JP6602999B1 - 生分解性繊維からなる不織布を用いて作製された細胞培養基材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
イクロオーダーの径を有する繊維からなるシートを製造する方法、並びに、その方法で製
造されたマイクロオーダーの径を有する繊維からなる細胞培養基材に関するものである。
る不織布が提案されている。エレクトロスピニング法を用いて紡糸されたナノ繊維からな
る不織布は細胞外マトリクスと構造的に近似しており、優れた細胞接着、増殖用基材とな
り得ると指摘されている(非特許文献1)。また、エレクトロスピニング法を用いること
によって繊維に無機フィラーを含有させることができることは大きな特長である。
と繊維の間のスペースが極わずかしかない。ヒトの細胞は通常10μm以上の大きさを有
するので、繊維間のスペースが10μmよりも狭いと細胞が侵入できないことが指摘され
ている(非特許文献2)。不織布に厚みを持たせるために複数の層を堆積させると、細胞
が侵入することができる繊維の隙間はさらに小さくなる。
することが可能である。しかし、エレクトロスピニング法は、テイラーコーン現象によっ
てノズルから出射された繊維がコレクターに向けて飛行する過程で電荷の偏りに起因して
生じるbending instability現象を利用して繊維径を急激に細くしてナノオーダーの繊維
にするものであるため、その方法を用いて数十μmの径に繊維の太さを安定的に作り出す
のは困難であった。上記非特許文献1、2が開示している繊維の径は数百nm〜数μmで
ある。
ことができる。メルトスピニング法は、溶融した樹脂をノズル穴から押し出して自重で落
下させて巻き取り装置で巻き取ることによって繊維を回収する。しかし、メルトスピニン
グ法では、繊維はノズルから出射された後かなり早いタイミングで温度の低下により固化
してしまうので、ドラムに堆積する時点で繊維同士は互いに融着していないので、スピン
された繊維を不織布として回収するのが難しい。また、メルトスピニング法では、繊維に
フィラーを多量に含有させることが困難である。
ベルに制御されて、繊維間に細胞が侵入するのに十分な間隙が確保されていることが望ま
しい。しかし、従来のエレクトロスピニング法はbending instability現象を利用してナ
ノ繊維を紡糸するものであるため、数十μmの径の繊維間に十分な間隙を有する不織布を
製造することは困難であった。それ故、エレクトロスピニング法を用いて細胞培養基材を
商業的に製造することは実際上難しかった。
大きいノズルを下方向に向けて設置して、紡糸溶液を速い送り出し速度でシリンジからノ
ズルへフィードして電圧を印加すると、ノズルの吐出口先端から太い径の繊維がテイラー
コーン現象によって出射され、出射された太い繊維が自重と電気力の作用によって回収用
ドラムに向かって落下飛行することに気が付いた。
ドラムの表面にへばりついてしまい繊維としての形状を維持できない。しかし、ノズルか
ら出射されて落下飛行中に軌道の不安定化現象を起こして繊維が振れることによって、繊
維に含まれる溶媒がその過程で効果的に揮発し、その結果乾いた繊維がマイクロ繊維とし
ての径と形状を失わずにドラムに堆積することを発見した。さらに、このようにしてドラ
ムに堆積したマイクロ繊維は残留溶媒によって柔らかく、表面が弱い粘着性を有している
ので、繊維と繊維が絡み合って接触する箇所において付着して連結しており、それをドラ
ムから回収して乾燥させると、一定以上の長さを有する繊維間に十分なスペースを有する
網目構造を有する不織布シートを得ることができることを発見した。
エレクトロスピニング法を用いてマイクロオーダーの径を有する溶媒可溶性樹脂繊維から
なるシートを製造するための方法であって、
装置の内部空間の温度と湿度を調整可能な筐体と、
前記筐体の上部に取付けられており紡糸溶液を充填するためのシリンジと、
