以下、本発明の一実施形態の既設杭軌跡管理システムについて図面を参照にしながら説明する。まず、本既設杭軌跡管理システムに用いられる既設杭引抜装置について説明する。ここで、図1は、本発明の一実施形態における既設杭軌跡管理システムに用いられる既設杭引抜装置の側面図である。なお、本実施形態では、本特許出願人と同一出願人の「先行技術文献」記載の既設杭引抜装置を用いて説明する。
既設杭引抜装置2は、地中に埋設された既設杭(杭)1を引き抜くものである。ここで、既設杭1は、建築物等の基礎として地中に埋設されている杭であり、例えば、場所打ち鉄筋コンクリート杭や、コンクリート充填鋼管杭、または工場などで製作されるPC杭、PHC杭、SC杭、鋼管杭、H鋼杭等がある。
図1または図2に示すように、既設杭引抜装置2は、ケーシング3と、掘削歯4と、チャック爪5(図2参照)と、ガイド部6(図4参照)と、ロッド7と、油圧ジャッキ8と、モーションセンサ9と、アースオーガ10と、長さ検出センサ11と、スイベル12とを有している。ここで、チャック爪5とガイド部6とロッド7と油圧ジャッキ8は、後述するように、ケーシング3の中心軸から対称位置に2組設けられ、それらはケーシング3の中心軸回りに等間隔に配置されている(図5参照)。なお、本実施形態では、チャック爪5とガイド部6とロッド7と油圧ジャッキ8を2組設けたが、これに限らず、3組や4組などの複数組設けるようにしてもよい。また、本実施形態では、油圧ジャッキ8を用いたが、これに限らず、油圧ジャッキ8以外の押圧装置を用いてもよい。ここで、図2は、本発明の一実施形態における既設杭引抜装置のケーシングの下部を示す図である。
ケーシング3は、490N/mm2以上の引張強度を有する高張力鋼で中空の円筒形状の部材で形成され、3mm〜6mmの肉厚で既設杭1より大きい内径を有している。このケーシング3の中空状の先端部には、ケーシング3の内周面と外周面を連通させ、後述するチャック爪5が通過可能な連通孔3aが形成されている(図3参照)。そして、この連通孔3aの中央上部には下方に突出する突出部3bが形成され、この突出部3bにより連通孔3aを凹形状に開口させている。また、ケーシング3の内部には、水、ベントナイト等の泥土化剤を先端部に供給するための配管(図示略)が設けられている。ここで、図3は、本発明の一実施形態における既設杭引抜装置のケーシング下部側面の連通孔を示す図である。
掘削歯4は、ケーシング3の先端部に複数個設けられ、ケーシング3を地盤中に進入させるときに地盤を掘削するものである(図2参照)。
チャック爪5(図5参照)は、ケーシング3の外周側先端部寄りに設けられ、ケーシング3の連通孔3aを通じて、ケーシング3の内部に先端部を突出する位置である突出位置とケーシング3の内部から先端部が外側に退避した位置である退避位置の間で移動させることができる(図3、図6、図7参照)。すなわち、チャック爪5の「退避位置」では先端部がケーシング3の内部から外周側に退避され(図4、図5参照)、チャック爪5の「突出位置」では連通孔3aを通じてケーシング3の内部に貫入し、先端部がケーシング3の内部に突出される(図4、図6、図7参照)。また、チャック爪5は、連通孔3aを通るときに連通孔3aの内壁に接して支持され、チャック爪5の内周側には連通孔3aの突出部3bに係合する溝が形成されている。ここで、「退避位置」とはチャック爪5がケーシング3の外側に退避しているときのチャック爪5の位置のことであり、「突出位置」とはチャック爪5がケーシング3の内部に突出しているときのチャック爪5の位置のことである。このように、既設杭1の引抜時には、チャック爪5がケーシング3の内部に突出し、既設杭1が下方からチャック爪5により係止される(図7参照)。ここで、図4(a)は図2のAA方向から見た図であり、図4(b)は同既設杭引抜装置のガイド部の拡大図であり、図5は同既設杭引抜装置の退避位置にあるチャック爪を示す図であり、図6は同既設杭引抜装置の退避位置から突出位置に移動しているチャック爪を示す図であり、図7は同既設杭引抜装置の突出位置にあるチャック爪を示す図である。
ガイド部6は、ケーシング3の外周面の連通孔3aの近傍に設けられ、チャック爪5の移動をガイドするものである(図3、図4参照)。このガイド部6は、ガイドピン6aと、ガイド板6bと、ガイド溝6cと、ガイド部材6dとを有している(図4〜図7参照)。
ガイドピン6aは、チャック爪5の基端部とロッド7の一端部とガイド板6bを貫通して設けられている(図4(a)参照)。
ガイド板6bは、ケーシング3の外周部に固定され、チャック爪5を左右両側から挟むように一対設けられる(図4(a)参照)。
ガイド溝6cは、ガイド板6bに形成された円弧形状を有する溝で、ガイドピン6aが係合されている(図4(b)参照)。これにより、チャック爪5をガイド溝6cに沿って移動させることができる(図6、図7参照)。
ガイド部材6dは、ガイド板6b下部の外周部に設けられ、「退避位置」においてチャック爪5の先端側に当接して設けられている(図4参照)。そして、チャック爪5が「退避位置」から「突出位置」に移動する際には、チャック爪5がガイド部材6dに当接することにより、チャック爪5の移動を案内することができる(図6、図7参照)。
ロッド7は、ケーシング3の外周部に設けられ、一端はガイドピン6aによりチャック爪5の基端部に接続され、他端は油圧ジャッキ8と接続されている(図2参照)。このロッド7は、複数に分割され、その分割されたロッド7は連結ピン7aを介して回動可能にそれぞれ連結されている。また、ロッド7先端の連結部外周側には、当て板7bが設けられている。この当て板7bにより、ロッド7の外側への回動が規制される。
油圧ジャッキ8は、ケーシング3の外周部に固定されるとともにロッド7の他端に接続され、ロッド7をケーシング3の先端に向かって押圧することにより、チャック爪5を退避位置から突出位置に移動させるものであり、ピストンロッド8aと、ジャッキ本体8bとを有している(図2参照)。このロッド7の押圧は、スイベル12(図1参照)を介して油圧ジャッキ8に作動油が供給または排出されることにより行われる。そして、チャック爪5が「退避位置」にある状態からジャッキ本体8b内のピストンロッド8aが伸長されることにより、チャック爪5を「突出位置」に移動させることができる(図6参照)。また、チャック爪5が「突出位置」にある状態から、ジャッキ本体8b内のピストンロッド8aが収縮されることにより、チャック爪5を「退避位置」に移動させることができる(図5参照)。
