JP6606661B1 - アルミナ分散強化銅のろう付接合方法 - Google Patents

アルミナ分散強化銅のろう付接合方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 アルミナ分散強化銅のろう付接合を実現する。【解決手段】 アルミナ分散強化銅であるGlidCop(登録商標)と他の金属を用意し、接合対象となる表面を微鏡面仕上げした後、リンを11%含有するニッケル合金であるBNi—6のろう材を挟み込み、圧力を加える。この状態で、960℃の熱処理温度で10分間の熱処理を行う。その後、十分に自然冷却した後、窒素ガスを用いて急冷する。こうすることにより、アルミナ分散強化銅と他の金属とのろう付接合を実現することが可能となる。【選択図】 図1

Description

本発明は、アルミナ分散強化銅のろう付接合方法に関する。
核融合炉のダイバータのように高温に曝される部位にはタングステンが用いられることがあるが、このタングステンをさらに冷却するために銅が用いられる。銅は、熱伝導率が高いという特性を有しているが、同時に機械的強度が低いという課題を有しており、これを克服する目的で銅合金が利用されることも多い。かかる銅合金の一種である酸化物分散強化銅は、強度が高いものの、接合ができない、という特性がある。特に、酸化物としてアルミナを分散させたアルミナ分散強化銅については、相互の接合は未だ実現されていない。
アルミナ分散強化銅を接合する技術として、特許文献1は、表面に無酸素銅が来るようにアルミナ分散強化銅と無酸素銅を積層してろう付接合可能にする技術を開示する。特許文献2は、アルミナ分散強化銅の表面に銅、銀などのめっき層を形成することでろう付接合を可能とする技術を開示する。
特開平2−243331号公報 特開2010−120034号公報
特許文献1、特許文献2に開示された従来技術は、いずれもアルミナ分散強化銅自体を接合可能とするものではない。特許文献1のような積層構造としたり、特許文献2のようなめっき層を形成することにより、アルミナ分散強化銅の加工性が制限され、その適用用途が限られることとなっていた。
一方、アルミナ分散強化銅とタングステンのように融点の高い金属との間では、ろう付による接合が実現できることが知られている。しかし、タングステンとの間で、ろう付による接合が実現できたからといって他の金属でも同様にろう付による接合が実現できるという保証はなく、実際、アルミナ分散強化銅とタングステン以外の金属との間のろう付接合は実現されていなかった。
本発明は、かかる課題に鑑み、アルミナ分散強化銅と他の金属とのろう付接合を実現する技術を提供することを目的とする。
本発明は、アルミナ分散強化銅からなる第1部材と、被接合金属からなる第2部材とをろう付接合する接合方法であって、
前記被接合金属は、フェライト相およびマルテンサイト相の一方または双方を含む鉄鋼またはイリジウムであり、
(a) リンを含有するろう材を用意する工程と、
(b) 前記第1部材、第2部材で前記ろう材を挟み込み、所定の熱処理温度で所定時間加熱する熱処理工程と、
(c) 前記熱処理工程の後、接合された前記第1部材および第2部材を冷却する工程と、を備え、
前記熱処理温度は、銅の融点よりも低く、リンと銅との共晶反応により低下した銅の融点よりも高い範囲で設定されている接合方法として構成することができる。
発明者は、第1に、アルミナ分散強化銅とフェライト相およびマルテンサイト相の一方または双方を含む鉄鋼(融点約1,500℃)との間でろう付接合の実験を試みた結果、上記工程および熱処理温度によればろう付接合が可能であることを見いだした。ろう付接合が可能となる原理は、必ずしも明らかにはなっていないが、リンを含有するろう材を用いることにより、ろう材と接触するアルミナ分散強化銅の極表面の融点がリンとの共晶反応によって若干、低下し、接合面で被接合金属との間で拡散が生じるということであろうと考えられる。熱処理温度は、銅の融点よりも低いため、第1部材は、接合部分以外では溶融しない。従って、接合部分のみで溶融が生じ、第1部材、第2部材のろう付接合が実現されるのである。
