JP6610036B2 - 液状食品の濃縮方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2では、焙煎コーヒー豆に加水及び加熱して気化し、5℃以上の室温以下の冷媒を用いて、最初に留出する香気成分より比較的揮発性の低い物質群に富む気化画分を濃縮し回収することを含む蒸留処理により、焙煎コーヒー豆由来の呈味を増強させた組成物を製造している。
しかし、蒸留による濃縮では、比較的低温での減圧蒸留を行うことで、低沸点成分の留去による濃縮も可能となるが、旨味成分の揮発により当該液状食品が元来有する成分組成が変化し、品質は大幅に劣化する問題がある。
濃縮比率のずれ:濃縮後の液状食品中の濃縮対象物質の濃度を、濃縮前の液状食品中の濃縮対象物質の濃度で除した値を、さらに濃縮倍率で除して求められる「濃縮比率」と「基準となる値1」との差の絶対値に100を乗じた値
(1) (X1/Y1)/(X2/Y2)が、0.5以上、3以下である。
(2) (X1/Z1)/(X2/Z2)が、0.5以上、3以下である。
(3) {(Z1−Y1)/Z1}/{(Z2−Y2)/Z2}が、0.5以上、3以下である。
(4) (X1/W1)/(X2/W2)が、0.5以上、3以下である。
上記式中、各符号の意味は以下のとおりである。
X1:濃縮前の前記液状食品中の芳香成分、旨み成分及び機能性成分のうちのいずれ
かの濃度
Y1:濃縮前の前記液状食品中の水以外の主成分の濃度
Z1:濃縮前の前記液状食品中の水以外の全成分の合計濃度
W1:濃縮前の前記液状食品中の芳香成分、旨み成分及び機能性成分のうちのいずれ
かのうちX1の成分以外から選ばれる成分の濃度
X2:濃縮後の前記液状食品中の芳香成分、旨み成分及び機能性成分のうちのいずれ
かの濃度
Y2:濃縮後の前記液状食品中の水以外の主成分の濃度
Z2:濃縮後の前記液状食品中の水以外の全成分の合計濃度
W2:濃縮後の前記液状食品中の芳香成分、旨み成分及び機能性成分のうちのいずれ
かのうちX2の成分以外から選ばれる成分の濃度
ただし、X1とX2の成分は同じものとする。また、W1とW2の成分は同じものとする。
まず、液状食品について説明する。
本発明の対象とする液状食品は、含水率が10重量%以上の食品である。含水率が10重量%以上の液状食品であれば、本発明の濃縮方法を好ましく適用することができるが、ある程度の水分量を有する液状食品の方が適用しやすく、含水率は20重量%以上が好ましく、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上の順により好ましく、90重量%以上が特に好ましい。
本発明では、分子ふるい膜を適用することにより、蒸留ではエネルギー負荷が高くなる含水率の高い液状食品であっても、効率的に濃縮することができる。
次に、本発明で用いる分子ふるい膜について説明する。
分子ふるい膜とは、分子の大きさによって対象となる物質を分離する性質をもった膜である。具体的には、透析膜、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、ナノろ過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)、ゼオライト膜、高分子膜にゼオライトなどを添加したmixed matrix membrane(以下MMM)などが挙げられる。本発明では、分離性能の点から、ナノろ過膜、逆浸透膜、ゼオライト膜、MMMを使用することが好ましく、さらに耐久性の点からゼオライト膜を使用することが好ましい。
それらの中で、多孔質支持体上にゼオライトを膜状に固着させたゼオライト膜複合体が特に好ましい。即ち、ゼオライト膜複合体は支持体を有することによって機械的強度が増し、取り扱いが容易になり、種々の装置設計が可能となる上に、特に無機多孔質支持体を用いた場合、ゼオライト膜複合体は全て無機物で構成されるものとなるため、耐熱性、耐薬品性、耐久性に優れ、液状食品の濃縮に長期に亘り安定に使用することが可能となる。
