JP6603055B2 - 体力推定方法 - Google Patents
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Description
図1は、本発明の実施形態の体力推定システム100の構成図である。はじめに、本実施形態の概要について説明する。
解析部24、算出部30および後述する判定部40はCPUにより実現され、記憶部10はメモリにより実現される。なお、記憶部10が情報を記憶するとは、記憶部10がデータを記憶する機能を有することを意味しており、当該データが常に格納されていることを必ずしも要しない。また、記憶部10は複数のメモリによって構成され、後述する各種の情報(関係情報MR、過去情報PDおよび飲食料情報FIなど)を分散して記憶してもよい。
このほか、体力推定システム100は対象者Pの歩行動作の動画像を撮影するビデオカメラ(図示せず)を備えてもよい。
そこで本発明者らは、サンプルデータ提供者である多数の被験者から実際に体力測定を行って取得した動作項目の測定値と、当該被験者から計測した多数の歩行パラメータとを統計的に分析した。その結果、驚くべきことに多くの体力要素と歩行パラメータとの間に相関関係が認められた。すなわち、一または複数の体力要素について体力測定の測定値と歩行パラメータとの相関式を関係情報として予め取得しておくことで、以降の対象者Pにおいては身体に負担の掛かる体力測定を実際に行わずとも、歩行パラメータを計測して関係情報を参照すれば容易に体力測定の測定値を推算することが可能になり、もって本方法および体力推定システム100が完成した。
したがって本方法および体力推定システム100によれば、対象者Pは自然で無理のない歩行動作をするだけで、一以上の体力要素の評価値が算出されて行動体力を判定することができる。
対象者Pから計測する歩行パラメータには、被験者(母集団)から計測されて重回帰式の説明変数に用いられた上記複数種類と同種の歩行パラメータが少なくとも含まれている。そして、対象者Pから計測された、重回帰式の説明変数と同種の歩行パラメータを用い、重回帰式(関係情報MR)に基づいて体力要素の評価値を算出する。
性別や年齢(年齢層)が対象者Pと共通する被験者が母集団に少なくとも一人(対象者Pを除く)は含まれることが好ましく、更に対象者Pの性別および年齢層と被験者の母集団の性別および年齢層とが一致していてもよい。すなわちたとえば、被験者の母集団を、男/女別、および若齢層(例:20歳以上49歳以下)/高齢層(例:50歳以上79歳以下)別にカテゴリー分類し、各カテゴリーについて体力測定の測定値と歩行パラメータとの相関式(重回帰式)を求めて記憶部10に記憶しておいてもよい。そのうえで、対象者Pが属するカテゴリーの相関式を参照して、対象者Pから計測した歩行パラメータに基づいて対象者Pの体力要素の評価値を推算してもよい。これにより対象者Pの体力要素の評価値を精度よく推算することができる。
ただし本発明者らの検討によれば、被験者の母集団をカテゴリーに分類せずとも、性別および年齢層に顕著な偏りがなく、かつ十分な人数(たとえば100人以上)の母集団から体力測定の測定値と歩行パラメータを取得しておくことで、性別や年齢層を問わず任意の対象者Pに対して体力要素の評価値を精度よく推算できることが明らかになっている。
持続力は行動を持続する能力のことであり、たとえば最大酸素摂取量にみられる全身持久力や、腹筋運動のように筋肉の伸縮動作を繰り返す筋持続力などの下位項目によって評価される。
筋力は行動を起こす能力のことであり、握力にみられる静的筋力や、跳び上がるまでの速さである全身反応時間にみられる瞬発力などの下位項目によって評価される。
調節力は行動を調節する能力のことであり、全身を使った素早い動きを必要とする敏捷性や、立っている時のバランス維持機能である平衡性、細かい作業を行う巧緻性など複数の下位項目によって評価される。
