以下、本発明に係る平板スレート改修用屋根材の一実施形態(以下「本実施形態」とする)について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る平板スレート改修用屋根材の長手方向端面図である。また、図2は、図1に示した本発明の一実施形態に係る平板スレート改修用屋根材の平面図である。また、図3は、図1に示した本発明の一実施形態に係る平板スレート改修用屋根材を実際に平板スレートの屋根に取り付けた状態を一部断面で部分的に示す端面図である。また、図4は、図3に示した端面図を拡大して示した図面であり、各部材とこの間に形成される空間の差異を明確化するためにハッチングを付して示している。
なお、以下の説明において、上下方向については、平板スレート改修用屋根材を平板スレートに取り付けた状態を基準とする。また、平板スレート改修用屋根材の長手方向は、平板スレート改修用屋根材を平板スレートに取り付けた状態で、屋根の一方の妻側と他方の妻側を繋ぐ方向とする。また、平板スレート改修用屋根材の水上側、水下側については、平板スレート改修用屋根材を平板スレートに取り付けた状態における水流れ方向を基準とし、幅方向についても同様に水流れ方向を言い換えたものとする。
本実施形態に係る平板スレート改修用屋根材100は、屋根の野地板(図面では図示せず)上に軒側から棟側に階段状に重ねられた平板スレートに改修用屋根材を被せて改修する平板スレート改修用屋根材である。
そして、図3に示す平板スレート50(51,52,53,・・・)への取り付け状態で見て、平板スレート改修用屋根材100を被せるべき(取り付けるべき)平板スレート50の上面を被う平面部110と、平板スレート50の略厚み分だけ折り曲げられ、平板スレート50の水下側端部50aを被う水下側折り返し部120と、水下側折り返し部120において折り返されて平板スレート50の下面に沿ってその水上側に向かって所定の長さだけ延在する折り返し延在部125とを有している。
また、図3及び図4に示すように、平板スレート改修用屋根材100を例えば水下側の平板スレート51(52)とこれに各々隣接する水上側の例えば平板スレート52(53)にそれぞれ取り付けた状態で見て、折り返し延在部125には、この幅方向全体に亘って、即ち長手方向一方の端部から他方の端部に亘って平面部110の下面側に向かって突出した水下側凸条折り曲げ部150が形成されている。
また、平面部110の水上側の一部には、この平板スレート改修用屋根材100を被せる例えば平板スレート51(52)の上面とこれより各々水上側に隣接する例えば平板スレート52(53)に被さる水上側の平板スレート改修用屋根材100の折り返し延在部125との間にそれぞれ挿入される所定幅の水上側挿入部130が、平面部110の水上側の一部をなすように平面部110の水上側縁部から所定幅で平板スレート改修用屋根材100の長手方向全体に亘って形成されている。
また、水上側挿入部130には、この上端縁から一定の長さだけ離間した位置に幅方向全体に亘って、即ち長手方向一方の端部から他方の端部に亘って延在する上方に突出した水上側凸条折り曲げ部160が形成されている。
また、上述した水上側凸条折り曲げ部160と同等の形状を有する水浸入防止用凸条折り曲げ部170が、この水上側凸条折り曲げ部160に対して更に水上側に平行に形成されている。そして、水浸入防止用凸条折り曲げ部170の突出部175がその上下の平板スレート50の間の隙間に上向きに突出して、雨水が水浸入防止用凸条折り曲げ部170を乗り越えて建物の中に浸入するのを防止する役目を果たすようになっている。
図5は、本発明の一実施形態に係る平板スレート改修用屋根材100の横方向重なり嵌合結合部100x(図6参照)を一部省略してピン900の部分に沿って破断して示す断面図である。
平板スレート改修用屋根材100が屋根に葺かれた平板スレート50に取り付けられた状態で見て、水下側の平板スレート改修用屋根材100の水上側凸条折り曲げ部160の突出部全体がこの水上側の平板スレート50に取り付けられた水上側の平板スレート改修用屋根材100の水下側凸条折り曲げ部150の内側凹み部155内に嵌合する構造を有することで、水流れ方向に向かって隣接する平板スレート改修用屋根材100同士を結合するようになっている。
また、横方向に互いに隣接する平板スレート50に被せた一方の平板スレート改修用屋根材100の水下側凸条折り曲げ部150の突出部全体が、他方の平板スレート50に被せた他方の平板スレート改修用屋根材100の水下側凸条折り曲げ部150の内側凹み部155内に所定の長さに亘って嵌り込むことで、隣接する平板スレート改修用屋根材100同士を結合するようになっている。
また、横方向に互いに隣接する平板スレート50の一方の平板スレート50に被せた一方の平板スレート改修用屋根材100の水上側凸条折り曲げ部160の突出部全体が、他方の平板スレート50に被せた他方の平板スレート改修用屋根材100の水上側凸条折り曲げ部160の内側凹み部165内に嵌り込む構造を有することで、横方向に隣接する平板スレート改修用屋根材100同士を結合するようになっている。
なお、本実施形態においては、水下側折り返し部120が端面視略U字状に湾曲して折り曲げられ、平板スレート50に被せた状態で、平板スレート50の水下側端部50aと水下側折り返し部120の内側との間に隙間が形成されていることを第1の付加的な構成上の特徴としている。
また、本実施形態においては、図4及び図8(a)に示すように、平板スレート改修用屋根材100を平板スレート50に取り付けた状態で見て、平板スレート改修用屋根材102(100)の水下側凸条折り曲げ部150の内側凹み部155内に、これより水下側に隣接した平板スレート50に被せられた平板スレート改修用屋根材101(100)の水上側凸条折り曲げ部160の突起部165の頂部165aが当接していると共に、平板スレート改修用屋根材102の水下側凸条折り曲げ部150の水下側起立部151と、これより水下側の平板スレート改修用屋根材101の水上側凸条折り曲げ部160の水下側起立部161との間が所定の長さだけ離間している。
