JP6614429B2 - 水分解用触媒、並びにそれを用いた酸素及び水素の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水分解用触媒、並びにそれを用いた酸素及び水素の製造方法に関する。
水は自然界に最も豊富に存在する電子源であり、プロトン還元による酸素及び水素の製造、並びに二酸化炭素還元による物質合成を担う重要な化学資源といえる。しかし。人工的に水から電子を獲得する反応、すなわち酸素発生反応(2HO→O+4H+4e)に優れた触媒として知られているのは、イリジウムやルテニウム等の希少金属のみであり(非特許文献1〜3)、豊富に存在する第一遷移元素からなる触媒材料の開発が望まれている。
マンガンは、自然界で酸素発生を触媒する唯一の第一遷移元素であり、光合成フォトシステムII(光化学系II複合体、PSII)におけるMn4−クラスターは、水の酸化反応に対して高い触媒活性と基質選択性を示す。そのため、水を効率的に酸化可能な触媒を得るための設計指針として、Mn4−クラスターの構造を模倣するアプローチがとられてきた(非特許文献4及び5)。
しかしながら。構造模倣型の人工マンガン触媒の多くは活性が低く、特に中性領域において反応を駆動させるためには大きなエネルギー投与を必要とする。その結果、このようなマンガン触媒を利用した人工光合成系においては、酸素及び水素の製造、並びに二酸化炭素の資源化に伴うエネルギー変換効率は大きく減少するという点において問題があった。
S.Trasatti,G.Buzzanca,J.Electroanal.Chem.,1971,29,A1. A.Harriman,I.J.Pickering,J.M.Thomas,P.A.Christensen,J.Chem.Soc.,Faraday Trans.1,1988,84,2795. Yixin Zhao,Nella M.Vargas−Barbosa,Emil A.Hernandez−Pagan,and Thomas E.Mallouk,small 2011,7(14),2087. Kanady JS1,Tsui EY,Day MW,Agapie T.,Science. 2011 Aug 5;333(6043):733−6. Brimblecombe R.、Swiegers G.F.,、Dismukes G.C.,Angew Chem Int Ed,2009,47,7335−7338.
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、中性領域での水酸化分解反応において、高い触媒活性を示す触媒を提供することを目的とする。
上述の通り、水の酸化分解において、人工のマンガン触媒は塩基性において高い活性を示す一方で、中性付近では触媒活性・安定性が大きく低下することが知られている。この点に関し、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、α−二酸化マンガンによる水の酸化ではMn(III)が反応中間体であり、その生成を経てから水の酸化が進行することを明らかにしている。このMn(III)は塩基性領域においては安定である一方で、中性領域ではMn(II)及びMn(IV)に不均化(2Mn(III)→Mn(II)+Mn(IV))するため、中性領域においては、Mn(III)の電気化学的な再生過程(Mn(II)・OH→Mn(III)・OH+e+H)が反応の律速段階となっている。したがって、中性領域におけるマンガンの触媒活性を向上させるためには、律速段階であるMn(III)の再生反応の活性化エネルギーを下げることが不可欠である。Mn(II)の酸化反応は、pHに依存せずに1.5V vs.SHEで進行する。すなわち、該反応は、プロトン移動を含まない1電子酸化反応(Mn(II)・OH→Mn(III)・OH+e)であるため、中性領域において活性の大幅な低下が誘起されることとなる。Mn(II)→Mn(III)は、電子移動反応に引き続きプロトン移動反応が起きる逐次反応であると考えられるが、もし、中性領域において、この逐次反応を、プロトンと電子が同時に基質へと移動する反応(協奏的プロトン−電子移動(CPET)を駆動させる反応)へと変換することができれば、不安定な中間体を経由せずに反応が進行し、触媒活性を向上させることができると、本発明者らは考えた。
