実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る造船部材配置装置1の構造について図1及び図2を用いて説明する。本実施の形態1に係る造船部材配置装置1は、重量構造物配置装置の一例である。図1は、本実施の形態1に係る造船部材配置装置1の一例を示す概略的な斜視図である。図2は、本実施の形態1に係る造船部材配置装置1の一例を示す概略的な左面図である。なお、以降の説明における「底面」、「上面」、「正面」、「背面」、「左面」、又は「右面」との語句は、原則として造船部材配置装置1を、図1の白抜きのブロック矢印の方向に見た場合の「底面」、「上面」、「正面」、「背面」、「左面」、又は「右面」を意味するものとする。
また、図1及び図2を含む以下の図面では、各構成部材の寸法の関係及び形状は、実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面では、同一の又は類似する部材又は部分には、同一の符号を付すか、又は符号を付すことを省略している。また、以下の説明における造船部材配置装置1の各構成部材同士の位置関係、例えば上下関係等の位置関係は、原則として、造船部材配置装置1を使用可能な状態に設置したときの位置関係とする。
本実施の形態1の造船部材配置装置1は、立方体形状の枠体2を備えている。枠体2は、船殻ブロック等の造船部材(図示せず)を枠体2の内部に収容するものであり、例えば、構造用圧延鋼材等の矩形形状の鉄材により構成される。枠体2の内部空間の高さは、約300〜500mm、最大で1000mm程度となるように構成される。また、枠体2の内部空間の幅は、造船作業員が造船部材を移動させることができる幅、例えば、500mm程度の幅を有するように構成される。なお、枠体2の形状は立方体形状に限られず、造船部材を内部に収容可能な立体形状に構成することができる。
枠体2の底面において、枠体2は、正面側の辺を構成する第1の棒材20aと、左面側の辺を構成する第2の棒材20bと、裏面側の辺を構成する第3の棒材20cと、右面側の辺を構成する第4の棒材20dとを備えている。第1の棒材20aは、枠体2の底面において、第3の棒材20cと平行に配置されている。第2の棒材20bは、枠体2の底面において、第4の棒材20dと平行に配置されている。第1の棒材20aは、第2の棒材20b及び第4の棒材20dの正面側の端部に連結されている。第3の棒材20cは、第2の棒材20b及び第4の棒材20dの背面側の端部に連結されている。
枠体2の上面においては、枠体2は、正面側の辺を構成する第5の棒材22aと、左面側の辺を構成する第6の棒材22bと、裏面側の辺を構成する第7の棒材22cと、右面側の辺を構成する第8の棒材22dとを備えている。第5の棒材22aは、枠体2の上面において、第7の棒材22cと平行に配置されている。第6の棒材22bは、枠体2の上面において、第8の棒材22dと平行に配置されている。第5の棒材22aは、第6の棒材22b及び第8の棒材22dの正面側の端部に連結されている。第7の棒材22cは、第6の棒材22b及び第8の棒材22dの背面側の端部に連結されている。
枠体2の側面においては、枠体2は、第9の棒材24a、第10の棒材24b、第11の棒材24cと、第12の棒材24dとを備えている。第9の棒材24aは、第2の棒材20bの正面側の端部と第6の棒材22bとの正面側の端部との間を垂直方向に延在し、第2の棒材20b及び第6の棒材22bの正面側の端部に連結されている。第10の棒材24bは、第2の棒材20bの背面側の端部と第6の棒材22bとの背面側の端部との間を垂直方向に延在し、第2の棒材20b及び第6の棒材22bの背面側の端部に連結されている。第11の棒材24cは、第4の棒材20dの背面側の端部と第8の棒材22dとの背面側の端部との間を垂直方向に延在し、第4の棒材20d及び第8の棒材22dの背面側の端部に連結されている。第12の棒材24dは、第4の棒材20dの正面側の端部と第8の棒材22dとの正面側の端部との間を垂直方向に延在し、第4の棒材20d及び第8の棒材22dの正面側の端部に連結されている。
すなわち、枠体2の側面において、第1の棒材20a、第9の棒材24a、第5の棒材22a、及び第12の棒材24dは、枠体2の正面の4辺を構成することとなる。また、第2の棒材20b、第9の棒材24a、第6の棒材22b、及び第10の棒材24bは、枠体2の左面の4辺を構成することとなる。また、第3の棒材20c、第10の棒材24b、第7の棒材22c、及び第11の棒材24cは、枠体2の裏面の4辺を構成することとなる。また、第4の棒材20d、第11の棒材24c、第8の棒材22d、及び第12の棒材24dは、枠体2の右面の4辺を構成することとなる。
