以下、本発明に係る排ガス処理装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本実施形態に係る排ガス処理装置を表す概略構成図である。図1に示すように、排ガス処理装置10は、脱硫システム40と、脱硝装置48とを備えている。排ガス処理装置10は、船舶に搭載されて使用されるディーゼルエンジン(舶用エンジン)11から排出される排ガスを処理するものであり、排ガス中の有害物質として、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、未燃成分、煤塵などを低減したり、除去したりするものである。この場合、ディーゼルエンジン11は、船舶の主機関や発電装置などとして使用されるものである。
ディーゼルエンジン11は、シリンダ部12の一方側に掃気トランク13が配置され、他方側に排気マニホールド14が配置されて構成されている。シリンダ部12は、複数(本実施形態では、6個)のシリンダ21が直列に配置されている。この各シリンダ21は、図示しないが、内部にピストンがそれぞれ上下に往復動自在に設けられることで、燃焼室が形成される。そして、各ピストンは、下部がクランク軸に連結されている。
掃気トランク13は、シリンダ部12の各シリンダ21と吸気ポート22を介して連結されている。排気マニホールド14は、シリンダ部12の各シリンダ21と排気ポート23を介して連結されており、各排気ポート23に排気弁(図示略)が設けられている。そして、掃気トランク13は、吸気経路L1が連結され、排気マニホールド14は、排気経路L2が連結されている。また、シリンダ部12は、各シリンダ21の内部に燃料(例えば、重油など)を噴射するインジェクタ24がそれぞれ設けられており、各インジェクタ24は、図示しない燃料タンクに連結されている。
そのため、シリンダ部12は、燃焼室に各インジェクタ24から供給された燃料と、掃気トランク13から各吸気ポート22を介して供給された燃焼用ガス(例えば、空気)が供給され、混合して圧縮されることで燃焼する。そして、この燃焼で発生したエネルギにより各ピストンが上下動し、各ピストンの下端部が連結されたクランク軸を回転させる。一方、燃焼によって生じた排ガスは、排気ポート23を介して排気マニホールド14に排出される。
ディーゼルエンジン11は、排気タービン過給機31が設けられている。排気タービン過給機31は、コンプレッサ32とタービン33が回転軸34を介して同軸上に連結されて構成されており、コンプレッサ32とタービン33は、回転軸34により一体回転することができる。コンプレッサ32は、外部から空気等を吸気する吸気経路L3が連結されると共に、掃気トランク13に至る吸気経路L1が連結されている。タービン33は、排気マニホールド14に至る排気経路L2が連結されると共に、外部に排気する排気経路L4が連結されている。なお、吸気経路L1は、コンプレッサ32により圧縮された空気を冷却する空気冷却器35が設けられている。
そのため、タービン33は、排気マニホールド14から排気経路L2を通して導かれた排ガス(燃焼ガス)によって駆動し、コンプレッサ32を駆動した後、排ガスを排気経路L4から外部に排出する。一方、コンプレッサ32は、タービン33により駆動し、吸気経路L3から吸気した空気を圧縮した後、圧縮空気を吸気経路L1から掃気トランク13に圧送する。
排気経路(流路)L4は、排気マニホールド14から排出されてタービン33を駆動した排ガスを外部に排出する。排ガス処理装置10は、この排気経路L4から排気ガスの流動方向の下流側に設けられる。図1に記載のように、本実施形態の排ガス処理装置10は、乾式脱硫システム40を構成する後述の分級器43とバグフィルタ44との間に、脱硝装置48が配置されている。
図2は、本実施形態に係る脱硫システム40の一例を示す図である。図1及び図2に示すように、脱硫システム40は、いわゆる乾式の脱硫システムであり、脱硫反応器(反応器)41及び42と、分級器43と、バグフィルタ44と、供給配管45と、脱硫剤供給部46と、脱硫剤回収部47とを有している。乾式脱硫システム40は、排ガスの流れ方向下流側に向けて、脱硫反応器41及び42と、分級器43と、バグフィルタ44とが順に設けられている。なお、図2では、分級器43とバグフィルタ44との間に配置される脱硝装置48の図示を省略している。ここで、乾式の脱硫システムは、固体(粒子)状の脱硫剤を排ガス中に供給し、脱硫剤を排ガス中の硫黄酸化物と反応させて除去する排煙脱硫システムである。したがって、脱硫システム40では、脱硫剤の反応に水分が用いられないため、硫黄酸化物を含んだ排水処理が不要となる。脱硫システム40は、以下の湿式及び半乾式の脱硫システムと区別される。湿式の脱硫システムは、脱硫剤を溶解又は分散させた水溶液層又はスラリー層に排ガスを供給し、脱硫剤を排ガス中の硫黄酸化物と反応させて除去する排煙脱硫システムである。湿式の脱硫システムとしては、例えば、石灰−石膏法や水酸化マグネシウム法、ソーダ法等のプロセスを行う装置が挙げられる。また、半乾式の乾式脱硫システムは、脱硫剤と水とを混合させたスラリーを排ガス中に噴霧し、脱硫剤を硫黄酸化物と反応させて除去する排煙脱硫システムである。半乾式の脱硫システムとしては、例えば、消石灰スラリーをスプレードライヤー内に噴霧する装置等が挙げられる。なお、脱硫システム40は、排ガスの流れ方向の上流側から下流側に向けて、脱硫反応器41及び42、分級器43、及びバグフィルタ44の順に並んでいる。
