JP6602206B2 - 筆記具用水性インク組成物 - Google Patents
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例えば、1)酸化チタンを内包したマイクロカプセル顔料と、水と、水溶性有機溶剤とから少なくともなるボールペン用水性白色インク組成物において、前記マイクロカプセル顔料は、油溶性樹脂及び/又は非水系分散剤を含む油性媒体中に酸化チタンが均質状態に分散してなる着色媒体を内包して顔料したもの(例えば、特許文献1参照)、2)筆記具用インク組成物において、隠蔽性粒子、構造粘性付与剤が溶媒に分散されている分散体が封入されたマイクロカプセル粒子を含有するもの(例えば、特許文献2参照)、3)界面重縮合により得られた、架橋されたポリウレタン、ポリウレア及び/又はポリウレタン/ポリウレアタイプのポリマーマトリックス及び顔料からなるマイクロカプセルの形態にあり、前記マイクロカプセルがポリマーマトリックスの重量に対して10重量%〜80重量%の顔料を含むことを特徴とする複合染料(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
(1) 少なくとも顔料と、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体を内包したマイクロカプセル顔料を含有することを特徴とする筆記具用水性インク組成物。
(2) 前記媒体が脂肪族カルボン酸エステルであることを特徴とする上記(1)記載の筆記具用水性インク組成物。
(3) マイクロカプセルを構成するシェル成分がウレタン、ウレア、もしくはウレアウレタンであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の筆記具用水性インク組成物。
(4) マイクロカプセルを構成するシェルの密度が、中心に向かうにしたがって低くなることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の筆記具用水性インク組成物。
本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも顔料と、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体を内包したマイクロカプセル顔料を含有することを特徴とするものである。
本発明に用いるマイクロカプセル顔料は、少なくとも顔料と、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体を内包したものである。
用いることができる顔料としては、その種類については特に制限はなく、筆記具用水性インク組成物等に慣用されている無機系及び有機系顔料の中から任意のものを使用することができる。
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラックや、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、群青などが挙げられる。
また、有機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。
好ましくは、マイクロカプセル化により、更に元の原料(顔料)よりも分散性を容易にし、比重、粒子径を任意にコントロールする点の点から、カーボンブラック、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、並びに、酸化チタン、酸化亜鉛などの比重の大きい顔料が望ましい。
本発明のマイクロカプセル顔料に用いる媒体は、20℃における比重が1未満である水難溶性の媒体であり、この物性を満たすものであれば、特に限定されないが、20℃における比重が1未満である有機溶媒などの媒体が挙げられる。本発明において、「水難溶性」とは、水100mlに対する溶解度が0.1mg以下のものをいう。
用いることができる20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体としては、例えば、オルトセカンダリーブチルフェノール等のアルキル−フェノール類、ドデシルベンゼン等のアルキルアリール類、オレイン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸イソプロピル等の飽和若しくは不飽和カルボン酸アルキルエステルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アジピン酸ジオクチル等のカルボン酸ジアルキルエステルなどの脂肪族ジカルボン酸ジエステル、トリブチルフォスフェート等のトリアルキルフォスフェートなどのリン酸トリエステル類、安息香酸ブチル等の安息香酸アルキルエステル、フタル酸ジトリデシル等のフタル酸ジアルキルエステルなどの芳香族カルボン酸エステル、ジイソブチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。
これらの有機溶媒からなる媒体は、単独でも、2種類以上を適宜の割合に混合して用いてもよい。
R1COOR2 ………(I)
〔上記式(I)中、R1は炭素数4〜21の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、二重結合を2つ以上有するアルキル基であり、R2は炭素数1〜21の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、二重結合を2つ以上有するアルキル基である。〕
