以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、プレ加工装置3の概略図、図2は、プレ加工装置3により加工される弾性材料製シート21を説明するための説明図、図3は、プレ加工装置3に備えられた版胴1を説明するための説明図、図4は、プレ加工装置3の側面断面図、図5は、プレ加工装置3の平面図、図6A,6Bは、プレ加工装置3を用いた弾性材料製シート21の加工方法を説明するための説明図、図7は、プレ加工装置3によって加工された弾性材料製シート21の形状を説明するための説明図、図8は、プレ加工装置3による加工後の弾性材料製シート21を第2加工する円筒状成形装置4の一例を示す正面図、図9は、プレ加工装置3による加工後の弾性材料製シート21を第2加工する円筒状成形装置4の一例を示す平面図、図10は、プレ加工装置3による加工後の弾性材料製シート21を加工する第2加工を説明するための説明図、図11は、従来の弾性材料製シート21の加工後の形状を説明するための説明図である。
以降では、図1に示すプレ加工装置3の上下を上下、左右を左右とし、紙面に対し垂直な方向を前後方向として説明する。
図1〜7に基づいて、長方形状の弾性材料製シート21を円筒状に成形する際に用いられるプレ加工装置3について説明するにあたり、まず、プレ加工装置3で加工される弾性材料製シート21について説明する。
弾性材料製シート21は、加工前は長方形状に形成されており、これを丸めて両端部221,222を接合するなどして円筒状の印刷用版2に成形される。
印刷用版2は、円筒状に形成された印刷用版2のことであり、特に、小径の印刷用版2として用いられるものである。
印刷される被印刷物は飲料用金属缶であり、特にアルミニウム又はアルミニウム合金製の平板を、ドロー&アイアニング(DI)成形した有底円筒状の飲料用金属缶が好適に印刷される。
印刷用版2は、金属製の弾性材料製シート21からなる版本体21(以降、「弾性材料製シート21」とも記す。)と、版本体21の外周部の一部に形成された版部23と、を有している。
尚、版部23とは、印刷模様が彫刻された後及び印刷模様が彫刻される前の両方を含む意味で用いられる。
版本体21は、円筒状に丸められ、重ね合わせられた両端部221,222が接合されることにより印刷用版2に成形される。
版本体21は、特に、小径の印刷用版2に加工される場合には大きな加工度が必要となり、そのような加工を一度に施すとシワ・割れ・歪などの不良が発生する虞があることから、第1加工及び第2加工の2段階の加工を経て円筒状の印刷用版2に成形される。
印刷用版2を成形するために必要な寸法で切断された版本体21は、後に詳述するが、円筒状に形成され、版本体21が巻き付けられる版胴1を備えたプレ加工装置3にかけられることにより第1加工が施される。
プレ加工装置3の版胴1の外周には、円筒状の版装着面111が形成されており、版装着面111には、版本体21が巻き付けられて装着される。
版部23は、版本体21の外周面の所定箇所に設けられ、版本体21が版胴1に装着されたときに版装着面111に密着する版本体21の外面部分に形成されている。
版本体21は、磁性あるいは非磁性の適当な金属等の長方形状の弾性材料製シート21からなり、例えば、市販のブリキ板(Fe)が採用され、版本体21の厚さは、円筒状に形成できて、かつ弾性力により円筒状を保持できる程度であればよく、適宜設定すればよい。
版本体21には、版部23となる樹脂層がその片面に形成されており、この樹脂層は、例えばポリビニルアルコール系、ビニルエステル系またはポリアミド系等の樹脂を採用することができ、ショアD硬度で例えば硬化後D20〜80程度のものが好適である。
例えば、通常のオフセット印刷用のUV硬化樹脂(紫外線硬化樹脂)を採用すると、それ以外の硬化樹脂のような溶剤や高圧スチームによる煩雑な洗浄作業を必要とせず、一般に水洗浄で容易に洗浄作業を行うことができる。
樹脂層の厚さは、印刷の版部23として必要な厚みがあればよく、この例では、厚さ約0.26mmの版本体21の片面に厚さ約0.4mm〜0.6mmの層を接着させている。
円筒状に形成された印刷用版2は、印刷機などに設けられた版装着装置の円筒状のプレートシリンダの先端側(操作者側)から嵌め込まれることによって、プレートシリンダの外周面に装着される。
尚、版装着装置とは、例えば、版駆動軸と、これに一体的に取り付けられるプレートシリンダとを備え、プレートシリンダは、印刷機や彫刻機に設けられた版駆動軸の先端側から嵌め込まれて版駆動軸の外周面に固定され、プレートシリンダの外周面に印刷用版2が装着される。
版本体21の両端部221,222が接合されてなる接合部22は、その幅寸法が短過ぎると接合の強度を保つことが困難になり、一方、幅寸法が長過ぎると材料コストが嵩むことから、少なくとも接合の強度が保たれる程度の幅寸法で重ねられて接合される。
尚、接合部22の接合方法としては、溶接による接合が最も好ましいが、版本体21の両端部221,222が容易に剥がれない接着方法が採用されるのであれば特に限定されるものではない。
版本体21は、一方の長手方向端部、具体的には、版胴1の外周面に装着された際の後端側となる端部に、版本体21の軸方向に延びる切欠きが形成されてなる位置決め用切欠部24が設けられている。
位置決め用切欠部24は、例えば、版本体21の長手方向中央に形成され、版本体21をシリンダー部材41などに装着する際に、版装着装置のプレートシリンダや後述する円筒状成形装置4のシリンダー部材41などに設けられた位置決め用突部に係合させて、版本体21の周方向及び軸方向の位置決めができるようになっている。
