図2は従来例の電源切替回路の回路図を示す。
一次側入力回路100と二次側出力回路200とがトランス300を介して電気的な絶縁状態で電磁的に結合されている。電圧の高い第1の電源(メインの電源)60は、例えば交流系統電源(商用電源)を電力変換した直流電源であって、トランス300の一次巻線N1に接続されたスイッチング素子Q61と、スイッチング素子Q61の制御端子(ベース)に接続されてそのオンデューティを制御する出力電圧制御回路61と、フォトカプラPCにおけるフォトトランジスタPtと、トランス300の二次巻線N2の両端間に接続された整流ダイオードD61および平滑コンデンサ(電解コンデンサ)C61の直列回路からなる整流平滑回路で構成されている。
電圧の低い第2の電源(サブの電源)70はバッテリ(蓄電池)E71などで構成されている。
フィードバック回路80は、その駆動電源を第1の電源60からの出力ラインL61より得ている。
第1の電源60と第2の電源70を選択的に切り替える切替回路90として、2つの逆流防止用のダイオードD91,D92が用いられている。高電圧供給側の逆流防止用のダイオードD91は、そのアノードが第1の電源60の出力端子に接続され、低電圧供給側の逆流防止用のダイオードD92は、そのアノードが第2の電源70の出力端子に接続されている。両逆流防止用のダイオードD91,D92のカソードどうしが並列的に接続され、その接続点n90が出力端子91に接続されている。2つの逆流防止用のダイオードD91,D92の並列接続の構成がダイオードORと呼ばれる。400は負荷回路である。
メインの電源である第1の電源60が停止状態にあるとき、サブの電源である第2の電源70から負荷回路400に対して給電が行われる。このとき、低電圧供給側の逆流防止用のダイオードD92は導通状態にあり、高電圧供給側の逆流防止用のダイオードD91は非導通状態となっている。
第1の電源60が起動されると、平滑コンデンサC61に対する充電が開始され、第1の電源60の電圧V60が次第に上昇していく。この第1の電源60の電圧V60が第2の電源70の電圧V70を上回ると、低電圧供給側の逆流防止用のダイオードD92の導通遮断と高電圧供給側の逆流防止用のダイオードD91の導通開始とが同時に起きる。つまり、第2の電源70からの給電が停止し、それに代わって第1の電源60からの給電が開始される(給電電源の自動的切り替え)。
フィードバック回路80は出力ラインL61に現れる第1の電源60の電圧V60を監視し、それが所定電圧(定格電圧)を上回ると、フォトカプラPCにおける発光ダイオードLE1を動作させて光信号であるフィードバック信号を第1の電源60におけるフォトトランジスタPtに向けて出射する。このフィードバック信号を受けた出力電圧制御回路61はスイッチング素子Q61に対するオンデューティを減少させ、第1の電源60の電圧V60を所定電圧(定格電圧)に収束させる。
再び第1の電源60が停止すると、高電圧供給側の逆流防止用のダイオードD91の導通遮断と低電圧供給側の逆流防止用のダイオードD92の導通開始とが同時に起きる。つまり、第1の電源60からの給電が停止し、それに代わって第2の電源70からの給電が開始される(給電電源の自動的切り替え)。
いま、第2の電源70がバッテリE71であるなどの理由から電圧精度が悪いために、不測に第2の電源70の電圧V70が第1の電源60の電圧V60よりも高くなったとする。しかし、切替回路90において、第1の電源60の出力端と第2の電源70の出力端にそれぞれ逆流防止用のダイオードD91,D92が並列に接続されているため、不測に異常上昇した第2の電源70の電圧V70はフィードバック回路80に印加されることはない。
もし仮に、出力ラインL61に逆流防止用のダイオードD91が挿入されていないと、不測に異常上昇した第2の電源70の電圧V70はフィードバック回路80に印加されて不測にフィードバック信号が出力されてしまい、出力電圧制御回路61によるスイッチング素子Q61の制御において、スイッチング停止などの誤動作ひいては第1の電源60の異常動作が発生する。
