JP6610172B2 - ソナー装置の音響窓 - Google Patents
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Description
例えば、小型高速船には喫水下の船首部にソナー装置が設けられ、安全に運行できるようにクジラや流木などのような前方の障害物を探索することが行われ、あるいは、漁船や海洋調査船では船底にソナー装置が設けられ、魚群探知や海底における各種計測が行われている。
ソナー装置は、水中に配置され開口部を有するソナー室形成用の筐体と、開口部を閉塞する音響窓と、ソナー室に配置され音響窓を通して音波の送受信を行う送受波器とを備えている。
また、ソナー室は、水あるいは油などの液体で満たされており、送受波器による音波の送受信が効率よく行われるように図られている。
音響窓は、開口部の周囲の筐体側取り付け部に取着される枠状の窓側取り付け部と、窓側取り付け部の内側に配置された音響透過性部材とを備えている。
音響透過性部材は、コア層と、ソナー室と反対側に位置するコア層の外面に配置された外側スキン層と、ソナー室側に位置するコア層の内面に配置された内側スキン層とで構成されている。
そして、複数のボルトにより窓側取り付け部が筐体側取り付け部に締結され開口部が閉塞される。
1)コア層を構成するための未加硫のゴム材料からなるゴム板と、外側スキン層および内側スキン層を構成する複数枚のプリプレグとを用意する。
2)外側スキン層を構成するプリプレグの上に、外面を下方に向けた接着処理された第1フレームを重ね合わせる。
3)接着処理された第1フレームの内側で外側スキン層を構成するプリプレグの上に加硫接着剤を塗布したゴム板を重ね合わせる。
4)加硫接着剤を塗布したゴム板の上と第1フレームの内面の上とにわたって、内側スキン層を構成するプリプレグを重ね合わせる。
5)内側スキン層を構成するプリプレグの上に接着処理された第2フレームを重ね合わせる。この後に全体をバキュームバッグ内に配置しバキュームバッグを真空引きして圧着することでゴム板、プリプレグ、第1フレーム、第2フレームが仮固定される。なお、上記2)、3)、4)の各工程においてもバキュームバッグを用いた仮固定がなされる。
6)上述のように仮固定されたゴム板と外側スキン層と内側スキン層のプリプレグと第1フレームと第2フレームとからなる組立体を上型および下型からなる金型の内部に配置し、金型内で組立体をバキューム(真空引き)で圧着した状態で、加熱することにより、プリプレグを熱硬化させると共に、ゴム板を加硫させ、音響窓の成形を行う。
これにより、コア層と、外側スキン層と、内側スキン層とが一体化されて音響透過性部材が成形されると共に、外側スキン層および内側スキン層と第1フレームおよび第2フレームとが一体化され窓側取り付け部が成形される。
液状の熱硬化性樹脂が繊維から流出すると、完成した音響窓の内側スキン層にボイドが発生し、音響窓と筐体との間のシール性が低下することが懸念され、シール性の向上を図る上で改善の余地がある。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであり、その目的は、シール性の向上を図る上で有利なソナー装置の音響窓を提供することにある。
請求項2記載の発明は、前記凸条は、前記第1フレームと前記第2フレームの一方のフレームの外縁寄りの箇所に設けられ、前記凹部は、前記第1フレームと前記第2フレームの他方のフレームの外縁寄りの箇所に設けられていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記窓側取り付け部の延在方向に間隔をおいた箇所に前記ボルトを挿通させるボルト挿通孔が複数形成され、前記凸条と前記凹部は、前記複数のボルト挿通孔を結ぶ想像線の外側に設けられていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、前記窓側取り付け部と前記筐体側取り付け部とのシール部材が介在され、前記シール部材は、前記複数のボルト挿通孔を結ぶ想像線の内側に設けられていることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、前記シール部材は、前記第2フレームに接合されていることを特徴とする。
したがって、液状の熱硬化性樹脂が繊維の外縁から流出することを凸条と凹部とが係合することによって確実に阻止でき、内側スキン層のボイドの発生を抑制できるため、音響窓と筐体との間のシール性を確保する上で有利となる。
請求項2、3記載の発明によれば、内側スキン層の突出部の長さを大きく確保でき、第1フレームの内面と第2フレームの外面との間のシール性を確保する上で有利となる。
