JP6596733B2 - 化合物、該化合物を含有するタンパク質修飾試薬およびタンパク質の標識方法 - Google Patents

化合物、該化合物を含有するタンパク質修飾試薬およびタンパク質の標識方法 Download PDF

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本発明は、化合物、該化合物を含有するタンパク質修飾試薬およびタンパク質の標識方法に関する。
タンパク質(酵素、抗体等)へ目的の分子や官能基を導入するための手段として、以前から化学修飾法が用いられてきたが、特定の分子の特定の箇所を修飾することは、困難であった。
しかしながら、2001年にスクリプス研究所のK.B.Sharplessによって提唱されたクリックケミストリー(Click Chemistry)により、比較的シンプルな構造の化合物同士を高い反応性と選択性で炭素−ヘテロ原子結合反応により新たな機能分子を合成することが可能となった(非特許文献1参照)。代表的なのは、1,3−双極子付加環化反応であり、有機アジドとアルキンの付加環化反応はクリックケミストリーに最適である。現在、このクリックケミストリーを中心として、修飾機構の異なる多くのタンパク質修飾試薬が開発されている。
また、従来の水溶性のタンパク質修飾試薬としては、N−Hydroxysulfosuccinimideが市販されているのみである(特許文献1参照)。
米国特許出願公開第2006/52421号明細書
「Click Chemistry: Diverse Chemical Function from a Few Good Reactions」 Angewandte Chemie International Edition Volume 40, Issue 11, pages 2004−2021, June 1, 2001
しかし、従来のタンパク質修飾試薬は疎水性が高く、反応溶液に有機溶媒を用いる必要がある。その有機溶媒により、タンパク質の機能が損なわれる場合があった。
また、従来の水溶性のタンパク質修飾試薬であるN−Hydroxysulfosuccinimideは、特定の分子(カルボン酸を有する分子)のみ導入可能であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、新規化合物、該化合物を含有するタンパク質修飾試薬およびタンパク質の標識方法を提供する。
本発明は、以下[1]〜[3]のとおりである。
[1]一般式(1)で表される化合物又はその塩を含有する、タンパク質修飾試薬
Figure 0006596733
(前記一般式(1)中、Rは、無置換又は置換基を有する炭素数2〜3の直鎖状のアルキニル基であり、Yは、メチレン基を介して式(2)で表される基が結合している基を示す。)
Figure 0006596733
(前記式(2)中、アスタリスクは結合位置を示す。)
[2]前記一般式(1)で表される化合物が式(15)で表される化合物である、[1]に記載のタンパク質修飾試薬。
Figure 0006596733
[3]任意のタンパク質を標識する方法であって、
(a)下記一般式(1)で表される化合物又はその塩と任意のタンパク質とを混合して、前記任意のタンパク質の表面に前記一般式(1)で表される化合物中のアルキニル基を導入する工程と、
(b)前記一般式(1)で表される化合物−タンパク質複合体と、アゾメチンイリド基、ニトロン基、ニトリルイリド基、ジアゾメチル基、アジド基、又はニトリルオキシド基を有する標識試薬とを混合し、タンパク質を標識する工程と、
を有する、タンパク質の標識方法。
Figure 0006596733
前記一般式(1)中、Rは、無置換又は置換基を有する炭素数2〜3の直鎖状のアルキニル基であり、Yは、メチレン基を介して式(2)で表される基が結合している基を示す。
前記式(2)中、アスタリスクは結合位置を示す。)
本発明によれば、親水性が高く、且つ、修飾される分子に構造的制限なく、任意のタンパク質を修飾することができる。また、非常に温和な条件で、容易に任意のタンパク質の機能を損なうことなく修飾することができる。
実施例1において、本発明の化合物のH NMRスペクトルを示した図である。 実施例1において、本発明の化合物の正イオンモードでのMSスペクトルの測定結果を示した図である。 実施例1において、本発明の化合物の負イオンモードでのMSスペクトルの測定結果を示した図である。 実施例1において、本発明の化合物を用いて蛍光修飾されたBSAをCBB染色およびGelDok(登録商標)を用いて蛍光を検出した画像である。 実施例2において、本発明の化合物を用いて蛍光修飾されたGODをCBB染色およびGelDok(登録商標)を用いて蛍光を検出した画像である。 実施例3において、本発明の化合物を用いてビオチン修飾されたBSAをTMB染色および化学発光により検出した画像である。 実施例4において、本発明の化合物を用いて蛍光修飾されたAODをCBB染色およびGelDok(登録商標)を用いて蛍光を検出した画像である。
<新規化合物>
本発明者らは、新規の水溶性タンパク質修飾試薬として活用できる化合物を探索する過程で、ハロゲン化アルキルから誘導されるシステインを基盤とした下記一般式(1)で表される化合物を見出した。
Figure 0006596733
前記一般式(1)中、Rは、任意の化合物が有する特定の官能基と共有結合し得る基を末端に含む基を表す。