第1の電源60がいったん動作停止すると、第2の電源70の電圧V70が正規の低いレベル近傍まで正常復帰したとしても、第1の電源60の電圧V60は直ぐには立ち上がらないため、切替回路90が負荷回路400に対して出力する電圧は設定電圧よりも下回ってしまうことになる。
これに対し、ワイヤードORの接続点n90において、それぞれの電流方向上流側に逆流防止用のダイオードD91,D92を介挿したダイオードORの構成を採用することで、異常上昇した第2の電源70の電圧V70のフィードバック回路80に対する印加を防止すれば、上記のようなスイッチング停止は回避され、負荷回路400への出力電圧が設定電圧より下回ることを阻止して正常な動作を確保することができる。
なお、図2に示す従来例に類似するものとして、特許文献1,2に開示の技術がある。
しかしながら、図2に示す従来例のようにダイオードORの構成を採用すると、それぞれの逆流防止用ダイオードにおいて〔ダイオードの順方向電圧Vf〕×〔電流i〕の損失が生じ、大きな損失になるという問題がある。
図3は図2の従来例に見られる上記のような問題(ダイオードORにおける逆流防止用のダイオードでの損失)を解決する一つの方法であり、ダイオードORに代えてリレーを採用したものである。
電圧の高い第1の電源11が停止状態にあるとき、電圧判定回路14は動作せず、機械式リレー15も不動作である。トランスファ接点15bはb接点に接触し、電圧の低い第2の電源12から負荷回路13に対して給電が行われている。
次に、第1の電源11が起動されると、トランスT11の一次巻線N11から誘起されて二次巻線N12に生じた電力は整流ダイオードD11によって半波整流され、平滑コンデンサC11に対して充電が開始される。平滑コンデンサC11の正極端子に現れる電圧V11は電圧判定回路14に印加され、次第に上昇していく。この電圧V11が規定値を上回ると、電圧判定回路14はリレー駆動信号を機械式リレー15に対して出力する。すなわち、ツェナーダイオードZD11のカソード印加電圧がツェナー電圧を超えるまでに電圧V11が上昇し、ツェナーダイオードZD11が導通する結果、リレー駆動用のトランジスタQ11のベースにバイアス用の抵抗素子R12における電圧降下による電圧が印加されてリレー駆動用のトランジスタQ11が導通する。そして、リレーの駆動コイル15aに電流が流れ、駆動コイル15aが励磁され、トランスファ接点15bの切り替わり動作が始まる。すなわち、それまでb接点に接触していた作動子dがb接点から離れ、次いで微小時間が過ぎてa接点に接触する状態へと遷移する。機械式リレー15の駆動には第1の電源11の電圧V11が用いられる。
第2の電源12がバッテリE11であって電圧精度が悪いために電圧V12が第1の電源11の電圧V11よりも高くなっているか否かには関係なく、トランスファ接点15bの切り替えが行われる。すなわち、第1の電源11の電圧V11を監視し、規定値を超えるに至ると、リレー駆動を指示する電圧判定回路14の機能が働くからである。電圧判定回路14の動作条件は、もっぱら第1の電源11の電圧V11のレベルであって、第2の電源12の電圧V12の状態には関係しない。
よって、第1の電源11を起動して、その電圧V11が規定値に達し、そのことを電圧判定回路14が検出しさえすれば、第2の電源12の給電状態から第1の電源11の給電状態へと確実に切り替えることができる。つまり、2つの逆流防止用のダイオードのカソードを出力端子に対して並列接続した上記の従来例(図2参照)とは異なり、第2の電源12の電圧V12の状態の如何にかかわりなく、第2の電源12から第1の電源11への給電切り替えを確実なものにすることができる。
トランスファ接点15bの第2の電源12側から第1の電源11側への切り替えの途中では、短時間のことではあるが、トランスファ接点15bは一時的に第1および第2のいずれの電源11,12とも繋がっていないニュートラルな状態となる。すると、シリーズレギュレータ16が電圧の低い第2の電源12の電圧V12をさらに下げた電圧V12′の状態で、出力端子24に出力する状態が生じる。つまり、ニュートラル状態が生じるとしても、出力電圧Vout が急降下して給電停止ないし給電劣化が発生するといったことは避けられ、電圧レベルの少しの低下は見られるものの、負荷回路13に対する給電の状態は継続されることになる。