上記式(I)で表される脂肪族カルボン酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸(炭素数12)、ミリスチン酸(炭素数14)、パルミチン酸(炭素数16)、ステアリン酸(炭素数18)、アラキン酸(炭素数20)などの脂肪酸と、例えば、メチルアルコール(炭素数1)、イソプロピルアルコール(炭素数3)、イソブチルアルコール(炭素数4)、ミリスチルアルコール(炭素数14)、セチルアルコール(炭素数16)、ステアリルアルコール(炭素数18)、エイコサニルアルコール(炭素数20)などのアルコールから得られる、ラウリン酸メチル(比重:0.87)、ミリスチン酸ミリスチル(比重:0.84)、ミリスチン酸オクチルドデシル(比重:0.86)、パルミチン酸2−エチルヘキシル(比重:0.86)、ステアリン酸ステリアル(比重:0.83)、ステアリン酸ブチル(比重:0.86)、パルミチン酸イソプロピル(比重:0.85)、ミリスチン酸イソプロピル(比重:0.85)、ステアリン酸メチル(比重:0.84)、オレイン酸イソブチル(比重:0.86)などを挙げることができる。これらの媒体(1価アルコールエステル)は、比重が0.8から1未満で、水100mlに対する溶解度が0.05mg以下のものである。なお、20℃における比重が1超過となる水難溶性の媒体では、本発明の効果を発揮することができないものとなる。
Mv/Mnは粒度分布の指標として用いられ、Mvは体積平均粒径であり、Mnは個数平均粒径である。本発明(後述する実施例を含む)においては、マイクロカプセル顔料の粒度分布(Mv/Mn)の値が1に近づくほど顔料の単分散性が高いことを示し、測定装置として粒子径分布解析装置HRA9320−X100(日機装株式会社製)を用いて体積平均粒径(Mv)および個数平均粒径(Mn)を測定し、体積平均粒径(Mv)/個数平均粒径(Mn)から算出される。
マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができる。
このシェル層の形成に用いられるウレタン(ポリウレタン樹脂)、ウレア(ポリウレア樹脂)、ウレアウレタン(ポリウレア樹脂/ポリウレタン樹脂)は、イソシアネート成分とアミン成分またはアルコール成分などと反応して形成されるものである。また、シェル層の形成に用いられるエポキシ樹脂は、アミン成分などの硬化剤などと反応して形成されるものである。
また、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4−ビフェニル−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート等のジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート等のトリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等のテトライソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、2,4−トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物等のイソシアネートプレポリマー等が挙げられる。これらのイソシアネート成分は単独で用いてもよく、混合して用いても良い。
一方、上記油性相を乳化させるために使用する水性相には、予め保護コロイドを含有させてもよい。保護コロイドとしては、水溶性高分子が使用でき、公知のアニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子の中から適宜選択することができるが、ポリビニルアルコール、ゼラチンおよびセルロース系高分子化合物を含ませるのが特に好ましい。
また、水性相には、界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤の中から、上記保護コロイドと作用して沈殿や凝集を起こさないものを適宜選択して使用することができる。好ましい界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)等を挙げることができる。
上記のようにして作製された油性相を水性相に加え、機械力を用いて乳化した後、必要に応じて系の温度を上昇させることにより油性液滴界面で界面重合を起こし、粒子化することができる。また、同時あるいは界面重合反応終了後、脱溶媒を行うことができる。カプセル粒子は、界面重合反応および脱溶媒を行った後、粒子を水性相から分離、洗浄した後、乾燥することなどにより得られる。
用いることができるエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂で、分子量、分子構造等に制限されることなく一般的に用いられているものを用いることができ、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂のようなビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等の芳香族系エポキシ樹脂、ナフタレン型多官能型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、同グリシジルエステル型エポキシ樹脂、および、シクロヘキサンポリエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂のようなシクロヘキサン誘導体等のエポキシ化によって得られる脂環族系エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の脂環族系エポキシ樹脂が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