全身持久力は、3分間歩行や5分間走などにて広く評価されている。これは3分間や5分間などの決められた時間を限界の速度で歩行または走行する動作項目である。本方法では、対象者Pに身体的な負荷をなるべく掛けずに自然な歩行動作に基づいて体力要素を評価することから、全身持久力の測定は行わないこととしてもよい。したがって表1の該当欄は空欄としている。
筋持久力は、椅子座り立ち(チェアスタンド)にて広く評価されている。これは、手を使わずに所定時間内に椅子に座ったり立ったりを繰り返すことができる回数か、または所定回数の座り立ちに要する時間の測定値である。このほか、仰向けの姿勢で上体を起こす上体起こしによって測定する場合もある。
<筋力>
静的筋力は、握力計により測定される握力(最大握力)にて広く評価されている。
瞬発力は、光刺激に反応して跳び上がるまでの速さを計測する全身反応時間にて広く評価されている。このほか、50m走などの短距離走によって測定する場合もある。
<調節力>
平衡性は、両目を閉じて片足立ちで静止した場合の重心位置の平面方向のズレを計測する重心動揺にて広く評価されている。
柔軟性は、床に座って膝を伸ばして前屈したときの指先の到達距離を計測する長座位前屈にて広く評価されている。
巧緻性は、両手に持った各1本のペグを盤の遠位の穴から近位の穴へと正しく移し変える動作の速度を計測するペグ移動にて広く評価されている。また、ソフトボール投げなどの投擲項目によって、巧緻性および上記の瞬発力を測定する場合もある。
敏捷性は、左右に反復して繰り返して跳ぶ速度や回数を計測する反復横跳びのほか、急に落下する棒を素早く掴むのに要する時間を計測する棒反応時間平均や、座位による足踏み回数を計測するステッピングテスト、光刺激に対する上下左右4方向への反応時間を計測する4方向リアクションなどによって多面的に評価される。4方向リアクションは更に、反応開始までの時間(4方向反応時間)、反応開始から動作終了までの時間(4方向移動時間)、これらの合計時間(4方向動作時間)に分けて計測される場合もある。
体力要素の評価値としては、体力測定の動作項目(最大握力や反復横跳び等)の推定値でもよく、または、一または複数の動作項目の推定値に基づいて判定された下位項目(全身持久力、筋持久力、静的筋力、瞬発力、平衡性、柔軟性、巧緻性または敏捷性)の能力値でもよく、更には、一または複数の下位項目もしくは動作項目の能力値に基づいて総合的に判定された体力要素(持続力、筋力または調節力)の判定値でもよい。
なお、本方法および体力推定システム100は、対象者Pの行動体力を構成する一以上の体力要素またはその詳細項目に関する評価値を算出するほか、これに加えて対象者Pの行動体力を総合評価する評価結果を算出してもよい。
計測部20の歩行跡計測手段22で被験者および対象者P(以下、併せて被験者と総称する場合がある)から計測される歩行パラメータについて説明する。下表2の左欄に、歩行パラメータの例を示す。
ケイデンスは、歩行率やピッチとも呼ばれ、左右一方の踵が接地してから左右同じ側の踵が再び接地するまでの時間から、1分間の歩数を計算した値であり、単位は[歩/分]である。
後述する表3および表4に示すように、スピードおよびケイデンスは、様々な体力要素に対して強く相関することが本発明者らの検討により明らかとなっている。
歩幅[%]とは、被験者の身長で除して基準化した値を用いることを示している。左右一方の踵が接地してから、その一方の踵が再び接地するまでの時間をストライド時間という場合がある。
Δ歩幅[%]は右歩幅と左歩幅の差の絶対値(歩幅左右差)であり、左右一方の足の踵の接地から再度の接地までの距離と、他方の足の踵の接地から再度の接地までの距離との差である。被験者の身長で除することにより基準化したものを使用することが好ましい。
ストライド長は、左右一方の踵が接地してから、当該一方の踵が再び接地するまでの距離であり、軸足になっている足の左右に基づいて歩幅の左右を定める。たとえば図2(b)に示す右ストライド長は、右踵が接地してから、左足の接地を介して右踵が再び接地するまでの距離であり、被験者の身長で除して基準化した値(右ストライド長[%])として用いるとよい。