トランスファ接点15bがa接点に接触するに至り、トランスファ接点15bのc接点には電圧の高い第1の電源11の電圧V11が印加されるようになり、これよりやや遅れたタイミングにおいて電圧V11は平滑コンデンサC11の満充電時の定格電圧で安定化する。
次に、再度、第1の電源11を停止させると、第1の電源11の電圧V11が次第に降下し、規定値を下回るようになって、ツェナーダイオードZD11が導通状態から非導通状態へと遷移し、バイアス用の抵抗素子R12の両端電圧が消失する結果、リレー駆動用のトランジスタQ11がターンオフする。すると、駆動コイル15aへの通電がなくなり、機械式リレー15が反転動作して、それまで第1の電源11側のa接点に繋がっていたトランスファ接点15bを第2の電源12側のb接点に切り替える動作を開始する。この切り替え動作中においても上記同様のニュートラル状態が生じるが、シリーズレギュレータ16の働きにより、電圧レベルの少しの低下は見られるものの、出力端子24に対する給電の状態は継続されることになる。トランスファ接点15bがb接点に接触し、シリーズレギュレータ16の電圧V12′に代わって、第2の電源12の電圧V12が出力される。
以上において、第1の電源11あるいは第2の電源12と出力端子24とを結ぶ線路に挿入されるのはトランスファ接点15bであり、これは従来例の場合のダイオードと比べると抵抗値が実質的にゼロか極めて小さいものであるから、電源切替回路Aでの電力損失は大幅に低減される。加えて、給電主体を第2の電源12から第1の電源11に切り替える条件として、電圧判定回路14による第1の電源11の電圧V11が規定値を超えることであるので、第2の電源12の電圧V12の状態からは影響を受けないで済む。すなわち、第2の電源12が相対的に電圧精度の悪いバッテリであって、第1の電源11よりも高い電圧を出力する事態に対しても、第2の電源12から第1の電源11への確実な切り替えのために、小型化、コスト面で不利な降圧回路を用いる必要がなく、簡易に対応することが可能である。
しかし、図3に示す電源切替回路にあっては、機械式リレー15並びにそれの動作を制御する電圧判定回路14、および機械式リレーに特有の切り替え動作中のニュートラル状態解消のためのシリーズレギュレータ16などが必要で、回路構成の複雑化、コストの大幅高騰、スペース増大化などの課題がある。
図3のリレー方式の先行技術に比べると図2のダイオードORの従来例の場合は、回路構成が簡易であり、コスト面もスペース面も有利である。しかし、すでに説明したとおり、異常上昇した第2の電源70の電圧V70がフィードバック回路80に印加されることによって生じる障害(フィードバック信号の異常のためにスイッチング素子Q61ひいては第1の電源60の不測の停止)を回避する必要がある。そして、その回避のためのダイオードOR構成ゆえに損失が大きいという課題がある。
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、電源切替回路に関してダイオードORにおける逆流防止用のダイオードでの電力損失の低減化を図るとともに、簡易かつ小型の回路構成で、第1の電源(メインの電源)の一次側でのスイッチング動作の安定性を確保(スイッチング動作の不測停止を予防)できるようにすることを目的としている。
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
本発明による電源切替回路は、
トランスの一次巻線に接続されたスイッチング素子に対するスイッチング制御を行う制御部と、
前記トランスの二次巻線に接続されたメインの整流平滑回路で構成され、出力端子に第1の電圧を供給する第1の電源と、
前記出力端子に繋がる前記第1の電源の出力ラインに対して逆流防止用のダイオードを介してワイヤードOR接続され、前記第1の電圧よりも低い第2の電圧を前記出力端子に供給する第2の電源と、
前記逆流防止用のダイオードを介しての前記第2の電源からの電流流入を規制する状態で前記トランスの二次巻線に接続された補助の整流平滑回路と、
前記補助の整流平滑回路の出力電圧を駆動源としてその出力電圧の変化を監視し、所定の規定値を超えたときにフィードバック信号を生成して前記制御部に負帰還するフィードバック回路とを備え、