また、本実施形態では、平板スレート改修用屋根材100を平板スレート50に取り付けた状態で見て、平板スレート改修用屋根材102(100)の水下側凸条折り曲げ部150の水上側起立部152と、これより水下側の平板スレート改修用屋根材101(100)の水上側凸条折り曲げ部160の水上側起立部162との間が所定の長さだけ離間している。以上の構成を本実施形態における第2の付加的な構成上の特徴としている。
なお、本実施形態に係る平板スレート改修用屋根材100の長手方向一方の端部近傍には、平板スレート改修用屋根材100を平板スレート50に固定するための好ましいビス止めの位置を示すビス止め位置決めマーキング101が予め形成されている(図2参照)。しかしながら、このビス止め位置決めマーキング101は、本発明によると必須の構成要件では無い。
また、この平板スレート改修用屋根材の横方向に隣接する平板スレート改修用屋根材100との距離の横方向重なり嵌合結合部100x,100x’(図6参照)を形成するための重なりラインマーキング102がなされている(図2参照)。しかしながら、この重なりラインマーキング102は、本発明によると必須の構成要件では無い。
なお、ビス止め位置決めマーキング101が重なりラインマーキング102よりも平板スレート改修用屋根材100の長手方向端部側にマーキングされているため、この平面部110に隣接する平板スレート改修用屋根材100を嵌め合わせて結合させると、既に平板スレート50にビス止めした平板スレート改修用屋根材100に現れているビス900の頭910が隠れて見えなくなるようになっている(図5参照)。
より詳細には、図3及び図4に示す点線で囲まれたビス900を用いて平板スレート改修用屋根材100と平板スレート50を固定する部分については、これらの図面では図示しないが、実際は図5において明らかにしたように、ビス900の上に各平板スレート改修用屋根材100の隣接する横方向の平板スレート改修用屋根材100の端部の一部が被さってこのビス900の頭910を被っており、このビス900の頭910の部分が平板スレート改修用屋根材100の横方向の平面部110によって外側に露出せず外側から見えないようになっている。
そして、平板スレート50の葺かれた屋根に平板スレート改修用屋根材100を、図6に示すように左の妻側から右の妻側に向かって横方向に順々に取り付けていたとき、それらの横方向重なり嵌合部100xにおいて、左側の平板スレート改修用屋根材100L(図5参照)の外側に右側の平板スレート改修用屋根材100R(図5参照)が被さり、これによってビス900の頭910が右側の平板スレート改修用屋根材100Rの平面部110で覆われるようになっている。
続いて、本実施形態に係る平板スレート改修用屋根材100を、実際に平板スレート50を葺いてできた屋根に取り付けてこの屋根を改修する手順について説明する。
最初に、屋根の最も水上側、即ち棟側で一方の妻側の平板スレート50に平板スレート改修用屋根材100を接着剤で固定する。この際、本発明の作用により、従来のように大量の接着剤を塗布して平板スレート50に平板スレート改修用屋根材100を取り付ける必要は無い。
次いで、妻側の端部(一方の端部)と反対側の端部近傍にあるビス止め位置決めマーキング101をビス900の取付け位置の目安として、ビス900によって平板スレート改修用屋根材100を平板スレート50にビス止めする。
そして、棟に沿って平板スレート改修用屋根材100を各平板スレート50に繋げて取り付ける際に、隣接する平板スレート改修用屋根材100の一方の水上側凸条折り曲げ部160と、他方の水上側凸条折り曲げ部160同士を長手方向に所定の長さだけ互いに嵌合させる。
同じく、隣接する平板スレート改修用屋根材100の一方の水下側凸条折り曲げ部150と、他方の水下側凸条折り曲げ部150同士を長手方向に所定の長さだけ互いに嵌合させる。
このようにして、一方の平板スレート改修用屋根材100と他方の平板スレート改修用屋根材100とをその長手方向において所定の長さだけ重ね合わせることで、双方の平板スレート改修用屋根材100同士を結合させる。
この重なり合う所定の長さについては、既に平板スレート50に取り付けられた平板スレート改修用屋根材100の他方の端部側にある重なりラインマーキング102にこれに結合する平板スレート改修用屋根材100の長手方向一方の端部近傍を重ね合わせて結合させる。
なお、平板スレート改修用屋根材100の長手方向の長さは一定であるが、屋根の一方の妻側から他方の妻側までの幅は建物ごとに当然に異なっている。そのため、平板スレート改修用屋根材100の長手方向の隣接する横方向重なり嵌合結合部(図6の符号100xや100x’)については、各建物の屋根の大きさに応じて適宜変更する。
これによって、平板スレート改修用屋根材100の長手方向の端部を屋根の大きさに合わせる。このようにして、施工現場においてこれを合わせるために切断するような面倒な作業を必要としなくなる。
これは、図6における1階と2階の屋根の平板スレート改修用屋根材の横方向重なり嵌合結合部100x,100x’を示す右下がりのハッチングの部分において、一番右側のみの横方向重なり嵌合結合部100x’が幅広になっており、この部分で重なり幅を大きくすることで屋根の横方向に亘って全て同じ長さを有する平板スレート改修用屋根材100を共通して用いることができるのを示している。即ち、図6に示すように、本発明によると建物の屋根の割付を調整することが容易にできることが分かる。