また、枠体2は、枠体2の正面側において第1の棒材20a又は第5の棒材22aと平行に延在し、第9の棒材24a及び第12の棒材24dの中心位置に連結される第13の棒材26aを備えている。また、枠体2は、枠体2の上面側において第5の棒材22a又は第7の棒材22cと平行に延在し、第6の棒材22b及び第8の棒材22dの中心位置付近に連結される第14の棒材26b及び第15の棒材26cを備えている。第14の棒材26b及び第15の棒材26cは、第6の棒材22b及び第8の棒材22dの中心位置を挟んで互いに間隔を空けて配置されている。枠体2の上面側において、第14の棒材26bは、第6の棒材22b及び第8の棒材22dの中心位置より正面側に配置され、第15の棒材26cは、第6の棒材22b及び第8の棒材22dの中心位置より裏面側に配置されている。
枠体2を構成する第1の棒材20a〜第15の棒材26cの連結部分は、例えばL字形状の支持部材27又はT字形状の支持部材28で連結されている。また、枠体2の上面側の四隅は、造船部材等による大きな負荷がかかるため、板状の補強部材29を用いて補強されている。
本実施の形態1の造船部材配置装置1は、枠体2に配置された油圧駆動装置3を備えている。油圧駆動装置3は、油圧作動油による油圧を直線運動等の機械的な動力に変える流体機械である。図1及び図2では、油圧駆動装置3の一例として、両ロッド式の複動型油圧シリンダを例示している。油圧駆動装置3は、両ロッド式の複動型油圧シリンダとして構成される場合、該油圧シリンダの上方及び下方から突出したピストンロッド31を有している。油圧駆動装置3は、例えば、油圧駆動装置3の下部に設けられた平板状のフランジ部30によって、第14の棒材26b及び第15の棒材26cに固定されている。
油圧駆動装置3は、油圧作動油による油圧によって駆動され、直線運動を行うピストンロッド31を備えている。図2に示すように、ピストンロッド31のうち、該油圧シリンダの下方から突出する部分は、第14の棒材26bと第15の棒材26cとの間の隙間を介して、枠体2の内部に延在している。ピストンロッド31の直線運動のストローク幅は、例えば500mmとなるように構成される。
また、油圧駆動装置3の内部には、ピストンロッド31に連結され、油圧を直線運動の動力としてピストンロッド31に伝達するピストン(図示せず)が収容されている。両ロッド式の複動型油圧シリンダでは、ピストンによって区画される上部及び下部の空間が、油圧作動油を収容する第1のチャンバ32及び第2のチャンバ33として用いられる。なお、第1のチャンバ32及び第2のチャンバ33は、図1及び図2では図示できないため、第1のチャンバ32及び第2のチャンバ33に該当する位置を矢印付きの引き出し線で表示している。
油圧駆動装置3の第1のチャンバ32及び第2のチャンバ33は、後述する流量調整弁5を開放した場合に、ピストンロッド31が造船部材の自重により下降するように油圧配管4によって直接的に連結されている。すなわち、本実施の形態1の造船部材配置装置1は、通常の油圧回路の構成要素である油圧ポンプ等の油圧発生装置を含まない構成となっている。図1及び図2に示すように、油圧駆動装置3が両ロッド式の複動型油圧シリンダとして構成される場合、油圧配管4は、第1のチャンバ32と第2のチャンバ33との間を双方向に油圧作動油を流動させるように構成される。
図1及び図2では、油圧配管4を金属製の配管として構成した場合を例示している。図1及び図2では、油圧配管4は、直管40と継手42とを複数組み合わせることにより油圧流路を構成しており、直管40の一部は、枠体2を構成する第5の棒材22a及び第13の棒材26aの背面側で固定されている。また、直管40と継手42との接合部は、油圧作動油の漏えいを回避するためにシールにより密封されている。
なお、油圧配管4を金属製の配管として構成した場合、直管40及び継手42の材質としては、例えば、炭素鋼製、ステンレス鋼製の直管40及び継手42が用いられる。また、油圧配管4として合成ゴム製のゴムホースを用いて、油圧流路を構成してもよい。