請求項4記載の発明によれば、シールワッシャを設けることなく音響窓と筐体との間のシール性を確保する上で有利となる。
請求項5記載の発明によれば、音響窓の筐体への取り付け作業、取り外し作業の効率を高める上で有利となる。
本実施の形態では、ソナー装置が船舶の船体に搭載される場合について説明する。
図1、図2に示すように、ソナー装置10は、筐体12と、ソナー室14と、音響窓16と、送受波器18とを含んで構成されている。
本実施の形態では、筐体12は水中に位置する船底の外板の部分20を含んで構成され、筐体12の内部にソナー室14が液密に形成されている。
ソナー室14の内部には、水、あるいは、油などの液体が満たされている。
この液体は、送受波器18による音波の送受信を良好に行うために必要な比重を有している。
本実施の形態では、開口部22は矩形であるが、円形であるなど開口部22の形状は任意である。
開口部22の周囲の外板の部分20には、筐体側取り付け部24が設けられている。
図3、図4に示すように、筐体側取り付け部24は、開口部22の外側で開口部22の全周に沿って矩形枠状に延在する筐体側取り付け面2402と、筐体側取り付け面2402の外縁と外板の部分20の外面とを接続する側面2404とを備えている。
筐体側取り付け面2402の延在方向に沿って間隔をおいた複数箇所にねじ孔2406が形成されている。
音響窓16は、窓側取り付け部26と、音響透過性部材28とを備えている。
音響透過性部材28は、音響透過性に優れた材料で形成され、窓側取り付け部26の内側に配置され窓側取り付け部26で支持されている。
音響透過性部材28は、コア層30と、外側スキン層32と、内側スキン層34とを含んで構成されている。
コア層30は、均一の厚みを有して開口部22の全域を覆う輪郭の矩形に形成され、コア層30の外周部端面は、後述する第1フレーム36の内周部端面3610に接合されている。
このようなコア層30を構成する材料として、ゴムやポリウレタンなどの粘弾性体などの従来公知の様々な材料が使用可能である。
外側スキン層32は、ソナー室14と反対側に位置するコア層30の外面に接合され、コア層30よりも大きい輪郭の矩形に形成されている。
内側スキン層34は、ソナー室14側に位置するコア層30の内面に接合され、コア層30よりも大きい輪郭の矩形に形成されている。
このような外側スキン層32、内側スキン層34を構成する材料として、コア層30を構成する材料よりも強度が高い繊維強化プラスチックなど従来公知の様々な材料が使用可能である。
本実施の形態では、繊維強化プラスチックは、強化材としてガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの繊維を用い、母材として熱硬化性樹脂を用いたものが用いられている。
図4に示すように、窓側取り付け部26は、コア層30の外縁部の外側に突出し矩形枠状に延在する外側スキン層32の突出部3202および内側スキン層34の突出部3402と、第1フレーム36と、第2フレーム38とを含んで構成されている。
第1フレーム36は矩形枠状に延在しており、コア層30の外縁部の外側に突出する外側スキン層32の突出部3202と内側スキン層34の突出部3402との間に位置しそれら突出部3202、3402に接合され、それら突出部3202、3402で挟持されている。
第2フレーム38は矩形枠状に延在しており、第1フレーム36に対向して配置され内側スキン層34の突出部3402を第1フレーム36とで挟持し、内側スキン層34の突出部3402に接合されている。
また、第2フレーム38の外面3802に内側スキン層34が位置し、第2フレーム38の内面3804は、筐体側取り付け部24の筐体側取り付け面2402に対向する窓側取り付け面2602として形成されている。また、第2フレーム38の内周部には、平面からなる4つの内周部端面3810が設けられ、外周部には平面からなる4つの外周部端面3812が設けられ、第1フレーム36の外周部端面3612と第2フレーム38の外周部端面3812は同一平面上に位置している。
本実施の形態では、窓側取り付け部26は音響透過性部材28よりも大きい値の均一の厚さで形成されている。詳細には、第1フレーム36の厚さはコア層30よりも大きい寸法で形成され、内側スキン層34には、コア層30の内面に位置する部分3410と、この部分3410の外縁から第1フレーム36に沿って起立する起立部3412と、起立部3412の端部から突出し第1フレーム36と第2フレーム38とで挟持される挟持部分3414とを有している。起立部3412と第2フレーム38の内周部端面3810は同一平面上に位置している。