Δストライド長[%]は、左右のストライド長の差異の絶対値(ストライド長左右差)を被験者の身長で除して基準化したものである。
Δ歩隔[%]は、左右一方の足を軸足として他方の足を踏み出したときの歩隔と、軸足が左右逆の場合の歩隔との差の絶対値(歩隔左右差)であり、身長で除して基準化したものである。
なお、歩隔および歩行角度の計測の基点となる踵内の点は、たとえば足圧分布画像から足圧後部の圧力中心点により定めることができる。
Δつま先角は、左右のつま先角の差(つま先角度左右差)である。
立脚期とは、図2(c)に示すように左右一方の踵が接地してから、当該一方の足が地面から離れるまでの期間である。遊脚期とは、左右一方の足が地面から離れてから、当該一方の足の踵が次に接地するまでの期間である。立脚期の長さを立脚期時間といい、遊脚期の長さを遊脚期時間という。立脚期および遊脚期は左右の足を区別して計測し、また1歩行周期に対する長さの割合より基準化するとよい。たとえば左遊脚期[%]は、左足が地面から離れている時間の、1歩行周期に対する割合である。
Δ遊脚期[%]は、右遊脚期時間と左遊脚期時間の差異の絶対値(遊脚期左右差)を、1歩行周期で基準化した割合である。
Δ両脚支持期時間[%]は、右両脚支持期時間と左両脚支持期時間の差異の絶対値(両脚支持期時間左右差)を、1歩行周期で基準化した割合である。
なお両脚支持期時間は、比較的、被験者の精神状態の影響を受けにくく、恣意的な制御も受けにくい。通常の歩行行為では、両脚支持期時間は、歩行周期の約20%を占めるが、瞬発力が劣る被験者は長くなる傾向にある。
本実施形態の体力推定システム100に用いられる計測部20は、上記の歩行パラメータの一部または全部を被験者から計測する手段である。計測部20で複数種類の歩行パラメータを計測し、算出部30によって体力要素の評価値を算出する場合にはその一部の歩行パラメータを用いてもよい。算出部30による演算に用いられる歩行パラメータとしては、評価値が算出される体力要素、その下位項目または体力測定の動作項目に予め対応付けられている一種類または複数種類の歩行パラメータを選択して用いてもよく、または複数の体力要素に亘って共通の歩行パラメータを用いてもよい。後述する表3には、体力測定の動作項目ごとに予め対応付けられた各3種類の歩行パラメータを示している。また、共通の歩行パラメータとしてケイデンスおよび歩幅を少なくとも用いることにより、多くの体力要素の下位項目に対して評価値を精度よく算出できて好ましいことが本発明者らの検討により明らかとなっている。算出部30による演算に用いられる歩行パラメータとしては、たとえばケイデンスおよび歩幅を含む共通の歩行パラメータ(共通パラメータ)と、体力要素の下位項目または体力測定の動作項目ごとに対応付けられた個別の歩行パラメータ(個別パラメータ:たとえば表3に示す歩行パラメータ第1から第3)と、を組み合わせて用いてもよい。
シート式圧力センサとしては、たとえば、アニマ社製のシート式下肢加重計シリーズウォークWayや、AMTI社製の床反力計などを使用することができる。なお、シート式圧力センサにより歩行パラメータを計測する場合の対象者Pや被験者の歩行距離は、5m以上15m以下、好ましくは5m以上10m以下とすることができる。
歩行跡計測手段22としてシート式圧力センサを用いることで、歩行角度の基点となる踵内の圧力中心点を正確に特定することができる。すなわち歩行跡計測手段22としてシート式圧力センサを用いる場合、左右の脚に関する歩隔もしくは歩行角度、またはこれらの左右差を含む歩行パラメータを取得するとよい。
20歳代から70歳代を対象とした男女127名を被験者として、表1に示した体力測定の動作項目の実測値と、シート式圧力センサとしてアニマ社製ウォークWayを用いて歩行パラメータを取得した。そして、動作項目の実測値を目的変数(従属変数)とし、歩行パラメータを説明変数(独立変数)として重回帰式を作成した。
