JP6607204B2 - アルカン合成能を有する組換え微生物及びアルカンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばバイオディーゼル燃料に使用できるアルカンを合成できる組換え微生物及びこれを用いたアルカンの製造方法に関する。
アルカンは、石油に含まれており分留によって精製され、様々な用途に利用される。また、アルカンは、化学工業における原料物質として広く利用されるのみならず、石油から得られるディーゼル燃料の主成分でもある。近年、藍藻由来のアシルACPレダクターゼ遺伝子及びデカルボニラーゼ遺伝子を大腸菌で共発現させ、軽油成分であるアルカンを発酵生産する技術が開発されている(特許文献1)。
また、アルカン合成のキイ酵素であるデカルボニラーゼは活性にフェレドキシンとフェレドキシンレダクターゼが必要なことが報告されており(非特許文献1)、サッカロマイセス・セルビシエでアルカンを合成する際にはデカルボニラーゼ遺伝子だけでなく、大腸菌由来のフェレドキシン遺伝子とフェレドキシンレダクターゼ遺伝子の共発現が必要なことが報告されている(非特許文献2)。しかし、非特許文献2によれば、アルカン生産量は3μg/g-dry cell程度である。このときサッカロマイセス・セルビシエはフルグロースのO.D.600nm=20程度であり、乾燥菌体量は4g-drycell/L程度である。このことから計算すると、非特許文献2に記載された方法では、生産量は12μg/L程度と低いことが理解できる。
さらに、特許文献2では、一例として、アルカン合成能を獲得した組換え酵母(組換えサッカロマイセス・セルビシエ)に対して、サッカロマイセス・セルビシエ由来のフェレドキシン遺伝子及びサッカロマイセス・セルビシエ由来フェレドキシンレダクターゼを導入することで、アルカン合成能が向上することが開示されている。また、特許文献2の図10には、大腸菌のフェレドキシン及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を大腸菌でアシル-ACPレダクターゼとデカルボニラーゼと共に発現させた時のアルカン生産量を示している。特許文献2によれば、フェレドキシン及びフェレドキシンレダクターゼを導入しない場合のアルカン生産量を100とすると、これらを導入したものは100以下であり、フェレドキシン及びフェレドキシンレダクターゼを共発現させてもアルカンの生産性を向上させる効果は見られない。
US Patent No. 8,846,371 WO 2013/024527
Science, Vol. 329, p. 559-562, (2010) Biotechnology Bioengineering, Vol. 112, No. 6, p. 1275-1279, (2015)
そこで、本発明は、上述したような実情に鑑み、藍藻由来のアシルACPレダクターゼ遺伝子及びデカルボニラーゼ遺伝子を利用し、アルカン合成能が著しく優れた組換え微生物及びこれを用いることで生産性に優れたアルカンの製造方法を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、藍藻由来のアシルACPレダクターゼ遺伝子及びデカルボニラーゼ遺伝子を利用したアルカン合成反応系において、藍藻由来の複数のフェレドキシン遺伝子及び複数のフェレドキシンレダクターゼ遺伝子のうち特定の遺伝子を組み合わせることでアルカン合成能が著しく向上することを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)藍藻由来のアシルACPレダクターゼ遺伝子及びデカルボニラーゼ遺伝子を外来遺伝子として有する組換え微生物において、
藍藻由来の4種類のフェレドキシン遺伝子をそれぞれFD遺伝子1、FD遺伝子2、FD遺伝子3及びFD遺伝子4とし、藍藻由来の3種類のフェレドキシンレダクターゼ遺伝子をそれぞれFDR遺伝子1、FDR遺伝子2及びFDR遺伝子3としたときに、以下の組み合わせでフェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を有することを特徴とする、アルカン合成能を有する組換え微生物。
・FD遺伝子1及びFDR遺伝子1の組み合わせ
・FD遺伝子1及びFDR遺伝子2の組み合わせ
・FD遺伝子2及びFDR遺伝子1の組み合わせ
・FD遺伝子2及びFDR遺伝子2の組み合わせ
・FD遺伝子2及びFDR遺伝子3の組み合わせ
・FD遺伝子3及びFDR遺伝子2の組み合わせ
・FD遺伝子3及びFDR遺伝子3の組み合わせ
・FD遺伝子4及びFDR遺伝子1の組み合わせ
・FD遺伝子4及びFDR遺伝子2の組み合わせ
FD遺伝子1は[a1]又は[b1]のタンパク質をコードし、
[a1]配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質
[b1]配列番号2のアミノ酸配列に対して61.2%より高い同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンとして機能するタンパク質
FD遺伝子2は[a2]又は[b2]のタンパク質をコードし、
[a2]配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質
[b2]配列番号4のアミノ酸配列に対して60%より高い同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンとして機能するタンパク質
FD遺伝子3は[a3]又は[b3]のタンパク質をコードし、
[a3]配列番号6のアミノ酸配列を有するタンパク質
[b3]配列番号6のアミノ酸配列に対して62.9%より高い同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンとして機能するタンパク質
FD遺伝子4は[a4]又は[b4]のタンパク質をコードし、
[a4]配列番号8のアミノ酸配列を有するタンパク質
[b4]配列番号8のアミノ酸配列に対して62.3%より高い同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンとして機能するタンパク質
FDR遺伝子1は[c1]又は[d1]のタンパク質をコードし、
[c1]配列番号10のアミノ酸配列を有するタンパク質
[d1]配列番号10のアミノ酸配列に対して60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質
FDR遺伝子2は[c2]又は[d2]のタンパク質をコードし、
[c2]配列番号12のアミノ酸配列を有するタンパク質
[d2]配列番号12のアミノ酸配列に対して60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質
FDR遺伝子3は[c3]又は[d3]のタンパク質をコードし、
[c3]配列番号14のアミノ酸配列を有するタンパク質
[d3]配列番号14のアミノ酸配列に対して60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質
(2) 上記藍藻由来のデカルボニラーゼ遺伝子は以下の[e]又は[f]のタンパク質をコードすることを特徴とする(1)記載の組換え微生物。
[e]配列番号16のアミノ酸配列を有するタンパク質
[f]配列番号16のアミノ酸配列に対して60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、デカルボニラーゼ活性を有するタンパク質
(3) 上記藍藻由来のアシルACPレダクターゼ遺伝子は以下の[g]又は[h]のタンパク質をコードすることを特徴とする(1)記載の組換え微生物。
[g]配列番号18のアミノ酸配列を有するタンパク質
[h]配列番号18のアミノ酸配列に対して60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、アシルACPレダクターゼ活性を有するタンパク質
(4) 大腸菌又はKlebsiella属細菌を宿主とすることを特徴とする(1)記載の組換え微生物。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の組換え微生物を培養する工程を含むアルカンの製造方法。
(6) 上記組換え微生物を培養する培地よりアルカンを回収する工程を更に含むことを特徴とする(5)記載のアルカンの製造方法。
(7) 上記組換え微生物を培養する培地よりアルカンを回収し、回収したアルカンを精製する工程を更に含むことを特徴とする(5)記載のアルカンの製造方法。
(8) 炭素数9〜20のアルカンを製造することを特徴とする(5)記載のアルカンの製造方法。
本発明よれば、藍藻由来のアシルACPレダクターゼ遺伝子及びデカルボニラーゼ遺伝子を外来遺伝子として有する組換え微生物における、アルカン合成能を大幅に向上させることができる。すなわち、本発明に係る組換え微生物は、藍藻由来のアシルACPレダクターゼ遺伝子及びデカルボニラーゼ遺伝子を外来遺伝子として有する従来の組換え微生物と比較して、優れたアルカン合成能を有する。したがって、本発明に係る組換え微生物を使用することによって、微生物を利用したアルカン合成系におけるアルカン生産性を大幅に向上させることができ、アルカン製造における大幅なコストダウンが可能となる。
YP_001865390についてコドンを最適化して設計した人工遺伝子の塩基配列を示す図である。 YP_001866231についてコドンを最適化して設計した人工遺伝子の塩基配列を示す図である。 YP_001868825についてコドンを最適化して設計した人工遺伝子の塩基配列を示す図である。 YP_001864061についてコドンを最適化して設計した人工遺伝子の塩基配列を示す図である。 YP_001864105についてコドンを最適化して設計した人工遺伝子の塩基配列を示す図である。 YP_001864826についてコドンを最適化して設計した人工遺伝子の塩基配列を示す図である。 YP_001865513についてコドンを最適化して設計した人工遺伝子の塩基配列を示す図である。 YP_001867060についてコドンを最適化して設計した人工遺伝子の塩基配列を示す図である。 YP_001865513bについてコドンを最適化して設計した人工遺伝子の塩基配列を示す図である。 YP_001866231bについてコドンを最適化して設計した人工遺伝子の塩基配列を示す図である。 菌株No.2〜17について各アルカンの生産量をGC/MSにより測定し、平均値で表した結果(培養2日目)を示す特性図である。 菌株No.2〜17について各アルカンの生産量をGC/MSにより測定し、平均値で表した結果(培養3日目)を示す特性図である。 菌株No.2〜17についてアルカンの生産量をGC/MSにより測定し、アルカンの総量を平均値で表した結果(培養2日目)を示す特性図である。 菌株No.2〜17についてアルカンの生産量をGC/MSにより測定し、アルカンの総量を平均値で表した結果(培養3日目)を示す特性図である。 FDR2/Fd7の組み合わせを導入したKlebsiella sp. 100048株についてアルカン生産量を測定した結果を示す特性図である。
以下、本発明を図面及び実施例を用いてより詳細に説明する。
