JP6603579B2 - 傾き及び/又は衝撃を感知する臓器運搬装置 - Google Patents

傾き及び/又は衝撃を感知する臓器運搬装置 Download PDF

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Description

関連の技術分野は、臓器又は組織の生存能力を保持及び/又は修復し、臓器又は組織を診断、処置、保管及び/又は運搬のために保存することを可能とする臓器又は組織の灌流装置を含む。参照の便宜上、本明細書中で用いられる「臓器」との用語は、特に指定しない限り、臓器及び/又は組織を意味するものとして理解されたい。
臓器を研究、診断、処置又は移植に用いるまでその臓器の生存可能性を維持できるように、臓器灌流装置は、人体条件を模擬することを目的としている。臓器は、複数の施設間で保管及び/又は運搬する必要がある。灌流時の臓器の保持及び修復においては、虚血再灌流障害の低減が課題とされている。正常又は略正常な機能状態で保管期間を長くすることにより、特定の効果も得られる。例えば、臓器を長距離運搬することができ、また、臓器をテスト、処置及び評価するための時間も増加する。
臓器を略理想条件及び生理状態に維持するために、携帯可能な臓器灌流装置を用いることが知られている。
例えば、特許文献1は携帯可能な臓器灌流装置を用いた構成を開示している。この開示内容全体を参照により本明細書に組み込み、本発明をここで適用することもできるものとする。
米国特許第6,673,594号明細書
摘出した又は人工的に作製した臓器は、携帯可能な灌流装置中で運搬及び/又は保管することができれば有益なはずである。そうすれば、臓器はいかなる距離であっても運搬することができる。運搬中の装置の取り扱いにより、姿勢の変化及び/又は衝撃が装置に生じることがある。装置の姿勢が正常動作姿勢(例えば、水平)に対して所定角度を超えると、デバイスは最適に機能せず、故障することもある。例えば、デバイスの姿勢が正常動作姿勢から大きく逸脱すると、通常は灌流液レベルより下方にある灌流回路が空気又はその他のガスに晒された場合、ガスが灌流回路に引き込まれてしまいかねない。また、装置が大きく傾くと、通常は灌流液に晒されることのないコンポーネントが灌流液に晒され、故障又は異常動作が生じかねない。デバイスが過剰な物理的衝撃(例えば、過剰な力)を受けると、装置は損傷される可能性がある。さらに、装置が過剰な衝撃を受けると、装置に収容されたあらゆる臓器が損傷され得る。したがって、衝撃及び/又は傾き検出部を備えた臓器灌流装置を提供することが望ましい。例えば、加速度計は、装置の向き及び/又は装置に対する衝撃を検出することができる。好ましくは、装置は、傾き及び/又は衝撃検出部により生成された信号に基づいて、動作を変化させることができる。姿勢が正常動作に対して所定角度を超えるか、又は、所定限度を超える1つ又は複数の衝撃を受けると、装置は永久的又は一時的に灌流を中止することができる。装置は、好ましくは衝撃及び/又は姿勢変化がそれぞれの所定量を超えると、衝撃の記録及び/又は姿勢変化を行うことができる。
臓器灌流装置の概略図である。
例示的な実施形態に従った、臓器を灌流する装置であって、装置に作用する傾き及び/又は衝撃を感知する装置を提供する。装置は、臓器又は組織を灌流するように構成された灌流回路と、1つ又は複数の衝撃/又は傾き検出部とを備えることができる。装置はさらに、衝撃及び/又は傾き検出部から送信される信号に基づいて装置を制御するように構成されたコントローラを備えることができる。衝撃及び/又は傾き検出部は、装置の正常動作姿勢に対する装置の角度を検出するように構成することができる。コントローラは、検出された角度に基づいて、灌流回路を制御するように構成することができる。角度が所定角度を超えると、コントローラは、灌流回路を停止することができる。角度が所定角度を超えなくなると、コントローラは、灌流回路を再び作動することができる。