一方、図6のように一部(図6では右側)の横方向重なり嵌合結合部100x’のみの幅を変えることで建物の屋根の割付を調整するのではなく、隣接する横方向重なり嵌合結合部同士の重なり幅を屋根の改修時にそれぞれ適時均等に増減させることで、平板スレート改修用屋根材100の寸法の共用化を図りながら、あらゆる横方向の寸法を有する様々な建物の屋根の改修に対応するようにしても良い。
なお、上述の横方向重なり幅を規定するマーキングラインに合わせずにこのような横方向重なり嵌合結合部100xの幅を変える場合であっても、平板スレート改修用屋根材100を固定するビス900の頭910が平板スレート改修用屋根材100の上部から露出せず、隣接する平板スレート改修用屋根材100によって覆われるように重なり領域を寸法決めするのが良い。
続いて、これより水下側に隣接する各平板スレートに平板スレート改修用屋根材100を取り付ける。この際、上述した平板スレートに接着剤を塗布した後、水上側の平板スレート改修用屋根材100の折り返し延在部125と、これが接している水下側の平板スレート50との間に水下側の平板スレート改修用屋根材100の水上側挿入部130を挿入し、水上側平板スレート改修用屋根材100の水下側凸条折り曲げ部150の内側凹み部155内にこれより水下側から挿入した平板スレート改修用屋根材100の水上側凸条折り曲げ部160の突出部全体を嵌合させる(図2乃至図4に示す構造参照)。
そして、平板スレート改修用屋根材100の長手方向一方の端部近傍のビス止め用マーキング101を目印として、ビス900を打ち込み、平板スレート改修用屋根材100を平板スレート50に取り付ける。次いで、1列目の平板スレート改修用屋根材100と同様の手順で、屋根の一方の妻側から他方の妻側まで平板スレート改修用屋根材100を平板スレート50に取り付ける。
以上のような手順で、棟と並行の方向に棟から水下側に2列目の平板スレート改修用屋根材100を取り付ける。このような作業で、棟に一番近い1列目の平板スレート改修用屋根材100と同様に、互いに隣接する平板スレート改修用屋根材100の水上側凸条折り曲げ部160同士を嵌合させると共に、互いに隣接する平板スレート改修用屋根材100の水下側凸条折り曲げ部150同士を嵌合させることで、隣接する平板スレート改修用屋根材100同士を一定の重なり幅をもって結合させる(図5及び図6参照)。
このようにして、水上側から水下側に1列ずつ棟から軒先に向かって平板スレート改修用屋根材100を平板スレート50に被せていく。
以上のような作業を棟から軒先まで行うことで、屋根の平板スレートの上面全体において、棟と並行の方向に亘って全ての平板スレート改修用屋根材100の水上側凸条折り曲げ部160同士が嵌合すると共に、水下側凸条折り曲げ部150同士が嵌合する。
これに加えて、水流れ方向に亘って、水上側の平板スレート改修用屋根材100の水下側凸条折り曲げ部150とこの水下側の平板スレート改修用屋根材100の水上側凸条折り曲げ部160同士が全て嵌合する。これによって、図6に示すように、平板スレート改修用屋根材100を平板スレート50で葺いた屋根全体の上面をあたかも一体化して覆いながら取り付けられた状態に至る。
以下に、平板スレート改修用屋根材のより具体的な手順について、図6に基づいてより詳細に説明する。なお、図6は、説明の都合上平板スレートと平板スレート改修用屋根材の枚数を実際よりもかなり少なくして屋根に取り付けた形を示しているが、実際の平板スレートの寸法は、水流れ方向を縦として、例えば横1メートル、縦40センチ、平板スレート改修用屋根材の寸法は、例えば横1.2メートル、縦30センチ程度である。
従って、標準的な建物の例えば一階の屋根や二階の屋根にこれらを葺く場合、図6に示す一階の部分が横6枚、縦4枚、二階の部分が横6枚、縦3枚となっているが、実際には平板スレート50については一例として横20〜30枚、縦20枚もの多数の枚数となる。また、平板スレート改修用屋根材100についても、それに対応した多数の枚数を屋根の平板スレート上に取り付けることになる。
続いて、模式的に示した図6に基づいて、一階の屋根の平板スレート50に平板スレート改修用屋根材100を取り付ける場合の取付け手順を説明する。最初に一階の屋根の一端の妻側(図中左側)であって水上側(図中水上から水下に4枚並んでいる一番上側)の平板スレート50に接着剤を付けて平板スレート改修用屋根材100を嵌め込み、ビス止めして固定する。
続いて、上述の平板スレート50に取付けられた平板スレート改修用屋根材100の右側に、隣接する平板スレート50を被うように2枚目の平板スレート改修用屋根材100を取り付ける。この際、上述の1枚目と同様に、平板スレート50に接着剤を付けて、2枚目の平板スレート改修用屋根材100を、これを取り付ける平板スレート50に嵌め込むと共に、1枚目の平板スレート改修用屋根材100の水下側折り返し部(例えば図5における120L)に、2枚目の水下側押し返し部(例えば図5における120R)の長手方向一部を被せる。
同時に、1枚目の水下側凸条折り曲げ部(例えば図5における150L)の上に2枚目の水下側凸条折り曲げ部(例えば図5における150R)を、長手方向一定の幅だけ重なるように上から被せて嵌合させる。
同様に、1枚目の水上側凸条折り曲げ部(例えば図5における160L)の上に2枚目の水上側凸条折り曲げ部(例えば図5における160R)を長手方向一定の幅だけ重なるように被せて嵌合させる。更には、1枚目の水侵入防止用凸条折り曲げ部(例えば図5における170L)の上に2枚目の水侵入防止用凸条折り曲げ部(例えば図5における170R)を長手方向一定の幅だけ重なるように上から被せて嵌合させる。