本発明は、藍藻由来のアシルACPレダクターゼ遺伝子及びデカルボニラーゼ遺伝子を外来遺伝子として有する組換え微生物であって、特定の組み合わせのフェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を有する組換え微生物である。フェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を特定の組み合わせで有する組換え微生物は、フェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を異なる組み合わせで有する組換え微生物と比較してアルカン合成能が高いといった特徴を有する。
<フェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子の組み合わせ>
[フェレドキシン遺伝子]
フェレドキシンとは、内部に鉄-硫黄クラスター(Fe-Sクラスター)を含む鉄硫黄タンパク質であり、電子伝達体として機能するタンパク質である。上述した特定の組み合わせに用いることができるフェレドキシン遺伝子は、藍藻が有する多くのフェレドキシン遺伝子から選ばれる4種類のフェレドキシン遺伝子である。これら4種類のフェレドキシン遺伝子をそれぞれFD遺伝子1、FD遺伝子2、FD遺伝子3及びFD遺伝子4と称する。
FD遺伝子1は[a1]又は[b1]のタンパク質をコードする遺伝子である。
[a1]配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質
[b1]配列番号2のアミノ酸配列に対して61.2%より高い同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンとして機能するタンパク質
なお、配列番号2のアミノ酸配列は、Nostoc punctiforme PCC 73102由来のフェレドキシン2Fe-2Sのアミノ酸配列として登録されている(アクセッション番号:YP_001864105(又はWP_012407188))。配列番号2のアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号1に示す。
FD遺伝子2は[a2]又は[b2]のタンパク質をコードする遺伝子である。
[a2]配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質
[b2]配列番号4のアミノ酸配列に対して60%より高い同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンとして機能するタンパク質
なお、配列番号4のアミノ酸配列は、Nostoc punctiforme PCC 73102由来のフェレドキシン2Fe-2Sのアミノ酸配列として登録されている(アクセッション番号:YP_001864826(又はWP_012407904))。配列番号4のアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号3に示す。
FD遺伝子3は[a3]又は[b3]のタンパク質をコードする遺伝子である。
[a3]配列番号6のアミノ酸配列を有するタンパク質
[b3]配列番号6のアミノ酸配列に対して62.9%より高い同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンとして機能するタンパク質
なお、配列番号6のアミノ酸配列は、Nostoc punctiforme PCC 73102由来のフェレドキシン2Fe-2Sのアミノ酸配列として登録されている(アクセッション番号:YP_001865513(又はWP_012408585))。配列番号6のアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号5に示す。
FD遺伝子4は[a4]又は[b4]のタンパク質をコードする遺伝子である。
[a4]配列番号8のアミノ酸配列を有するタンパク質
[b4]配列番号8のアミノ酸配列に対して62.3%より高い同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンとして機能するタンパク質
なお、配列番号8のアミノ酸配列は、Nostoc punctiforme PCC 73102由来のフェレドキシン2Fe-2Sのアミノ酸配列として登録されている(アクセッション番号:YP_001867060(又はWP_012410088))。配列番号8のアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号7に示す。
これら4種類のフェレドキシン遺伝子(FD遺伝子1、FD遺伝子2、FD遺伝子3及びFD遺伝子4)以外にも、Nostoc punctiforme PCC 73102由来のフェレドキシン遺伝子としては、アクセッション番号YP_001864061(又はWP_012407144)として登録されたフェレドキシン4Fe-4Sをコードする遺伝子(以下、FD遺伝子5と称す)が知られている。FD遺伝子5は配列番号20のアミノ酸配列をコードする。配列番号20のアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号19に示す。
このFD遺伝子5がコードするフェレドキシンとFD遺伝子1がコードするフェレドキシンとは61.2%の同一性を有し、FD遺伝子5がコードするフェレドキシンとFD遺伝子2がコードするフェレドキシンとは53.8%の同一性を有し、FD遺伝子5がコードするフェレドキシンとFD遺伝子3がコードするフェレドキシンとは62.9%の同一性を有し、FD遺伝子5がコードするフェレドキシンとFD遺伝子4がコードするフェレドキシンとは62.3%の同一性を有している。
また、FD遺伝子1としては、配列番号2に示すアミノ酸配列に対して70%以上の同一性、好ましくは80%以上の同一性、より好ましくは90%以上の同一性、更に好ましくは95%の同一性、最も好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなりフェレドキシンとして機能するタンパク質をコードする遺伝子でも良い。FD遺伝子2としては、配列番号4に示すアミノ酸配列に対して70%以上の同一性、好ましくは80%以上の同一性、より好ましくは90%以上の同一性、更に好ましくは95%の同一性、最も好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなりフェレドキシンとして機能するタンパク質をコードする遺伝子でも良い。FD遺伝子3としては、配列番号6に示すアミノ酸配列に対して70%以上の同一性、好ましくは80%以上の同一性、より好ましくは90%以上の同一性、更に好ましくは95%の同一性、最も好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなりフェレドキシンとして機能するタンパク質をコードする遺伝子でも良い。FD遺伝子4としては、配列番号8に示すアミノ酸配列に対して70%以上の同一性、好ましくは80%以上の同一性、より好ましくは90%以上の同一性、更に好ましくは95%の同一性、最も好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなりフェレドキシンとして機能するタンパク質をコードする遺伝子でも良い。
同一性の値は、BLASTアルゴリズムを実装したBLASTNやBLASTXプログラムにより算出することができる(デフォルトの設定)。なお、同一性の値は、一対のアミノ酸配列をペアワイズ・アライメント分析した際に完全に一致するアミノ酸残基を算出し、比較した全アミノ酸残基中の上記残基数の割合として算出される。
また、FD遺伝子1、FD遺伝子2、FD遺伝子3及びFD遺伝子4としては、それぞれ、配列番号2、4、6及び8に示すアミノ酸配列をコードするものに限定されず、配列番号2、4、6又は8に示すアミノ酸配列に対して、1〜10個のアミノ酸、好ましくは1〜8個のアミノ酸、より好ましくは1〜6個のアミノ酸、更に好ましくは1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなりフェレドキシンとして機能するタンパク質をコードする遺伝子でも良い。
さらに、FD遺伝子1、FD遺伝子2、FD遺伝子3及びFD遺伝子4としては、それぞれ配列番号1、3、5及び7に示す塩基配列からなるものに限定されず、配列番号1、3、5又は7に示す塩基配列からなるDNAの相補鎖の全部又は一部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフェレドキシンとして機能するタンパク質をコードするものでもよい。ここでいう「ストリンジェントな条件」とはいわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味し、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual(Third Edition)を参照して適宜決定することができる。具体的には、サザンハイブリダイゼーションの際の温度や溶液に含まれる塩濃度、及びサザンハイブリダイゼーションの洗浄工程の際の温度や溶液に含まれる塩濃度によりストリンジェンシーを設定することができる。
なお、配列番号2、4、6及び8に示すアミノ酸配列に対して所定のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列をコードする塩基配列や、配列番号1、3、5及び7に示す塩基配列と異なる塩基配列からなるDNAを作製する方法としては、特に限定することなく、従来公知の手法を適宜使用することができる。例えば、部位特異的突然変異誘発方法を使用して、所定の塩基を置換することができる。部位特異的突然変異誘発方法としては、例えばT. クンケル(Kunkel)の部位特異的変異導入法(Kunkel, T. A. Proc. Nati. Acad. Sci. U. S. A. 82, 488-492 (1985))、Gapped duplex法等が挙げられる。また、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutan-K(宝酒造社製)やMutan-G(宝酒造社製))などを用いて、あるいは、宝酒造社製のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異を導入することもできる。
一旦、フェレドキシン遺伝子の塩基配列が特定できれば、定法に従って当該遺伝子を単離することができる。例えば、特定した塩基配列に基づいてフェレドキシン遺伝子を全合成しても良いし、特定した塩基配列に基づいてプライマーを設計し、Nostoc punctiforme PCC 73102等のゲノムを鋳型として当該プライマーを用いたPCRにより目的とするフェレドキシン遺伝子を単離することもできる。
なお、配列番号2、4、6及び8に示すアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有するタンパク質がフェレドキシンとして機能するかは、定法に従って検証することができる。例えば、対象のタンパク質を精製し、当該タンパク質がNADP+からNADPHを生産する場合にはフェレドキシンとして機能すると判断することができる。
