JP6599732B2 - 断熱パネル、及び断熱パネルの製造方法 - Google Patents

断熱パネル、及び断熱パネルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、建物等の玄関において開閉自在に設置される断熱ドア等の断熱パネル、及び断熱パネルの製造方法に関する。
従来、建物等の玄関において開閉自在に設置される断熱ドア等の断熱パネルが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の断熱ドアは、互いに対向して配置される金属材料からなる第1,第2表面材と、第1,第2表面材間の空洞に注入される発泡ウレタン等の断熱材とを備える。
特開2010−255370号公報
しかしながら、従来の断熱ドアでは、以下に示すように、表面材が波打ったように部分的に断熱材側に窪む現象(以下、波打ち現象と記載)が生じる場合がある。
図13A及び図13Bは、従来の断熱ドア100の課題を示す図である。具体的に、図13Aは、断熱ドア100の断面図であって、室外側の第1表面材110と断熱材120とを示している。
断熱ドア100は、図13Aに示すように、室外側の第1表面材110に対して、太陽光が部分的に照射される場合がある。
このような場合には、当該太陽光が照射された部位110a(以下、加温部位と記載)の温度が上昇し、加温部位110aと当該加温部位110a以外の部位110b(以下、非加温部位と記載)との間に温度差が生じる。そして、加温部位110aは、太陽光の照射による温度上昇に伴って熱膨張し、断熱ドア100の面内方向に沿って外側に伸びようとする。一方、非加温部位110bは、太陽光が照射されておらず、温度上昇がほとんどないため熱膨張しない。すなわち、非加温部位110bにて囲まれた加温部位110aは、非加温部位110bにより、断熱ドア100の面内方向に沿って外側に伸びることを規制される。そして、加温部位110aには、断熱ドア100の面外方向に変形しようとするたわみ力が生じることとなる。
また、断熱材120において、加温部位110aに接している部位は、温度上昇した加温部位110aからの熱が伝達されることにより、弾性率が低下し軟化する。
そして、断熱材120の軟化に伴い、断熱材120の弾性率が加温部位110aに生じるたわみ力に対抗することができなくなると、図13Bに示すように、断熱材120が塑性変形し、加温部位110aに波打ち現象が生じる。
本発明は、上記実情に鑑みて、表面材に波打ち現象が生じることを回避することができる断熱パネル、及び断熱パネルの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る断熱パネルは、表面材と、前記表面材に接着される断熱材とを備え、前記断熱材は、前記表面材における室外側の面太陽光の照射によって局所的に加熱され、当該加熱された加温部位と当該加温部位以外の非加温部位との間に生じる温度差に応じて当該加温部位に生じるたわみ力に対抗する弾性率を有するように構成されていることを特徴とする。
本発明では、断熱材が上述した弾性率を有するように構成されているため、表面材が局所的に加熱され、加温部位及び非加温部位の温度差に応じて当該加温部位にたわみ力が生じた場合であっても、断熱材は当該たわみ力に対抗する。すなわち、当該たわみ力の作用により断熱材が塑性変形することを回避することができる。したがって、表面材に波打ち現象が生じることを回避することができる。
また、本発明は、上述した断熱パネルにおいて、当該断熱パネルは、断熱ドアであることを特徴とする。
本発明によれば、上述した断熱パネルの構成を断熱ドアに適用することにより、当該断熱ドアに波打ち現象が生じることを回避し、当該断熱ドアの外観を良好に維持することができる。