加速度計といった衝撃検出部は、装置が受けた衝撃を検出するように構成することができる。コントローラは、加速度計により検出された衝撃が所定閾値を超えると、当該衝撃を記録するように構成することができる。記録済みの衝撃の履歴は、ユーザによりアクセス可能とすることができる。
例示的な実施形態は、臓器又は組織を灌流する方法を含むことができる。方法は、灌流装置を用いて臓器又は組織を灌流するステップと、灌流装置の姿勢を検出するステップと、検出された姿勢に基づいて灌流を変化させるステップとを含むことができる。方法はさらに、装置の姿勢が正常動作姿勢に対して所定角度を超えると、臓器又は組織の灌流を中止するステップを含むことができる。装置の姿勢が所定角度を超えなくなると、臓器又は組織の灌流は再開され得る。
例示的な実施形態は、臓器又は組織を灌流する方法であって、灌流装置を用いて臓器又は組織を灌流するステップと、灌流装置が受けた衝撃を検出するステップと、衝撃の発生及び、好ましくは、大きさを記録するステップとを含む方法を含むことができる。好ましくは、衝撃は臓器又は組織の灌流中に検出される。
図1は、例示的な臓器20の灌流装置10を示す概略図である。臓器20は、好ましくは、肝臓、腎臓、心臓、肺又は腸であるが、任意のヒト若しくは動物の、天然若しくは人工の、健康、損傷した若しくは疾患のある臓器又は組織であってもよい。装置は、臓器を置くことができる収容槽30を備える。収容槽30は、クレードルを保持することができる。臓器20は、装置10内に置かれる際には、クレードルに配置される。収容槽30は、粗大粒子フィルタとして機能し得る第1フィルタ33を有することができる。収容槽30及び/又はクレードルは、好ましくは、灌流浴を臓器20の周囲に形成することができるように構成されている。収容槽30又は装置10はさらに、クレードルの中又は近傍に位置付け又は合焦される温度センサ40を有することができる。収容槽30又は装置10は、複数の温度センサ40を備えることができ、それにより、故障時の冗長性の担保及び/又は複数箇所での温度測定の実施が可能となる。(1つ又は複数の)温度センサ40は、赤外線温度センサとすることが好ましい。臓器20を収容槽30に配置する場合、温度センサ40を、臓器20に可能な限り近接して配置することが好ましい。これは、好ましくは、臓器20の温度と相関関係にあると考えられる灌流液の温度を測定する温度センサ40の有用性及び精度を向上させるためである。代替的又は追加的に、温度センサ40を用いて、臓器20の温度を直接測定することができる。
収容槽30は、氷、氷水又は塩水等といった冷却材料を収容し得る断熱冷却剤容器50の凹み部内に配置することが好ましい。冷却剤容器50は、装置10に取り外し不能又は取り外し可能に装着しても、装置10の一体モノリシック部分であってもよい。このように、使用にあたり、臓器20はクレードル内に配置され、クレードルは収容槽30内に配置され、収容槽30は冷却剤容器50内に配置される。冷却剤容器50、収容槽30及びクレードルの構成は、好ましくは、冷却剤容器50内の内容物を臓器20又はクレードルに接触させることなく、臓器20の冷却が可能なものであり得る。冷却剤容器50には、氷又は氷水を収容するものとしてここでは説明するが、任意の適切な冷却剤媒体を用いることができる。氷の入手容易性から、氷又は氷水が好ましいが、当業者には、能動的冷却剤媒体(例えば、熱電子冷却若しくは冷房ループ)、氷若しくは氷水に類似の受動的冷却剤媒体又はこれらの組み合わせといった、いかなる適切な冷却剤媒体も利用可能であることが理解されるだろう。冷却剤容器50内に載置することが可能な氷又はその他の冷却剤媒体の量は、臓器20が装置10内に置かれた状態で冷却を行うべき最大時間に基づいて決まると考えられる。