[フェレドキシンレダクターゼ遺伝子]
フェレドキシンレダクターゼ遺伝子は、フェレドキシン-NADP+レダクターゼ(ferredoxin-NADP+ reductase、FNR)をコードする遺伝子である。上述した特定の組み合わせに用いることができるフェレドキシンレダクターゼ遺伝子は、藍藻が有する多くのフェレドキシンレダクターゼ遺伝子から選ばれる3種類のフェレドキシンレダクターゼ遺伝子である。これら3種類のフェレドキシン遺伝子をそれぞれFDR遺伝子1、FDR遺伝子2及びFDR遺伝子3と称す。
FDR遺伝子1は[c1]又は[d1]のタンパク質をコードする遺伝子である。
[c1]配列番号10のアミノ酸配列を有するタンパク質
[d1]配列番号10のアミノ酸配列に対して60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質
なお、配列番号10のアミノ酸配列は、Nostoc punctiforme PCC 73102由来のFAD依存性ピリジンヌクレオチド-ジスルフィド酸化還元酵素のアミノ酸配列として登録されている(アクセッション番号:YP_001865390(又はWP_012408465))。配列番号10のアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号9に示す。
FDR遺伝子2は[c2]又は[d2]のタンパク質をコードする遺伝子である。
[c2]配列番号12のアミノ酸配列を有するタンパク質
[d2]配列番号12のアミノ酸配列に対して60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質
なお、配列番号12のアミノ酸配列は、Nostoc punctiforme PCC 73102由来の酸化還元酵素FAD/NAD(P)結合サブユニットのアミノ酸配列として登録されている(アクセッション番号:YP_001866231(又はWP_012409282))。配列番号12のアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号11に示す。
FDR遺伝子3は[c3]又は[d3]のタンパク質をコードする遺伝子である。
[c3]配列番号14のアミノ酸配列を有するタンパク質
[d3]配列番号14のアミノ酸配列に対して60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質
なお、配列番号12のアミノ酸配列は、Nostoc punctiforme PCC 73102由来のフィコシアノビリン:フェレドキシンオキシドレダクターゼのアミノ酸配列として登録されている(アクセッション番号:YP_001868825(又はWP_012411826))。配列番号14のアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号13に示す。
また、FDR遺伝子1としては、配列番号10に示すアミノ酸配列に対して70%以上の同一性、好ましくは80%以上の同一性、より好ましくは90%以上の同一性、更に好ましくは95%の同一性、最も好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなりフェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質をコードする遺伝子でも良い。FDR遺伝子2としては、配列番号12に示すアミノ酸配列に対して70%以上の同一性、好ましくは80%以上の同一性、より好ましくは90%以上の同一性、更に好ましくは95%の同一性、最も好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなりフェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質をコードする遺伝子でも良い。FDR遺伝子3としては、配列番号14に示すアミノ酸配列に対して70%以上の同一性、好ましくは80%以上の同一性、より好ましくは90%以上の同一性、更に好ましくは95%の同一性、最も好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなりフェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質をコードする遺伝子でも良い。
同一性の値は、BLASTアルゴリズムを実装したBLASTNやBLASTXプログラムにより算出することができる(デフォルトの設定)。なお、同一性の値は、一対のアミノ酸配列をペアワイズ・アライメント分析した際に完全に一致するアミノ酸残基を算出し、比較した全アミノ酸残基中の上記残基数の割合として算出される。
さらに、FDR遺伝子1、FDR遺伝子2及びFDR遺伝子3としては、配列番号10、12及び14に示すアミノ酸配列をコードするものに限定されず、配列番号10、12又は14に示すアミノ酸配列に対して、1〜50個のアミノ酸、好ましくは1〜40個のアミノ酸、より好ましくは1〜30個のアミノ酸、更に好ましくは1〜20個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなりフェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質をコードする遺伝子でも良い。
さらにまた、FDR遺伝子1、FDR遺伝子2及びFDR遺伝子3としては、配列番号9、11及び13に示す塩基配列からなるものに限定されず、配列番号9、11又は13に示す塩基配列からなるDNAの相補鎖の全部又は一部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質をコードするものでもよい。ここでいう「ストリンジェントな条件」とはいわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味し、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual(Third Edition)を参照して適宜決定することができる。具体的には、サザンハイブリダイゼーションの際の温度や溶液に含まれる塩濃度、及びサザンハイブリダイゼーションの洗浄工程の際の温度や溶液に含まれる塩濃度によりストリンジェンシーを設定することができる。
なお、配列番号10、12及び14に示すアミノ酸配列に対して所定のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列をコードする塩基配列や、配列番号9、11及び13に示す塩基配列と異なる塩基配列からなるDNAを作製する方法としては、特に限定することなく、従来公知の手法を適宜使用することができる。例えば、部位特異的突然変異誘発方法を使用して、所定の塩基を置換することができる。部位特異的突然変異誘発方法としては、例えばT. クンケル(Kunkel)の部位特異的変異導入法(Kunkel, T. A. Proc. Nati. Acad. Sci. U. S. A. 82, 488-492 (1985))、Gapped duplex法等が挙げられる。また、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutan-K(宝酒造社製)やMutan-G(宝酒造社製))などを用いて、あるいは、宝酒造社製のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異を導入することもできる。
一旦、フェレドキシンレダクターゼ遺伝子の塩基配列が特定できれば、定法に従って当該遺伝子を単離することができる。例えば、特定した塩基配列に基づいて所定の生物由来のフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を全合成しても良いし、特定した塩基配列に基づいてプライマーを設計し、所定の生物ゲノムを鋳型として当該プライマーを用いたPCRによりフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を単離することもできる。
なお、配列番号10、12及び14に示すアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有するタンパク質がフェレドキシンレダクターゼとして機能するかは、定法に従って検証することができる。例えば、対象のタンパク質を精製し、当該タンパク質が還元型フェレドキシン及びNADP+から酸化型フェレドキシン及びNADPHを生産する場合にはフェレドキシンレダクターゼとして機能すると判断することができる。
[フェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子の組み合わせ]
上述したフェレドキシン遺伝子(FD遺伝子1〜4)及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子(FDR遺伝子1〜3)の組み合わせは、以下の9通りである。
・FD遺伝子1及びFDR遺伝子1の組み合わせ
・FD遺伝子1及びFDR遺伝子2の組み合わせ
・FD遺伝子2及びFDR遺伝子1の組み合わせ
・FD遺伝子2及びFDR遺伝子2の組み合わせ
・FD遺伝子2及びFDR遺伝子3の組み合わせ
・FD遺伝子3及びFDR遺伝子2の組み合わせ
・FD遺伝子3及びFDR遺伝子3の組み合わせ
・FD遺伝子4及びFDR遺伝子1の組み合わせ
・FD遺伝子4及びFDR遺伝子2の組み合わせ
以上の9通りの組み合わせのいずれかを有する組換え微生物は、いずれの組み合わせも有しない微生物(例えば、異なる組み合わせを有する組換え微生物)と比較して優れたアルカン生産能を有することとなる。
特に、上記9通りの組み合わせのうち、FD遺伝子3及びFDR遺伝子2の組み合わせ、FD遺伝子2及びFDR遺伝子3の組み合わせ、又はFD遺伝子4及びFDR遺伝子2の組み合わせを有する組換え微生物については、他の組み合わせを有する組換え微生物と比較してより優れたアルカン生産能を示す。さらに、FD遺伝子3及びFDR遺伝子2の組み合わせを有する組換え微生物は、最も優れたアルカン生産能を示す。
なお、Nostoc punctiforme PCC 73102由来のフェレドキシン遺伝子のうちFD遺伝子5については、フェレドキシンレダクターゼ遺伝子(FDR遺伝子1〜3)のいずれと組み合わせても上述したアルカン生産能向上効果はない。
<組換え微生物>
本発明において、上述したフェレドキシン遺伝子やフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を導入する微生物は、アルカン合成能を有する微生物又はアルカン合成能を付与された組換え微生物である。
アルカン合成能を有する微生物としては、Synechococcus elongatus PCC7942、S. elongatus PCC6301、Synechocystis sp. PCC6803、Prochlorococcus marinus CCMP1986、Anabaena variabilis ATCC29413、Nostoc punctiforme PCC73102、Gloeobacter violaceus PCC7421、Nostoc sp. PCC7120、Cyanothece sp. PCC7425及びCyanothece sp. ATCC51142を挙げることができる(参考:Science 30 July 2010. Vol. 329, No. 5991, pp. 559-562)。