前記第2の電源は、前記トランスの前記一次巻線に対して非接続で、前記一次巻線の電圧に対して独立した電圧を前記第2の電圧として前記出力端子に供給するように構成されていることを特徴としている。
上記構成の本発明の電源切替回路においては、第1の電源と第2の電源のワイヤードOR接続において、第2の電源からの第2の電圧は逆流防止用のダイオードを介して出力端子に供給されるのに対して、第1の電源からの第1の電圧は逆流防止用のダイオードを介することなく出力端子に供給される。それは、補助の整流平滑回路をトランスの二次巻線に接続するに際して、第2の電源からの電流流入を規制する状態での接続としていることから、逆流防止用のダイオードを介挿する必要がないからである。この第1の電源側の逆流防止用のダイオードの省略により、そのダイオードで消費される分に相当する電力の損失を低減することが可能となる。
上記のとおり、補助の整流平滑回路をトランスの二次巻線に接続するに際して第2の電源からの電流流入を規制する状態での接続としているため、第2の電源がバッテリであるなど、トランスの一次巻線に対して非接続で、一次巻線の電圧に対して独立した電圧を第2の電圧として出力端子に供給するものとして構成されているといった理由から電圧精度が悪くて第2の電圧が不測に第1の電圧よりも高くなった場合においても、その高い電圧の第2の電源による電流が補助の整流平滑回路およびフィードバック回路に流入することはない。したがって、第2の電圧が異常上昇したとしても、そのことが原因となって一次側のスイッチング素子に対するスイッチング制御が不測に停止してしまうといった不具合は生じない。すなわち、メインの電源の一次側でのスイッチング動作の安定性が確保される。
上記構成の電源切替回路において、第2の電源からの電流流入を規制する構成としては、次の構成が好ましい。すなわち、メインの整流平滑回路は整流ダイオードを有し、その整流ダイオードがトランス出力に誘起された交流電圧を整流するとともに、第2の電源からの電流流入を規制することが好ましい。
本発明によれば、ダイオードORにおける一方の逆流防止用のダイオードの省略により電力損失の低減化を図れるとともに、第1の電源(メインの電源)の一次側でのスイッチング動作の不測の停止を防止してその動作の安定性を確保することができる。加えて、リレー等のパワー部品を用いて損失低減を図る場合に比べ、構成がシンプルであり、コストの低廉化およびスペースの削減化に有利である。
以下、上記構成の本発明の電源切替回路につき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
図1は本発明の実施例における電源切替回路の構成を示す回路図である。図1において、100は一次側入力回路、200は二次側出力回路、300は一次側入力回路100と二次側出力回路200とを電気絶縁的に接続するトランス(パルス変成器)である。
一次側入力回路100の構成要素として、1は出力電圧制御回路、Q1はスイッチング素子(トランジスタ)、PtはフォトカプラPCにおけるフォトトランジスタである。スイッチング素子Q1はトランス300の一次巻線N1に接続されている。出力電圧制御回路1の制御出力はスイッチング素子Q1の制御端子(ベース)に接続されている。フォトトランジスタPtは出力電圧制御回路1の検出端子に接続されている。
一次側入力回路100は出力電圧制御回路1がスイッチング素子Q1を制御することにより交流電力をトランス300に誘起する機能を有しているもので、スイッチング素子Q1のオンデューティを制御して二次巻線N2に現れる電圧の調整を行うように構成されている。
二次側出力回路200の構成要素として、10は電圧の高い第1の電源、20は電圧の低い第2の電源、30は補助の整流平滑回路、40は出力電圧制御回路1に対して負帰還を行うフィードバック回路、50は出力端子である。400は負荷回路である。