クレードルは、臓器20を定位置に確実に保持するように構成されたコンポーネントを有することができる。こうしたコンポーネントの例としては、クレードルに固持された、ユーザが選択可能な網製品が挙げられる。ユーザが選択可能な網製品は、臓器20がマニピュレート又は移動される際にも臓器20を定位置に保持する。例えば、臓器はマニピュレート(例えば、血管のトリミング又はカニューレの取り付け等)の間、クレードルの網製品を用いて定位置に保持され、その後、収容槽又は灌流装置に置かれる。また、臓器20がクレードルと共に収容槽30へ移動する間や、収容槽30が冷却剤容器50に移動する間や、運搬中に装置10自体が移動する間も、臓器20を定位置に保持することができる。
図1の例示的な灌流装置では、灌流液は、フィルタ33を通過後、第1流路70に沿って流れる。第1流路70は、可撓性チューブ又は剛性チューブといった適切な液体導管72、ポンプ80、圧力センサ90、第2フィルタ34、酸素付加部100及び気泡トラップ110を含む。これらについては後述する。
第1フィルタ33は、好ましくは、(第2フィルタ34に比べて)比較的粗目のフィルタである。こうした粗フィルタは、例えば、臓器の副生成物又はドナーから臓器が摘出される際に生じる副生成物といった大粒子が、装置10の流路に侵入し、流路を詰まらせるのを防止する。第1フィルタ33は、収容槽30に一体化された部分であっても、収容槽30の下流側で第1流路70内の他の位置に配置してもよい。例えば、第1フィルタ33は、収容槽30と別個のコンポーネントとしても、液体導管72内に配置してもよい。
また、第1流路70は、ポンプ80を含むことができる。ポンプ80は、臓器の灌流に関して適切でありさえすればいかなるものであってもよい。適切なポンプの例としては、手動ポンプ、遠心ポンプ及びローラポンプが挙げられる。ローラポンプが含まれる場合、そうしたローラポンプは、(単一のチューブを複数のローラが圧縮する)単一のチャネル又は流路を有するか、又は、(複数のチューブを複数のローラが圧縮する)複数の並列チャネル又は並列流路を有することができる。複数の並列チャネル又は並列流路を有する場合、それぞれのローラが生成するパルスの位相をずらし、ローラポンプから流出する流れの脈動性を単一のローラを用いる場合に比べて比較的低くすることができるように、それぞれのローラを位相ずれ又はオフセットさせることが好ましい。このような複数チャネルを有するローラポンプにより一定流率又は脈動性の少ない流率が得られ、流路におけるその他のコンポーネント及び/又は灌流の対象となる臓器のタイプによっては効果的であり得る。
流路70は、圧力センサ90を含むことができる。圧力センサ90は、好ましくは、ポンプ80の吐出口の後に配置し、ポンプの吐出口で生じる圧力を適切なコントローラ400によってモニタリング及び/又は制御するために用いることができる。圧力センサ90は、圧力を連続的又は周期的にモニタリングすることができる。
流路70は、酸素付加膜又は酸素付加体といった酸素付加部100を含み、灌流液を酸素化することができる。酸素は、任意の適切な手段を用いて酸素付加部100に供給することができる。適切な酸素源の例として、純酸素ガス又は空気といった混合ガスが挙げられる。こうしたガスは、例えば、高圧ガスシリンダで圧縮しても、デュアー瓶で保管できるように液化しても、周囲大気から引き込んでもよい。好ましくは、酸素は、装置10と別体化又は一体化された酸素付加部によって供給され得る。酸素は、任意の適切な手段を用いて生成することができ、こうした手段のいくつかの例として、モレキュラーシーブを用いた圧力スイング吸着(PSA)、セラミック酸素発生器(固体酸素ポンプ)又は水分解が挙げられる。
流路70は、気泡トラップ110を含むことができる。気泡トラップ110は、好ましくは、灌流液に取り込まれた気泡を分離し、こうした気泡が下流に流れて臓器20に流入するのを防止する。気泡トラップ110はさらに、灌流液の脈動性を減少又は排除するアキュムレータとしても機能する。気泡トラップ110は、初期的に又は気泡の蓄積により或る量のガスを溜めることができ、それにより、灌流液の圧力変化を緩衝又は排除する。