また、アルカン合成能を付与された組換え微生物としては、上記のアルカン合成能を有する微生物より単離したアルカン合成酵素遺伝子を導入した組換え微生物を挙げることができる。例えば、アルカン合成酵素遺伝子としては、Nostoc sp. ATCC27347(PCC7120)から単離したalkS遺伝子、Science 30 July 2010. Vol. 329, No. 5991, pp. 559-562及びWO 2009/140695に記載の遺伝子を使用することができる。より具体的には、例えば、Nostoc punctiforme PCC73102、Synechococcus elongates PCC7942、Synechocystis sp. PCC6803、Cyanothece sp. ATCC51142、Acaryochlloris marina MBIC11017、Gleobacter violaceus PCC7421及びProchlorococcus marinus str. MIT9303から単離したアルカン合成酵素遺伝子等を使用することができる。
ここで、アルカン合成酵素遺伝子とは、Science 30 July 2010. Vol. 329, No. 5991, pp. 559-562に記載されるように、デカルボニラーゼ遺伝子及びアシルACPレダクターゼ遺伝子を含む意味であってもよい。
デカルボニラーゼ遺伝子としては、[1]Nostoc punctiformeのNpun_R1711に代表されるデカルボニラーゼ(上記Science)、[2]アルデヒドデヒドロゲナーゼ類縁のデカルボニラーゼ(特許第5867586号)、[3]シロイヌナズナのCer1遺伝子に代表される長鎖アルカン合成酵素(Plant Cell, 24, 3106-3118, 2012)及び[4]ショウジョウバエのCYP4G1遺伝子に代表されるP450系のアルカン合成酵素(PNAS, 109, 37, 14858-14863, 2012)の4種類を挙げることができる。
より具体的に上記[1]については、Nostoc punctiformeのNpun_R0380(Npun_R1711のパラログ)、Nostoc sp.のNos7524_4304、Anabaena cylindricaのAnacy_3389、Anabaena azollaeのAazo_3371、Cylindrospermum stagnaleのCylst_0697、Gloeocapsa sp.のGlo7428_0150、Calothrix sp.のCal7507_5586、Fischerella sp.のFIS3754_06310、Microcoleus sp.のMic7113_4535、Chroococcidiopsis thermalisのChro_1554、Geitlerinema sp.のGEI7407_1564、Cyanothece sp.のCyan8802_0468等を挙げることができる。
上記[2]については、Escherichia coli K-12 W3110由来のBAE77705、BAA35791、BAA14869、BAA14992、BAA15032、BAA16524、BAE77705、BAA15538及びBAA15073;Pseudomonas putida_F1由来のYP_001268218、YP_001265586、YP_001267408、YP_001267629、YP_001266090、YP_001270490、YP_001268439、YP_001267367、YP_001267724、YP_001269548、YP_001268395、YP_001265936、YP_001270470、YP_001266779及びYP_001270298;Bacillus subtilis 168株由来のNP_388129、NP_389813、NP_390984、NP_388203、NP_388616、NP_391658、NP_391762、NP_391865及びNP_391675;Corynebacterium glutamicum ATCC13032由来のNP_599351、NP_599725、NP_601988、NP_599302、NP_601867及びNP_601908;Lactobacillus reuteri DSM20016由来のYP_001270647;Saccharomyces cerevisiae由来のNP_010996、NP_011904、NP_015264、NP_013828、NP_009560、NP_015019、NP_013893、NP_013892及びNP_011902;Candida tropicalis MYA-3404由来のXP_002548035、XP_002545751、XP_002547036、XP_002547030、XP_002550712、XP_002547024、XP_002550173、XP_002546610及びXP_002550289;Debaryomyces hansenii CBS767由来のXP_460395、XP_457244、XP_457404、XP_457750、XP_461954、XP_462433、XP_461708及びXP_462528;Pichia pastoris GS115由来のXP_002489360、XP_002493450、XP_002491418、XP_002493229、XP_002490175、XP_002491360及びXP_002491779;Schizosaccharomyces pombe由来のNP_593172、NP_593499、NP_594582
Aspergillus oryzae RIB40由来のXP_001822148、XP_001821214、XP_001826612、XP_001817160、XP_001817372、XP_001727192、XP_001826641、XP_001827501、XP_001825957、XP_001822309、XP_001727308、XP_001818713、XP_001819060、XP_001823047、XP_001817717及びXP_001821011;Zea mays由来のNP_001150417、NP_001105047、NP_001147173、NP_001169123、NP_001105781、NP_001157807、NP_001157804、NP_001105891、NP_001105046、NP_001105576、NP_001105589、NP_001168661、NP_001149126及びNP_001148092;Arabidopsis thaliana由来のNP_564204、NP_001185399、NP_178062、NP_001189589、NP_566749、NP_190383、NP_187321、NP_190400、NP_001077676及びNP_175812;Drosophila melanogaster由来のNP_733183、NP_609285、NP_001014665、NP_649099、NP_001189159、NP_610285及びNP_610107;Rattus norvegicus由来のNP_001006999、XP_001067816、XP_001068348、XP_001068253、NP_113919、XP_001062926、NP_071609、NP_071852、NP_058968、NP_001011975、NP_115792、NP_001178017、NP_001178707、NP_446348、NP_071992、XP_001059375、XP_001061872及びNP_001128170;Homo sapiens由来のNP_036322、NP_001193826、NP_001029345、NP_000684、NP_000680、NP_000683、NP_000681、NP_001071、NP_000687、NP_001180409、NP_001173、NP_000682、NP_000373、NP_001154976、NP_000685及びNP_000686;Klebsiella sp. NBRC100048株由来のKPN_02991、KPN_1455及びKPN_4772等を挙げることができる。
上記[3]については、Arabidopsis thaliana(シロイヌナズナ)のAT1G02190とAT1G02205(CER1)、Oryza sativa(コメ)の4330012、Solanum lycopersicum(トマト)の101252060、Capsella rubella(ホソミナズナ)のCARUB_v10008547mg、Brassica napus(セイヨウアブラナ)の106437024、Brassica rapa (ハクサイ)の103843834、Eutrema salsugineum(ユリワサビ)のEUTSA_v10009534mg、Tarenaya hassleriana(セイヨウフウチョウソウ)の104810724、Gossypium raimondii(ワタ)の105773703、Theobroma cacao(カカオ)のTCM_042351、Vitis vinifera(ワインブドウ)の100243849、Sesamum indicum(ゴマ)の105167221、Eucalyptus grandis(ユーカリ)の104442848、Pyrus bretschneideri(中国白桃)の103929751、Arachis ipaensisの107618742及びMalus domestica(リンゴ)の103428452等を挙げることができる。
上記[4]については、Drosophila melanogaster(キイロショウジョウバエ)のCYP4G1、Musca domestica(イエバエ)の101887882、Aedes aegypti(ネッタイシマカ)のAaeL_AAEL006824及びAnopheles gambiae(ハマダラカ)のAgaP_AGAP000877等を挙げることができる。
アシルACPレダクターゼ遺伝子としては、特に限定されず、EC 1.2.1.80として登録されたアシルACPレダクターゼをコードするものを使用することができる。例えば、アシルACPレダクターゼ遺伝子としては、Synechococcus elongatusのSynpcc7942_1594、Synechococcus sp.のM744_09025、Leptolyngbya sp.のLEP3755_23580、Gloeocapsa sp.のGlo7428_0151、Nostoc sp.のNos7107_1027、Anabaena variabilisのAva_2534、Calothrix sp.のIJ00_07395、Crinalium epipsammumのCri9333_4415及びFischerella sp.のFIS3754_06320等を挙げることができる。
アルカン合成酵素遺伝子の一例として、N. punctiforme PCC 73102株由来のデカルボニラーゼ遺伝子及びSynechococcus elongatus PCC 7942株由来のアシルACPレダクターゼ遺伝子を使用することができる。