本明細書において、「任意の化合物が有する特定の官能基と共有結合し得る基」とは、クリックケミストリーを活用した1,3−双極子付加環化反応を行うことができる官能基を意味する。「1,3−双極子(1,3−dipole)」とは、三原子からなる4π電子化学種であり、アルケニル基やアルキニル基などの親双極子(dipolarophile)を有する化合物と付加環化反応を起こし、5員複素環化合物を形成するものを意味する。よって、Rが「1,3−双極子」を有するとき、任意の化合物の特定の官能基は「親双極子」を有し、逆にRが「親双極子」を有するとき、任意の化合物の特定の官能基は「1,3−双極子」を有することができる。
本実施形態において、Rに適用可能な「1,3−双極子」としては、アゾメチンイリド基、ニトロン基、ニトリルイリド基、ジアゾメチル基、アジド基、ニトリルオキシド基などが挙げられる。また、本実施形態において、Rに適用可能な「親双極子」としては、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
例えば、Rがニトロン基を末端に含む基であるとき、アルケニル基を有する化合物と付加環化反応を起こし、イソオキサゾール環を形成する。また、Rがアジド基を末端に含む基であるとき、アルキニル基を有する化合物と付加環化反応を起こし、トリアゾール環を形成する(この反応をヒュスゲン環化付加反応という)。また、Rがニトリルオキシド基を末端に含む基であるとき、アルケニル基を有する化合物と付加環化反応を起こし、イソオキサゾール環を形成する。上述の例において、Rが「1,3−双極子」を有し、任意の化合物が「親双極子」を有する場合について例示したが、Rが「親双極子」を有し、任意の化合物が「1,3−双極子」を有する場合であっても同様の反応を行うことができる。
この中でも、Rは、アルキニル基又はアジド基を末端に含む基が好ましく、無置換又は置換基を有する炭素数2〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基、あるいは、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアジド基がより好ましい。高い親水性を保つ観点から、炭素数2〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基もしくは、炭素数1〜2の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアジド基であることが特に好ましい。
Rの「無置換又は置換基を有する炭素数2〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基、あるいは、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアジド基」の「炭素数2〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基」としては、エチニル基、プロピニル基、n−ブチニル基、s−ブチニル基、n−ペンチニル基、n−ヘキシニル基、n−へプチニル基、n−オクチニル基等が挙げられる。
前記炭素数2〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基の置換基としては、特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子などが挙げられる。
また、「炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアジド基」としては、メチルアジド基、エチルアジド基、n−プロピルアジド基、i−プロピルアジド基、n−ブチルアジド基、s−ブチルアジド基、i−ブチルアジド基、t−ブチルアジド基、n−ペンチルアジド基、n−ヘキシルアジド基、n−へプチルアジド基、n−オクチルアジド基等が挙げられる。
炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアジド基の置換基としては、特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子などが挙げられる。
前記一般式(1)中、Yは下記式(2)で表される基を含む。
Figure 0006596733
前記式(2)中、★は結合位置を示す。
一般式(1)で表される化合物はシステインから誘導されたものであるため、式(2)で表される基中には、アミノ基およびカルボキシル基が含まれており、一般式(1)で表される化合物の親水性に寄与している。
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、一般式(1−1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006596733
一般式(1−1)中、Rは上記と同じ意味を表す。この中でも、Rは、アルキニル基又はアジド基を末端に含む基が好ましく、無置換又は置換基を有する炭素数2〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基、あるいは、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアジド基を表す。高い親水性を保つ観点から、炭素数2〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基もしくは、炭素数1〜2の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアジド基であることが好ましい。
