JP6607770B2 - イオン化方法、イオン化装置及び質量分析計 - Google Patents
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Description
前記軟X線は、前記噴霧口近傍に照射される、イオン化方法である。
≪1.イオン化方法≫
本実施の形態に係るイオン化方法は、質量分析(Mass spectrometry)に用いるものであり、当該質量分析の対象である試料を、イオン化法により荷電させた後、特定の圧力に制御された空間内にその試料を噴霧する、イオン化処理工程と、特定の圧力に制御された空間内で、イオン化処理工程で噴霧した試料に軟X線を照射し、試料分子イオンを得る、軟X線照射工程とを含む。
イオン化処理工程は、試料にイオン化のための前処理を施した後、その試料を噴霧する工程である。本工程により、試料の荷電エアロゾルを発生させることができる。
軟X線照射工程は、噴霧した試料に、0.124nm以上12.4nm以下の波長を有する軟X線を照射し、試料分子イオンを得る工程である。試料にイオン化の前処理を施し、荷電エアロゾルを生成させた後、さらにこの荷電エアロゾルに軟X線照射の処理を施すことで、試料の極性に関わらず、試料を効率良くイオン化することができる。
必須の態様ではないが、本実施の形態に係るイオン化方法は、例えば、試料分子イオンを、ドーナツ型電極等のイオン誘導装置を用いて当該イオン誘導装置近傍へ誘導する、イオン誘導工程を含むことが好ましい。このように、試料分子イオンをイオン誘導装置近傍へ誘導し、さらに質量分析のための装置へ効率的に誘導することで、試料分子イオンの損失を抑え、試料分子イオンを感度良く分析することができる。また、ドーナツ電極の正負の電圧を切り替えることによって正負それぞれの試料分子イオンを選択的に質量分析装置へ導くことができる。
必須の態様ではないが、本実施の形態に係るイオン化方法は、イオン化処理工程及び/又は軟X線照射工程がなされるイオン化室のうち、試料等の付着による汚れが生じた部分に特定の波長の軟X線を照射し、当該汚れを除去する洗浄工程を含むことが好ましい。イオン化法は、試料分子を破壊するものであり、使用に伴い、当該試料分子や破壊された分子によりイオン化室内に汚染が生じ得る。
必須の態様ではないが、本実施の形態に係るイオン化方法は、イオン化処理工程及び/又は軟X線照射工程の開始及び/又は停止を制御する、イオン化処理制御工程を含むことが好ましい。
また、必須の態様イオン化処理工程及び/又は軟X線照射工程における、イオン化のための前処理等の出力を制御する、イオン化処理出力制御工程を含むことが好ましい。
本実施の形態に係るイオン化装置は、質量分析(Mass spectrometry)に用いるものであり、内部の圧力が、0.5kPa以上300kPa以下である、イオン化室と、試料にイオン化のための前処理を施す、イオン化処理部と、試料をイオン化室に噴霧する、試料噴霧部と、試料に0.124nm以上12.4nm以下の波長を有する軟X線を照射する、軟X線照射部とを備える。
本実施の形態に係る質量分析計は、内部の圧力が、0.5kPa以上300kPa以下である、イオン化室と、試料にイオン化のための前処理を施す、イオン化処理部と、試料をイオン化室に噴霧する、試料噴霧部と、試料に0.124nm以上12.4nm以下の波長を有する軟X線を照射する、軟X線照射部と、質量分析部とを備える。
質量分析部としては、特に制限されるものではなく、具体的には、磁場型、四重極型、イオントラップ型、飛行時間型、イオンサイクロトロン型等の一般的なイオン分離装置を用いることができる。
本実施の形態に係るイオン化装置は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と接続し、LC/MS等として用いることができる。また、HPLC以外にも、例えば、キャピラリー電気泳動(CZE)、薄層クロマトグラフ(TLC)等を接続することができる。このように、任意のクロマトグラフィーを用いて、試料のMSスペクトル情報を同時に得ることができる。
以下では、本実施の形態に係る質量分析計の構成の一例として、イオン化処理部としてESIイオン源を用いた質量分析計について、図1を用いて具体的に説明する。
まず、X線出力窓とキャピラリー先端間の距離と、イオン化強度との関係を検討した。質量分析計のイオン取り込み口(オリフィス)の先端から、それぞれ、2.6cm、4.1cm、6.4cm、10.0cm、11.0cmの距離を隔てて、軟X線光源をこのオリフィスに向けて配置した。オリフィスを隔てて、軟X線光源と反対側に、瓶又はNMR用チューブに、試料として、N−Methylpyrrolidone(C5H9NO)を入れ静置し、自然気化させた。このようにして気化した試料に、大気圧下で軟X線を照射し、質量分析を行った。X線出力窓とキャピラリー先端との間の距離と、イオン化強度との関係を図3に示す。
図1に示す装置を構成し、以下の実施例1〜4及び比較例1〜2に従い、イオン化及び質量分析を行った。いずれの操作も、大気圧下で行った。ここで、ステンレス製中空状のESIキャピラリーの試料の噴霧方向と、軟X線の照射方向とは垂直となるよう配置されている。軟X線発生装置の出力窓は、ESIスプレイヤーの金属キャピラリー先端との距離を6.4cm以下の距離で配置されている。
低極性試料としてベンゼン30μlと、高極性試料としてメチルアルコール(MeOH)70μlとを混合した試料溶液を作製し、これをHPLC用のバイアル瓶に充填した。
低極性試料としてトルエン500μlと、MeOHで1ppmに調整したレセルピン500μlを混合した試料溶液を作製し、これをHPLC用のバイアル瓶に充填した。
無極性気体分子として窒素ガスを、ESIキャピラリー先端から噴霧した窒素ガスに、波長0.13〜0.41nmの軟X線を照射し、発生したイオンの検出に質量分析計を使用してデータ蓄積を行った。この際のESIキャピラリーの印加電圧は2000Vであった。このようにして得られたマススペクトルを図6に示す。
低極性試料としてトルエン500μlと、高極性試料としてMeOH500μlとを混合し、MeOHの50%トルエン溶液1mlを作製した。
試料のイオン化処理として、ESI法を単独で用いたこと以外、実施例4と同様の操作を行った。得られたマススペクトルを図8に示す。