従って、本発明において、分子ふるい膜として特に好適なゼオライト膜は、無機多孔質支持体表面に形成されたゼオライト膜である。
平均細孔径が小さすぎると透過量が小さくなる傾向があり、大きすぎると支持体自体の強度が不十分になることがあり、支持体表面の細孔の割合が増えて緻密なゼオライト膜が形成されにくくなることがある。
支持体はゼオライト膜に機械的強度を与える目的で使用しているが、支持体の平均厚さが薄すぎると多孔質支持体−ゼオライト膜複合体が十分な強度を持たず多孔質支持体−ゼオライト膜複合体が衝撃や振動等に弱くなり実用上問題が生じる傾向がある。支持体の平均厚さが厚すぎると透過した物質の拡散が悪くなり透過流束が低くなる傾向がある。
また、多孔質支持体の表面は滑らかであることが好ましく、必要に応じて、表面をやすり等で研磨してもよい。
また、本発明で用いられる多孔質支持体の、多孔質支持体表面以外の部分の細孔径は制限されるものではない。
粒子径の測定方法については特に限定されないが、一例をあげれば、SEMによるゼオライト膜表面の観察やSEMによるゼオライト膜断面の観察、TEMによるゼオライト膜の観察などによって測定することができる。
フレームワーク密度とは、ゼオライトの1000Å3あたりの、骨格を構成する酸素以外の元素(T元素)の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まる。なおフレームワーク密度とゼオライトとの構造の関係はATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Sixth Revised Edition 2007 ELSEVIERに示されている。
本発明において用いられるCHA型ゼオライトのフレームワーク密度は、14.5T/1000Åである。
(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)で表されるピーク強度比(以下これを「ピーク強度比A」ということがある。)でいえば、通常0.5以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上、特に好ましくは3.5以上、もっとも好ましくは4.0以上である。上限は特に限定されないが、通常1000以下である。
ゼオライト膜複合体の空気透過量が上記上限よりも小さいと、ゼオライト膜複合体に欠陥が少なく、濃縮時に水以外の成分が透過側に透過しにくい。空気透過量は小さいほど分離性能が高いことを示すので望ましいが、上記下限より小さいと、場合によっては、濃縮時の水の除去効率が悪くなることがある。
以下に、分子ふるい膜として、上記のゼオライト膜、特にゼオライト膜複合体を用いて本発明に従って液状食品を濃縮する方法について説明するが、本発明で用いる分子ふるい膜は何らゼオライト膜に限定されるものではない。
前処理としては、ろ過膜に液状食品を通すことで、繊維や澱、浮遊物といった不溶物や高分子量の化合物を取り除く処理が挙げられる。前処理によって除かれた、繊維や澱、浮遊物などの不溶物や高分子量の化合物は、ゼオライト膜複合体による濃縮後の濃縮液に戻しても戻さなくてもよい。
また、分子ふるい膜として前述した膜を用いて前処理を行うこともできる。具体的には、液状食品をMF膜、UF膜、NF膜およびRO膜の1種又は2種以上を用いて膜分離処理し、膜を透過した液をゼオライト膜複合体に接触させて濃縮する方法などが挙げられる。この場合も、前段の膜を透過しなかった物質をゼオライト膜複合体で濃縮後の液に混合してもしなくてもよい。
これらの前処理を行うことによって、後段の処理や濃縮に用いる膜のファウリングを低減したり、目詰まりを抑制することができ、後段の処理や濃縮に用いる膜の透過量を向上させて処理効率を高めたり、膜の寿命を延長させるなどの効果が得られる場合がある。
また、液状食品の濃縮には、2種以上の分子ふるい膜を用いることもでき、例えば、MF膜、UF膜、NF膜、RO膜等の分子ふるい膜の1種又は2種以上で膜分離処理し、得られた濃縮液をゼオライト膜複合体に接触させて濃縮してもよい。また、ゼオライト膜複合体に接触させて濃縮させた液を、さらにMF膜、UF膜、NF膜、RO膜等の分子ふるい膜で処理してもよい。