本実施の形態1の造船部材配置装置1においては、油圧配管4に流量調整弁5が配置されている。流量調整弁5は、油圧流路の断面積、すなわち流量調整弁5の内部に設けられた絞り部の開度を無段階に調整することにより、油圧作動油の通過流量を調整する弁である。流量調整弁5は調整ハンドル50を有し、調整ハンドル50の回転によって絞り部の開度が調整される。例えば、調整ハンドル50を0度から180度まで回転可能なものとして構成した場合、調整ハンドル50の回転角度が0度の場合に流量調整弁5の絞り部の開度が最小、すなわち閉止状態となるように構成できる。また、調整ハンドル50の回転角度が180度の場合に流量調整弁5の絞り部の開度が最大となるように構成できる。流量調整弁5は、例えば、ニードルバルブ又はボールバルブ等として構成できる。また、調整ハンドル50は、造船作業員による開度調整が容易な位置に配置でき、例えば、図1及び図2に示すように枠体2の左面側に配置できる。
ピストンロッド31の先端部には、前記枠体の内部で造船部材を把持するハンド部7がユニバーサルジョイント6を介して連結されている。ハンド部7は、例えばイーグルクランプとして構成できる。また、ハンド部7は、ユニバーサルジョイント6を介して連結されており、ピストンロッド31との連結角度を自由に変化させることができるため、ハンド部7で把持された造船部材の位置調整が可能な構成となっている。
次に、本実施の形態1の造船部材配置方法を説明する。本実施の形態1に係る造船部材配置方法は、重量構造物配置方法の一例である。
本実施の形態1の造船部材配置方法は、本実施の形態1の造船部材配置装置1を用いた造船部材配置方法であり、重量構造物である船殻ブロック等の造船部材の保持工程、造船部材の運搬工程、及び造船部材の配置工程の3つの工程を有している。
造船部材の保持工程においては、流量調整弁5は、調整ハンドル50によって開放されている。例えば、調整ハンドル50によって、流量調整弁5の絞り部の開度は最大となるように調整される。造船部材配置装置1は、枠体2が造船部材を覆うように配置される。造船部材はハンド部7に把持され、造船部材は、例えばリフター等の昇降装置を用いることによって、枠体2の上面方向に持ち上げられる。
造船部材の保持工程において、造船部材が枠体2の上面方向に持ち上げられると、ハンド部7に連結されたピストンロッド31には、油圧駆動装置3の内部方向にピストンロッド31を押し込む力が印加される。油圧駆動装置3の内部方向にピストンロッド31を押し込む力が印加されたとき、油圧駆動装置3の第1のチャンバ32に収容された油圧作動油は、油圧配管4と開放された流量調整弁5とを介して、第2のチャンバ33に流入する。したがって、造船部材を枠体2の上面方向に持ち上げることにより、ハンド部7に連結されたピストンロッド31を上昇させることができる。造船部材が枠体2の上面方向に持ち上げられた後に、流量調整弁5の絞り部は調整ハンドル50によって閉止される。流量調整弁5の絞り部を閉止することにより、枠体2の上面方向に持ち上げられた造船部材は、枠体2の内部の上方に保持されることとなる。なお、造船部材の保持工程においては、例えば、高さのある土台の上に造船部材を配置し、造船部材配置装置1を配置する際に造船部材の上面とハンド部7とを接触させることにより、ピストンロッド31を上昇させるようにしてもよい。
次いで、造船部材の運搬工程においては、造船部材を保持した造船部材配置装置1は、クレーン等の運搬装置を用いて持ち上げられ、造船部材を設置する造船現場の目的位置まで運搬され、造船現場の目的位置に配置される。なお、造船部材配置装置1は、例えば、クレーン等の運搬装置に設けられたフックに、枠体2の上面側にある第5の棒材22a〜第8の棒材22dを玉掛けして、造船部材配置装置1を持ち上げ、造船現場の目的位置まで運搬するようにしてもよい。また、油圧駆動装置3を収容する炭素鋼製の筐体を枠体2の上面側に設け、該筐体の上面部を電磁クレーンで持ち上げ、造船現場の目的位置まで運搬するようにしてもよい。
次いで、造船部材の配置工程においては、流量調整弁5は、調整ハンドル50によって開放される。流量調整弁5が開放されると、造船部材の自重による油圧駆動装置3の外部方向にピストンロッド31を押し出す力により、油圧駆動装置3の第2のチャンバ33に収容された油圧作動油は、油圧配管4と開放された流量調整弁5とを介して、第1のチャンバ32に流入する。第2のチャンバ33から第1のチャンバ32に油圧作動油が流入することにより、ピストンロッド31は下方向に移動するため、枠体2の内部の上方に保持された造船部材は自重により下降する。造船部材の下降中、すなわち、造船部材の下面部が造船部材の配置面と接触するまでの間は、造船部材の下降速度、すなわち、ピストンロッド31の下降速度は、調整ハンドル50により流量調整弁5の絞り部の開度を調整することにより制御される。例えば、流量調整弁5の絞り部は、造船部材の下面部と造船部材の配置面との間の距離が短くなるにつれて、開度が小さくなるように調整され、ピストンロッド31の下降速度が漸次的に小さくなるように制御される。
