JP6596135B2 - 腸内環境改善、高脂肪食摂取による体重増加抑制またはピロリ菌抑制のための組成物 - Google Patents

腸内環境改善、高脂肪食摂取による体重増加抑制またはピロリ菌抑制のための組成物 Download PDF

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Description

本発明は、人体の腸内環境の改善、高脂肪食摂取による体重増加の抑制、ピロリ菌の抑制を実現するサプリメントや、動物の腸内環境の改善、高脂肪食摂取による体重増加の抑制、ピロリ菌の抑制を実現する飼料配合物として有用な発酵型の組成物に関する。
近年、滋養強壮、健康増進、ダイエット、美容、各種既往症の改善等の様々な目的で摂取する、極めて多種多様なサプリメントが登場している。これらのうち、健康増進を主目的としたサプリメントとして、種々の基材に乳酸菌、酵母菌、麹菌等を加えて発酵させたものが多々提案され、また商品化されている。例えば、特許発明としての提案では、カルシウム含有基材に特定の13種の土壌菌を吸着発酵させたもの(特許文献1)、米糠に乳酸菌及び酵母菌を加えて発酵させたもの(特許文献2)、植物性材料に糖源と共に乳酸菌及び酵母菌を加えて発酵させたもの(特許文献3)、米糠に乳酸菌及び酵母菌を加えて発酵させ、水を加えて発酵米糠液として分離したもの(特許文献4)、複数種の植物片を混合した原材料に麹菌発酵、乳酸菌発酵、酵母菌発酵を順次施したもの(特許文献5)等がある。
特開平8−298982号公報 特開2001−238664号公報 特開2003−259835号公報 特開2004−147551号公報 特開2011−217678号公報
しかしながら、従来の発酵型のサプリメントでは、発揮し得る効能は健康増進に寄与するごく狭い範囲の作用に限定されており、その上、生活の質を改善する効果を併せ持つものがなく、且つ効能の程度や安定性、持続性、継続摂取による効能亢進作用等で充分とは言えず、総合的な健康増進サプリメントとして物足りないものであった。
本発明は、上述の事情に鑑み、腸内環境の改善による整腸、代謝、吸収促進、便尿の臭いや体臭の低減、ピロリ菌抑制等の多岐にわたる効能を発揮でき、更に動物に対しても人と同様の効果を期待できる健康増進組成物を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る組成物は、腸内環境改善、高脂肪食摂取による体重増加抑制またはピロリ菌抑制のための組成物であり、セルロース分解性菌として、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)M−4菌株(受託番号:NITE P−02538)と、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)M−5菌株(受託番号:NITE P−02539)と、バチルス・ズブチルスの近縁種であるバチルス・スピーシーズ(Bacillus sp.)M−6菌株(受託番号:NITE P−02540)との少なくとも3種のバチルス属菌を含む非病原性菌類による米糠粉末の発酵処理物からなることを特徴としている。
請求項2の発明は、上記請求項1の組成物において、非病原性菌類が、セルロース分解性菌と共に、乳酸菌及びビフィズス菌と麹菌より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴としている。
請求項3の発明は、上記請求項2の組成物において、乳酸菌がラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)NBRC15883菌株であることを特徴としている。
請求項4の発明は、上記請求項2又は3の組成物において、ビフィズス菌がビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)NBRC100015菌株であることを特徴としている。
請求項5の発明は、上記請求項2〜4のいずれかの組成物において、麹菌がアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)NBRC6215菌株であることを特徴としている。