そこで、かかる構想に基づき、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、α−二酸化マンガンによる水の酸化分解系において、pKaが8以下である塩基(ピリジン及びその誘導体)、又は、炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)を添加することにより、中性領域におけるα−二酸化マンガンの触媒活性を向上させることができることを見出した。これら化合物添加による触媒活性の向上は、共に前述のCPETの駆動に起因するものと考えられる。
なお、前述のMn(III)のような、反応中間体が示す不均化特性は、マンガンに限定されず、縮重電子配置を有する他の第一遷移元素(鉄、コバルト、ニッケル及び銅)においても観測されている。したがって、このマンガンに関する新規知見に基づけば、鉄、コバルト、ニッケル及び銅による水の酸化分解系においても、pKaが8以下である塩基及び/又は炭酸塩を添加することにより、これら第一遷移元素の触媒活性が向上することは明白である。
また、このような第一遷移元素による酸化は、水のみならず、塩基もその対象となるため、水の酸化分解と競合して、塩基の酸化分解も進行することとなる。そこで、本発明者らは、次に、中性領域において、二酸化マンガンの触媒活性をより安定的に向上させることを目的とし、結晶構造の異なる4種類の二酸化マンガン(α−二酸化マンガン、β−二酸化マンガン、γ−二酸化マンガン、δ−二酸化マンガン)を電極触媒として用い、ピリジン共存下の酸化分解反応における、水に対する特異性(クーロン効率)を評価した。その結果、前述のα−二酸化マンガンにおけるクーロン効率は54%であったのに対し、β−二酸化マンガンにおけるそれは88%であり、水に対する特異性がα−二酸化マンガンよりも3割以上向上することを見出した。さらに、本発明者らは、β−二酸化マンガンを触媒に含有した場合の水分解により生成される酸素量は、α−二酸化マンガンを触媒に含有した場合に比べて3〜4倍向上していることをも見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、水分解用触媒、及びそれを用いた酸素及び水素の製造方法に関し、より詳しくは以下の発明を提供するものである。
(1) マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅から選択される少なくとも一の第一遷移元素又は該元素を含む化合物と、pKaが8以下の塩基及び/又は炭酸塩とを含む、水分解用触媒。
(2) 前記第一遷移元素を含む化合物が二酸化マンガンである、(1)に記載の水分解用触媒。
(3) 前記第一遷移元素を含む化合物がβ−二酸化マンガンである、(1)に記載の水分解用触媒。
(4) 前記塩基が含窒素複素環化合物である、(1)〜(3)のうちのいずれか一に記載の水分解用触媒。
(5) 前記塩基がコリジンである、(1)〜(3)のうちのいずれか一に記載の水分解用触媒。
(6) (1)〜(5)のうちのいずれか一に記載の水分解用触媒と水とを接触させ、該水を分解させることを含む、酸素及び水素を製造する方法。
(7) 前記水のpHが6〜8である、(6)に記載の方法。
本発明によれば、中性領域において、水を効率良く酸化分解し、酸素及び水素等を製造することが可能となる。
塩基存在下(pH7.5)にてα−MnOを含有する電極触媒を用いた際の酸素発生時における、電流と電位との変化を示すリニアスイープボルタモグラムである。 炭酸塩存在下(pH7.5)にてα−MnOを含有する電極触媒を用いた際の酸素発生時における、電流と電位との変化を示すリニアスイープボルタモグラムである。 塩基存在下(pH7.5)にてα−MnOを含有する電極触媒を用いた際の、酸素生成量の経時的変化を示すグラフである。 γ−コリジン存在下(pH7.5)、塩基非存在下(pH7.5)又は塩基非存在下(pH13)にてα−MnOを含有する電極触媒を用いた際の、酸素生成量の経時的変化を示すグラフである。 ピリジン存在下(pH8)にて、α−MnO、β−MnO、γ−MnO又はδ−MnOを含有する電極触媒を用いた際の、クーロン効率を示すドットプロットである。
<水分解用触媒>
後述の実施例において示す通り、中性領域における水酸化分解反応において、pKaが8以下の塩基、又は、炭酸塩を添加することにより、マンガンの触媒活性が向上することが明らかになった。この触媒活性向上は、上述の通り、中性領域において、プロトンと電子が同時に基質へと移動する反応(CPET)を駆動させることで、不安定な反応中間体を経由せずに反応が進行することに起因すると考えられる。また、反応中間体が示す不均化特性は、マンガンに限定されず、縮重電子配置を有する他の第一遷移元素(鉄、コバルト、ニッケル及び銅)においても観測されている。したがって、上記のマンガンに関して得られた知見に基づけば、pKaが8以下である塩基及び/又は炭酸塩の添加により、水の酸化分解系におけるこれら第一遷移元素の触媒活性を向上させることができることは明白である。