モーションセンサ9は、ケーシング3の先端外周側面位置を検出するもので、ケーシング3の先端外周側面に設置されている(図2、図5、図6参照)。ケーシング3の先端外周側面位置を検出することにより、ケーシング3の先端中心位置が算出され、基準位置からのケーシング3先端の傾き(傾斜角)および方位を検出することができる。このケーシング3先端の方位(東西南北)は、モーションセンサ9に内蔵された方位検出手段により検出される。このモーションセンサ9は、ケーシング3上部の無線送信機器(図示略)とケーシング3内部を介して電力ケーブル(図示略)で接続されている。そして、ケーシング3の先端外周側面位置がモーションセンサ9により検出され、無線送信機器(図示略)にケーシング先端外周側面位置信号が送信されることにより、そのケーシング先端外周側面位置信号は無線送信機器(図示略)から後述する管理装置15に送信される。そして、管理装置15によりケーシング先端外周側面位置信号からケーシング3の先端中心位置が算出される。このように、ケーシング3の先端中心位置は、ケーシング3の先端外周側面位置でケーシング3とともに回転するモーションセンサ9の中心点を求めることにより算出され、モーションセンサ9により実質的に検出されるものである。以下では、ケーシング3の先端中心位置は、モーションセンサ9により検出されるとして説明する。
アースオーガ10は、ケーシング3を回転駆動させるもので、ケーシング3の上部に設けられている(図1参照)。このアースオーガ10は、ベースマシン16(例えば、三点式杭打機)のリーダ16c上部のトップシーブ16dからワイヤ16eが吊り下げられ、ベースマシン16のリーダ16cの側面に設けられた案内レール(図示略)に沿って昇降可能に支持されている。アースオーガ10のケース10a内には、駆動源(モータ)、減速機等が設けられ、ケース10aの下部には、駆動源の回転駆動力によって回転する回転軸40が設けられている。回転軸40の下端部にはスイベル12が連結されている。そして、アースオーガ10によりケーシング3を軸(円筒状のケーシング3の中心軸)周りに回転させ、ベースマシン16のリーダ16cの側面の案内レール(図示略)に沿ってケーシング3を下降させることにより、ケーシング3の先端の掘削歯4によって地盤が掘削され、ケーシング3を地中内に進入させることができる。また、アースオーガ10によりケーシング3を軸(円筒状のケーシング3の中心軸)周りに逆回転させることにより、ベースマシン16により地中に進入したケーシング3を地上に引き抜くことができる。このベースマシン16のリーダ16cは、後方からバックステー16aにより支持され、リーダ16cの下端部がピン16bにより回動可能に支持されている。そして、バックステー16aを伸縮させることによりリーダ16c下端部のピン16bを軸としてリーダ16cを前後方向の傾けることができる。なお、本実施形態では、アースオーガ10を用いたが、これに限らず、アースオーガ10以外の他の駆動装置であってもよい。
長さ検出センサ11は、基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さを検出するものである。具体的には、ワイヤー11aがアースオーガ10の下部からローラ11b、ローラ11cを介してアースオーガ10の上部に取り付けられている。そして、ベースマシン16のリーダ16cの側面に設けられた案内レール(図示略)に沿ってアースオーガ10(ワイヤー11aの取付位置)が昇降することにより、アースオーガ10に取り付けられたワイヤー11aが移動し、そのワイヤー11aの移動によりローラ11bが回転する。そして、このワイヤー11aの移動によるロ―ラ11b(エンコーダ)の回転信号が長さ検出センサ11に送られることにより、基準位置からケーシング3先端中心部までの長さを検出することができる。この長さ検出センサ11は、運転席のシート(図示略)の周辺に設置された管理装置15と電力ケーブル(図示略)で接続されている。そして、基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さが長さ検出センサ11により検出されると、ケーシング先端位置信号が管理装置15に送信される。なお、本実施形態では、長さ検出センサ11を用いたが、これに限らず、基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さを検出できるものであれば、長さ検出センサ11以外の他の位置検出手段であってもよい。また、本実施形態では、長さ検出センサ11により、基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さが検出されるとしたが、これに限らず、基準位置からケーシング3の先端部(略先端中心部など)までの長さが検出されるものであればよく、基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さである必要はない。
スイベル12は、ケーシング3の上部に設けられ、油圧ジャッキ8に作動油を供給し排出するものである(図1参照)。このスイベル12は、上部が油圧ジャッキ8に接続され、下部がケーシング3に接続されている。
次に、既設杭引抜装置2の既設杭軌跡管理システムに用いられる管理装置15について説明する。
ベースマシン16の運転席のシート(図示略)の周辺には、移動可能な管理装置15が設置されている。管理装置15は、管理装置本体15aと管理装置ディスプレイ部15bとを有し、管理装置ディスプレイ部15bは管理装置本体15aに配線により接続されている(図8参照)。ここで、図8(a)は本発明の一実施形態における既設杭軌跡管理システムの管理装置の表面図であり、図8(b)は同既設杭軌跡管理システムの管理装置の裏面図であり、図9(a)は同既設杭軌跡管理システムの管理装置の既設杭引抜側面軌跡表示画面を示す図であり、図9(b)は同既設杭軌跡管理システムの管理装置の既設杭引抜上面軌跡表示画面を示す図である。