請求項6の発明は、上記請求項1〜5のいずれかの組成物において、非病原性菌類における総菌数の20%以上がバチルス属菌からなることを特徴としている。
本発明の組成物は、セルロース分解性菌として新規な3種のバチルス属菌を少なくとも含む非病原性菌類の生菌が米糠に包含された形で、バランスよく共存して安定した発酵状態を維持しており、その発酵に伴って産生した酵素による米糠の分解物として、蛋白質分解物のペプチド、各種アミノ酸、オリゴ糖、ビタミンB1,B2,ナイアシンの如きビタミンB群、ビタミンE、亜鉛の如きミネラル等の有用成分を豊富に含んでいる。そして、この組成物を経口摂取することにより、これら有用菌の複合体が胃液で死滅することなく腸内へ届いて増殖し、悪玉菌を減らして善玉菌を増やすために腸内環境が著しく改善するため、優れた整腸作用が発現する。その結果、便秘や下痢が抑えられる。加えて、高脂肪食を摂取しても体重増加を抑制することも期待できる。更に、有用菌の働きにより、胃内のピロリ菌の増殖が抑制されることも認められており、胃癌や胃潰瘍の防止効果も期待できる。
そして、本発明の組成物において、上記の種々の効果をより高める上で、非病原性菌類が、前記の新規な3種のセルロース分解性菌と共に、乳酸菌及びビフィズス菌と麹菌より選ばれるを少なくとも1種を含むことが好ましい。その乳酸菌としては既知のラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)NBRC15883菌株が、ビフィズス菌としては既知のビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)NBRC100015菌株が、麹菌としては既知のアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)NBRC6215菌株が、それぞれ好適なものとして挙げられる。また、非病原性菌類における総菌数の20%以上がバチルス属菌であることが好ましい。
本発明の健康増進組成物における非病原性菌類に含まれるバチルス・アミロリケファシエンスM−4菌株を解析した16S rDNA部分塩基配列に基づく簡易分子系統樹を示す模式図である。 同非病原性菌類に含まれるバチルス・ズブチルスM−5菌株を解析した同簡易分子系統樹を示す模式図である。 同非病原性菌類に含まれるバチルス・スピーシーズM−6菌株を解析した同簡易分子系統樹を示す模式図である。 同健康増進組成物の摂取及び非摂取のマウス群における体重増加量推移を示す体重−経過日数の相関図である。 同マウス群における摂餌量推移を示す摂餌量−経過日数の相関図である。 同マウス群における明期・暗期運動量を示す移動距離測定図である。 同マウス群における24時間周期運動量を示す移動距離−経過日数の相関図である。 牛糞中の善玉菌及び悪玉菌の割合を示し、(a)は健康増進組成物を非投与の牛糞の分析データ図、(b)は投与した牛糞の分析データ図である。 ピロリ菌感染試験における同健康増進組成物の投与及び非投与のマウス群の胃壁に残留するピロリ菌数を示すデータ図である。
本発明の健康増進組成物は、種々の微生物が持つ生物学的な特徴を充分に考慮し、米糠発酵物中で異種の菌類が最大限に各々の生物活性を発揮し、且つ微生物間で良好な相互作用を及ぼし合うことで、人や動物の健康を害する障害を取り除けるように、米糠粉末に加える微生物の種類と組合せを厳選したものである。すなわち、この健康増進組成物は、米糠粉末が、セルロース分解性菌としてバチルス・アミロリクエフアシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)M−4菌株と、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)M−5菌株と、バチルス・ズブチルスの近縁種であるバチルス・スピーシーズ(Bacillus sp.)M−6菌株との新規な3種を少なくとも含む非病原性菌類によって発酵処理された発酵物からなる。