N. punctiforme PCC 73102株由来のデカルボニラーゼ遺伝子は、配列番号16のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子である。ただし、デカルボニラーゼ遺伝子としては、配列番号16のアミノ酸配列に対して60%以上の同一性、好ましくは70%以上の同一性、好ましくは80%以上の同一性、より好ましくは90%以上の同一性、更に好ましくは95%の同一性、最も好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなりデカルボニラーゼ活性を有するタンパク質をコードするものであっても良い。
Synechococcus elongatus PCC 7942株由来のアシルACPレダクターゼ遺伝子は配列番号18のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子である。ただし、アシルACPレダクターゼ遺伝子としては、配列番号18のアミノ酸配列に対して60%以上の同一性、好ましくは70%以上の同一性、好ましくは80%以上の同一性、より好ましくは90%以上の同一性、更に好ましくは95%の同一性、最も好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなりアシルACPレダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするものであっても良い。
同一性の値は、BLASTアルゴリズムを実装したBLASTNやBLASTXプログラムにより算出することができる(デフォルトの設定)。なお、同一性の値は、一対のアミノ酸配列をペアワイズ・アライメント分析した際に完全に一致するアミノ酸残基を算出し、比較した全アミノ酸残基中の上記残基数の割合として算出される。
さらに、デカルボニラーゼ遺伝子及びアシルACPレダクターゼ遺伝子としては、それぞれ配列番号16及び18に示すアミノ酸配列をコードするものに限定されず、配列番号16又は18に示すアミノ酸配列に対して、1〜50個のアミノ酸、好ましくは1〜40個のアミノ酸、より好ましくは1〜30個のアミノ酸、更に好ましくは1〜20個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなりデカルボニラーゼ及びアシル-ACPレダクターゼとして機能するタンパク質をコードする遺伝子でも良い。
さらにまた、デカルボニラーゼ遺伝子及びアシルACPレダクターゼ遺伝子としては、それぞれ配列番号15及び17に示す塩基配列からなるものに限定されず、配列番号15及び17示す塩基配列からなるDNAの相補鎖の全部又は一部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつデカルボニラーゼ及びアシル-ACPレダクターゼとして機能するタンパク質をコードする遺伝子でも良い。ここでいう「ストリンジェントな条件」とはいわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味し、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual(Third Edition)を参照して適宜決定することができる。具体的には、サザンハイブリダイゼーションの際の温度や溶液に含まれる塩濃度、及びサザンハイブリダイゼーションの洗浄工程の際の温度や溶液に含まれる塩濃度によりストリンジェンシーを設定することができる。
なお、配列番号16及び18に示すアミノ酸配列に対して所定のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列をコードする塩基配列や、配列番号15及び17に示す塩基配列と異なる塩基配列からなるDNAを作製する方法としては、特に限定することなく、従来公知の手法を適宜使用することができる。例えば、部位特異的突然変異誘発方法を使用して、所定の塩基を置換することができる。部位特異的突然変異誘発方法としては、例えばT. クンケル(Kunkel)の部位特異的変異導入法(Kunkel, T. A. Proc. Nati. Acad. Sci. U. S. A. 82, 488-492 (1985))、Gapped duplex法等が挙げられる。また、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutan-K(宝酒造社製)やMutan-G(宝酒造社製))などを用いて、あるいは、宝酒造社製のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異を導入することもできる。
また、アルカン合成酵素遺伝子は、上述したアシルACPレダクターゼ遺伝子に限定されず、上述したデカルボニラーゼの基質となるアルデヒドを合成する酵素をコードする遺伝子を使用することができる。
例えば、Photorhabdus luminescensのplu2079(luxC)、Photorhabdus asymbioticaのPAU_02514(luxC)、Aliivibrio fischeriのVF_A0923(luxC)及びVibrio campbelliiのVIBHAR_06244、Shewanella woodyiのSwoo_3633等の長鎖脂肪酸アシルCoAレダクターゼ [EC.1.2.1.50]をコードする遺伝子を使用することができる。また、例えばGlycine max(ダイズ)の100776505及び100801815等といった特開2015-226477記載のアシルCoAレダクターゼをコードする遺伝子を使用することができる。さらに、これらの他に、アルデヒドを合成できる酵素をコードする遺伝子であれば、何ら限定すること無く使用することができる。例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ[EC.1.1.1.1]、アルコールオキシダーゼ[EC. 1.1.3.13]、アルデヒドデヒドロゲナーゼ[EC. 1.2.1.3]及びカルボン酸レダクターゼ[EC. 1.2.99.6]等の酵素をコードする遺伝子を使用することができる。
一方、アルカン合成酵素遺伝子を導入する微生物としては、特に限定されないが、大腸菌(Escherichia coli)及びKlebsiella属細菌を挙げることができる。また、アルカン合成酵素遺伝子を導入する微生物としては、Appl. Environ. Microbiol.,79(21):6776-6783 2013(Nov.)に開示されたCorynebacterium glutamicumを使用することができる。当該論文では、脂肪酸生産能を獲得したCorynebacterium glutamicum組換え体が開示されている。さらに、アルカン合成酵素遺伝子を導入する微生物としては、Food Bioprocess Technol (2011) 4:232-240に開示されたMortierella alpinaを使用することができる。Mortierella alpinaはアラキドン酸発酵で工業的に用いられている株であり、当該論文ではこれを用いて代謝工学を行っている。さらにまた、アルカン合成酵素遺伝子を導入する微生物としては、TRENDS IN BIOTECHNOLOGY, Vol. 34, No. 10, p. 798-809に開示されたYarrowia lipolyticaを使用することができる。
さらにまた、アルカン合成酵素遺伝子を導入する微生物としては、lipomyces属、Pseudozyma属、Rhodosporidium属及びRhodococcus属等に属する微生物を使用することができる。これら微生物に対してアルカン合成酵素遺伝子を導入するには、特に限定されないが、CRISPR/CasやTALEN等のゲノム編集システムを用いた遺伝子組換え技術を適用することができる。
さらにまた、アルカン合成酵素遺伝子を導入する微生物として酵母を使用する場合、酵母としては特に限定されないが、Pichia stipitis等のPichia属酵母、Saccharomyces cerevisiae等のSaccharomyces属酵母及びCandida tropicalisやCandida prapsilosis等のCandida属酵母等を挙げることができる。
上述したフェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を、宿主となるアルカン合成能を有する微生物のゲノムに導入することにより、本発明に使用できる組換え微生物を作製することができる。フェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子は、宿主に対して同時に導入しても良いし、いずれか一方を先に導入し、他方を後に導入しても良い。なお、上述したフェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子に加えて、上述したアルカン合成酵素遺伝子をアルカン合成能を有しない宿主微生物に導入する際には、アルカン合成酵素遺伝子を、上述したフェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子と共に導入しても良いし、これら遺伝子より先に導入しても良いし、これら遺伝子を導入した後に導入しても良い。
上述したフェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を宿主に導入する際、例えば、フェレドキシン遺伝子やフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を含むDNA断片を、宿主微生物で機能する発現ベクター、好ましくはマルチコピー型のベクターと連結して組換えDNAを作製し、これを微生物に導入して形質転換すればよい。使用可能な発現ベクターは、特に限定されず、プラスミド型ベクター、又は宿主生物中のゲノムに組み込み可能な染色体導入型ベクターを挙げることができる。発現ベクターとしては、特に限定されず、入手可能な如何なる発現ベクターを宿主微生物に応じて適宜選択すればよい。なお、発現ベクターとしては、例えば、プラスミドDNA、バクテリオファージDNA、レトロトランスポゾンDNA、人工染色体DNA(YAC:yeast artificial chromosome)などが挙げられる。
プラスミド DNAとしては、例えばpRS413、pRS414、pRS415、pRS416、YCp50、pAUR112又はpAUR123などのYCp型大腸菌-酵母シャトルベクター、pYES2又はYEp13などのYEp型大腸菌-酵母シャトルベクター、pRS403、pRS404、pRS405、pRS406、pAUR101又はpAUR135などのYIp型大腸菌-酵母シャトルベクター、大腸菌由来のプラスミド(pBR322、pBR325、pUC18、pUC19、pUC118、pUC119、pTV118N、pTV119N、pBluescript、pHSG298、pHSG396又はpTrc99AなどのColE系プラスミド、pACYC177又はpACYC184などのp15A系プラスミド、pMW118、pMW119、pMW218又はpMW219などのpSC101系プラスミド等)、アグロバクテリウム由来のプラスミド(例えばpBI101等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP)、φX174、M13mp18又はM13mp19などが挙げられる。レトロトランスポゾンとしては、Ty因子などが挙げられる。YAC用ベクターとしてはpYACC2などが挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
