JP4695430B2 - 円筒体および円筒体の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの方法で作製されるシートを構成する繊維は無機化合物であり、細胞培養用基材として多く用いられている有機ポリマーによるシート作製は報告されていない。また、これらの方法では、水を主体とした溶液が用いられていることから、水溶媒の揮発によって、電極に向かって曳き出された繊維構造体からの電荷消失が大きく、電極上への堆積する力が小さいことから、電極を兼ねたローラーを回転させることによって、電極上に直接堆積されなかった繊維構造体が引き込まれ、ローラー上に堆積し、繊維の配向が生じるものと考えられる。そのため、有機ポリマーを溶解するのに多く用いられている有機溶媒を主体に用いた場合は、電極に向かって曳き出された繊維構造体からの電荷消失が小さく、電極を兼ねたローラーへの堆積する力が大きくなり、ローラーの回転のみにより繊維を配向させることは困難であると考えられる。
力学的に異方性のある不織布からなり、下記要件(a)〜(d)を同時に満足する円筒体によって達成することができる。
要件(a):不織布を構成する繊維の平均径が5μm以下であること。
要件(b):繊維径10μm以上のフィラメントが実質的に含まれないこと。
要件(c):円周方向の引張強さが軸方向の引張強さの2倍以上であること。
要件(d):不織布を構成する繊維が生分解性を有する有機高分子を含む物質からなること。
生分解性を有する有機高分子を溶媒に溶解させて溶液を製造する段階と、前記溶液に高電圧を印加させる段階と、前記溶液を噴出させる段階と、前記噴出された溶液から溶媒を蒸発させ繊維構造体を形成させる段階と、前記形成された繊維構造体の電荷を消失させる段階と、前記電荷を消失させた繊維構造体を回転するローラーに絡め取り円筒状の不織布を作製する段階と、前記円筒状不織布をローラーから取り外す段階を含む、円筒体の製造方法によって達成することができる。
また、得られる円筒体はそのまま使用することも出来るし、取り扱い性やその他の要求事項に合わせて他の部材と組み合わせて用いることもできる。
本発明の円筒体は、力学的に異方性のある不織布からなり、下記要件(a)〜(d)を同時に満足する。
要件(a):不織布を構成する繊維の平均径が5μm以下であること。
要件(b):繊維径10μm以上のフィラメントが実質的に含まれないこと。
要件(c):円周方向の引張強さが軸方向の引張強さの2倍以上であること。
要件(d):不織布を構成する繊維が生分解性を有する有機高分子を含む物質からなること。
ここで、本発明において「円筒体」とは、中空の円柱構造を表し、一般に言われる「チューブ」も含まれる。
前述の電極は、金属、無機物、または有機物のいかなるものでも導電性を示しさえすれば用いることができ、また、絶縁物上に導電性を示す金属、無機物、または有機物の薄膜を持つものであっても良い。
まず、生分解性を有する有機高分子を溶解させて溶液を製造するが、本発明の製造方法における溶液中の溶媒に対する有機高分子の濃度は1〜30重量%であることが好ましい。有機高分子の濃度が1重量%より小さいと、濃度が低すぎるため繊維構造体を形成することが困難となり好ましくない。また、30重量%より大きいと得られる繊維構造体の繊維径が大きくなり好ましくない。より好ましい溶液中の溶媒に対する有機高分子の濃度は2〜20重量%である。
これらのうち、取り扱い性や物性などから、塩化メチレン、メタノール、エタノールとそれらの混合溶媒を用いることが好ましい。
前記溶液を静電場中に吐出するには、任意の方法を用いることが出来、例えば、溶液をノズルに供給することによって、溶液を静電場中の適切な位置に置き、そのノズルから溶液を電界によって曳糸して繊維化させればよい。
注射器の筒状の溶液保持槽(図1中3)の先端部に適宜の手段、例えば高電圧発生器(図1中5)にて電圧をかけた注射針状の溶液噴出ノズル(図1中1)を設置して、溶液(図1中2)を溶液噴出ノズル先端部まで導く。接地した電極(図1中4)から適切な距離で前記溶液噴出ノズル(図1中1)の先端を配置し、溶液(図1中2)が前記溶液噴出ノズル(図1中1)の先端部から噴出させ、このノズル先端部分と電極(図1中4)との間で繊維構造体を形成させることができる。
また、ローラーを回転軸方向に移動させることによって、本発明の円筒体を連続的に製造することも可能である。
[平均繊維径]
得られた円筒体の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率2000倍)を撮影し、その写真からn=20にて繊維径を測定し、平均値を算出し平均繊維径とした。
