JP6602586B2 - 素材シートおよび包装用容器 - Google Patents
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Description
「また、A層に含有するポリ乳酸系樹脂は、非晶性ポリ乳酸系樹脂である。非晶性ポリ乳酸系樹脂を使用することで、A層の表層に金属または、無機酸化物からなる蒸着層を付与し、蒸着加工された蒸着フィルムとした際には、蒸着層とA層との間に望ましい高密着強度が達成できる。この高密着強度により、蒸着層が金属化後のプロセスにおいてロールや冷却ドラムなどの加工器具との接触・摩擦を受けた際においても、蒸着層の欠陥(ピンホール、スクラッチ)の数が減少し、ガスバリア性の改良に特に効果がある。・・・」
と説明している。
この明細書においては、次の用語を次のような意味で用いる。
「シート」とは厚さが0.1mm以上の膜状物をいい、これに対し「フィルム」とは厚さが0.1mm未満の膜状物をいう。また「容器」という場合、容器の本体のみならず、容器本体に被せられる容器の蓋体も含まれ、また容器本体にフィルム状の蓋体をトップシールした容器も含まれ得る。
以下、本発明の好ましい実施態様や追加的構成要素について説明する。
本発明の素材シートは、非晶性ポリ乳酸に、メタクリル酸メチル(MMA)を主たる構成単位とするメタクリル系ポリマーを配合してなる非晶性樹脂組成物から構成される。
上記のような非晶性樹脂組成物を溶融状態で押出成形することで、本発明の素材シートを得ることができる。押出成形の手法は公知であり、例えばTダイ法があげられる。非晶性樹脂組成物を押出成形する際の素材シートの厚さは、主として、必要とされる水蒸気バリア性やシート容器化後の剛性との兼ね合いで決定されるが、シート厚さの好ましい範囲は、0.15〜1.00mmである。素材シートの厚さが0.15mm未満では、水蒸気バリア性が不足すると共に、シート容器化後の剛性も低下し、容器に要求される基本性能を確保できなくなる。他方、素材シートの厚さが1.00mmを超えると、物性面で過剰品質になるばかりか、重量の増加および製造コストの増大につながり好ましくない。
本発明の素材シートは、公知の熱成形手法を用いて、所望の形態の包装用容器に賦形することができる。熱成形の手法としては、熱盤成形、真空成形、圧空成形または真空圧空成形を例示することができる。ここで、熱盤成形とは、熱板によるシートの片面加熱後、該加熱シートを移動させることなく熱板上方に配置された金型で成形する手法をいう。これに対し、真空成形、圧空成形および真空圧空成形とは、ヒーターゾーン(加熱領域)においてシートの(上下)両面を加熱後、成形ゾーンに該加熱シートを移動させ、成形ゾーンに設けられた金型にシートを付着させて成形する手法をいう。
非晶性ポリ乳酸として、米国ネイチャーワークスLLC社製:商品名「ネイチャーワークスポリ乳酸2003D」を使用した。ネイチャーワークスポリ乳酸2003Dは、重量平均分子量(又は単に分子量)が約20万であり、L体含有量が3.7〜4.8モル%、D体含有量が95.2〜96.3モル%であり、概ね非晶性のポリ乳酸である。
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)として、三菱レイヨン株式会社製:商品名「アクリペットVH」を使用した。アクリペットVHは、重量平均分子量が約10万であり、ガラス転移温度が約115℃である。
衝撃改質剤として、三菱レイヨン株式会社製:商品名「メタブレンW−600A」を使用した。メタブレンW−600Aは、アクリル系ゴムからなるコアシェル構造型の衝撃改質剤である。
実施例1では、非晶性ポリ乳酸:35.0重量%、PMMA:60.0重量%、衝撃改質剤:5.0重量%を混合・溶融して非晶性樹脂組成物を調製すると共に、溶融状態の非晶性樹脂組成物をTダイ法により押出成形(押出機温度220〜230℃)して素材シート(厚さ0.25mm)を作製した。また、得られた素材シートを用い、真空圧空成形により物性試験用の容器を数百個試作した。容器は、蓋(縦140mm×横140mm×高さ/深さ約30mm×厚さ0.25mm)、蓋と組み合わさる本体(縦140mm×横140mm×高さ/深さ約35mm×厚さ0.25mm)を用意した。
実施例2では、非晶性ポリ乳酸:45.0重量%、PMMA:50.0重量%、衝撃改質剤:5.0重量%を混合・溶融して非晶性樹脂組成物を調製すると共に、溶融状態の非晶性樹脂組成物をTダイ法により押出成形(押出機温度220〜230℃)して素材シート(厚さ0.25mm)を作製した。また、実施例1と同様にして、物性試験用の容器を数百個試作した。