版本体21は、位置決め用切欠部24が設けられた長手方向端部(版胴1装着時、版本体21の後端部)と対向する側(版胴1装着時、版本体21の先端側)に、位置指示部25を備えている。
位置指示部25は、位置決め用切欠部24がプレートシリンダなどに正確に係合するよう、位置決め用切欠部24の位置をより把握し易くするためのものであり、この例では、位置指示部25は、版部23を形成する樹脂層が二等辺三角形状に除去されて形成され、二等辺三角形の頂角が位置決め用切欠部24側に向いて配置されている。
この例における第1加工では、弾性材料製シート21の両端部221,222側に加えて、弾性材料製シート21が版胴1に巻き付けられることにより、弾性材料製シート21の両端部221,222を除く部位についても所定の加工度となるまで塑性変形させる。
例えば、弾性材料製シート21の両端部221,222側を除く部位は、第1加工で成形した弾性材料製シート21の径が、円筒状に成形後の弾性材料製シート21の径の約1.2倍以上約3倍以下となるまで塑性変形させられる。
具体的に説明すると、接合後の印刷用版2の内径が125.45mm〜125.50mmである場合、第1加工における弾性材料製シート21の内径は、接合後の印刷用版2の内径が約1.2倍〜3倍の範囲である半径約150mm〜370mmとなるように加工を施す。
第1加工における所定の加工度は、好ましくは、印刷用版2の内径の約1.2倍〜2.8倍の範囲(約150mm〜350mm)、より好ましくは、印刷用版2の内径の約1.4倍〜2.5倍の範囲(約180mm〜310mm)に設定されるとよい。
第1加工では、円筒状に成形後の弾性材料製シート21の径が、第1加工で成形した弾性材料製シート21の径の約1.2倍以上約3倍以下となるまで弾性材料製シート21を塑性変形させるので、第1加工において弾性材料製シート21が好適な範囲内で加工されるため、その後に施される第2加工が行い易くなる。
第1加工では、弾性材料製シート21の両端部221,222をそれぞれ異なる加工度、即ち、それぞれ異なる曲率となるように曲げ加工を施す。
弾性材料製シート21の両端部221,222の加工度は、両端部221,222それぞれの内径の比率(内径大/内径小)が低過ぎる(1に近い)と、両端部221,222が自然に重なり合うようにならず、図11の従来の弾性材料製シート21の加工後の形状からわかるように、弾性材料製シート21の一端部221´が他端部222´の内側に接触するなどして重ね合わせが困難となる。
また、接合作業時において、作業者などによって両端部221,222を重ね合わせる作業が必要となるため好ましくない。
一方、加工度の比率が高過ぎると、一方の端部のみの加工度が高くなり過ぎてしまい、歪が生じる虞があるため好ましくない。
そこで、後に詳述するが、弾性材料製シート21の一端部221に所定の曲率で曲げ加工が施され、弾性材料製シート21の他端部222には、一端部221の曲率より低い曲率で曲げ加工が施される。
即ち、弾性材料製シート21は、その一端部221と他端部222とが異なる曲率で曲げ加工が施されるようになっている。
両端部221,222の加工度の比率(弾性材料製シート21の一端部221の加工度/弾性材料製シート21の他端部222の加工度)は、約1.1倍〜2倍の範囲となるように設定され、好ましくは、約1.3倍〜1.7倍の範囲となるように設定される。
第1加工では、弾性材料製シート21の一端部221側と他端部222側とで加工度が異なるよう設定されるので、加工度の大きい(内径の小さい)側の端部が加工度の小さい(内径の大きい)側の端部の内側に入りこんで重なり合うような形状となるため、その後、弾性材料製シート21を円筒状に成形する際の接合工程が行い易くなる。
第1加工を施した後になされる第2加工では、弾性材料製シート21を完全な円筒状にして、重ね合わせられた端部同士を接合して接合部22を形成することによって、円筒状の印刷用版2に成形する。
第1加工に用いられるプレ加工装置3は、例えば、基台31と、基台31の略中央で前後方向に延びる回転軸としてのシャフト100と、シャフト100の外周面に固定的に取り付けられる版胴1と、を備えている。
版胴1の右手側には、版胴1に巻き付けられた弾性材料製シート21を版胴1の径方向内側に押圧する押圧部34が配置され、版胴1の左手側には、版胴1に弾性材料製シート21を供給するための版供給部35が配置されている。
版胴1は、円筒状に形成された版胴本体11を備え、版胴本体11の中心には、シャフト100が挿通させられる挿通孔12が設けられる。
版胴本体11の外周に形成された版装着面111は、シャフト100と同心に形成される。
版胴1は、その直径が約95mm〜150mmに設定されると好ましく、より好ましくは、直径が約97mm〜125mm、更に、直径が約98mm〜110mmに設定されると最も好ましい。
シャフト100の先端側には、固定的に取付けられた操作部33が設けられおり、操作部33には、例えば、操作部本体331として回転ハンドルなどが設けられ、操作部本体331には、把持部332が設けられている。
操作部33は、自身の回転動作に連動してシャフト100及び版胴1が回転するよう構成されている。
版胴1と操作部33との間には、例えば、基台31上の2本の支柱321上に横架された軸支持部32が設けられ、軸支持部32は、版胴1から操作部33にかけて延びるシャフト100を支持している。
版胴1の軸方向長さは、弾性材料製シート21の短手方向長さよりも長い寸法、或いは弾性材料製シート21の短手方向長さと同等の寸法に設定されている。
版供給部35は、弾性材料製シート21を版胴1に供給するための装置であり、受けロール351と、受けロール351が取り付けられたロールフレーム352と、ロールフレーム352の外側位置に配置され、ロールフレーム352を支持するフレーム支持部354と、を備える。