内径が0.4mm〜1.0mmの吐出口を有する導電体製のノズルであって、前記ノズル
は前記シリンジにチューブを介して連結されて、吐出口が下方向に向けられており、前記
シリンジに充填された紡糸溶液を前記チューブを通して3ml/h〜15ml/hの送り
出し速度で押し出すことによって紡糸溶液を前記ノズルの吐出口に体積流量0.83mm
3/秒〜4.2mm3/秒、質量流量1.2mg/秒〜6.8mg/秒でフィードするよ
うに設定されており、
前記ノズルに所定の高電圧を印加可能な直流電源と、
前記筐体の底部にあって前記ノズルの吐出口から下方向に150〜400mm距離離れた
位置に備え付けられ、かつ電気的に接地された回転ドラムを備え、
前記ノズルに前記所定の高電圧を印加することで、前記紡糸溶液を帯電させると共に、前
記ノズルと前記回転ドラムの間に電位差を生じさせて、前記帯電した紡糸溶液を前記ノズ
ルの先端からテイラーコーン現象によって静電引力で引っ張ることによって、前記紡糸溶
液が繊維状に出射されて前記筐体内を落下飛行して前記回転ドラム上に堆積させることが
できるエレクトロスピニング装置を用いて、
分子量が5万〜70万の溶媒可溶性樹脂を揮発性溶媒を用いて溶解することによって樹脂
濃度が5重量%〜8重量%の紡糸溶液を調製し、
前記紡糸溶液をシリンジに充填して前記送り出し速度で押し出すことによって前記ノズル
の吐出口にフィードし、
前記ノズルに所定の高電圧を印加することによって、前記送り出し速度でフィードされた
前記紡糸溶液に前記ノズルの吐出口の先端においてテイラーコーン現象を生じさせて繊維
状に出射させると共に、前記ノズルから出射されて前記回転ドラムに向かって落下飛行す
る繊維の飛行軌道を振らせ、
前記ノズルから出射されて飛行軌道を振られながら落下飛行してきた繊維を所定の速度で
回転する前記回転ドラムの表面に堆積させることによって、外径10μm〜100μmで
長さが20cm以上の複数の繊維が絡み合って互いに接触する複数の箇所で付着して連結
しており、繊維間距離1μm〜100μmの網目構造を有するシートを製造する、
エレクトロスピニング法を用いてマイクロオーダーの径を有する溶媒可溶性樹脂繊維から
なるシートを製造するための方法、という発明に至った。
させるために必要な電場の強さを得るために、V=Edの公式に従って、ノズルに印加す
る電圧との関係で調整される。
h、さらに好ましくは3ml/h〜12ml/hである。
ことによって調製される。
材であって、
前記シートは、エレクトロスピニング法で紡糸された外径10〜100μmで長さが20
cm以上の生分解性繊維からなり、複数の生分解性繊維がランダムな方向に配列して絡み
合って、繊維と繊維とが接触する箇所において付着して連結することによって網目構造を
構成しており、
前記シートを構成する繊維と繊維の間に1μm〜100μmのスペースが形成されており
、
前記シートを構成する繊維の表面には無数の微細気孔が形成されており、
前記シートの厚さは0.5mm〜1.0mmである、
生分解性繊維からなる網目構造を有するシートを用いて作製された細胞培養基材、という
発明に到達した。
カルシウム粒子はその全部又は一部が前記生分解性繊維の表面に露出している。
なる。
場において飛行軌道の不安定化現象を生じて飛行軌道が振られることによって溶媒の蒸発
が促進され、その結果乾いた繊維がマイクロオーダーの径の繊維としての形状を維持しな
がら回転ドラムに堆積して網目構造を有するシートを形成する。
れることで、溶媒が蒸発して乾燥する結果数十μの径を有する繊維が巻回した状態でドラ
ム上に堆積するので、長い曲線状の繊維がドラム上で互いに絡み合って網目構造を有する
シートを形成する。
が各々繊維としての形状を維持しながら絡み合って、互いに接触する箇所で付着連結して
網目構造を形成するので、細胞が侵入できるのに十分な繊維間の隙間が形成されており、
細胞外マトリクスに近似した構造を有する優れた細胞培養基材として用いることができる
