JP6602547B2 - ペリクル - Google Patents
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Description
近年、半導体製造装置の高集積化に伴って、フォトリソグラフィー工程に用いる露光光の短波長化が進められている。すなわち、ウエハー上にフォトレジストパターンを形成する際に、より狭い線幅で微細なパターンを描画できる技術が要求されている。これに対応するために、例えば、ステッパーの露光光として、従来のg線(波長436nm)、i線(波長365nm)から進んで、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、F2エキシマレーザー(波長157nm)等のより短波長の光が用いられてきている。
マスクの平坦性を損なう原因として、マスクにペリクルを貼り付けた際にマスク歪が生じることが挙げられており、ペリクル自体の変形や撓みがマスクに影響を与えていると考えられている。一般にマスクの平坦度は、数μm以下であり、最先端品は1μm以下とされている。しかし、ペリクルフレーム(以下、「フレーム」という)の平坦度は数十μmとマスクと比較すると平坦度は大きいことがわかっている。そのため、特許文献1のようにフレームの平坦度を15μm以下に、フレーム直線部の平坦度を10μm以下にするペリクルが開示されている。
また、マスクに実際に貼り付けられるマスク粘着剤の平坦性を上げることでマスク歪を低減することが特許文献2には開示されている。
特許文献1のように、フレームの平坦性を小さくすることは重要であるが、加工上限界があったり、ペリクル作製工程での熱処理等で応力による歪が発生する場合があったりと、平坦性を維持するのが難しいところもある。
また、特許文献2のようにマスク粘着剤の周方向の平坦性の場合、特許文献2に記載されている測定法で測定した粘着剤を使用してもマスク歪が小さい場合と、大きい場合のバラつきが大きいことがわかってきた。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、マスクに圧着した時のマスク歪を安定的に低減させたペリクルを提供することである。
[1]ペリクル枠と、
前記ペリクル枠の一端面に張設されたペリクル膜と、
前記ペリクル枠の他端面に付着した粘着剤層と、を備え、
前記粘着剤層の断面方向の平坦度が、20μm以下である、ペリクル。
[2]前記粘着剤層の周方向の平坦度が、15μm以下である、[1]に記載のペリクル。
[3]前記粘着剤層をペリクル枠の辺に平行な方向に対して垂直な方向で切断した場合に現れる断面の形状を任意の12点において観察した場合に、6点以上において、外側の高さが、内側又は中央部の高さより高い形状である[1]又は[2]に記載のペリクル。
[4]前記粘着剤層の20%伸張/24時間緩和後残留応力値が、1.0mN/mm2以上12.0mN/mm2以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のペリクル。
[5]前記粘着剤層の、各コーナーにおいて斜め45度の方向で切断した場合に現れる断面における高低差が、いずれも10μm以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のペリクル。
図1は、本実施形態に係る一実施態様としてのペリクルを示す斜視図であり、図2は、図1におけるII−II線断面図である。図1及び図2に示すように、ペリクル1は、ペリクル枠2と、ペリクル枠2の一端面2eに張設されたペリクル膜3と、ペリクル枠2の他端面2fに付着した粘着剤層10と、を備えている。図1及び図2に示されるペリクル1は、粘着剤層10を保護する保護フィルムFを備えている。
本実施形態において前記粘着剤層の断面方向の平坦度は20μm以下である。更には、1μm〜15μmが好ましく、特に2μm〜13μm以下がより好ましい。この範囲にあることで、マスクに貼り付く断面方向の平坦度が一定となり、貼付け時の荷重が粘着剤全体に均一にかかることでマスク歪を低減することが従来よりできるようになる。
また、平坦度が1μmより小さくなると、ペリクルをマスクに貼付ける時に気泡を巻き込んだ時に抜け道がなくなり気泡を抱え込んだまま貼り付けられることもあるため、平坦度は1μm以上であることが好ましい。
そして、粘着剤層の断面方向の平坦度とは、ペリクル枠上の粘着剤層の任意の12点について、各々断面方向での断面における最も高い箇所の高さから最も低い箇所の高さを引いた値(高低差)を測定し、得られた12点についての値の平均値を算出したものを言う。ここで、「断面における」「高さ」とは、ペリクル枠の他端面と粘着剤層との界面から、粘着剤層の表面(マスクに貼り付けられる側の面)までの距離をいう。
具体的には、以下のようにして測定される。
1辺につき、辺の中央の1点と該点を軸に左右20mm以内にある1点ずつの合計3点を選択し、4辺分の合計12点について、粘着剤層の断面方向の断面(ペリクル枠の辺に平行な方向に対して垂直な方向で切断した場合に現れる断面の形状をレーザー変位計を用いて実際には切断はせずに観察する。各点について、その断面における最も高い箇所の高さから最も低い箇所の高さを引いた値を求め、上記12点の値の平均値を粘着剤層の断面方向の平坦度とする。
ここで、粘着剤層の周方向とは、ペリクル枠の辺に平行な方向をいう。そして、粘着剤層の周方向の平坦度と次のようにして得られる値をいう。
粘着剤層をその幅の中央(断面方向の中央)でペリクル枠の辺に平行に切断した場合に得られる断面における各辺の中央の4点及びコーナーの4点の計8点において、その高さを測定し、一番高い値から一番低い値を差し引いた値を周方向の平坦度とする。
粘着剤層の断面方向及び周方向の平坦度は、ペリクル枠の平坦度を良くすることや、粘着剤層をペリクル枠上に設ける際に使用する塗布成型機の条件を調整することにより上記範囲に調整することができる。
成型機の条件に限定はないが、例えば、成型を平坦度の高い定盤に挟み込むことによって行うことや2段階で行うことが特に有効である。さらに、2段階で成型を行う場合、成型温度は、1段目の温度より、2段目の温度を高く設定することが好ましい。なお、成型温度は粘着剤組成物の組成に応じて適宜決定することができるが、1段目の成型温度は70〜180℃程度であることが好ましく、2段目の成型温度は150℃〜210℃程度であることが好ましい。
また、ペリクル枠の平坦性は、ペリクル枠の周方向において平坦度を15μm以下にすることが望ましい。
このような構造をとることにより、マスクに貼り付けた時に気泡が抜けやすくなり、エアパス等の心配がなくなる。外側の高さは、中央部及び内側の高さより高いことがより好ましく、特に、外側が一番高く、中央部が一番低く、内側が外側よりは低いが中央部より高いことが好ましい。この場合、気泡が抜けやすいことに加え、貼り付け時に均一にマスクにペリクルの荷重がかかるようになるために更に好ましい。