図2に示すように、脱硫反応器41及び42は、排気経路L4に対して並列に接続されている。具体的には、排気経路L4は、排気経路L41と排気経路L42とに分岐されている。一方の排気経路L41には脱硫反応器41が接続され、他方の排気経路L42には脱硫反応器42が接続されている。
排気経路L41には、第1バルブ(流量調整部)41aが設けられている。第1バルブ41aは、排気経路L41を流れて脱硫反応器41に導入される排ガスの流量を調整する。また、排気経路L42には、第2バルブ(流量調整部)42aが設けられている。第2バルブ42aは、排気経路L42を流れて脱硫反応器42に導入される排ガスの流量を調整する。
第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度は、バルブ制御部(調整量制御部)VCによって調整される。バルブ制御部VCは、第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度を個別に制御可能である。バルブ制御部VCは、例えば、ディーゼルエンジン11から排出される排ガスの流量に応じて第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度を制御する。なお、排ガスの流量は、ディーゼルエンジン11の酸素濃度と、燃焼室に供給された燃料の供給量(エンジン負荷)とに基づいて算出可能である。
また、バルブ制御部VCは、第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度をゼロにする(閉塞する)ことが可能である。第1バルブ41aが閉塞された場合、排気経路L41には排ガスが流れず、脱硫反応器41には排ガスが導入されない。同様に、第2バルブ42aが閉塞された場合、排気経路L42には排ガスが流れず、脱硫反応器42には排ガスが導入されない。
続いて、脱硫反応器41は、筐体51と、分散板(支持部)53と、を有している。筐体51には、排ガス入口52と、排ガス出口54とが形成されている。筐体51は、例えば箱型に形成され、内部Kが中空状になっている。排ガス入口52は、例えば筐体51の下部に設けられる。排ガス入口52は、排気経路L4に接続されている。排ガス入口52は、排気経路L4を流れる排ガスを筐体51の内部Kに導入する。排ガス出口54は、筐体51の上部に設けられる。排ガス出口54は、排気経路L5に接続される。
分散板53は、排ガス入口52の上方を塞ぐように筐体51の内部Kに配置される。分散板53により、内部KはチャンバK1と流動部K2とに分割されている。チャンバK1は、分散板53の下方に形成される。流動部K2は、分散板53の上方に形成される。流動部K2には、固体粒子状の流動材P1と脱硫剤P2とを含む粒状物Pが貯留される。
流動材P1は、固体粒子状であり排ガスが所定の流速の場合に流動可能である。流動材P1としては、例えばケイ砂、ドロマイト、石灰石などが用いられる。流動材P1の平均粒径は、排ガスの流れによって流動層を形成するように設定されている。ここで、平均粒径とは、粒度分布測定装置を用いてJIS Z 8825に準拠したレーザ光による光回折散乱法によって測定される50%径の値である。
脱硫剤P2は、排ガスの流れによって流動材P1と共に流動するように固体粒子状に形成される。脱硫剤P2は、排ガスに含まれる硫黄酸化物と反応し、排ガスから硫黄酸化物を除去する。脱硫剤P2としては、例えばアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物などが用いられる。
また、分散板53は、排ガスを通過させ、かつ上記の粒状物Pを通過させないように多孔形状に形成される。したがって、分散板53は、排ガス入口52から筐体51内に導入された排ガスをチャンバK1から流動部K2側に通過させると共に、流動部K2に収容された粒状物PがチャンバK1側に落下することを防いでいる。
また、脱硫反応器42は、脱硫反応器41と同一構成となっている。したがって、脱硫反応器41と脱硫反応器42とは、容積及び内部形状が同一である。なお、図示及び詳細な説明を省略するが、脱硫反応器42は、脱硫反応器41と同様に、筐体51、排ガス入口52、分散板53及び排ガス出口54を有し、筐体51の内部KにはチャンバK1及び流動部K2が形成されている。
排気経路L5は、脱硫反応器41及び42から排出された排ガスを後流側(分級器43側)へと流通させる。
分級器43は、脱硫反応器41及び42よりも排ガスの流れ方向下流側に配置されている。分級器43は、排気経路L5を介して脱硫反応器41及び42に接続されている。分級器43は、排ガスに含まれる流動材P1と脱硫剤P2とを分離する。また、分級器43は、分離した流動材P1を回収して脱硫反応器41及び42に供給し、脱硫剤P2及び排ガスを下流側に排出する。分級器43としては、例えばサイクロンが用いられる。分級器43は、排ガス入口61と、排ガス出口62と、流動材回収部63とを有している。排ガス入口61は、排気経路L5に接続され、脱硫反応器41及び42からの排ガスを導入する。排ガス出口62は、分級器43の上部に設けられ、排気経路L6に排ガスを排出する。流動材回収部63は、排ガスから流動材P1を分離し、当該分離された流動材P1を供給配管45に排出する。