また、2種類以上のゼオライト膜複合体を用い、前段のゼオライト膜複合体の濃縮液を更に後段のゼオライト膜複合体で濃縮する多段濃縮処理としてもよい。
図1に示すプロセスでは、ゼオライト膜(ゼオライト膜複合体)(1M),(2M)により内部が濃縮室と透過室とに仕切られた濃縮装置(1),(2)が2基直列に配置され、供給液である液状食品は、供給ポンプ(51)により、加熱器(11)を経由して第1濃縮装置(1)に供給される。ゼオライト膜(ゼオライト膜複合体)(1M)を透過した水(気体)は冷却器(3)に導入されて冷却、液化された後にタンク(4)に貯蔵される。ゼオライト膜(ゼオライト膜複合体)(1M)を透過せずに濃縮された液状食品は加熱器(11)を経由して第1濃縮装置(1)の濃縮室に循環されて濃縮処理される。
そして、最終的に濃縮された液状食品は、排出弁(63)を開として第2濃縮装置(2)の循環路から取り出される。
VP法ではゼオライト膜に液状食品の蒸気を接触させて水を透過させる。すなわち、この方式は、蒸気透過法とも呼ばれ、液状食品(供給液)を、加熱あるいは減圧することによって、あるいは加熱と減圧を組み合わせることによって蒸気を生じさせ、蒸気をゼオライト膜に接触させ、水のみを透過させることにより、液状食品を濃縮する。ゼオライト膜に蒸気のみを接触させることにより、繊維や澱、浮遊物といった不溶物や高分子量の化合物がゼオライト膜に接触することを避けることができ、膜のファウリングを低減したり、目詰まりを抑制することができ、膜の透過量を向上させて処理効率を高めたり、膜の寿命を延長させるなどの効果が得られる場合がある。
濃縮装置の運転条件の最適範囲は、濃縮装置に供給される液状食品の種類により異なるため一概に決定し得ないが、温度、操作圧力等の一般的条件は、公知の運転方法の条件の範囲から適宜選択され、以下のような範囲である。
濃縮時の雰囲気については特に制限はないが、芳香成分、旨み成分、機能性成分などの濃縮対象物質は酸化されやすい成分である場合もあるので、適宜窒素等の不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。
本発明の濃縮方法によれば、液状食品中の水を除去し、水以外の液状食品中の主成分(液状食品中最も濃度(重量%)の高い成分)を濃縮することができる。その際、芳香成分、旨み成分、機能性成分などの濃縮対象物質が分解されたり、水と共に大量に除去されたりしにくく、濃縮前の状態をほぼ維持したまま濃縮することができる。すなわち、濃縮前後において、水以外の主成分や、芳香成分、旨み成分、機能性成分などの濃縮対象物質の含有量がほとんど変化しない。したがって、水以外の主成分や、芳香成分、旨み成分、機能性成分などの濃縮対象物質について高い回収率を実現できる。尚、水以外の主成分が芳香成分、旨み成分、機能性成分などの濃縮対象物質である場合もある。
より具体的には、イソチオシアネート類、インドール類、エーテル類、エステル類、アルデヒド類、ケトン類、アルコール類、脂肪酸類、脂肪族高級炭化水素類、テルペン類、チオエーテル類、チオール類、フェノール類、フェノールエーテル類、フルフラールおよびその誘導体類、ラクトン類が挙げられる。
即ち、例えば、濃縮前の液状食品中のA成分の含有率がAo重量%で、濃縮後の液状食品中のA成分の含有率がAx重量%で、濃縮倍率がx倍である場合、濃縮比率のずれ(%)は以下の通り算出される。
濃縮比率のずれ(%)=|1−(Ax/Ao)/x|×100
この「濃縮比率のずれ」の値が小さいほど、濃縮前後における当該成分の液状食品中での組成バランスに対する変化が小さく、逆に、「濃縮比率のずれ」の値が大きいほど、濃縮前後における当該成分の液状食品中での組成バランスに対する変化が大きい。