図3は、反復横跳びを動作項目とする場合について、体力測定による実測値と、複数種類の歩行パラメータに基づいて算出された歩容推定値との関係図である。歩容推定値とは、被験者から体力測定によって実測した動作項目の測定値を、一または複数種類の歩行パラメータと回帰式とに基づいて推定した値である。
また、下表2に、計測部20により取得された23種類の歩行パラメータと、各パラメータを説明変数とし、反復横跳びの回数を目的変数とした場合のt値、有意確率および標準化係数を示す。
すなわち、反復横跳びの回数に対して有意であるスピード(歩行速度)やケイデンスなどの歩行パラメータが、比較的大きな標準化係数として算出されたことから、歩行パラメータおよび重回帰式に基づいて歩容推定値を算出することで、この歩容推定値は反復横跳びの回数(実測値)を高い精度で相関する。現に、図3中に示すように反復横跳びの回数(縦軸y)と歩容推定値(横軸x)とは、ほぼy=xの関係を有するとともに、寄与率R2=0.51と高い値となり、両者は良く相関している。
また、静的筋力(筋力)を示す握力や、巧緻性(調節力)を示すペグ移動など、一見すると歩行動作から推定することが困難な体力要素に関しても、歩行パラメータに基づいて高い精度で評価値を算出できることが分かる。
表3の結果より、スピード(歩行速度)およびケイデンスという2種類の歩行パラメータにより、多くの動作項目の歩容推定値を有意に推定できることが分かる。また、スピード(歩行速度)およびケイデンスに加えて、距離情報(歩幅、つま先角、歩行角度)や時間情報(両脚支持期時間)を用いることにより推定精度が向上することが分かる。
体力推定システム100は、関係情報MRとして記憶されている総ての動作項目の測定値に対応する歩容推定値をそれぞれ算出してもよい。または、体力推定システム100の操作者が入力部60を介して、一部の動作項目の測定値に対応する歩容推定値を選択する情報を入力し、かかる選択情報に基づいて算出部30は対応する歩容推定値を算出してもよい。
また、体力推定システム100は各種の判定処理をする判定部40を備えている。判定部40は、算出部30が算出した歩容推定値に対して、たとえば記憶部10に予め記憶された閾値との大小比較をすることにより閾値判定を行う。閾値の例としては、対象者Pの性別および年齢層ごと、かつ体力要素の下位項目や動作項目ごとに、優/良/可などのレベル判定をするための閾値を例示することができる。これにより、算出部30が算出した評価値をそのまま出力するのではなく、判定部40で閾値判定した結果である評価レベルを表示出力部80に出力することもできる。
たとえば、記憶部10は、対象者Pから取得された歩行パラメータまたは算出された評価値(過去情報PD:図1参照)を、対象者Pと関連づけて蓄積してもよい。そして体力推定システム100は、蓄積されている過去情報PDに基づく過去の評価値(第一の評価値)と、新たな評価値と、を対比して出力してもよい。すなわち、第一の評価値は、過去の時点における歩行パラメータから算出された評価値または蓄積されている評価値であり、第二の評価値は、過去情報PDの取得以降(たとえば現在)に新たに計測部20で取得された歩行パラメータに基づいて算出部30が算出した評価値である。
たとえば、対象者Pから取得された歩行パラメータを、対象者Pを示す識別番号と対応付けて記憶部10に蓄積して記憶しておくとよい。そして、後日に再び当該対象者Pから取得された歩行パラメータと、蓄積されている過去の歩行パラメータのそれぞれに基づいて体力要素の評価値を算出部30で算出する。これにより、対象者Pが過去と現在を対比して、当該体力要素の能力が以前よりも向上しているかまたは下降しているか、などを容易に判断することができる。また、過去の歩行パラメータを蓄積して保存しておくことで、当該過去から現在までの間にサンプルデータ提供者である被験者の母集団の人数が増大するなどして重回帰式の精度が向上した場合に、当該過去の時点における対象者Pの体力要素を精度よく再計算することが可能になる。また、過去と現在の対象者Pの体力要素の評価値から、母集団の不一致に起因する統計誤差を排除することができる。