供給配管45は、分級器43と、脱硫剤供給部46とに接続されている。供給配管45は、分級器43から排出される流動材P1を脱硫反応器41及び42に供給する。また、供給配管44は、後述する脱硫剤供給部46から供給される脱硫剤P2を脱硫反応器41及び42に供給する。供給配管45は、ダウンカマー45a及び45bを有している。ダウンカマー45aは、脱硫反応器41の流動部K2に接続されている。ダウンカマー45bは、脱硫反応器42の流動部K2に接続されている。供給配管45は、ダウンカマー45a及び45bを介して各脱硫反応器41及び42の流動部K2に粒状物Pを供給する。なお、排気経路L5と、分級器43の排ガス入口61及び流動材回収部63と、供給配管45と、ダウンカマー45a及び45bとによって、流動材循環部Rが形成されている。流動材循環部Rは、脱硫反応器41及び42の流動部K2から排出された排ガスに含まれる流動材P1を、それぞれ脱硫反応器41及び42の流動部K2に循環させる経路である。
脱硫剤供給部46は、供給配管45に脱硫剤P2を供給する。脱硫剤供給部46は、供給量調整部46aを有する。供給量調整部46aは、ディーゼルエンジン11から排出される排ガスの流量に応じて、脱硫剤P2の供給量を調整する。なお、当該排ガスの流量の値としては、流動材P1の平均粒径(アルキメデス数)を設定する場合と同様に、ディーゼルエンジン11の酸素濃度と、燃焼室に供給された燃料の供給量とに基づいて算出される値を用いることができる。供給量調整部46aとして、例えば流量調整弁などが設けられてもよい。
バグフィルタ44は、排気経路L6、脱硝装置48及び排気経路L7を経由して分級器43に接続されている。分級器43とバグフィルタ44との間に脱硝装置48が配置されていることで、乾式脱硫システム40は、脱硝装置48よりも排ガスの流れ方向下流側にバグフィルタ44が配置される。このため、例えば脱硝装置48における脱硝に必要な排ガス温度よりも低い耐熱温度のバグフィルタ44についても使用可能となっている。なお、例えば脱硝装置48における脱硝に必要な排ガス温度よりも高い耐熱温度を有するバグフィルタ44を用いる場合、当該バグフィルタ44が脱硝装置48よりも排ガスの流れ方向上流側に配置された構成であってもよい。バグフィルタ44は、排ガス中の未燃成分や煤塵などを低減または除去して、排気経路L7に排ガスを排出する。バグフィルタ44は、排ガス入口71と、フィルタ部72と、排ガス出口73とを有している。排ガス入口71は、排気経路L6に接続され、排ガスを導入する。フィルタ部72は、排ガス中の未燃成分や煤塵などを捕捉する。また、フィルタ部72は、バグフィルタ44に導入された排ガスから脱硫剤P2を捕捉する。排ガス出口73は、排気経路L7に接続され、フィルタ部72を介した排ガスを排出する。
また、バグフィルタ44には、脱硫剤回収部47が設けられている。脱硫剤回収部47は、例えばフィルタ部72によって捕捉された脱硫剤P2を回収する。脱硫剤回収部47は、受部74と、配管75と、タンク部76とを有している。受部74は、フィルタ部72によって捕捉されて落下した脱硫剤P2を受ける。配管75は、受部74とタンク部76とを接続し、受部74に落下した脱硫剤P2をタンク部76に送る。タンク部76は、配管75を介して送られた脱硫剤P2を貯留する。
また、図1に示すように、脱硝装置48は、分級器43とバグフィルタ44との間に配置され、排気経路L6から送られた排ガス中の窒素酸化物を減少または除去して、当該排ガスを排気経路L7に排出する。
また、排ガス処理装置10は、排ガスを掃気トランク13に戻す排ガス再循環経路L9を有する。排ガス再循環経路L9は、排気経路L8と吸気経路L3の間を接続している。排ガス再循環経路L9は、排気ガスの導入量を調整する流量調整弁50が設けられている。コンプレッサ32は、吸気経路L3から吸気した空気と排ガス再循環経路L9から導入された排気再循環ガスの混合ガスを圧縮する。
次に、上記の排ガス処理装置10の動作を説明する。図1に示すように、ディーゼルエンジン11において燃焼で生じた排ガスは、排気ポート23を介して排気マニホールド14に排出され、排気経路L2に排出される。この排ガスは、排気タービン過給機31に導入され、タービン33及びコンプレッサ32を駆動した後に排気経路L4に排出される。また、吸気経路L3からコンプレッサ32に吸気された空気は、コンプレッサ32によって圧縮され、燃焼用ガスとして吸気経路L1から掃気トランク13に圧送される。ディーゼルエンジン11は、動作開始(負荷0%)から徐々に負荷を増加させ、所定時間経過後には100%の負荷で運転を行う。このディーゼルエンジン11の負荷が増加するのに伴い、ディーゼルエンジン11から排出される排ガスの単位時間当たりの流量が増加する。
排気経路L4に排出された排ガスは、脱硫システム40に導入される。この排ガスは、第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度に応じて排気経路L41及びL42から脱硫反応器41及び42に導入される。バルブ制御部VCは、排ガスの単位時間当たりの流量、つまりディーゼルエンジン11の負荷に応じて第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度を調整する。以下、バルブ制御部VCによる第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度制御の一例を説明する。なお、バルブ制御部VCの開度制御は、以下の説明に限定されるものではない。