セルロース分解性菌である上記3種のバチルス属菌は、腸内で協動して糖質や蛋白質を分解して消化を助け、腐敗便をなくする役割を果たすと共に、米糠や食物中のセルロースを分解して糖類を産生するため、乳酸菌及びビフィズス菌を増やす作用があり、また多くの有機酸を産生することで有害菌の増殖を抑え、且つ腸の蠕動も促進させるため、腸内フローラを改善して優れた腸内環境を形成すると共に、その優れた腸内環境を安定的に維持するのに貢献する。加えて、バチルス属菌は、一般に高い高温耐性を備えており、100℃前後の高温でも芽胞を形成して生き延びることから、後述する本健康増進組成物の製造時の発酵過程で発生する50℃前後の温度条件下でも活性が低下せず、米糠に含まれるセルロース等の成分を分解することができる。一方、一般的な菌や糸状菌では50℃前後の温度にも耐えられないものが多いため、結果として本発明の健康増進組成物が特定の微生物種を優先して含有する状態を安定に維持することに繋がっている。
上記3種のセルロース分解性菌であるバチルス・アミロリクエフアシエンスM−4菌株(以下、M−4菌株と略称する)、バチルス・ズブチルスM−5菌株(以下、M−5菌株と略称する)、バチルス・スピーシーズM−6菌株(以下、M−6菌株と略称する)は、いずれも本発明者らによって見出された新規なバチルス属菌であり、独立行政法人製品評価技術基板機構(NITE)・特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託し、M−4菌株は受託番号NITE P−02538、M−5菌株は受託番号NITE P−02539、M−6菌株は受託番号NITE P−02540としてそれぞれ受託されている。
上記のM−4菌株、M−5菌株、及びM−6菌株が新規なバチルス属菌であることは、いずれもDNA解析による同定方法によって確認されている。その同定方法は、次のとおりである。
DNA抽出:アクロモペプチダーゼ(Wako Pure Chemical Indutrises,Japan)
PCR増幅:PrimeSTAR HS DNA Polymerase(Takara Bio,Japan)
サイクルシーエンス:BigDye Terminater v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems,USA)
塩基配列決定:ChromasPro 1.7(Technelysium,AUS)
ソフトウェア:テクノスルガ・ラボ微生物同定システム(TechnoSuruga Laboratory,Japan)
データベース:DB-BA11.0(TechnoSuruga Laboratory)
国際塩基配列データベース(DDBJ/ENA(EMBL)/GenBank)
同定判断:16S rDNA部分塩基配列に基づく解析
上記同定方法により、上記3種のバチルス属菌について16S rDNA部分塩基配列に基づく解析を行ったところ、次の結果が得られた。
〔M−4菌株〕
〇同定種:Bacillus amyloliquefaciens、バイオセーフティレベル1。
〇BLAST検索による最も高い相同性の種(基準株):Bacillus amyloliquefaciens subsp.amyloliquefaciens NBRC 15535T株・・・相同率99.8%。
〔M−5菌株〕
〇同定種:Bacillus subtilisに近縁なBacillus sp.、バイオセーフティレベル1
〇BLAST検索による最も高い相同性の種(基準株):Bacillus subtilis subsp.subtilis DSM 10T株・・・相同率99.6%
〔M−6菌株〕
〇同定種:Bacillus subtilisに近縁なBacillus sp.、バイオセーフティレベル1
〇BLAST検索による最も高い相同性の種(基準株):Bacillus subtilis subsp.subtilis DSM 10T株・・・相同率99.6%
上記3種のバチルス属菌について、各々の16S rDNA部分塩基配列に基づく簡易分子系統樹を図1〜図3に示す。図1中のSIID19238-04がM−4菌株、図2中のSIID19238-05がM−5菌株、図3中のSIID19238-06がM−6菌株である。なお、図1〜図3において、左上の線はスケールバー、系統枝の分岐に位置する数字はブートストラップ値、株名の末尾のTはその種の基準株(Type strain)、をそれぞれ示す。