。
形成されていることによって比表面積が著しく増大しており、細胞培養基材として用いる
と、シートに捕捉された細胞を基材繊維に対して高い効率で接着させることができる。
ることができるので、ヒドロキシアパタイトを含有する繊維からなるシートを高い細胞接
着性を有する細胞培養基材として製造することができる。
(1)本発明のエレクトロスピニング装置の構成
図1において、本発明のエレクトロスピニング装置1は、シリンジ20、ノズル30、回
転ドラム40を収納する筐体10を有する。筐体10は、静電気が帯電することを避ける
ために、スチール等の導電性の材料で形成されていることが好ましい。回転ドラム40は
電気的に接地されている。
筐体10は、前面開口部を開閉可能に取り付けられた前扉11を閉じることによって外気
から遮断して筐体内の温度と湿度を個々の紡糸の紡糸条件に応じて調整することができる
。筐体10には、排気ファンが備えられており、装置の稼働中換気可能である。筐体10
の天井付近には、ノズル30を水平方向にスライド移動させるための設備であるレール3
1が取り付けられている。本発明の方法では、ノズルから出射した太い繊維が回転ドラム
に繊維としての形状を有して堆積するためには、出射された繊維が筐体10内を落下飛行
する間に溶媒が十分に蒸発する必要があるので、筐体内の温度が15℃〜30℃、湿度が50%
以下に調整されていることが望ましい。
シリンジ20は筐体10の天井付近に固定されている。シリンジ20は、筐体10に備え
られたレールに取り付けられて、シリンジ20自体がレール上をノズル30と共にスライ
ド移動するように構成されていてもよい。
填された紡糸溶液がチューブを通して一定圧力/速度でノズル30に押し出されて、エレ
クトロスピニングが開始される。本発明の一つの実施例では、シリンジに充填できる紡糸
溶液の量は10mlに設定されている。
図1において、ノズル30はシリンジ20にチューブ21を介して接続されている。ノズ
ル30は、筐体10に設けられたレール上をスライド移動可能に設置されている。シリン
ジ20は筐体10に固定して、シリンジ20と柔軟なチューブ21でつながったノズル3
0が(チューブ21が届く範囲で)レール31上を水平移動するように構成されていても
よい。ノズル30は、導電体製の中空のニードルを備え、シリンジ20から押し出された
紡糸溶液はノズル中に導入されて、ニードルの先端から吐出される。
本発明のエレクトロスピニング装置で用いられるノズルの口径は、その大きさに応じて2
7G,22G,18Gに区別される。27G,22G,18Gの口径の値は次の表に示す
通りである。
ノズル30には電圧を調整可能な直流電源(PW)が接続されている。直流電源をONに
すると、ノズル30にプラスの高電圧が印加され、ノズル30がプラス電極となり、電気
的に接地された回転ドラム40が静電誘導を生じてマイナスに帯電することによってマイ
ナス電極となって、ノズル30と回転ドラム40の間に電場が形成される。ノズル30の
先端では、ノズルから吐出したプラスに帯電した紡糸溶液が、静電引力を受けて、テイラ
ーコーン現象を起こして、空中に繊維状に出射される。
筐体10の底部には、エレクトロスピニングで紡糸された繊維を不織布として回収するた
めの回転ドラム40が据え付けられている。回転ドラム30は電気的に接地されており、
ノズル30にプラス電圧を印加すると静電誘導を生じて、回転ドラム40はマイナスに帯
電してノズル30の反対電極となる。
いて、ノズル30から出射し落下飛行してきた繊維を、回転する巻き取り軸を中心にドラ
ムに巻き取ることによって不織布を得ることができる。このとき、ドラムに堆積した繊維
はESの高電圧を受けて電荷を帯びているので、堆積したドラム表面において互いに反発
し合う。ドラムの回転速度が速いと繊維は巻き取り方向に整列して配向する傾向が強いが