また、本発明に係る断熱パネルの製造方法は、表面材と前記表面材に接着される断熱材とを備えた断熱パネルの製造方法であって、前記断熱材の弾性率と、前記表面材における室外側の面が太陽光の照射によって局所的に加熱され、当該加熱された加温部位と当該加温部位以外の非加温部位との間に生じる温度差をパラメータとして当該温度差に応じて前記加温部位に生じるたわみ力の作用による当該加温部位の部分的な変位量シミュレーションにより解し、当該シミュレーションの解析結果に基づいて、任意の前記温度差から当該温度差に応じて前記加温部位に生じるたわみ力に対抗する最低限の弾性率を求める関係式算出、前記断熱材の弾性率を、当該断熱パネルの使用環境に応じて推定される前記温度差に基づいて前記関係式から求められた前記最低限の弾性率以上の弾性率に決定することを特徴とする。
本発明によれば、断熱材が上述した弾性率を有するように構成されているため、表面材に波打ち現象が生じることを回避するために、必要以上に弾性率が高い断熱材(オーバースペックの断熱材)を用いることがない。したがって、断熱パネルの使用環境に応じて最適な断熱材を用いることができる。
本発明では、表面材が局所的に加熱され、加温部位及び非加温部位の温度差に応じて当該加温部位にたわみ力が生じた場合であっても、断熱材は当該たわみ力に対抗する。すなわち、当該たわみ力の作用により断熱材が塑性変形することを回避することができる。したがって、表面材に波打ち現象が生じることを回避することができる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る断熱ドアを室外側から見た正面図である。 図2は、図1に示した断熱ドアの要部拡大断面図である。 図3は、図1及び図2に示した第1表面材(鋼板)の波打ち現象を解析するシミュレーションに用いた解析モデルを示す図である。 図4は、図3に示した解析モデルを用いたシミュレーションの解析結果を示す図であって、加温部位及び非加温部位の温度差と、断熱材の弾性率と、第1表面材の部分的な変位量(厚さ方向の変位量)との関係を示す図である。 図5は、図3に示した解析モデルを用いたシミュレーションの解析結果において、加温部位及び非加温部位の温度差を80℃(加温部位の到達温度:90℃)とし、当該温度差での断熱材の弾性率を種々の値に設定した場合での第1表面材の変位分布を示した図である。 図6は、図3に示した解析モデルを用いたシミュレーションの解析結果に基づいて求められた加温部位及び非加温部位の温度差と当該温度差に応じて加温部位に生じるたわみ力に対抗する断熱材の最低限の弾性率との関係を示す図である。 図7は、図1及び図2に示した第1表面材または第2表面材の自重による断熱材の変形を回避するために必要な断熱材における弾性率の下限値を決定する際に用いた第1表面材、第2表面材、及び断熱材の寸法例を示す図である。 図8は、図2に示した断熱材の発泡倍率と熱伝導率との関係を示す図である。 図9は、図2に示した断熱材の発泡倍率と弾性率との関係を示す図である。 図10は、本発明の実施の形態2に係る第1表面材(SUS304)を用いた場合でのシミュレーションの解析結果を示す図であって、加温部位及び非加温部位の温度差と、断熱材の弾性率と、第1表面材の部分的な変位量(厚さ方向の変位量)との関係を示す図である。 図11は、図10に示したシミュレーションの解析結果において、加温部位及び非加温部位の温度差を80℃(加温部位の到達温度:90℃)とし、当該温度差での断熱材の弾性率を種々の値に設定した場合での第1表面材の変位分布を示した図である。 図12は、本発明の実施の形態2に係る第1表面材(SUS304)を用いた場合でのシミュレーションの解析結果に基づいて求められた加温部位及び非加温部位の温度差と当該温度差に応じて加温部位に生じるたわみ力に対抗する断熱材の最低限の弾性率との関係を示す図である。 図13Aは、従来の断熱ドアにおける課題を示す図である。 図13Bは、従来の断熱ドアにおける課題を示す図である。