粘着剤層の断面方向における断面の形状は、上述の断面方向の平坦度の測定の時と同様に、12点の断面を観察することにより確認することができる。この場合に、12点のうち、少なくとも6点以上において上記条件を満たしていることが好ましく、9点以上において満たしていることがより好ましく、すべてにおいて満たしていることが特に好ましい。
粘着剤層の断面形状は、粘着剤層をペリクル枠上に設ける際に使用する塗布成型機の条件を上記形状になるように設定することにより、上記のような形状とすることができる。
本実施形態において、「20%伸長/24時間緩和後残留応力値」とは、粘着剤層を20%伸長後に24時間緩和させた時の残留応力値αを意味する。
すなわち、上記粘着剤層の断面方向の平坦度を20μm以下とすることに加え、更に貼付け安定後の残留応力に着目し、前記残留応力値αを特定範囲とすることでマスク歪を更に低減することができる。
前記残留応力値αの値が大きいほど、残留応力が大きく、マスクを変形させる力が強いためマスク歪が大きくなる。一方、αの値が小さいほどマスクを変形させる力は小さいが、マスクを保管する時にマスクとペリクルがずれる可能性がある。
以上の観点から、本実施形態においては、残留応力値αを1.0〜12.0mN/mm2の範囲内とすることが好ましい。このような範囲にすることにより、マスク歪を低減させ、なおかつ、マスク保管時にマスクとペリクルがずれることが無いことが分かった。
残留応力値αは、2.5mN/mm2以上11.0mN/mm2以下であることがより好ましく、3.5mN/mm2以上10.5mN/mm2以下であることがさらに好ましい。残留応力値αがこの範囲内であれば、特に貼付け直後からの残留応力も小さくなり、直後から安定後までのマスクを変形させる力が小さくなりマスク歪に特に好ましい。
また、残留応力値αが、5.5mN/mm2以上9.0mN/mm2以下であることがとりわけ好ましく、6.0mN/mm2以上8.5mN/mm2以下であることが特に好ましい。残留応力値αがこの範囲内であれば、凝集力も適度になるため、マスクからペリクルを剥離したときの糊残りを低減することができる。
粘着剤層の残留応力値αは、粘着剤組成物の組成比や硬化材量によって上記範囲に調整することができる。
粘着剤層の応力保持率は、粘着剤として柔軟性の高い材料を使用することにより上記範囲に調整することができる。
アクリル系樹脂としては、非架橋型のアクリル系樹脂や架橋型のアクリル系樹脂を用いてもよく、非架橋型のアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル系エラストマーが好ましく用いられる。
合成ゴム系樹脂としては、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマーが好ましく用いられる。
(メタ)アクリル酸エステル系エラストマーとしては、アクリル系ベースポリマー(A)が好ましく、粘着付与剤を併用することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系エラストマーは、1種で用いても、2種以上を用いてもよい。
本実施形態において、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」を意味する。
ブロック共重合体としては、一般式(I):(a1)−(b)−(a2)で示される構造を含むブロック共重合体(I)が好ましい。ここで、(a1)と(a2)は同一のモノマーからなる重合体ブロックである。
一般式(I)における重合体ブロック(a1)及び(a2)のガラス転移温度Tgは、80℃以上であることが好ましい。(a1)、(a2)のガラス転移温度が80℃以上であると、特に、高温下での保持力及び凝集力が十分に得られ好ましい。
また、一般式(I)における重合体ブロック(b)のガラス転移温度Tgは、30℃以下であることが好ましい。また、一般式(I)の(b)が共重合体である場合は、ガラス転移温度Tgが30℃以下である重合体部分を主鎖中に有することが好ましい。(b)のガラス転移温度が30℃以下であると、粘着力、保持力が十分に得られ好ましい。
なお、各々の重合体ブロックのガラス転移温度は、アクリル系ベースポリマー(A)についてDSC測定を行ったときに得られる複数のピークから求めることができる。
ここで、「主として」とは、重合体ブロックa全体の少なくとも50質量%を超え、好ましくは80質量%以上を炭素数が1〜14のメタクリル酸アルキルエステルが占めていることを意味する。
また、重合体ブロック(a1)と(a2)の少なくとも何れかが、炭素数が1〜14のメタクリル酸アルキルエステルからなっていてもよい。
重合体ブロックaのガラス転移温度を80℃以上とする観点から、そのモノマー成分は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル等の、メタクリル酸及び炭素数3以下のアルコールからなるエステルであることが好ましい。
前述の炭素数1〜14のメタクリル酸アルキルエステルは、1種で用いても、2種以上を用いてもよい。
該モノマー成分の具体例としては、例えば、メタクリル酸トリメチルシリル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル等のメタクリル酸アルキルエステル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル等のアクリル酸アルキルエステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン等が挙げられる。
該モノマー成分は、1種で用いても、2種以上を用いてもよい。
ここで、「主として」とは、重合体ブロックb全体の内少なくとも50質量%を超えて、好ましくは80質量%以上を炭素数1〜14のアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルが占めていることを意味する。
アクリル酸アルキルエステルを主たるモノマー成分として用いる場合には、重合体ブロックbのガラス転移温度を30℃以下にする観点から、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等を用いることが好ましい。
メタクリル酸アルキルエステルを主たるモノマー成分として用いる場合には、重合体ブロックbのガラス転移温度を30℃以下にする観点から、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸2−ヘキシルデシル等の、メタクリル酸及び炭素素4以上のアルコールからなるエステルを用いることが好ましい。