実験で確認されたのは、アルミナ分散強化銅とフェライト相およびマルテンサイト相の双方を含む鉄鋼であるが、フェライト相およびマルテンサイト相の一方のみを含む鉄鋼とのろう付接合も同様の原理によって実現されていたものと考えられる。
また、発明者は、アルミナ分散強化銅とイリジウム(融点2466℃)との間でも、ろう付接合の実験を試みた結果、上記工程および熱処理温度によればろう付接合が可能であることを見いだした。
本発明において、ろう材のリンの含有量は、任意に決めることができるが、実験では、11%の含有量のニッケル合金、具体的にはBNi−6を用いた。
熱処理の時間は、被接合金属の種類、接合の結果を踏まえ実験的に設定することができる。実験では、10分としたが、さらに短くしても良い。
また第1部材、第2部材の形状や寸法は問わない。
アルミナ分散強化銅としては、GlidCop(登録商標)を用いることができる。
本発明において、
前記熱処理温度は、960℃である接合方法としてもよい。
もっとも、かかる温度に限定されるものではない。
本発明では、
(d) 前記熱処理工程に先だって、前記第1部材と第2部材の接合される表面を、それぞれ微鏡面に表面仕上げする工程を備え、
前記熱処理工程における前記ろう材は、1〜100マイクロメートルの厚さとしてもよい。
ろう付の際の表面仕上げおよびろう材の厚さは、任意に決定することができるが、上記態様のように設定することにより、密着性に優れるろう付接合を実現できることが分かった。厚さは、38〜76マイクロメートルとすることがより好ましく、さらに約38マイクロメートルとすることがより好ましい。
また、本発明においては、
前記熱処理工程において、前記第1部材と第2部材に対して、両者が接合される方向に圧力を加えるものとしてもよい。
こうすることにより、さらに接合部分の密着性を向上させることが可能となる。
圧力を加える方法は、種々の方法をとることができる。
例えば、ホットプレス、即ち熱処理炉の中に備えられたプレス機によって、第1部材、第2部材を挟んでプレスする方法としてもよい。かかる方法をとるときは、プレス機の熱容量を加味して熱処理工程を設定することが好ましい。
また別の方法として、熱間等方圧加圧(HIP:Hot Isostatic Pressing)という方法をとってもよい。熱間等方圧加圧は、圧力を等方的に掛けることができるため、複数方向に接合する必要がある場合などに有用である。
圧力を加える方法は、例えば、
相互に締結された第1、第2の端プレートと、両者間に配置される中央プレートを用意し、
前記第1の端プレートと中央プレートによって、前記第1部材と第2部材を挟み、
前記第2の端プレートと中央プレート間に弾性体を介在させることにより、第1の端プレートと中央プレート間に配置された前記第1部材および第2部材に圧力を加えるものとしてもよい。
かかる方法によれば、板状の第1、第2の端プレートおよび中央プレートを介して圧力を加えるため、第1部材、第2部材に比較的均一に圧力を加えやすい利点がある。また、比較的、低コストで圧力を加えることができ、ホットプレスや熱間等方圧加圧のように特別な装置を使用する必要がない点で、比較的適用しやすいという利点もある。
プレートの素材は任意に選択できるが、剛性の高い素材を選択することが好ましい。
また弾性体も種々の選択が可能であるが、熱処理工程においても弾性力を加え得る素材であることが好ましく、例えば、カーボンばねを利用することができる。
圧力の大きさも任意に決定可能であるが、有意な効果が得られる圧力として、例えば、0.54MPaとすることができる。
また、上記態様の場合、
前記第1、第2の端プレートおよび中央プレートは、前記第1部材および第2部材にかかる圧力分布が略均一となる厚さを有しているものとすることが好ましい。
こうすることにより、第1部材、第2部材に均一に圧力を加えることができ、偏りのない接合を実現することができる。