図4は、ディーゼルエンジン11の負荷と、脱硫反応器41及び42のそれぞれに導入される単位時間当たりの排ガスの流量の変化との関係を示すグラフである。なお、以下では、脱硫反応器41に導入される単位時間当たりの排ガスの流量を「第1流量」と表記し、脱硫反応器42に導入される単位時間当たりの排ガスの流量を「第2流量」と表記する。また、ディーゼルエンジン11の負荷については、単に「負荷」と表記する。また、以下では、ディーゼルエンジン11が、例えば出力10MWクラスの小型エンジンである場合を例に挙げて説明する。
図4に示すように、ディーゼルエンジン11が始動した後、負荷が60%に到達するまでは、脱硫反応器41にのみ排ガスが導入されるようにする。したがって、バルブ制御部VCは、負荷が60%に到達するまでは、第2バルブ42aを閉塞させた状態とする。図5は、脱硫システム40において第2バルブ42aを閉塞させた状態を示す図である。図5に示すように、第1バルブ41aのみが開いた状態となる場合、排気経路L4に到達した排ガスは、排気経路L42には流れず、排気経路L41にのみ流れる。
また、ディーゼルエンジン11の始動から負荷が60%に到達するまでの期間において、バルブ制御部VCは、第1流量が負荷に比例して大きくなるように第1バルブ41aの開度を調整する。この場合、バルブ制御部VCは、負荷が例えば40%に到達するまでに脱硫反応器41の流動材P1が循環流動層を形成するように、第1バルブ41aの開度を調整する。
具体的には、バルブ制御部VCは、第1流量が図5に示す閾値α1よりも大きく、かつ閾値α2よりも小さい値となるように、第1バルブ41aの開度を調整する。ここで、閾値α1は、脱硫反応器41(及び脱硫反応器42)において流動材P1が循環流動層を形成するために必要な排ガス流量の下限値である。第1流量が閾値α1を下回る場合、脱硫反応器41(及び脱硫反応器42)の流動材P1は循環流動層を形成せず、固定層又は気泡型流動層を形成した状態となる。また、この閾値α2は、脱硫反応器41(及び脱硫反応器42)において流動材P1が循環流動層を形成するために必要な排ガス流量の上限値である。第1流量が閾値α2を超えると、脱硫反応器41(及び脱硫反応器42)の流動材P1は循環流動層を形成せずに飛散する。
負荷が60%に到達した後、脱硫反応器42に対しても排ガスの導入を開始させる。つまり、ディーゼルエンジン11から排出される排ガスの流量が増加し、排ガスを供給する脱硫反応器の数を増加させる。この場合、現在排ガスを供給している脱硫反応器41に供給する排ガスの流量を、流動層(循環流動層)が形成される流量で維持しつつ、新たに排ガスを供給する脱硫反応器42に供給する排ガスの量を増加させる。この場合、脱硫反応器41に供給する排ガスの流量を流動層が形成される流量の範囲で減少させつつ、脱硫反応器42に供給する排ガスの量を増加させる。具体的には、バルブ制御部VCは、第1流量の値が例えば負荷40%時の値と等しい値まで減少するように、第1バルブ41aの開度を減少させる。この場合、第1流量は閾値α1を上回るため、脱硫反応器41では循環流動層が形成された状態が維持される。そして、バルブ制御部VCは、第1バルブ41aの開度減少と同時に、第2バルブ42aを開き、脱硫反応器42に対して排ガスの導入を開始させる。このとき、バルブ制御部VCは、第2流量が第1流量の半分程度の値になるように第2バルブ42aの開度を調整する。
負荷が60%に到達し、第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度調整を行った後、バルブ制御部VCは、負荷が80%に到達するまで、第1流量の値が一定となるように第1バルブ41aの開度を一定に維持する。一方、バルブ制御部VCは、第2バルブ42aの開度を徐々に増加させ、負荷が80%に到達する際に第2流量の値が第1流量と等しくなるようにする。
負荷が80%に到達し、第1流量と第2流量とが等しくなった後、バルブ制御部VCは、負荷が100%に到達するまで、第1流量及び第2流量がそれぞれ閾値α2を超えない範囲で等しい割合で上昇するように、第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度を調整する。このように第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度を調整することにより、排ガスは、脱硫反応器41及び脱硫反応器42に対して分散されて導入される。
続いて、脱硫反応器41において、排ガスは、排ガス入口52からチャンバK1に導入され、分散板53を介して流動部K2に導入される。同様に、脱硫反応器42において、排ガスは、排ガス入口52からチャンバK1に導入され、分散板53を介して流動部K2に導入される。そして、脱硫反応器41及び42の各流動部K2に導入された排ガスは、上方に流れて排ガス出口54から排気経路L5に排出される。
排気経路L5に排出された排ガスは、分級器43を経由して排気経路L6に排出され、バグフィルタ44に導入される。バグフィルタ44に導入された排ガスは、フィルタ部72によって異物が除去され、排気経路L7に排出される。このようにして、排ガスが脱硫システム40を通過する。