図8(a)に示すように、管理装置ディスプレイ部15bは、設定ボタン17と、GM200情報ボタン18と、センサ情報ボタン19と、開始ボタン20と、停止ボタン21と、中断ボタン22と、深度0セットボタン23と、傾斜0セットボタン24、先端位置ボタン42a、側面軌跡ボタン42b、杭孔上面ボタン42c、杭打設ボタン42dなどを有している。また、管理装置本体15aには管理装置電源ボタン41が設けられている。
「設定ボタン17」はモーションセンサ9および長さ検出センサ11との通信速度等の設定を行うボタンであり、「GM200情報ボタン18」はモーションセンサ9の情報を表示させるボタンである。この設定ボタン17の設定は、既設杭1の引抜作業が実施される前に行われる。「設定ボタン17」、「GM200情報ボタン18」、および「センサ情報ボタン19」は、本発明との関連が少ないので、詳細な説明は省略する。管理装置電源ボタン41は、管理装置15のON/OFFボタンであり、この管理装置電源ボタン41が押されることにより管理装置15が作動可能状態になる。
「開始ボタン20」はケーシング3の先端中心部の深度や傾斜角度等の計測を開始させるボタンであり、「停止ボタン21」はケーシング3の先端中心部の深度や傾斜角度等の計測を開始した後に停止(終了)させるボタンである。作業者によりこの「開始ボタン20」が押されることによりケーシング3の先端中心部の深度や傾斜角度等の計測が開始され、そして、ケーシング3の先端中心部の深度や傾斜角度等の計測が実行されているときに、「停止ボタン21」が押されることによりケーシング3の先端中心部の深度や傾斜角度等の計測が終了する。この「停止ボタン21」は既設杭1の引抜作業が完了したときに押され、そして、次の既設杭1の引抜作業が開始するときに「開始ボタン20」が押される。このように、1本1本毎の既設杭1の引抜作業毎に「開始ボタン20」と「停止ボタン21」が押される。また、「中断ボタン18」は、ケーシング3の先端中心部の深度や傾斜角度等の計測を中断し、またその中断したケーシング3の先端中心部の深度や傾斜角度等の計測を再開させるためのボタンであり、ケーシング3の先端中心部の深度や傾斜角度等の計測が実行されているときに、作業者により「中断ボタン18」が押されることにより、ケーシング3の先端中心部の深度や傾斜角度等の計測が中断し、そして、ケーシング3の先端中心部の深度や傾斜角度等の計測が中断しているときに、この「中断ボタン18」が押されることにより、再びケーシング3の先端中心部の深度や傾斜角度等の計測が実行される。
深度0セットボタン23は、ケーシング3の先端中心部の現在の位置を「深度0」に設定するボタンである。また、傾斜0セットボタン24は、基準位置からケーシング3の先端中心部の現在の傾斜角を「傾斜0」に設定するボタンである。ここで、最初は、「開始ボタン20」が押されたタイミングのケーシング3の先端中心部が「深度0」となり、また基準位置からのケーシング3の先端中心部の傾斜角が「傾斜0」となる。そして、既設杭1の引抜作業等の途中に、「深度0セットボタン23」が押されることによりそのケーシング3の先端中心部の位置を「深度0」に設定でき、また、「傾斜0セットボタン24」が押されることによりその基準位置からのケーシング3の先端中心部の現在の傾斜角を「傾斜0」に設定することができる。
「先端位置ボタン42a」は他の画面からセンサ移動水平軌跡表示画面33a(図8(a)参照)に切り替えるボタンであり、「側面軌跡ボタン42b」は他の画面から既設杭引抜側面軌跡表示画面33b(図9(a)参照)に切り替えるボタンであり、「杭孔上面ボタン42c」は他の画面から既設杭引抜上面軌跡表示画面33c(図9(b)参照)に切り替えるボタンであり、杭打設ボタン42dは後述する新設杭打設側面軌跡表示画面33d(図12参照)に切り替えるボタンである。すなわち、たとえば、センサ移動水平軌跡表示画面33aが表示されているときに、側面軌跡ボタン42bが押されることにより、センサ移動水平軌跡表示画面33aから既設杭引抜側面軌跡表示画面33bに切り替わり、また、既設杭引抜上面軌跡表示画面33cが表示されているときに、側面軌跡ボタン42bが押されることにより、既設杭引抜上面軌跡表示画面33cから既設杭引抜側面軌跡表示画面33bに切り替わる。センサ移動軌跡表示画面33(33a、33b、33c、33d)の詳細は、後述する。なお、本実施形態では、
管理装置ディスプレイ部15bは、深度表示部25と、長さ表示部26と、深度長さ表示画面27と、傾斜X表示部28(傾斜X表示画面28a)と、傾斜Y表示部29(傾斜Y表示画面29a)と、回転方向表示部30と、センサ方位表示部31と、ズレ量表示部32と、センサ移動軌跡表示画面33(33a、33b、33c、33d)などを有し、これらにより基準位置からのケーシング3の先端中心部の位置に関する情報が表示される。
長さ表示部26は、基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さを表示するものである。この「基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さ(B)」は、長さ検出センサ11により検出された「基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さ(A)」により求められる。すなわち、長さ検出センサ11により検出された「基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さ(A)」のデータは、管理装置15に送信され、管理装置15内の記憶手段(図示略)に記録される。そして、この「基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さ(A)」を用いることにより、基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さが長さ表示部26に表示される。また、深度表示部25は、基準位置からのケーシング3の先端中心部の鉛直方向の深度を表示するものである。この「基準位置からのケーシング3の先端中心部の鉛直方向の深度(B)」は、管理装置15内で、「基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さ(A)」と「基準位置とケーシング3の先端中心部とを結んだ直線と基準位置の鉛直方向の直線との角度Θ」を用いることにより、「AcosΘ」として求めることができる。