発現ベクターにおいて、フェレドキシン遺伝子やフェレドキシンレダクターゼ遺伝子は、それぞれ発現可能な状態でベクターに組み込まれることが必要である。発現可能な状態とは、フェレドキシン遺伝子やフェレドキシンレダクターゼ遺伝子が導入される宿主生物において所定のプロモーターの制御下に発現されるように、これらフェレドキシン遺伝子やフェレドキシンレダクターゼ遺伝子とプロモーターとを連結してベクターに組み込むことを意味する。発現ベクターには、フェレドキシン遺伝子やフェレドキシンレダクターゼ遺伝子のほか、プロモーター及びターミネータ、所望によりエンハンサー等のシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)等を連結することができる。なお、選択マーカーとしては、例えば、アンピシリン耐性遺伝子やカナマイシン耐性遺伝子やハイグロマイシン耐性遺伝子などの抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。
また、発現ベクターを用いた形質転換法としても、従来公知の方法を適宜使用することができる。形質転換方法としては、塩化カルシウム法、コンピテントセル法、プロトプラスト又はスフェロプラスト法、電気パルス法等を例示することができる。
一方、フェレドキシン遺伝子やフェレドキシンレダクターゼ遺伝子のコピー数を高めるように導入しても良い。すなわち、フェレドキシン遺伝子やフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を微生物の染色体DNA上に多コピー存在させるように導入しても良い。微生物の染色体DNA上にフェレドキシン遺伝子やフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を多コピーで導入するには、染色体DNA上に多コピー存在する配列を標的に利用して相同組換えにより行うことができる。
さらに、フェレドキシン遺伝子やフェレドキシンレダクターゼ遺伝子の発現の増強は、内在する又は導入したフェレドキシン遺伝子やフェレドキシンレダクターゼ遺伝子のプロモーター等の発現調節配列を、より高発現可能なものに置換する方法、所定の遺伝子の発現を上昇させるようなレギュレーターを導入する方法などによっても達成される。高発現可能なプロモーターとしては、特に限定されないが、例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、pLプロモーター等を挙げることができる。また、内在する又は導入したフェレドキシン遺伝子やフェレドキシンレダクターゼ遺伝子の発現制御領域に突然変異を導入し、より高発現できるものに改変することも可能である。
<アルカン製造>
以上で説明したように、本発明によれば、アルカン合成能を有する微生物や、アルカン合成能を付与された組換え微生物に対して特定のフェレドキシン遺伝子やフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を導入した組換え微生物を使用することでアルカンを優れた生産性で合成できる。
アルカン合成能を有する微生物や、アルカン合成能を付与された組換え微生物を使用する系では、これら微生物に適した培地にて培養し、当該培地中にアルカンを生産することができる。より具体的には、本発明によれば、アルカン合成酵素によるアルカン合成能を向上させることができ、その結果、アルカンの生産性を向上することができる。
ここで、アルカン合成能を向上させるとは、アルカン合成酵素によるアルデヒドからアルカンに変換する活性を向上させることを含む意味である。すなわち、アルカン合成酵素によるアルカン合成反応は、フェレドキシンとフェレドキシンレダクターゼとが特定の組み合わせで存在することによって反応効率が向上する。
本発明において、生産対象のアルカンとしては特に限定されないが、例えば炭素数が9〜20の範囲、好ましくは14〜17の範囲、より好ましくは13〜16の範囲のアルカンとする。これらは、粘度の高い液体であり、軽油(ディーゼル油)や航空機燃料に使用することができる。このようなアルカンは、上述した組換え微生物を培養した反応系から定法に従って単離し、その後、精製することができる。
また、ENGINEERING IN LIFE SCIENCES、巻: 16 号: 1 ページ: 53-59“Biosynthesis of chain-specific alkanes by metabolic engineering in Escherichia coli”に記載の方法を適用することで、短い鎖長のアルカンを合成することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
[1.目的]
本実施例では、アルカン合成能を付与するために宿主に導入するデカルボニラーゼ遺伝子と同じ由来であるN. puntioforme PCC 73102株においてフェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を予測し、これらを特定の組み合わせでE. coliに同時導入(共発現)して、アルカン生産に及ぼす影響を調べた。調べる遺伝子は、早くからゲノムが公開されているNostoc sp. PCC 7120において、フェレドキシンとアノテーションされているalr0784、all1430、asr2513、all2919及びall4148、フェレドキシンレダクターゼとアノテーションされているall4121、フェレドキシンオキシレダクターゼとアノテーションされているalr3707に対して、アミノ酸配列で70%以上の相同性を持つ遺伝子とした。
なお、Nostoc sp. PCC 7120についてKEGGを用いてフェレドキシン及びフェレドキシンレダクターゼで検索すると、10種のフェレドキシンレダクターゼと8種のフェレドキシンが候補として同定され、Nostoc punctioformeについては12種のフェレドキシンレダクターゼと24種のフェレドキシンが候補として同定される。このように、データベースに登録されたアノテーション情報に基づいて検索しても、N. puntioforme由来のフェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を絞り込むことはできない。
このため、本実施例では、Science 30 July 2010. Vol. 329, No. 5991, pp. 559-562に記載されたデカルボニラーゼ酵素試験に使用されているホウレンソウ由来のフェレドキシン及びフェレドキシンレダクターゼのアミノ酸配列に基づいてNostoc sp. PCC 7120におけるフェレドキシン及びフェレドキシンレダクターゼの候補を予測した。そして、Nostoc sp. PCC 7120にて予測したフェレドキシン及びフェレドキシンレダクターゼに基づいて、N. puntioforme由来のフェレドキシン及びフェレドキシンレダクターゼを絞り込んだ。
なお、ホウレンソウ由来のフェレドキシンはアクセッション番号:M35660、フェレドキシンレダクターゼはアクセッション番号: M86349、M86349及びX64351が登録されている。
[2.材料と方法]
2.1 試薬
製造メーカを記載していない試薬は、ナカライテスクから購入した。
2.2 菌株
E. coli Rosetta (DE3)株はNovagen社より、 E. coli BL21 (DE3)とE. coli JM109はタカラバイオ社より購入した。Klebesiella sp. NBRC100048株は独立行政法人製品評価技術基盤機構から分譲を受けた。
2.3 M9YE培地の調製
10mlの Bacto Yeast extract(Difco社製)10%溶液、50mlの20%グルコース溶液、1mlの1M MgSO4、1mlの1%チアミン溶液、0.1mlの1M CaCl2溶液、100mlのMP biomedicals社製10X M9培地に、必要な抗生物質溶液を加え、滅菌水で1000mlにメスアップした。
2.4 人工遺伝子の合成
N. punctiforme PCC 73102株のゲノム配列から、Nostoc sp. PCC 7120の、alr0784(アノテーション:フェレドキシン)、all1430(アノテーション:ヘテロシスト フェレドキシン、fdxH)、asr2513(アノテーション:フェレドキシン、fdxB)、all2919(アノテーション:フェレドキシン)、all4148(アノテーション:フェレドキシンI、petF)、all4121(アノテーション:フェレドキシン-NADP(+)レダクターゼ、petH)、alr3707(アノテーション:フィコシアノビリン、フェレドキシンオキシレダクターゼ)とアミノ酸配列で70%以上の相同性がある遺伝子として、YP_001865390、YP_001866231、YP_001868825、YP_001864061、YP_001864105、YP_001864826、YP_001865513、YP_001867060を選抜して、GeneScript社に合成委託した。合成に際しては、S. cerevisiae またはE. coli のコドン使用頻度に基づきコドンを最適化し、元のゲノム配列のIDと区別して、表1のように命名した。
Figure 0006607204
なお、表1に示した遺伝子略称において、Fd4はFD遺伝子5を意味し、Fd5はFD遺伝子1を意味し、Fd6はFD遺伝子2を意味し、Fd7はFD遺伝子3を意味し、Fd8はFD遺伝子4を意味し、FDR1はFDR遺伝子1を意味し、FDR2はFDR遺伝子2を意味し、FDR3はFDR遺伝子3を意味している。FD遺伝子1〜5及びFDR遺伝子1〜3のコーディング領域の塩基配列及びコードされるアミノ酸配列を下記表2に纏めた。
Figure 0006607204
なお、これら配列はデータベースに格納された配列であり、本実施例でコドンを最適化した後の配列とは異なっている。
なお、合成されたDNAは、pUC57ベクターに導入された状態でGeneScript社から提供された。E. coli用にコドンを最適化した、2.FDR_NP_YP_001866231b及び7.Fd_NP_YP_001865513bの両端には、それぞれXbaIとBamHIサイトが付与されている。
本実施例で設計して合成した人工遺伝子の塩基配列(配列番号21〜30)を表3に示すように、図1〜10に示した。
Figure 0006607204
2.5 遺伝子導入プラスミド作製
2.5.1 pCDF-FDR類の作製
表4に示す鋳型DNAとプライマー(使用したプライマーの塩基配列は後述する。以下同様)の組み合わせでPCRを行い、増幅したDNA断片を制限酵素NdeIとPacIで消化したpCDFDuet-1(ノバジェン社製)にIn-Fusion HD Cloning kit(Invitrogen社製)を用いて挿入し、得られたプラスミドをそれぞれpCDF-FDR1、pCDF-FDR2、pCDF-FDR3と命名した。pCDFDuet-1はストレプトマイシン耐性遺伝子を持ち、pCDF-FDR類の形質転換体の培養には、50mg/Lのストレプトマイシンを添加して選択した。