上記炭素数1〜14のアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルは、1種で用いても、2種以上を用いてもよい。
該モノマー成分は、1種で用いても、2種以上を用いてもよい。
該モノマー成分として、例えば、メタクリル酸トリメチルシリル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル等のメタクリル酸アルキルエステル以外のメタクリル酸エステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン等が挙げられる。
(a1)、(a2)及び(b)の他の重合体ブロックとしては、重合体ブロックa又は重合体ブロックbと同種の重合体ブロックであってもよく、重合体ブロックa又は重合体ブロックbとは別種の重合体ブロックcであってもよい。別種の重合体ブロックcとしては、エチレン、プロピレン等のオレフィン及びε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトンなどによって構成される重合体ブロック等が挙げられる。
また、同様の観点から、分子量分布としては、MW/MNが1.0〜2.0であることが好ましい。ここで、MWは重量平均分子量、MNは数平均分子量である。
リビング重合法で重合することにより、ブロック共重合体の重量平均分子量を10,000〜500,000の範囲内とすることができ、分子量分布が小さく不純物が少ないブロック共重合体とすることができる。
a/bが上記範囲内にあることで、粘着剤層として柔らかさを保ったまま凝集力が十分に得られ、高い保持力が得られるためマスク歪を低減することが可能となる。
また、ブロック共重合体(I)は、マスクへの糊残りと、アクリル系ベースポリマー(A)としての耐光性とに悪影響を与えない程度に、分子側鎖中又は分子主鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基等の官能基を有していてもよい。
スチレン系エラストマーとしては、粘着剤層をペリクル枠に厚く塗布することが可能になり、ペリクルをマスクに貼り付けた際のマスク歪をより低減することが可能となる観点から、ビニル芳香族化合物単位を主体とする重合体ブロック(以下、「重合体ブロックd」という)を少なくとも2個及び共役ジエン単位を主体とする重合体ブロック(以下、「重合体ブロックe」という)を少なくとも1個有するブロック共重合体(II)が好ましく、粘着付与剤を併用することが好ましい。
該ブロック共重合体(II)は、未水素添加物であっても、水素添加物であってもよい。また、該ブロック共重合体(II)は、1種で用いても、2種以上を用いてもよい。
重合体ブロックdを構成するビニル芳香族化合物単位としては、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ビニルトルエン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニル芳香族化合物から誘導される構成単位が挙げられる。これらの中でもスチレン、α−メチルスチレンから誘導される構成単位が好ましい。
ここで、「主体とする」とは、重合体ブロックdにおいて、ビニル芳香族化合物単位の占める割合が50質量%を超えることを意味する。
芳香族ビニル化合物単位は、1種で用いても、2種以上を用いてもよい。
重合体ブロックeを構成する共役ジエン単位とは、少なくとも一対の共役二重結合を有するジオレフィン化合物から誘導される構成単位を意味し、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(又はイソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン化合物から誘導される構造単位が挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンから誘導される構成単位が好ましい。
ここで、「主体とする」とは、重合体ブロックeにおいて、共役ジエン単位の占める割合が50質量%を超えることを意味する。
共役ジエン単位は、1種で用いても、2種以上を用いてもよい。
重合体ブロックeの質量分率が、60質量%以上であることにより、柔軟性をもつ重合体ブロックeが多いため、粘着剤層の残留応力値αを小さくすることが可能になる。また、形状を保つ成型性も保たれるためより好ましい。
質量分率は、例えば、1H−NMRスペクトル等により測定することができる。
重合体ブロックdを(d)で、重合体ブロックeを(e)で表すとき、ブロック共重合体(II)の具体例としては、例えば、(d)−(e)−(d)で示されるトリブロック共重合体、(d)−(e)−(d)−(e)で示されるテトラブロック共重合体、(d)−(e)−(d)−(e)−(d)などで示されるペンタブロック共重合体、((d)−(e))nX型重合体(Xはカップリング剤残基を表し、nは2以上の整数を表す)等が挙げられる。
これら中でも、製造の容易性の点から、トリブロック共重合体、テトラブロック共重合体が好ましく、トリブロック共重合体がより好ましい。
ブロック共重合体(II)の重量平均分子量が上記範囲内であれば、良好な成型性が得られる観点、及び残留応力値αと応力保持率を好ましい範囲に調整する観点から好ましい。
ブロック共重合体(II)のガラス転移温度(Tg)は、−60℃以上40℃以下であることが好ましく、−50℃以上35℃以下であることがより好ましく、−45℃以上30℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度が−60℃以上40℃以下であることにより、ゴム弾性を保ちつつ柔軟性を発現させ、残留応力値αと応力保持率を好ましい範囲に調整することができる。
水素添加率は、共役ジエン単位に由来する炭素−炭素二重結合の含有量を、水素添加の前後において、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、1H−NMRスペクトルなどによって測定し、該測定値から求めることができる。
「ブロック共重合体(II)の未水素添加物」として、具体的には、スチレン−イソプレンブロックコポリマー(「SIS」ともいう)、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(「SBS」ともいう)等が挙げられる。
「ブロック共重合体(II)の水素添加物」とは、共役ジエンに基づくブロックの全部、若しくは一部が水素添加されていることを意味する。