また、第1フレーム36の内面3604の内縁から離れた箇所に、第1フレーム36の延在方向の全長にわたって延在し凸条40に係合する凹部42が設けられている。本実施の形態では、凹部42は、第1フレーム36の外周部端面3612寄りの箇所に設けられている。
また、本実施の形態では、凸条40は第2フレーム38の外周部端面3812に連続状に設けられ、凹部42は、第1フレーム36の外縁側に開放状に設けられている。
図3に示すように、窓側取り付け部26の延在方向に間隔をおいた箇所にボルト44を挿通させるボルト挿通孔46が複数形成され、外側スキン層32および第1フレーム36にはボルト挿通孔46に連通する座ぐり孔48が形成されている。
凸条40と凹部42は、複数のボルト挿通孔46を結ぶ想像線の外側に設けられている。
なお、凸条40と凹部42は、ソナー装置10の使用時に水圧により常時係合する方向に付勢される。
シール部材50は、複数のボルト挿通孔46を結ぶ想像線の内側に設けられている。
本実施の形態では、窓側取り付け面2602にその延在方向に沿って溝部2610が形成され、溝部2610にシール部材50を構成するOリング5002が配置されている。
Oリング5002は溝部2610に加硫接着されることで、窓側取り付け部26にOリング5002が接合され、音響窓16の筐体12への取り付け作業、取り外し作業の効率化が図られている。
ボルト挿通孔46に挿通された複数のボルト44がねじ孔2406に螺合されることにより窓側取り付け部26が筐体側取り付け部24に締結され、シール部材50が圧縮されて開口部22が音響窓16により水密に閉塞されている。
なお、複数のボルト44により音響窓16が筐体12に取着されたのちは、座ぐり孔48にポッティング材52が充填される。
送受波器18は、音響窓16を通して物体に対して音波を発射し、その反射波を受信することで船体と物体との位置関係を検出するものである。
音響窓16の製造工程は以下の通りである。
1)コア層30を構成するための未加硫のゴム材料からなるゴム板と、外側スキン層32および内側スキン層34を構成する複数枚のプリプレグとを用意する。プリプレグは、強化材としての繊維に母材としての硬化前の熱硬化性樹脂が含浸された状態のものである。
2)外側スキン層32を構成するプリプレグの上に、外面3602を下方に向け、接着処理された第1フレーム36を重ね合わせ、プリプレグと第1フレーム36とをバキュームバッグ内に配置してバキュームバッグを真空引きして圧着することで仮固定する。以下、バキュームバッグ内に配置してバキュームバッグを真空引きして圧着することを、バキュームバッグにより圧着すると記載する。
3)第1フレーム36の内側で外側スキン層32を構成するプリプレグの上に接着処理されたゴム板を重ね合わせ、ゴム板の外縁端面と第1フレーム36の内周部端面3610とを接着剤により接着してバキュームバッグにより圧着して仮固定する。
4)ゴム板の上と第1フレーム36の内面3604の上とにわたって、内側スキン層34を構成するプリプレグを重ね合わせ、このプリプレグと第1フレーム36の内面3604とをバキュームバッグにより圧着して仮固定する。
6)上述のように仮固定されたゴム板と、外側スキン層と内側スキン層のプリプレグと、第1フレーム36と、第2フレーム38とからなる組立体を上型および下型からなる金型の内部に配置し、金型内で組立体をバキュームで圧着した状態で、加熱、加圧することにより、各スキン層のプリプレグを熱硬化させると共に、ゴム板を加硫させ、音響窓16の成形を行う。
これにより、コア層30と、外側スキン層32と、内側スキン層34とが一体化されて音響透過性部材28が成形されると共に、外側スキン層32および内側スキン層34と第1フレーム36および第2フレーム38とが一体化され窓側取り付け部26が成形される。
7)音響窓16の成形が終了したならば、音響窓16を金型から取り出す。
8)窓側取り付け部26に孔あけ加工を行い、複数のボルト挿通孔46および座ぐり孔48を形成する。
液状の熱硬化性樹脂が繊維から流出すると、完成した音響窓16の内側スキン層34にボイドが発生し、音響窓16と筐体12との間のシール性が低下することが懸念される。
しかしながら、本実施の形態によれば、第1フレーム36の内縁から離れた箇所に、第1フレーム36の延在方向の全長にわたって延在する凸条40が設けられ、第2フレーム38の内縁から離れた箇所に、第2フレーム38の延在方向の全長にわたって延在し凸条40に係合する凹部42が設けられている。
したがって、液状の熱硬化性樹脂が繊維の外縁から流出することを凸条40と凹部42とが係合することによって確実に阻止でき、内側スキン層34のボイドの発生を抑制できるため、音響窓16と筐体12との間のシール性を確保する上で有利となる。