したがって、本発明は、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅から選択される少なくとも一の第一遷移元素又は該元素を含む化合物と、pKaが8以下の塩基及び/又は炭酸塩とを含む、水分解用触媒を提供するものである。
本発明の水分解用触媒に含有される第一遷移元素の種類は前記の通りであるが、天然に豊富に存在すること、また触媒の耐久性、合成の簡便性の観点から、マンガンが好ましい。
また、前記第一遷移元素(金属)を含む化合物としては特に制限はなく、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属ハロゲン化物、金属酸ハロゲン化物、金属アルコキシド、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属有機酸塩、金属過ハロゲン酸塩及び金属次亜ハロゲン酸塩が挙げられる。
マンガンを含む化合物としては、例えば、2×2トンネル構造を有するα−MnO、1×1トンネル構造を有するβ−MnO、2×1・1×1トンネル構造を有するγ−MnO、層状構造を有するδ−MnO等の二酸化マンガン、又はペロブスカイト構造を有するCaMnO若しくはSrMnOが挙げられるが、触媒の耐久性、並びに合成の簡便性の観点から、MnOが好ましく、後述の実施例において示す通り、塩基存在下においても、より特異性高く水を酸化分解することが可能であるという観点から、β−MnOが特に好ましい。
本発明の触媒に含有される「塩基」は、そのpKaが8以下となるものであればよいが、後述の実施例において示す通り、pKaの値が高いほど、より中性領域での水酸化分解反応において、高い触媒活性を示すという観点から、好ましくは5〜8であり、より好ましくは6〜8であり、さらに好ましくは7〜8である。また、本発明の触媒が関与する酸化分解の対象である水のpHが、該触媒に含有される塩基のpKaより低い場合には、該塩基がプロトン化してしまい、プロトンの引き抜きが生じにくくなる。そのため、水のpHより塩基のpKaが低いことが好ましい。なお、本発明において、pKaは、水中、25℃における塩基の共役酸の酸解離定数を示す。また、pKaが8以下である塩基としては、有機塩基であっても無機塩基であってもよく、例えば、ピリジン、ピコリン、ルチジン、コリジン及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の含窒素複素環化合物、N−メチルモルホリン等のアミン類、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等のアニリン類、安息香酸等のカルボン酸、該カルボン酸の塩及びエステル、シリカ、金属アルコキシド、アルカリ金属等の金属塩が挙げられる。これらの中では、優れたプロトン引き抜き能、並びに酸化分解反応に対する安定性の観点から、含窒素複素環化合物が好ましく、後述の実施例において示す通り、中性領域における水酸化分解反応において、より高い触媒活性を誘起できるという観点から、コリジンがより好ましい。
また、本発明の触媒に含有される「炭酸塩」は、水に溶解した際に炭酸水素イオンを生成し得るものであればよい。このような炭酸塩としては、特に制限はないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウムが挙げられる。さらに、炭素水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素アンモニウム等のいわゆる炭酸水素塩も本発明の炭酸塩に含まれる。また、これらの中では、後述の水の酸化分解反応時に水に添加して用いる場合において、溶解させ易く、また該水のpHを調整し易いという観点から、炭酸水素塩が好ましく、炭酸水素ナトリウムがより好ましい。
本発明の触媒の形態としては特に制限はなく、固体触媒であってもよく、担体に担持されている触媒であってもよい。触媒を担持させる担体としては、例えば、FTO(フッ素ドープの酸化スズ)、ITO(酸化インジウムスズ)等の導電性セラミック、ニッケル、白金等の金属、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボン(導電性炭素材料)が挙げられるが、触媒担持時の高い耐熱性、並びに可視光領域における高い光透過性の観点から、FTOが好ましい。