以下、本発明に係る断熱パネルとして断熱ドアを例示し、添付図面を参照しながら当該断熱ドアの好適な実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態1)
〔断熱ドアの概略構成〕
図1は、本発明の実施の形態1に係る断熱ドア1を室外側から見た正面図である。図2は、図1に示した断熱ドア1の要部拡大断面図である。
ここで例示する断熱ドア1は、具体的な図示は省略したが、建物における玄関の開口に取り付けられたドア枠体に対してヒンジ機構を介して開閉自在に設置されたものである。この断熱ドア1は、図1及び図2に示すように、骨組体(図示略)と、第1表面材2と、第2表面材3(図2)と、断熱材4(図2)とを備える。
骨組体は、アルミニウムやスチール等の金属材料の成形材であり、断熱ドア1の上下両縁部をそれぞれ構成する一対の骨材と、断熱ドア1の左右両縁部をそれぞれ構成する一対の骨材とを四周枠組みすることで矩形枠状に構成されている。
第1表面材2は、断熱ドア1の室外面を構成する面材であり、骨組体の一方の面に設けられている。なお、第1表面材は、本発明に係る表面材に相当する。
第2表面材3は、断熱ドア1の室内面を構成する面材であり、第1表面材2に対向するように骨組体の他方の面に設けられている。
本実施の形態1では、第1,第2表面材2,3は、鋼板でそれぞれ構成されている。
断熱材4は、発泡ウレタン、EPS(ビーズ法ポリスチレンフォーム)、あるいは、発泡AS樹脂等で構成され、骨組体及び第1,第2表面材2,3により形成される空間に設けられる。そして、断熱材4は、第1,第2表面材2,3にそれぞれ接着される。
なお、断熱材4の弾性率については、後述する。
また、断熱ドア1には、図1に示すように、利用者により把持されて断熱ドア1を開閉するための把手部5と、把手部5の上下にそれぞれ設けられ、断熱ドア1の開操作を規制または許容するロック部6とが設けられている。
〔断熱材の弾性率〕
本実施の形態1では、第1表面材2(鋼板)に生じる波打ち現象を回避するために、シミュレーションにより波打ち現象を解析し、当該解析結果に基づいて、断熱材4の弾性率を決定している。
図3は、図1及び図2に示した第1表面材2(鋼板)の波打ち現象を解析するシミュレーションに用いた解析モデルを示す図である。
シミュレーションでは、図3に示すように、第1,第2表面材2,3の幅寸法(横寸法)、長さ寸法(縦寸法)、及び厚み寸法をそれぞれ200[mm]、400[mm]、0.4[mm]とし、断熱材4の幅寸法(横寸法)、長さ寸法(縦寸法)、及び厚み寸法をそれぞれ200[mm]、400[mm]、41.2[mm]とし、第1表面材2の加温部位2a(温度を変化させる部位(図3に一点鎖線で示した領域))の幅寸法(横寸法)及び長さ寸法(縦寸法)をそれぞれ100[mm]、300[mm]とした解析モデルを用いた。そして、第1表面材2における加温部位2a及び非加温部位2b(加温部位2a以外の部位)の温度差、及び断熱材4の弾性率をパラメータとして、当該温度差に応じて加温部位2aに生じるたわみ力の作用による加温部位2aの部分的な変位量(厚さ方向の変位量)をシミュレーションにより解析した。なお、非加温部位2bの温度は、10℃で一定とした。また、第1表面材2については、一般的な鋼板の物性値を用いた。
図4は、図3に示した解析モデルを用いたシミュレーションの解析結果を示す図であって、加温部位2a及び非加温部位2bの温度差と、断熱材4の弾性率と、第1表面材2の部分的な変位量(厚さ方向の変位量)との関係を示す図である。具体的に、図4において、横軸は加温部位2a及び非加温部位2bの温度差を示し、縦軸は第1表面材2の部分的な変位量(厚さ方向の変位量)を示している。そして、図4では、第1表面材2において、部分的に凸部が現れた位置と部分的に凹部が現れた位置との2つの位置を一組とし、当該一組毎に、断熱材4の弾性率を種々の値に設定した場合での温度差と変位量との関係を図示している。