また、気泡トラップ110はベントを有し、ここから起動処理中又はパージ処理中にガスをパージすることができる。ベントは、(詳細に後述する)パージ流路140に接続しても、パージ流路140の一部としてもよい。好ましくは、ベントは起動処理中に開き、それにより、あらゆる空気又はその他のガスが灌流浴70からパージされる。ガスが灌流浴70からパージされると、即座にベントを閉じることが好ましい。ベントは、手動で閉じても、コントローラ400を用いて自動で閉じてもよい。
気泡トラップ110は、レベルセンサ112を有することができる。レベルセンサ112は、パージ処理中にパージの完了時を判定するために随意的に用いること及び/又は気泡が気泡トラップ110に溜まった後に生じるような、パージ処理を繰り返す必要がある場合を判定するために用いることができる。また、レベルセンサ112及びベントを用いることにより、気泡トラップのアキュムレータ機能を、灌流液流の脈動の振幅及び周波数を異ならせるように調整することができる。
気泡トラップ110は、灌流装置の特定用途の必要性に応じて、多数の出口を有することができる。図1には、3個の出口が示されており、それぞれが異なる流路に接続している。この構成は、特に肝臓の灌流に適している。肝臓を灌流する場合、3本の流路は、肝臓の門静脈に接続する門静脈流路120と、肝臓の肝動脈に接続する肝動脈流路130と、収容槽30への帰還経路を形成するバイパス流路140とを含むことが好ましい。流路には、灌流溶液への流体通路を形成するポートを設けることができる。ポートは、好ましくは、気泡トラップ110に位置付けられている。こうしたポートは、好ましくは、ユーザが分析用の灌流液サンプルを採取できるように標準ルアー型継手を有する。また、ポートを利用して、ユーザは、収容槽を開ける必要なく灌流液に物質を投与することもできる。
図1に示されているように、門静脈流路120及び肝動脈流路130は、随意的に、類似した又は異なるコンポーネント、例えば、バルブ122、132、気泡センサ124、134、フローセンサ126、136、フロー制御クランプ127、137及び圧力センサ128、138を含むことができる。各類似コンポーネントは類似態様で機能することができ、またこのようなコンポーネント対は、随意的に構造的及び/又は機能的に同一として、製造コストを削減できるようにする。フローセンサ126、136は、チューブの周囲に配置される超音波センサとすることが好ましいが、いかなる適切なセンサを用いてもよい。超音波センサは、通常使用時において灌流液と接触することがなく、無菌流路に配置されることがないため好都合である。このような超音波センサの実施形態は、使用後の交換及び/又は洗浄を必要としない。
バルブ122、132は、チューブを圧搾し、流れを減少又は阻止する機能を果たすピンチバルブとすることができるが、いかなる適切なバルブを用いてもよい。ピンチバルブは、通常使用時において灌流液と接触することがなく、使用後に交換及び/又は洗浄を必要としないため好都合である。
気泡センサ124、134は、チューブの周囲に配置された超音波センサであることが好ましいが、いかなる適切なセンサを用いてもよい。ピンチバルブと同様に、超音波センサは、通常使用時において灌流液と接触することがなく、使用後に交換及び/又は洗浄を必要としないため好都合である。その代わりに、超音波センサは、チューブの外面に接触、近接又はその周りに配置して、気泡を感知できるようにする。
フロー制御クランプ127、137は、門静脈流路120及び肝動脈流路130の一方又は双方における流率の微調整のために用いることができる。好ましくは、臓器は、気泡トラップ110から流出し、門静脈流路120と肝動脈流路130とに分岐する流量を制御するための自己調節を実現する。こうして自己調節された流れにおいて、圧力センサ128、138は過剰圧力をモニタリングする。門静脈流路120及び肝動脈流路130の一方又は双方で臓器に送り込まれる圧力が所定閾値を上回ると、装置10は、ポンプ80によって供給される流率を自動的に停止及び/又は減少し、臓器への損傷を防止する。付加的又は代替的に、圧力センサ128、138を用いて、圧力が所定閾値に近づくと警告信号をユーザ及び/又は適切なコントローラに発することができる。