本発明の触媒の調製方法は特に限定されず、本発明の触媒は、公知の方法により容易に調製することができる。また、担体に本発明の触媒を担持する方法としては、例えば、スプレー法、混練法、含浸法、吸着法、イオン交換法が挙げられる。
本発明の触媒の比表面積としては特に制限はないが、通常5〜200m/gであり、好ましくは10m/g以上であり、より好ましくは20m/g以上である。触媒の比表面積の測定方法としては、後述の実施例において示す通り、窒素の吸着を解析するBET(Brunauer−Emett−Teller)法を採用することができる。
また、後述の実施例に示す通り、塩基及び/又は炭酸塩を含有する触媒は、水の酸化分解反応時に該水に塩基及び/又は炭酸塩を添加することによって調製してもよく、水の酸化分解反応前に、前記遷移元素又は該元素を含む化合物と混合することによって、または前記遷移元素又は該元素を含む化合物をコートするように塩基及び/又は炭酸塩を添加することによって調製してもよい。
水における塩基の添加濃度としては、用いる第一遷移元素又は該元素を含む化合物、及び塩基の種類等に応じ、適宜変更し得るが、通常0.025〜2Mであり、好ましくは0.05〜0.5Mであり、特に好ましくは0.1Mである。
水における炭酸塩の添加濃度としては、用いる第一遷移元素又は該元素を含む化合物の種類等に応じ、適宜変更し得るが、通常0.01〜2Mであり、好ましくは0.1〜1Mであり、特に好ましくは0.5Mである。
また、前記第一遷移元素又は該元素を含む化合物とそれに混合又は添加される塩基及び/又は炭酸塩の量も、用いる第一遷移元素又は該元素を含む化合物、塩基及び炭酸塩の種類等に応じ、適宜変更し得るが、例えば、触媒全体の量を100質量%とした場合には、第一遷移元素又は該元素を含む化合物の含有量と、塩基及び炭酸塩の含有量とは各々、通常10〜90質量%と90〜10質量%とであり、好ましくは20〜80質量%と80〜20質量%とであり、より好ましくは40質量%と60質量%とである。
さらに、本発明の触媒においては、前述の第一遷移元素、塩基及び炭酸塩以外の成分を適宜含んでいてもよい。かかる成分としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性炭素材料、ナフィオン(登録商標)等のH透過膜、OH透過膜が挙げられる。
また、本発明の触媒は、水電解アノード極の電極触媒として好適に用いることができる。したがって、本発明は、上述の触媒を含有する水電解アノード極、並びに該水電解アノード極を備えた水電解装置も提供することができる。
本発明の水電解装置の態様としては、この実施形態に限定されないが、隔膜と、カソード極と前記アノード極とが配置されてなる電解槽を含む態様が挙げられる。また、水電解装置は、後述の通り、酸素製造装置、水素製造装置、二酸化炭素製造装置、炭化水素化合物製造装置として使用することもできる。
<酸素及び水素等を製造する方法>
後述の実施例において示す通り、前述の水分解用触媒を用いることにより、特に中性領域において、効率良く、水を酸化分解し、酸素を製造することができる。また、本発明の方法においては、下記反応により水は酸化分解されることとなる。
2HO→O+4H+4e
このように、本発明の方法においては、酸素のみならず、電子及びプロトンを製造することもでき、さらに該プロトンを還元して水素を製造することもできる。したがって、本発明は、前述の水分解用触媒と水とを接触させ、該水を酸化分解することを含む、酸素及び水素を製造する方法をも提供する。
また、炭酸塩を使用する場合は、下記反応により、二酸化炭素も製造することができる。
2HCO3 →O+2CO+2H+4e
したがって、本発明は、前述の水分解用触媒と水とを接触させ、該水を酸化分解することを含む、酸素、水素及び二酸化炭素を製造する方法をも提供する。
本発明の方法において酸化分解される水としては、水のみ(いわゆる純水)であってもよいが、電解質等が含まれている水溶液の形態であってもよい。また、当該水のpHとしては特に制限はないが、中性領域(pH6〜8)であることが好ましい。
また、前記反応系に二酸化炭素を添加等することにより、該二酸化炭素等を水素により還元して、炭化水素化合物(ギ酸、ホルムアルデヒド、メタノール、メタン、エタン、プロパン等)を製造することもできる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