なお、図4では、説明の便宜上、シミュレーションの解析結果の一部のみを示している。すなわち、図4では、断熱材4の弾性率E[MPa]を「1.0」、「1.3」、「1.5」、「2.0」、「2.5」、及び「2.7」とした場合のみを図示している。
図4に示したシミュレーションの解析結果は、以下のことを意味している。
断熱材4の弾性率E[MPa]が「1.0」の場合、加温部位2aには、温度差が40℃付近(加温部位2aの到達温度:50℃付近)までは、熱膨張による全体的な厚さ方向の変位(0.3[mm]程度)はあるが、波打ち現象は生じない。すなわち、温度差が40℃付近までは、当該温度差に応じて加温部位2aに生じるたわみ力に断熱材4が対抗する。そして、加温部位2aには、温度差が40℃付近を超えると、厚さ方向の変位(絶対値)が特異的に大きくなり、部分的に凸部または凹部が現れる(波打ち現象が生じる)。すなわち、温度差が40℃付近を超えると、当該温度差に応じて加温部位2aに生じるたわみ力に断熱材4が対抗することができなくなり、断熱材4が塑性変形することにより、波打ち現象が生じる。
断熱材4の弾性率E[MPa]が「1.3」、「1.5」、「2.0」、「2.5」、及び「2.7」の場合、加温部位2aには、温度差が50℃付近(加温部位2aの到達温度:60℃付近)、60℃付近(加温部位2aの到達温度:70℃付近)、70℃付近(加温部位2aの到達温度:80℃付近)、75℃付近(加温部位2aの到達温度:85℃付近)、及び80℃付近(加温部位2aの到達温度:90℃付近)をそれぞれ超えると、厚さ方向の変位(絶対値)が特異的に大きくなり、部分的に凸部または凹部が現れる(波打ち現象が生じる)。
図5は、図3に示した解析モデルを用いたシミュレーションの解析結果において、加温部位2a及び非加温部位2bの温度差を80℃(加温部位2aの到達温度:90℃)とし、当該温度差での断熱材4の弾性率を種々の値に設定した場合での第1表面材2の変位分布を示した図である。具体的に、図5では、「黒」に近付くにしたがって凸状の変位を示し、「白」に近付くにしたがって凹状の変位を示している。
なお、図5では、説明の便宜上、シミュレーションの解析結果の一部のみを示している。すなわち、図5(a)〜図5(f)では、断熱材4の弾性率E[MPa]を「1.0」、「1.3」、「2.0」、「2.7」、「2.8」、及び「3.0」とした場合のみをそれぞれ図示している。
ところで、温度差が80℃(加温部位2aの到達温度:90℃)となる断熱ドア1の使用環境は、断熱ドア1にとって非常に過酷な使用環境である。そして、シミュレーションの解析結果では、温度差が80℃の場合、当該温度差での断熱材4の弾性率E[MPa]を「1.0」、「1.3」、「2.0」、及び「2.7」にすると、図5に示すように、加温部位2aに部分的な凸部a1〜a3、及び部分的な凹部b1〜b4が現れる(波打ち現象が生じる)結果となった(図5(a)〜図5(d))。一方、断熱材4の弾性率E[MPa]を「2.8」及び「3.0」にすると、加温部位2aに部分的な凸部または凹部が現れない(波打ち現象が生じない)結果となった(図5(e),図5(f))。
図6は、図3に示した解析モデルを用いたシミュレーションの解析結果に基づいて求められた加温部位2a及び非加温部位2bの温度差と当該温度差に応じて加温部位2aに生じるたわみ力に対抗する断熱材4の最低限の弾性率との関係を示す図である。具体的に、図6では、横軸は加温部位2a及び非加温部位2bの温度差を示し、縦軸は断熱材4の弾性率を示し、シミュレーションの解析結果である温度差及び最低限の弾性率を菱形のポイントでプロットしている。
以上のシミュレーションの解析結果に基づいて、図6に示すように、任意の温度差から当該温度差に応じて加温部位2aに生じるたわみ力に対抗する断熱材4の最低限の弾性率を求める関係式(近似曲線)を算出した。