門静脈流路120及び肝動脈流路130の一方又は双方から流出した後、灌流液は、臓器中を流れ、収容槽30に帰還して臓器浴を形成する。
バイパス流路140は、バルブ142及び/又は酸素センサ144やpHセンサ146といったセンサを含むことができる。バルブ142は、ピンチバルブ、かつ、バルブ122、132と同様の構造を有するものであることが好ましいが、いかなる適切なバルブを用いてもよい。酸素センサ144及びpHセンサ146は、灌流液の状態を判定するために用いることができる。好ましくは、バイパス流路140は、パージ処理時又はプライミング処理時のみに用いられる。ただし、バイパス流路140を灌流時に、好ましくは連続的に用いて、リアルタイムで灌流液特性をモニタリングすることもできる。
臓器灌流装置10はさらに、1つ又は複数の衝撃及び/又は傾き検出部150を備えることができる。そうした複合型の検出部の例として、加速度計が挙げられる。加速度計150は、3軸加速度計であることが好ましいが、その他の複数軸加速度計又は複数の1軸加速度計を用いて同様の効果を得ることができる。例えば、複合型のデジタル6軸‐9軸加速度計、単純な重力式、気泡式、化学反応式若しくは導電式の傾斜計又は衝撃センサを用いてもよい。当業者には理解されるように、傾きを検出し、好ましくは、測定することが可能なデバイス及び/又は衝撃を検出し、好ましくは、測定することが可能なデバイスであればいかなるものを用いてもよい。衝撃及び/又は傾き検出部150は、装置10の状態を連続的又は周期的にモニタリング及び/又は記録するために用いることができる。
モニタリングは、過剰な衝撃及び装置10の姿勢のモニタリングを含み得る。こうしたモニタリングを行うことにより、装置10の誤使用又は潜在的に不適切な条件を検出及び記録することができる。
コントローラ400は、衝撃及び/又は傾き検出部150により生成された1つ又は複数の信号を利用して、灌流回路の任意のコンポーネントの制御、例えば、ポンプ80及び/又はピンチバルブ122、132、142の制御に関する決定を行う。例えば、装置10の姿勢が正常動作姿勢又は正常動作位置に対して所定角度超だけ変化した旨を示す信号を加速度計150が生成すると、コントローラ400は、ポンプ80を停止するように信号を発生する。所定角度に基づいて、装置10の任意のコンポーネント、特に、灌流回路の任意のコンポーネントを制御することができる。所定角度に基づいて、コントローラ400は、1つ又は複数のピンチバルブ132/142を閉じ、液体及び/又はガスを含む流体が門静脈流路120、肝動脈流路130及び/又はその他の流路に流出するのを防ぐことができる。所定角度は、装置の特定の構造に応じて選択される任意の角度とすることができる。所定角度は、好ましくは、5〜25度、より好ましくは、5〜10度である。例えば、所定角度は、5度、10度、5〜25度のその他の角度又はそれ以上とすることができる。コントローラ400は、装置の姿勢が所定角度を超えると、装置10の動作を直ちに変化させることができる。あるいは、コントローラ400は、その角度が所定角度を所定時間だけ超えた場合に、装置10の動作を変化させることにしてもよい。所定時間は、装置の構造及び/又はユーザの必要により決まる任意の時間とすることができ、1000分の1秒、100分の1秒、10分の1秒又は秒等の単位であり得る。当業者には理解されるように、所定時間は、実証的検証又は医師若しくは臨床医といったユーザの指示により決めることができる。