「ブロック共重合体の水素添加物」として、具体的には、水素添加されたスチレン−イソプレンブロックコポリマー(「SEPS」ともいう)、水素添加されたスチレン−ブタジエンブロックコポリマー(「SEBS」ともいう)等が挙げられる。
スチレン系エラストマーにおいては、水素添加型スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(SEBS)及び水素添加型スチレン−イソプレンブロックコポリマー(SEPS)等のブロック共重合体(II)の水素添加物を用いることが好ましい。
オレフィン系エラストマーの具体例としては、1種又は2種以上のα−オレフィンの共重合体が挙げられ、粘着付与剤を併用することが好ましく、該α−オレフィンの共重合体としては、非晶性又は低結晶性のものが好ましい。また、該α−オレフィンの共重合体は、1種で用いても、2種以上を用いてもよい。
α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、4−メチルペンテン−1等が挙げられる。
α−オレフィンの共重合体として、市販品を用いてもよく、その具体例としては、商品名「タフマー(登録商標)」シリーズ、商品名「ノティオ(登録商標)」シリーズ(三井化学株式会社製)等が挙げられる。
本実施形態において、粘着剤層には、タック性を制御するために、上述の粘着剤に加え、更に粘着付与剤を含むことができる。
粘着付与剤の具体例としては、例えば、アクリル系ポリマー、ロジン及びその誘導体、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマー、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体等が挙げられる。
粘着付与剤としては、色調が無色〜淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものが好ましく、液状タイプの粘着付与剤も使用できる。
粘着付与剤は、1種で用いても、2種以上を用いてもよい。
このような粘着付与剤として、市販品を用いてもよく、例えば、商品名アルコン(登録商標)P100、商品名アルコン(登録商標)M100(荒川化学株式会社製);商品名クリアロン(登録商標)M105(ヤスハラケミカル株式会社製);商品名ECR5400、及び商品名ECR179EX(エクソン社製);商品名クイントン(登録商標)DX395、及び商品名クイントン(登録商標)DX390N(日本ゼオン株式会社製)等が挙げられる。
ロジン及びその誘導体として、市販品を用いてもよく、例えば、商品名「パインクリスタル(登録商標)」シリーズ、商品名「スーパーエステル」シリーズ、商品名「タマノル(登録商標)」シリーズ(荒川化学株式会社製)等が挙げられる。
(アクリル系ポリマー(B))
アクリル系ポリマー(B)は、環境温度が低い場合でも良好な弾性接着性を有し、作業性も良好となることから、ガラス転移温度(Tg)が、−30℃以下であることが好ましく、−33℃以下であることがより好ましく、−35℃以下であることがさらに好ましい。
アクリル系ポリマー(B)のガラス転移温度の下限値は特に制限はないが、取り扱いの容易性、入手のし易さから、−90℃以上であることが好ましい。
ガラス転移温度が上記範囲内である場合、アクリル系ポリマー(B)は、常温で液体となるため扱いやすい。
また、アクリル系ポリマー(B)を用いることにより、ペリクルの粘着剤層として使用可能な粘着力を発現できる。これは、アクリル系ポリマー(B)を用いることにより、アクリル系ベースポリマー(A)に含まれる、接着性及び柔軟性を有するモノマー成分と、相溶性が良くなるためだと考えられる。また、アクリル系ポリマー(B)は、アクリル系ベースポリマー(A)と疑似架橋のような構成をとること、及び耐光性がよいことなどから、粘着剤層の糊残りが抑制される。また、アクリル系ポリマー(B)は、アクリル系ベースポリマー(A)と併用することにより、粘着剤層としての柔軟性を発揮し、残留応力値αを小さく、応力保持率を大きくすることができるようになる。
該含有量が、10質量%以上であることで、適切な接着力を得ることができ、70質量%以下であることで、凝集力を適切な範囲とし、保持力が向上する。アクリル系ポリマー(B)の含有量を上記範囲内であることにより、ペリクルをマスクに貼り付けた後にペリクルがマスクから落下することを防止できる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体又は共重合体は、粘着剤をペリクル枠に厚く塗布することが可能になり、且つ、ペリクルをマスクに貼り付けた際のマスク歪をより低減することが可能となるという観点から、ジブロック、トリブロック等のブロック共重合体であってもよい。
1種又は2種以上の炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合させるか、又は、1種又は2種以上の炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の他のモノマー成分とを重合させることにより、(メタ)アクリル酸エステル系重合体又は共重合体を得ることができる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体又は共重合体は、1種で用いても、2種以上で用いてもよい。
中でも、粘着剤であるアクリル系ベースポリマー(A)と相溶性のある、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル等の炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が好ましい。
炭素数1〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種で用いても、2種以上で用いてもよい。
アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量が、850以上であることで充分な接着強度が得られ、70,000以下であることで粘度を適切な範囲に制御でき、作業性を良好にすることができる。
重量平均分子量が上記範囲内にあることにより、アクリル系ベースポリマー(A)の粘着性を高めることが可能となる。さらに、分子量800以下の分子を18質量%以下とすることによっても、粘着剤層の粘着力を高め、糊残りを改善することが可能になる。
アクリル系ポリマー(B)の分子量分布としては、MW/MNが1.0〜2.0であることが、糊残りを防止する観点から好ましい。
商品名「ARUFON(登録商標)」シリーズは、重合開始剤、連鎖移動剤、溶剤等を使用しないため不純物が少なく、MW/MNが1.0〜2.0と分子量分布が狭いため糊残り防止性に優れる。