本発明において、少なくとも顔料、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体の含有量は、分散性、比重、粒子径を任意にコントロールとする点、発色性などから変動するものであるが、マイクロカプセル顔料全量に対して、顔料の含有量は5〜50質量%、上記物性の水難溶性の媒体の含有量は、1〜50質量%とすることが好ましい。なお、上記各含有量の範囲となるようにするためには、マイクロカプセル化の際に用いる各原料(シェル層構成原料成分、顔料、媒体など)を好適な範囲で調整して重合することなどにより行うことができる。
また、本発明において、上記顔料、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体を少なくとも内包したマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル顔料の用途(感熱記録材料用、筆記具用インク、スタンプ用インク、インクジェット用インク、印刷用インク用等)などにより、用途ごとに、所定の体積平均粒径、例えば、平均粒子径0.1〜100μmになるように調整することができ、好ましくは、0.5〜20μmの範囲が上記各用途の実用性を満たすものとなる。
更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
また、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体としては、上記式(I)で表される脂肪族カルボン酸エステルを用いると、マイクロカプセル顔料の粒度分布(Mv/Mn)が狭くなる傾向となり発色性が向上する。さらに顔料がマイクロカプセル粒子の外側に配向し、顔料粒子の表面付近にも顔料が存在することとなるので、より濃色な粒子とすることも可能となる。この粒度分布(Mv/Mn)は、好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜8となるものが望ましい。Mv/Mnが10を超えると、粒子同士の空隙部分が少なくなることで光の乱反射が減り、明度や隠蔽性などの発色性が低下することとなる。
また、水難溶性の媒体の選択や重合条件の調整、シェルを構成する成分の選択により粒子形状を真球形状とすることも、表面に凹凸を形成させることも可能である。例えば、酸化チタンを内包し、表面に凹凸が形成された粒子は、凹凸による光の乱反射効果により白色度が高くなる。逆に白以外の顔料を内包する粒子の場合は、真球形状にすることで発色性を高くすることができる。
本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも上記顔料と、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体を内包したマイクロカプセル顔料を含有することを特徴とするものであり、例えば、水性のボールペンなどの筆記具用インク組成物として使用に供される。
本発明において、上記特性のマイクロカプセル顔料の含有量は、筆記具用水性インク組成物中(全量)に対して、好ましくは、5〜50%、更に好ましくは、5〜30%とすることが望ましい。
このマイクロカプセル顔料の含有量が5%未満では、上記特性のマイクロカプセル顔料特有の効果を発現せず、一方、50%を超えると、粘度が高くなるため、インクの流動性が低下することがあるので好ましくない。
用いることができる着色剤としては、水溶性染料、本発明の効果を損なわない範囲で顔料、例えば、無機顔料、有機顔料、プラスチックピグメント、粒子内部に空隙のある中空樹脂粒子は白色顔料として、または、発色性、分散性に優れる塩基性染料で染色した樹脂粒子(擬似顔料)等も適宜量使用できる。
水溶性染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料のいずれも本発明の効果を損なわない範囲で適宜量用いることができる。
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、発酵セルロース、結晶セルロース、多糖類などが挙げられる。用いることができる多糖類としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、アミロース、アガロース、アガロペクチン、アラビナン、カードラン、カロース、カルボキシメチルデンプン、キチン、キトサン、クインスシード、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンドシードガム、デキストラン、ニゲラン、ヒアルロン酸、プスツラン、フノラン、HMペクチン、ポルフィラン、ラミナラン、リケナン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、アルカシーガム、サクシノグリカン、ローカストビーンガム、タラガムなどが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの市販品があればそれを使用することができる
水性ボールペン用では、該筆記具用水性インク組成物を、直径が0.18〜2.0mmのボールを備えた水性ボールペン体に充填することにより作製することができる。
用いる水性ボールペン体として、直径が上記範囲のボールを備えたものであれば、特に限定されず、特に、上記水性インク組成物をポリプロピレンチューブのインク収容管に充填し、先端のステンレスチップ(ボールは超鋼合金)を有するリフィールの水性ボールペンに仕上げたものが望ましい。