これによって、1枚目の平板スレート改修用屋根材の右端の部分の、特にビスで平板スレートに取り付けた部分を含めて、一定の幅だけ2枚目の平板スレート改修用屋根材がその上に重なるように2枚目の平板スレートに取り付けられる。即ち、図6における左肩上がりのハッチングで示す横方向重なり嵌合結合部100xを屋根全体に亘って形成させることができる。
このようにして、この右側に隣接する3枚目の平板スレート50に、同様の手順で3枚目の平板スレート改修用屋根材100を取り付け、これを連続して図6中右端の妻側まで同様の作業を続ける。なお、一方の妻側から他方の妻側までの距離は、上述したように各建物によって異なるので、図6に示すように一番右側とそれに隣接する2枚の平板スレート改修用屋根材100の横方向重なり嵌合結合部100x’の重なり幅を、他の部分の横方向重なり嵌合結合部100xよりも広くすることで屋根の割付を調節している。
しかしながら、図6とは異なり、それぞれの平板スレート改修用屋根材の横方向の重なり幅を、それぞれ均等に同図に示す若干広め横方向重なり嵌合結合部を示す符号100xの重なり幅より大きく符号100x’の重なり幅より小さい重なり幅になるようにして、割付を調節するようにしても良い。
このようにして、屋根の一階の水上側の一列目の各平板スレート50の全てに平板スレート改修用屋根材100を取付けた後、基本的に同様の手順で水上側から二列目の各平板スレート50のそれぞれに平板スレート改修用屋根材100を取り付け、以下、三列目、四列目・・・と続けて一番水下側の軒先に近い各平板スレート50のそれぞれに平板スレート改修用屋根材100を取り付けていく。
なお、一列目の取付け手順と二列目以降の異なる点としては、図4に示すように水上側の平板スレート53D(50)に被せた水上側の平板スレート改修用屋根材100Uに、水下側に隣接する平板スレート改修用屋根材100Dを嵌合させるときに、この水下側の平板スレート改修用屋根材の水上側挿入部130Dを、水上側平板スレート改修用屋根材100Uの折り返し延在部125Uと水下側の平板スレート52D(50)の上面との間に水下から水上方向に差し込む。
この差し込み作業に当たって、水上側の平板スレート改修用屋根材100Uの水下側凸条折り曲げ部150Uの内側凹み部155Uに、水下側の平板スレート改修用屋根材100Dの水上側凸条折り曲げ部160Dの突出部165D全体を嵌合させて、水上側と水下側の平板スレート改修用屋根材100U,100Dを互いに固定する。このようにして、図6に右肩上がりのハッチングで示す水流れ方向に隣接する平板スレート改修用屋根材同士の水流れ方向重なり嵌合結合部100yを屋根全体に形成させることができる。
以上のようにして、一階の屋根の全ての平板スレート50を、本発明に係る平板スレート改修用屋根材100で改修する。このような改修作業によって、一階の平板スレート50でできた屋根の全てが、屋根の大きさに等しく一体化した平板スレート改修用屋根材100で被われる。なお、図6に示す二階の屋根の改修作業についても、1階の屋根と同様である。
このようにして、屋根の改修に不慣れな作業者であっても迅速かつ確実に屋根の改修を完了させることができる。また、本発明によると屋根の改修作業を行うことで、図6に示すように右肩上がりと右肩下がりのハッチングで示す重なり領域100x,100yが隣接するそれぞれの平板スレート改修用屋根材100の嵌合部分として結合して、あたかも屋根全体を被う一体化した平板スレート改修用屋根材として施工することができる。
なお、水流れ方向重なり嵌合結合部である図6に示す100yと横方向重なり嵌合結合部である図6に示す100x,100x’は、完全にそれぞれ固定結合されているわけでないので、ある程度のズレが許容されるいわゆる遊び部分を持って結合されている。
具体的には、水流れ方向の100yにおける遊び部分については、水下側凸条折り曲げ部(例えば図4に示す150U)の凹み部内に嵌合した水下側に隣接する水上側凸条折り曲げ部(例えば図4に示す160D)がずれる範囲で規定される。また、特に横方向の100x,100x’については、各平板スレート改修用屋根材の長手方向にずれることができる嵌合形態となっている。そして、両者ともその遊びの範囲内においてずれても雨水の浸入防止に何ら影響を与えることはない。
このような本発明特有の構成上の特徴により、例えば大きな地震が発生して家屋が揺れても、上述の隣接するそれぞれの平板スレート改修用屋根材同士の間の遊びがこの揺れを吸収して、仮にこれに被われる平板スレートが割れたりしてもそれらを一体化した平板スレート改修用屋根材でしっかりと被うことで、屋根から剥がれた平板スレート自体や割れた平板スレートの破片が軒先から落下したり、平板スレートから剥離した平板スレート改修用屋根材が軒先から落下するようなことはない。
なお、これは基本的な取付け手順の一例を示すものであって、屋根の妻側の一端側(図6における左側)から他端側(図6における右側)に向けて平板スレート改修用屋根材を順々に取り付けていくことには限定されず、屋根の妻側の他端側(同図の右側)から一端側(同図の左側)に順々に取り付けても良いことは言うまでもない。
本実施形態に係る平板スレート改修用屋根材がこのような構成を有することで、平板スレートの屋根の上面全体を一体化した平板スレート改修用屋根材で被うことができる。これによって、本発明の解決すべき課題の欄に記載した差し込み屋根材に伴う問題点を一気に解決し、施工がし易く、長期に亘って悪天候の影響を受けることがない耐久性と安全性に優れた改修用屋根材を提供することができる。具体的には以下の通りとなる。
屋根は、夏は直射日光で高温となり、冬は冷え込んだり雪が積もったりするうえ、近年の異常気象により巨大台風や強風を伴う集中豪雨などの極度の強い雨風に頻繁に晒されている。そのうえ、屋根は一旦施工すると極めて長期に亘ってそのまま使用することになる。