濃縮前に対する濃縮後の水以外の主成分、芳香成分、旨み成分、機能性成分の組成比がほとんど変わらないことを表す指標としては、以下の(1)〜(4)の条件を挙げることができ、本発明では、下記(1)〜(4)の条件のうち、少なくとも1つを満たすことが好ましく、下記(1)〜(4)の条件のうち2つを満たすことがより好ましく、下記(1)〜(4)の条件のうち3つを満たすことがさらに好ましく、とりわけ下記(1)〜(4)の条件のすべてを満たすことが好ましい。
(2) (X1/Z1)/(X2/Z2)が、0.5以上、3以下である。
(3) {(Z1−Y1)/Z1}/{(Z2−Y2)/Z2}が、0.5以上、3以下である。
(4) (X1/W1)/(X2/W2)が、0.5以上、3以下である。
上記式中、各符号の意味は以下のとおりである。
X1:濃縮前の前記液状食品中の芳香成分、旨み成分及び機能性成分のうちのいずれ
かの濃度
Y1:濃縮前の前記液状食品中の水以外の主成分の濃度
Z1:濃縮前の前記液状食品中の水以外の全成分の合計濃度
W1:濃縮前の前記液状食品中の芳香成分、旨み成分及び機能性成分のうちのいずれ
かのうちX1の成分以外から選ばれる成分の濃度
X2:濃縮後の前記液状食品中の芳香成分、旨み成分及び機能性成分のうちのいずれ
かの濃度
Y2:濃縮後の前記液状食品中の水以外の主成分の濃度
Z2:濃縮後の前記液状食品中の水以外の全成分の合計濃度
W2:濃縮後の前記液状食品中の芳香成分、旨み成分及び機能性成分のうちのいずれ
かのうちX2の成分以外から選ばれる成分の濃度
ただし、X1とX2の成分は同じものとする。また、W1とW2の成分は同じものとする。
以下の実施例において、X線回折(XRD)測定、SEM−EDX測定、カテキン濃度の測定、アミノ酸濃度の測定は以下の方法により行った。
ゼオライト膜のXRD測定を、以下の条件で行った。
・装置名:オランダPANalytical社製X’PertPro MPD
・光学系仕様 入射側:封入式X線管球(CuKα)
Soller Slit (0.04rad)
Divergence Slit(Valiable Slit)
試料台:XYZステージ
受光側:半導体アレイ検出器(X’ Celerator)
Ni−filter
Soller Slit (0.04rad)
ゴニオメーター半径:240mm
・測定条件 X線出力(CuKα):45kV、40mA
走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):5.0−70.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.05°
計数時間:99.7sec
自動可変スリット(Automatic−DS):1mm(照射幅)
横発散マスク:10mm(照射幅)
また、照射幅を自動可変スリットによって1mmに固定して測定し、Materials Data, Inc.のXRD解析ソフトJADE 7.5.2(日本語版)を用いて可変スリット→固定スリット変換を行ってXRDパターンを得た。
ゼオライト膜のSEM−EDX測定を、以下の条件で行った。
・装置名:SEM:FE−SEM Hitachi:S−4800
EDX:EDAX Genesis
・加速電圧:10kV
倍率5000倍での視野全面(25μm×18μm)を走査し、X線定量分析を行った。
このSEM−EDX測定により、生成したゼオライト膜自体のSiO2/Al2O3モル比を求めた。
カテキンおよびカフェインの濃度の測定は、以下の条件に基づいて行った。
カラム:Unison UK−C18(3μm、4.6×75mm、Imtakt)、
40℃
移動相:A 0.1%H3PO4/水 B CH3CN、1.0ml/min
メソッド B(%)5%(0min)→50%(15min)
→80%(15.1min)→80%(20min)
検出器:PDA(280mm)
注入量:5μl
なお、試料溶液は、0.45μmフィルターでろ過した後分析した。カテキンおよびカフェイン量の比較はLC面積比で行った。
アミノ酸濃度の測定は、以下の条件に基づいて行った。
装置:日立アミノ酸分析計 L−8900
分析条件:生体アミノ酸分離条件−ニンヒドリン発色法
標準品:PF(和光アミノ酸混合液AN2型0.8ml+B型0.8ml→10ml)
注入量:10μl