造船部材の配置工程において、造船部材の下面部と造船部材の配置面が接触する際に、ピストンロッド31が静止するように、調整ハンドル50によって流量調整弁5の絞り部の開度が調整される。流量調整弁5の絞り部の開度の調整により、造船部材の下面部と造船部材の配置面が接触したときの造船部材の下面部の造船部材の配置面との接触力、すなわち造船部材の下面部に作用する垂直抗力が制御される。例えば、垂直抗力は20〜40Nとなるように制御される。
以上に説明したように、重量構造物配置装置の一例である本実施の形態1の造船部材配置装置1は、枠体2と、ピストンロッド31を油圧により直線運動させる油圧作動油を収容する複数のチャンバ、例えば、第1のチャンバ32及び第2のチャンバ33とを有し、枠体2に配置された油圧駆動装置3と、チャンバの間、例えば、第1のチャンバ32と第2のチャンバ33との間で油圧作動油を双方向に流動させる油圧配管4と、油圧配管4に配置される、開度を調整可能な流量調整弁5と、ピストンロッド31に取り付けられ、ピストンロッド31と連動して直線運動し、枠体2の内部で造船部材を把持するハンド部7とを備え、油圧配管4は、流量調整弁5を開放した場合に、ピストンロッド31が造船部材の自重により下降するようにチャンバの間、例えば、第1のチャンバ32と第2のチャンバ33との間に直接的に連結されている。
すなわち、本実施の形態1の造船部材配置装置1の油圧回路は、油圧駆動装置3の第1のチャンバ32及び第2のチャンバ33を油圧配管4で直接的に連結し、油圧配管4に流量調整弁5を配置した構成となっており、油圧ポンプ等の油圧発生装置を含まない構成となっている。したがって、上述の構成によれば、油圧発生装置による負荷を発生させずに造船部材を目標位置に配置することができるため、造船部材配置装置1における造船作業員の作業の安全性を向上させることができる。
また、本実施の形態1の造船部材配置装置1は、油圧駆動装置3を両ロッド式の複動型油圧シリンダとして構成することにより、簡単な構成の造船部材配置装置1を提供できる。
また、重量構造物配置方法の一例である本実施の形態1の造船部材配置方法は、上述の造船部材配置装置1に造船部材を配置し、流量調整弁5を開放して枠体2の内部で前記造船部材を持ち上げた後に、流量調整弁5を閉止して造船部材を枠体2の内部の上方で保持する工程と、造船部材を保持した造船部材配置装置1を、造船部材を設置する目標位置まで運搬して、目標位置に造船部材配置装置1を配置する工程と、流量調整弁5を開放して、造船部材の下面が、目標位置における造船部材の配置面と接触するまで造船部材を自重により下降させ、造船部材の下面が、造船部材の配置面と接触する際に、流量調整弁5の開度を調整して、造船部材の下面に作用する垂直抗力を制御する工程とを有する。
上述の造船部材配置方法では、造船部材の保持工程及び配置工程は、造船部材配置装置1で行われるが、造船部材の運搬工程は、造船部材配置装置1とは別のクレーン等の運搬装置で行われる。したがって、上述の配置方法では、造船部材配置装置1で行われる工程と、運搬装置で行われる工程が分離されているため、造船作業の効率を向上させることができる。例えば、運搬装置として電磁力クレーンを用いる場合、造船作業の効率を電磁力クレーンの運搬能力の限界まで高めることができる。
また、上述の配置方法の造船部材の配置工程では、造船部材の下面が、造船部材の配置面と接触する際に、流量調整弁5の開度を調整して、造船部材の下面に作用する垂直抗力を制御することができる。例えば、造船部材の下面に作用する垂直抗力を20N以上かつ40N以下となるように制御すれば、造船部材の下面に作用する静止摩擦力を造船作業員の手作業による造船部材の配置位置の微調整が容易となる範囲に制御できる。したがって、上述の配置方法によれば、造船部材の配置位置の微調整が容易となるため、造船作業の効率を向上させることができる。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2は、上述の実施の形態1の変形例であり、造船部材の配置の自動制御処理を可能とした造船部材配置装置1である。
本実施の形態2に係る造船部材配置装置1に配置されるモータ52及びセンサ類について図3及び図4を用いて説明する。図3は、本実施の形態2に係る造船部材配置装置1で行われる制御処理の一部を概略的に表現した制御ブロック図である。図4は、本実施の形態2に係る造船部材配置装置1の一部の構造を概略的に示した拡大図である。図4は、流量調整弁5の構造を、枠体2の裏面側から見た概略図となっている。