Tは、単結合、或いは、無置換又は置換基を有する炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。システインから容易に誘導できることから、炭素数1の直鎖状のアルキレン基であることが好ましい。
「炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基」としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
前記炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の置換基としては、特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子などが挙げられる。
一般式(1−1)で表される化合物の具体例としては、式(1−1−1)又は(1−1−2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006596733
一般式(1−1−1)中、Qは、単結合、或いは、無置換又は置換基を有する炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。高い親水性を保つ観点から、単結合、或いは、炭素数1〜2の直鎖状のアルキル基であることが好ましい。また、一般式(1−1−2)中、Lは、単結合、或いは、無置換又は置換基を有する炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。高い親水性を保つ観点から、単結合、或いは、炭素数1〜2の直鎖状のアルキル基であることが好ましい。
「炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
前記炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の置換基としては、特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子などが挙げられる。
また、一般式(1)で表される化合物は、それに代えて、一般式(1)で表される化合物の塩を含むことができる。当該塩としては、生理学的に許容される親水性を有する強酸が付加した塩が好ましい。親水性を有する強酸としては、特に限定はない。例えば、トリフルオロ酢酸(Trifluoroacetic Acid,TFA)などが挙げられる。
<新規化合物の製造方法>
以下に、前記一般式(1)で表される化合物の製造方法について、詳細に説明する。
前記一般式(1)において、Rがアルケニル基を含み、Yが前記式(2)で表される基である化合物は、下記反応式[A−1]に示すように、触媒存在下で、式(3)で表される化合物であるシステインに、式(4)で表される化合物を反応させることにより、合成中間体である式(5)で表される化合物を得ることができる。式(5)で表される化合物を得る際の反応条件について、温度は室温でよく、時間は18〜24時間が好ましい。触媒としては、トリエチルアミン、ピリジン類等の有機アミンが好ましい。溶媒は、本反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、エタノールおよび水を混合したもの等が挙げられる。
さらに、式(5)で表される化合物に酸化剤を作用させることにより、目的の化合物である式(1−1−1)で表される化合物を得ることができる。また、酸化剤と共に親水性を有する強酸を混合することにより、式(1−1−1)で表される化合物の塩である式(6)で表される化合物を得ることができる。式(1−1−1)又は式(6)で表される化合物を得る際の反応条件について、温度は室温程度でよく、反応溶媒及び試薬が揮発しないという観点から、15〜30℃が好ましい。反応時間は、30分〜24時間が好ましい。酸化剤としては、特に限定はないが、例えば、過酸化水素、オキソン、過安息香酸等が挙げられる。溶媒としては、本反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。親水性を有する強酸としては、前記と同じ意味を表す。
また、反応式[A−1]〜[A−3]中、Qは、前記と同じ意味を表す。Xは、親水性を有する強酸のプロトンが解離した際のアニオンを表す。
Figure 0006596733
また、前記一般式(1)において、Rがアジド基を含み、Yが前記式(2)で表される基である化合物は、下記反応式[B−1]に示すように、触媒存在下で、式(3)で表される化合物であるシステインに、式(7)で表される化合物を反応させることにより、合成中間体である式(8)で表される化合物を得ることができる。式(8)で表される化合物を得る際の反応条件は、上述のとおりである。
さらに、式(8)で表される化合物に酸化剤を作用させることにより、目的の化合物である式(1−1−2)で表される化合物を得ることができる。また、前記酸化剤と共に親水性を有する強酸を作用させることにより、式(1−1−2)で表される化合物の塩である式(9)で表される化合物を得ることができる。式(1−1−2)および式(9)で表される化合物を得る際の反応条件は、上述のとおりである。
