JP6612675B2 - 建造物外壁診断適性判定装置 - Google Patents
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Description
この定期的な点検には様々な項目があるが、その中に、建築物の損傷、腐食等の劣化状況を確認する点検が施設保全責任者に義務付けられている。建築物の損傷、腐食等の劣化状況とは、例えばコンクリートのひび割れ、鉄骨の腐食、外装材の剥落、浮き上がり等が挙げられている。
これより本明細書に記載する技術内容は、このうちの、建築物の外装材の剥離や浮き上がりに関するものである。なお、建築物は様々なものが存在するが、これ以降、代表的な建築物としてビルを挙げて説明する。
外装材の例としては、モルタル、タイル、れんが、繊維強化セメント板、厚さ3mm以上のガラス繊維混入セメント板、鉄鋼、アルミニウム、金属板、ガラス等が挙げられている。
先に挙げた建築基準法第12条及び官公庁施設の建設に関する法律第12条は、この外装材の剥離を防ぐための定期点検を、ビル等建築物の施設保全責任者に義務付けている。
一つ目の方法は、打診と呼ばれる直径2cm程度の金属球のついた棒で撫でて、ビル外壁に軽い衝撃を与えて、反射音から躯体外壁と外装材の間に生じた剥離を察知する方法である。法令にも定められている確実な方法であるものの、音の判断には熟練を要する他、ビルの規模が大きくなればそれだけ時間もかかり、人件費も高騰する。
二つ目の方法は、サーモグラフィーでビル外壁を撮影し、温度ムラから剥離を察知する方法である。外壁と外装材との間に剥離が生じると、太陽光で暖められた外壁には、剥離のある箇所とない箇所との間に温度差が生じる。剥離がない箇所は太陽熱がコンクリート躯体に吸収拡散されるが、剥離がある箇所は剥離の空気が断熱効果を生じるため、太陽熱がコンクリート躯体に吸収されず、温度が上昇する。
これまで、このサーモグラフィーを使用する二つ目の方法で外装材の剥離を事前察知するための点検を実施する際の、日照量が十分であるか否かの判断は、人の経験と勘で行われていた。しかし、人の経験と勘というものは、大きな不確定要素を含むため、機械的かつ客観的な、日照量の判定方法の登場が望まれている。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
図1は、本発明の実施形態の例である、建造物外壁診断適性判定装置101の概略図である。
図1において、建造物102の外壁102aには、建造物外壁診断適性判定装置101の一部である、日照の強度を測定する日照センサー103が貼付されている。日照センサー103の貼付と建造物外壁診断適性判定装置101の起動は外壁診断の予定時間よりも1時間前ぐらいには終了する。建造物102の他の方角を向いた外壁102bを点検する場合は日照センサー103を外壁102bに移動して利用する。
建造物外壁診断適性判定装置101は、日照センサー103が外壁102aに貼り付けられた場合は、日照センサー103で測定した日照度を積算し、この積算結果から、太陽光に照らされた建造物102の外壁102aに、サーモグラフィー104による外壁診断のために十分な日照105が当たったか否かを判定する。
建造物外壁診断適性判定装置101は、赤色を発光する第一LED106と緑色を発光する第二LED107を備えており、上記判定結果に応じて、第一LED106と第二LED107の何れか一方を発光させる。
この第一LED106と第二LED107は、不図示の測定作業者(ユーザー)に、建造物外壁がサーモグラフィーによる外壁診断に適した状態であるか否かという判定結果を提示する表示部としての役割を果たすものである。
もし、建造物外壁診断適性判定装置101が緑色の第二LED107を発光させなかった場合には、サーモグラフィー104で建造物102の外壁102aを撮影するに適さないことを示す。日照の強度が改善し必要な日照量を満足すれば、緑色の第二LED107を発光させ、適する判定をする。
図2は、建造物外壁診断適性判定装置101のハードウェア構成を示すブロック図である。
建造物外壁診断適性判定装置101は、CPU201、ROM202、RAM203がバス204に接続されている、周知のマイコン等により構成される。バス204にはこの他に、A/D変換器205、第一出力ポート207、第二出力ポート208が接続されている。更に、A/D変換器205の入力端子にはバス204を通じて制御されるマルチプレクサ209が接続されている。