このような点を勘案すると、背景技術において紹介した先行技術文献1において、施工時に各差し込み屋根材を取り付ける平板スレートにシリコン等の貼着剤で接着して施工したとしても、上述のような苛烈な環境においては、長期間経過した後に接着部分が劣化して剥がれてしまう虞が十分考えられる。
一旦接着部分が剥がれると、それぞれの差し込み屋根材がスレート屋根材に対してずれたり浮いたりしてしまう。そのため、例えば上述した台風や巨大低気圧に伴う暴風雨などによって差し込み屋根材と共に屋根の軒下に滑り落ちたり、差し込み屋根材が落下したり、風で飛ばされて宙に舞ってしまったりするような危険性も考えられる。また、差し込み屋根材でしっかり固定されなくなったスレート屋根材が割れたりして破片となって同じく屋根から離れて分離し、差し込み屋根材が落下したり、風で飛ばされて宙に舞ってしまったりするような恐れもある。
このような差し込み屋根材が個別にそれを被うスレート屋根材から剥がれることによって、スレート屋根材や差し込み屋根材が強風で軒先から落下したり宙に飛んでいったりした場合、その付近を歩く人に当たったりする重大な事故を招く恐れがある。同じく、その付近に駐車している車両に当たって、その車両をひどく破損させてしまう恐れもある。
以上のような問題点に加えて、先行技術文献1による差し込み屋根材をスレート屋根材に被せる施工を行うにあたって、上述したようにシリコン等の貼着剤をそれぞれ確実に塗布して両者をしっかりと接合しなければならないので、施工中に施工者がうっかりと一部塗布し忘れたり、塗布量が不足して十分な接合強度が保てなくなったりする虞もある。
また、屋根の大きさが大きいと、その分シリコン等の貼着剤を接合部全体に確実に塗布しなければならないので、施工工数をかなり要してしまう。また、塗布作業に際しては天候の良い時に行う必要があるので、天候の良し悪しによって屋根の改修のスケジュールがずれ込んでしまう虞もある。
しかしながら、本実施形態に係る平板スレート改修用屋根材によると、以上に記載したような問題を全て解決することができる。
なお、以上の本実施形態の作用に加えて、本実施形態における第1の付加的な構造上の特徴による作用について説明する。本実施形態がこのような第1の付加的な構造上の特徴を有することで、横方向に平板スレート改修用屋根材を連ねると共に連結していく作業の際に、一定長さの横方向重なり嵌合結合部を形成するにあたって、水下側折り返し部が平板スレートの水下側端部のように角ばって折り曲げられていないため、横方向の平板スレート改修用屋根材同士を重ね易くする。
これによって、一方の妻側から他方の妻側に向かって横方向に隣接する平板スレート改修用屋根材を長手方向一部に亘って嵌合した状態で結合させる作業を簡単、迅速、かつ確実に行うことができ、作業に慣れない施工者であっても安全にかつ効率良く屋根の改修作業を可能にする。その結果、平板スレート改修用屋根材の屋根の取り付けに関してスケジュールに遅れが生じることをなくすことができる。
続いて、本実施形態における第2の付加的な構造上の特徴による作用について説明する。本実施形態がこのような第2の付加的な構造上の特徴を有することで、水上側の平板スレート改修用屋根材の水下側凸条折り曲げ部と、水下側の平板スレート改修用屋根材の水上側凸条折り曲げ部が完全に重ならなくなり、両者の間に特に水下側の平板スレート改修用屋根材の水上側凸条折り曲げ部の起立部と、これに被さる水上側の平板スレート改修用屋根材の水下側凸条折り曲げ部の起立部との間に一定の空間を形成することができる。
このような構成に基づき、毛細管現象によって水下側の平板スレート改修用屋根材の水上側凸条折り曲げ部を水が乗り越えていくのをこの空間によって阻止し、水上側の平板スレート改修用屋根材に覆われた平板スレートの上面への水の浸入を防ぐ。その結果、建物内部への水漏れを確実に防止することができる。
なお、上述した第1の付加的な構造上の特徴及び第2の付加的な構造上の特徴の何れか一方のみを有する形態、又は双方とも有さない形態であっても本発明の範囲に属することは言うまでもない。しかしながら、これらの付加的な構造上の特徴を有することで、上述した作用を相乗的に発揮することができる観点から好ましいと言える。
続いて、上述の実施形態の各変形例について説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る平板スレート改修用屋根材の各種変形例を示す端面図及びそれぞれの一部拡大図である。
図7(a)において、折り返し延在部125aの水下側凸条折り曲げ部150aが内側凹み部155aの幅が広い端面視湾曲膨出部として形成されている。また、水上側凸条折り曲げ部160aは、端面視半円形状に形成されている。また、水上側凸条折り曲げ部160aの更に水上側には、端面視半円形状の雨水浸入防止用凸条折り曲げ部170aが形成されている。
また、図7(b)において、折り返し延在部125bの水下側凸条折り曲げ部150bが端面視三角形状の凸条折り曲げ部として形成されている。また、水上側凸条折り曲げ部160bは、端面視三角形形状に形成されている。
また、図7(c)において、折り返し延在部125cの水下側凸条折り曲げ部150cが端面視半円形状の2つの凸条折り曲げ部150c−1,150c−2として互いに所定の距離だけ隔ててそれぞれ形成されている。一方、水上側には、端面視三角形形状の2つの水上側凸条折り曲げ部160c−1,160c−2が互いに一定の間隔を隔てて形成されている。
なお、折り返し延在部125cの2つの水下側凸条折り曲げ部150c−1,150c−2のうち、水下側に形成された水下側凸条折り曲げ部150c−1には、2つの水上側凸条折り曲げ部のうち、水下側に形成され水上側凸条折り曲げ部160c−1に対応するようになっている。
同じく、2つの水上側凸条折り曲げ部160c−1,160c−2のうち、水上側に形成された水下側凸条折り曲げ部150c−2は、2つの水上側凸条折り曲げ部のうち、水上側に形成された水上側凸条折り曲げ部160c−2に対応するようになっている。