このように、ケーシング3が既設杭1に沿って地中に斜めに掘削しているときには、「深度表示部25」に表示される値(深度値)は「長さ表示部26」に表示される値(基準位置からケーシング3先端中心部までの長さ)より小さな値となる。ここで、「モーションセンサ9」および「長さ検出センサ11」は、ケーシング3の先端中心部の位置を検出するものであることから「位置検出手段」を構成している。さらに、「深度表示部25」および「長さ表示部26」の下部には「深度長さ表示画面27」が表示され、この「深度長さ表示画面27」の右側には、基準位置からケーシング3の先端中心部までの移動長さ軌跡がビジュアル的に表示される。すなわち、管理装置15で求められた基準位置からのケーシング3の先端中心部の長さ(A)は、管理装置15内の記憶手段(図示略)に継続的に記憶されることから、その記憶手段(図示略)に記憶された基準位置からのケーシング3の先端中心部の移動長さ軌跡が表示される。また、「深度長さ表示画面27」の左側には、基準位置からのケーシング3の先端中心部の鉛直方向の移動深度軌跡がビジュアル的に表示される。すなわち、管理装置15内の記憶手段(図示略)には、「基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さ(A)」と「基準位置とケーシング3の先端中心部とを結んだ直線と基準位置の鉛直方向の直線との角度Θ」を用いて求められた「基準位置からケーシング3の先端中心部までの深度(B)」が継続的に記憶されていることから、「深度長さ表示画面27」の左側には、その記憶手段(図示略)に記憶された基準位置からのケーシング3の先端中心部の移動深度軌跡が表示される。このように、深度長さ表示画面27は、基準位置からのケーシング3の先端中心部の鉛直方向の移動深度軌跡を表示する「表示手段」を構成している。そして、既設杭1の引抜作業においては、既設杭引抜開始時(開始ボタン20の「ON」時)のケーシング3の先端中心部の深度(基準位置)が「0.0」mとなり、そこから計測される「ケーシング3の先端中心部の鉛直方向の深度」と「ケーシング3の先端中心部までの長さ」が表示されるので、作業者は地中内の既設杭1の埋設形態を把握しながら既設杭引抜作業を行うことができる。ここで、現在のケーシング3の先端中心部の位置(「深度」および「長さ」)は、「深度長さ表示画面27」にそれぞれ異なった色(濃い色)で表示されている。このように、ケーシング3の先端中心部の過去の移動軌跡とケーシング3の先端中心部の現在の位置を区別できるように表示させることにより、作業者はケーシング3の現在の先端中心部の位置を把握することができ、既設杭1の引抜作業を円滑に行うことができる。ここで、既設杭引抜開始時(開始ボタン20の「ON」時)のケーシング3の先端中心部の位置(緯度および経度)、つまり基準位置の緯度および経度は、記憶手段(図示略)に記憶される。
傾斜X表示部28は、基準位置とケーシング3の先端中心部とを結んだ直線のX軸方向の傾き(傾斜(−90.0度〜+90.0度))を0.1度単位で表示するものである。また、傾斜Y表示部29は、基準位置とケーシング3の先端中心部とを結んだ直線のY軸方向の傾き(傾斜(−90.0度〜+90.0度))を0.1度単位で表示するものである。この「基準位置からのケーシング3の先端中心部のX軸方向(Y軸方向)の傾斜角」は、モーションセンサ9により検出された「基準位置からのケーシング3先端の傾き(傾斜角)および方位」により求めることができる。ここで、X軸方向およびY軸方向は、モーションセンサ9に内蔵された方位検出手段により東方向をX軸+方向(西方向をX軸−方向)、北方向をY軸+方向(南方向をY軸−方向)として定められている。また、傾斜X表示部28(傾斜Y表示部29)の下部には傾斜X表示画面28a(傾斜Y表示画面29a)が表示され、この傾斜X表示画面28a(傾斜Y表示画面29a)には、傾斜X表示部28(傾斜Y表示部29)に表示される基準位置からのX軸方向の傾斜角(Y軸方向の傾斜角)がビジュアル的に表示されている。
回転方向表示部30は、ケーシング3の回転角を表示するものである。この「回転方向表示部30」は、ケーシング3の回転が開始した位置(0度位置)からのケーシング3の右回転方向に回転した角度(0度〜+359.9度)が表示される。具体的には、「ケーシング3の回転角」は、モーションセンサ9により検出されたケーシング3の先端外周側面位置とケーシング3の先端中心位置により求めることができる。すなわち、「モーションセンサ9により検出されたケーシング3の先端外周側面位置とケーシング3の先端中心位置とを結んだ線」と「ケーシング3の回転が開始した位置(0度位置)とケーシング3の先端中心位置とを結んだ線」とのケーシング3の右回転方向に回転した角度を計算することにより、ケーシング3の回転角を求めることができる。
センサ方位表示部31は、ケーシング3の先端中心位置の方位を表示するものである。この「ケーシング3の先端中心位置の方位」は、東側を0度位置とし、その東側の0度位置からのケーシング3の右回転方向に回転した+359.9度までの角度が表示される。具体的には、「ケーシング3の先端中心位置の方位」は、モーションセンサ9により検出された「基準位置からのケーシング3の先端中心位置」とモーションセンサ9に内蔵された方位検出手段により検出された「ケーシング3の先端中心部の方位」により求めることができる。
ズレ量表示部32は、XY平面上の基準位置からケーシング3の先端中心部の位置がどれだけズレているか表示するものである。具体的には、上述したように、長さ検出センサ11により検出された「基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さ(A)」と、モーションセンサ9に検出された「基準位置とケーシング3の先端中心部とを結んだ直線と基準位置の鉛直方向の直線との角度Θ」を用い、「XY平面上の基準位置からケーシング3の先端中心位置のズレ(AsinΘ)」を求めることができる。