当該関係式(近似曲線)は、断熱材4の最低限の弾性率をYとし、加温部位2a及び非加温部位2bの温度差をXとした場合に、以下の式(1)となった。なお、式(1)の関係式(近似曲線)における決定係数Rは、0.9961である。
そして、本実施の形態1では、断熱材4は、断熱ドア1の使用環境に応じて推定される温度差に基づいて式(1)から求められた最低限の弾性率以上の弾性率を有するように構成されている。すなわち、断熱材4は、加温部位2aと非加温部位2bとの間に温度差が生じた場合に、当該温度差に応じて加温部位2aに生じるたわみ力に対抗する弾性率を有するように構成されている。
なお、断熱材4の弾性率は、例えば、断熱材4を構成する材料の配合比を変更したり、発泡倍率を変化(発泡倍率を下げれば弾性率が上昇)させたりすることにより、適宜の値に設定することができる。
図7は、図1及び図2に示した第1表面材2または第2表面材3の自重による断熱材4の変形を回避するために必要な断熱材4における弾性率の下限値を決定する際に用いた第1表面材2、第2表面材3、及び断熱材4の寸法例を示す図である。
また、本実施の形態1では、第1表面材2または第2表面材3の自重による断熱材4の変形量を0.1[mm]以下とするために必要な弾性率を、断熱材4における弾性率の下限値として決定している。
具体的に、先ず、図7に示すように、第1,第2表面材2,3の幅寸法(横寸法)、長さ寸法(縦寸法)、及び厚み寸法をそれぞれ857[mm]、2312[mm]、0.4[mm]とし、断熱材4の幅寸法(横寸法)、長さ寸法(縦寸法)、及び厚み寸法をそれぞれ857[mm]、2312[mm]、及び41.2[mm]とした。また、第1,第2表面材2,3(鋼板)の密度は、7.87×10−6[kg/mm3]である。
そして、断熱材4における弾性率の下限値は、σ/εで算出することができる。
ここで、σは、断熱材4の応力であり、第1表面材2または第2表面材3の自重による力(第1表面材2または第2表面材3の密度×第1表面材2または第2表面材3の体積×重力加速度)を断熱材4の断面積(断熱材4の幅寸法×長さ寸法)で除した値となる。すなわち、上記寸法例から、σは、30.9[Pa]である。
また、εは、断熱材4の変形量0.1[mm]の歪みであり、0.1を断熱材4の厚み寸法で除した値となる。すなわち、上記寸法例から、εは、2.42×10−3である。
したがって、本実施の形態1では、断熱材4における弾性率の下限値を0.013[MPa]としている。
図8は、図2に示した断熱材4の発泡倍率と熱伝導率との関係を示す図である。図9は、図2に示した断熱材4の発泡倍率と弾性率との関係を示す図である。
なお、図8及び図9では、説明の便宜上、断熱材4がEPS(ビーズ法ポリスチレンフォーム)の場合での関係を示している。
また、本実施の形態1では、断熱材4の目標とする熱伝導率と断熱材4の発泡倍率との関係、及び断熱材4の発泡倍率と断熱材4の弾性率との関係を用いて、断熱材4における弾性率の上限値を決定している。
具体的に、断熱材4の目標とする熱伝導率を0.063[W/(m・K)]とした場合、当該熱伝導率を得るために必要な断熱材4の発泡倍率は、図8に示すように、26である。そして、当該発泡倍率(26)での断熱材4の弾性率は、図9に示すように、7.66[MPa]である。
したがって、本実施の形態1では、断熱材4における弾性率の上限値を7.66[MPa]としている。
以上を纏めると、本実施の形態1では、断熱材4は、断熱ドア1の使用環境に応じて推定される温度差に基づいて式(1)から求められた最低限の弾性率以上の弾性率を有しながら、下限値(0.013[MPa])以上、上限値(7.66[MPa])以下の弾性率を有するように構成されている。
以上説明した本実施の形態1に係る断熱ドア1では、断熱材4が上述した弾性率を有するように構成されているため、第1表面材2が局所的に加熱され、加温部位2a及び非加温部位2bの温度差に応じて加温部位2aにたわみ力が生じた場合であっても、断熱材4は当該たわみ力に対抗する。すなわち、当該たわみ力の作用により断熱材4が塑性変形することを回避することができる。したがって、第1表面材2に波打ち現象が生じることを回避することができる。