このとき、脱硫反応器41及び42では、排ガスが供給されることで、分散板53に支持された流動材P1が流動化する。また、流動材P1の流動化により、脱硫剤P2が流動材P1と共に流動化する。例えば、流動材P1は、第1流量又は第2流量の排ガスの流れによって浮遊し、排ガス出口54から排ガスと共に排気経路L5に排出される。排気経路L5に排出された流動材P1は、分級器43によって排ガスから分離され、流動材回収部63から供給配管45に排出される。分級器43によって排ガスから流動材P1が確実に分離されるため、排ガスに流動材P1が混入されたまま後流側に流れることが抑制される。そして、流動材P1は、供給配管45からダウンカマー45a及び45bを介して、脱硫剤P2と共に脱硫反応器41及び42の各流動部K2に供給される。流動材P1と脱硫剤P2とが混合した状態で流動部K2に供給されるため、流動材P1又は脱硫剤P2が粒状物Pの中で偏在することが抑制される。このように、流動材P1は、脱硫反応器41及び42の各流動部K2から排気経路L5、分級器43及び供給配管45(ダウンカマー44a)を経由して、各流動部K2に至る流動材循環部Rを循環する。したがって、脱硫システム40には、流動材P1の循環流動層S(図2参照)が形成される。
脱硫システム40は、排ガスの流れにより、流動材P1と脱硫剤P2とが共に浮遊して循環流動層Sを流動する。乾式反応器41で流動化した脱硫剤P2は、排ガスに接触し、排ガスに含まれる硫黄酸化物と反応する。これにより、排ガスに含まれる硫黄酸化物が除去される。
脱硫システム40は、脱硫反応器41及び42を通過し、硫黄酸化物が除去された排気ガスが分級器43に流入する。また、脱硫システム40は、排気ガスとともに、脱硫反応器41及び42の流動材P1及び脱硫剤P2の一部が分級器43に流入する。分級器43に流入した流動材P1及び脱硫剤P2は、分級器43で、流動材P1が排ガスと分離される。また、脱硫剤P2は、一部が流動材P1に付着した状態で排ガスと分離され、一部が、排ガスとともに下流側に搬送される。つまり、脱硫剤P2は、一部が、流動材P1と分離され、循環する経路ではなく、排ガスと共に排ガス出口62から排気経路L6に排出される。
排気経路L6に排出された排ガスは、下流側に配置されている脱硝装置48に導入される。脱硝装置48は、導入された排ガスに含まれる窒素酸化物を減少させまたは除去し、排気経路L7に排出する。乾式脱硫システム40は、排気流路L7に流入した排ガスがバグフィルタ44を通過する。排ガスは、排ガスとともに流れている異物と脱硫剤P2がバグフィルタ44に捕集(捕捉)される。乾式脱硫システム40は、脱硝装置48を通過した後に排気流路L7に流入した排ガスがバグフィルタ44を通過するため、バグフィルタ44の耐熱温度が脱硝装置48における脱硝に必要な温度より低い場合でも十分に使用可能となる。フィルタ部72に捕捉された脱硫剤P2は、受部74及び配管75を経由してタンク部76に回収される。乾式脱硫システム40は、バグフィルタ44を通過した排ガスを排気経路L8に排出する。
乾式脱硫システム40は、脱硫剤供給部46から供給配管45に対して脱硫剤P2を供給する。これにより、乾式脱硫システム40は、脱硫剤P2が排ガスによって流動部K2から排出され、流動部K2中の脱硫剤P2の数が減少した分を補充する。また、乾式脱硫システム40は、排ガスの流量に応じて供給量調整部45から供給する脱硫剤P2の量を調整する。
以上のように、本実施形態の脱硫システム40は、ディーゼルエンジン11から排出される排ガスの流量に応じて、当該排ガスを1つの脱硫反応器41に導入するか、複数の脱硫反応器42及び42に分散させて導入するかを切り替えて行うことが可能となるため、脱硫反応器を1つだけ設けた場合に比べて、1つの脱硫反応器における負荷変動による排ガス流量変化の流動状態への影響を小さくできる。このため、各脱硫反応器41及び42における脱硫剤P2の反応性の制御が容易となる。これにより、脱硫剤P2の反応性が高い状態となるように各脱硫反応器41及び42の状態を維持することが容易となるため、脱硫性能の向上を図ることができる。
例えば、脱硫反応器が1つだけの場合、負荷100%の状態において、当該脱硫反応器に流入する単位時間当たりの排ガスの流量は、図4に示す第1流量及び第2流量を加えた15(相対値)である。また、この排ガス流量のバラつきは少なくとも0以上15以下(相対値)になることが想定される。しかも、脱硫反応器が1つだけの場合、単位時間の排ガスの流量がバルブ等で調整することができず、負荷の変動に依存する。このため、脱硫反応器に循環流動層を形成可能となるような負荷の範囲が固定されてしまい、負荷の変動に応じた柔軟な制御が困難となる。
一方、本実施形態のように2つの脱硫反応器41及び42を設けた場合、図4に示すように、負荷100%の状態において、第1流量及び第2流量は7.5(相対値)ずつである。また、第1流量及び第2流量のバラつきも0以上9.5以下(相対値)の範囲に収まっている。このように、脱硫反応器を複数設けることにより、1つの脱硫反応器41及び42に導入される排ガスの流量のバラつきが小さくなる。しかも、バルブ制御部VCによって第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度を調整することが可能である。したがって、図4に示すように、例えば負荷が40%の状態から負荷が100%の状態まで脱硫反応器41及び42に循環流動層が形成されるように、負荷の変動に応じて第1流量及び第2流量を柔軟に制御することができる。これにより、負荷変動による排ガス流量変化の流動状態への影響を小さく抑えることができる。