、ドラムの回転速度が遅いと繊維の互いの反発力が勝って、その結果、繊維はランダムな
方向に配向する傾向が強くなる。
本発明に用いるエレクトロスピニング装置1によって紡糸できる樹脂の種類には特に制限
がなく、溶媒によって溶かすことができる溶媒可溶性の樹脂であれば用いることができる
。樹脂としてPLA,PLGA,PCL等の生分解性樹脂を用いて製造された生分解性繊
維からなるシートを細胞培養基材として用いると、細胞を培養した後で基材ごと生体内に
インプラントすることが可能であるので、特に好適に用いることができる。
好ましい。より好ましくは20万〜40万が好ましい。分子量が低すぎると分子鎖同士の
絡み合いが弱くなり、繊維として形状を維持できなくなる可能性がある。逆に分子量が大
きすぎると、紡糸溶液の粘度が高くなりすぎて、粘度を下げるために紡糸溶液中の溶媒の
割合を大きくして樹脂濃度を下げる必要があるが、そうすると、今度は紡糸溶液中の溶媒
の量が多くなりすぎて、ノズルから出射された後、飛行中に溶媒が十分に揮発されて繊維
化するのが難しくなる。
本発明の方法に用いる溶媒は、溶媒可溶性樹脂を溶解し、常圧で沸点が200℃以下で揮
発性が高く、室温で液体である物質が好ましい。クロロホルムは生分解性樹脂の溶解性に
優れ、なおかつ揮発性が高いので本発明の方法に用いる揮発性の溶媒として好ましい。
本発明の方法において、紡糸溶液の樹脂濃度は、シリンジからノズルに高い送り出し速度
でスムーズに紡糸溶液を送り出すことができるためには一定以下にする必要がある。発明
者等の実験によると、分子量が20万〜40万の樹脂をクロロホルムに溶解して得た紡糸
溶液の樹脂濃度が8重量%を超えると紡糸溶液が固くてスムーズに送り出すことが難しか
った。
し乾燥した後に一本の連続した繊維を構成するためには一定以上であることが必要である
。発明者等の実験によると、分子量が20万〜40万の樹脂をクロロホルムに溶解して得
た紡糸溶液の樹脂濃度が4重量%以下では連続した繊維からなるシートを形成することが
できなかった。
本発明の方法では、シリンジに充填した紡糸溶液を高い速度で送り出すので、ノズルの吐
出口における紡糸溶液の毎秒ごとの流量は大きくなる結果、テイラーコーンで出射される
繊維の径が大きくなると考えられる。本発明の実施例では、シリンジに充填した紡糸溶液
を3ml/h〜15ml/hの速度で内径が0.4mm〜1.0mmの吐出口に送り出す
と、ノズルの吐出口における紡糸溶液の体積流量は0.83mm3/秒〜4.2mm3/
秒、質量流量は1.2mg/秒〜6.8mg/秒である。
紡糸溶液をシリンジに充填した上で直流電源をONにしてノズル30に電圧を印加する。
ノズル30に電圧を印加することによって、充填された紡糸溶液を帯電させると共に、設
置されたドラムコレクターとノズルの間に電位差を生じ、帯電した紡糸溶液がテイラーコ
ーン現象によってドラム方向に引っ張られる。
化させる力を受けても、それによって急激に細くなってナノ繊維化することはなく、マイ
クロオーダーの繊維径を維持してドラムに堆積する。その理由は必ずしも明らかでないが
、発明者等の推測によれば、出射された紡糸溶液が電気力と重力の作用を受けて落下飛行
する状態では、電荷の偏りに起因する反発力を受けても、通常のエレクトロスピニングに
おけるbending instability現象におけるような極細繊維化は起こらず、溶媒の蒸発と、
それに伴い若干の繊維径の縮小が生じるに留まると考えられる。
る電場が一定程度以上であることが必要である。電場の強さはV=Edの公式より、印加
する電圧の値とノズル30と回転ドラム40の距離によって決まるので、飛行軌道の不安
定化現象を生じるために必要な印加電圧の値は単独では決まらない。しかし、ノズルから
出射された繊維の飛行距離はその間に溶媒を蒸発させる必要があるので、一定以上にする
必要があるので、印加する電圧の値は必然的に高く設定される。本発明の一つの実施例で