第1、第2の端プレートおよび中央プレートの具体的な厚さは、これらの素材および圧力の大きさによって実験的または解析的に定めることができる。
本発明において、
前記工程(c)は、自然冷却としてもよい。
熱処理温度が非常に高温であるため、自然冷却の場合、数時間〜48時間など非常な長時間をかけて第1部材、第2部材は冷却されることになる。このように長時間をかけて冷却することにより、熱処理によって生じた熱応力を緩和することが可能となる利点がある。冷却にかける時間は、被接合金属の種類に応じて決定できる。例えば、アルミナ分散強化銅と熱膨張係数が比較的近い金属の場合には、8時間程度の冷却時間でも問題ないことが確認されている。
自然冷却によって100℃など、両部材の熱膨張が十分に緩和されたと考えられる程度の温度まで冷却された後は、冷媒を用いた強制冷却を施しても良い。
本発明は、接合相手となる被接合金属が一種類の場合のみならず、複数種類存在する場合も適用可能である。かかる場合に、どのような順序で接合するかは任意に決定できるが、
例えば、
複数種類の金属からなる複数の前記第2部材が存在するとき、
前記第1部材を形成する前記アルミナ分散強化銅に熱膨張係数が近い金属で形成された第2部材から順に接合するものとしてもよい。
複数種類の被接合金属を順次、接合する場合、最初に接合された金属には、繰り返し熱処理が施されることになる。第1部材、第2部材間の熱応力は、部材間の熱膨張係数の差によって生じるから、上記態様のように熱膨張係数が近い順に接合するものとすれば、繰り返し施される熱処理によって生じる熱応力を緩和することができる。
複数種類の被接合金属の具体例としては、例えば、
複数の前記第2部材は、それぞれアルミナ分散強化銅、ステンレス鋼、並びに、フェライト相およびマルテンサイト相の一方若しくは双方を含む鉄鋼またはイリジウムでそれぞれ形成されており、
前記第1部材を、前記アルミナ分散強化銅、ステンレス鋼、並びに、フェライト相およびマルテンサイト相の一方若しくは双方を含む鉄鋼またはイリジウムで形成された第2部材の順に接合してもよい。
本発明は、種々の構造体を製造するために利用可能であるが、
例えば、
前記第1部材は、アルミナ分散強化銅で形成され熱除去器の冷媒の流路が形成された部材であり、
前記第2部材は、フェライト相およびマルテンサイト相の一方または双方を含む鉄鋼で形成され前記流路に蓋をする部材であるものとできる。
かかる方法によれば、本発明の接合方法を用いて、熱除去器内部に冷媒の流路を形成することができる。
上記態様において、流路の形状は不問である。
上記態様において、更に種々の部材を接合してもよい。例えば、ステンレス鋼を接合し、流路に冷媒を供給する供給部、流路から排出する排出部を構成してもよい。
以上で説明した本発明の種々の特徴は、必ずしも全てを備えている必要はなく、本発明は、適宜、その一部を省略したり、組み合わせたりして構成してもよい。
また、本発明は、接合方法としての構成のみならず、かかる接合方法を踏まえた構造体として構成してもよい。
ろう付接合処理の工程を示すフローチャートである。 接合中心近傍の分析結果を示す説明図である。 接合層の硬さ試験結果を示す説明図である。 接合時に加える圧力の影響を示す説明図である。 ろう材の厚さによる影響を示す説明図である。 F82Hに対してろう付接合処理を施した外観を示す説明図である。 F82Hに対するろう付接合処理の超音波探傷試験結果を示す説明図である。 イリジウムに対してろう付接合処理を施した外観を示す説明図である。 イリジウムに対するろう付接合処理の超音波探傷試験結果を示す説明図である。 ダイバータの製造例を示す説明図である。
図1は、ろう付接合処理の工程を示すフローチャートである。この工程では、まず接合する部材の準備をする(ステップS10)。本実施例では、アルミナ分散強化銅であるGlidCop(登録商標)と、フェライト相およびマルテンサイト相の一方または双方を含む鉄鋼としてのF82Hとを接合するものとした。接合する部材の形状は、任意であるが、接合面が相互に平面となっていることを要する。