また、脱硫反応器41及び42において、脱硫反応器を1つだけ設ける場合に比べて、第1流量及び第2流量の最大値が小さい値となる。このため、脱硫反応器41及び42の寸法を小さくすることができる。また、脱硫反応器41及び42の1つ当たりの寸法が小さくなるため、脱硫反応器41及び42の配置等の設計の自由度が高くなる。これにより、スペースの有効利用が可能となる。
また、乾式脱硫反応器41に新たな脱硫剤P2を供給することで、乾式脱硫反応器41内に未反応の脱硫剤P1が配置された状態を維持することができる。これにより、脱硫性能の向上を図ることが可能となる。また、本実施形態によれば、排ガスの流れによって脱硫反応器41に循環流動層Sが形成されるため、流動材P1の損失がなく、反応性の高い乾式脱硫システム40が得られる。
また、分級器43で流動材P1と分離された脱硫剤P2は、排ガスとともに下流側に排出されることで、排ガスと流れている間も排ガス中の硫黄酸化物を除去することができる。これにより、脱硫できる排ガスの流路を長くすることができ、排ガス中の硫黄酸化物を好適に除去(低減)することができる。また、分級器43で反応後の脱硫剤P2を分離できることで、反応後の脱硫剤P2が脱硫反応器41及び42に留まることを抑制できる。
また、乾式脱硫システム40は、バグフィルタ44に捕捉された脱硫剤P2も、未反応分が通過する排ガス中の硫黄酸化物と反応する。これにより、バグフィルタ44に捕捉された脱硫剤P2も排ガス中の硫黄酸化物を除去することができる。これにより、脱硫できる排ガスの流路をより長くすることができ、排ガス中の硫黄酸化物を好適に除去(低減)することができる。
また、本実施形態に係る脱硫システム40は、乾式の脱硫システムであるため、例えば硫黄酸化物を含んだ排水処理の必要がない。また、脱硫システム40は、排ガスの温度を低下させることなく排気経路L6に排出可能であり、少なくとも脱硫反応器41及び42の後流に触媒式脱硝を行う場合において、熱交換器などの設備を別途設ける必要がない。これにより、脱硫システム40及び排ガス処理装置10の小型化及び省スペース化を図ることができる。
ここで、脱硫反応器41での流動材P1の流動化についてより詳細に説明する。流動材P1は、排ガスが流れない場合、分散板53上に固定層として堆積した状態となっている。一方、筐体51に排ガスが導入され、分散板53から流動部K2に排ガスの増加に伴い、流動材P1は流動を開始し、流動層を形成する。このような流動層としては、例えば気泡型流動層や循環流動層が挙げられる。気泡型流動層は、内部に排ガスによる気泡が形成される状態の流動層である。循環流動層は、排ガスによって流動材P1を浮遊させると共に、当該浮遊した流動材P1を分級器などによって循環可能な状態とした流動層である。循環流動層を形成する場合、流動材P1を浮遊させて循環させる必要があるため、気泡型流動層に比べて、流動材P1の流動性を高くする必要がある。なお、流動材P1の流動性を高くし過ぎると、流動材P1が排ガスと共に飛散してしまい、流動層(循環流動層)が形成されなくなる。
図3は、流動材P1の流動状態を説明するためのグラフである。グラフの横軸はアルキメデス数(Ar)を示し、グラフの縦軸はレイノルズ数(Re)を示している。なお、図3のグラフは両対数グラフである。
流動材P1の流動状態を決定するパラメータとして、例えば無次元パラメータであるアルキメデス数及びレイノルズ数がある。アルキメデス数は、流動層中の流動材P1の平均粒径によって決定される。レイノルズ数は、流動層に供給される単位時間当たりの排ガスの流量によって決定される。排ガスの流量は、ディーゼルエンジン11の酸素濃度と、燃焼室に供給された燃料の供給量(エンジン負荷)とに基づいて算出可能である。
図3のグラフの曲線102は、粒子が無限に連鎖した状態のレイノルズ数を示す。図3のグラフの曲線104は、単一粒子の週末速度基準のレイノルズ数を示す。図3に示すように、流動材P1についてのアルキメデス数及びレイノルズ数が、グラフの曲線102と曲線104とで囲まれた斜線部分の領域106内の値である場合、流動部K2に循環流動層が形成可能となる。
一方、例えばアルキメデス数が一定である場合において、レイノルズ数が領域106よりも上側の値となる場合(単位時間当たりのガス流量が多すぎる場合)には流動材P1が排ガスと共に飛散する状態となる。また、レイノルズ数が領域106よりも下側の値となる場合(単位時間当たりのガス流量が少なすぎる場合)には気泡型流動層又は固定層が形成される。
また、例えばレイノルズ数が一定である場合において、アルキメデス数が領域106よりも左側の値となる場合(流動材P1の平均粒径が小さすぎる場合)には、流動材P1が排ガスと共に飛散する状態となる。また、アルキメデス数が領域106よりも右側の値となる場合(流動体P1の平均粒径が大きすぎる場合)には、気泡型流動層又は固定層が形成される。
このように、アルキメデス数及びレイノルズ数が領域106の上側の領域の値となる場合には、流動材P1が排ガスと共に飛散する状態となる。また、アルキメデス数及びレイノルズ数が領域106の下側の領域の値となる場合には、気泡型流動層又は固定層が形成される。