水の酸化分解において、従前の人工マンガン触媒は塩基性において高い活性を示す一方で、中性付近では触媒活性・安定性が大きく低下することが知られている。この点に関し、α−二酸化マンガンによる水の酸化ではMn(III)は反応中間体であり、その生成を経てから水の酸化が進行することを本発明者らは明らかにしている。このMn(III)は塩基性領域においては安定である一方で、中性領域ではMn(II)及びMn(IV)に不均化するため、中性領域においては、Mn(III)の電気化学的な再生過程(Mn(II)・OH→Mn(III)・OH+e+H)が反応の律速段階となり、活性の大幅な低下が誘起されることとなる。Mn(II)→Mn(III)は、電子移動反応に引き続きプロトン移動反応が起きる逐次反応であると考えられるため、中性領域において、プロトンと電子が同時に基質へと移動する反応(CPET)を駆動させることができれば、不安定な中間体を経由せずに反応が進行し、触媒活性を向上することができることが考えられる。
そこで、CPETを駆動させるための誘起剤として、pKaが8以下である塩基、又は、炭酸塩が有用であると想定し、以下に示す材料及び方法を用いて検証した。
<α−MnOの合成>
中性領域における二酸化マンガンの水酸化触媒能が、pKaが8以下である塩基、又は、炭酸塩を添加することにより変動するかどうかを評価すべく、該評価に用いる電気触媒としてα−二酸化マンガン(α−MnO)を選択し、「M.Singhら、,D.N.Thanh,P.Ulbrich,N.Strnadova,F.Stepanek,J.Solid State Chem.,2010,183,2979.」に記載を参考にし、以下に記載の方法にて合成した。
先ず、ビーカーに過マンガン酸カリウムと水とを加え、60℃に熱したホットプレート上で撹拌し、完全に溶かした。もう一つのビーカーに0.2M酢酸水溶液を作製し、そこに塩化マンガン(II)四水和物を加え、完全に溶解するまで撹拌した。次いで、塩化マンガン(II)四水和物溶液を過マンガン酸カリウム水溶液に注ぎ、80℃の湯浴に浸しながら2時間撹拌し続けた。そして、反応物を超純水で洗いながらメンブレーンフィルター(0.2μm)で吸引濾過し、80℃の炉で一晩乾燥させることで目標の生成物α−MnOを得た。
なお、前記合成に用いた反応試薬及びそれらの分量は以下の通りである。
過マンガン酸カリウム 0.79g(Wako)、塩化マンガン(II)四水和物 0.78g(Wako)、酢酸 99.0% 1.4mL、超純水 21mL。
<電極作製>
前記α−MnOを担持させる電極基盤としてはFTO電極(フッ素ドープの酸化スズ電極、SPD研究所)を採用した。そして、40mgのα−MnOと10mlの超純水とをポリチューブに入れてホモジナイザー(amplitude 15)に30分かけ、α−MnOを分散させた。α−MnOの重量は開始電位(Onset potential)がわかり易いように留意した。その後、全体の体積が100mLとなるようさらに超純水を加え、自動スプレーガン(Lumina,ST−6)を用いて洗浄したFTO電極に噴射し、電極を作製した。この時FTO電極は200℃に熱したホットプレート上に乗せ、噴霧が基盤上で滴とならないように留意した。
なお、作製した試料のキャラクタリゼーションには、粉末X線回折分光法(XRD)(RIGAKU,SmartLab)を用いた。XRD測定におけるX線源はCuKα線(λ=0.154nm)であり、測定時の管電圧・管電流はそれぞれ40kV、80mA、走査速度は0.02o/sで行った。その結果、図には示さないが、検出された結晶相においてα−MnOに由来するピークが確認された。
<電気化学測定>
中性領域における、各塩基共存下のα−二酸化マンガンの水酸化触媒能を評価するため、リニアスイープボルタンメトリーを行った。実験系としては作用極に前記触媒を担持させたFTO透明ガラス電極(投影面積 3.14cm)、対極に白金線、参照極にAg/AgCl(飽和KCl)電極(+0.199V vs.SHE)を用いる三電極系を用いた。電解液には硫酸ナトリウム(Wako)を用い、0.5M NaSO水溶液を調製し、使用した。塩基としてはピリジン(Wako,pKa:5.25)又はその誘導体(β−ピコリン(Wako,pKa:5.80)、γ−ピコリン(Wako,pKa:6.10)、2,6−ルチジン(Wako,pKa:6.96)若しくはγ−コリジン(Wako,pKa:7.48))を添加してプロトン化していない状態が0.025Mとしたものを用い、pH7.5の条件下、リニアスイープボルタンメトリーを行った。また、対照例として、pH7.5の条件下、塩基を添加しない例(塩基非添加)と、pH13の条件下、塩基を添加しない例(w/o base)とも用意し、リニアスイープボルタンメトリーを行った。得られた結果を図1に示す。
また、塩基の代わりに0.01〜1MのNaHCOを添加した例も用意し、前記同様にリニアスイープボルタンメトリーを行った。得られた結果を図2に示す。