図4に示す飲食料情報FIでは、飲食料名と、これを摂取することにより向上が期待される体力要素および具体的な下位項目と、摂取が推奨される年齢層および体力要素の評価値の判定結果(評価レベル)と、が互いに対応付けられている。
そしてこの体力推定システム100では、算出部30が算出した評価値を判定部40で閾値判定した判定結果(評価レベル)に基づいて、体力要素に対応する飲食料情報FIを記憶部10より抽出して出力するとよい。
これにより、体力要素の評価値を出力するだけでなく、対象者Pの属性および現在の行動体力に応じた飲食料情報FIを提示することができる。このとき、飲食料情報FIに加えて、対象者Pに推奨される運動メニュー(エクササイズプログラム)を示す情報を併せて出力してもよい。
実施例1から実施例3では、図3および表2から表4を用いて上述した男女127名の被験者から取得した体力測定の各種の動作項目について、歩行パラメータおよび重回帰式により算出される歩容推定値との相関関係を確認した。重回帰式の説明変数としては、表2に示した23種類の歩行パラメータの全部を用いた。図5(実施例1)は椅子立ち座りを動作項目とする場合、図6(実施例2)は握力を動作項目とする場合、図7(実施例3)はペグ移動を動作項目とする場合について、それぞれ体力測定による実測値と、歩行パラメータに基づいて算出された歩容推定値との関係図である。
実施例4では、実施例1と同じく椅子立ち座りを動作項目とする場合について、表3に示した歩行パラメータ第1から第3のみを説明変数とする重回帰式に基づいて歩容推定値を算出した。
図5、および表3に示すように、筋持久力の動作項目である椅子座り立ちを、スピード(歩行速度)、両脚支持期時間および歩幅を主要な説明変数として歩容推定値により有意に説明できることが確認された。椅子座り立ちの実測値としては、手を使わずに椅子に座ったり立ったりを5回繰り返す時間(秒数)を採用した。表3に示すように相関係数Rは0.6を超え、また図5中に示すように実測値である秒数(縦軸y)と歩容推定値(横軸x)とは、ほぼy=xの関係を有するとともに、寄与率R2=0.37と高い値となり、両者は良く相関することが確認された。また、表4に示すようにスピード(歩行速度)を説明変数から除いた場合にも有意な相関を示す重回帰式を作成することができ、この場合の主要な説明変数は両脚支持期時間、ケイデンスおよび遊脚期時間であることが分かった。
図6、および表3に示すように、静的筋力の動作項目である握力を、スピード(歩行速度)、ケイデンスおよび歩幅を主要な説明変数として歩容推定値により有意に説明できることが確認された。表3に示すように相関係数Rは0.8に達し、また図6中に示すように実測値[kg](縦軸y)と歩容推定値(横軸x)とは、ほぼy=xの関係を有するとともに、寄与率R2=0.64と高い値となり、両者は強く相関することが確認された。また、表4に示すようにスピード(歩行速度)を説明変数から除いた場合にも有意な相関を示す重回帰式を作成することができ、この場合の主要な説明変数はケイデンス、つま先角および歩幅左右差(Δ歩隔)であることが分かった。
図7、および表3に示すように、巧緻性の動作項目であるペグ移動を、ケイデンス、歩行角度左右差(Δ歩行角度)および歩隔左右差(Δ歩隔)を主要な説明変数として歩容推定値により有意に説明できることが確認された。表3に示すように相関係数Rは0.7を超え、また図7中に示すように実測値である個数(縦軸y)と歩容推定値(横軸x)とは、ほぼy=xの関係を有するとともに、寄与率R2=0.56と高い値となり、両者は良く相関することが確認された。また、表4に示すようにスピード(歩行速度)を説明変数から除いた場合にも同様の相関係数Rおよび主要な説明変数で重回帰式が作成されることが分かった。つまり、歩行パラメータとして最も基本的な変数の一つであるスピード(歩行速度)が実質的に寄与しない重回帰式によって巧緻性は評価されることから、従来一般的な歩行解析では巧緻性と歩容との相関が見過ごされてきたといえる。