なお、これら3種のバチルス属菌は、いずれも標準寒天培地(日水社製)上で褐色を帯びた黄白色のコロニーを生成する。そのコロニー形状はやや不定形に近い円形であり、芽胞を形成する。また、M−6菌株の菌体は粘性を帯びるという特徴がある。
本発明の健康増進組成物は、セルロース分解菌として上記3種の新規なバチルス属菌を必須として含む非病原性菌類を用いて米糠を発酵させたものであるが、その非病原性菌類には上記3種の新規なバチルス属菌と共に他のセルロース分解菌、乳酸菌、ビフィズス菌、麹菌、酵母菌等を含んでもよく、特に乳酸菌及びビフィズス菌と麹菌より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。すなわち、この健康増進組成物では、多岐にわたる効能を発揮させる上で、菌種によるセルロース分解能や発酵機構の違いに基づく産生物の多様性を拡大することが好ましい。ただし、セルロースを高率で含む米糠が発酵基材であるから、非病原性菌類における総菌数の20%以上がセルロース分解菌のバチルス属菌であることが望ましく、これによってより高い健康増進効果及び生活の質の改善効果が得られる。
乳酸菌は、一般的に、ブドウ糖等の糖類を分解して乳酸を産生することで、腸内環境を酸性にして悪玉菌の増殖を抑制し、腸内の菌叢を健全に保つ作用を発揮することが知られている。本発明では、前記の非病原性菌類に種々の乳酸菌を含ませることができるが、好ましい乳酸菌としてラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)が挙げられる。すなわち、ラクトバチルス・カゼイは、バイオセーフティレベル1であってプロバイオテックな効能に優れた菌種であり、上記作用に優れており、便秘の改善やコレステロールの低下、免疫力の向上等に大きく貢献する。そして、本発明においては、ラクトバチルス・カゼイの中でも、特に既知のラクトバチルス・カゼイNBRC15883菌株が、より高い健康増進効果及び生活の質の改善効果を発揮するものとして推奨される。
ビフィズス菌は、一般的に、高酸素環境を嫌うために腸の中でも主に酸素の少ない大腸に棲息し、糖を分解して乳酸と共に酢酸を産生するため、強い殺菌力を発揮して腸粘膜の保護に貢献する作用を有することが知られている。そして、本発明では、前記の非病原性菌類に種々のビフィズス菌を含ませることができるが、特に既知のビフィズス菌であるビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)NBRC100015菌株が好適なものとして挙げられる。すなわち、このビフィドバクテリウム・ビフィダムNBRC100015菌株は、バイオセーフティレベル1であってプロバイオテックな効能に優れた菌種であり、上記作用に優れており、糖の燃焼を促進してダイエット効果を高めることにも大きく寄与する。
麹菌は、菌体内で造った蛋白質を放出する能力に優れ、その蛋白質分解能や糖化作用を通して、食品の消化吸収を助けると共に、栄養補給や生理活性物質の付与にも貢献する。そして、本発明では、前記の非病原性菌類に種々の麹菌を含ませることができるが、特に上記作用に優れる好適なものとして、既知の麹菌であるバイオセーフティレベル1のアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)NBRC6215菌株が挙げられる。
その他、上記3種の新規なバチルス属菌と併用可能なセルロース分解菌としては、特に制約されず、例えば上記3種以外のバチルス属菌、ブレビバチルス属菌、パニエバチルス属菌等が挙げられる。また、酵母菌は、一般的に、脂質及び糖質を分解してアミノ酸やクエン酸、炭酸ガスを生成する作用を有するが、好ましいものとして、いずれもバイオセーフティレベル1である、メエロジーマ・カリビカ(Meyerozyma caribbica)やサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等が挙げられる。