定量計算:Proは440nm、他のアミノ酸は570nmのピーク面積から
一点外部標準法で算出。
TheanineについてはGlnの検量線を用いた。
<ゼオライト膜複合体の作製>
CHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することでゼオライト膜複合体を作製した。
水熱合成のための水性反応混合物として以下のものを調製した。
水酸化アルミニウム(Al2O3 53.5重量%含有、アルドリッチ社製)23.6gに1mol/L−KOH水溶液693gと水680gを加え、混合撹拌して溶解させ、溶液とした。これにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)149gを加えて2時間撹拌し、水熱合成用水性反応混合物とした。
この混合物の組成(モル比)は、SiO2/Al2O3/KOH/H2O=1/0.125/0.7/80/、SiO2/Al2O3=8であった。
種結晶を付着させた支持体を、上記水熱合成用水性反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒(1700ml)に筒軸方向に挿入して水熱合成用水性反応混合物に浸漬し、その後、オートクレーブを密閉し、5時間かけて室温から180℃まで昇温した。昇温完了後、180℃で24時間、静置状態で、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後に放冷し、ゼオライト膜複合体を水性反応混合物から取り出し、洗浄後、100℃で4時間乾燥させた。
乾燥後のゼオライト膜複合体の重量と支持体の重量の差から求めた、支持体上に結晶化したCHA型ゼオライトの重量は120g/m2であった。
上記の方法により得られたゼオライト膜複合体を長さ80mmに切断したものを用いて、PV法により、窒素雰囲気下で、40℃の緑茶から水を選択的に透過させる濃縮を行った。濃縮に供した緑茶の仕様は、以下の通りである。
<緑茶>
株式会社イオン製
食品分類(清涼飲料水)
原材料:緑茶(国産)、酸化防止剤(ビタミンC)
栄養成分(100mLあたり):エネルギー1kcal、たん白質0g、脂質0g、炭水化物0.2g、ナトリウム7mg、ポリフェノール90mg
含水率:90重量%以上
PV法に用いた濃縮装置の概略図を図2に示す。図2においてゼオライト膜複合体73は真空ポンプ77によって内側が減圧され、被分離液72が接触している外側と圧力差が約1気圧になっている。この圧力差によって被分離液72中、透過物質の水がゼオライト膜複合体73に浸透気化して透過する。透過した物質はコールドトラップ75で捕集される。一方、被分離液72中の水以外の主成分、芳香成分、旨み成分、機能性成分などの濃縮対象物質は、ゼオライト膜複合体73の外側に滞留する。71は湯浴、74は窒素バッグである。
濃縮は35時間行った。濃縮後の緑茶は54gであり、41gが除去され1.76倍に濃縮された(濃縮倍率1.76倍)。
濃縮前の緑茶のアミノ酸濃度測定、カテキン濃度測定、及び濃縮後の緑茶のアミノ酸濃度測定、カテキン濃度測定を行った。
アミノ酸濃度の測定結果と緑茶の重量より、濃縮前の緑茶には3.81mgのアミノ酸が含まれており、濃縮後の緑茶には3.78mgのアミノ酸が含まれていることが確認された。濃縮後のアミノ酸の回収率は99.1%であった。この結果から本濃縮方法によれば、アミノ酸をほとんど損なうことなく濃縮を行うことができることが確認された。
そして、この「濃縮比率」と「基準となる値1」との差の絶対値に100を乗じた値を、「濃縮比率のずれ(%)」とした。すなわち、この「濃縮比率のずれ」の値が小さいほど、濃縮前後における当該成分の緑茶中での比率の変化が小さく、逆に、「濃縮比率のずれ」の値が大きいほど、濃縮前後における当該成分の緑茶中での比率変化が大きいことを示す。
その結果を表3に示す。
<ゼオライト膜複合体の作製>
CHA型ゼオライトを無機多孔質支持体上に直接水熱合成することでゼオライト膜複合体を作製した。