は、ノズルとドラム間の距離は200mmで、ノズルに印加する電圧は28kVに設定さ
れる。
アルミシートやシリコーンシート等の剥離性の高いシートを巻いた回転ドラム上に繊維を
不織布として堆積させた後、アルミシートを回転ドラムから取り外すことによって、シー
トを回収することができる。本発明の方法では、紡糸した一本一本の繊維の長さは20c
m以上あり、落下飛行中に軌道を振られることで巻回状態でドラムに到達するので、巻回
して曲線状となった長い複数の繊維がドラム上で互いに絡み合って不織布を構成する。
PLGA樹脂をクロロホルムで溶解して調製した紡糸溶液を用いてエレクトロスピニング
法で紡糸したマイクロ繊維からなるシートを作製する実験1,2,3,4を実施した。
[実験1]
分子量34万のPLGA (Evonik社製 LG855S)を純度99%以上のクロロホルムに溶かして
樹脂濃度6重量%の紡糸溶液を調製した。調製した紡糸溶液を用いて、エレクトロスピニ
ング法で紡糸した。
1) ES条件
ES装置: NANON-03 (株式会社MECC提供)
溶媒:クロロホルム 純度99%以上
溶媒中の樹脂濃度:6wt%
電圧:28kV
押し出し速度:10ml/h
針の太さ:18G
ノズルからコレクターまでの飛距離:200mm
コレクター:回転式ドラム(回転速度50rpm)。
2) 実験1の結果
・ノズルから出射した繊維は飛行軌道を途中で不安定化させながら下方向に落下飛行し、
繊維の飛行軌道が振れながら回転ドラムに堆積するのが目視できた。
・ドラムに堆積した繊維の繊維径は大体10〜20μmであった。
・回転ドラムに堆積した繊維は複数の繊維が絡み合って網目構造を有するシートを形成し
た(図2(A),(B)、(C)参照)。
・実験1で紡糸した繊維の長さを測定するために、コレクターとして回転ドラムに代えて
エタノール液を満たした容器に繊維を入射させて綿状に回収し、回収した綿をほぐして綿
を構成している繊維の長さを推定したところ約50cm程度であると考えられる(図2(
E)参照)。
1) ES条件
実験1と同じ条件で、紡糸溶液を調製し、同じエレクトロスピニング装置を用いて紡糸し
た。但し、電圧21kV,ノズルから回転ドラムまでの飛距離を150mmとした。
2) 実験2の結果
・ノズルから出射した繊維は途中飛行軌道を不安定化させながら下方向に落下飛行して回
転ドラムに堆積した。繊維の飛行軌道はドラムに堆積する直前で振れていたが実験1より
も振れ具合は少なかった。
・ドラムに堆積した繊維の繊維径は長手方向で必ずしも一定せず細い箇所と太い箇所があ
ったが、大体10〜50μmの範囲内であった。
・回転ドラムに堆積した繊維は網目構造を形成したが、実験1よりも繊維と繊維の間の付
着傾向が強かった(図3参照)。
1) ES条件
実験1と同じ条件で、紡糸溶液を調製し、同じエレクトロスピニング装置を用いて紡糸し
た。但し、電圧は14kV,ノズルからコレクターまでの飛距離を100mmとした。
2) 実験3の結果
・ノズルから出射した繊維は途中飛行軌道を不安定化させながら下方向に落下飛行して回
転ドラムに堆積した。
・ドラムに堆積した繊維の繊維径は10〜50μmの繊維と数μm又はそれ以下の径の繊
維が混在していた。
・回転ドラムに堆積した繊維は網目構造を形成したが、実験2よりもさらに繊維径のばら
つきが大きく、また繊維と繊維の間の付着傾向がさらに強かった(図4参照)。
1) ES条件
実験1と同じ条件で、紡糸溶液を調製し、同じエレクトロスピニング装置を用いて紡糸し
た。但し、ノズルの口径は22Gのものを用いた。
2) 実験4の結果
・ノズルから出射した繊維は途中で飛行軌道が不安定化して見えなくなった。
・ドラムに堆積した繊維の繊維径は5μm〜60μmで繊維同士が接触する箇所で互いに
付着連結して網目構造を形成していた。
i) ノズルとドラムの距離
実験1、2、3、4において、ノズルとドラムの間の距離が実験2は150mm、実験3