受けロール351は、両端部がロールフレーム352に支持されて回動可能なロールを有し、当該ロールの回転動作により弾性材料製シート21を版胴1に供給させる。
フレーム支持部354には、上下方向に延びた長孔355が形成され、各ロールフレーム352には、長手方向に延びた孔353がそれぞれ形成されており、各フレーム支持部354の長孔355には、連結部材356が嵌合され、連結部材356はロールフレーム352の孔353に嵌合されてフレーム支持部354と受けロール351を連結し、連結部材356を適当な位置で固定するなどして、受けロール351の位置調整を可能する。
版胴1には、版胴1の前面及び後面をそれぞれ覆う蓋部15が取付けられており、各蓋部15には、方形状に形成された係合部16が突出するように設けられている。
係合部16は、蓋部15の上部側に設けられ、具体的に、この例では、係合部16の上面と平坦部131の上面とが殆ど段差のない平面となるように配置されている。
係合部16の上面には、ねじなどの部材が挿入される係合孔161が形成されている。
版胴1は、その一部に、弾性材料製シート21の一端部221を固定する固定部13,14として機能する載置部13及び押止部14を有している。
図6Aで示すように、載置部13に弾性材料製シート21が載置され、載置部13に載置された弾性材料製シート21の上面から押止部14で覆い被せて押え止めるように着脱可能に取付けられる。
この例では、載置部13及び押止部14は、版胴1の上部に設けられ、載置部13及び押止部14の間で弾性材料製シート21の上下面を挟持することにより、弾性材料製シート21を版胴1に固定させる。
この時、弾性材料製シート21の一端部221は、版胴1の版装着面111よりも内側位置にて固定された状態となる。
載置部13は、弾性材料製シート21が載置される平坦部131と、弾性材料製シート21の一端部221が当接する当接部134と、当接部134を形成する凸部133と、を有する。
平坦部131は、版胴1の円筒部の一部が取り除かれた平坦な面で形成されてなり、版胴1の外周面である版装着面111と続いている。
平坦部131の長さ寸法(版胴1の軸方向に直交する方向の長さ)は、約10mm〜25mmの範囲に設定されることが好ましく、約15mm〜25mmに設定されるとより好ましい。
平坦部131は、版胴1の軸方向へ長く延び、版胴1の軸方向長さ寸法と同等の長さ寸法に設定されている。
平坦部131は、版装着面111を含む円筒面よりも径方向内側に位置しており、平坦部131から版胴1の外周面に連続する部位には、湾曲部132が形成されている。
湾曲部132は、版胴1の版装着面111の曲率よりも高い曲率となるよう設定されている。
版胴1の外周面に弾性材料製シート21を巻き付ける際、弾性材料製シート21は、その一端部221が平坦部131に載置され、更に湾曲部132のカーブに沿って巻き付けられて版装着面111に到達する。
このような構成により、湾曲部132は、弾性材料製シート21の一端部221側に、平坦部131から版胴1の外周面にかけて連続する部位の曲率で曲げ加工を施すことができる。
また、後述するが、弾性材料製シート21の他端部222側には、版胴1の外周面(版装着面111)の曲率に対応した曲げ加工がなされる。
即ち、湾曲部132は、第1カール部132として機能し、版胴1の外周面(後述する版装着面141,111)が、第2カール部141,111として機能する。
湾曲部132(第1カール部132)の曲率半径rは、版胴1の外周面(第2カール部141,111)の半径(曲率半径)Rと比較すると(第1カール部132の曲率半径r/第2カール部141の曲率半径R)、約0.4倍〜0.8倍の範囲に設定されるとよく、好ましくは、約0.5倍〜0.7倍、更に、約0.55倍〜0.65倍に設定されるとより好ましい。
第1カール部132の曲率半径rは、第2カール部141,111の曲率半径Rの0.4倍以上0.8倍以下に設定されると、弾性材料製シート21を円筒状に成形する際に、第1カール部132と第2カール部141,111の曲率半径の差が小さいと、弾性材料製シート21の一端部221が他端部222の内側面に接触するなどして弾性材料製シート21の両端部221,222の径方向における重ね合わせが困難となる。
しかしながら、本発明では、第1カール部132が第2カール部141,111に対して好適な曲率半径に設定されているため、弾性材料製シート21の一端部221側が他端部222側よりもきつい(曲率の高い)カールで形成され、第1カール部132によって曲げ加工された一端部221が第2カール部141によって曲げ加工された他端部222の内側に確実に入り込むため、弾性材料製シート21の両端部221,222の重ね合わせがより効率的で容易になる。
版胴1を正面視した際に、平坦部131には、図3(b)に示すように、平坦部131に対して垂直に立ち上がる壁面が形成され、当該壁面の前方には、当該壁面の凡そ中間高さ位置に相当する高さの段部(凸部133)が形成されている。
凸部133は、例えば、版胴1の軸方向に長い方形状に形成され、平坦部131に垂直な壁面に接した状態で平坦部131の上面端部に固定的に取付けられている。
凸部133は、版胴1の軸方向の両端部間に等しい長さで設けられ、ねじなどの螺合部材を介して平坦部131に取付固定されている。
当接部134は、凸部133を有する平坦部131から垂直に立ち上がった面である。
当接部134は、弾性材料製シート21の曲げ加工時に、平坦部131に載置された弾性材料製シート21の一端部221が当接するよう構成される。