第1の電源10はトランス300の二次巻線N2に接続されたメインの整流平滑回路で構成され、第1の電圧V10を出力端子50に供給する。その第1の電源10であるメインの整流平滑回路は、トランス300の二次巻線N2に整流ダイオードD1と平滑コンデンサ(電解コンデンサ)C1とが直列に接続されて構成されている。すなわち、二次巻線N2の一端に整流ダイオードD1のアノードが接続され、そのカソードが平滑コンデンサC1の正極端子に接続され、平滑コンデンサC1の負極端子がグランドラインGLを介して二次巻線N2の他端に接続されている。
第2の電源20は、第1の電源10における整流ダイオードD1と平滑コンデンサC1の接続点n1から延出された出力ラインL1に対して、逆流防止用の一方向性通電素子としてのダイオードD22を介してワイヤードOR接続されている。その接続点がn2である。第1の電源10からの出力ラインL1にはダイオードORのダイオード(図2の従来例の逆流防止用のダイオードD91に相当)はなく、接続点n2に直接に接続されている。
第2の電源20は、典型的にはバッテリ(蓄電池)E1で構成され、第1の電圧よりも低い第2の電圧V20を出力端子50に供給する。第2の電源20の正極端子に逆流防止用のダイオードD22のアノードが接続され、そのカソードが電圧の高い第1の電源20からの出力ラインL1にワイヤードOR接続され、そのワイヤードORの接続点n2に出力端子50が接続されている。
補助の整流平滑回路30は逆流防止用のダイオードD22を介しての第2の電源20からの電流流入を規制する状態でトランス300の二次巻線N2に接続されている(詳しくは後述する)。
フィードバック回路40は補助の整流平滑回路30の出力電圧を駆動源としてその出力電圧の変化を監視し、規定値を超えたときにフィードバック信号を生成して出力電圧制御回路1に負帰還するように構成されている。
補助の整流平滑回路30はその構成要素として、整流ダイオードD2、抵抗素子R1および平滑コンデンサ(電解コンデンサ)C2を有している。整流ダイオードD2はそのアノードが整流ダイオードD1のアノードに接続され(接続点n0)、そのカソードが抵抗素子R1の一端に接続されている。抵抗素子R1の他端は平滑コンデンサC2の正極端子に接続され、平滑コンデンサC2の負極端子はグランドラインGLに接続されている。抵抗素子R1と平滑コンデンサC2の接続点n3が補助の整流平滑回路30の出力端子となっている。
以上の説明で明かなように、補助の整流平滑回路30はメインの整流平滑回路(第1の電源10)とともにトランス300の二次巻線N2に並列に接続されているが、補助の整流平滑回路30の出力端子はメインの整流平滑回路とは異なり、負荷回路400への出力端子50とは繋がっていない。すなわち、補助の整流平滑回路30は出力端子50へ電流を供給しないようになっている。
補助の整流平滑回路30の出力端子とグランドラインGLとの間にフィードバック回路40が接続されている。フィードバック回路40はその構成要素として、抵抗素子R2,R3,R4,R5、シャントレギュレータSR1、フォトカプラPCにおける発光ダイオードLE1を備えている。接続点n3とグランドラインGLとの間に抵抗素子R2,R3の直列回路が接続されている。その直列回路の両端間に抵抗素子R4,R5およびシャントレギュレータSR1の直列回路が接続されている。シャントレギュレータSR1は、そのアノードがグランドラインGLに接続され、カソードが抵抗素子R5に接続され、リファレンス端子が抵抗素子R2,R3の接続点n4に接続されている。そして、抵抗素子R5の両端間にフォトカプラPCにおける発光ダイオードLE1が接続されている。発光ダイオードLE1は、そのアノードが抵抗素子R4,R5の接続点に接続され、そのカソードがシャントレギュレータSR1のカソードに接続されている。
フォトカプラPCにおけるフォトトランジスタPtは出力電圧制御回路1とグランドラインとの間に挿入されている。
出力電圧制御回路1は、発光ダイオードLE1からの出射光を入射したフォトトランジスタPtが導通することに応答してスイッチング素子Q1のオンデューティを減少させる一方、発光ダイオードLE1からの出射光が遮断されたフォトトランジスタPtが遮断することに応答して出力電圧制御回路1はスイッチング素子Q1のオンデューティを増加させるように構成されている。