すなわち、本発明の筆記具用水性インク組成物は、上述した特性のマイクロカプセル顔料などを含む各成分をミキサー等、更に、例えば、強力な剪断を加えることができるビーズミル、ホモミキサー、ホモジナイザー等を用いて撹拌条件を好適な条件に設定等して混合攪拌することによって、筆記具用水性インク組成物(例えば、水性ボールペン用インク)を製造することができる。
また、本発明の筆記具用水性インク組成物のpH(25℃)は、使用性、安全性、インク自身の安定性、インク収容体とのマッチング性の点からpH調整剤などにより5〜10に調整されることが好ましく、更に好ましくは、6〜9.5とすることが望ましい。
本発明におけるボールペンとしては、上記組成の筆記具用水性インク組成物をボールペン用インク収容体(リフィール)に収容すると共に、該インク収容体内に収容された水性インク組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性インク組成物に対して比重が小さい物質、例えば、ポリブテン、シリコーンオイル、鉱油等がインク追従体として収容されるものが挙げられる。
なお、ボールペン、マーキングペンの構造は、特に限定されず、例えば、軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に上記構成の筆記具用水性インク組成物を充填したコレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式のボールペン、マーキングペンであってもよいものである。
用いるマイクロカプセル顔料において、シェルを構成する成分が、中心に向かうにしたがって、その密度が低くなる構成とすれば、濃色のマイクロカプセル顔料を得ることができ、また、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体として脂肪酸カルボン酸エステルを用いたマイクロカプセル顔料であれば、粒度分布(Mv/Mn)が狭くなる傾向となって発色性が向上する。さらに顔料がマイクロカプセル粒子の外側に配向し、顔料粒子の表面付近にも顔料が存在することとなるので、より濃色な粒子となるマイクロカプセル顔料を含有する筆記具用水性インク組成物とすることも可能となり、更に、粒子形状を真球形状や、表面に凹凸を形成させることにより、発色性を更に高くしたり、白色度を更に高くすることができるマイクロカプセル顔料を含有する筆記具用水性インク組成物が得られることとなる。
油相溶液として、ミリスチン酸ミリスチル(比重:0.84)9.6部を60℃に加温しながら、酸化チタン2.4部を加えて十分に分散させた。次いで、メチレンジフェニル
−4,4´−ジイソシアネート(3モル)のトリメチロールプロパン(1モル)付加物(D−109、三井化学社製)9部を加え、更にエチレングリコールモノベンジルエーテル2部を加えた。
水相溶液としては、蒸留水600部に対して、ポリビニルアルコール(PVA−205、クラレ社製)15部を溶解し、これに前記油相溶液を投入し、ホモジナイザーで乳化混合して重合を完了した。
得られた分散体を遠心処理することでマイクロカプセルを回収し、マイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、3.8であり、体積平均粒径(Mv)は0.8μmであった。
油相溶液として、ステアリン酸ステアリル(比重:0.83)9.6部を80℃に加温しながら、カーボンブラック1.8部を加えて十分に分散させた。次いで、イソシアネートプレポリマー(タケネートD−110N、三井化学社製)9部を加え、更にエチレングリコールモノベンジルエーテル2部を加えた。
水相溶液としては、蒸留水600部に対して、ポリビニルアルコール(PVA−205、クラレ社製)15部を溶解し、これに前記油相溶液を投入し、更に、ヘキサメチレンジアミン6部を添加後、ホモジナイザーで乳化混合して重合を完了した。
得られた分散体を遠心処理することでマイクロカプセルを回収し、マイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、2.9であり、体積平均粒径(Mv)は1.2μmであった。
上記製造例1において、ミリスチン酸ミリスチルをラウリン酸メチル(比重:0.87)に代えた以外は、上記実施例1の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、4.6であり、体積平均粒径(Mv)は1.5μmであった。
上記製造例2において、ステアリン酸ステアリルをパルミチン酸2−エチルヘキシル(比重:0.86)に代えた以外は、上記実施例2の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、3.8であり、体積平均粒径(Mv)は1.7μmであった。
上記製造例1において、ミリスチン酸ミリスチルをミリスチン酸オクチルドデシル(比重:0.86)に代えた以外は、上記実施例1の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、2.7であり、体積平均粒径(Mv)は1.1μmであった。
上記製造例2において、ステアリン酸ステアリルをステアリン酸ブチル(比重:0.86)に代えた以外は、上記実施例2の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、3.2であり、体積平均粒径(Mv)は0.9μmであった。
上記製造例1において、ミリスチン酸ミリスチルをジイソブチルケトン(比重:0.81)に代えた以外は、上記実施例1の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、7.5であり、体積平均粒径(Mv)は1.3μmであった。