なお、本測定においては、電気化学セルを用い、pH変化が最小に抑えられるように負方向から掃引を行った。また、該電気化学セルにおいては、作用極を底部に、対極・参照極を上から差し込むような形となっている。作用極と参照極との距離は2mmとした。掃引速度はOnsetpotentialが判別し易いように留意して10mV/sとした。
<ガスクロマトグラフィー>
中性領域における、各塩基共存下のα−二酸化マンガンによる水の電気分解によって生成される酸素量を定量するため、ガスクロマトグラフィーを行った。実験系としては、対極側、作用極及び参照極側がナフィオン膜(Nafion(登録商標)117,0.007インチ)により隔たれた二室セルを用い、作用極側の気相の体積を38.5mLとした。測定は、対極側、作用極側の順にArバブリングを20分行い、セル中の溶存酸素を取り除いてから行った。測定中は+1.4V(vs.SHE)の電位を付加し、酸素が全て溶液中にとどまらないよう撹拌しながら行った。測定は30分ごとに90分行った。各測定ではガスタイトタイプのシリンジを用い、Arで共洗いした後1mLの気体を採取した。90分後もTON(ターンオーバー数)が1を超えない場合には、測定による空気の混入の危険を減らすため、適宜測定間隔を伸ばして測定を行った。なお、漏れこみの影響を考慮に入れるため、実験開始前に漏れこみによる酸素の増加を測定した。酸素の流入が系によって一定であるとの仮定の下、酸素の増加の1次近似式を求め、それを引くことで正味の酸素量を求めた。また、対照例として、pH7.5の条件下、塩基を添加しない例(塩基非添加(pH=7.5))と、pH13の条件下、塩基を添加しない例(塩基非添加(pH=13))とを用意し、前述の塩基を添加した場合同様に生成される酸素量を求めた。得られた結果を図3及び図4に示す。
さらに、塩基の代わりに0.5MのNaHCOを添加した例も用意し、前記同様に生成される酸素量を求めた。
図1に示す通り、pKaが8以下の塩基を加えることで、大幅な過電圧の減少及び電流密度の向上がみられ、さらにその度合は塩基のpKaが増加するに伴って大きくなることが観測された。さらに、塩基を導入することで中性領域の立ち上がり電位にpH依存性が見られ始めたことから、この過電圧の減少及び電流密度の向上は、前述のCPETの誘起に起因するものと考えられる。
また、図2に示す通り、炭酸塩を加えることによっても、前述のpKaが8以下の塩基同様に、ボルタモグラムにおいて電流密度の向上が観測された。
また、図3に示す通り、pKaが8以下の塩基を添加した場合、ガスクロマトグラフィーを用いて分析した酸素生成量においても、前記過電圧の減少及び電流密度の向上同様の傾向が見られた。また、これらの酸素生成量は全てTONが1を超えていたため、これら水酸化分解反応は触媒的に進行していることが明らかになった。特に、pKaが7.48の塩基(γ−コリジン)においては、塩基を添加しない条件と比較して約15倍も活性が向上していた。また、図4に示す通り、この触媒活性は、塩基性領域におけるそれの約半分に匹敵する活性であった。
さらに、図には示さないが、0.5M NaHCOを添加した場合(pH=8、1.7VvsSHE、電解時間:100分)には、43μmolの酸素が発生した。なお、同条件にて、50mMピリジンを添加した場合には、17μmolの酸素発生が認められた。また、炭酸塩を添加した場合において、併せて二酸化炭素の検出を試みたところ、二酸化炭素も生成されていることも確認でき、さらにその生成量は、酸素のそれの2倍であった。
(実施例2)
前述の通り、中性領域の水酸化分解反応におけるα−二酸化マンガンの触媒能は、pKaが8以下の塩基を加えることで大幅に向上されることが明らかになった。しかしながら、このような酸化分解は、水のみならず、添加した塩基もその対象となるため、水の酸化分解と競合して、塩基の酸化分解も進行することとなる。そこで、中性領域において、二酸化マンガンの触媒活性をより安定的に向上させることを目的とし、結晶構造の異なる4種類の二酸化マンガン(α−二酸化マンガン、β−二酸化マンガン、γ−二酸化マンガン、δ−二酸化マンガン)を電極触媒として用い、ピリジン共存下の酸化分解反応における、水に対する特異性(クーロン効率)を、以下に示す方法にて評価した。
<β−MnOの合成>