図3及び図4に示すように、本実施の形態2に係る造船部材配置装置1においては、上述の実施の形態1の調整ハンドル50の代わりに、流量調整弁5の絞り部の開度を無段階に調整可能なモータ52が配置されている。モータ52としては、回転位置の制御が可能なサーボモータ、例えばDCサーボモータ等が用いられる。モータ52の回転軸は、例えば、0度から180度まで回転可能なものとし、回転角度が0度の場合に流量調整弁5の絞り部の開度が最小、すなわち閉止状態となり、回転角度が180度の場合に流量調整弁5の絞り部の開度が最大となるように構成できる。
モータ52には、流量調整弁5の絞り部の開度をモータ52の回転角により検知するための回転位置センサであるロータリエンコーダ80が内蔵されている。ロータリエンコーダ80としては、例えば、ホール素子を内蔵したホールIC等の磁気センサが用いられる。
また、本実施の形態2に係る油圧駆動装置3には、ピストンの位置を検知するためのリニアエンコーダ82が内蔵されている。リニアエンコーダ82としては、例えば、赤外線等を用いた光学センサ、ホール素子を内蔵したホールIC等の磁気センサ等が用いられる。
流量調整弁5と第1のチャンバ32との間に位置する油圧配管4には、第1のチャンバ32の側の油圧を検知する第1の圧力センサ84が配置されている。また、流量調整弁5と第2のチャンバ33との間に位置する油圧配管4には、第2のチャンバ33の側の油圧を検知する第2の圧力センサ86が配置されている。第1の圧力センサ84及び第2の圧力センサ86としては、水晶圧電式圧力センサ、半導体センサ、又は圧力トランスデューサ等が用いられる。なお、第1の圧力センサ84及び第2の圧力センサ86は、同種類のもので構成してもよいし、異なる種類のもので構成してもよい。
ロータリエンコーダ80及びリニアエンコーダ82で検知した位置情報の電気信号、並びに第1の圧力センサ84及び第2の圧力センサ86で検知した圧力情報の電気信号は、A/Dコンバータ90にてアナログ信号からディジタル信号に変換されて、制御装置100に送信される。制御装置100は、位置情報の電気信号及び圧力情報の電気信号に応じた制御信号を生成する。制御装置100で生成された制御信号は、D/Aコンバータ92にてディジタル信号からアナログ信号に変換されて、流量調整弁5の絞り部の開度を調整するための制御信号として、モータ52に送信される。なお、D/Aコンバータ92に増幅回路を設け、アナログ信号に変換された制御信号を増幅してから、モータ52に送信するように構成してもよい。また、A/Dコンバータ90又はD/Aコンバータ92と制御装置100との間の通信方式は、無線通信であっても有線通信であってもよい。
次に、本実施の形態2に係る制御装置100について説明する。
制御装置100は、専用のハードウェア、又は中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、メモリ、I/Oポート等を備えたマイクロコンピュータ若しくは電子計算機(例えば、パーソナルコンピュータ)として構成される。
制御装置100が専用のハードウェアとして構成される場合、制御装置100は、例えば、単一回路、複合回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はこれらを組み合わせて構成できる。制御装置100が実現する制御処理は、それぞれ個別のハードウェアで実現するように構成してもよいし、一つのハードウェアで実現するように構成してもよい。
制御装置100がマイクロコンピュータ又は電子計算機として構成される場合、制御装置100が実行する制御処理は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリに格納される。中央処理装置は、メモリに格納されたプログラムを読み出して実行することにより、制御処理を実現する。メモリは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリとして構成できる。
また、制御装置100は、制御処理の一部を専用のハードウェアで実現し、一部をマイクロコンピュータ又は電子計算機で実現するように構成してもよい。
次に、本実施の形態2に係る制御装置100における造船部材の配置のための制御処理の一例を図5及び図6を用いて説明する。