試料のイオン化処理として、波長0.13〜0.41nmの軟X線照射を単独で行ったこと以外、実施例4と同様の操作を行った。得られたマススペクトルを図9に示す。
11,21 イオン化室
12 ESIスプレイヤー
13,23 軟X線発生装置
14 ドーナツ型電極
15,24 イオン導入口
16,25 質量分析装置
22 Nano ESIスプレイヤー
Claims (14)
- 質量分析に用いるイオン化方法であって、
0.5kPa以上300kPa以下の圧力条件下で、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、ナノエレクトロスプレーイオン化(NANO−ESI)、コールドスプレーイオン化(CSI)、DARTイオン化(Direct Analysis in Real Time)、サーモスプレーイオン化(TSP)、ソニックスプレーイオン化(SSI)、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)、レーザースプレーイオン化(LSI)、大気圧レーザーイオン化(AP−LDI)、大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン化(AP−MALDI)及び大気圧フリット赤外レーザーイオン化(AP−FRIT−IR−LDI)からなる群から選択される1種以上のイオン化法により荷電した試料を噴霧し、次いで、噴霧された前記試料に0.124nm以上12.4nm以下の波長を有する軟X線を照射し、イオン化された試料を得る、イオン化方法。 - 前記試料は、噴霧口から噴霧され、
前記軟X線は、前記噴霧口近傍に照射される、請求項1に記載のイオン化方法。 - 前記軟X線は、出力窓から照射され、
前記噴霧口は、前記出力窓との間の距離が10.0cm以下となるように配置される、請求項2に記載のイオン化方法。 - 前記イオン化法は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のイオン化方法。
- 前記エレクトロスプレーイオン化(ESI)における印加電圧は、1500V以上2400V以下である、請求項4に記載のイオン化方法。
- 前記軟X線の照射が、空気の雰囲気下で行われる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のイオン化方法。
- 前記軟X線の照射が、大気圧下で行われる、請求項6に記載のイオン化方法。
- 前記軟X線の照射が、不活性ガスの雰囲気下で行われる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のイオン化方法。
- ドーナツ型電極を用いて、前記イオン化された試料を質量分析計のイオン導入口に誘導する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のイオン化方法。
- 前記イオン化法及び/若しくは前記軟X線の照射の開始並びに/又は停止を制御する工程をさらに含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のイオン化方法。
- 前記イオン化法及び/又は前記軟X線の照射は、イオン化室でなされ、
前記イオン化室内の部位に、0.124nm以上12.4nm以下の波長の軟X線を照射する工程をさらに含む、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のイオン化方法。 - 質量分析に用いるイオン化装置であって、
内部の圧力が、0.5kPa以上300kPa以下である、イオン化室と、
エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、ナノエレクトロスプレーイオン化(NANO−ESI)、コールドスプレーイオン化(CSI)、DARTイオン化(Direct Analysis in Real Time)、サーモスプレーイオン化(TSP)、ソニックスプレーイオン化(SSI)、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)、レーザースプレーイオン化(LSI)、大気圧レーザーイオン化(AP−LDI)、大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン化(AP−MALDI)及び大気圧フリット赤外レーザーイオン化(AP−FRIT−IR−LDI)からなる群から選択される1種以上のイオン化法により荷電した試料をイオン化室に噴霧する、試料噴霧部と、
前記イオン化室内で、噴霧された前記試料に0.124nm以上12.4nm以下の波長を有する軟X線を照射してイオン化された試料を得る、軟X線照射部と、
を備えるイオン化装置。 - 前記試料は、試料噴射部が備える噴霧口から噴霧され、
前記軟X線照射部は、X線を照射する出力窓を有し、
前記出力窓が、前記噴霧口近傍に向けられている、請求項12に記載のイオン化装置。 - 内部の圧力が、0.5kPa以上300kPa以下である、イオン化室と、
エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、ナノエレクトロスプレーイオン化(NANO−ESI)、コールドスプレーイオン化(CSI)、DARTイオン化(Direct Analysis in Real Time)、サーモスプレーイオン化(TSP)、ソニックスプレーイオン化(SSI)、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)、レーザースプレーイオン化(LSI)、大気圧レーザーイオン化(AP−LDI)、大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン化(AP−MALDI)及び大気圧フリット赤外レーザーイオン化(AP−FRIT−IR−LDI)からなる群から選択される1種以上のイオン化法により荷電した試料をイオン化室に噴霧する、試料噴霧部と、
前記イオン化室内で、噴霧された前記試料に0.124nm以上12.4nm以下の波長を有する軟X線を照射してイオン化された試料を得る、軟X線照射部と、
前記イオン化された試料の質量を分析する、質量分析部と、
を備える質量分析計。
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