灌流中、衝撃及び/又は傾き検出部150が、任意の角度、例えば、0〜10度の傾きで生じ得る傾き角度の変化を検出すると、コントローラ400は、ポンプ80を減速させ、ポンプ80を一定速度で維持しつつ、ピンチバルブ132/142を閉じるか、又は、ポンプ80を閉じ、さらにピンチバルブ132/142を閉じることができる。コントローラ400は、傾きが検出されると、ポンプ80の停止及び/又はピンチバルブ132/142の閉弁を短時間だけ行い、傾きが検出されなくなると、ポンプ80の再開及び/又はピンチバルブ132/142の開弁を行うことができる。また、コントローラ400は、所定閾値を超えるレベルの衝撃又は振動に基づいて同様の決定を行うことができる。
コントローラ400は、装置10の姿勢が所定角度を超えなくなると、正常動作を再開することができる。例えば、灌流の中止時間が長引くことによって生じ得る臓器の損傷を防止するためには、ポンプ80の動作を再開することが好ましいだろう。あるいは、装置10が所定角度超だけ傾いた場合は、例えば、傾きにより気泡又はその他の有害物質が灌流浴及び/又は臓器に取り込まれた可能性もあるため、灌流を再開しないことが好ましいだろう。また、装置が所定量超だけ所定角度を超えた場合及び/又は所定時間超だけ所定角度を超えた場合は、このような長時間の灌流により有害物質が灌流浴及び/又は臓器に取り込まれた可能性が高くなるため、灌流を再開せず、その代わりに静的冷却保存することが好ましいだろう。代替的に、段階的な制御スキームを用いることもできる。例えば、コントローラ400は、第1角度範囲(例えば、0度超5度未満)が検出されると、ポンプ80を減速させ、第2角度範囲(例えば、5〜10度)が検出されると、ポンプ80を停止することができる。また、コントローラ400は、第2角度範囲が所定時間超だけ維持されると、灌流を中止し、静的冷却保存をデフォルトで設定することができる。所定時間は、実証的検証に基づいて医師若しくは臨床医といったユーザが決めることができる任意の時間とすることができ、例えば、15〜30秒、1分、又は5分等であり得る。さらに、コントローラ400は、第2角度範囲より高い第3角度範囲(例えば、10度超)が検出されると直ちに、静的冷却保存をデフォルトで設定することができる。
コントローラ400は、衝撃及び/又は傾き検出部150により感知された衝撃を記録することができる。衝撃の記録は、装置が誤操作されたか否かに関する検出をする上で有益であり得る。過剰な衝撃は、臓器及び/又は装置10に損傷を与えかねない。したがって、衝撃及び/又は所定閾値を超える全ての衝撃を記録することが好ましいだろう。所定閾値は、装置10又は臓器に対して損傷を与え得る衝撃の大きさに基づいて決定することができる。所定閾値は、臓器を損傷させるレベル未満であることが好ましいと考えられる。例えば、所定閾値は、2G〜3Gの範囲とすることができる。衝撃の上限を超えた旨の警告をユーザに発することができる。コントローラはさらに、生じた衝撃を総計し、この総数を用いて、衝撃の総数が装置10及び/又は臓器に損傷を与えたか否かを判定することができる。衝撃の履歴は、ユーザによりアクセス可能とすることができる。衝撃の履歴を表示してユーザに衝撃を通知すること及び/又は記録された衝撃を表示しないか、表示するとしてもパスコードの入力によってのみ表示することができる。衝撃を公開表示しないことにより、製造者又はメンテナンス業者は、ユーザが装置10を誤操作又は誤使用したにも関わらず製造者又はメンテナンス業者に通知せずにいたか否かを判定することができ、有益であり得る。記録された衝撃を表示することにより、ユーザは即座に臓器及び/又は装置10に生じたと考えられる損傷に対して修復対応することができるため、有益であり得る。装置10は、表示されない第1閾値に基づいて衝撃を記録しても、表示される第2閾値に基づいて衝撃を記録してもよい。また、装置10の姿勢は、公開的又は選択的に記録及び/又は表示することができる。好ましくは、記録された傾き及び/又は衝撃は遠隔アクセス可能とすることができる。例えば、記録された傾き及び/又は衝撃は、有線又は無線の任意のネットワーク(例えば、セルラーネットワーク、ローカル無線ネットワーク及び/又はインターネット)とすることができる。