は100mmと実験1より短いが、E=V/dの公式で計算される電場の強さは4つとも
同じである。実験1,2,3の結果の比較から、ノズルとドラムの間の距離は長い(20
0mm)方がドラムに堆積した繊維は一定の範囲内の径を有する繊維が繊維としての形状
を保って網目構造を有するシートを形成し、反対に、ノズルとドラムの間の距離を短くす
ると(実験2は150mm、実験3は100mm)、ドラムに堆積した繊維の径は一定せ
ず、繊維同士が互いに付着する傾向が強かった。このことから、数十μmの繊維からなる
シートを形成するためには、ノズルから出射された繊維がドラムに堆積するまでの間に溶
媒を蒸発するのに十分な距離間隔が存在することが重要であると考えられる。
ii) ノズルの口径
実験1と実験4で紡糸された繊維と不織布を比べると、18Gの口径のノズルを用いた実
験1では数十μmの繊維が均一に紡糸されており、22Gの口径のノズルを用いた実験4
では、径の大きい繊維状のものが互いに付着して不織布を形成した。10ml/hの送り
出し速度では、22Gよりも18Gの方が、繊維の紡糸条件として優れていると考えられ
る。
上記実験1の条件を変えた比較実験1,2,3,4を実施して、マイクロ繊維からなるシ
ートが形成されるために必要な条件を確認した。
[比較実験1]
1) ES条件
実験1と同じ条件で、紡糸溶液を調製し、同じエレクトロスピニング装置を用いて紡糸し
た。但し、ノズルは口径を27Gを用い、紡糸溶液の送り出し速度を1ml/hとした。
2) 比較実験1の結果
・ノズルから出射した繊維はすぐに飛行軌道が振れて見えなくなった。
・ドラムに堆積した繊維の繊維径は500nm〜800nmのものと数μmの径のものと
が混在していた(図6参照)。
1) ES条件
実験1と同じ条件で、紡糸溶液を調製し、同じエレクトロスピニング装置を用いて紡糸し
た。但し、ノズルの口径は27Gのものを用いた。
2) 比較実験2の結果
・ノズルから出射した繊維は途中で飛行軌道が不安定化して見えなくなった。
・シリンジに過負荷がかかり、固定が外れてしまった。原因は早すぎる押出速度によって
口径を通りきれなかった溶液の力の逃げ場所がシリンジ固定部品に行ってしまったことに
よると考えられる。
・ドラムに堆積した繊維の繊維径は細く、数μm又はそれ以下の径のものが混在していた
(図7参照)。
<<比較実験2の評価>>
シリンジからノズルへの送り出し速度が10ml/hでノズル口径が27Gでは安定した
紡糸はできず、不織布も形成されなかった。送り出し速度が10ml/hでは、ノズル口
径は18Gが適合していると考えられる。
1) ES条件
実験1と同じ条件で、紡糸溶液を調製し、同じエレクトロスピニング装置を用いて紡糸し
た。但し、樹脂濃度は4重量%とし、ノズルとドラムの間の距離は300mmとした。
2) 比較実験3の結果
・ノズルから出射した繊維は飛行軌道が不安定化することなく、そのまま真下に真直ぐに
落下してドラムに堆積した。
・ドラムにはナノ繊維と、太い繊維状のものが混在して堆積しており、繊維の長さは短く
、不織布にはなっていなかった(図8参照)。
<<比較実験3の評価>>
樹脂濃度4重量%では紡糸溶液の溶媒の量が多く樹脂の量が少ないので、ノズルから出射
した紡糸溶液は、一本の連続した繊維を形成できていなかった。飛行中に繊維から溶媒が
蒸発せずに、樹脂の量に対して相対的に過剰な量の溶媒が残った状態で落下飛行して、ド
ラムにそのまま堆積し、その結果、溶媒を過剰に含んだ繊維がドラムの表面に衝突して、
付着していると考えられる。
実験1と同じ条件で、但し、ノズルに印加する電圧を0.5kV,10kV,14kV、
18kV,22kV,25kV,28kV,30kVとして、出射された飛行軌道の変化
と、回転ドラムに堆積された繊維の状態を観察した。
i) 飛行軌道の変化
・ 0.5kVでは紡糸溶液がノズルから押し出されて下方に垂れながら落下し
・ 10kVでは、紡糸溶液は短繊維状になって下方に落下した。