これにより、弾性材料製シート21を版胴1に装着させる際に、弾性材料製シート21の一端部221を当接部134に当接させて、載置させる弾性材料製シート21の位置決めができる。
上述したように、押止部14は、版胴1の円筒面の一部を切り欠いて形成された平坦部131の上部を覆うように、版胴本体11の上部に取り付けられている。
押止部14は、版胴本体11の上部に取り付けられた状態で、その外周面が、版胴本体11の外周面(版装着面111)と等しい曲率の円弧、且つ、版装着面111と連続した面となるように形成されており、版胴本体11と同様に版装着面141として機能する。
押止部14の下部(裏面)には、版胴本体11の凸部133に嵌め合わされる凹部143が形成され、押止部14の上部には、上部孔142が形成され、ボルトなどの係合部材144が上部孔142に螺合されて版胴1に取り付け固定される。
押止部14は、版胴本体11に取り付けられた状態で、載置部13の平坦部131との間に、弾性材料製シート21の厚みと同等、或いは弾性材料製シート21の厚みよりもやや薄い間隙が形成されるよう構成されている。
押止部14は、版胴1の軸方向長さ寸法よりも長く設定され、押止部14を版胴1の上部に取り付けると、版胴1の軸方向前後のそれぞれで版胴1の前面及び後面に設けられた蓋部15よりもそれぞれ前方向及び後方向に突出するように設けられる。
押止部14は、前後方向端部が蓋部15よりも前方向及び後方向にそれぞれ突出する長さ寸法に形成されており、蓋部15よりも突出した部位の上部には、上部孔142が形成されている。
押止部14は、ボルトなどの係合部材144が上部孔142に螺合され、各蓋部15の前方上部に設けられた係合部16の係合孔161に螺合されることによって固定的に取り付けられる。
弾性材料製シート21の短手方向長さ寸法は、版胴1の軸方向長さよりも短くなるように設定されているため、押止部14が版胴1の軸方向前後外側に突出した位置で固定されることにより、弾性材料製シート21を傷付けるなどすることなく確実に固定させることができる。
弾性材料製シート21の一端部221が固定部13,14(載置部13及び押止部14)に固定された状態で、弾性材料製シート21の残りの部分が版胴1に巻き付けられることにより、弾性材料製シート21の一端部221と他端部222とに異なる曲率の曲げ加工がなされることになる。
尚、版胴1に弾性材料製シート21が巻き付けられることにより、弾性材料製シート21の両端部221,222を除く部位にも、版胴1の外周面111,141と略同等の曲率(弾性材料製シート21の他端部222と等しい曲率)で曲げ加工がなされる。
プレ加工装置3では、押止部14の版装着面141に加えて版胴1の版装着面111も第2カール部111,141として機能している。
このように、プレ加工装置3は、円筒状に形成され、外周面(版装着面111,141)に弾性材料製シート21が巻き付けられる版胴1を備え、版胴1は、版胴1の外周面111,141から連続し、版胴1の外周面111,141よりも内側に位置する曲面からなる第1カール部132と、版胴1の外周面111,141からなる第2カール部141と、を有し、弾性材料製シート21は、版胴1の外周面111,141に巻き付けられて、第1カール部132により一端部221が曲げ加工され、第2カール部141により他端部222が曲げ加工されるので、円筒状の版胴1の外周面111,141に弾性材料製シート21が巻き付けられるだけで、版胴1の外周面111,141よりも内側に位置する第1カール部132及び版胴1の外周面111,141からなる第2カール部141が、弾性材料製シート21の両端部221,222にそれぞれ曲げ加工を施すことができる。
しかも、弾性材料製シート21の一端部221に他端部222よりもきつい(曲率の高い)カールを形成することができるため、弾性材料製シート21をより容易に円筒状に加工し易い。
また、このような構成により、弾性材料製シート21の両端部221,222に異なる曲率で曲げ加工を行うと同時に、弾性材料製シート21の両端部221,222を除く部位にも弾性材料製シート21の一端部221より緩い(曲率の低い)曲げ加工を施すことができる。
弾性材料製シート21の一端部221及び弾性材料製シート21の他端部222を除く部位は、弾性材料製シート21の一端部221の曲率より低い曲率の曲げ加工が施されるので、弾性材料製シート21の一端部221及び他端部222を除く部位にも、弾性材料製シート21の一端部221の曲率より低い曲率の曲げ加工がなされることにより、弾性材料製シート21の全体が曲率を帯びた形状に加工されるため、円筒状の成形加工がより容易になる。
また、版胴1は、版胴1の外周面(版装着面111,141)よりも内側に位置する第1カール部132(湾曲部132)を有する固定部(載置部13、押止部14)を備え、固定部(載置部13、押止部14)で弾性材料製シート21の一端部221を固定した状態で、弾性材料製シート21が版胴1に巻き付けられて装着されることにより加工が施されるので、弾性材料製シート21の一端部221が固定部(載置部13、押止部14)に固定された状態で版胴1に巻き付けられるため、加工中における弾性材料製シート21のズレや脱落などを防止することができる。
押圧部34は、版胴1の軸方向に長いロールでなる押圧ロール341と、押圧ロール341の両端部を回転可能に支持するロール軸受342と、ロール軸受342を支持する軸受支持部343と、を備える。
押圧部34は、版胴1を挟んで版供給部35と対向する位置に配置され、各押圧ロール341の軸方向が版胴1の軸方向と平行となるように設けられている。