これに対し本方法および体力推定システム100では、体力要素の一つである調節力の下位項目である巧緻性を、歩容推定値によって精度よく評価できることが確認された。すなわち、対象者Pから取得する歩行パラメータが、歩行角度や歩隔を含むことにより、本方法および体力推定システム100によれば、調節力にかかる評価値を算出することができる。
成人5名の被験者につき、実施例1と同様に、手を使わずに椅子に座ったり立ったりを5回繰り返すのに要した秒数を、椅子立ち座りとして実測した。また、同じ被験者5名から、歩行パラメータとしてスピード(歩行速度)、両脚支持期時間および歩幅を、床反力計(AMTI社製)を用いてそれぞれ測定した。これらの歩行パラメータは、表3に示した歩行パラメータ第1から第3に対応している。そして、下記の重回帰式(1)に基づいて椅子立ち座りの歩容推定値(予測秒数)を算出した。
椅子座り立ち(予測秒数)=0.18×スピード[km/時]+2.31×両脚支持期時間[秒]+0.08×歩幅[cm] ・・・(1)
上記の各歩行パラメータの測定値、椅子座り立ちの歩容推定値(予測秒数)および実測値を下表5に示す。
たとえば図1では歩行跡計測手段22と体力推定装置90とを別体として図示しているが、これに限られない。歩行跡計測手段22が記憶部10、解析部24および算出部30の機能や表示出力部80の機能を一体に有していてもよい。
<2>複数の被験者からそれぞれ計測した前記体力要素に関する体力測定の測定値および前記複数種類の歩行パラメータに基づいて作成された、前記測定値を目的変数とし前記複数種類の歩行パラメータを説明変数に含む重回帰式と、前記対象者から計測した前記複数種類の歩行パラメータと、に基づいて前記対象者の前記評価値を算出する上記<1>に記載の体力推定方法。
<3>前記歩行パラメータが両脚支持期時間を含み、前記体力要素の一つである持続力にかかる前記評価値を算出する上記<1>または<2>に記載の体力推定方法。
<4>前記歩行パラメータがケイデンスを含み、前記体力要素の一つである筋力にかかる前記評価値を算出する上記<1>から<3>のいずれか一項に記載の体力推定方法。
<5>前記歩行パラメータがつま先角、ケイデンス、歩隔または歩行角度のいずれか一以上を含み、前記体力要素の一つである調節力にかかる前記評価値を算出する上記<1>から<4>のいずれか一項に記載の体力推定方法。
<6>前記歩行パラメータが、少なくともケイデンスおよび歩幅を含む上記<1>から<5>のいずれか一項に記載の体力推定方法。
<7>歩行状態を示す一または複数種類の歩行パラメータと、行動体力を構成する少なくとも一つの体力要素に関する体力測定の測定値と、の相関関係を示す関係情報を記憶しておく記憶部と、歩行する対象者から前記歩行パラメータを計測する計測部と、前記記憶部を参照し、計測された前記歩行パラメータと前記関係情報とに基づいて前記対象者に関する前記体力要素の評価値を算出する算出部と、を備える体力推定システム。
<8>前記記憶部は、取得された前記歩行パラメータまたは算出された前記評価値を前記対象者と関連づけて蓄積しておき、蓄積されている前記歩行パラメータから算出された前記評価値または蓄積されている前記評価値である第一の前記評価値と、計測部で取得した前記歩行パラメータに基づいて前記算出部が算出した第二の前記評価値と、を対比して出力する上記<7>に記載の体力推定システム。
<9>前記記憶部は、前記体力要素の向上に寄与する飲食料を示す飲食料情報を前記体力要素と対応づけて記憶し、前記算出部が算出した前記評価値を閾値判定した判定結果に基づいて、前記体力要素に対応する前記飲食料情報を前記記憶部より抽出して出力する上記<7>または<8>に記載の体力推定システム。
<10>前記評価値として、持続力、筋力および調節力をいずれも算出する上記の体力推定方法および体力推定システム。