建造物外壁診断適性判定装置101が実行する演算処理の詳細については、図5にてソフトウェア機能を後述する際に説明することにするが、建造物外壁診断適性判定装置101が実行する演算処理は極めて軽いものとなる。このため、建造物外壁診断適性判定装置101は、広く普及しているワンチップマイコンやボードマイコンで十分実現可能である。
マルチプレクサ209はバス204から制御される。すると、A/D変換器205には、第一センサー210の出力信号と第二センサー211の出力信号が選択される。
すなわち、バス204から出力される制御命令に呼応して、第一LED106はオン・オフ制御される。
第二出力ポート208と第二スイッチ215の実体も、第一出力ポート207と第一スイッチ213と同様に、バス204から出力される制御命令に呼応して、第二LED107はオン・オフ制御される。
図3Aは、日照センサー103を表側から見た外観斜視図である。図3Bは、日照センサー103を裏側から見た外観斜視図である。図3Cは、日照センサー103の上面図である。
図3A、図3B及び図3Cに示すように、日照センサー103は、発泡スチロール等の断熱体301と、背板302と、支持板303と、第一センサー210と第二センサー211を有する。
図3Aに示すように、断熱体301の表面の中心に第一センサー210が貼り付けられている。その上に黒色の紙304が貼り付けられている。白色等の淡色である断熱体301の左右両側面にはそれぞれ、支持板303が貼り付けられている。
なお、背板302と支持板303は、熱伝導率が低いものが好ましい。このため発泡スチロール等で断熱することが望ましい。また、背板302と支持板303も断熱体301と同様、太陽熱を吸収し難い白色等の淡色にするのが好ましい。
断熱体301に貼り付けられている黒色の紙304が日光によって暖められると、第一センサー210は気温よりも高い値を出力する。
一方、第二センサー211は断熱体301によって日光の照射が防がれているので、第二センサー211は、概ね気温と同じ値を出力する。
第一センサー210によって検出される温度から、第二センサー211によって検出される気温を減算すると、黒色の紙304が日照105によって暖められた温度差が得られる。
なお、第一センサー210と第二センサー211に同一メーカーの同一製品を使用すると、減算処理によって製品固有の特性のばらつきも軽減されるので、精度の高い日照センサー103を容易に実現することができる。
可視光線と赤外線を良く吸収するため、色はマットブラックとも言われるつや消しの黒が最良であろう。
前述のように、サーモグラフィー104を使用して外装材の剥離を事前察知するための点検を実施する際には、日照センサー103を外壁102aに貼り付け太陽光で十分暖められているか否か、すなわち日照量がサーモグラフィー104を使用するに十分であるか否かを判断する必要がある。そのためには、日照105を時間で数値的に積算して熱量を予測する必要があるが、以下のような理由で、積算するだけでは正しい判断ができない。
<1>ビル外壁の熱量は常に周囲に放散して、ビル外壁は冷めていく。
<2>また、外壁の診断に必要な最低限必要な日照105の強さが存在する。
こういった現象を把握した上で、ビル外壁を模倣した数値モデルを用意し、その数値モデルに対して日照105の積算を含むシミュレーション演算を実行することで、ビル外壁の状態を類推することが可能になる。
日照105という熱エネルギーをそのまま考慮することは困難を伴うが、周知の電気回路に置き換えて考えると、極めて容易にシミュレーションが可能になる。図4は、日照105とビル外壁の関係を、電気回路に置き換えた、擬似的な回路図である。
日照105は、対象物に熱エネルギーを供給する。この熱エネルギーを電流に置き換えて考えると、日照105は時間や雲の存在等の変動要因を有する可変電流源401として表現することができる。そこで、図4に示す回路図において、日照105を可変電流源401として表現している。
すなわち、図4に示すシミュレーションモデルは、日照105の可変電流源401とツェナーダイオード要素D404とビル外壁をキャパシタ要素C402と抵抗要素R403で表現している。