次に接合面を微鏡面仕上げ処理する(ステップS11)。一般に表面仕上げは、粗い順に粗仕上げ、並仕上げ、微鏡面仕上げ、鏡面仕上げという段階に分かれるが、この中の微鏡面仕上げである。微鏡面仕上げとするのは、次の理由による。ろう付接合を行う際、鏡面仕上げにしてしまうと、接合面が過剰に滑らかとなり、強い接合が実現できない場合がある。一方、表面仕上げが粗いと、極端に言えば、部材同士が面ではなく点で接合するのに近い状態となり、やはり強い接合が実現できない場合がある。発明者は、種々の表面仕上げで接合を検討した結果、微鏡面仕上げとすることが好ましいことを見いだした。
次に、ろう材を準備する。本実施例では、ニッケルにリンが11%含有されたニッケル合金であるBNi−6を用いた。ろう材は、リンが含有されているものであれば、種々の選択が可能である。
そして、接合する部材の間に、ろう材を挟み込み、圧力を加える(ステップS13)。図中に、圧力を加える方法を示した。本実施例では、3枚の鋼性のプレートを用意する。下側から第1の端プレート(または下プレート)、中央プレート(または中プレート)、第2の端プレート(または上プレート)と称するものとする。そして、第1の端プレートと中央プレートとの間に接合部材を挟み込む。また、中央プレートと第2の端プレートとの間にカーボンばねを挟み込む。第1、第2の端プレートは、ボルトで締結されている。かかる構造を用いることにより、カーボンばねの弾性力は、中央プレートを介して圧力として接合部材にかけられることになる。圧力は、任意に決めることができるが、本実施例では、0.54MPaであった。
本実施例においてカーボンばねを用いたのは、後述する熱処理に耐えられる素材を選択したからである。他の素材であってもよい。
また、圧力を加えることは、必ずしも必要という訳ではなく、圧力をかけずに熱処理を行っても差し支えない。ただし、接合面の気密性を確保するためには、圧力を加えることが望ましい。
次に、圧力を加えたまま、この接合部材を熱処理する(ステップS14)。図中に熱処理のシーケンスを示した。
フェーズAは予熱のための昇温フェーズである。目標となる予熱温度まで、速やかに昇温すればよい。
フェーズBは予熱フェーズである。本実施例では、860℃で60分とした。予熱温度および時間は、熱処理をする炉装置、接合部材の寸法、熱処理の温度などを踏まえて決定すればよい。
フェーズCは、熱処理温度までの昇温フェーズである。目標となる熱処理温度まで、速やかに昇温すればよい。
フェーズDは、熱処理フェーズである。本実施例では、960℃で10分間の熱処理を行った。960℃という熱処理温度は、次のように決定できる。本実施例の接合部材は、アルミナ分散強化銅であり、部材の溶融を回避するため、熱処理温度は銅の融点である1085℃よりも低くなくてはならない。本実施例において、ろう付接合が実現される原理は、ろう材に含まれるリンと銅との共晶により銅の融点が低下する結果、接合部材の極表面が溶融することで実現されるものと考えられる。従って、熱処理温度は、共晶反応時の銅の融点よりも高くする必要がある。本実施例では、かかる温度範囲の中から960℃を熱処理温度として選択した。熱処理時間も、任意に決定できる。本実施例では、10分としたが、2〜3分程度でもろう付接合は可能である。
フェーズEは、冷却フェーズである。このフェーズでは、熱応力を緩和するため、長時間かけて徐々に冷却する。本実施例では、炉内で約8時間かけて概ね100℃まで自然冷却を行った。冷却時間は、被接合材料の材質などを考慮して数時間〜48時間などの範囲で任意に決定できる。
フェーズFは、急冷フェーズである。フェーズEの冷却によって両部材の熱膨張が十分に緩和されていると判断されるため、その後は、部材を急冷しても差し支えない。本実施例では、部材の酸化を防止するため窒素ガスによる冷却を行った。急冷フェーズは、必ずしも設ける必要はなく、常温までフェーズEの冷却を継続してもよい。
以上の各工程により、本実施例のろう付接合は実現される。