商品名「クラリティ(登録商標)」シリーズは、ハードセグメント及びソフトセグメントをもつトリブロック共重合体であるため、ペリクル枠に厚く塗布できることからマスク歪の低減に優れる。また、商品名「クラリティ(登録商標)」シリーズは、MW/MNが1.0〜2.0と分子量分布が狭いため、糊残り防止性にも優れる。
粘着剤層は、可塑剤を含んでもよい。
可塑剤は、粘着剤層の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、ブロック共重合体(I)や(II)に相溶し、本実施形態が目的とする粘着剤層を得ることができるものであれば、特に制限されない。
可塑剤の具体例として、例えば、パラフィンオイル、ナフテンオイル及び芳香族系オイル等が挙げられ、無色、無臭であるナフテンオイル、パラフィンオイルが好ましい。
可塑剤としては、市販品を用いてもよく、その具体的としては、商品名White Oil Broom350(Kukdong Oil&Chem社製)、商品名ダイアナフレシア(登録商標)S32、商品名ダイアナプロセスオイル(登録商標)PW−90、商品名ダイアナプロセスオイル(登録商標)NS−100、商品名DNオイルKP−68(出光興産社製)、商品名KN4010(ペトロチャイナカンパニー社製)、商品名EnerperM1930(BPケミカルズ社製)、商品名Kaydol(登録商標)(Crompton社製)、商品名Primol(登録商標)352(エッソ社製)等が挙げられる。
粘着剤層にスチレン系エラストマーを用いる場合には特に、可塑剤を添加することで、適度な柔らかさにすることができ、残留応力値αを好ましい範囲に調整することができる。
ワックスは、常温で固体、加熱すると液体となる重量平均分子量が10,000未満の有機物であり、本実施形態が目的とする粘着剤層を得ることができるものであれば、特に制限されない。
各種添加剤として、例えば、安定化剤及び微粒子充填剤等が挙げられる。
安定化剤は、粘着剤層の熱による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、粘着剤層の安定性を向上するために配合されるものであり、本実施形態が目的とする粘着剤層を得ることができるものであれば、特に制限されない。
安定化剤として、例えば、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等が挙げられる。
酸化防止剤は、粘着剤層の酸化劣化を防止するために使用される。
紫外線吸収剤は、粘着剤層の耐光性を改善するために使用される。
酸化防止剤の具体例としては、例えば、フェノール系酸化防止剤が挙げられ、紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が挙げられる。粘着剤層に、ラクトン系安定剤を添加してもよい。
安定化剤としては、市販品を使用してもよく、例えば、住友化学工業(株)製の商品名「スミライザー(登録商標)GM」、商品名「スミライザー(登録商標)TPD」及び商品名「スミライザー(登録商標)TPS」、チバスペシャリティーケミカルズ社製の商品名「イルガノックス(登録商標)1010」、商品名「イルガノックス(登録商標)HP2225FF」、商品名「イルガフォス(登録商標)168」及び商品名「イルガノックス(登録商標)1520」、城北化学社製の商品名「JF77」等が挙げられる。
スチレン系エラストマーを用いる場合、このような添加剤をいれることで熱等による劣化を防ぐことができるので、特に好ましい。
粘着剤層には、粘着剤として架橋系の粘着剤を用いてもよく、架橋系の粘着剤としては、架橋型のアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂が挙げられる。
架橋型のアクリル系樹脂として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と、硬化剤との反応生成物を含む樹脂組成物を用いることにより、架橋密度を調整でき、残留応力値αの値を好ましい範囲に調整することができる。
一般的に、架橋密度が高いほど、残留応力値αと最大応力の値は大きくなる傾向がある。また、粘着剤層中に含まれる樹脂のTgを調整することによっても残留応力値αと最大応力値αmaxの値は調整することができる。一般的に、Tgが高いほど、残留応力値αと最大応力値αmaxの値は大きくなる傾向がある。また、架橋密度やTgが高いほど、残留応力値の緩和が少ないため、応力保持率も大きくなる傾向になる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、A成分が80〜99質量%、B成分が1〜20質量%であるモノマー混合物の共重合体であることがマスクへの適度な接着力を発現する観点から好ましい。
A1成分が40〜90質量%、A2成分が9〜59質量%、B成分が1〜20質量%であるモノマー混合物の共重合体であると、剥離後の糊残りが少なくなり好ましい。
A1成分は、1種で用いても、2種以上で用いてもよい。
中でも、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル等の炭素数4〜14、好ましくは4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、マスクとの適度な接着性を発現するため、好ましい。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピルである、炭素数1〜3の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの場合、A2成分及びB成分と共重合体をつくった際にB成分の接着性に寄与するカルボキシル基の立体障害が小さくなり、接着性が良好となる。
A2成分は、1種で用いても、2種以上で用いてもよい。
中でも、共重合性の点から、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましく用いられる。
B成分のモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマーや、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基含有モノマーである。
B成分のモノマーは、1種で用いても、2種以上で用いてもよい。
中でも、共重合性、汎用性等の点から、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。糊残りの点から(メタ)アクリル酸がより好ましい。