また、本実施の形態1に係る断熱ドア1では、断熱ドア1の使用環境に応じて推定される温度差に基づいて式(1)から求められた最低限の弾性率以上の弾性率を有するように構成されている。このため、第1表面材2に波打ち現象が生じることを回避するために、必要以上に弾性率が高い断熱材(オーバースペックの断熱材)を用いることがない。したがって、断熱ドア4の使用環境に応じて最適な断熱材4を用いることができる。
また、本実施の形態1に係る断熱ドア1では、断熱材4は、下限値(0.013[MPa])以上、上限値(7.66[MPa])以下の弾性率を有するように構成されている。このため、第1表面材2に波打ち現象が生じることを回避しながらも、断熱材4の機械的な強度、及び断熱性能の双方を十分に確保することができる。
(実施の形態1の変形例)
実施の形態1では、断熱ドア1の使用環境を考慮して断熱材4の弾性率を決定していたが、これに限られない。例えば、断熱材4の弾性率として、断熱ドア1の使用環境を考慮せずに、最も過酷な使用環境でも第1表面材2に波打ち現象が生じない値(温度差が80℃の状態で弾性率が2.8[MPa](図5(e)))を有するように構成しても構わない。
このように構成すると、断熱ドア1がいずれの使用環境で用いられた場合であっても、第1表面材2に波打ち現象が生じることのない断熱ドア1を構成することができる。
また、実施の形態1では、第1,第2表面材2,3は、鋼板でそれぞれ構成されていたが、これに限られず、その他の材料で構成しても構わない。また、第1,第2表面材2,3を同一の材料で構成してもよく、あるいは、異なる材料で構成しても構わない。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
以下の説明では、実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
実施の形態1では、第1表面材2として、鋼板を採用していた。
これに対して本実施の形態2では、第1,第2表面材2,3として、それぞれステンレス鋼(SUS304)を採用している。
なお、第1表面材2をステンレス鋼(SUS304)で構成したことに伴い、シミュレーションによる第1表面材2に生じる波打ち現象の解析結果も異なるものとなる。以下、シミュレーションの解析結果について説明する。
図10は、本発明の実施の形態2に係る第1表面材2(SUS304)を用いた場合でのシミュレーションの解析結果を示す図であって、加温部位2a及び非加温部位2bの温度差と、断熱材4の弾性率と、第1表面材2の部分的な変位量(厚さ方向の変位量)との関係を示す図である。具体的に、図10は、図4に対応した図であり、横軸は加温部位2a及び非加温部位2bの温度差を示し、縦軸は第1表面材2の部分的な変位量(厚さ方向の変位量)を示している。そして、図10では、図4と同様に、第1表面材2において、部分的に凸部が現れた位置と部分的に凹部が現れた位置との2つの位置を一組とし、当該一組毎に、断熱材4の弾性率を種々の値に設定した場合での温度差と変位量との関係を図示している。
なお、図10では、説明の便宜上、シミュレーションの解析結果の一部のみを示している。すなわち、図10では、断熱材4の弾性率E[MPa]を「1.5」、「2.0」、「3.0」、「4.0」、「5.0」、及び「5.2」とした場合のみをそれぞれ図示している。
当該シミュレーションでは、第1表面材2をステンレス鋼(SUS304)とした以外は、実施の形態1で説明した解析モデル(図3)と同一の解析モデルを用いた。また、第1表面材2については、一般的なステンレス鋼(SUS304)の物性値を用いた。
図10に示したシミュレーションの解析結果は、以下のことを意味している。