図5は、本実施の形態2における制御処理の制御モデルの一例を示す概略図である。図6は、本実施の形態2における制御処理の一例を示すフローチャートである。図5で示されるように、本実施の形態2における制御処理は、フィードバック制御の1つであるPID制御によって行われ、造船部材の下面部が造船部材の配置面と接触するまでの間においては、ピストンの位置及びピストンロッド31の下降速度のフィードバック制御が行われる。また、造船部材の下面部が造船部材の配置面と接触した後は、造船部材の下面部に作用する垂直抗力のフィードバック制御が行われる。すなわち、本実施の形態2における制御系は、位置及び速度のフィードバック制御と、垂直抗力のフィードバック制御とを、造船部材の下面部が造船部材の配置面と接触する前後で切り替えるハイブリッド制御系として構成されている。
本実施の形態2における制御処理においては、垂直抗力の目標値fdは、造船作業員の手作業による造船部材の配置位置の微調整が可能な大きさ、例えば、20N以上かつ40N以下となるように設定される。ピストンの位置の目標値Xdは、造船部材の下面部が造船部材の配置面と接触したときのピストンの位置に設定される。ピストンロッド31の下降速度の目標値Vdは、ピストンの現在の位置xが目標値Xdと一致したときに、下降速度が0となるように設定される。なお、目標値fd、Xd、及びVdは、手入力にて設定してもよいし、造船部材の高さ等のパラメータから制御装置100で算出するようにしてもよい。
本実施の形態2に係る造船部材配置装置1が、保持された造船部材とともに造船現場の目的位置に配置されると、制御装置100は、ピストンの位置及びピストンロッド31の下降速度のフィードバック制御を開始する。
ピストンの位置及びピストンロッド31の下降速度のフィードバック制御では、ピストンの現在の位置xがリニアエンコーダ82により検知され(ステップS1)、位置情報の電気信号が制御装置100に送信される。また、モータ52の回転角がロータリエンコーダ80により検知され、位置情報の電気信号が制御装置100に送信され、位置情報の電気信号から流量調整弁5の絞り部の現在の開度Dが算出される(ステップS2)。また、第1の圧力センサ84及び第2の圧力センサ86で検知した圧力情報の電気信号が制御装置100に送信され、第1の圧力センサ84で検知した圧力と、第2の圧力センサ86で検知した圧力との差から、負荷fとして造船部材の荷重が算出される(ステップS3)。
次いで、制御装置100では、ピストンロッド31の下降速度Vが、ピストンの位置の目標値Xdとピストンの現在の位置xの差分値(Xd−x)をゲインG1で重み付けした数値を、ピストンロッド31の下降速度の目標値Vdに加算することにより算出される(ステップS4)。すなわち、ピストンロッド31の下降速度Vは、造船部材の下面部が造船部材の配置面に近づくにつれて減速し、造船部材の下面部が造船部材の配置面に接触したときに下降速度Vが0となるように制御される。
次いで、制御装置100では、ピストンロッド31の下降速度Vを達成するための、流量調整弁5の絞り部の開度の目標値Ddが算出される(ステップS5)。図7は、造船部材の荷重ごとのモータ52の回転角と、ピストンロッド31の下降速度Vとの関係を示したグラフである。図7のグラフの横軸は、モータ52の回転角であり、グラフの縦軸はピストンロッド31の下降速度Vである。また、図7のグラフには、造船部材の荷重が20kgf、30kgf、40kgf、50kgfの場合の4つの非線形曲線が示されている。
図7のグラフに示されるように、造船部材の荷重である負荷fと、ピストンロッド31の下降速度Vと、流量調整弁5の絞り部の開度の目標値Ddの間には非線形性の関係が見られる。図7のグラフの結果に基づき、制御装置100では、ピストンロッド31の下降速度Vを達成するための、開度の目標値Ddが以下の式(1)で算出される。
次いで、制御装置100では、流量調整弁5の絞り部の開度の目標値Ddと、流量調整弁5の絞り部の現在の開度Dとから、制御装置100から流量調整弁5の絞り部の開度を調整する制御信号を生成し、流量調整弁5の絞り部の開度を調整するモータ52に制御信号を送信する。モータ52は制御装置100から送信された制御信号に基づいて、モータ52の回転角を調整し、流量調整弁5の絞り部の現在の開度Dを調整する(ステップS6)。
制御装置100では、ピストンの位置の目標値Xdとピストンの現在の位置xとが一致する(ステップS7)まで、ステップS1〜S6の動作が繰り返され、ピストンの位置及びピストンロッド31の下降速度のフィードバック制御が行われる。
制御装置100における制御は、ピストンの位置の目標値Xdとピストンの現在の位置xとが一致した際(ステップS7)に、垂直抗力のフィードバック制御に切り替えられる。すなわち、図5において、破線で示した制御経路R1が、一点鎖線で示した制御経路R2に切り替えられる。