(メタ)アクリル酸は(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を構成する全モノマーに対し0.1〜5質量%含有することが好ましく、0.5〜4質量%含有することがより好ましく、0.8〜3質量%含有することがさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の分子量は、重量平均分子量として70万〜250万の範囲内にあると、粘着剤層の凝集力、接着力が適度な大きさになり、糊残りしにくく、且つ、十分な接着力、耐荷重性を持つ粘着剤となり、好ましい。
重量平均分子量は、90万〜230万の範囲内にあることがより好ましく、100万〜200万の範囲内にあることがさらに好ましい。
重量平均分子量の制御方法について、公知の方法で制御できる。具体的には、一般に重合反応するときのモノマー濃度が高いほど重量平均分子量は大きくなる傾向にあり、重合開始剤量の量が少ないほど、又、重合温度が低いほど重量平均分子量は大きくなる傾向にある。一般的に、重量平均分子量が大きいほど凝集力が大きくなり、凝集力が大きいほど、残留応力値αと最大応力値αmaxの値は大きくなる傾向がある。
重合開始剤としては、例えば、アゾ系の2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等、過酸化物系のジベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が有する官能基成分との反応性の観点から、硬化剤としては、イソシアネート系化合物及び多官能性エポキシ化合物が好ましく、多官能性エポキシ化合物がより好ましい。
多官能性エポキシ化合物としては、具体的には、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、N、N、N’、N’−テトラグリシジルm−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
中でも、2〜4個のエポキシ基を有する含窒素エポキシ化合物が好ましく、4個のエポキシ基を有する含窒素エポキシ化合物が反応性の点からより好ましい。
反応性がよいと粘着剤層として塗布後、架橋反応が速やかに終了するので、特性が短時間で安定し、生産性の面で優れる。
また、硬化剤の含有量を適宜調整することで、残留応力値αと応力保持率を調整することができる。
粘着剤層に残存する重合開始剤の量を低減させることで、フォトマスクのヘイズが改善する理由について定かではないが、以下のように考えられる。
ヘイズの発生原因はいくつか考えられるが、露光雰囲気下に存在する有機ガス成分が露光光のエネルギーにより化学反応を起こし、その反応生成物がフォトマスク上に付着することがヘイズ発生の主な原因であると考えられる。粘着剤層にある一定量以上の重合開始剤が存在すると、重合開始剤が露光光のエネルギーにより開裂し、有機ガスの化学反応のトリガーとなり、その結果、ヘイズの原因となる反応生成物の生成量が格段に多くなると推察している。
以上理由により、ペリクルに使用する粘着剤層に残存する重合開始剤については、粘着剤層全質量に対し8ppm以下であることが好ましいが、7ppm以下であることがより好ましく、6ppm以下であることがさらに好ましい。
10時間半減期温度とは、重合開始剤が元々の量の半分分解するまでの時間である半減期が10時間になる温度を意味する。
10時間半減期温度が低い重合開始剤の方が熱分解しやすいため、粘着剤層に残存しにくい。
10時間半減期温度が、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下の重合開始剤を使用することが好適である。
このような重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度30℃)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(10時間半減期温度60℃)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度51℃)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(10時間半減期温度66℃)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(10時間半減期温度67℃)、ジベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度74℃)、ジラウロイルパーオキサイド(10時間半減期温度62℃)等が挙げられる。
粘着剤層に残存する光重合開始剤を低減・コントロールする方法としては加熱により熱分解や乾燥・蒸発させる方法や、紫外線を照射し、光重合開始剤を分解させる方法等が挙げられる。
このような光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系重合開始剤やアシルホスフィンオキサイド系重合開始剤等が挙げられる。
アルキルフェノン系重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド系重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤として、たとえば、モノマー全量100質量部に対して、アゾビスイソブチロニトリル0.01〜2.0質量部加え、通常、50〜70℃程度で、8〜30時間程度行われる。
本実施形態のペリクルは、例えば、以下の方法で好適に製造することができる。
第一に、スチレン系エラストマー、(メタ)アクリル酸エステル系エラストマー又はオレフィン系エラストマー等に、必要に応じて、可塑剤等、その他の添加剤等を混合し、粘着剤組成物を得る。
粘着剤層10を、所望の厚み・幅の粘着剤層としてペリクル枠2の端面に形成(塗布)するために、粘着剤組成物をさらに溶媒で希釈し、溶液濃度(粘度)を調整する。
なお、ペリクル膜3のペリクル枠2への貼り付け(張設)は、粘着剤層の形成の前後、いずれでもよく、粘着剤組成物を、ペリクル枠2の他端面2fに塗布し粘着剤層10とした後、ペリクル枠2の一端面2eにペリクル膜3を貼付けしてもよい。
粘着物組成物を乾燥又は冷却後、粘着剤層10の粘着面を保護するための保護フィルムFを粘着剤層の表面(ペリクル枠とは反対側の、後にマスクに貼り付ける側の面)に貼ってもよい。保護フィルムFとしては、例えばポリエステル製の厚さ30〜200μmのフィルム等が用いられる。また、粘着剤層10から保護フィルムFを剥がす際の剥離力が大きいと、剥離の際に粘着剤層10が変形するおそれがある。したがって、適切な剥離力になるように、粘着剤層10と接する保護フィルムF表面にシリコーン又はフッ素などを用いた離型処理を予め行っていてもよい。