反応式[B−1]〜[B−3]中、LおよびXは、前記と同様の意味を表す。
Figure 0006596733
<新規化合物を含有する水溶性タンパク質修飾試薬>
本発明は、前記一般式(1)で表される化合物又はその塩を含有するタンパク質修飾試薬である。
前記一般式(1)で表される化合物と任意のタンパク質とを温和な条件にて混合することにより、一般式(1)中のRの末端に含まれる任意の化合物が有する特定の官能基と共有結合し得る基(特に好ましくは、アルキニル基又はアジド基)を任意のタンパク質の表面に修飾することができる。
「温和な条件」とは、任意のタンパク質の構造が壊れない程度の反応条件を示し、温度の下限値は、凍結しない温度以上であればよく、25℃以上が好ましく、37℃以下がより好ましい。温度の上限値は、タンパク質の機能が失われない温度であればよく、40℃以下が好ましく、37℃以下がより好ましい。反応時間は、タンパク質が耐えうるできるだけ短い時間であることが求められ、12〜24時間が好ましい。また溶媒としては、修飾される任意のタンパク質の構造を壊さないpH領域のものであればかまわないが、例えば、水、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液などの緩衝液等が挙げられる。
また、一般式(1)中のRの末端に含まれる任意の化合物が有する特定の官能基と共有結合し得る基(特に好ましくは、アルキニル基又はアジド基)はタンパク質等からなる生体分子とほとんど反応しないことが知られている。さらに、これら官能基は小さく、ほぼ無極性で、水素結合を形成しにくい。そのため、生体分子に任意の化合物が有する特定の官能基と共有結合し得る基(特に好ましくは、アルキニル基又はアジド基)を導入しても、生体分子の構造特性を大きく変化させることはない。
一般式(1)で表される化合物は、システインから容易に誘導されるものであるため、原料が手に入りやすく、安価に試薬を製造することが可能である。
また、本実施形態のタンパク質修飾酵素の用途としては、本発明の効果を奏する範囲で適宜選択され、以下に限定されるものではないが、ケミカルバイオロジー、創薬研究などに用いる生化学系試薬等を例示することができる。また、本実施形態に係る試薬を組み合わせて試薬キットとして用いることもできる。
<タンパク質の標識方法>
本発明の任意のタンパク質を標識する方法は、以下工程(a)、(b)を有する。
(a)下記一般式(1)で表される化合物と任意のタンパク質とを混合して、前記任意のタンパク質の表面に前記一般式(1)で表される化合物中のRを導入する工程。
(b)前記一般式(1)で表される化合物−タンパク質複合体と、該複合体中のRと結合する官能基を有する標識試薬とを混合し、タンパク質を標識する工程。
Figure 0006596733
前記一般式(1)中、Rは、上述のとおり、任意の化合物が有する特定の官能基と共有結合し得る基(特に好ましくは、アルキニル基又はアジド基)を末端に含み、Yは、式(2)で表される基を含む基を示す。
Figure 0006596733
前記式(2)中、★は結合位置を示す。
反応式[C−1]、[C−2]は、任意のタンパク質を標識する工程を示した反応式の一例である。以下、各工程について、詳細に説明する。
工程(a)は、式(1−1−1)で表される化合物と任意のタンパク質とを混合して、前記任意のタンパク質の表面に、式(1−1−1)で表される化合物中のアルケニル基およびQを含む基を導入する工程である。反応条件は、上述の通り、温和な条件で行うことができる。よって、容易に任意のタンパク質の表面に、式(1−1−1)で表される化合物中のアルケニル基およびQを含む基が導入され、式(10)で表される化合物を得ることができる。
Figure 0006596733
次に、工程(b)は、工程(a)で得られた式(10)で表される化合物とアジド基が末端に付いた標識物質である式(11)で表される化合物とを混合し、タンパク質を標識させる工程である。反応条件としては、タンパク質の構造が壊れない程度の環境であれば特別な制限はなく、温度は25〜37℃程度が好ましく、反応時間は1〜2時間程度が好ましい。また触媒を使用してもよく、クリック反応において用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、銅(I)触媒等が挙げられる。溶媒としては、pH領域のものであればかまわないが、例えば、水、HEPES(4−(2−hydroxyethl)−1−piperazineethanesulfonic acid)バッファー等が挙げられる。
標識物質とは、タンパク質の構造に影響がなく検出可能なものであれば特に制限はない。例えば、蛍光色素、蛍光ビーズ、量子ドット、ビオチン、抗体、抗原、エネルギー吸収性物質、ラジオアイソトープ、化学発光体、酵素等が挙げられる。蛍光色素としては、ピレン環などの縮合芳香族炭化水素を含む化合物を用いることができ、具体的には、FAM(カルボキシフルオレセイン)、JOE(6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ2’ ,7’−ジメトキシフルオレセイン)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、TET(テトラクロロフルオレセイン)、HEX(5'−ヘキサクロロ−フルオレセイン−CEホスホロアミダイト)、Cy3、Cy5、Alexa568、Alexa647化合物等が挙げられる。