装置10はさらに、臓器20以外の要素のための保管隔室を備えることができる。例えば、装置10は、臓器20に関するドキュメント及び/又はチャートを保管するドキュメント隔室を備えることができる。また、装置10は、1つ又は複数のサンプル隔室を備えることができる。サンプル隔室は、例えば、流体及び/又は組織のサンプルを保管するように構成することができる。サンプル隔室は、効果的には、冷却剤容器50の近傍に配置して、臓器20に対して行う冷却と同様又は同等の冷却を行うことができる。
また、装置10は、1つ又は複数のタンパーエビデントクロージャを有することができる。タンパーエビデントクロージャを用いて、装置10が未認証の時間及び/又は場所で、及び/又は未認証の人物によって開封されたことをユーザに警告することができる。タンパリングの痕跡に基づいて、臓器20及び/又は装置10の使用前に、ユーザに対して追加的な検査又はスクリーニング等を行うよう警告することができる。装置10は、加速度計150又は関連の記録を用いてタンパリングの痕跡を提示するための1つ又は複数のタンパーエビデントクロージャを有することができる。
本明細書において説明及び例示したものは、いくつかの変形形態を伴う本発明の好ましい実施形態である。本明細書において使用されている用語、説明及び図面は例示のみを目的として説明されており、限定を意図したものではない。当業者であれば、種々の変更例も本発明の精神及び範囲に含まれることは理解されるだろう。

Claims (9)

  1. 臓器又は組織を灌流する装置であって、
    前記臓器又は組織を灌流するように構成されている灌流回路と、
    当該装置の正常動作姿勢に対する当該装置の角度を検出するように構成されている傾き検出センサと、
    前記傾き検出センサから受信する信号に基づいて当該装置を制御するように構成されたコントローラと、を備え、
    前記コントローラは、第1角度範囲が検出されると、灌流を減速させ、第1角度範囲より高い第2角度範囲が検出されると、前記臓器又は組織の灌流を停止し、第2角度範囲が所定時間を超えて維持されると、灌流を終了し、静的冷却保存を行い、
    前記コントローラは、前記角度が所定角度を超えなくなり、かつ、前記角度がそれまでに前記第2角度範囲を前記所定時間より超えなかった場合にのみ、前記灌流を再開するように構成されている、装置。
  2. 請求項1記載の装置において、
    当該装置が受けた衝撃を検出するように構成されている衝撃検出センサをさらに備える、装置。
  3. 請求項2記載の装置において、
    前記コントローラは、所定閾値を超えるレベルの衝撃又は振動を検出すると、前記臓器又は組織の灌流を停止する、装置。
  4. 請求項1記載の装置において、
    前記コントローラは、前記第2角度範囲より高い第3角度範囲が検出されると直ちに、静的冷却保存を設定する、装置。
  5. 請求項2記載の装置において、
    前記コントローラは、前記衝撃検出センサにより検出された前記衝撃が所定閾値を超えると、当該衝撃を記録するように構成されている、装置。
  6. 請求項記載の装置において、
    記録済みの衝撃の履歴はユーザによりアクセス可能である、装置。
  7. 請求項記載の装置において、
    記録済みの衝撃の履歴は遠隔からアクセス可能である、装置。
  8. 請求項1記載の装置において、
    前記傾き検出センサは、加速度計を備える、装置。
  9. 請求項1記載の装置において、
    前記傾き検出センサは、3軸加速度計を備える、装置。
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