以上の説明で明かなように、フィードバック回路40の駆動電源は補助の整流平滑回路30であり、補助の整流平滑回路30の出力端子(接続点n3)は負荷回路400への出力端子50とは繋がっておらず、かつ補助の整流平滑回路30の入力端子(接続点n0)は出力端子50に対してはメインの整流平滑回路(第1の電源10)における整流ダイオードD1を逆流防止用のダイオードに兼用する状態での接続の態様となっている。したがって、フィードバック回路40における電圧検出回路部(抵抗素子R2,R4の直列回路)は第2の電源20の電圧(第2の電圧)V20の変動の影響を受けない回路構成となっている。
補助の整流平滑回路30の入力端子(整流ダイオードD2のアノード。接続点n0)が第1の電源10の整流ダイオードD1のアノードから並列に分岐された構成であるため、補助の整流平滑回路30の入力端子である接続点n0と出力端子50に繋がる接続点n2との間で整流ダイオードD1が第2の電源20に対して逆流防止の機能を果たしている。
本実施例においては、このような接続構成をもって、〈逆流防止用のダイオードD22を介しての第2の電源20からの電流流入を規制する状態でトランス300の二次巻線N2に接続された補助の整流平滑回路30〉の構成が実現されている。
第1の電源10の電圧(第1の電圧)V10と、補助の整流平滑回路30の電圧V30と、フィードバック回路40における抵抗素子R3の両端に現れる検出電圧V40とは互いに相関関係をもっている。第1の電源10の定格電圧をVr10、第2の電源20の定格電圧をVr20とする(Vr10>Vr20)。
フィードバック回路40および補助の整流平滑回路30において、第1の電圧V10が定格電圧Vr10を超えるときに、検出電圧V40がシャントレギュレータSR1の基準電圧Vrefを超えることになるように、各抵抗素子の抵抗値が設定されている。
次に、上記のように構成された電源切替回路の動作を説明する。
いま、電圧の高い第1の電源10が停止状態にあり、第1の電圧V10はゼロレベルになっているとする。このとき、補助の整流平滑回路30およびフィードバック回路40は不動作である。そして、電圧の低い第2の電源20から負荷回路400に対して給電が行われている。
次に、第1の電源10が起動されたとする。このとき、トランス300において、その一次巻線N1から誘起されて二次巻線N2に生じた電力は第1の電源10における整流ダイオードD1によって半波整流され、平滑コンデンサC1に対して充電が開始される。
同時に補助の整流平滑回路30において、整流ダイオードD2と抵抗素子R1を介して平滑コンデンサC2への充電が開始され、その正極端子に現れる電圧V30が次第に上昇していく。上昇中の第1の電圧V10が第2の電圧V20より低い間は、負荷回路400に対しては第2の電源20からの出力電流が供給され続ける。
なお、平滑コンデンサC2の充電初期においては、フィードバック回路40におけるシャントレギュレータSR1は非導通の状態にある。それは、抵抗素子R3の両端に現れる検出電圧V40がシャントレギュレータSR1の基準電圧Vrefを下回っているからである。
平滑コンデンサC1への充電継続に伴って第1の電圧V10が上昇し、第2の電圧V20を上回ると、第2の電源20の正極端子に繋がる逆流防止用のダイオードD22が遮断され、負荷回路400に対しては第2の電圧V20に代わって第1の電圧V10による電流が供給されるようになる。すなわち、負荷回路400に対して第2の電圧V20よりも高い電圧の第1の電圧V10が印加される。
第1の電源10における平滑コンデンサC1への充電がさらに進み、第1の電圧V10が定格電圧Vr10を超え、それに応動してフィードバック回路40において検出電圧V40がシャントレギュレータSR1の基準電圧Vref(第1の電源10の定格電圧Vr10に対応)を超えると、それまで遮断状態にあったシャントレギュレータSR1が導通する。これにより、抵抗素子R4,R5に電流が流れ、抵抗素子R5の両端電圧によってフォトカプラPCの発光ダイオードLE1が点灯し、一次側入力回路100における出力電圧制御回路1に繋がるフォトトランジスタPtに対してフィードバック信号が光信号として出射される。このフィードバック信号により出力電圧制御回路1はスイッチング素子Q1に対するデューティ比を減少させる制御を行う。すなわち、第1の電圧V10の上昇が抑えられ、定格電圧Vr10に収束する。つまり、第1の電圧V10が定格電圧Vr10を超えるとスイッチング素子Q1のデューティ比が減らされ、結果的に第1の電圧V10は定格電圧Vr10に落ち着く。