Figure 0006607204
なお、PCR条件は、92℃で2分の後、95℃で20秒、55℃で20秒及び72℃で1分を1サイクルとして25サイクル行った後、72℃で3分、その後、16℃とした。PCRの反応液組成を表5に示した。
Figure 0006607204
2.5.2 pCDF-FDR-Fd類の作製
GeneScript社で委託合成したフェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を含む合成DNA(ベクターpUC57に乗っている)を鋳型に、表6に記載した組合せでPCRを行った。
Figure 0006607204
PCRで得られた増幅断片をアガロースゲル電気泳動で分離後、MinElute PCR purification kit(QIAGEN社製)で精製することにより、Fd4、Fd5、Fd6、Fd7、Fd8の各遺伝子のDNAを調製した。
次に、2.5.1で作製したpCDF-FDR1、pCDF-FDR2、pCDF-FDR3を、制限酵素NcoIとNotIで消化し、Fd4、Fd5、Fd6、Fd7、Fd8をIn-Fusion HD Cloning kit(Invitrogen社製)を用いて挿入することにより、表6に示したフェレドキシン遺伝子とフェレドキシンレダクターゼ遺伝子が共発現するpCDF-FDR-Fd類を作製した。
2.5.3 pCDF-lacP-Fd7-FDR2の作製
後述するように、E. coli ではFDR2とFd7の組合せが最もアルカン生産性向上に効果があったので、その組合せをKlebliellaで評価できるようにプラスミドを構築した。
プラスミドpTV118N(タカラバイオ社製)を制限酵素NcoIで消化し、1.5%アガロースゲル電気泳動を行った後、3.2kbのDNA断片を切り出した。次に、表7に示す鋳型とプライマーの組み合わせでPCRを行い、増幅した0.3kbと1.3kbのDNA断片を精製しIn-Fusion HD Cloning kit(Invitrogen社製)を用いて3.2kbの断片と結合させた。得られたプラスミドをpTV-Fd-FDRと命名した。
Figure 0006607204
得られたpTV-Fd-FDRをApaLI(タカラバイオ社製)で消化し、電気泳動で約2.8kbのDNA断片を分離した。プラスミドpCDFDuet-1(ノバジェン社製)を制限酵素DrdI(ニュー・イングランド・バイオラボ社製)とXbaI(タカラバイオ社製)で処理し、電気泳動で約1.7kbのDNA断片を分離した。これら、2.8kbと1.7kbの断片をBlunting kit(タカラバイオ社製)により平滑末端化した後、Ligation convenience kit(ニッポンジーン社製)を用いて結合させた。得られたプラスミドをpCDF-lacP-Fd7-FDR2と命名した。
2.5.4 pRSF-NpAD-SeAR
N. punctiforme PCC 73102株由来のデカルボニラーゼ遺伝子とSynechococcus elongatus PCC7942株由来のアシル-ACPレダクターゼ遺伝子がpRSF-1b(ノバジェン社製)に乗ったpRSF-NpAD-SeARを準備した。なお、pRSF-NpAD-SeARの作製方法については後述する実験例1に記載した。
2.5.5 pTV-NpAD-SeAR-ampとpTV-NpAD-SeAR-kan
N. punctiforme PCC 73102株由来のデカルボニラーゼ遺伝子とSynechococcus elongatus PCC7942株由来のアシル-ACPレダクターゼ遺伝子がpTV118N(タカラバイオ社製)に乗ったpTV-NpAD-SeAR-amp及びpTV-NpAD-SeAR-kanを準備した。なお、pTV-NpAD-SeAR-ampとpTV-NpAD-SeAR-kanの作製方法については後述する実験例1に記載した。
2.6 形質転換体の作製
表8に示した組合せで形質転換体を作製した。本実施例で作製したpCDF-FDR-Fd類は酵母のコドン使用頻度に最適化してあるので、大腸菌のコドン使用頻度との違いの影響を抑えるため、pCDF Duet-FDR-Fd類はE. coli Rosetta(DE3)株をホストに用いた。一方、Klebsiella sp. 100048株はT7 RNA polymeraseを保有していないのでlacプロモーターを用い、E. coli JM109を比較として用いた。それぞれ、Rosetta(DE3) Competent Cells (ノバジェン社製)またはECOS Competent E.coli JM109 (ニッポンジーン社製)を、添付のマニュアルに従って形質転換した。Klebesiella sp.100048株の形質転換方法については後述する実験例1に記載した。
Figure 0006607204
2.7 培養と生産物の分析
必要な抗生物質を含むLB Broth Miller培地(Difco社製 Luria-Bertani)3mlを含むBD Falcon社製14mlラウンドチューブに形質転換体を植菌し、ABLE社製三段式培養器MW-312を用い、100ストローク/分で18時間、37℃で振盪培養した。得られた前培養液を抗生物質を含む3mlのM9YE培地に1%植菌し、ディスポーザブルガラス試験管(IWAKI社製f16mm x 150mm)で同培養装置を用い、30℃、90ストローク/分で2〜3日間培養した。本培養においては、植菌後4時間に、IPTGを終濃度が1mMになるように添加した。
培養2日目または3日目に、培養液に等量(3ml)の酢酸エチルを添加し、ボルテックスを用いて10秒間混和した。TOMY社製LC-230遠心機を用いて室温で10分間2000rpmで遠心した後、酢酸エチル層1mlをGC/MSバイアルに移し、内部標準溶液(1μl/ml R-(-)-2-octanol/ethanol)を10 ml添加し締結した。GC/MSによる定量は、後述する実験例1に記載した条件で行った。
[3. 結果]
菌株No.2〜17について培養をn=2またはn=3で行い、アルカンの生産量をGC/MSにより測定し、平均値で表した結果を図11及び12に示した。図11及び12に示すように、8-ヘプタデカンとペンタデカン及び微量のトリデカンの生産が観測された。8-ヘプタデカンとペンタデカンの比率に変動はあるが、オレイン酸由来の8-ヘプタデカンが主要産物であった。比率は、培養2日目と培養3日目で菌株によらず同じである一方、フェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子の導入により、ペンタデカンの割合が増える傾向であった。
E. coli Rosetta株(菌株No.2〜17)で、3種のアルカンの総量を比較した結果を図13及び14に示した。また、培養3日目のアルカン生産量を菌株No.2に対する比でまとめたのを表9に示した。
Figure 0006607204
図13及び14並びに表9に示すように、Fd4以外のフェレドキシン遺伝子(Fd5〜Fd8)については、特定のフェレドキシンレダクターゼ遺伝子と組み合わせた場合にアルカンの生産量が向上することがわかった。換言すると、フェレドキシンオキシレダクターゼのホモログであるFDR2(YP_001866231)はFd4以外のいずれのフェレドキシンとも相互作用をしてアルカン増産効果がみられた。一方、フェレドキシンレダクターゼのホモログとして2種類存在したFDR1(YP_001865390)とFDR3(YP_001868825)はフェレドキシンに対する選択性が見られた。
なかでも、Fd7とFDR2との組み合わせ、Fd6とFDR3との組み合わせ、及びFd8とFDR2との組み合わせについては、他の組み合わせと比較してより優れたアルカン生産性を達成することができた。能を示す。さらに、Fd7とFDR2との組み合わせは、最も優れたアルカン生産性を達成することができた。
また、図13及び14からわかるように、Fd6とFDR1〜3とを組み合わせた場合には、培養2日目のアルカン生産量はFDR1〜3の順で高かったのに対して、培養3日目においてはこれと逆の傾向(FDR3〜1の順でアルカン生産量が高い)が見られた。他のFdについては、培養2日目と培養3日目は同じ傾向を示した。
次に、図14及び表9で最もアルカンの総量が多かった、FDR2/Fd7の組み合わせをKlebsiella sp. 100048株に導入し、アルカンの生産量について検討した。結果を図15に示した。FDR2/Fd7の組み合わせによりアルカン生産能の向上効果がE. coli JM109株で2倍であったのに対し、Klebsiella sp. 100048株では4倍になることが明らかとなった。
〔プライマー〕
本実施例で使用したプライマーの塩基配列を表10に纏めた。
Figure 0006607204
〔実験例1〕
・pRSF-NpAD-SeARの作製方法
先ず、Synechococcus elongatus PCC 7942株由来のアシル-ACPレダクターゼ遺伝子(YP_400611)とNostoc punctiforme PCC 73102株由来のデカルボニラーゼ遺伝子(YP_001865325)を化学合成した。これらの合成遺伝子はpUC57のEcoRVサイトに挿入し、それぞれpUC57-SeAAR、pUC57-NpADと命名した。
次に、これらpUC57-NpAD及びpUC57-SeAARをそれぞれ鋳型にし、Pfu Ultra II Fusion HS DNA Polymerase (STRATAGENE社製)を用いて下記PCRを行ない、それぞれ増幅したフラグメントNpADvoとSeAAvoを得た。
Figure 0006607204
Figure 0006607204
なお、各PCRの反応条件は、92℃で2分の後、92℃で10秒、55℃で20秒及び68℃で5分を1サイクルとして25サイクル行い、その後72℃で3分、16℃とする条件である。プライマー配列は以下のとおりである。
Primer pRSF-NpAS-inf-F:5’-cgagctcggcgcgcctgcagATGCAGCAGCTTACAGACCA-3’(配列番号51)
Primer pRSF-NpAS-inf-R:5’-gcaagcttgtcgacctgcagTTAAGCACCTATGAGTCCGT-3’(配列番号52)
Primer pRSF-SeAR-inf-F:5’-aaggagatatacatatgATGTTCGGTCTTATCGGTCA-3’(配列番号53)
Primer pRSF-SeAR-inf-R:5’-ttgagatctgccatatgTCAAATTGCCAATGCCAAGG-3’(配列番号54)
次に、Pst I処理したpRSF-1b(Novagen社製)とフラグメントNpADvoをIn-Fusion HD Cloning kit(Invitrogen社製)を用いて連結させ、得られたプラスミドをさらにNde I消化し、同様に同kitを用いてフラグメントSeAAvoと接続した。こうして得られたベクターをpRSF-NpAD-SeARと命名した。
・pTV-NpAD-SeAR-ampとpTV-NpAD-SeAR-kanの作製方法