実施例3では、非晶性ポリ乳酸:57.5重量%、PMMA:40.0重量%、衝撃改質剤:2.5重量%を混合・溶融して非晶性樹脂組成物を調製すると共に、溶融状態の非晶性樹脂組成物をTダイ法により押出成形(押出機温度220〜230℃)して素材シート(厚さ0.25mm)を作製した。また、実施例1と同様にして、物性試験用の容器を数百個試作した。
実施例4では、非晶性ポリ乳酸:67.5重量%、PMMA:30.0重量%、衝撃改質剤:2.5重量%を混合・溶融して非晶性樹脂組成物を調製すると共に、溶融状態の非晶性樹脂組成物をTダイ法により押出成形(押出機温度220〜230℃)して素材シート(厚さ0.25mm)を作製した。また、実施例1と同様にして、物性試験用の容器を数百個試作した。
実施例5では、非晶性ポリ乳酸:57.5重量%、PMMA:40.0重量%、衝撃改質剤:2.5重量%を混合・溶融して非晶性樹脂組成物を調製すると共に、溶融状態の非晶性樹脂組成物をTダイ法により押出成形(押出機温度220〜230℃)して素材シート(厚さ0.25mm)を作製した。また、実施例1と同様にして、物性試験用の容器を数百個試作した。なお、実施例3の端材(再生ペレットまたは粉砕材等)を一部(全体の55重量%またはそれ以下)使用し、前述の配合(非晶性ポリ乳酸:57.5重量%、PMMA:40.0重量%、衝撃改質剤:2.5重量%)になる様に調整した。
実施例6では、非晶性ポリ乳酸:57.5重量%、PMMA:40.0重量%、衝撃改質剤:2.5重量%を混合・溶融して非晶性樹脂組成物を調製すると共に、溶融状態の非晶性樹脂組成物をTダイ法により押出成形(押出機温度220〜230℃)して素材シート(厚さ0.25mm)を作製した。また、実施例1と同様にして、物性試験用の容器を数百個試作した。なお、非晶性ポリ乳酸には前述の通り、比較例2の端材(再生ペレットまたは粉砕材等)を一部(全体の55重量%またはそれ以下)使用した。
比較例1では、非晶性ポリ乳酸(100重量%)のみの非晶性樹脂組成物とした。溶融状態の非晶性樹脂組成物をTダイ法により押出成形(押出機温度約200℃)して素材シート(厚さ0.25mm)を作製した。また、実施例1と同様にして、物性試験用の容器を数百個試作した。
比較例2では、非晶性ポリ乳酸:97.5重量%、衝撃改質剤:2.5重量%を混合・溶融して非晶性樹脂組成物を調製すると共に、溶融状態の非晶性樹脂組成物をTダイ法により押出成形(押出機温度200℃)して素材シート(厚さ0.25mm)を作製した。また、実施例1と同様にして、物性試験用の容器を数百個試作した。
比較例3では、非晶性ポリ乳酸:77.5重量%、PMMA:20.0重量%、衝撃改質剤:2.5重量%を混合・溶融して非晶性樹脂組成物を調製すると共に、溶融状態の非晶性樹脂組成物をTダイ法により押出成形(押出機温度220〜230℃)して素材シート(厚さ0.25mm)を作製した。
比較例4では、非晶性ポリ乳酸:87.5重量%、PMMA:10.0重量%、衝撃改質剤:2.5重量%を混合・溶融して非晶性樹脂組成物を調製すると共に、溶融状態の非晶性樹脂組成物をTダイ法により押出成形(押出機温度220〜230℃)して素材シート(厚さ0.25mm)を作製した。
比較例5では、非晶性ポリ乳酸:92.5重量%、PMMA:5.0重量%、衝撃改質剤:2.5重量%を混合・溶融して非晶性樹脂組成物を調製すると共に、溶融状態の非晶性樹脂組成物をTダイ法により押出成形(押出機温度220〜230℃)して素材シート(厚さ0.25mm)を作製した。
JIS−K7129に準拠した方法により測定した。具体的には、温度40℃、湿度90%RHの条件下で、水蒸気透過率測定装置(米国、MOCON社製:機種名「PERMATRAN−W3/31」を使用して、JIS−K7129(2011)に記載のB法(赤外センサー法)に基づいて測定した。測定は素材シートに水蒸気流を当て、その反対側で検出する測定方式で4回測定を行い、その平均値を当該サンプル(素材シート)の水蒸気透過度(g/m2・day)とした。
水蒸気透過度は水蒸気バリア性の指標であり、その値が小さいほど水蒸気バリア性が高いと言える。実施例1〜6及び比較例1〜5の素材シートでの測定結果を表1及び表2に示す。
JIS−K7136に準拠した方法により、素材シート及び容器のヘーズ値(Haze,単位:%)を測定した。具体的には、日本電色株式会社製ヘーズメーターNDH−7000SPを使用し、試験片(50mm×50mmの大きさに切り揃えたシート)をヘーズメーターの測定部(試験片の支持部)に挟んで自動計測した。ヘーズ値は透明性の指標であり、その値(%)が小さいほど透明性が高くなる。実施例1〜6及び比較例1〜5の素材シートでの測定結果を表1及び表2に、実施例1〜6及び比較例1、2の容器での測定結果を表3に示す。