これによって、水下側の平板スレートに被せた平板スレート改修用屋根材の水上側凸条折り曲げ部の水下側の一方は、この平板スレートより水上側に隣接する平板スレートに被せた平板スレート改修用屋根材の折り返し延在部の水下側凸条折り曲げ部の水下側の一方に嵌り込む。
また、水下側の平板スレートに被せた平板スレート改修用屋根材の水上側凸条折り曲げ部の水上側の他方は、この平板スレートより水上側に隣接する平板スレートに被せた平板スレート改修用屋根材の折り返し延在部125の水下側凸条折り曲げ部の水上側の他方に嵌り込む。
このようにして、雨水の浸入を水上側に向かって2箇所の凸条折り曲げ部の組み合わせにおいて阻止することによって、確実な雨水の浸入を防ぎ、建物内に雨漏れしないようにし、雨仕舞を徹底させることができる。
続いて、上述の実施形態の更なる変形例について説明する。図8は、本発明の一実施形態及びその各変形例に関する水上側の平板スレート改修用屋根材の水下側凸条折り曲げ部の凹み部に水下側の平板スレート改修用屋根材の水上側凸条折り曲げ部が嵌合した状態をそれぞれ示す図面である。
図8に示す各凸条折り曲げ部同士の嵌合形態に関しては、例えば水下側の平板スレート(図示せず)に被せられた平板スレート改修用屋根材と、これより水上側に隣接する平板スレート(図示せず)に被せられた平板スレート改修用屋根材との組み合わせにおいて、水下側の平板スレート改修用屋根材の水上側凸条折り曲げ部が水上側の平板スレート改修用屋根材の折り返し延在部の水下側凸条折り曲げ部の内側凹み部に嵌まり込んだ形態を示している。
なお、各図面において上下方向や左右方向の図面中の各平板スレート改修用屋根材の寸法関係については、あくまで構成上の理解の容易にすべく例示的に描いたものであり、実際の寸法関係と異なるものである。
具体的には、図8(a)は、上述した本発明の一実施形態の構成を示すもので、水上側の平板スレート改修用屋根材101(100)の折り返し延在部の端面視略半円形状の水下側凸条折り曲げ部150の内側凹み部155内に水下側の平板スレート改修用屋根材102(100)の端面視略二等辺三角形形状の水上側凸条折り曲げ部160が嵌合している状態を示している。
この場合、水下側凸条折り曲げ部150の水下側起立部151と水上側起立部152及び水上側凸条折り曲げ部160の水下側起立部161と水上側起立部162との間はそれぞれ一定の距離だけ隔てた状態で互いに嵌合しており、水下側凸条折り曲げ部150の内側凹み部155内に2つの水浸入防止用空間が形成されている。
次いで、この変形例と異なる各種変形例について説明する。なお、基本的構成については、図8(a)と同じであるので、符号については対応する符号を100番台の数字だけそれぞれ変えて図面に付すことにする。
図8(b)に関しては、図8(a)における端面視略二等辺三角形形状の水上側凸条折り曲げ部160の代わりに、端面視略半円形状の水上側凸条折り曲げ部260が嵌合している。それ以外の構成については図8(a)と同様である。
また、図8(c)の嵌合状態は、図8(a)における端面視略半円形状の水下側凸条折り曲げ部150の代わりに、端面視略二等辺三角形形状の水下側凸条折り曲げ部350が嵌合している。それ以外の構成については、図8(a)と同様である。
また、図8(d)に関しては、図8(c)における端面視略二等辺三角形形状の水上側凸条折り曲げ部360の代わりに、端面視略半円形状の水上側凸条折り曲げ部460が嵌合している。そして、それ以外の構成については図8(c)と同様である。
また、図8(e)に関しては、図8(a)の端面視略半円形状の水下側凸条折り曲げ部550の内側凹み部555内に端面視略異形半円形状の水上側凸条折り曲げ部560が嵌合している。なお、この変形例においては、水下側凸条折り曲げ部550の水下側起立部551と水上側凸条折り曲げ部560の水下側起立部561との間のみが、上述の変形例より隔たっており、両者の間に水浸入防止用の空間が形成されている。
また、図8(f)に関しては、図8(e)の端面視略半円形状の水上側凸条折り曲げ部560を端面視略二等辺三角形形状の凸条折り曲げ部650に変えると共に、端面視異形半円形状を有した水上側凸条折り曲げ部560の代わりに、端面視略直角三角形状の水上側凸条折り曲げ部660が嵌り込んでいる。それ以外の構成については、図8(e)と同様である。
なお、上述の変形例に加えて、横方向の平板スレート改修用屋根材を嵌め合わせて結合する際に、この横方向重なり嵌合結合部であって上側になる平板スレート屋根の更にその上側に結合される平板スレート改修用屋根材と重なっていない部分のみが僅かに下側に向くようにテーパー面を形成するように全体的に折り曲げておいても良い。
具体的には、図1における点線で示すような範囲及び図2の細長のトラック状の点線で示す範囲を目安に、これが重なる下側の折板屋根材の上面方向(図1の矢印fで示す方向)に向けて僅かに傾けることによって、上述した構成を実現することができる。
これによって、横方向の平板スレート改修用屋根材を結合する際に、この一端側折り曲げ部の端部が弾性力によりこれより横方向重なり嵌合結合部の下側となる平板スレート改修用屋根材の上面部に押し付けられるので、水の浸入を防止する。
更にはこれらの横方向重なり嵌合結合部において端部のみ互いに重なってそれより内側は上下に隙間(空間)ができるため、毛細管現象により雨水がこの内部に入り込むことか無い。その結果、雨水の浸入を防止し雨仕舞を確実にすることができる。
最後に本発明の特別な優位点について再度強調する意味で以下に記載する。最初に、本発明に係る平板スレート改修用屋根材を使用することによって、この構造上の特徴として、例えば平板スレートで葺いた1階の屋根と2階の壁の部分の取り合いに特別な施工する必要がなくなり、施工上のかなりの手間と費用を節約することができる。