断熱材4の弾性率E[MPa]が「1.5」の場合、加温部位2aには、温度差が35℃付近(加温部位2aの到達温度:45℃付近)までは、熱膨張による全体的な厚さ方向の変位(0.3〜0.4[mm]程度)はあるが、波打ち現象は生じない。すなわち、温度差が35℃付近までは、当該温度差に応じて加温部位2aに生じるたわみ力に断熱材4が対抗する。そして、加温部位2aには、温度差が35℃付近を超えると、厚さ方向の変位(絶対値)が特異的に大きくなり、部分的に凸部または凹部が現れる(波打ち現象が生じる)。すなわち、温度差が35℃付近を超えると、当該温度差に応じて加温部位2aに生じるたわみ力に断熱材4が対抗することができなくなり、断熱材4が塑性変形することにより、波打ち現象が生じる。
断熱材4の弾性率E[MPa]が「2.0」、「3.0」、「4.0」、「5.0」、及び「5.2」の場合、加温部位2aには、温度差が38℃付近(加温部位2aの到達温度:48度付近)、55℃付近(加温部位2aの到達温度:65℃付近)、62℃付近(加温部位2aの到達温度:72℃付近)、75℃付近(加温部位2aの到達温度:85℃付近)、及び80℃付近(加温部位2aの到達温度:90℃付近)をそれぞれ超えると、厚さ方向の変位(絶対値)が特異的に大きくなり、部分的に凸部または凹部が現れる(波打ち現象が生じる)。
図11は、図10に示したシミュレーションの解析結果において、加温部位2a及び非加温部位2bの温度差を80℃(加温部位2aの到達温度:90℃)とし、当該温度差での断熱材4の弾性率を種々の値に設定した場合での第1表面材2の変位分布を示した図である。具体的に、図11は、図5に対応した図であり、「黒」に近付くにしたがって凸状の変位を示し、「白」に近付くに従って凹状の変位を示している。
シミュレーションの解析結果では、断熱ドア1によって非常に過酷な使用環境で推定される温度差が80℃(加温部位2aの到達温度:90℃)の場合、当該温度差での断熱材4の弾性率E[MPa]を「1.5」、「2.0」、「3.0」、「4.0」、及び「5.0」にすると、図11に示すように、加温部位2aに部分的な凸部c1〜c5、及び部分的な凹部d1〜d5が現れる(波打ち現象が生じる)結果となった(図11(a)〜図11(e))。一方、断熱材4の弾性率E[MPa]を「5.2」にすると、加温部位2aに部分的な凸部または凹部が現れない(波打ち現象が生じない)結果となった(図11(f))。
図12は、本発明の実施の形態2に係る第1表面材2(SUS304)を用いた場合でのシミュレーションの解析結果に基づいて求められた加温部位2a及び非加温部位2bの温度差と当該温度差に応じて加温部位2aに生じるたわみ力に対抗する断熱材4の最低限の弾性率との関係を示す図である。具体的に、図12では、横軸は加温部位2a及び非加温部位2bの温度差を示し、縦軸は断熱材4の弾性率を示し、シミュレーションの解析結果である温度差及び最低限の弾性率を菱形のポイントでプロットしている。
以上のシミュレーションの解析結果に基づいて、図12に示すように、任意の温度差から当該温度差に応じて加温部位2aに生じるたわみ力に対抗する断熱材4の最低限の弾性率を求める関係式(近似曲線)を算出した。
当該関係式(近似曲線)は、断熱材4の最低限の弾性率をYとし、加温部位2a及び非加温部位2bの温度差をXとした場合に、以下の式(2)となった。なお、式(2)の関係式(近似曲線)における決定係数Rは、0.9967である。
そして、本実施の形態2では、断熱材4の弾性率は、断熱ドア1の使用環境に応じて推定される温度差に基づいて式(2)から求められた最低限の弾性率以上の弾性率を有するように構成されている。すなわち、断熱材4は、加温部位2aと非加温部位2bとの間に温度差が生じた場合に、当該温度差に応じて加温部位2aに生じるたわみ力に対抗する弾性率を有するように構成されている。