本実施例では、熱処理および冷却は、ともに、真空熱処理、真空中での冷却とした。ここで言う真空とは、真空ポンプで排気をし、十分に炉内の圧力を低減させた状態をいい、完全な真空に限られるものではない。極低圧と換言してもよい。このように真空または極低圧にすることにより、接合部材の酸化を抑制することができる。もっとも、熱処理および冷却を、大気圧下で行うものとしても差し支えない。
以下、まず本実施例における接合の効果、圧力の影響、ろう材の厚さによる影響を、第1部材、第2部材ともにGlidCop(登録商標)の実験結果に基づいて説明する。
図2は、接合中心近傍の分析結果を示す説明図である。図2(a)には接合面の拡大写真である。図中の接合中心と示された部分の左側が第1部材、右側が第2部材である。本実施例では、第1部材、第2部材ともにGlidCop(登録商標)である。接合中心には、うっすらと線状に接合面が確認される。また、接合中心をはさんで約1mmの幅で若干、色が変化している部分が確認される。この色が変わっている部分を接合層と称するものとする。
図2(b)には接合部材に含有される各金属成分の分布を示した。左右方向に接合部分の位置を示し、上から銅、ニッケル、リン、アルミニウムの含有量の変化を示している。ろう材には、ニッケルとリンが含有されており、銅は含有されていないから、仮に接着剤のように接合層に、ろう材が残っているとすれば、接合層からは、銅が検出されない、あるいは、検出されたとしてもその量が大幅に減衰するはずである。しかし、図2(b)に示される通り、銅は全域にわたってほとんど濃度変化を伴わずに検出されている。また、接合層には、リンおよびニッケルが他の領域よりも顕著に検出されている。これらのことから、ろう材は、接合層において母材である銅に吸収された状態で、ろう付接合が実現されていると考えられる。また、接合層からリンが検出されていることから、ろう付には銅とリンの共晶反応が関係していることが示唆され、熱処理の際に示した通り、共晶反応による銅の融点低下が、ろう付接合を実現する原理に関与していると言うことができる。このように銅とリンとの共晶反応による銅の融点低下がろう付接合において重要な役割を果たすという知見は、従来なく、発明者の実験によって明らかとなったものである。
また、図2(b)によれば、アルミニウムは、全域にわたってピークがなく、一様に検出されていることが分かる。つまり、本実施例における熱処理の条件は、アルミナ分散強化銅におけるアルミナを偏析させることなく、即ち、接合層近傍でのGlidCop(登録商標)の品質をほとんど低下させることなく、ろう付接合を実現できていると言える。
図2に示したのは、圧力を加えずに重力のみで接合した場合の結果である。従って、圧力を加えなくとも、ろう付接合は実現できることが確認された。
図3は、接合層の硬さ試験結果を示す説明図である。図3(a)は、圧力を加えずに接合した場合の結果を示し、図3(b)は0.54MPaの圧力を加えた場合の結果を示している。横軸の位置0が接合中心に当たる。
図3(a)、図3(b)によれば、それぞれ接合層においてビッカース硬さが低下していることが分かる。また、圧力を加えた場合には(図3(b))、圧力を加えない場合(図3(a))よりも接合層が薄くなっていることが分かる。即ち、圧力を加えることにより、ビッカース硬さが低下する部分を薄く抑えることができるため、接合部材全体の機械的強度の低下を抑えることができると言える。
図4は、接合時に加える圧力の影響を示す説明図である。
図4(a)には、接合する部材の形状等を示した。部材Aは、GlidCop(登録商標)の部材であり、図示する流路が切削されている。部材Bは、流路に蓋をするGlidCop(登録商標)の板状部材である。流路の周囲が部材A、部材Bの接合部となる。
図4(b1)、図4(b2)には、それぞれ部材に圧力を加えた状態を示した。下プレートと上プレートはボルトで締結されており、下プレートと中プレートの間に接合部材が、中プレートと上プレートとの間にカーボンばねが挟まれている点は共通である。また、カーボンばねの弾性係数も同じである。各プレートの厚さが、図4(b2)では図4(b1)の約2.5〜3.5倍となっている点が相違する。