次いで、本発明特有の第1の優位点として、平板スレート改修用屋根材の水下側凸条折り曲げ部とそれに隣接する水下側の平板スレート改修用屋根材の水上側凸条折り曲げ部が重なり合うと共に、屋根の一方の妻側から他方の妻側に向けて隣接する平板スレート改修用屋根材の水上側凸条折り曲げ部同士及び水下側凸条折り曲げ部同士がそれぞれ一定長さの横方向重なり嵌合結合部において嵌合することに基づく二重構造によって、屋根の水流れ方向と横方向の双方において隣接する平板スレート改修用屋根材同士の接合部の好ましくないズレを無くすことができる。
これによって、平板スレート改修用屋根材が単独で浮き上がらず、各平板スレート改修用屋根材が別個に外れない屋根の改修工法を実現できると共に、隣接する平板スレート改修用屋根材同士の結合部が重なり合うことで、平板スレートを葺いた屋根全体をあたかも一体化した平板スレート改修用屋根材によって完全に被うことができる。
次いで、本発明特有の第2の優位点として、平板スレート改修用屋根材の水流れ方向重なり嵌合結合部において、その上側の平板スレート改修用屋根材の水下側凸条折り曲げ部の内側凹み部に下側の平板スレート改修用屋根材の水上側凸条折り曲げ部の頂部が当接していると共に、この両側に空間が形成されていることで、重ね部の内側凹み部内において平板スレートとこの上面を被う平板スレート改修用屋根材の間の隙間に雨水が毛細管現象により浸入しないようにする。
このようにして、従来の改修用屋根材で問題となっていた雨水の吹き込みを防止する。特に、平板スレート改修用屋根材の重ね部同士の間に空間が形成されていることで、この部分における内側の突起を水が乗り越えていくことがなくなり、雨水の吹き込みの防止を実効あらしめる。
次いで、本発明特有の第3の優位点として、隣接する平板スレート改修用屋根材同士を嵌合させながら結合させるので、平板スレート改修用屋根材を平板スレートに固定するビス止めの箇所を少なくすることができる。具体的には、本発明によると、平板スレート改修用屋根材を平板スレートに固定するビス止めの箇所は、図3に示すように、平板スレート改修用屋根材の長手方向例えば右上1箇所で十分となっている。
従来の構造では、接着剤とビス止めにより平板スレート改修用屋根材がこれを被う平板スレートに対してずれないようにするためには、多数のビス止めを必要とした。しかし、このような多数のビス止めを行うと、平板スレート改修用屋根材と平板スレートとの熱膨張率の違いにより平板スレートのビス止め部にクラックが入ったり平板スレート自体が割れてしまったりするが、本発明によるとビス止め箇所を最小限にすることができるので、このような不具合の発生を防止できる。
また、従来の平板スレート改修用屋根材のように接着剤を多用してこれを平板スレートに固定する必要がない。これによって、接着剤の塗布作業の工数低減を図ることが可能になると共に、慣れない施工者による不十分な接着剤の塗布に起因して生じる平板スレート改修用屋根材の平板スレートからのその後の剥離を防止することができる。
また、従来の構造によると、長期間に亘って平板スレート改修用屋根材が平板スレートから剥離しないようにするために、両者をしっかりと接着固定し過ぎることが多くなり、上述と同様に平板スレート改修用屋根材と平板スレートとの熱膨張率の違いにより平板スレートにクラックが入ったりそれ自体が割れてしまったりしていたが、本発明によるとそのような不具合の発生を防止できる。
しかしながら、本発明によると、図3に示す平板スレート改修用屋根材の長手方向一方の端部近傍に1箇所のみビス止め部を設けることで、平板スレート改修用屋根材同士を屋根の横方向に嵌合した状態でこれら平板スレート改修用屋根材の横方向のスライド遊びを十分確保することができる。
次いで、本発明特有の第4の優位点として、平板スレート改修用屋根材の横接合寸法(重ね部)を適切な寸法に予め決めて各平板スレート改修用屋根材の横方向の長さを自由に調節することができる。そのため、横方向の寸法の割付が容易となる。
建物の屋根の各寸法を当然のことながらその屋根ごとに異なっているが、この第4優位点によって、横方向の寸法が共通する平板スレート改修用屋根材を用いて建物ごとに異なる横方向の寸法を有する平板スレートの屋根の全てに対応させることができる。その結果、平板スレート改修用屋根材の部品の共用化を図ることが可能となり、在庫管理の問題を生じさせることがなくなる。また、割付による切断の許容範囲が多くなり施工性が向上する。
また、ビス止めの箇所が少なくなったり接着剤を塗布の手間が少なくなったりすることに加えて、水上側から水下側への隣接する平板スレート改修用屋根材の凸条折り曲げ部同士を嵌合させると共に、屋根の一方の妻側から他方の妻側に亘って平板スレート改修用屋根材の凸条突起部同士が嵌合することで、平板スレートへの平板スレート改修用屋根材の確実な取り付けを確認しながら施工作業を行うことができるので、未経験者による迅速かつ確実な施工が可能となる。
以上記載した各優位点に基づき、トータルでローコストの平板スレートの改修を可能とする。その結果、長期に亘り安全で安心な平板スレート屋根の改修が可能となる。
更には、本発明が上述のような作用を有することで、何時起こるか予想がつかない地震等の揺れに対応することを可能とする。つまり、いきなり地震による揺れが生じて慌てて外に出ようとした時に、傷んで割れた平板スレートや平板スレートから剥離した平板スレート改修用屋根材が落下してきて家から避難するときに逆に怪我をしてしまうようなことはない。更には規模の大きい地震の発生による屋根の崩壊を防ぐことができ、地震発生後にその住居に住めなくなって別の場所での避難生活を余儀なくされることを回避できる。
また、隣接する平板スレート改修用屋根材の凸条折り曲げ部同士が嵌合する構造を有していることで、近年の異常気象による巨大台風や頻繁な集中豪雨に基づく雨水の吹き込みや浸入を防止することができる。