図5は、建造物外壁診断適性判定装置101のソフトウェア機能を示すブロック図である。
図5中、一点鎖線枠内がソフトウェアによって実現される機能の集合体である、判定処理部500である。また、点線枠内には図4で示したシミュレーションモデルが示されている。
日照センサー103を構成する第一センサー210と第二センサー211の出力信号は、それぞれA/D変換器205によってデジタルデータに変換される。ソフトウェアで構成される減算器501は、第一センサー210の出力データから第二センサー211の出力データを減算して、差分データを出力する。ソフトウェアで構成される乗算器502は差分データに定数k503を乗算する。この乗算器502の出力データが、図4の可変電流源401、すなわち日照105に対応する日照熱エネルギーに変換される。
この、ツェナーダイオード要素D404、キャパシタ要素C402、抵抗要素R403によって算出される蓄積された熱量は外壁表面の上昇する温度をもたらす。電気回路では電圧の上昇をもたらすが、温度上昇と熱量は正比例の関係にあるため、上昇温度でなく熱量で考える。蓄積された熱量は、ソフトウェアで構成されるコンパレータ505によって、ソフトウェアで構成される参照熱量506が出力する参照熱量と比較される。この参照熱量は、コンパレータ505に判定基準を提供する閾値である。
コンパレータ505の出力論理信号は第二スイッチ215に供給されると共に、ソフトウェアで構成されるNOTゲート507によって論理が反転された上で第一スイッチ213に供給される。すなわち、コンパレータ505の出力論理信号は、第一スイッチ213と第二スイッチ215を排他的にオン・オフ制御する。
逆に、コンパレータ505により蓄積された熱量と参照熱量が比較されて、蓄積された熱量が参照熱量より小さいと判定された場合は、日照量が不十分であることを示している。したがって、蓄積された熱量が参照熱量より小さいと判定された場合は、コンパレータ505の出力論理信号が第一スイッチ213をオン制御し、第二スイッチ215をオフ制御する。
(1)日照センサー103は上述の形態に限らず、周知の日射計のように赤外線を含めた日照エネルギーを測定できるものを使用してもよい。
(2)上述の実施形態では、外壁診断の可否を測定作業者に示すための表示手段に、最も簡単でかつ低価格な表示手段として、LEDを用いた。表示手段はLEDに限らず、液晶ディスプレイを用いて文字等を表示させてもよい。また、表示手段に代えて音声を発してもよい。
例えば、上述した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることは可能であり、更にはある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
Claims (3)
- 日照の強度を測定する日照センサーと、
前記日照センサーの出力信号に基づく日照熱エネルギーを計測し、建造物外壁のシミュレーションモデルに前記日照熱エネルギーを与えて、得られた熱量を所定の閾値と比較することで、前記建造物外壁がサーモグラフィーによる外壁診断に適した状態であるか否かを判定する判定処理部と、
前記判定処理部の判定結果である、前記建造物外壁がサーモグラフィーによる外壁診断に適した状態であるか否かをユーザーに提示する表示部と
を具備する、建造物外壁診断適性判定装置。 - 前記判定処理部は、
前記建造物外壁が熱エネルギーを蓄積する状況を模倣するキャパシタ要素と、
前記建造物外壁が熱エネルギーを失う状況を模倣する抵抗要素と、
前記蓄積された熱量の上限値を制限するツェナーダイオード要素と
を用いて、シミュレーション演算処理を行う、請求項1に記載の建造物外壁診断適性判定装置。 - 前記日照センサーは、
太陽光が照射される位置に配置され日照熱エネルギーを吸収して温度上昇する吸熱板と、
前記吸熱板に配置され、前記吸熱板の温度を測定する第一センサーと、
前記第一センサー及び前記吸熱板とは隔離した、前記太陽光が照射されない位置に配置され、気温を測定する第二センサーと、
前記第一センサー及び前記吸熱板と、前記第二センサーとの間に介在する断熱体と
を具備して日照熱エネルギーを計測する、請求項1に記載の建造物外壁診断適性判定装置。
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