押圧ロール341は、ロール軸受342に回転可能に支持され、外周面の一部が版胴1の外周面に装着された弾性材料製シート21に当接して、版胴1の径方向内側へ向かって押圧することにより、印刷用版2となる弾性材料製シート21に第1加工としての曲げ加工がなされる。
ロール軸受342は、軸受支持部343を介して支柱321などに固定的に取付けられている。
この例では、押圧部34は、複数設けられており、版胴1の上方位置、中間位置、下方位置の3箇所に設けられている。
押圧部34によって弾性材料製シート21の複数個所が押圧されて曲げ加工が施されるので、版供給部35から供給されて版胴1に巻き付けられる弾性材料製シート21を、版胴1の外周面に密着させながら巻き付けることができ、期待する曲率の曲げ加工を施した弾性材料製シート21を得ることができる。
プレ加工装置3は、版胴1に装着された弾性材料製シート21の外周面(版装着面111)を、版胴1の径方向内側へ押圧する押圧部34を備え、押圧部34は、弾性材料製シート21が版胴1の外周面(版装着面111)に巻き付けられて装着された状態で版胴1が回転する際に、弾性材料製シート21の外周面(版装着面111)を押圧するので、回転する版胴1に巻き付けられながら弾性材料製シート21が押圧部34によって版胴1の径方向内側に向かって押圧されるため、より確実に弾性材料製シート21を版胴1の外周面(版装着面111)に沿った形状に成形することができ、精度の高い成形加工を行うことができる。
この例における弾性材料製シート21では、弾性材料製シート21の外周に形成された版部23が設けられている箇所と設けられていない箇所とで、その厚みが異なるため、押圧部34が、版胴1の径方向内外へ移動可能に構成されていると好ましい。
この例では、ロール軸受342の押圧ロール341が弾性材料製シート21に当接する側と対向する側に伸縮自在のスプリング344が設けられ、押圧ロール341は、版胴1の径方向内外に進退可能に構成される。
具体的には、版胴1が回転することによって弾性材料製シート21が版胴1に徐々に巻き付けられ、弾性材料製シート21に当接していた押圧ロール341が、版部23が設けられた箇所にかかると、版部23の厚み分だけ版胴1の径方向外側に押されて、弾性材料製シート21に当接していた押圧ロール341の面が版胴1の径方向外側に移動する。
その状態で版胴1が回転し続け、押圧ロール341の当接箇所が、版部23の形成されていない箇所にさしかかると、スプリング344の弾性力によって無くなった版部23の厚み分だけ版胴1の径方向内側に戻り、弾性材料製シート21に当接していた押圧ロール341の面が版胴1の径方向内側に移動する。
押圧部34は、弾性材料製シート21の厚みに応じて版胴1の径方向内外へ進退可能に構成されるので、画像パターンなどを有することにより部分的に厚みの異なる弾性材料製シート21の曲げ加工を施す際に、位置により異なる弾性材料製シート21の厚みに応じて押圧部34が版胴1の径方向内外へ進退しながら曲げ加工を施すことができるため、弾性材料製シート21の厚みの相違により形成された段差部分において、厚みのある部位に対して押圧部34による過剰な負荷がかかることを防止することができ、シワなどの不良が生じる虞がなくなる。
第1加工が施されて丸みを帯びた弾性材料製シート21は、第2加工を施すための円筒状成形装置が用いられるなどして、最終的に円筒状の印刷用版2に成形される。
印刷用版2の内径は、版装着装置に設けられたプレートシリンダの外径と略同等の寸法となるよう第2加工によって加工される。
円筒状成形装置4は、円筒状のシリンダー部材41を備え、例えば、第1加工において両端部221,222に曲率の異なる曲げ加工のなされた弾性材料製シート21をシリンダー部材41に巻き付け、シリンダー部材41に巻き付けた弾性材料製シート21を押え付けてシリンダー部材41に押圧固定し、弾性材料製シート21を円筒状に加工した後、その両端部221,222を接合するよう構成される。
円筒状成形装置4としては、このように、第1加工がなされた後に、第2加工によって所望の曲率を有する円筒状の印刷用版2を成形可能であればよく、既存の円筒状成形装置4などを適宜利用することが可能である。
図8,9に示すように、一例として、第2加工では、シリンダー部材41と、弾性材料製シート21を下方から押え付けてシリンダー部材41に固定する下方支持部42と、シリンダー部材41の軸方向長さと略同等の長さ寸法に設定され、シリンダー部材41の軸方向左右両側にそれぞれ1つずつ設けられたローラー部43と、シリンダー部材41の外周面に対して接離方向に可動可能な軸体44と、弾性材料製シートの両端部221,222を重ね合わせた状態で、シリンダー部材41の径方向外側から重ね合わせた両端部221,222を押圧する押付部45と、溶接棒を収容する溶接ガンなどを有する接合機46と、シリンダー部材41に巻き付けた弾性材料製シート21のスプリングバック(反発力)による広がりを抑止するためのストッパー部47と、弾性材料製シート21の位置決め用切欠部24が係合する位置決め用突部と、を備えた円筒状成形装置4が用いられる。
シリンダー部材41は、その外周面に弾性材料製シート21を巻き付けることで期待する内径寸法の印刷用版2を得るため、シリンダー部材41の外径が成形後の印刷用版2の内径と略同等の寸法に設定されている。
シリンダー部材41は、図8における下方側に、弾性材料製シート21に形成された位置決め用切欠部24が係合する位置決め用突部(図示なし)が形成されている。
下方支持部42は、シリンダー部材41の外周面に対して接離可能に上下動し、その上面421が、シリンダー部材41の外周面の曲率と同等に形成され、シリンダー部材41の外周面に当接するよう構成されている。
これにより、シリンダー部材41の外周に巻かれた弾性材料製シートを押え付ける際にも弾性材料製シートの変形などが生じることがない。