また、平板スレート改修用屋根材を平板スレートに個別に取り付けた場合に生じる虞のある地震の発生に伴う揺れや強風等による隣接する平板スレート改修用屋根材同士や平板スレート改修用屋根材とこれを取り付けた平板スレートとの好ましくないズレが発生するのを防止することができる。
また、今までのように平板スレートの屋根を改修する際、高度な施工技術を必要とすることなく、簡単な作業で安全かつ確実に屋根を改修することができるので、様々な施工者による屋根の改修施工が可能となる。これによって、必ずしも熟練した板金工等の作業者が屋根を改修する必要はなく、例えば塗装工等の作業者が屋根の改修を安全、迅速、かつ確実に行うことが可能となる。その結果、屋根を改修する際の人材確保がし易く、改修スケジュールの遅れを防止すると共に、低コストで安心、安全、かつ確実な平板スレート屋根の改修作業を行うことができる。
最後に本発明特有の更なる優位点について説明する。近年は、建造物の材料として人体に極めて有害なアスベストが環境規制により使用禁止とされる流れとなっている。このアスベストを含むことで例えば平板スレートの強度を高めることが今までは可能であったが、アスベストの使用の規制後に屋根に葺く新しい平板スレートに関してはアスベストが使用できないので、アスベストの使用の規制前に作られた平板スレートよりも、これから使用される新しい平板スレートについては強度上弱くなる問題がある。
そのため、これから新たに建物を建てて屋根を葺く場合にアスベストを含まない平板スレートを使用した場合、平板スレート自体にクラックが入ったりひび割れたりする様々な深刻な問題が、新築の建物をある程度長期間使用した後に顕著に発生してくる恐れがある。
この場合、従来の平板スレート改修用屋根材を使用して屋根を改修したのでは、上述の解決すべき課題の欄で記載したように、平板スレート改修用屋根材自体が部分的に剥離して落下したり、地震で落下したり、台風や強風などによって飛散してしまったりすると、強度の弱い平板スレートが露出してしまい、この部分の破損が進んで建物の雨漏りを招く恐れがある。
しかしながら、本発明によると、このような今までより強度の低化したアスベストを含まない平板スレートで葺いた屋根であっても、本発明の平板スレート改修用屋根材で一体化して被うような構造となっているので、一部の平板スレートが地震で落下したり、台風や強風で飛び去ってしまったり、両者の熱膨張率の違いに基づいて長期間経った後に一部が剥離してしまったりする恐れがない。
そのため、新築した建物においてこのような平板スレートを屋根に葺いた場合に、ある程度の期間が経過した後に屋根を改修する際に、本発明に係る平板スレート改修用屋根材を使用することが、上述した問題を全て解決する点で非常に意義があると言える。
また、アスベストが含まれる既存の平板スレートを葺いた屋根をその平板スレートを新たに変えることなく平板スレート改修用屋根材で改修する場合であっても、上述したように従来の平板スレート改修用屋根材を用いると、屋根の長期間の使用により両者の熱膨張率の違いに基づいて個々の平板スレート改修用屋根材が平板スレートから剥離して落下したり飛び去ってしまったりするため、アスベストを含む平板スレートが露出してしまい、この部分からアスベストが大気中に飛散してしまうという問題が生じる恐れがある。
しかしながら、本発明の場合、上述したように既存のアスベストを用いた平板スレートで葺いた屋根であっても、本発明に係る平板スレート改修用屋根材で一体化して屋根全体を被うことができるので、これに被われた平板スレートからアスベストが空気中に飛散することがない。
また、確実な雨仕舞を可能とするので、アスベストを含む既存の平板スレートで葺いた屋根を従来の平板スレート改修用屋根材によって改修した場合、雨仕舞が不十分となって平板スレート改修用屋根材と平板スレートとの間に浸入した雨水がやがてアスベストを含んだ状態に地上に落下し、天気が回復した後、水分が蒸発して乾いたアスベストが大気中に飛散してしまう。しかしながら、本発明による平板スレート改修用屋根材を用いることで、このような住居環境の悪化を防止することができる。
また、アスベストを含む既存の平板スレートで葺いた屋根を従来の平板スレート改修用屋根材によって改修した場合、屋根を洗浄水で高圧洗浄すると、幾枚かの平板スレート改修用屋根材がその圧力でアスベストを含む平板スレートから部分的に又は完全に隔離してしまい洗浄液が平板スレートに直接かかってしまったり、隣接する平板スレート改修用屋根材同士の間の隙間から高圧の洗浄液が入り込んでこれに覆われる平板スレートに流れ込んでしまったりするため、上述と同様の居住環境の悪化を招いてしまう虞がある。
しかしながら、本発明によると、屋根を高圧洗浄しても本発明特有の構造によりしっかりした雨仕舞と同様に洗浄液が平板スレートに流れ込むことがなく、居住環境の悪化を招かないようにしながら安心して屋根をきれいに洗浄することができる。
以上のように本発明によると、このような近年特にこれから重大な問題として生じる恐れのある建物の屋根の建材として使用が規制されているアスベストを含んだ平板スレートであって、既に屋根に使用してある平板スレートをそのまま使用しながら平板スレート改修用屋根材で屋根を改修する場合や、新たにアスベストを含まない今までより強度の低化した平板スレートを用いて屋根を葺き直した場合に今後顕著に生じる可能性の高い問題を一気に解決できるという優れた発明であることが分かる。
なお、上述の実施形態及びその各変形例は、あくまで本発明を例示的に示したものに過ぎず、その形状、寸法、材質に関しては本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更可能であることが言うまでもない。