上記反応式[C−2]で示されているように、任意のタンパク質表面に導入されたアルケニル基と標識物質の末端に存在するアジド基が反応して、任意のタンパク質と標識物質との間においてトリアゾール環が形成される。本実施形態においては、式(1−1−1)で表される化合物とアジド基が末端に付いた標識物質を用いた任意のタンパク質の標識方法について詳細を開示しているが、これに限定されるものではなく、タンパク質を修飾する化合物として、式(1−1−1)で表される塩、式(1−1−2)で表される化合物およびその塩を使用してもかまわない。また、式(1−1−2)で表される化合物を使用する場合においては、標識物質はアルケニル基が導入された物を使用すればよい。
したがって、本実施形態によれば、温和な反応条件であるため、生体内の環境を反映しながら、任意のタンパク質を容易に標識することができる。また、クリック反応を活用したIn situクリックケミストリーは、高い親和性を示す新規リガンド分子の開拓に利用されている。よって、本実施形態によれば、新規リガンド分子を容易に標識することができ、創薬研究に活用することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
[システイン誘導体の合成]
反応式[D−1]、[D−2]はシステインからシステイン誘導体である新規化合物を合成する工程を示した反応式である。まず式(3)で表される化合物(システイン)に式(13)で表される化合物(4−Bromo−1−butyne)を、エタノールと水とを2:1で混合した溶媒中において、触媒であるTriethylamineの存在下で、室温で18時間反応させて、合成中間体である式(14)で表される化合物を得た。さらに水溶媒中において、酸化剤である過酸化水素を室温で24時間作用させることで、システイン誘導体である新規化合物(15)(ジアスレオマー混合物)を得た。
Figure 0006596733
図1は、システイン誘導体である新規化合物(15)(ジアスレオマー混合物)のH NMRスペクトルを示した図である。図1において、横軸はケミカルシフト(ppm)、縦軸は核磁気共鳴信号強度を示し、各信号ピークのケミカルシフト値を上部に示し、信号ピークの近傍に信号強度を示している。なお、H NMRスペクトルは、日本電子社製ECA500を用いて測定した。
上記合成で得られたシステイン誘導体である新規化合物(15)(ジアスレオマー混合物)の同定結果を以下に示す。
δppm(500MHz,DMSO−d);2.99−3.02,2.86−2.87,2.67−2.81,2.62−2.72,2.41−2.44,1.14.
図2及び図3は、システイン誘導体である新規化合物(15)(ジアスレオマー混合物)のMSスペクトルを示した図である。図2及び図3に示すMSスペクトルは、Waters社製Quattro premier XEを用いて測定した。
図2及び図3から、システイン誘導体である新規化合物(15)の分子量の計算値が189.23に対して、測定されたピークは、正イオンモードでは190m/z(m:分子量、z:電荷数)であり、負イオンモードでは、188m/zであった。
図1〜図3から、合成されたシステイン誘導体である新規化合物(15)が所望のものであることが確認できた。
[BSAの蛍光標識]
反応式[E−1]、[E−2]はウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin、BSA)を蛍光標識する方法を示した反応式である。まず、システイン誘導体である新規化合物(15)をタンパク質修飾試薬として用いて、BSAとを25℃で24時間混合し、アルケニル基が表面に導入されたBSA(16)を得た。次に、アルケニル基が表面に導入されたBSA(16)と、AHC(3−azido−7−hydroxycoumarin(成績体の蛍光:励起波長404nm、検出波長477nm)(17)とを、硫酸銅(II)およびTHPTA(Tri(3−Hydroxypropyltriazolylmethyl)amine)触媒存在下で、37℃、1時間混合して、蛍光修飾されたBSA(18)を得た。
Figure 0006596733
得られた蛍光修飾されたBSA(18)と、ネガティブコントロールとしてシステイン誘導体である新規化合物(15)と反応させずに、BSAとAHCを37℃、1時間混合させたものとを、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)した。さらに、電気泳動後のアクリルアミドゲルについて、GelDok(登録商標)を用いて励起波長404nmを中心とした光を照射し、検出波長477nmの蛍光を検出した後に、クマシーブリリアントブルー染色(CBB染色)した。結果を図4に示す。図4中、(i)はシステイン誘導体である新規化合物(15)と反応させなかったものであり、(ii)はシステイン誘導体である新規化合物(15)と反応させたものである。また、左側が蛍光検出した結果であり、右側がCBB染色した結果である。
図4から、システイン誘導体である新規化合物(17)と反応させたもののみ、BSAが蛍光修飾されたことが確かめられた。
<実施例2>
[GODの蛍光標識]