また、本実施の形態2では、実施の形態1と同様に、第1表面材2または第2表面材3の自重による断熱材4の変形量を0.1[mm]以下とするために必要な弾性率を、断熱材4における弾性率の下限値として決定している。
なお、第1,第2表面材2,3、及び断熱材4の幅寸法(横寸法)、長さ寸法(縦寸法)、及び厚み寸法は、実施の形態1で説明した寸法(図7)と同一の寸法とした。また、第1,第2表面材2,3をステンレス鋼(SUS304)に変更したことに伴い、第1,第2表面材2,3(SUS304)の密度は、7.93×10−6[kg/mm3]である。
そして、本実施の形態2では、実施の形態1と同様にσ/εで算出することにより、断熱材4における弾性率の下限値を実施の形態1と同様の0.013[MPa]としている。
なお、本実施の形態2において、断熱材4における弾性率の上限値は、実施の形態1で説明した上限値と同一の値としている。
以上を纏めると、本実施の形態2では、断熱材4は、断熱ドア1の使用環境に応じて推定される温度差に基づいて式(2)から求められた最低限の弾性率以上の弾性率を有しながら、下限値(0.013[MPa])以上、上限値(7.66[MPa])以下の弾性率を有するように構成されている。
上述した実施の形態2のように第1表面材2をステンレス鋼(SUS304)に変更した場合であっても、実施の形態1と同様の効果を奏する。
(実施の形態2の変形例)
実施の形態2では、断熱ドア1の使用環境を考慮して断熱材4の弾性率を決定していたが、これに限られない。例えば、断熱材4の弾性率として、断熱ドア1の使用環境を考慮せずに、最も過酷な使用環境でも第1表面材2に波打ち現象が生じない値(温度差が80℃の状態で弾性率が5.2[MPa](図11(f)))を有するように構成しても構わない。
このように構成すると、断熱ドア1がいずれの使用環境で用いられた場合であっても、第1表面材2に波打ち現象が生じることのない断熱ドア1を構成することができる。
上述した実施の形態1,2及びこれらの変形例では、本発明に係る断熱パネルとして建物における玄関の開口に設置される断熱ドア1を例示したが、これに限られず、本発明に係る断熱パネルとして、その他の箇所に設置される断熱ドア、あるいは、内装パネルや外装パネル等の壁パネル、床パネル、天井パネル、屋根パネル等を採用しても構わない。
1 断熱ドア(断熱パネル)、2 第1表面材、2a 加温部位、2b 非加温部位、4 断熱材

Claims (3)

  1. 表面材と、
    前記表面材に接着される断熱材とを備え、
    前記断熱材は、前記表面材における室外側の面太陽光の照射によって局所的に加熱され、当該加熱された加温部位と当該加温部位以外の非加温部位との間に生じる温度差に応じて当該加温部位に生じるたわみ力に対抗する弾性率を有するように構成されている
    ことを特徴とする断熱パネル。
  2. 当該断熱パネルは、断熱ドアである
    ことを特徴とする請求項1に記載の断熱パネル。
  3. 表面材と前記表面材に接着される断熱材とを備えた断熱パネルの製造方法であって、
    前記断熱材の弾性率と、前記表面材における室外側の面が太陽光の照射によって局所的に加熱され、当該加熱された加温部位と当該加温部位以外の非加温部位との間に生じる温度差をパラメータとして当該温度差に応じて前記加温部位に生じるたわみ力の作用による当該加温部位の部分的な変位量シミュレーションにより解し、
    当該シミュレーションの解析結果に基づいて、任意の前記温度差から当該温度差に応じて前記加温部位に生じるたわみ力に対抗する最低限の弾性率を求める関係式算出
    前記断熱材の弾性率を、当該断熱パネルの使用環境に応じて推定される前記温度差に基づいて前記関係式から求められた前記最低限の弾性率以上の弾性率に決定する
    ことを特徴とする断熱パネルの製造方法
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