なお、外側スキン層32を構成するプリプレグに含まれる熱硬化性樹脂も硬化前にいったん液状化し、繊維の外縁から外側に流出しようとするが、外側スキン層32にボイドが発生しても、音響窓16と筐体12との間のシール性に影響を及ぼすことがない。
また、凸条40を内周部端面3810と外周部端面3812との中間に位置する外面3802箇所に設け、凹部42を内周部端面3610と外周部端面3612との中間に位置する内面3604箇所に設けてもよいが、本実施の形態のように、第2フレーム38の外面3802の外縁寄りの箇所に凸条40を設け、第1フレーム36の内面3604の外縁寄りの箇所に凸条40に係合する凹部42を設けると、内側スキン層34の突出部3402の長さを大きく確保でき、第1フレーム36の内面3604と第2フレーム38の外面3802との間のシール性を確保する上で有利となる。
なお、本実施の形態では、凸条40を第2フレーム38に設け、凹部42を第1フレーム36に設けた場合について説明したが、凸条40を第1フレーム36に設け、凹部42を第2フレーム38に設けるなど任意である。
したがって、第1フレーム36と第2フレーム38との組み立てが正確になされているか否かを、音響窓16の成形前に容易に判定することができ、組み立て作業の効率化を図る上で有利となる。
したがって、内側スキン層34の突出部の長さを大きく確保でき、第1フレーム36の内面3604と第2フレーム38の外面3802との間のシール性を確保する上で有利となる。
なお、シール部材50を、複数のボルト挿通孔46を結ぶ想像線の外側に設けるようにしてもよい。その場合は、シール性を確保するために、ボルト44とボルト挿通孔46との間にシールワッシャを介在させる必要があるが、本実施の形態のようにすると、シールワッシャを省略できるため、コストダウンを図る上で有利となる。
12 筐体
14 ソナー室
16 音響窓
18 送受波器
20 外板の部分
22 開口部
24 筐体側取り付け部
26 窓側取り付け部
28 音響透過性部材
30 コア層
32 外側スキン層
3202 外側スキン層の突出部
34 内側スキン層
3402 内側スキン層の突出部
36 第1フレーム
38 第2フレーム
40 凸条
42 凹部
44 ボルト
46 ボルト挿通孔
50 シール部材
Claims (5)
- 内部にソナー室が形成された筐体の開口部の周囲の筐体側取り付け部に取着される枠状の窓側取り付け部と、前記窓側取り付け部の内側に配置された音響透過性部材とを備え、
前記音響透過性部材は、コア層と、前記ソナー室と反対側に位置する前記コア層の外面に配置された外側スキン層と、前記ソナー室側に位置する前記コア層の内面に配置された内側スキン層とで構成され、
前記窓側取り付け部は、前記コア層の外縁部の外側に突出する前記外側スキン層の突出部および前記内側スキン層部の突出部と、それら突出部の間に位置しそれら突出部で挟持された枠状の第1フレームと、第1フレームに対向して配置され前記内側スキン層の突出部を前記第1フレームとで挟持する枠状の第2フレームとを含んで構成され、
複数のボルトにより前記窓側取り付け部が前記筐体側取り付け部に締結され前記開口部を閉塞するソナー装置の音響窓であって、
前記第1フレームと前記第2フレームの一方のフレームの内縁から離れた箇所に、その一方のフレームの延在方向の全長にわたって延在する凸条が設けられ、
前記第1フレームと前記第2フレームの他方のフレームの内縁から離れた箇所に、その他方のフレームの延在方向の全長にわたって延在し前記凸条に係合する凹部が設けられている、
ことを特徴とするソナー装置の音響窓。 - 前記凸条は、前記第1フレームと前記第2フレームの一方のフレームの外縁寄りの箇所に設けられ、
前記凹部は、前記第1フレームと前記第2フレームの他方のフレームの外縁寄りの箇所に設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載のソナー装置の音響窓。 - 前記窓側取り付け部の延在方向に間隔をおいた箇所に前記ボルトを挿通させるボルト挿通孔が複数形成され、
前記凸条と前記凹部は、前記複数のボルト挿通孔を結ぶ想像線の外側に設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2記載のソナー装置の音響窓。 - 前記窓側取り付け部と前記筐体側取り付け部とのシール部材が介在され、
前記シール部材は、前記複数のボルト挿通孔を結ぶ想像線の内側に設けられている、
ことを特徴とする請求項3記載のソナー装置の音響窓。 - 前記シール部材は、前記第2フレームに接合されている、
ことを特徴とする請求項4記載のソナー装置の音響窓。
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