JIS−K7211−1に準拠した方法により、素材シートについてパンクチャー衝撃試験を行った。具体的には、試験片として、各シートを縦50mm×横50mmに切り揃えた正方形片を準備すると共に、測定装置として、マイズ試験機株式会社製パンクチャー衝撃(デュポン衝撃)試験機を使用し、次の手順にて試験を行った。
(イ)試験片を、試験片支持台と撃鉄(ストライカ)との間に配置する。
(ロ)ある高さに重りを下支えしていた押さえ棒を引き抜いて、当該高さから重りを撃鉄に向けて落下させる。
(ハ)重りの種類および重りの高さを種々変更して、試験片が「割れる」/「割れない」の境目を探す。例えば各回の試験片の破損状況を見ながら、重りの落下高さを上げ下げする。
(ニ)上記(ロ)及び(ハ)の手順を20回繰り返し、得られた測定結果とJIS規定の計算式に基づいてパンクチャー衝撃強度値(50%衝撃破壊エネルギー、単位:J)を求めた。
得られた値は耐衝撃強度の指標であり、その値が大きいほど耐衝撃性が高いと言える。実施例1〜6及び比較例1、2の素材シートでの試験結果を表1及び表2に示す。
実施例1〜6及び比較例1、2において試作した物性試験用の容器について、組み合わされる蓋(縦140mm×横140mm×高さ/深さ約30mm×厚さ0.25mm)と本体(縦140mm×横140mm×高さ/深さ約35mm×厚さ0.25mm)を用意する。嵌合方式は内嵌合および/または外嵌合のどちらでも良い。蓋(または本体)容器50個をスタック(重ね積み)した容器タワー(容器の塔)を所定温度に設定したデジタル温度指示調節器(ダバイエスペック社製:機種名「PMS−B」)内で24時間保管する。設定温度:50℃、53℃、55℃、57℃、60℃の各々で試験を行い、スタックした容器のうち最も下段の容器について加熱前の蓋(または本体)との嵌合可否を確認する。嵌合が可能であればその試験温度での耐熱性が有ると判断し、最高の温度を容器の「耐熱温度」とする。嵌合が不可能であればその試験温度での耐熱性が無いと判断する。実施例1〜6及び比較例1、2の容器での試験結果を表3に示す。
なお、この「容器スタック時耐熱試験」は、容器を複数個スタックした状態での容器の高温剛性又は高温耐性を評価するものである。一般的な食品用包装容器では、この試験で60℃の耐熱温度があれば十分とされているので、60℃を超える温度での試験は行っていない。
表1及び表2からわかるように、実施例1〜6の素材シートは、比較例1〜5の素材シートに比べて高い水蒸気バリア性(低い水蒸気透過度)を示した。非晶性樹脂組成物の組成と水蒸気透過度との関係については、全ての実施例及び比較例を通じて、PMMAの含有量が多くなるほど、水蒸気透過度が小さくなる傾向が見られた。
表3からわかるように、実施例1〜6の容器は、比較例1、2の容器に比べて高い透明性(低いヘーズ値)および高い耐熱温度を示した。
総じて、PMMA含有量が40〜60重量%の事例(実施例1,2,3,5,6)で、水蒸気透過度、容器化後の透明性及び耐熱温度が共に優れた結果となった。加えて、非晶性ポリ乳酸にペレット(新材)のみを使用した場合だけでなく、シートまたは容器成形時に発生した端材(リサイクル材)を使用した場合も同様の物性を有する結果となった。
Claims (4)
- 食品用の包装用容器の熱成形に用いられる素材シートであって、
当該素材シートは、非晶性ポリ乳酸に、メタクリル酸メチル(MMA)を主たる構成単位とするメタクリル系ポリマーを配合してなる非晶性樹脂組成物からなると共に、この非晶性樹脂組成物のうちのメタクリル系ポリマーの含有量が25〜65重量%であり、
当該素材シートの厚さが0.15〜1.00mmであり、JIS−K7129に準拠した測定法による水蒸気透過度が24g/m2・day未満である、ことを特徴とする素材シート。 - 前記MMAを主たる構成単位とするメタクリル系ポリマーは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)であり、前記非晶性樹脂組成物のうちのPMMAの含有量が30〜60重量%である、ことを特徴とする請求項1に記載の素材シート。
- 前記非晶性樹脂組成物は、衝撃改質剤を更に含有しており、この非晶性樹脂組成物のうちの衝撃改質剤の含有量が1〜8重量%である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の素材シート。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の素材シートを熱成形してなる食品用の包装用容器であって、
ヘーズ値が1.5%以下であり、容器スタック時耐熱試験による耐熱温度が55℃以上である、ことを特徴とする食品用の包装用容器。
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