[平均厚さ]
高精度デジタル測長機(株式会社ミツトヨ:商品名「ライトマチックVL-50」)を用いて測定力0.01Nによりn=5にて円筒体の膜厚を測定した平均値を算出した。なお円筒体の膜厚は、円筒体を切り開き平面体にした状態で測定した。また本測定においては測定機器が使用可能な最小の測定力で測定を行った。
[引張強さ]
定速伸長型引張試験機(株式会社オリエンテック:商品名「テンシロンRTC−1210A」)を用いて、試料幅10mm、チャック間距離10mm、試験速度20mm/minによりn=5にて、円筒体を切り開いた平面体の引張強さ(最大点応力)を測定し、平均値を算出した。
ポリ乳酸(株式会社島津製作所製:商品名「Lacty9031」)1重量部、エタノール(和光純薬工業株式会社製、特級)3重量部、塩化メチレン(和光純薬工業株式会社製、特級)6重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置の電極4にアースをとり、イオナイザー6に電源を入れた状態で、装置を作動させたところ、ローラー上に繊維が絡め取られ、円筒体を得ることができた。噴出ノズル1の内径は0.8mm、電圧は15kV、噴出ノズル1からローラー7までの距離は高さ0cm、水平距離は10cmであり、ローラー7からイオナイザー6までの距離は高さ0cm、水平距離は10cmであり、イオナイザー7から電極4までの距離は5cmであり、ローラー7の直径は8mm、回転数は600rpmであった。得られた円筒体の高さは10cm、内径8mmであった。また、厚みの均一な箇所の厚みを測定したところ0.22mmであった。円筒体表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「S−2400」)で測定したところ、繊維の平均繊維径は2.1μmであった。繊維径10μm以上のフィラメントは観察されなかった。円筒体の力学強度を測定したところ、円周方向の引張強さが0.84MPa、軸方向の引張強さが0.24MPaであり、円周方向の引張強さが軸方向の引張強さの3.5倍であった。
ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業株式会社製:商品名「PLACCEL H7」)1重量部、エタノール(和光純薬工業株式会社製、特級)3.6重量部、塩化メチレン(和光純薬工業株式会社製、特級)5.4重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置の電極4にアースをとり、イオナイザー6に電源を入れた状態で、装置を作動させたところ、ローラー上に繊維が絡め取られ、円筒体を得ることができた。噴出ノズル1の内径は0.8mm、電圧は15kV、噴出ノズル1からローラー7までの距離は高さ0cm、水平距離は10cmであり、ローラー7からイオナイザー6までの距離は高さ0cm、水平距離は10cmであり、イオナイザー7から電極4までの距離は5cmであり、ローラー7の直径は8mm、回転数は600rpmであった。得られた円筒体の高さは15cm、内径8mmであった。また、厚みの均一な箇所の厚みを測定したところ0.27mmであった。円筒体表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「S−2400」)で測定したところ、繊維の平均繊維径は1.4μmであった。繊維径10μm以上のフィラメントは観察されなかった。円筒体の力学強度を測定したところ、円周方向の引張強さが1.68MPa、軸方向の引張強さが0.77MPaであり、円周方向の引張強さが軸方向の引張強さの2.2倍であった。
ポリ乳酸(株式会社島津製作所製:商品名「Lacty9031」)1重量部、エタノール(和光純薬工業株式会社製、特級)3重量部、塩化メチレン(和光純薬工業株式会社製、特級)6重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置のローラー7にアースをとり、イオナイザー6の電源を切った状態で、装置を作動させたところ、ローラー上に繊維が積層され、円筒体を得ることができた。噴出ノズル1の内径は0.8mm、電圧は15kV、噴出ノズル1からローラー7までの距離は高さ0cm、水平距離は10cmであり、ローラー7からイオナイザー6までの距離は高さ0cm、水平距離は10cmであり、イオナイザー7から電極4までの距離は5cmであり、ローラー7の直径は8mm、回転数は600rpmであった。得られた円筒体の高さは15cm、内径8mmであった。また、厚みの均一な箇所の厚みを測定したところ0.23mmであった。円筒体表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「S−2400」)で測定したところ、繊維の平均繊維径は1.6μmであった。円筒体の力学強度を測定したところ、円周方向の引張強さが0.11MPa、軸方向の引張強さが0.32MPaであり、円周方向の引張強さが軸方向の引張強さの0.3倍であった。
ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業株式会社製:商品名「PLACCEL H7」)1重量部、エタノール(和光純薬工業株式会社製、特級)3.6重量部、塩化メチレン(和光純薬工業株式会社製、特級)5.4重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置のローラー7にアースをとり、イオナイザー6の電源を切った状態で、装置を作動させたところ、ローラー上に繊維が積層され、円筒体を得ることができた。噴出ノズル1の内径は0.8mm、電圧は15kV、噴出ノズル1からローラー7までの距離は高さ0cm、水平距離は10cmであり、ローラー7からイオナイザー6までの距離は高さ0cm、水平距離は10cmであり、イオナイザー7から電極4までの距離は5cmであり、ローラー7の直径は8mm、回転数は600rpmであった。得られた円筒体の高さは10cm、内径8mmであった。また、厚みの均一な箇所の厚みを測定したところ0.24mmであった。円筒体表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「S−2400」)で測定したところ、繊維の平均繊維径は1.2μmであった。円筒体の力学強度を測定したところ、円周方向の引張強さが0.92MPa、軸方向の引張強さが1.13MPaであり、円周方向の引張強さが軸方向の引張強さの0.8倍であった。
ポリ乳酸(株式会社島津製作所製:商品名「Lacty9031」)1重量部、エタノール(和光純薬工業株式会社製、特級)3重量部、塩化メチレン(和光純薬工業株式会社製、特級)6重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置の電極4にアースをとり、イオナイザー6の電源を切った状態で、装置を作動させたところ、繊維が電極4上に積層され、円筒体を得ることが出来なかった。
2 溶液
3 溶液保持槽
4 電極
5 高電圧発生器
6 イオナイザー
7 ローラー
8 スイッチ
Claims (10)
- 力学的に異方性のある不織布からなり、下記要件(a)〜(d)を同時に満足する円筒体。
要件(a):不織布を構成する繊維の平均径が5μm以下であること。
要件(b):繊維径10μm以上のフィラメントが実質的に含まれないこと。
要件(c):円周方向の引張強さが軸方向の引張強さの2倍以上であること。
要件(d):不織布を構成する繊維が生分解性を有する有機高分子を含む物質からなること。 - 生分解性を有する有機高分子がハロゲン元素含有化合物に可溶なものである請求項1記載の円筒体。
- 生分解性を有する有機高分子が脂肪族ポリエステルである請求項1〜2のいずれか記載の円筒体。
- 脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、およびそれらの共重合体から選ばれた少なくとも一種の有機高分子である請求項3記載の円筒体。
- 円筒体の円周方向の引張強さが0.8Mpa以上である請求項1〜4のいずれかに記載の円筒体。
- 生分解性を有する有機高分子を溶媒に溶解させて溶液を製造する段階と、前記溶液に高電圧を印加させる段階と、前記溶液を噴出させる段階と、前記噴出された溶液から溶媒を蒸発させ繊維構造体を形成させる段階と、前記形成された繊維構造体の電荷を消失させる段階と、前記電荷を消失させた繊維構造体を回転するローラーに絡め取り円筒状不織布を作製する段階と、前記円筒状不織布をローラーから取り外す段階を含む、円筒体の製造方法。
- 形成された繊維構造体の電荷の消失を帯電風によって行う、請求項6に記載の製造方法。
- 生分解性を有する有機高分子を溶解する溶媒が揮発性有機溶媒である、請求項6に記載の製造方法。
- 生分解性を有する有機高分子が脂肪族ポリエステルである、請求項6に記載の製造方法。
- 脂肪族ポリエステルがポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、およびそれらの共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物である、請求項9記載の製造方法。
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