垂直抗力のフィードバック制御においては、モータ52の回転角がロータリエンコーダ80により検知され、位置情報の電気信号が制御装置100に送信され、位置情報の電気信号から流量調整弁5の絞り部の現在の開度Dが算出される(ステップS8)。また、第1の圧力センサ84及び第2の圧力センサ86で検知した圧力情報の電気信号が制御装置100に送信され、第1の圧力センサ84で検知した圧力と、第2の圧力センサ86で検知した圧力との差から、負荷fとして造船部材の下面部に作用する現在の垂直抗力が算出される(ステップS9)。
次いで、制御装置100では、垂直抗力の目標値fdと、造船部材の下面部に作用する現在の垂直抗力である負荷fとの差分値(fd−f)をゲインG2で重み付けした数値に基づいて、流量調整弁5の絞り部の開度の目標値Ddが算出される(ステップS10)。
次いで、制御装置100では、流量調整弁5の絞り部の開度の目標値Ddと、流量調整弁5の絞り部の現在の開度Dとから、制御装置100から流量調整弁5の絞り部の開度を調整する制御信号を生成し、流量調整弁5の絞り部の開度を調整するモータ52に制御信号を送信する。モータ52は制御装置100から送信された制御信号に基づいて、モータ52の回転角を調整し、流量調整弁5の絞り部の現在の開度Dを調整する(ステップS11)。
制御装置100では、垂直抗力の目標値fdと、造船部材の下面部に作用する現在の垂直抗力である負荷fとが一致する(ステップS12)まで、ステップS8〜S11の動作が繰り返され、垂直抗力のフィードバック制御が行われる。垂直抗力の目標値fdと造船部材の下面部に作用する現在の垂直抗力である負荷fとが一致した時点(ステップS12)で、制御装置100での造船部材の配置のための制御処理は終了する。制御処理の終了後は、造船部材の配置位置の微調整が、例えば、造船作業員の手作業により行われる。また、造船部材の配置位置の微調整の終了後に、造船部材は、例えば制御装置100の操作によって、造船部材配置装置1のハンド部7から取り外される。
本実施の形態2によれば、自動制御により、造船部材の下降速度を制御でき、造船部材の下面部に作用する垂直抗力を制御できるため、造船作業の効率を更に向上させることができる。
なお、図6及び図7は、制御装置100における造船部材の配置のための制御処理の一例を説明したものであり、制御装置100が他の制御処理を行うことを排除するものではない。すなわち、制御装置100は、上述の造船部材の配置のための制御処理以外の制御処理を行うように構成できる。例えば、制御装置100は、造船作業員からの造船部材配置装置1の停止命令を受信し、造船部材配置装置1を停止できるように構成できる。また、制御装置100は、造船部材配置装置1を非常停止できるように構成できる。
実施の形態3.
本発明の実施の形態3は、上述の実施の形態の造船部材配置装置1の油圧駆動装置3の変形例であり、その他の構成は上述の実施の形態と同一である。
本実施の形態3の造船部材配置装置1の油圧駆動装置3について、図8を用いて説明する。図8は、本実施の形態3に係る造船部材配置装置1の油圧駆動装置3の構成の一例を示す概略図である。
本実施の形態3においては、油圧駆動装置3は、枠体2に固定可能な固定板200と、可動板250と、固定板200と可動板250との間に配置された第1の片ロッド式の複動型油圧シリンダ300及び第2の片ロッド式の複動型油圧シリンダ350とを備えている。油圧駆動装置3は、可動板250の上下方向の往復運動によって、造船部材700を上昇及び下降させるように構成できる。なお、固定板200は、枠体2に一体化して構成してもよい。
第1の片ロッド式の複動型油圧シリンダ300は、第1のピストンロッド302と、第1のピストンロッド302が連結された第1のピストン304とを備えている。第1のピストンロッド302は、油圧作動油による油圧によって駆動され、直線運動を行うものである。第1のピストン304は、第1の片ロッド式の複動型油圧シリンダ300の内部に収容され、油圧を直線運動の動力として第1のピストンロッド302に伝達するものである。
第1の片ロッド式の複動型油圧シリンダ300では、第1のピストン304によって区画される空間が、油圧作動油を収容する第1のチャンバ306及び第2のチャンバ308として用いられる。