軸体44は、その基端部に可動部が設けられ、シリンダー部材41の外周面に対して接離方向に可動するよう構成されている。
軸体44の先端側には、伸縮自在の伸縮部441が設けられ、図8の破線で示すように、シリンダー部材41の外周面に沿って移動するよう構成されている。
ローラー部43は、その端部が枠体などに形成された湾曲孔431に遊嵌され、伸縮部441の伸縮動作に伴って、シリンダー部材41に装着された弾性材料製シート21の外周面に当接しながら湾曲孔431の範囲内で移動するよう構成されている。
ローラー部43は、弾性材料製シート21が巻き付けられたシリンダー部材41の下方から上方側にかけてシリンダー部材41の外周面に沿って湾曲孔431の範囲で移動し、シリンダー部材41の最上部を除いて弾性材料製シート21を圧接して加工する。
弾性材料製シート21をシリンダー部材41に取り付ける際、及び成形した印刷用版2をシリンダー部材41から取り外す際には、ローラー部43とシリンダー部の外周面との間に隙間を形成するために、ローラー部43を湾曲孔431の最下部位置まで移動させる。
押付部45は、例えば、断面L字状に形成されてなり、その下面が、重ね合わせた弾性材料製シート21の両端部221,222をシリンダー部材41の径方向外側から押圧する押付面となる。
押付面には、例えば、楕円形の貫通孔451が複数整列した状態で形成されている。
接合機46は、弾性材料製シート21の上方でシリンダー部材41の軸方向に移動可能に構成されている。
接合機46は、弾性材料製シート21の重ね合わせられた両端部221,222が押付部45によって押圧されて仮止めされた状態で、押付面の貫通孔451を介してスポット溶接などにより弾性材料製シートの両端部221,222を接合固定する。
このように構成されることにより、弾性材料製シートの端部221,222がずれるなどすることなく接合作業を行い易い。
ストッパー部47は、例えば、シリンダー部材41の軸方向に沿って伸びてなる板状部材であり、それぞれシリンダー部材41の軸方向両側に配置されている。
ストッパー部47は、例えば、シリンダー部材41の最上端よりもわずかに下方位置に設けられ、シリンダー部材41の外周面に対して水平方向に接離可能に構成される。
以下では、上述したプレ加工装置3及び円筒状成形装置4を用いて、弾性材料製シート21を円筒状の印刷用版2に成形する方法について説明する。
まず、図6A、図6B及び図7に基づいて、プレ加工装置3を用いて弾性材料製シート21に第1加工を施す方法について説明する。
尚、この例では、プレ加工装置3に設けられる版胴1として、その直径が約100mmのものが用いられる。
版部23となる樹脂層が片面に形成された長方形状の弾性材料製シート21の一方の長手方向端部に、位置決め用切欠部24を形成する。
この例では、弾性材料製シート21(版本体21)は、約187.9mm×約418mmの寸法のものが用いられ、版部23は、弾性材料製シート21の長手方向中心位置に対して左右非対称に設けられている。
尚、図示された弾性材料製シート21は、版部23が版本体21の長手方向中心位置に対して左右非対称となるよう設けられているが、これはあくまで本発明の構成を説明するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
具体的には、一端部221側の版部23は、弾性材料製シート21の長手方向中心位置から約88mmの長さ寸法で設けられ、他端部222側の版部23は、弾性材料製シート21の長手方向中心位置から約121mmの長さ寸法で設けられている。
弾性材料製シート21の他端部222側は、円筒状に成形する際に、他端部222が一端部221側の版部23に被さらないような長手方向長さをもって版部23が形成されるので、版胴1の固定部13,14(載置部13及び押止部14)に取付け固定された状態で版胴1に巻き付けられた際、弾性材料製シート21の他端部222が確実に一端部221側の版部23のない部分に重ねられる。
位置決め用切欠部24は、治具などに載置されて位置決め固定された状態で、所定の弾性材料製シート21の位置決め用切欠部24の形成位置(この例では、弾性材料製シート21の略中央部)にポンチを押し当て、ハンマーで叩くなどすることによって形成される。
弾性材料製シート21の長手方向端部における、位置決め用切欠部24と対向する側の位置には、位置指示部25が形成される。
位置指示部25は、弾性材料製シート21の長手方向端部の略中央部において、版部23となる樹脂層を二等辺三角形状に除去して形成される。
位置決め用切欠部24及び位置指示部25が形成された弾性材料製シート21は、プレ加工装置3に供給されて第1加工が施されることにより、両端部221,222の曲率が異なり、且つ全体にやや湾曲した形状に成形される。
弾性材料製シート21は、版部23となる樹脂層を上方に向けた状態で版供給部35から版胴1に供給され、その一端部221が版胴本体11の載置部13の当接部134に当接すると、弾性材料製シート21の供給を一旦停止させる。
この時、版胴1の上部に設けられた載置部13と押止部14の間は、弾性材料製シート21を挿入可能な程度に十分な間隔が設けられた状態、或いは、押止部14が版胴本体11から取り外された状態となっている。
弾性材料製シート21は、その一端部221が当接部134に当接した状態で、押止部14と係合部16が係合部材144を介して係合されて、載置部13と押止部14で挟持されることにより、一端部221側が版胴1に固定される。
弾性材料製シート21の一端部221側が版胴1に固定された状態で、図中の矢印で示す弾性材料製シート21を版胴1に巻き付ける方向(図6B(a)〜(c)では、紙面に向かって時計回り方向)に版胴1が回転して、版胴1の外周面に弾性材料製シート21が巻き付けられて装着される。