第2の電源20に代わって第1の電源10が負荷回路400に電流を供給するようになると、第1の電源10による供給電流は第2の電源20による供給電流よりも大きくなるが、第1の電源10と負荷回路400との間にはワイヤードORの部分に従来例のような逆流防止用のダイオード(図2の符号D91参照)が存在していないため、損失が大幅に低減される。
いま、第2の電源20がバッテリE1であるなどの理由から電圧精度が悪いために、不測にその電圧V20が第1の電圧V10(定格電圧Vr10)よりも高くなっているとする。すると、ワイヤードORの接続点n2に対する第1の電源10からの出力ラインL1上でワイヤードORの接続点n2の直前の逆流防止用ダイオードを省略していることから、第1の電圧V10(定格電圧Vr10)よりも不測に高くなっている第2の電圧V20による電流がワイヤードORの接続点n2より補助の整流平滑回路30およびフィードバック回路40の側に流入しようとする。
ところが、本発明の実施例にあっては、補助の整流平滑回路30の入力端子(接続点n0)は出力端子50に対してはメインの整流平滑回路(第1の電源10)における整流ダイオードD1を逆流防止用のダイオードに兼用する状態での接続とされ、フィードバック回路40における電圧検出回路部は第2の電圧V20の変動の影響を受けない回路構成となっている。したがって、上記の第2の電源20からの電流は第1の電源10における整流ダイオードD1によって補助の整流平滑回路30およびフィードバック回路40への流入が阻止される。すなわち、第2の電圧V20が過剰に高いことによる、補助の整流平滑回路30における平滑コンデンサC2の電圧V30の過剰上昇は防止される。
よって、第2の電源20の電圧精度が悪いことに起因して、不測に第2の電圧V20が第1の電圧V10より高くなったとしても、その過剰に高い第2の電圧V20がフィードバック回路40に影響を与えることがなく、出力電圧制御回路1によるスイッチング素子Q1の不測のスイッチング停止は起こらない。
再び第1の電源10が停止して第1の電圧V10が時間経過とともに降下し、それが第2の電圧V20よりも低くなると、負荷回路400に対する出力電流は第2の電源20からの供給となり、第1の電源10からの出力電流はゼロとなる。そして、スイッチング素子Q1は、一次側入力回路100における入力電解コンデンサが所定レベルに放電するまでスイッチング動作を継続する。
いま、第1の電源10からの出力ラインL1に逆流防止用のダイオードがないことを前提にして、補助の整流平滑回路30がなくてフィードバック回路40の駆動電源がメインの整流平滑回路(第1の電源10)から供給されていると仮定する。この場合に、不測に第2の電圧V20が第1の電圧V10より高くなって一次側入力回路100のスイッチングが停止したとすれば、入力電解コンデンサが所定レベルにまで放電するのに長い時間を要することから、第1の電源10の復帰動作に長い時間がかかってしまうことになる。
しかしながら、本実施例にあっては、フィードバック回路40は補助の整流平滑回路30から駆動電源が供給される構成となっていて第2の電圧V20の異常上昇の影響を受けないため、一次側入力回路100のスイッチングが停止することがなく、入力電解コンデンサの放電が速やかに行われ、第1の電源10が復帰動作も速やかに行われる。
なお、上記の実施例において、スイッチング素子Q1としてバイポーラトランジスタが例示されているが、MOS-FET(金属酸化物半導体による電界効果トランジスタ)など他の種類のスイッチング素子を用いても構わない。
また、上記の実施例において、フォトカプラPCとして発光ダイオードとフォトトランジスタの組み合わせが例示されているが、広くは、電気的な絶縁状態で空間的に対向配置された半導体の駆動素子(発光素子など)と被駆動素子(受光素子など)からなり、駆動素子が送信する電磁的信号を被駆動素子が受信するように構成された絶縁型信号伝達素子を用いても構わない。