図4(c1)、図4(c2)には、それぞれ図4(b1)、図4(b2)に対応する超音波探傷による検査結果を示している。流路の周囲を上方から見た状態を示した。図4(c1)では、流路の周囲に、多数の筋状の模様が確認できる。これは、部材A、部材Bが十分に接合されていない接合不良の箇所を表している。一方、図4(c2)では、かかる接合不良は見られない。
図4(b1)、図4(b2)では、カーボンばねにより加えた圧力値が同じであるから、部材にかかる圧力も等しくなるはずであるが、各プレートが厚い図4(b2)では圧力が均一に加わるのに対し、各プレートが薄い図4(b1)では圧力に偏りが生じているものと考えられる。従って、圧力を加えるために用いるプレートの厚さは、十分に厚いことが好ましいことになる。具体的な厚さは、圧力による撓みが十分に抑制されることが好ましいと考えられ、図4(b1)、図4(b2)に示すように、種々の厚さで接合を行い、接合不良の有無を確認することで実験的に定めることができる。ここでは、2種類の厚さによる結果を示したが、さらに多くの厚さで実験を行えば、接合不良を回避するために必要となる厚さを決定することが可能である。
図5は、ろう材の厚さによる影響を示す説明図である。ろう材の厚さとは、2つの部材の間に介在させるろう材の層の厚さのことである。図5中の左側の列には、ろう材の厚さを38マイクロメートルとした場合における結果を示し、右側の列には、ろう材の厚さを76マイクロメートルとした場合における結果を示した。
図5(a1)、図5(a2)は、接合した部材を真上から見下ろした状態を示している。この例では、矩形の一定厚さの2枚の部材を接合しており、上側の部材には中央に矩形の窓が形成されている。いずれの部材も、GlidCop(登録商標)で形成されている。図5(a1)、図5(a2)に示す通り、ろう材が接合面から窓の内側に若干、はみ出していることが確認でき、ろう材が厚い図5(c2)の方が多量にはみ出していることが分かる。
図5(b1)、図5(b2)は、接合した部材を側面から見た状態である。ろう材が厚い図5(b2)の方が変色している部分が大きいことが確認される。
図5(c1)、図5(c2)は、窓の部分を斜め方向から見た状態である。ろう材が厚い図5(c2)の方が多量にろう材がはみ出していることが確認される。
図5(d1)、図5(d2)は、超音波探傷による検査結果である。窓に対応する矩形枠の内側にろう材がはみ出していることが確認される。また、ろう材が厚い図5(d2)では、窓の周囲に筋状の接合不良の部分が多数確認されるが、ろう材が薄い図5(d1)では、こうした接合不良は確認されない。
以上より、ろう材は必ずしも厚い方が好ましいとは言えないことが分かる。適したろう材の厚さは、表面仕上げの程度に応じて定まると考えられる。微鏡面仕上げの場合、76マイクロメートルよりは、38マイクロメートルの方が好ましいと言える。この例では、2段階の厚さによる結果を示したが、さらに多段階の厚さで接合および検査を行うことにより、適したろう材の厚さを決定することが可能である。また、本実施例では、超音波探傷による接合不良の有無を検査しているが、併せて接合の機械的強度を計測してもよい。
次に、GlidCop(登録商標)と、フェライト相およびマルテンサイト相の一方または双方を含む鉄鋼またはイリジウムとの接合について実験結果を示す。
図6は、F82Hに対してろう付接合処理を施した外観を示す説明図である。下側の部材GがGlidCop(登録商標)であり、上側の部材Fがフェライト相およびマルテンサイト相の一方または双方を含む鉄鋼としてのF82Hである。両者は平面形状が30mm×30mmの正方形となっている。両者の部材の間に38マイクロメートルの厚さのろう材を付して、0.54MPaの圧縮荷重を加えて接合した。
両者間の層Wが、ろう材である。