センサ移動水平軌跡表示画面33aは、管理装置15のメモリに記憶された基準位置からケーシング3の先端中心部の水平方向の移動水平軌跡を表示するものである。具体的には、管理装置15のメモリに記憶されたケーシング3の先端中心部の位置からケーシング3の先端外周側面のモーションセンサ9の位置を線で結び、ケーシング3の回転とともに回転するケーシング3の先端外周側面のモーションセンサ9の位置の軌跡が表示される。このセンサ移動水平軌跡表示画面33aにより「表示手段」が構成されている。この「基準位置からのケーシング3の先端中心位置」は、長さ検出センサ11により検出された「基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さ(A)」と、モーションセンサ9に検出された「基準位置とケーシング3の先端中心部とを結んだ直線と基準位置の鉛直方向の直線との角度Θ」と「基準位置からのケーシング3の先端中心部の方位」により求めることができる。すなわち、長さ検出センサ11により検出された「基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さ(A)」のデータが、管理装置15に送信され、管理装置15内の記憶手段(図示略)に記録されるとともに、モーションセンサ9により検出された「基準位置とケーシング3の先端中心部とを結んだ直線と基準位置の鉛直方向の直線との角度Θ」と、基準位置からのケーシング3の先端中心部の方位」のデータも、管理装置15に送信され、管理装置15内の記憶手段(図示略)に記録される。そして、管理装置15内で、「基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さ(A)」と「基準位置とケーシング3の先端中心部とを結んだ直線と基準位置の鉛直方向の直線との角度Θ」と「基準位置からのケーシング3の先端中心部の方位」を用いることにより、「基準位置からのケーシング3の先端中心位置」を求めることができる。このように、モーションセンサ9および長さ検出センサ11は、上述したように、ケーシング3の先端中心部の位置を検出するものであるから「位置検出手段」を構成している。この「センサ移動水平軌跡表示画面33aにケーシング3とともに回転しているケーシング3の先端外周側面のモーションセンサ9を表示させることにより、現在のケーシング3先端の外周形状が表示でき、作業者は地中内の既設杭1の埋設形態を把握しながら既設杭引抜作業を行うことができる。また、センサ移動水平軌跡表示画面33aは、拡大ボタン44aが押されることにより拡大表示(狭い範囲の表示)され、縮小ボタン44bが押されることにより縮小表示(広い範囲の表示)される。なお、本実施形態では、「モーションセンサ9」および「長さ検出センサ11」で位置検出手段を構成させたが、これに限らず、モーションセンサ9の機能および長さ検出センサ11の機能を有する一つのセンサで位置検出手段を構成させてもよい。そして、センサ移動水平軌跡表示画面33aが表示されているときに、側面軌跡ボタン42bが押されることにより、センサ移動水平軌跡表示画面33aから既設杭引抜側面軌跡表示画面33bに切り替わる。
既設杭引抜側面軌跡表示画面33b(図9(a)参照)は、管理装置15のメモリに記憶された基準位置からのケーシング3の先端中心部の側面方向から見た移動軌跡を表示するものである。すなわち、管理装置15のメモリに記憶された基準位置からのケーシング3の先端中心部の水平方向の移動水平軌跡と基準位置から垂直方向の移動深度軌跡を一元的に表示するものである。また、既設杭引抜側面軌跡表示画面33b(図9(a)参照)には、今までの既設杭1の引き抜きに用いられたケーシング3の先端中心部の側面方向から見た移動軌跡も表示されている。ここで、図9(a)は、上述したように、本発明の一実施形態における既設杭軌跡管理システムの管理装置の既設杭引抜側面軌跡表示画面を示す図である。この「基準位置からケーシング3の先端中心部の垂直方向の移動水平軌跡」は、深度表示部25で説明したように、「基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さ(A)」と「基準位置とケーシング3の先端中心部とを結んだ直線と基準位置の鉛直方向の直線との角度Θ」により求めることができ、また、「基準位置からケーシング3の先端中心部の水平方向の移動水平軌跡」は、上記のセンサ移動水平軌跡表示画面33aで説明したように、長さ検出センサ11により検出された「基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さ(A)」と、モーションセンサ9に検出された「基準位置とケーシング3の先端中心部とを結んだ直線と基準位置の鉛直方向の直線との角度Θ」と「基準位置からのケーシング3の先端中心部の方位」により求めることができる。そして、これらの「基準位置からケーシング3の先端中心部の水平方向の位置」と「基準位置からケーシング3の先端中心部の垂直方向の位置」を組み合わせることにより、「基準位置からケーシング3の先端中心部の現在の位置(水平方向および垂直方向の位置)」を求めることができる。このようにして求められた「基準位置からケーシング3の先端中心部の現在の位置(水平方向および垂直方向の位置)」の移動軌跡が「既設杭引抜側面軌跡表示画面33b(図9(a)参照)」に表示される。ここで、この既設杭引抜側面軌跡表示画面33b(図9(a)参照)は、基準地点からのケーシング3の先端中心部の水平方向の移動水平軌跡とともに、基準地点からのケーシングの先端中心部の移動深度軌跡を表示するものあり、「表示手段」を構成している。また、「既設杭引抜側面軌跡表示画面33b」には、現在のケーシング3の先端中心部の位置が異なった色(濃い色)で表示されている。このように、ケーシング3の先端中心部の過去の移動軌跡とケーシング3の先端中心部の現在の位置を区別できるように表示させることにより、作業者は地中内の既設杭1の埋設形態を把握しながら既設杭引抜作業を行うことができ、既設杭1の引抜作業を円滑に行うことができる。また、この「既設杭引抜側面軌跡表示画面33b」に基準位置からケーシング3の先端中心部の移動軌跡(「水平方向の移動水平軌跡」および「垂直方向の移動深度軌跡」)を表示させることにより、作業者は地中から引き抜かれた既設杭1の既設杭引抜孔43の形態を把握することができる。また、既設杭引抜側面軌跡表示画面33bは、拡大ボタン44aが押されることにより拡大表示(狭い範囲の表示)され、縮小ボタン44bが押されることにより縮小表示(広い範囲の表示)される。