実施例1と同様の方法で、BSAの代わりにグルコースオキシダーゼ(GOD)を用いて、蛍光修飾されたGODを得た。さらに、電気泳動後のアクリルアミドゲルについて、GelDok(登録商標)を用いて励起波長404nmを中心とした光を照射し、検出波長477nmの蛍光を検出した後に、クマシーブリリアントブルー染色(CBB染色)した。結果を図5に示す。図5中、左側が蛍光検出した結果であり、右側がCBB染色した結果である。
図5から、システイン誘導体である新規化合物(17)と反応させたGODが蛍光修飾されたことが確かめられた。また、GODの活性について、ABTS(2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))法により調べたところ、酵素活性が維持されていることが確かめられた。
なお、GODは、β−グルコースに特異的な酵素であり、β−グルコースはGODにより酸化され、過酸化水素を生成する。生成された過酸化水素は酸化触媒酵素ペルオキシダーゼと共に、ABTSをラジカル化させる。ラジカル化ABTSは安定的で青緑色をしており、600nmの吸光度で測定することができる。
<実施例3>
[BSAのビオチン標識]
実施例1と同様にアルケニル基が表面に導入されたBSA(18)を合成した後に、アルケニル基が表面に導入されたBSA(18)と、アジド基が導入されたビオチン(21)とを、硫酸銅(II)およびTHPTA触媒存在下で、37℃、1時間混合して、ビオチン修飾されたBSAを得た(下記反応式[F−1]参照)。ビオチン修飾されたBSAと、西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)標識されたストレプトアビジン(21)とを、混合して室温で1時間抗原抗体反応を行った(下記反応式[F−2]参照)。さらに、式(22)で表される化合物(BSA−ビオチン−HRP標識されたアビジン複合体)を含むサンプル溶液を用いてウェスタンブロット法を行い、得られたメンブレンを化学発光検出およびTMB(3,3’,5,5’−tetramethylbenzidine)染色した。結果を図6に示す。図6中、化学発光検出した結果であり、右側がTMB染色した結果である。
Figure 0006596733
図6から、TMB染色および化学発光染色により式(22)で表される化合物(BSA−ビオチン−HRP標識されたアビジン複合体)が検出された。よって、BSAにビオチンが修飾されたことが確かめられた。
<実施例4>
[AODの標識]
実施例1で合成したシステイン誘導体である新規化合物(15)と、アルコール酸化酵素(Alcohol oxidase,AOD)とを25℃で24時間混合し、アルケニル基が導入されたAOD(23)を得た。
Figure 0006596733
次に、アルケニル基が導入されたAOD(23)とAHCとを硫酸銅(II)およびTCEP(tris(2−carboxyethyl)phosphine)触媒存在下で、37℃、1時間混合して、蛍光修飾されたAOD(24)を得た。
Figure 0006596733
蛍光修飾されたAOD(24)をSDS−PAGEした。さらに、電気泳動後のアクリルアミドゲルについて、GelDok(登録商標)を用いて励起波長404nmを中心とした光を照射し、検出波長477nmの蛍光を検出した。続いて、クマシーブリリアントブルー染色(CBB染色)した。結果を図7に示す。図7において、左側が蛍光検出した結果であり、右側がCBB染色した結果である。
図7から、蛍光修飾されたAOD(24)が検出された。よって、AODが蛍光物質によって修飾されたことが確かめられた。
以上の結果から、親水性が高く、且つ、修飾される分子に構造的制限なく、任意のタンパク質を修飾できることが明らかとなった。

Claims (3)

  1. 一般式(1)で表される化合物又はその塩を含有する、タンパク質修飾試薬
    Figure 0006596733
    (前記一般式(1)中、Rは、無置換又は置換基を有する炭素数2〜3の直鎖状のアルキニル基であり、Yは、メチレン基を介して式(2)で表される基が結合している基を示す。)
    Figure 0006596733
    (前記式(2)中、アスタリスクは結合位置を示す。)
  2. 前記一般式(1)で表される化合物が式(15)で表される化合物である、請求項1に記載のタンパク質修飾試薬。
    Figure 0006596733
  3. 任意のタンパク質を標識する方法であって、
    (a)下記一般式(1)で表される化合物又はその塩と任意のタンパク質とを混合して、前記任意のタンパク質の表面に前記一般式(1)で表される化合物中のアルキニル基を導入する工程と、
    (b)前記一般式(1)で表される化合物−タンパク質複合体と、アゾメチンイリド基、ニトロン基、ニトリルイリド基、ジアゾメチル基、アジド基、又はニトリルオキシド基を有する標識試薬とを混合し、タンパク質を標識する工程と、
    を有するタンパク質の標識方法。
    Figure 0006596733
    (前記一般式(1)中、Rは、無置換又は置換基を有する炭素数2〜3の直鎖状のアルキニル基であり、Yは、メチレン基を介して式(2)で表される基が結合している基を示す。)
    Figure 0006596733
    (前記式(2)中、アスタリスクは結合位置を示す。)
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