図7は、F82Hに対するろう付接合処理の超音波探傷試験結果を示す説明図である。図示したグレーの領域Tが部材を平面視した部分であり、黒の領域Dが、部材G、Wが十分に接合されていない箇所を示している。逆に、グレーで示されている領域は、超音波探傷試験によって、部材G、Wが良好に接合されていることが確認された部分である。良好に接合されている部分の面積は、全面積の90%以上を占めており、部材G、Wが全体として良好に接合されていることが確認された。
接合の原理等については、図2〜5で説明した通りであると推察される。
図8は、イリジウムに対してろう付接合処理を施した外観を示す説明図である。下側の部材GがGlidCop(登録商標)であり、上側の部材Irがイリジウムである。部材Gは30mm×30mm×15mm、部材Irは20mm×20mm×1mmである。両者の部材の間に38マイクロメートルの厚さのろう材を付して、0.54MPaの圧縮荷重を加えて接合した。イリジウムの周囲に流出して見える材料Wが、ろう材である。
図9は、イリジウムに対するろう付接合処理の超音波探傷試験結果を示す説明図である。接合した部材の平面視を示した。図示したグレーの領域Irがイリジウムを示し、白っぽい領域GがGlidCop(登録商標)表面に対応している。領域Ir内が、両者が接合している部分ということになる。図示する通り、領域Ir内は、ほぼ均一にグレーとなっており、接合の不良は確認できない。従って、部材G、Irが全体として良好に接合されていることが確認された。
接合の原理等については、図2〜5で説明した通りであると推察される。
以上で説明した実施例のろう付接合工程は、種々の構造物の製造に適用可能である。
図10は、ダイバータの製造例を示す説明図である。ダイバータとは、核融合炉に熱除去等のために備えられる構造体であり、非常な高温に曝されることから、受熱面の素材としてタングステンが用いられる。また、このタングステンをさらに冷却するために受熱面の裏側に熱伝導率が高く機械的強度が強いアルミナ分散強化銅を接合させて用いることができる。
まず、図10(a)に示す通り、ダイバータを構成する部材A〜部材Cを用意する。この例では、部材Aおよび部材BはGlidCop(登録商標)であり、部材Cはフェライトおよびマルテンサイトの一方または双方を含む鉄鋼としてのF82Hである。部材Aには、冷媒を流すための流路が切削により形成されており、部材Bは、この流路に蓋をする板状の部材である。これらの部材A〜部材Cをそれぞれろう付接合する。部材Aには、部材Bと部材Cがそれぞれろう付接合されることになる。本実施例では、部材Aに熱膨張係数が近い部材から順に接合するものとした。即ち、部材Aと同じ素材で形成されている部材Bをまず接合し、次に、部材Aと部材Cを接合するのである。
このように接合を繰り返し実行する場合、一旦、接合された部材同士は、次の部材を接合するために再び熱処理環境下に曝されることになる。部材同士の熱膨張係数が大きく異なる場合には、熱処理の繰り返しによって大きな熱応力を生じることになる。熱膨張係数が近い部材同士を接合するのは、かかる弊害を避け、熱応力の発生を抑制するためである。即ち、部材Aと部材Bは同じ素材であるため、両者の接合後に、部材Cを接合するために、再び熱処理環境下に曝された場合でも、熱応力の発生を抑制することができるのである。
図10(b)には、部材A〜Cが接合された状態を示した。
次に、図10(c)に示すように、冷媒の流路の流入口、排出口となるよう部材Cを加工する。パイプ形状の部材C(F82H)をろう付接合により形成させる理由は、外部から冷却配管を溶接する場合に、GlidCop(登録商標)では溶接がほぼ不可能であるため、部材C(F82H)が最終端であることが好ましいためである。また、部材Aの上面にタングステンまたはイリジウムを接合するように加工を施す。
そして、図10(d)に示すように、部材Aの上面にタングステンまたはイリジウムからなる部材Dをろう付接合する。この接合の工程は、熱処理の条件も含めて、図1に示した通りである。また、タングステンまたはイリジウムとGlidCop(登録商標)のろう付接合に関しては、接合面に特に圧力を掛けなくても良い。