本実施形態では、ディーゼルエンジン11の負荷に応じてレイノルズ数が設定される。したがって、流動材P1を用いて循環流動層を形成する場合、流動材P1のアルキメデス数及びレイノルズ数が領域106内の値となるように、レイノルズ数(ディーゼルエンジン11の負荷)に応じたアルキメデス数(流動材P1の平均粒径)を設定すればよい。
さらに、筐体51の流動部K2において循環流動層を形成するためには、流動部K2の高さを考慮する必要がある。この場合、レイノルズ数が大きくなるにつれて、つまり単位時間当たりの排ガスの流量が大きくなるにつれて、流動材P1が飛散しないように筐体51の高さを高くする必要がある。筐体51は、船舶に設けられるため、高さが高くなり過ぎないことが求められる。このため、レイノルズ数が大きくなる場合、例えば15以上の値となる場合には、筐体51の高さが高くなり過ぎないようにアルキメデス数(流動材P1の平均粒径)を設定してもよい。なお、流動材P1を流動させる場合、損耗によって流動材P1の平均粒径が縮小する場合がある。したがって、このような損耗による粒径の縮小を考慮してアルキメデス数(流動材P1の平均粒径)を設定してもよい。
ここで、流動材P1と脱硫剤P2との粒径比(流動材P1の平均粒径/脱硫剤P2の平均粒径)は、例えば15以上33以下となるように設定することができるが、これに限定するものではない。粒径比を15以上33以下とすることで、船舶の運転時に流動層が形成される条件での運転をより多くの時間割合とすることができる。また、粒径比を15以上33以下とすることで、脱硫性能を高く維持する必要がある運転負荷で、適切に流動層を形成させることができる。また、例えば粒径比を15以上とすることにより、循環流動層Sを形成可能な負荷の範囲を広くすることができるため、ディーゼルエンジン11の負荷が変化する場合であっても循環流動層Sを好適に形成することができる。また、例えば粒径比を15以上とすることにより、流動材P1が損耗して流動材P1の平均粒径が小さくなる場合であっても、循環流動層Sを好適に形成することができる。
また、乾式脱硫システム40は、脱硫剤P2が排ガスの流れにより、流動材P1と共に浮遊して循環流動層Sを流動する。このように乾式脱硫システム40は、脱硫剤P2が浮遊して循環流動層Sを流動するため、排ガスに対する脱硫剤P2の接触時間が長くなり、排ガスから硫黄酸化物を効率的に除去することができる。
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態においては、脱硫システム40において、第1バルブ41aと第2バルブ42aとが等しい開度で開いた状態で動作する場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、一方のバルブを閉塞させた状態を継続させてもよい。
例えば脱硫反応器41及び42の一方(ここでは脱硫反応器42を例に挙げる)に対して点検や修理、交換等の処置を行う場合、第2バルブ42aを閉塞させることにより、脱硫反応器42に対して排ガスを遮断することができる。これにより、作業者が脱硫反応器42に対して容易に処置を施すことができる。
また、上記実施形態では、脱硫反応器41及び42が同一構成であり、容積及び内部形状が同一である場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、容積及び内部形状のうち少なくとも一方が異なっていてもよい。図6は、変形例に係る脱硫反応器81及び82の一例を示す図である。図6に示す脱硫システム40Aのように、一方の脱硫反応器(例えば、脱硫反応器81)の容積V1は、他方の脱硫反応器(例えば、脱硫反応器82)の容積V2よりも大きくなっている。脱硫反応器81及び82は、容積のみが脱硫反応器41及び42とは異なり、他の構成については脱硫反応器41及び42と同一である。
図7は、ディーゼルエンジン11の負荷と、脱硫反応器81及び82のそれぞれに導入される単位時間当たりの排ガスの流量の変化との関係を示すグラフである。なお、以下では、脱硫反応器81に導入される単位時間当たりの排ガスの流量を「第3流量」と表記し、脱硫反応器82に導入される単位時間当たりの排ガスの流量を「第4流量」と表記する。また、ディーゼルエンジン11の負荷については、単に「負荷」と表記する。また、以下の説明では、脱硫反応器81と脱硫反応器82との体積比V1:V2が2:1であるとする。また、以下では、ディーゼルエンジン11が、例えば出力10MWクラスの小型エンジンである場合を例に挙げて説明する。
図7に示すように、ディーゼルエンジン11が始動した後、負荷が60%に到達するまでは、脱硫反応器41にのみ排ガスが導入されるようにする。したがって、バルブ制御部VCは、負荷が60%に到達するまでは、第2バルブ42aを閉塞させた状態とする。図5は、このときの第1バルブ41a及び第2バルブ42aの状態を示す図である。図5に示すように、第1バルブ41aのみが開いた状態となる場合、排気経路L4に到達した排ガスは、排気経路L42には流れず、排気経路L41にのみ流れる。
また、ディーゼルエンジン11の始動から負荷が60%に到達するまでの期間において、バルブ制御部VCは、第3流量が負荷に比例して大きくなるように第1バルブ41aの開度を調整する。この場合、バルブ制御部VCは、負荷が例えば50%に到達するまでに脱硫反応器81の流動材P1が循環流動層を形成するように、第1バルブ41aの開度を調整する。