先ず、上記で作製したpRSF-NpAD-SeARを鋳型にし、Pfu Ultra II Fusion HS DNA Polymerase (Agilent社製)を用いて下記PCRを行なった。フォワードプライマー及びリバースプライマーとしてPrimer NpAD Fw及びPrimer NpAD Rvを使用することでフラグメントNpADvo2を増幅し、フォワードプライマー及びリバースプライマーとしてPrimer SeAR Fw及びPrimer SeAR Rvを使用することでフラグメントSeAAvo2を増幅した。
Figure 0006607204
なお、各PCRの反応条件は92℃で2分の後、95℃で20秒、60℃で20秒、72℃で30秒を1サイクルとして25サイクル行い、その後72℃で3分、16℃とする条件である。プライマー配列は以下のとおりである。
Primer NpAD Fw:5’-AGGAAACAGACGTACATGCAGCAGCTTACAGACCAATC-3’(配列番号55)
Primer NpAD Rv:5’-GAAATTGTTATCCGCTTAAGCACCTATGAGTCCGTAG-3’(配列番号56)
Primer SeAR Fw:5’-GCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGACATGTTCGGTCTTATCGGTCATC-3’(配列番号57)
Primer SeAR Rv:5’-GTAATCATGGCGTACTCAAATTGCCAATGCCAAGG-3’(配列番号58)
次に、Nco I処理したpTV118N(タカラバイオ社製)、フラグメントNpADvo2、フラグメントSeAAvo2を、それぞれモル比1:2:2で混合し、In-Fusion HD Cloning kitを用いて連結させた。得られたベクターをpTV-NpAD-SeAR-ampと命名した。
また、得られたpTV-NpAD-SeAR-ampベクターをDra I処理し、4211bpのフラグメントを得た。一方、pRSFDuetベクター(Novagen社製)をBsp HI(NEB社製)処理して得た877bpフラグメントを平滑化した。これら4211bpのフラグメントと平滑化した877bpのフラグメントとライゲーションした。得られたベクターをpTV-NpAD-SeAR-kanと命名した。
・Klebesiella sp.100048株の形質転換方法
Klebesiella sp.100048株を、培地3mlを入れた14mlラウンドチューブ(BD Falcon社製)に植菌し、37℃、18時間培養し前培養液を調製した。培地組成は、Polypeptone(和光純薬社製)を10g、Yeast extract(Difco社製)を2g及びMgSO4・7H2Oを1gとした。この培地組成を0.8Lの脱イオン水に溶解し、1N塩酸または1N水酸化ナトリウム溶液でpH7.0に調整した後に脱イオン水で1Lにし121℃、15分間オートクレーブした。
次に、同培地30mlを含む100ml容バッフル付三角フラスコに前培養液を1%植菌し、オリエンタル技研二段式培養機(IMF-II-S型)を用い160rpmで37℃で培養した。培養液のO.D.600が0.5〜0.7になった時点でただちに、フラスコを20分間氷冷した後、培養液を50ml遠沈管に移し、4℃、4000g、5分遠心し菌体ペレットを得た。菌体を予め氷冷した10%グリセロールl溶液に懸濁した。4℃、4000g、5分遠心し、上清を破棄し氷冷した15mlの10%グリセロール溶液に再懸濁する操作を3回繰り返すことにより十分に菌体を洗浄した。最後に菌体を1mlの氷冷した10%グリセロール溶液に懸濁しエッペンドルフチューブに全量移した。4℃、4000g、5分遠心し上清を除去した後、0.12mlの氷冷した10%グリセロール溶液に再懸濁し氷上で40μlずつ分注しコンピテントセルとした。こうして作製したコンピテントセルは使用するまで-80℃保管した。
氷上で溶解したコンピテントセルに上記で作製したプラスミド溶液1μlを混和し、氷上に1分間置いた後、氷冷したエレクトロポレーション用キュベット(GenePulser Cuvette, 0.2cm)に入れ、GenePulserXcell(BIORAD社製)を用い、2.5kVパルスでエレクトロポレーションを行った。キュベットに1mlのSOC培地を添加し穏やかに懸濁した後、14mlラウンドチューブ(BD Falcon社製)に移し、表1の温度で1時間振盪培養した。培養後、培養液を抗生物質が含まれた種々のアガロースプレートに塗布した。
・GC/MSによる定量方法
アガロースプレート上で生育した組換え体を、上記培地3mlを含むBD Falcon社製14mlラウンドチューブに植菌し、ABLE社製三段式培養器MW-312を用い、130ストローク/分で18時間所定の温度で培養した。こうして得られた前培養液を抗生物質を含む3mlのM9YE培地を含むディスポーザブルガラス試験管(IWAKI社製φ16×150mm)に1%植菌し、同様に90ストローク/分で4時間培養後、終濃度1mMのIPTGを添加し3日間培養した。
培養後、培養液1.5mlをエッペンドルフチューブに分取し、トミー社製小型遠心機MX-301を用いて、24℃、5800g、1分間遠心した。上清50μlを残して上清液を除去し菌体を懸濁した。次に、150μlの酢酸エチルを添加し、エッペンドルフ社製多サンプル用ボルテックスMixer5432を用いて5分間激しく混和した後、同様に24℃、13000g、1分間遠心し、酢酸エチル層100μlをGC/MSバイアルに移した。そして、50μlの内部標準物質溶液(2-プロパノールに溶解した0.4%(v/v)の2-オクタノール)を添加し、GC/MS(アジレント社製7890GC/5975MSD)に供した。分析条件を下記に示す。
クロマトグラムの71マスを選択し、トリデカン(保持時間:4.376分)と2-プロパノール(保持時間:3.378分)のピーク面積を測定した。2-プロパノールの面積に対するトリデカンのピーク面積比を元に作製した検量線を作製しトリデカン濃度を算出した。
Figure 0006607204

Claims (8)

  1. 藍藻由来のアシルACPレダクターゼ遺伝子及びデカルボニラーゼ遺伝子を外来遺伝子として有する組換え微生物において、
    藍藻由来の4種類のフェレドキシン遺伝子をそれぞれFD遺伝子1、FD遺伝子2、FD遺伝子3及びFD遺伝子4とし、藍藻由来の3種類のフェレドキシンレダクターゼ遺伝子をそれぞれFDR遺伝子1、FDR遺伝子2及びFDR遺伝子3としたときに、以下の組み合わせでフェレドキシン遺伝子及びフェレドキシンレダクターゼ遺伝子を有することを特徴とする、アルカン合成能を有する組換え微生物。
    ・FD遺伝子1及びFDR遺伝子1の組み合わせ
    ・FD遺伝子1及びFDR遺伝子2の組み合わせ
    ・FD遺伝子2及びFDR遺伝子1の組み合わせ
    ・FD遺伝子2及びFDR遺伝子2の組み合わせ
    ・FD遺伝子2及びFDR遺伝子3の組み合わせ
    ・FD遺伝子3及びFDR遺伝子2の組み合わせ
    ・FD遺伝子3及びFDR遺伝子3の組み合わせ
    ・FD遺伝子4及びFDR遺伝子1の組み合わせ
    ・FD遺伝子4及びFDR遺伝子2の組み合わせ
    FD遺伝子1は[a1]又は[b1]のタンパク質をコードし、
    [a1]配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質
    [b1]配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンとして機能するタンパク質
    FD遺伝子2は[a2]又は[b2]のタンパク質をコードし、
    [a2]配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質
    [b2]配列番号4のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンとして機能するタンパク質
    FD遺伝子3は[a3]又は[b3]のタンパク質をコードし、
    [a3]配列番号6のアミノ酸配列を有するタンパク質
    [b3]配列番号6のアミノ酸配列に対して90%以上の高い同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンとして機能するタンパク質
    FD遺伝子4は[a4]又は[b4]のタンパク質をコードし、
    [a4]配列番号8のアミノ酸配列を有するタンパク質
    [b4]配列番号8のアミノ酸配列に対して90%以上の高い同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンとして機能するタンパク質
    FDR遺伝子1は[c1]又は[d1]のタンパク質をコードし、
    [c1]配列番号10のアミノ酸配列を有するタンパク質
    [d1]配列番号10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質
    FDR遺伝子2は[c2]又は[d2]のタンパク質をコードし、
    [c2]配列番号12のアミノ酸配列を有するタンパク質
    [d2]配列番号12のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質
    FDR遺伝子3は[c3]又は[d3]のタンパク質をコードし、
    [c3]配列番号14のアミノ酸配列を有するタンパク質
    [d3]配列番号14のアミノ酸配列に対して90%以上のの同一性を有するアミノ酸配列を有し、フェレドキシンレダクターゼとして機能するタンパク質
  2. 上記藍藻由来のデカルボニラーゼ遺伝子は以下の[e]又は[f]のタンパク質をコードすることを特徴とする請求項1記載の組換え微生物。
    [e]配列番号16のアミノ酸配列を有するタンパク質
    [f]配列番号16のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、デカルボニラーゼ活性を有するタンパク質
  3. 上記藍藻由来のアシルACPレダクターゼ遺伝子は以下の[g]又は[h]のタンパク質をコードすることを特徴とする請求項1記載の組換え微生物。
    [g]配列番号18のアミノ酸配列を有するタンパク質
    [h]配列番号18のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、アシルACPレダクターゼ活性を有するタンパク質
  4. 大腸菌又はKlebsiella属細菌を宿主とすることを特徴とする請求項1記載の組換え微生物。
  5. 請求項1〜4いずれか一項記載の組換え微生物を培養する工程を含むアルカンの製造方法。
  6. 上記組換え微生物を培養する培地よりアルカンを回収する工程を更に含むことを特徴とする請求項5記載のアルカンの製造方法。
  7. 上記組換え微生物を培養する培地よりアルカンを回収し、回収したアルカンを精製する工程を更に含むことを特徴とする請求項5記載のアルカンの製造方法。
  8. 炭素数9〜20のアルカンを製造することを特徴とする請求項5記載のアルカンの製造方法。
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