これらの工程を経て、図10(d)に示すダイバータが製造される。図に示したダイバータの形状は、一例に過ぎず、他の素材を用いても、他の形状としても差し支えない。
以上で説明した通り、実施例のろう付方法によれば、アルミナ分散強化銅に対して種々の金属をろう付接合することができる。
本発明は、実施例に限らず、種々の態様で実現することが可能である。また、本発明は、ダイバータに限らず、種々の構造体の製造に利用することができる。
本発明は、アルミナ分散強化銅のろう付接合に利用することができる。

Claims (10)

  1. アルミナ分散強化銅からなる第1部材と、被接合金属からなる第2部材とをろう付接合する接合方法であって、
    前記被接合金属は、フェライト相およびマルテンサイト相の一方または双方を含む鉄鋼、またはイリジウムであり、
    (a) リンを含有するろう材を用意する工程と、
    (b) 前記第1部材、第2部材で前記ろう材を挟み込み、所定の熱処理温度で所定時間加熱する熱処理工程と、
    (c) 前記熱処理工程の後、接合された前記第1部材および第2部材を冷却する工程と、を備え、
    前記熱処理温度は、銅の融点よりも低く、リンと銅との共晶反応により低下した銅の融点よりも高い範囲で設定されている接合方法。
  2. 請求項1記載の接合方法であって、
    前記熱処理温度は、960℃である接合方法。
  3. 請求項1または2記載の接合方法であって、
    (d) 前記熱処理工程に先だって、前記第1部材と第2部材の接合される表面を、それぞれ微鏡面に表面仕上げする工程を備え、
    前記熱処理工程における前記ろう材は、1〜100マイクロメートルの厚さとする接合方法。
  4. 請求項1〜3いずれか記載の接合方法であって、
    前記熱処理工程において、前記第1部材と第2部材に対して、両者が接合される方向に圧力を加える接合方法。
  5. 請求項4記載の接合方法であって、
    相互に締結された第1、第2の端プレートと、両者間に配置される中央プレートを用意し、
    前記第1の端プレートと中央プレートによって、前記第1部材と第2部材を挟み、
    前記第2の端プレートと中央プレート間に弾性体を介在させることにより、第1の端プレートと中央プレート間に配置された前記第1部材および第2部材に圧力を加える接合方法。
  6. 請求項5記載の接合方法であって、
    前記第1、第2の端プレートおよび中央プレートは、前記第1部材および第2部材にかかる圧力分布が略均一となる厚さを有している接合方法。
  7. 請求項1〜6いずれか記載の接合方法であって、
    前記工程(c)は、自然冷却である接合方法。
  8. 請求項1〜7いずれか記載の接合方法であって、
    複数種類の金属からなる複数の前記第2部材が存在するとき、
    前記第1部材を形成する前記アルミナ分散強化銅に熱膨張係数が近い金属で形成された第2部材から順に接合する接合方法。
  9. 請求項8記載の接合方法であって、
    複数の前記第2部材は、それぞれアルミナ分散強化銅、ステンレス鋼、並びに、フェライト相およびマルテンサイト相の一方若しくは双方を含む鉄鋼またはイリジウム、でそれぞれ形成されており、
    前記第1部材を、前記アルミナ分散強化銅、ステンレス鋼、フェライト相およびマルテンサイト相の一方若しくは双方を含む鉄鋼またはイリジウム、で形成された第2部材の順に接合する接合方法。
  10. 請求項1記載の接合方法であって、
    前記第1部材は、アルミナ分散強化銅で形成され熱除去器の冷媒の流路が形成された部材であり、
    前記第2部材は、フェライト相およびマルテンサイト相の一方または双方を含む鉄鋼で形成され前記流路に蓋をする部材である接合方法。



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