また、EWSNボタン45のE側(東側)が押されることにより東側から見た表示に移行し、また、EWSNボタン45のW側(西側)、S側(南側)・N側(北側)が押されたときも、E側(東側)が押されたときと同様、それぞれ西側、南側・北側から見た表示に移行する。このように、「EWSNボタン45」が押されることにより、東側、西側、南側、北側から見た表示に移行されるので、基準位置からケーシング3の先端中心部の位置の移動軌跡を立体的に把握することができる。また、本実施形態では、東側、西側、南側、または北側から見た基準位置からケーシング3の先端中心部の位置の移動軌跡の表示に移行させる「EWSNボタン45」を設けたが、これに限らず、基準位置からケーシング3の先端中心部の位置の移動軌跡から右回転方向に連続的に回転させることができる「画像回転ボタン」を更に設けるようにしてもよい。このように、「画像回転ボタン」が押されることにより、既設杭引抜側面軌跡表示画面33bの「図9(a)に示す基準位置からケーシング3の先端中心部の位置の移動軌跡(右側面視)」の表示が右回転周り(背面視→左側面視→正面視→右側面視)に連続的に回転し、その回転させた基準位置からケーシング3の先端中心部の位置の移動軌跡を表示させることができる。このように、「画像回転ボタン」が押されることにより、右回転周りに回転させた基準位置からケーシング3の先端中心部の位置の移動軌跡が連続的に表示されるので、基準位置からケーシング3の先端中心部の移動軌跡を立体的に把握することができる。ここで、「画像回転ボタン」が押されることによる右回りの回転を、左回りの回転にしてもよい。また、「画像回転停止ボタン」を設けて、回転途中に停止できるようにしてもよい。
既設杭引抜上面軌跡表示画面33cは、既設杭1が引き抜かれた既設杭引抜孔43の上端を表示するものである。そして、この既設杭引抜上面軌跡表示画面33cに表示される既設杭引抜孔43にカーソル(「+」位置)を移動させると、その既設杭引抜孔43の緯度および経度が上部に表示される。ここで、それぞれの既設杭引抜孔43の上端の緯度および経度は、管理装置15のメモリ(記憶手段)に記憶されている。なお、図9(b)では、既設杭引抜孔43の緯度および経度として「00.00°」と表示しているが、コンマ以下10桁以上(好ましくは、コンマ以下15桁以上)等詳細に表示させるようにしてもよい。また、既設杭引抜上面軌跡表示画面33cは、拡大ボタン44aが押されることにより拡大表示(狭い範囲の表示)され、縮小ボタン44bが押されることにより縮小表示(広い範囲の表示)される。また、EWSNボタン45のE側(東側)が押されることにより東側の地表に移行し、また、EWSNボタン45のW側(西側)、S側(南側)・N側(北側)が押されたときも、E側(東側)が押されたときと同様、それぞれ西側、南側・北側の地表に移行する。ここで、既設杭引抜上面軌跡表示画面33cでは、上部(下部)が北側(南側)、右側(左側)を東側(西側)と規定している。
管理装置本体15aには、USBメモリ挿入口35が設けられ、そのUSBメモリ挿入口35にUSBメモリ34を挿入し、管理装置15のメモリ(記憶手段)に記憶されたデータをUSBメモリ34(記録媒体)に記憶させることができる(図8(b)参照)。この管理装置15内のデータには、長さ検出センサ11により検出された「基準位置からケーシング3の先端中心部までの長さ(A)」とモーションセンサ9により検出された「基準位置とケーシング3の先端中心部とを結んだ直線と基準位置の鉛直方向の直線との角度Θ」から求められた基準位置からのケーシング3の先端中心部の鉛直方向の移動深度軌跡や、モーションセンサ9により検出されたデータなどから求められた基準位置からのケーシング3の先端中心部の水平方向の移動水平軌跡や、既設杭引抜孔43の上端の緯度および経度や、その他のモーションセンサ9により検出されたデータなども含まれる。そして、データが記憶されたUSBメモリ34を管理装置本体15aから取り出し、その取り出されたUSBメモリ34をパソコン55に差し込んで、そのUSBメモリ34に記憶されているデータの分析などを行い、既設杭1を引く抜いた後の新設杭の打設位置などを検討することができる。なお、本実施形態では、USBメモリ34を用いたが、これに限らず、USBメモリ34以外の他の記録手段を用いてもよい。また、本実施形態では、USBメモリ34をUSBメモリ挿入口35に挿入させたが、これに限らず、USBメモリ34をUSBメモリ挿入口35以外の他の装着手段に装着させてもよい。
次に、既設杭引抜装置2を用いた既設杭引抜方法について説明する。ここで、図10は本発明の一実施形態における既設杭軌跡管理システムを用いた既設杭引抜方法のフローチャートであり、図11は同既設杭軌跡管理システムを用いた既設杭の引抜状況を示す図である。
まず、S1において、ケーシング位置決め工程が実施される。このケーシング位置決め工程では、既設杭1の上端がケーシング3内に挿入できる位置に、ケーシング3の先端部が位置決めされる。具体的には、ベースマシン16を用いて、ケーシング3の下端部を既設杭1の上端位置に移動させる。そして、ケーシング3が所定の位置決めされると、S2に進む。
S2において、「開始ボタン20」が「ON」になっているかが判断される。この「開始ボタン20」は、管理装置23の管理装置ディスプレイ部15b(図8(a)参照)の開始ボタン20が押圧されることにより「ON」にすることができる。そして、「開始ボタン20」が「ON」になっていない場合は、「開始ボタン20」が「ON」になるまでS2の処理が継続して実施される。そして、「開始ボタン20」が「ON」になれば、S3に進み、この開始ボタン20が「ON」になったケーシング3の先端中心部の位置が基準位置となる。
S3において、「掘削ボタン(図示略)」が「ON」になっているかが判断される。この「掘削ボタン(図示略)」は、ベースマシン16の掘削ボタン(図示略)を押すことにより「ON」にすることができる。そして、「掘削ボタン(図示略)」が「ON」でない場合は、「掘削ボタン(図示略)」が「ON」になるまでS3の処理が繰り返し実施される。そして、S3で「掘削ボタン(図示略)」が「ON」になれば、S4に進む。