「David M.Robinson,Yong Bok Go,Michelle Mui,Graeme Gardner,Zhijuan Zhang,Daniel D.T.Mastrogiovanni,Eric Garfunkel,Jing Li,Martha Greenblatt,and G.Charles Dismukes J.,J.Am.Chem.Soc.,2013,135(9),3494」に記載の合成方法を参考にし、以下に示す方法にてβ−二酸化マンガン(β−MnO)を合成した。
先ず、ビーカーに超純水と硫酸マンガン(II)五水和物と過硫酸ナトリウムとを加え、完全に溶解するまで撹拌した。その後、混合物をテフロン(登録商標)製水熱合成容器に移し、120℃の炉で12時間水熱合成を行った。得られた反応物を超純水で洗いながらメンブレーンフィルター(0.2μm)で吸引濾過し、80℃の炉で一晩乾燥させた。純度を上げるため、さらに反応物1gあたり25mLの過硫酸ナトリウム水溶液(0.08M)とともにテフロン(登録商標)製水熱合成容器に移し、120℃の炉で12時間水熱合成を行った。そして、得られた反応物を超純水で洗いながらメンブレーンフィルター(0.2μm)で吸引濾過し、90℃の炉で一晩乾燥させることで目標の生成物β−MnOを得た。
なお、前記合成に用いた反応試薬及びそれらの分量は以下の通りである。
硫酸マンガン(II)五水和物 1.90g(Wako),過硫酸ナトリウム 1.90+0.23g(Wako),超純水 52mL。
<γ−MnOの合成>
「S.Liang,F.Teng,G.Bulgan,R.Zong,Y.Zhu,J.Phys.Chem.C.,2008,14,5311.25.」に記載の合成方法を参考にし、以下に示す方法にてγ−二酸化マンガン(γ−MnO)を合成した。
先ず、ビーカーに超純水と硫酸マンガン(II)五水和物と過硫酸アンモニウムとを加え、完全に溶解するまで撹拌した。その後、混合物をテフロン(登録商標)製水熱合成容器に移し、90℃の炉で24時間水熱合成を行った。得られた反応物を超純水で洗いながらメンブレーンフィルター(0.2μm)で吸引濾過し、60℃の炉で一晩乾燥させることで目標の生成物γ−MnOを得た。
なお、前記合成に用いた反応試薬及びそれらの分量は以下の通りである。
硫酸マンガン(II)五水和物 1.20g(Wako),超純水 20mL,過硫酸アンモニウム 1.14g(Wako)。
<δ−MnOの合成>
「David M.Robinson,Yong Bok Go,Michelle Mui,Graeme Gardner,Zhijuan Zhang,Daniel D.T.Mastrogiovanni,Eric Garfunkel,Jing Li,Martha Greenblatt,and G.Charles Dismukes J.,J.Am.Chem.Soc.,2013,135(9),3494」に記載の合成方法を参考にし、以下に示す方法にてδ−二酸化マンガン(δ−MnO)を合成した。
先ず、ビーカーに超純水とグルコースとを加え、完全に溶解するまで撹拌した。もう一つのビーカーに過マンガン酸カリウムと水とを加え、撹拌して完全に溶かした。過マンガン酸カリウム水溶液をグルコース水溶液に注ぎ、2時間に渡って水分を取り除いた後、生成物を110℃の炉で24時間乾燥させた。その後、るつぼに移して400℃の炉で2時間焼成した。得られた反応物を超純水で洗いながらメンブレーンフィルター(0.2μm)で吸引濾過し、80℃の炉で一晩乾燥させることで目標の生成物δ−MnOを得た。
なお、前記合成に用いた反応試薬及びそれらの分量は以下の通りである。
過マンガン酸カリウム 3.00g(Wako),D(+)−グルコース 5.04g(Wako),超純水70mL。
<電極作成>
前述のα−MnO同様に、電極基盤としてはFTO電極を用い、スプレー法により結晶相の異なる4種の二酸化マンガン(α−MnOを含む)が各々担持された電極を調製した。
なお、作製した試料のキャラクタリゼーションとしては粉末X線回折分光法(XRD)(RIGAKU,SmartLab)を用いた。XRD測定におけるX線源はCuKα線(λ=0.154nm)であり、測定時の管電圧・管電流はそれぞれ40kV、80mA、走査速度は0.02o/sで行った。その結果、図には示さないが、全ての結晶相において目的とする物質のピークが確認された。
また、比表面積は、BET比表面積測定装置(株式会社島津製作所製、TriStar 3000)を用いて測定し、多点法を用いて算出した。吸着気体は窒素(有効断面積 0.162×10−18)を用いた。得られた結果を表1に示す。
<電気化学測定>