<11>前記歩行パラメータが、左右の脚に関する歩隔もしくは歩行角度、またはこれらの左右差を含む上記の体力推定方法および体力推定システム。
<12>前記歩行パラメータが、前記対象者の足圧分布を示す歩行跡情報を解析して算出される上記<11>に記載の体力推定方法および体力推定システム。
<13>前記対象者から取得した複数種類の前記歩行パラメータと、複数個の前記重回帰式と、に基づいて当該複数個の評価値を算出する上記<2>に記載の体力推定方法。
<14>前記記憶部が、複数種類の前記歩行パラメータと、複数個の体力要素に関する前記測定値と、の相関関係をそれぞれ示す前記複数個の関係情報を記憶しており、前記計測部が前記対象者から取得した複数種類の前記歩行パラメータと前記複数個の関係情報とに基づいて、前記算出部は前記対象者に関する前記複数個の前記評価値を算出する上記<7>に記載の体力推定システム。
20 計測部
22 歩行跡計測手段
24 解析部
30 算出部
40 判定部
60 入力部
70 出力部
80 表示出力部
90 体力推定装置
100 体力推定システム
P 対象者
FI 飲食料情報
MR 関係情報
PD 過去情報
Claims (8)
- 歩行する対象者から計測した歩行状態を示す一または複数種類の歩行パラメータに基づいて反復横跳びまたは椅子座り立ちを少なくとも含む体力測定の動作項目の推定値を算出し、前記推定値に基づいて前記対象者の行動体力を構成する少なくとも一つの体力要素の評価値を算出することを特徴とする体力推定方法。
- 複数の被験者からそれぞれ計測した前記体力要素に関する体力測定の測定値および前記複数種類の前記歩行パラメータに基づいて作成された、前記測定値を目的変数とし前記複数種類の歩行パラメータを説明変数に含む重回帰式と、
前記対象者から計測した前記複数種類の歩行パラメータと、に基づいて前記対象者の前記推定値を算出する請求項1に記載の体力推定方法。 - 前記歩行パラメータが両脚支持期時間を含み、椅子座り立ちにかかる前記推定値を算出する請求項1または2に記載の体力推定方法。
- 前記歩行パラメータがつま先角、ケイデンス、歩隔または歩行角度のいずれか一以上
を含み、反復横跳びにかかる前記推定値を算出する請求項1から3のいずれか一項に記載の体力推定方法。 - 前記歩行パラメータが、少なくともケイデンスおよび歩幅を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の体力推定方法。
- 歩行状態を示す一または複数種類の歩行パラメータと、行動体力を構成する少なくとも一つの体力要素に関する体力測定の測定値と、の相関関係を示す関係情報を記憶しておく記憶部と、
歩行する対象者から前記歩行パラメータを計測する計測部と、
前記記憶部を参照し、計測された前記歩行パラメータと前記関係情報とに基づいて反復横跳びまたは椅子座り立ちを少なくとも含む体力測定の動作項目の推定値を算出し、前記推定値に基づいて前記対象者に関する前記体力要素の評価値を算出する算出部と、を備える体力推定システム。 - 前記記憶部は、取得された前記歩行パラメータまたは算出された前記評価値を前記対象者と関連づけて蓄積しておき、
蓄積されている前記歩行パラメータから算出された前記評価値または蓄積されている前記評価値である第一の前記評価値と、計測部で取得した前記歩行パラメータに基づいて前記算出部が算出した第二の前記評価値と、を対比して出力する請求項6に記載の体力推定システム。 - 前記記憶部は、前記体力要素の向上に寄与する飲食料を示す飲食料情報を前記体力要素と対応づけて記憶し、
前記算出部が算出した前記評価値を閾値判定した判定結果に基づいて、前記体力要素に対応する前記飲食料情報を前記記憶部より抽出して出力する請求項6または7に記載の体力推定システム。
Priority Applications (1)
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