粘着剤層10の粘着面を保護するための保護フィルムFを貼った後、加重をかけて、粘着剤層表面を略平坦に成型してもよい。
第一に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と、硬化剤又は硬化剤溶液とを混合し粘着剤前駆体組成物を得る。この場合、所望の厚み・幅のマスク粘着剤層を塗布するために、粘着剤前駆体組成物を更に溶媒で希釈し、溶液濃度(粘度)を調整することができる。希釈のための溶媒は、溶解性、蒸発速度などの観点から選ばれる。好ましい溶媒としては、例えば、アセトン、酢酸エチル、トルエン等が挙られるが、これらに制限されるものではない。
ディスペンサーでの塗布において溶媒で希釈することによって、塗布液の糸引きが少なく、安定した幅・厚みに調整することが容易となる。
かかる乾燥温度については、溶媒及び残存モノマーの沸点、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の分解温度を考慮し、50〜200℃であることが好ましく、60〜190℃であることがより好ましい。
乾燥、架橋後に、粘着面を保護するための保護フィルムF(離型シート)を貼ってもよい。
なお、ペリクル膜3のペリクル枠2への貼り付け(張設)は、粘着剤層の形成の前後、いずれでもよく、ペリクル枠2の他端面2fに粘着剤層10を設けた後、ペリクル枠2の一端面2eにペリクル膜3を貼付けてもよい。
粘着剤層の厚みが上記範囲内にあれば、ペリクル枠の表面の凹凸を吸収でき、マスクの平坦性を確保しつつ粘着剤層からのアウトガスが問題のないレベルとなり、マスクに圧着した時のマスク歪を低減させたペリクルとすることができる。
本実施形態において、ペリクル枠としては矩形の形状をした従来公知のものを陽極酸化や塗装等の表面処理を行い使用することができる。また、粘着剤層の平坦度を高めるために、事前にペリクル枠に加熱処理や荷重加熱処理等で断面方向や周方向の平坦度を高めておくことが好ましい。
また、ペリクル膜及びその張設方法についても限定はなく、従来公知のもの及び方法を使用することができる。
(1)粘着剤層の断面方向の平坦度(μm)の測定
保護フィルム付ペリクルの保護フィルムをゆっくりと粘着剤層の形状が変化しないように剥ぎ取り、レーザー変位計の台座にペリクル膜面を下にして設置した。
各辺の中央4点と、該点から左右に20mmの位置にある8点の合計12点について、ペリクル枠の辺に平行な方向に対して垂直な方向で切断した場合に得られる断面の高さを、実際には切断はせずにレーザー変位計で測定を行い、各々の点について一番高い値から一番低い値を差し引いた値(高低差)を算出した。
得られた12点についての値の平均を求め、これを幅方向の平坦度とした。
保護フィルム付ペリクルの保護フィルムをゆっくりと粘着剤層の形状が変化しないように剥ぎ取り、レーザー変位計の台座にペリクル膜面を下にして設置した。
粘着剤層をその幅の中央でペリクル枠の辺に平行に切断した場合に得られる断面の、各辺の中央の4点及びコーナーの4点の計8点において、その高さをレーザー変位計を用いて実際には粘着剤層を切断せずに測定し、一番高い値から一番低い値を差し引いた値を求めた。
保護フィルム付ペリクルを切断して、その一辺を切り出し、切り出した一辺に設けられている粘着剤層から粘着剤層が変形しないようにゆっくりと保護フィルムを剥離し、その後、ペリクル枠から粘着剤層をゆっくりと剥離した。その際、剥離しにくいときは、シッカロールを手と粘着剤層に付着しながらゆっくりと剥離し、剥離した粘着剤層の長手方向の伸び率が5%以下になるようにした。
剥離した粘着剤層について、引張応力(N)を下記の装置にて測定した。
装置名:オートグラフ(SHIMAZU EZ−S 島津製作所製)
ロードセル: 1N (クリップ式チャック)
チャック間: 40mm
クロスヘッドスピード: 100mm/min
具体的には、上記装置にて、粘着剤層を伸度20%まで長手方向に引張した後、クロスヘッドを停止して緩和させ、24時間後の引張応力(N)を測定した。
別途、粘着剤層の断面積(mm2)を測定しておき、上記のようにして得られた24時間緩和後の引張応力(残留応力)(N)を断面積(mm2)で割ることで、単位面積当たりの24時間緩和後の残留応力値α(N/mm2)を求めた。
また、20%まで伸長した時の最大応力値αmaxと、その後に24時間緩和させた時の残留応力値αから応力保持率(=α/αmax×100)(%)を求めた。
なお、粘着剤層の断面積は、次のようにして測定した。
上記保護フィルム付ペリクルから、先に引張応力測定用に切り出した辺とは別の一辺を切断し、その後、粘着剤層が変形しないようにゆっくりと保護フィルムを剥離してペリクル枠付きの粘着剤層を取り出した。次いで、これを粘着剤層の長手方向(ペリクル枠の辺方向)に垂直に約1cmの長さに切断し、樹脂にて包埋し、樹脂を自然に硬化させた。その後、研磨機にて断面研磨し、その後、マイクロスコープにて形状を測定し断面積を算出した。なお、粘着剤層の断面積は、保護フィルムが切断しやすい場合は、保護フィルム付で測定してもよい。
マスクの歪評価は、Tropel社製のFlatMaster200を用いて測定した。まず、マスク(6025石英)について、ペリクルを貼りつける前の平坦度を測定した。その後、ペリクルをマスクに簡易型マウンター(加重:5Kgf、45sec)を用いて貼り付け、ペリクル貼り付け後のマスクの平坦度を測定した(測定範囲:135mm×110mm)。
貼り付け前後の平坦度の差し引きを行い、ペリクルを貼り付けたことでどれだけマスクが変形したかを算出した。
◎:ペリクルを貼り付けたとことによるマスクの変形量が25nm以下
△:ペリクルを貼り付けたことによるマスクの変形量が25nm超45nm以下
×:ペリクルを貼り付けたことによるマスクの変形量が45nm超
ペリクルをマスク(6025石英)に簡易型マウンター(加重:5Kgf、45sec)を用いて貼付け、ペリクルが下になるようにしてクリーンルームにて3日間保管した。3日後に粘着剤層とマスクの間に気泡があるか無いかを、マスク側から(マスクの材料である6025石英は透明なので、粘着剤層が貼付いた部分や貼付き部分とマスクとの間に発生した気泡が目視にて確認できる)目視にて評価した。
○:気泡が無い
△:気泡が発生しており、発生部分の面積が全体(粘着剤層の幅全体の面積)に対して5%以下である
×:気泡の発生部分が全体に対して5%より多くある
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に酢酸エチル(30質量部)を投入した。イソブチルアクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルアクリレート/2、2’−アゾビスイソブチロニトリルを30/66/1.5/2.5/1の質量比で混合した混合物(32質量部)を酢酸エチルに添加し、窒素雰囲気下、60℃で8時間反応させた。反応終了後、トルエン(38質量部)を反応溶液に添加して、不揮発分濃度32質量%のアクリル共重合体溶液を得た(重量平均分子量130万)。