具体的には、バルブ制御部VCは、第3流量が図5に示す閾値β1よりも大きく、かつ閾値β2よりも小さい値となるように、第1バルブ41aの開度を調整する。ここで、閾値β1は、脱硫反応器81において流動材P1が循環流動層を形成するために必要な排ガス流量の下限値である。また、閾値β2は、脱硫反応器81において流動材P1が循環流動層を形成するために必要な排ガス流量の上限値である。
負荷が60%に到達した後、脱硫反応器82に対しても排ガスの導入を開始させる。バルブ制御部VCは、第3流量の値が例えば負荷50%時の値と等しい値まで減少するように、第1バルブ41aの開度を減少させる。そして、バルブ制御部VCは、第1バルブ41aの開度減少と同時に、第2バルブ42aを開き、脱硫反応器82に対して排ガスの導入を開始させる。このとき、バルブ制御部VCは、第4流量が第3流量の4分の1程度の値になるように第2バルブ42aの開度を調整する。
負荷が60%に到達し、第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度調整を行った後、バルブ制御部VCは、負荷が80%に到達するまで、第3流量の値が一定となるように第1バルブ41aの開度を一定に維持する。一方、バルブ制御部VCは、第2バルブ42aの開度を徐々に増加させ、負荷が80%に到達する際には、第4流量の値が閾値γ1よりも大きくかつ閾値γ2を超えない値となるようにする。ここで、閾値γ1は、脱硫反応器82において流動材P1が循環流動層を形成するために必要な排ガス流量の下限値である。また、閾値γ2は、脱硫反応器82において流動材P1が循環流動層を形成するために必要な排ガス流量の上限値である。図7においては、例えば第4流量の値が第3流量の半分程度になるようにしている。
負荷が80%に到達し、第3流量と第4流量とが等しくなった後、バルブ制御部VCは、負荷が100%に到達するまで、第3流量及び第4流量が2:1の割合で上昇するように、第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度を調整する。なお、負荷が100%に到達するまでに、第3流量が閾値β2を超え、第4流量が閾値γ2を超える場合がある。そこで、バルブ制御部VCは、図7に示すように、第3流量及び第4流量が2:1の割合で上昇した場合、当該第3流量及び第4流量の両方ができる限りβ2及びγ2を超えないように、負荷が80%に到達した時点で各流量の上昇開始位置をずらしてもよい。図7では、第3流量を1(相対値)程度増加させ、第4流量を0.5(相対値)程度減少させている。
このように第1バルブ41a及び第2バルブ42aの開度を調整することにより、実用的な負荷40%以上80%以下の範囲で、脱硫反応器81及び脱硫反応器82において循環流動層を形成することが可能となる。これにより、脱硫性能の高い脱硫システム40Aが得られる。
また、上記の脱硫システム40及び40Aは、上記実施形態の構成に加えて、分級器43を介した排ガスを排気経路L4に循環させて供給する排ガス循環経路を有してもよい。図8は、変形例に係る脱硫システム40Bを示す図である。脱硫システム40Bは、図8に示すように、排ガス循環経路(排ガス循環部)L10を有している。排ガス循環経路L10は、排気経路L6と排気経路L4との間を接続する。排ガス循環経路L10は、分級器43を介した排ガスを排気経路L4に循環させて供給する。排ガス循環経路L10には、流量調整弁55が設けられている。流量調整弁55は、排ガス循環経路L10を流れる排ガスの流量を調整可能である。なお、流量調整弁55を閉じた状態にすることで、排ガス循環経路L10を排ガスが流れないようにすることも可能である。この構成により、脱硫反応器41及び42に供給される排ガスの流量を調整することができるため、循環流動層Sの状態が好適な状態になるように調整することができる。つまり、排気ガスの流量が少ない場合でも、脱硫反応器41及び42に排ガスの流量よりも多くの気体を供給することができる。これにより、循環流動層Sを生成できる舶用エンジンの負荷範囲(排気ガスの流量の範囲)をより多くすることができる。
また、上記実施形態では、流動材P1によって循環流動層を形成する場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、例えば気泡型流動層など他の流動層を形成する場合であっても、本発明の適用は可能である。
また、上記実施形態では、バグフィルタ44を設ける構成としたが、これに限定するものではなく、例えばバグフィルタ44に代えて、簡単な構成のフィルタを設けた構成であってもよい。
また、上記実施形態では、粒状物Pとして流動材P1及び脱硫剤P2の2種類の粒状物が混合して用いられる態様を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、例えば流動材P1が用いられずに脱硫剤P2のみが用いられる態様であってもよい。また、上記実施形態では、乾式を用いたが、湿式、半乾式であってもよい。
また、上記実施形態では、脱硫システム40、40A及び40Bにおいて、脱硫反応器41及び42の2つの脱硫反応器が設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、3つ以上の脱硫反応器が設けられてもよい。この場合、排気経路L4は、脱硫反応器の数に応じて分岐される。また、排気経路L4からの各分岐経路には、個別に開度を調整可能なバルブが設けられ、各バルブの開度はバルブ制御部VCによって制御されてもよい。