S4において、ケーシング掘削工程が実施される。このケーシング掘削工程は、ケーシング3を回転させることにより、ケーシング3先端の掘削歯4により地盤が掘削され、ケーシング3が既設杭1に沿って地中内に進入(下降)する。ケーシング3が既設杭1に沿って地中内に進入(下降)する際には、基準位置からのケーシング3の先端中心部の鉛直方向の深度が深度表示部25に表示され、基準位置からのケーシング3の先端中心部の鉛直方向の移動深度軌跡が深度長さ表示画面27(左側)に表示されるとともに、基準位置からケーシング3の先端中心部の水平方向の移動水平軌跡がセンサ移動水平軌跡表示画面33aに表示される。また、管理装置15のメモリに記憶された基準位置からケーシング3の先端中心部の位置の移動軌跡(ケーシング3の先端中心部の移動深度軌跡と移動水平軌跡の組み合わせた移動軌跡)も既設杭引抜側面軌跡表示画面33b(図9(a)参照)に表示される。なお、本実施形態では、既設杭1より少し長いケーシング3を用い、そのケーシング3を既設杭1に沿って地中内に進入(下降)させるようにしたが、これに限らず、既設杭1より短い所定の長さのケーシング3を継ぎ足しながら、ケーシング3を順次既設杭1に沿って地中内に進入(下降)させるようにしてもよい。すなわち、所定の長さのケーシング3を既設杭1に沿って地中内に進入(下降)させ、そのケーシング3が地中内に所定の長さ進入(下降)されると、そのケーシング3の後端部と新たに地中内に進入(下降)させるケーシング3の先端部を連結させるようにして、ケーシング3が地中内に順次進入(下降)されるようにしてもよい。このように、ケーシング3が順次継ぎ足されて既設杭1に沿って地中内に進入(下降)される場合は、作業者は、既設杭引抜側面軌跡表示画面33bに表示されるケーシング3の先端中心部の位置の移動軌跡を確認しながら、既設杭1に沿って地中内に進入されたケーシング3(後端部)の傾斜に合わせて、ベースマシン16のバックステー16aを伸縮させ、リーダ16cを前後方向の傾けるようにすることができる。このように、既設杭1に沿って地中内に進入されたケーシング3(後端部)の傾斜に合わせて、リーダ16cを前後方向の傾けることにより、ケーシング3を地中内にスムーズに進入(下降)させることができる。ここで、図9(a)は、上述したように、本発明の一実施形態における既設杭軌跡管理システムの管理装置の既設杭引抜側面軌跡表示画面を示す図である。なお、図9(a)では、既設杭1が引き抜かれ、その引き抜かれた後の既設杭引抜孔43に充填材が注入されている状態を示しているが、ケーシング3先端の掘削歯4により地盤が掘削されている際においても、基準位置からケーシング3の先端中心部の側面方向から見た移動軌跡が既設杭引抜側面軌跡表示画面33bに表示される。そして、S5に進む。
S5において、既設杭1の下端までケーシング3により掘削されたかが判断される。すなわち、ケーシング3が地盤を掘削することにより、既設杭1の全長がケーシング3内に入り、ケーシング3のチャック爪5により既設杭1の下端を係止できる深さまで掘削されたかが判断される。この「ケーシング3のチャック爪5により既設杭1の下端を係止できる深さまで掘削されたか」は、あらかじめ既設杭1の長さがわかっているので、長さ表示部26に表示される「基準位置からケーシング3の先端部までの長さ」の値から判断することができる。そして、S5で「NO」と判断された場合はS4に進み、S5で「YES」と判断されるまで、S4→S5の処理が繰り返し実施され、S5で「YES」と判断された場合はS6に進む。なお、本実施形態では、「ケーシング3のチャック爪5により既設杭1の下端を係止できる深さまで掘削されたか」について、長さ表示部26に表示される基準位置からケーシング3の先端部までの長さの値から判断したが、これに限らず、ケーシング3により地盤が掘削される所定の深さ毎にケーシング3のチャック爪5を退避位置から突出位置に移動させ、その突出位置に移動させたチャック爪5により既設杭1の下端が係止されることにより、既設杭1の下端までケーシング3により掘削されたと判断してもよい。
S6において、既設杭引抜工程が実施される。この既設杭引抜工程では、地中内の既設杭1がケーシング3により引き抜かれる。具体的には、油圧ジャッキ8を駆動しピストンロッド8aを伸長させ、チャック爪5を退避位置から突出位置へ移動させる。これにより、既設杭1がケーシング3先端のチャック爪5に係止される。そして、この状態で、ベースマシン16によりケーシング3を上昇させることにより、ケーシング3とともに既設杭1が引き抜かれる。また、引き抜かれる際には既設杭引抜孔43に充填材が注入される。そして、S7に進む。ここで、S5の「なお書き」で記載したように、突出位置に移動させたチャック爪5により既設杭1の下端が係止されることにより、既設杭1の下端までケーシング3により掘削されたと判断する場合は、チャック爪5により既設杭1の下端が係止された状態で、既設杭引抜工程(S6)において、ベースマシン16によりケーシング3を上昇させることにより、ケーシング3とともに既設杭1が引き抜かれる。そして、既設杭引抜工程が完了すれば、そのタイミングで「停止ボタン21」が押される。
S7において、次に引き抜く既設杭1があるか判断される。つまり、次の既設杭1の引抜きを実施するか判断される。そして、S7で「YES」と判断された場合はS1に進み、S7で「NO」と判断されるまで、S1→S2・・S6→S7の処理が繰り返し実施される。そして、S7で「NO」と判断された場合はS8に進む。
S8において、データ記録工程が実施される。このデータ記録工程では、管理装置15の記憶手段(図示略)に記憶されたデータがUSBメモリ34(記録媒体)に記憶される。具体的には、管理装置15のUSBメモリ挿入口35にUSBメモリ34(記録媒体)が挿入され、そのUSBメモリ34(記録媒体)に、「ケーシング3の先端中心部の深度」、「基準位置からのケーシング3先端の傾き(傾斜角)および方位」、「基準位置からのケーシング3の先端中心部の水平方向の移動水平軌跡、鉛直方向の移動深度軌跡とセンサ移動立体軌跡」、および「既設杭引抜孔43の上端の緯度および経度」など管理装置15の記録手段に記録されているデータが記憶される。なお、本実施形態では、USBメモリ34に記録させたが、上述したように、これに限らず、USBメモリ34以外の他の記録手段に記録させてもよい。これにより、既設杭引抜方法が終了する。