得られたアクリル共重合体100質量部に多官能性エポキシ化合物(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンのトルエン溶液、不揮発分濃度5%)を0.15質量部添加・攪拌混合し、粘着剤前駆体組成物を得た。
陽極酸化処理したアルミニウム合金製のペリクル枠(外径113mm×149mm、内径109mm×145mm、高さ3.2mm、フレームのマスク側の平坦度は13μm)を用意した。なお、ペリクル枠には、取扱いを容易にするためピン穴としてペリクル膜を張設する方の端面から1.7mmとなる位置に、ペリクル枠外辺側面のコーナー部からそれぞれ25mmの位置に、穴径1.6mmφ、深さ1.2mmのジグ穴を4ヵ所設けた。
得られた粘着剤前駆体組成物を、ペリクル枠の一方の端面上にディスペンサーで塗布した。これを高精細成型機にて2段階で加熱乾燥・成型・キュア(1段階目:100℃、8分、2段階目:180℃、8分)して成型を行い、粘着剤層を形成した。
その後、粘着剤層の表面にシリコーン離型処理した厚さ100μmのポリエステル製保護フィルムを貼り合わせ、養生させ、粘着力を安定化させた。形成された粘着剤層の厚さは、0.3mmであった。
次いで、ペリクル枠の他端面に接着剤を用いてペリクル膜を貼付けしてペリクルを作製した。
得られたペリクルについて、粘着剤層の平坦度を測定したところ、断面方向の平坦度は7.5μm、周方向の平坦度は10μmであり、粘着剤層の断面形状は、外側>内側>中央部順で高いものであった。
得られたペリクルについて、20%伸長/24時間緩和後残留応力値αの測定とマスクの歪評価と貼付け後の気泡の評価を実施した。結果を表1に示す。
実施例1の多官能性エポキシ化合物の添加量を0.3質量部にした以外は、実施例1と同じように粘着剤前駆体組成物を得た。次いで、実施例1と同じようにペリクルを作製し、平坦度と評価を測定した。結果を表1に示す。粘着剤層の断面の形状は、外側>中央部>内側の順で高いものであった。
<実施例3>
実施例1と同じペリクル枠体を用意し、実施例1と同じ粘着剤前駆体組成物を、ペリクル枠体の一方の端面上にディスペンサーで塗布した。これを平坦度が2μm以下のセラッミク製定盤にて挟み込んで2段階で加熱乾燥・成型・キュア(1段階目:100℃、8分、2段階目:180℃、8分)し、粘着剤層を形成した。
その後、粘着剤層の表面にシリコーン離形処理した厚さ100μmのポリエステル製保護フィルムを貼り合わせ、養生させ、粘着力を安定化させた。
実施例1と同じようにペリクルを作製し、平坦度と評価を測定した。結果を表1に示す。粘着剤層の断面の形状は、外側>中央部>中側の順で高いものであった。
<実施例4>
粘着付与剤として「UP1080(東亞合成株式会社製)」65質量部と、粘着剤として「クラリティ LA2330(株式会社クラレ社製)」35質量部とを、全体で48gとなるように混合して原料混合物を得た。得られた原料混合物をラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製、内容量:60mL)に投入した後、密閉した。200℃、100rpmで20分間混練して、塊状の粘着剤組成物を得た。約10gの粘着剤組成物を加熱タンク(タンク内温度:200℃)に投入して溶融させた。
陽極酸化処理したアルミニウム合金製のペリクル枠(外径113mm×149mm、内径109mm×145mm、高さ2.9mm)を用意した。なお、ペリクル枠には、ピン穴としてペリクル膜を張設する方の端面から1.7mmとなる位置に、ペリクル枠外辺側面のコーナー部からそれぞれ25mmの位置に、穴径1.6mmφ、深さ1.2mmのジグ穴を4ヵ所設けた。
加熱タンクに連通する針先から押出した溶融状態の粘着剤組成物を、ペリクル枠の一方の端面上に塗布して、これを高精細成型機にて2段階で加熱乾燥・成型・キュア(1段階目:150℃、10分、2段階目:180℃、10分)して成型を行い粘着剤層を形成した。
その後、粘着剤層の表面にシリコーン離型処理した厚さ100μmのポリエステル製保護フィルムを貼り合わせ、養生させ、粘着力を安定化させた。形成された粘着剤層の厚さは、0.6mmであった。
その後、上記のペリクル枠の他端面に接着剤を用いてペリクル膜を貼付けしてペリクルを作製した。
得られたペリクルについて、実施例1と同じようにペリクルを作製し、平坦度と評価を測定した。結果を表1に示す。粘着剤層の断面の形状は、外側>内側>中央部の順で高いものであった。
<比較例1>
粘着付与剤として「UP1080(東亞合成株式会社製)」23.1質量部と「パインクリスタル KE311(荒川化学工業株式会社製)」25.6質量部、粘着剤として「クラリティ LA2410e(株式会社クラレ社製)」51.3質量部を用い、高精細成形機での成型条件を変更した以外は実施例4と同じ方法でペリクルを作製し、平坦度と評価を測定した。結果を表1に示す。粘着剤層の断面の形状は、外側>中央部>内側の順で高いものであった。
<比較例2>
実施例2と同じように粘着剤前駆体組成物を得た。高精細成形機での成型条件を変更した以外は、実施例1と同じようにペリクルを作製し、平坦度と評価を測定した。結果を表1に示す。粘着剤層の断面の形状は、中央部>内側>外側の順で高いものであった。
2 ペリクル枠
2e,2f ペリクル枠の端面
3 ペリクル膜
10 粘着剤層
F 保護フィルム。
Claims (4)
- ペリクル枠と、
前記ペリクル枠の一端面に張設されたペリクル膜と、
前記ペリクル枠の他端面に付着した粘着剤層と、を備え、
前記粘着剤層の断面方向の平坦度が、20μm以下であり、
前記粘着剤層の20%伸張/24時間緩和後残留応力値が、5.5mN/mm2以上9.0mN/mm2以下である、ペリクル。 - 前記粘着剤層の周方向の平坦度が、15μm以下である、請求項1に記載のペリクル。
- 前記粘着剤層をペリクル枠の辺に平行な方向に対して垂直な方向で切断した場合に現れる断面の形状を任意の12点において観察した場合に、6点以上において、外側の高さが、内側又は中央部の高さより高い形状である、請求項1又は2に記載のペリクル。
- 前記粘着剤層の、各コーナーにおいて斜め45度の方向で切断した場合に現れる断面における高低差が、いずれも10μm以下である、請求項1〜3いずれか一項に記載のペリクル。
Priority Applications (1)
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