載置部13及び押止部14は、版胴1の外周面(版装着面111)よりも内側位置で弾性材料製シート21を固定するため、弾性材料製シート21の一端部221には、版胴1の外周面に巻き付けられる他端部222側よりも高加工度の曲げ加工が施される。
この例では、弾性材料製シート21の一端部221の曲げ加工を施す第1カール部132(湾曲部132)の曲率半径は30mmに設定され、他端部222の曲げ加工を施す第2カール部111,141(版装着面111,141)の曲率半径は50mm(版胴1の半径)に設定されている。
図示するように、第1カール部132は、弾性材料製シート21の一端部221の端部近傍には曲げ加工を施さず(平坦なまま)、一端部221側の端部よりも中央寄り(他端部222寄り)の部位に曲げ加工を施して、版胴1の曲率と等しい第2カール部111,141により曲げ加工された他端部222側よりも曲率の高い内向きのカールを形成するよう構成されている。
また、第2カール部111,141は、弾性材料製シート21の他端部222に曲げ加工を施すが、図示するように、曲げ加工が施された他端部222の端部近傍は、他端部222の端部に生じるスプリングバック(反発力)によって、若干元に戻り、版胴1の外周面から離間している。
尚、一端部221側の端部近傍を除く中央寄り(他端部222寄り)の部位にカールが形成されるように第1カール部132が設けられると、版胴1から取り外した弾性材料製シート21の両端部221,222が互いに接触する虞がなく、後の接合工程で両端部221,222を重ね易い或いは重ねた両端部221,222を押え易いため好ましいが、一端部221の端部の近傍にのみ曲げ加工を施すよう構成するのであってもよい。
また、他端部222側の曲げ加工については、他端部222側の端部全体に曲げ加工を施すよう構成されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、他端部222側の端部近傍を除く中央寄り(一端部221寄り)の部位に曲げ加工を施すよう構成されるのであってもよい。
版胴1の外周右半分の上部側、中間部、下部側の3カ所に設けられた各押圧部34が、それぞれ分散した位置で、版胴1に巻き付けられた弾性材料製シート21の外側から版胴1の径方向内側へ向かって押圧する。
版胴1は、押止部14を版胴本体11の上部に取り付けて組み合わされた構成であることから、版胴本体11と押止部14との継ぎ目において生じる僅かな段差等によって弾性材料製シート21の曲げ加工の不良が発生する虞を回避するため、版胴1の上部側に設けられる押圧部34は、当該継ぎ目にかからない位置に配置されている。
押圧部34は、弾性材料製シート21を版胴1に巻き付けている際に、版部23が設けられた箇所と設けられていない箇所とによる段差を有する部位に当接するが、版胴1の径方向内外に進退可能に構成されているため、段差に応じて押圧ロール341の当接位置が自動的に移動するので、弾性材料製シート21の段差による曲げ加工の不良が生じることがない。
弾性材料製シート21は、版胴1に巻き終えた状態で、一端部221及び他端部222が最大で、角度O=約95°の角度範囲で重なりが許容されるよう設定されている(図7参照)。
このようにして第1加工がなされると、弾性材料製シート21は、両端部221,222が異なる曲率で曲げ加工され、全体的にやや丸みを帯びた略円筒状に塑性変形される。
続いて、第1加工において略円筒状に形成された弾性材料製シート21は、円筒状成形装置4のシリンダー部材41の先端側から挿し込まれ、シリンダー部材41の外周に取り付けられて、第2加工が施される。
以下では、図8〜図10に基づいて、第1加工が施された弾性材料製シート21に対し、円筒状成形装置4を用いて第2加工を施す方法について説明する。
第1加工後の弾性材料製シート21の径は、円筒状に成形後の印刷用版2の内径の約1.2倍以上約3倍以下になるよう設定されているが、スプリングバック(反発力)を考慮して、プレ加工装置3の版胴1の直径(約100mm)は、円筒状成形装置4のシリンダー部材41の直径(約125.5mm)よりも径小なものを使用している。
弾性材料製シート21の一端部221側は、他端部222側よりも高加工度で加工されているので、高加工度で加工された一端部221が低加工度で加工された他端部222の下側に入り込んで重なり易くなり、シリンダー部材41に取付け易い。
弾性材料製シート21は、位置指示部25に基づいて位置決め用切欠部24の位置を確認されながら、位置決め用切欠部24がシリンダー部材41の位置決め用突部に嵌め込まれてシリンダー部材41に対して位置決めした状態で取り付けられる。
シリンダー部材41の下方には、弾性材料製シート21がシリンダー部材41に位置決めされると、下方支持部42を上昇させて弾性材料製シート21に当接させ、シリンダー部材41に押え付けるようにして弾性材料製シート21を固定する。
弾性材料製シート21は、位置決め用切欠部24が位置決め用突部に係合されていることにより、周方向へずれることがなく、更にシリンダー部材41の下方から押え付けられるよう固定されていることにより、軸方向へもずれるなどすることがない。
この時点では、弾性材料製シート21の両端部221,222は、未接合の遊端となっている。
弾性材料製シート21は、シリンダー部材41の下方側の左右両側で待機していたローラー部43が、上昇してシリンダー部材41の外周に沿って移動することにより円筒状に成形される。