第2の片ロッド式の複動型油圧シリンダ350は、第2のピストンロッド352と、第2のピストンロッド352が連結された第2のピストン354とを備えている。第2のピストンロッド352は、油圧作動油による油圧によって駆動され、直線運動を行うものである。第2のピストン354は、第2の片ロッド式の複動型油圧シリンダ350の内部に収容され、油圧を直線運動の動力として第2のピストンロッド352に伝達するものである。
第2の片ロッド式の複動型油圧シリンダ350では、第2のピストン354によって区画される空間が、油圧作動油を収容する第3のチャンバ356及び第4のチャンバ358として用いられる。
第1の片ロッド式の複動型油圧シリンダ300では、第1のピストンロッド302は第1のチャンバ306を介して下方に突出し、先端部が可動板250に連結されている。また、第1の片ロッド式の複動型油圧シリンダ300の上面部は、固定板200に固定されている。一方、第2の片ロッド式の複動型油圧シリンダ350では、第2のピストンロッド352は第3のチャンバ356を介して上方に突出し、先端部が固定板200に連結されている。また、第2の片ロッド式の複動型油圧シリンダ350の下面部は、可動板250に固定されている。すなわち、第2の片ロッド式の複動型油圧シリンダ350は、固定板200と可動板250との間においては、第1の片ロッド式の複動型油圧シリンダ300と上下方向において逆方向に配置されている。
第1のチャンバ306と第4のチャンバ358との間は、第1の油圧配管400で直接的に連結されている。また、第2のチャンバ308と第3のチャンバ356との間は、第2の油圧配管450で直接的に連結されている。第1の油圧配管400及び第2の油圧配管450は、上述の実施の形態における油圧配管4と同様に、金属製の配管又はゴムホースとして構成できる。
また、第1の油圧配管400には第1の流量調整弁500が配置され、第2の油圧配管450には第2の流量調整弁550が配置されている。第1の流量調整弁500及び第2の流量調整弁550は、上述の実施の形態における流量調整弁5と同様に、例えば、ニードルバルブ又はボールバルブ等として構成できる。
また、図8に示すように、本実施の形態3の造船部材配置装置1では、油圧駆動装置3にはカウンタバランス弁600を接続して、第1の油圧配管400又は第2の油圧配管450を流れる油圧作動油の流量を制御するように構成できる。カウンタバランス弁600は、例えば、図8に示すように、造船部材配置装置1は、カウンタバランス弁600を第3のチャンバ356に接続して、第3のチャンバ356から流出する油圧作動油の流量を制御するように構成できる。カウンタバランス弁600を第3のチャンバ356に接続することにより、造船部材700の自重による、可動板250の急降下を回避することができ、造船部材配置装置1の安全性を高めることができる。なお、カウンタバランス弁600は、第1のチャンバ306に接続して、第1のチャンバ306から流出する油圧作動油の流量を制御するように構成してもよい。
本実施の形態3の油圧駆動装置3においては、第1のチャンバ306から第4のチャンバ358に流れる油圧作動油の流量と、第3のチャンバ356から第2のチャンバ308に流れる油圧作動油の流量とを等しくすることができる。油圧作動油の流量を等しくすることによって、造船部材700の自重によって可動板250に下向きの力が印加されたときに、第1の流量調整弁500及び第2の流量調整弁550を開放し、可動板250を降下させ、造船部材700を降下させることができる。したがって、本実施の形態3の油圧駆動装置3の構成においても、上述の実施の形態と同様の効果が得られる。
その他の実施の形態.
本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。例えば、上述の実施の形態では、本発明の重量構造物配置装置及び重量構造物配置方法を用いて配置される重量構造物を、造船現場における造船部材として説明したが、例えば、建築現場における橋梁等の鋼構造物としても上述の実施の形態と同様の効果が得られる。
また、油圧駆動装置3の構成は、上述の実施の形態のものに限られず、流量調整弁を開放した場合に、自重によって重量構造物を降下させることができる構成のものであれば、任意の構成のものにできる。
また、上述の実施の形態では、枠体2は、第1の棒材20a〜第12の棒材24dで外郭が構成されるものとしたが、例えば、枠体2の底面の第1の棒材20a〜第4の棒材20dを用いない構成としてもよい。また、枠体2の上面に平板を固定して、平板の上に油圧駆動装置3を配置する構成としてもよい。
また、上述の実施の形態の制御装置100は、枠体2の内部に配置する構成としてもよいし、枠体2の外部に独立して設ける構成としてもよい。