水酸化アルミニウム(Al2O3 53.5重量%含有、アルドリッチ社製)0.88gに1mol/L−NaOH水溶液10.5gと1mol/L−KOH水溶液7.0gと水100.0gを加えて撹拌し溶解させ、透明溶液とした。これに有機テンプレートとして、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド(TMADAOH)水溶液(TMADAOH25重量%含有、セイケム社製)2.36gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製 スノーテック−40)10.5gを加えて2時間撹拌し、水熱合成用水性反応混合物を調製した。
この混合物の組成(モル比)はSiO2/Al2O3/NaOH/KOH/H2O/TMADAOH=1/0.066/0.15/0.1/100/0.04、SiO2/Al2O3=15であった。
生成した膜のXRDを測定したところ、CHA型ゼオライトが生成していることがわかった。XRDパターンから、(2θ=17.9°付近のピークの強度)/(2θ=20.8°付近のピークの強度)=4.9であり、種結晶に用いた粉末のCHA型ゼオライトのXRDに比べ2θ=17.9°付近のピークの強度が顕著に大きく、rhombohedral settingにおける(1,1,1)面への配向が推測された。
また、SEM−EDXにより、ゼオライト膜のSiO2/Al2O3モル比を測定したところ、17であった。
また、焼成後のゼオライト膜複合体について、上記と同様に測定した空気の流量は22L/m2・hであった。
上記の方法により得られた、焼成後のゼオライト膜複合体を用いて、PV法により、窒素雰囲気下で、70℃の食酢から水を選択的に透過させる濃縮を行った。濃縮に供した食酢の仕様は以下の通りである。
株式会社ミツカン製 穀物酢
原材料:穀類(小麦、米、コーン)、アルコール、酒かす
酸度:4.2%
栄養成分(15mLあたり):エネルギー3.8kcal、たん白質0g、脂質0g、炭水化物1.1g、ナトリウム0〜1mg
含水率:90重量%以上
透過液は1時間毎に回収し、その回収した重量に相当する重量の食酢(原液)をガラス容器に追加することで、ガラス容器内の容量を一定に保ち、8時間濃縮を行った。
ガラス蒸留装置を用いて、100℃の食酢から水を蒸発させて濃縮を行った。
実施例2と同じ食酢(原液)120.0gを、200mlの二口フラスコに入れ、攪拌子で攪拌しながら油浴で100℃に加熱した。発生した蒸気を、二口フラスコに取り付けた20cmのヴィグリュー分留管を通過させ、次いでリービッヒ冷却管で冷却して凝縮した成分を捕集した。蒸留は6時間行った。
原液と、実施例2および比較例1で得られた濃縮液に含まれる遊離アミノ酸濃度の測定を行った。
濃縮液は超純水で10倍に希釈し、限外ろ過膜(MWCO10,000、ミリポア社製)でろ過後、ろ液を前述のアミノ酸濃度の測定に供した。
濃縮倍率は、使用した食酢(原液)の重量を得られた濃縮液の重量で除した値とした。
実施例2で使用した食酢は合計で127.8gであり、ガラス容器から回収した濃縮液は25.7gであった。すなわち、濃縮倍率は5.0倍であった。
一方、比較例1で使用した食酢(原液)は120.0gであり、二口フラスコから回収した濃縮液は13.7gであった。すなわち、濃縮倍率は8.8倍であった。
実施例2及び比較例1における遊離アミノ酸濃度の測定結果を表4に示す。
濃縮比率として、実施例2および比較例1の濃縮液に含まれる各遊離アミノ酸濃度を、原液中の各遊離アミノ酸濃度でそれぞれ除し、さらにそれぞれの濃縮倍率で除した値を算出した。
そして、この「濃縮比率」と「基準となる値1」との差の絶対値に100を乗じた値を、「濃縮比率のずれ(%)」とした。すなわち、この「濃縮比率のずれ」の値が小さいほど、濃縮前後における当該成分の食酢中での比率の変化が小さく、逆に、「濃縮比率のずれ」の値が大きいほど、濃縮前後における当該成分の食酢中での比率変化が大きいことを示す。
その結果を表5に示す。