・14kVでは紡糸溶液は一本の線となってドラムに落下した。飛行軌道は若干の振れが
認められた。
・18kVでは、ノズルから出射された繊維は飛行軌道が大きく振れながら回転ドラムに
堆積した。
・22kV,25kV,28kV,30kVでは、ノズルから出射された繊維はより強い
力で引っ張られて回転ドラムに堆積した。回転ドラムに堆積する直前に飛行軌道が振れて
繊維は肉眼で見えなくなった。
・印加電圧が14kV以下では回転ドラムに堆積した繊維は不織布を形成しなかった。
・印加電圧が18kV〜30kVでは、回転ドラムに堆積した繊維は不織布を形成したが
、印加電圧が30kVでは、18kV〜28kVにおけるよりも、繊維同士の付着傾向が
強く繊維の形状が崩れていた。
紡糸溶液をシリンジからノズルに送り出す速度を3ml/h〜15ml/hに変えること
で、不織布の形成に及ぼす影響を観察した。
・送り出し速度3ml/h〜15ml/hで回転ドラムに堆積した繊維は網目構造を有す
るシートを形成した。しかし、送り出し速度12ml/h以上では、繊維同士の付着傾向
が強く繊維の形状が崩れて、ドラムに平たく付着する傾向が強かった。
実験1の条件で製造したマイクロ繊維からなる不織布シートを用いて間葉系幹細胞(MS
C)の培養試験を実施した。培地に浸した不織布シートに懸濁液と共にMSCを播種した
ところ、不織布シートの網目構造にMSCが捕捉されて、MSCが繊維表面に接着して良
好な細胞増殖が得られた。
例に即して説明したが、本発明のシートは細胞培養基材として用いることができる限り必
ずしも不織布に限定されず、細胞が侵入して接着することが可能な構造を有する限り、本
発明の範囲に含まれる。
10 筐体
11 前扉
20 シリンジ
21 チューブ
30 ノズル
31 レール
40 回転ドラム
Claims (3)
- エレクトロスピニング法で紡糸された生分解性繊維からなる不織布で構成された細胞培養基材の製造方法であって、
エレクトロスピニング装置のシリンジに分子量5万〜70万の生分解性樹脂をクロロホルムで溶かすことによって調製した樹脂濃度5%〜7%の紡糸溶液を充填し、3ml/h〜15ml/hの送り出し速度で押し出すことによって、前記エレクトロスピニング装置に下方向に設置され、吐出口の内径が0.7mm〜0.9mmであるノズルに前記紡糸溶液を送り出し、
前記ノズルに所定の電圧を印加することによって、前記ノズルと、前記ノズルから150mm〜400mmの距離離れた位置に設置されて電気的に接地されたドラムコレクターとの間に電場を発生させると共に、前記ノズルの吐出口に送り込まれた紡糸溶液を帯電させることによってテイラーコーン現象を生じさせて前記ノズルから前記紡糸溶液を繊維状に出射させ、前記電場はノズルから出射された繊維が飛行中に飛行軌道の不安定化現象を生じる強さに調整されており、
前記ノズルから出射された繊維を、所定の速度で回転するドラムコレクターに前記飛行軌道の不安定化現象によって振りながら落下させて前記ドラムコレクターの表面に堆積させることによって、前記繊維が曲線を描いて前記ドラムコレクターの表面に堆積させ、前記堆積した繊維がランダムな方向に配列して絡み合って互いに接触する複数の箇所において付着して連結することによって、繊維径が10μm〜100μmの繊維が繊維間距離1μm〜100μmの網目構造を構成している不織布を形成し、
前記形成された不織布を前記ドラムコレクターから回収し、所望のサイズにカットする、
エレクトロスピニング法で紡糸された生分解性繊維からなる不織布で構成された細胞培養基材の製造方法。
- 前記生分解性繊維は無機フィラーを含む、請求項1に記載の細胞培養基材の製造方法。
- 前記生分解性繊維は分子量20万〜40万のPLA樹脂又はPLGA樹脂を含む、請求項1又は2に記載の細胞培養基材の製造方法。
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