次に、新設杭打設工程について説明する。新設杭37(図12参照)を打設する際には、どの位置に新設杭37を打設するか、すなわち、既設杭1が引き抜かれた既設杭引抜孔43を避け、かつ引き抜かれた既設杭1が切断されている可能性がある場合は地中内に残されている既設杭1を避けて、新設杭37の打設位置が決められる。具体的には、管理装置15の管理装置ディスプレイ部15bのセンサ移動軌跡表示画面33(33a、33b、33c、33d)に表示されるすべての既設杭引抜孔43から所定の距離以上離れた区域を新設杭が打設することからできる範囲(図示略)として、既設杭引抜上面軌跡表示画面33cに表示される。これにより、作業者は、新設杭を打設することからできる範囲として表示された既設杭引抜上面軌跡表示画面33cを確認し、これから新設杭37を打設しようとする打設位置を決定することができる。この「既設杭引抜孔43から所定の距離離れた区域」の「所定の距離」は、新設杭打設不可距離設定入力部(図示略)に入力することにより設定することができる。そして、新設杭37の打設位置の決定に際して、作業者は、新設杭を打設することからできる範囲として表示される既設杭引抜上面軌跡表示画面33cを確認し、これから新設杭37を打設しようとする付近の既設杭引抜孔43にカーソル(「+」)を移動させ、側面軌跡ボタン42bが押されることにより既設杭引抜上面軌跡表示画面33cから既設杭引抜側面軌跡表示画面33b(図9(a)参照)に移行される。そして、カーソル(「+」)が移動された既設杭引抜孔43を中心として表示される既設杭引抜側面軌跡表示画面33b(図9参照)を確認しながら、既設杭1が引き抜かれた既設杭引抜孔43を避けることができる打設位置を決定することができる。また、地中内から引き抜かれる既設杭1の設計長さがわかれば、既設杭1の設計長さを入力することができる既設杭設計長さ入力部(図示略)に既設杭1の設計長さを入力し、既設杭引抜側面軌跡表示画面33bに表示される既設杭引抜孔43をクリックすることにより、そのクリックされた既設杭引抜孔43(先端部)について、既設杭1が切断されて短くなった長さを延長させて表示させることができる。そして、その延長させた既設杭引抜孔43から所定の範囲以上離れた区域についても新設杭が打設することからできる範囲として、既設杭引抜上面軌跡表示画面33cに表示される(図示略)。このようにすることにより、既設杭1が引き抜かれた既設杭引抜孔43を避け、かつ引き抜かれた既設杭1が切断されている可能性がある場合は地中内に残されている既設杭1を避けることができる新設杭37の打設位置を決定することができる。そして、その新設杭37の打設位置に新設杭37が打設される。また、本実施形態では、既設杭設計長さ入力部(図示略)に既設杭1の設計長さを入力し、既設杭引抜側面軌跡表示画面33bに表示される既設杭引抜孔43をクリックすることにより、そのクリックされた既設杭引抜孔43(先端部)について、既設杭1が切断されて短くなった長さを延長させて表示させるようにしたが、これに限らず、地中内から引き抜かれた既設杭1の設計長さがわかれば、既設杭引抜側面軌跡表示画面33bに表示されたケーシング3の先端部の水平方向の移動水平軌跡および鉛直方向の移動深度軌跡(既設杭引抜孔43の先端部の傾き(傾斜)など)から切断されて地中内に残されている既設杭1の大まかな位置が推定できるので、既設杭設計長さ入力部(図示略)を設けずに、既設杭引抜側面軌跡表示画面33bから地中内に残されている切断された既設杭1の大まかな位置を推定して新設杭37の打設位置を決定するようにしてもよい。これにより、切断されて地中内に残されている既設杭1との衝突を回避することができ、地中内に残されている既設杭1との衝突による新設杭37の引き上げが不要となり、新設杭37の作業効率を向上されることができる。この地中内に残されている既設杭1を避けることができる新設杭37の打設位置の決定は、管理装置15を用いることにより、現場で行う必要はなく、会社内で行うことができる。この新設杭打設工程は、上述したように、既設杭1の引き抜きが完了した後に実施され、新設杭打設装置の既設杭軌跡管理システムを用いて、新設杭37が打設される。なお、本実施形態では、新設杭37の打設位置が決定するまでの説明にしたが、これに限らず、新設杭37の打設位置が決定された後、新設杭37を打設する際に、新設杭先端位置センサにより新設杭37の先端の位置が検知され、その新設杭先端位置センサの位置の履歴を既設杭引抜側面軌跡表示画面33bに表示させるようにしてもよい。この新設杭先端位置センサの位置を既設杭引抜側面軌跡表示画面33bに表示させた画面として、新設杭打設側面軌跡表示画面33dに示す(図12参照)。ここで、図12は本発明の一実施形態における既設杭軌跡管理システムの管理装置の新設杭打設側面軌跡表示画面を示す図である。
以上説明したように、管理装置15内の記憶手段(図示略)に記憶されたケーシング3の先端部(先端中心部など)の水平方向の移動水平軌跡とともに、ケーシング3の先端部(先端中心部など)の鉛直方向の移動深度軌跡がセンサ移動軌跡表示画面33(33a、33b、33c、33d)に表示されるので、作業者は地中から引き抜かれた既設杭1の既設杭引抜孔43の形態を把握できる。これにより、引き抜かれた既設杭1が曲がっている場合でも、その曲がっている既設杭1が引き抜かれた既設杭引抜孔43を避けて新設杭を打設することができ、新設杭の打設強度(N値)の安全性を確保することができる。また、地中内から引き抜かれる既設杭1の設計長さがわかれば、センサ移動軌跡表示画面33(33a、33b、33c、33d)に表示されたケーシング3の先端部(先端中心部など)の水平方向の移動水平軌跡および鉛直方向の移動深度軌跡(既設杭引抜孔43の先端部の傾き(傾斜)など)から切断されて地中内に残されている既設杭1の大まかな位置が推定できるので、その切断された既設杭1の大まかな位置から地中内に残されている既設杭1を避けて新設杭を打設することができ、切断されて地中内に残されている既設杭1と衝突することをなくすことができる。これにより、地中内に残されている既設杭1との衝突による新設杭の引き上げが不要となり、新設杭の作業効率を向上されることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。