すなわち、ゼオライト膜による濃縮では、食酢原液のアミノ酸バランスが維持されているが、蒸留による場合は、食酢原液のアミノ酸バランスが大きく変化していることが分かった。
また、食酢中の成分アミノ酸について、前述の条件(1)〜(2)の式の値を算出すると、X1=0.453g/L、X2=2.484g/Lであるため、条件(1)の式の値は1.04である。
また、比較例1において食酢中の水以外の主成分は酢酸であるため、Y1=42g/L、Y2=131g/Lである。
また、食酢中の成分アミノ酸について、前述の条件(1)〜(2)の式の値を算出すると、X1=0.453g/L、X2=3.573g/Lであるため、条件(1)の式の値は0.40である。
1M ゼオライト膜(ゼオライト膜複合体)
2 第2濃縮装置
2M ゼオライト膜(ゼオライト膜複合体)
3 冷却器
4 タンク
11 加熱器
21 中間加熱器
51 供給ポンプ
52 循環ポンプ
53 循環ポンプ
54 真空ポンプ
55 排出用ポンプ
61,62 圧力制御弁
63 排出弁
71 湯浴
72 被分離液
73 ゼオライト膜複合体
74 窒素バッグ
75 コールドトラップ
76 圧力ゲージ
77 真空ポンプ
Claims (5)
- 含水率が10重量%以上の液状食品から、水の一部を除去して該液状食品を濃縮する方法であって、
該液状食品を分子ふるい膜へ導入して、水の一部を分離除去するものであり、
前記分子ふるい膜が、多孔質支持体上に形成された酸素6〜8員環の細孔構造を有するゼオライトを含むゼオライト膜であり、
前記濃縮方法が、パーベーパレーション法またはベーパーパーミエーション法であることを特徴とする、液状食品の濃縮方法。 - ゼオライト膜自体のSiO 2 /Al 2 O 3 モル比が、5以上50以下である、請求項1に記載の液状食品の濃縮方法。
- 以下に定義される、濃縮前後の前記液状食品中の濃縮対象物質の濃縮比率のずれが50%未満であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の液状食品の濃縮方法。
濃縮比率のずれ:濃縮後の液状食品中の濃縮対象物質の濃度を、濃縮前の液状食品中の濃縮対象物質の濃度で除した値を、さらに濃縮倍率で除して求められる「濃縮比率」と「基準となる値1」との差の絶対値に100を乗じた値 - 前記液状食品中の水以外の主成分、芳香成分、旨み成分、及び機能性成分の、濃縮後の存在量が濃縮前の存在量に対して70重量%以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の液状食品の濃縮方法。
- 下記(1)〜(4)の条件の少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の液状食品の濃縮方法。
(1)(X1/Y1)/(X2/Y2)が、0.5以上、3以下である。
(2)(X1/Z1)/(X2/Z2)が、0.5以上、3以下である。
(3){(Z1−Y1)/Z1}/{(Z2−Y2)/Z2}が、0.5以上、3以下である。
(4)(X1/W1)/(X2/W2)が、0.5以上、3以下である。
上記式中、各符号の意味は以下のとおりである。
X1:濃縮前の前記液状食品中の芳香成分、旨み成分及び機能性成分のうちのいずれ
かの濃度
Y1:濃縮前の前記液状食品中の水以外の主成分の濃度
Z1:濃縮前の前記液状食品中の水以外の全成分の合計濃度
W1:濃縮前の前記液状食品中の芳香成分、旨み成分及び機能性成分のうちのいずれ
かのうちX1の成分以外から選ばれる成分の濃度
X2:濃縮後の前記液状食品中の芳香成分、旨み成分及び機能性成分のうちのいずれ
かの濃度Y2:濃縮後の前記液状食品中の水以外の主成分の濃度
Z2:濃縮後の前記液状食品中の水以外の全成分の合計濃度
W2:濃縮後の前記液状食品中の芳香成分、旨み成分及び機能性成分のうちのいずれ
かのうちX2の成分以外から選ばれる成分の濃度
ただし、X1とX2の成分は同じものとする。また、W1とW2の成分は同じものとする。
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