例えば、ローラー部43は、シリンダー部材41の外周に巻き付けられた弾性材料製シート21に当接した状態で、シリンダー部材41の下方側からストッパー部47が設けられた手前まで、シリンダー部材41の外周に沿って徐々に上昇移動して弾性材料製シート21に第2加工を施し、弾性材料製シート21の形状が円筒状に近づいていく。
ローラー部43をストッパー部47の手前まで上昇させると、弾性材料製シートが元の形状に戻ろうとするスプリングバック(反発力)を抑えるため、円筒状成形装置に設けられたストッパー部47をシリンダー部材41に近接させて、シリンダー部材41の外周面に押え付けるようにして弾性材料製シート21の端部221,222側近傍を固定する。
この状態で、シリンダー部材41の上部に位置していた押付部45を下降させ、弾性材料製シート21の重なり合った両端部221,222を仮止め状態に押え付けた状態のままで、弾性材料製シート21の両端部221,222を接合する接合工程が行われる。
接合機46のガンは、弾性材料製シート21の上方でシリンダー部材41の軸方向に移動して、押付部45の貫通孔451を介してスポット溶接を施すことにより弾性材料製シート21の両端部221,222を接合する。
このように第1加工及び第2加工を経て、円筒状に成形された印刷用版2が得られる。
上述したように、弾性材料製シート21は、第1カール部132及び第2カール部141によってそれぞれ曲げ加工がなされた後、更に曲げ加工がなされ、弾性材料製シート21の両端部221,222が重ね合わせられて接合されることにより円筒状に成形されるので、段階的に曲げ加工が施されることにより、弾性材料製シート21にヒビなどの不良が生じる虞が低減し、各カール部により曲げ加工された一端部221及び他端部222が径方向において重なり合うように加工されるため、容易に接合作業ができる。
上述では、版本体21である弾性材料製シート21は、版部23となる樹脂層に位置決め用切欠部24及び位置指示部25が全て形成された状態でプレ加工装置3により加工されるよう説明したが、無論、版部23が形成される前の版本体21のみを曲げ加工することも可能な構成である。
また、弾性材料製シート21は、上述した素材のみでなく、その他の金属材料であっても適用可能である。
上述では、プレ加工装置3や円筒状成形装置4を用いて弾性材料製シート21を円筒状に加工するように説明したが、上述したプレ加工装置3や円筒状成形装置4は一例である。
プレ加工装置3は、少なくとも弾性材料製シート21の両端部221,222の曲げ加工が異なる曲率でなされるのであれば、その他の装置などを用いて弾性材料製シート21を円筒状に加工するのであってもよく、上述した構成に限定されるものではない。
例えば、上述したように、押止部14の版装着面141(第2カール部141)よりも高い曲率に設定された湾曲部132(第1カール部132)を設け、弾性材料製シート21が第1カール部132に固定された状態で版胴1に巻き付けられるよう構成されると弾性材料製シート21の巻き付け作業が容易であるので好ましいが、上述した円筒状成形装置4のようにシリンダー部材41の下方からシリンダー部材41の外周面に沿って上方へ弾性材料製シート21を押え付けるなどし、弾性材料製シート21を円筒状に成形する際に内側に入り込む側の端部側が高い曲率で曲げ加工されるよう構成するのであってもよい。
また、例えば、プレ加工装置3が、版胴1を備えず、少なくとも弾性材料製シート21の一端部221の曲げ加工を施す第1カール部132、及び弾性材料製シート21の他端部222に一端部221の曲率よりも低い曲率で曲げ加工を施す第2カール部141を備えた構成とし、その後、最終的に円筒状の印刷用版2が成形されるのであれば、第1加工後の弾性材料製シート21が、その中間部分に曲率を帯びないよう構成されるのであってもよい。
無論、円筒状の印刷用版2を得るまでの弾性材料製シート21の加工回数は、上述したものに限定されるものではなく、複数段階を経て弾性材料製シート21が円筒状に成形されるのであればよい。
上述では、第2加工において円筒状成形装置4を用いるよう説明したが、上述したプレ加工装置3に更に接合機46などが備えられ、弾性材料製シート21の第1加工後に略円筒状に形成された弾性材料製シート21が付け替えられるなどして接合工程が行われるのであってもよい。
以上説明したようなプレ加工方法は、金属製で長方形状の弾性材料製シート21を加工して円筒状の印刷用版2に成形する前に用いられるプレ加工装置3によるものであって、弾性材料製シート21の一端部221に曲げ加工を施す工程と、弾性材料製シート21の他端部222に、弾性材料製シート21の一端部221の曲率より低い曲率で曲げ加工を施す工程と、を備えるので、プレ加工装置3により弾性材料製シート21の両端部221,222に曲げ加工がなされた後に円筒状に成形加工されることにより、弾性材料製シート21にヒビなどの不良が生じる虞が低減し、高精度に円筒状の印刷用版2を成形することができる。
また、弾性材料製シート21の一端部221及び他端部222がそれぞれ異なる曲率で曲げ加工されるので、曲げ加工後に弾性材料製シート21をプレ加工装置3から取り外して円筒状に成形する際に、弾性材料製シート21の一端部221及び他端部222が予め径方向に重なり合うように位置しているため、両端部221,222が互いに接触するなどして作業性を低下させることがなく、両端部221,222を重ね合わせる作業が効率的にでき、円筒状の成形加工が容易になる。
また、以上説明したようなプレ加工装置3によっても、上述した効果と同様の効果を奏することは明らかである。
以上説明した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において具体的構成などを適宜変更設計できることは言うまでもない。