上記製造例2において、ステアリン酸ステアリルをジイソブチルケトン(比重:0.81)に代えた以外は、上記実施例2の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、6.9であり、体積平均粒径(Mv)は0.8μmであった。
上記製造例1において、ミリスチン酸ミリスチルを安息香酸ブチル(比重:1.005)に代えた以外は、上記実施例1の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、12.4であり、体積平均粒径(Mv)は1.3μmであった。
上記製造例2において、ステアリン酸ステアリルを酢酸ベンジル(比重:1.06)に代えた以外は、上記実施例2の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、8.3であり、体積平均粒径(Mv)は0.9μmであった。
これらの結果を後述する実施例1〜10及び比較例1,2の筆記具用水性インク組成物の結果と共に、下記表1に示す。
得られたマイクロカプセル顔料を切断し、その切断面について走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。シェルとコアの境界面について明確に存在しているか、シェルの密度が中心に向かって漸減しているか確認した。
得られたマイクロカプセル顔料の表面形状を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
製造例3、5、7、9及び比較例1のマイクロカプセル顔料については、製造例1と比較して明度が同等であれば、○、低い場合は△として評価した。同様に実施例2、4、8、10及び比較例2のマイクロカプセル顔料については、製造例1と比較して明度が同等であれば、○、高い場合は△として評価した。
製造例1〜10の各マイクロカプセル顔料を用いて、下記表1に示す配合組成により、常法により、各筆記具用水性インク組成物を調製した。各筆記具用水性インク組成物の室温(25℃)下のpHをpH測定計(HORIBA社製)で測定したところ、7.9〜8.2の範囲内であった。
これらの結果を下記表1に示す。
上記で得られた各インク組成物を用いて水性ボールペンを作製した。具体的には、ボールペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:シグノUM−100〕の軸を使用し、内径4.0mm、長さ113mmポリプロピレン製インク収容管とステンレス製チップ(超硬合金ボール、ボール径0.7mm)及び該収容管と該チップを連結する継手からなるリフィールに上記各水性インクを充填し、インク後端に鉱油を主成分とするインク追従体を装填し、水性ボールペンを作製した。
得られた実施例1〜10及び比較例1〜2の各筆記具用水性インク組成物を上記構成の水性ボールペンに充填して、ペン先を上向き及び下向きにして、50℃にて3ヵ月保管した。各ペン体について市販のPPC用紙に筆記して、下記評価基準に基づいて経時安定性を評価した。
評価基準:
○:上向き、下向きの描線濃度に差が見られない。
△:下向き保管サンプルに較べ上向き保管サンプルの描線濃度が僅かに薄い。
×:下向き保管サンプルに較べ上向き保管サンプルの描線濃度に明確な差が確認された。
また、実施例1〜8のマイクロカプセル顔料は20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体として脂肪酸カルボン酸エステルを用いて得たマイクロカプセル顔料であり、実施例9及び10の脂肪酸カルボン酸エステル以外の水難溶性の媒体(ジイソブチルケトン、比重0.81)を用いたマイクロカプセル顔料ものよりも、粒度分布(Mv/Mn)が狭くなり、発色性が良好でより濃色な筆記描線となることが判った。
Claims (3)
- 少なくとも顔料と、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体(但し、下記A群のものを除く)を内包したマイクロカプセル顔料を含有する筆記具用水性インク組成物であって、前記水難溶性の媒体は比重が0.8から1未満で、水100mlに対する溶解度が0.05mg以下の下記式(I)で表される脂肪族カルボン酸エステルのみから構成されることを特徴とする筆記具用水性インク組成物。
R 1 COOR 2 ………(I)
〔上記式(I)中、R 1 は炭素数4〜21の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、二重結合を2つ以上有するアルキル基であり、R 2 は炭素数1〜21の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、二重結合を2つ以上有するアルキル基である。〕
A群:イソステアリン酸イソセチル、2―エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ステアリル - マイクロカプセルを構成するシェル成分がウレタン、ウレア、もしくはウレアウレタンであることを特徴とする請求項1記載の筆記具用水性インク組成物。
- マイクロカプセルを構成するシェル成分の密度が、中心に向かうにしたがって低くなることを特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具用水性インク組成物。
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