各Mn材料の水酸化触媒能を評価するため、リニアスイープボルタンメトリーを行った。実験系としては作用極に触媒を担持させたFTO透明ガラス電極(投影面積 3.14cm)、対極に白金線、参照極にAg/AgCl(飽和KCl)電極(+0.199V vs.SHE)を用いる三電極系を用いた。電解液には硫酸ナトリウム(Wako)を用いて、0.5M NaSO水溶液を使用した。塩基としてはピリジン(Wako,pKa:5.25)を添加して0.1Mとしたものを用い、pH8の条件下、リニアスイープボルタンメトリーを行った。
なお、本測定においては、電気化学セルを用い、pHの変化が最小に抑えられるように負方向から掃引を行った。また、該電気化学セルにおいては、作用極を底部に、対極・参照極を上から差し込むような形となっている。作用極と参照極との距離は2mmとした。掃引速度はOnsetpotentialが判別し易いように留意して10mV/sとした。
<ガスクロマトグラフィー>
水の電気分解による酸素生成量を定量するため、ガスクロマトグラフィーを行った。実験系としては、対極側、作用極および参照極側がナフィオン膜(Nafion(登録商標)117,0.007インチ)により隔たれた二室セルを用い、作用極側の気相の体積は38.5mLとした。測定は対極側、作用極側の順にArバブリングを20分行い、セル中の溶存酸素を取り除いてから行った。測定中は+1.4V(vs.SHE)の電位を付加し、酸素が全て溶液中にとどまらないよう撹拌しながら行った。測定は30分ごとに90分行った。各測定ではガスタイトタイプのシリンジを用い、Arで共洗いした後1mLの気体を採取した。90分後もTONが1を超えない場合には、測定による空気の混入の危険を減らすため、適宜測定間隔を伸ばして測定を行った。
また、得られた酸素発生量に基づき、各試料のクーロン効率(定電位保持下(1.4Vvs.SHE)における基質選択性)を算出した。すなわち、反応中に流れた総電荷中の、水酸化に関与した電子の割合を、発生した酸素量から求めた。なお、漏れこみの影響を考慮に入れるため、実験開始前に漏れこみによる酸素の増加を測定した。酸素の流入が系によって一定であるとの仮定の下、酸素の増加の1次近似式を求め、それを引くことで正味の酸素量を求めた。得られた結果を図5に示す。
図5に示す通り、α−MnO、γ−MnO及びδ−MnOにおいて、クーロン効率は各々54%、65%及び63%であったのに対し、β−MnOにおけるクーロン効率は88%という高い値であり、α−MnOの選択性に比べ3割以上も高いものであった。すなわち、熱力学的には水よりも酸化され易いピリジンの共存下においても、β−MnOは高選択的に水を酸化できることが明らかになった。
また、図には示さないが、定電位保持下、4時間(240分)あたりの酸素生成量は、α−MnOにおいては約8μmolであり、β−MnOにおいては約6μmolであった。α−MnOの比表面積は110.6m/gであり、β−MnOのそれが24.6m/gであることを考慮すると、触媒単位面積当たりでは、α−MnOに比べβ−MnOは酸素生成量が3〜4倍向上していることも明らかになった。
以上説明したように、本発明によれば、中性領域での水酸化分解反応において、高い触媒活性を示す触媒を提供することが可能となる。
したがって、本発明の水分解用触媒は、水を原料とした、酸素、プロトン、水素、電子、炭化水素物等の製造において有用である。

Claims (5)

  1. 電極と電解槽とを含む、水電気分解用装置であって、
    マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅から選択される少なくとも一の第一遷移元素の酸化物及び水酸化物からなる群から選択される少なくとも一の化合物を含む触媒層が、前記電極上に配置されており、
    前記電解槽中に、前記電極と、前記触媒層の外に配置されたpKaが8以下の塩基及び/又は炭酸塩とを含み、かつ
    前記装置におけるpH6〜8の水分解時の特定の電圧に対する電流密度は、前記塩基及び/又は炭酸塩非配置時におけるそれよりも高い、装置。
  2. 前記第一遷移元素の酸化物及び水酸化物からなる群から選択される少なくとも一の化合物が二酸化マンガンである、請求項1に記載の装置。
  3. 前記第一遷移元素の酸化物及び水酸化物からなる群から選択される少なくとも一の化合物がβ−二酸化マンガンである、請求項1に記載の装置。
  4. 前記塩基が含窒素複素環化合物である、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の装置。
  5. 前記塩基がコリジンである、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の装置。
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