である変種;
    (t)位置G277、T287、E288、E291、D634、K737およびE740の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号46(Hel308Nma)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号46に対して少なくとも90%同一である変種;
    (u)位置A270、E277、R278、E281、S583、G685およびE688の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号47(Hel308Mbo)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号47に対して少なくとも90%同一である変種;
    (v)位置Q264、F267、E268、E271、P559、K663およびK666の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号48(Hel308Fac)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号48に対して少なくとも90%同一である変種;
    (w)位置R275、L285、S286、E289、P576、K676およびK679の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号49(Hel308Mfe)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号49に対して少なくとも90%同一である変種;
    (x)位置I273、L283、S284、E287、P574、K674およびK677の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号50(Hel308Mja)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号50に対して少なくとも90%同一である変種;
    (y)位置R257、L267、S268、D271、P554、K651およびK654の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号51(Hel308Min)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号51に対して少なくとも90%同一である変種;
    (z)位置S269、Q277、E278、R281、S583、G685およびR688の1つまたは複数にシステイン残基または非天然アミノ酸を含む配列番号52(Hel308Mhu)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号52に対して少なくとも90%同一である変種;
    (aa)位置K268、K277、A278、E281、D575、R677およびE680の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号53(Hel308Afu)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号53に対して少なくとも90%同一である変種;
    (ab)位置D277、D287、D288、D291、D626、K729およびE732の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号54(Hel308Htu)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号54に対して少なくとも90%同一である変種;
    (ac)位置D276、D286、Q287、D290、D595、K707およびE710の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号55(Hel308Hpa)に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号55に対して少なくとも90%同一である変種;
    (ad)位置E286、E296、I297、V300、D633、A737およびE740の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号58(Hel308Hsp(ski2様ヘリカーゼ))に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号58に対して少なくとも90%同一である変種;または
    (ae)D274、E284、E285、S288、S615、K717およびY720の1つまたは複数に1つもしくは複数のシステイン残基および/または1つもしくは複数の非天然アミノ酸を含む配列番号10に示す配列の変種であって、アミノ酸同一性に基づいて配列番号10に対して少なくとも90%同一である変種
    を含む、請求項21に記載のヘリカーゼ。
  23. 請求項12から22のいずれか一項に記載のヘリカーゼおよび追加的ポリヌクレオチド結合成分を含む構築物であって、ヘリカーゼがポリヌクレオチド結合成分に付着しており、ポリヌクレオチドの移動を制御する能力を有する構築物。
  24. 標的ポリヌクレオチドを特性決定する方法であって
    (a)標的ポリヌクレオチドを膜貫通ポアおよび請求項12から22のいずれか一項に記載のヘリカーゼまたは請求項23に記載の構築物と、ヘリカーゼまたは構築物がポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御するように接触させるステップ;ならびに
    (b)ポリヌクレオチドがポアに関して移動するときに1つまたは複数の測定値を取るステップであって、測定値が標的ポリヌクレオチドの特性の1つまたは複数を示し、それにより標的ポリヌクレオチドを特性決定するステップ
    を含む方法。
  25. (a)ポアと、(b)請求項12から22のいずれか一項に記載のヘリカーゼまたは請求項23に記載の構築物とを含む、標的ポリヌクレオチドを特性決定するためのセンサー。
  26. ポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御するための請求項12から22のいずれか一項に記載のヘリカーゼまたは請求項23に記載の構築物の使用。
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