これら菌類を加えて発酵させる米糠粉末としては、特に制約されないが、確実に均質な発酵状態とする上で、原料米糠を粉砕して篩で粗粒分を除いて得られる平均粒径1mm以下のものが好適である。また、原料の米糠は有機栽培米から得られるものが望ましい。
本発明の健康増進組成物を製造するには、各々純粋培養で保管されている少なくとも前記4種の菌類を含む所要の生菌の培養液を用い、これら培養液を個別に又は混合した状態で常温下の米糠粉末にスプレー等で添加し、手操作又は機械的操作で該米糠粉末を充分に攪拌混合することで、全ての生菌を米糠全体に均一に行き渡らせ、次いで菌の栄養源としてグルコース溶液の如き糖液を適量加えて均一に攪拌混合した上で、発酵槽内で所定期間(通常1〜4カ月程度)保管して発酵させる。この保管中には、外部からの雑菌の侵入を防ぐために、発酵槽の開放部をビニールシート等のカバーで覆うと共に、発酵槽を設置した部屋についても不用意に汚染外気が入り込まぬように所要の遮蔽対策を講じることは言うまでもない。しかして、発酵の進行に伴って米糠の温度が次第に上がってゆくため、有用成分の変質や高温に弱い有用菌の死滅を防止するために、継続的に温度を計測して適温(例えば、50℃以下)を保つように温度管理する。なお、降温の操作は、通常、カバーを外して室内空気に一定時間晒すことによる空冷方式で行える。
かくして充分な発酵状態に達した米糠粉末は、降温後、粉砕機を通してから数週間自然乾燥し、所定の容器に充填して製品化する。この発酵米糠製品は、直接に口から摂取することも可能であるが、粉末形態であるため、ジュース等の飲料に加えたり、食物にふりかけたり、調理の際に料理に混ぜ込んだりすることで摂取が容易になる。また、人用の健康食品とする以外に、競走馬、家畜やペット動物等の健康を維持するための飼料用配合剤としても好適に利用できる。
この健康増進組成物を経口摂取すれば、上述した有用菌の複合体が胃液で死滅することなく腸内へ届き、その一部が腸管内で増殖して善玉菌として腸内環境を理想的に整えるために働き、また別の菌は米糠や食物中のセルロースを分解して糖類を産生することで、乳酸菌及びビフィズス菌を増やす作用があるため、総合的に優れた整腸作用が得られ、便秘や下痢を抑制すると共に美容効果も発揮する。また、腸内の悪玉菌を低減して免疫機能及び新陳代謝を改善するから、継続的に摂取することで生体の免疫活性が益々高まってゆき、感染症やアレルギーに対する抵抗力が増す上、脂肪の蓄積を抑制して肥満防止にも貢献し、更には胃内のピロリ菌の増殖抑制作用が認められており、胃ガンや胃潰瘍の抑止効果も期待できる。加えて、この健康増進組成物では、上記有用菌群の増殖過程で産生する様々な酵素によって米糠が分解されることで、既述した様々な有用成分を豊富に含むから、優れた滋養強壮剤としても機能する。一方、動物用飼料に配合することにより、動物の腸内環境が改善される結果、健康な体調が維持されて病気に掛かりにくくなると共に、糞便の臭気軽減や腸内ガスの低減作用も得られる。
接種菌として、いずれも株式会社環境総合テクスにおいて純粋培養して長期保存されている次の菌株を含むMAX元菌の混合物を用いた。これら接種菌の内、セルロース分解菌の3種の菌株は、既述した新規なバチルス属菌である。
〇セルロース分解性細菌・・・バチルス・アミロリクエフアシエンスM−4菌株(受託番号:NITE P−02538)、バチルス・ズブチルスM−5菌株(受託番号:NITE P−02539)、バチルス・スピーシーズ(受託番号:NITE P−02540)の3種
〇乳酸菌・・・ラクトバチルス・カゼイNBRC15883菌株
〇ビフィズス菌・・・ビフィドバクテリウム・ビフィダムNBRC100015菌株
〇麹菌・・・アスペルギルス・オリゼーNBRC6215菌株
平均粒径1mm以下の米糠粉末300kgに、上記MAX元菌混合物30Kg(菌数:1g当り10の10乗個程度、総菌数の約70%が前記M−4菌株及びM−5菌株とM−6菌株よりなるバチルス属菌)を添加しつつ、手操作で繰り返し混合し、米糠粉末全体に均一に菌を行き渡らせた。次いで、この菌を含む米糠粉末に、0.06%濃度のグルコース溶液115Lを少量ずつに分けて加えつつ手操作で均一に攪拌混合し、発酵原料を調製した。そして、この発酵原料を上方に開放した容量1000Lの発酵槽に充填し、上からビニールシートで覆った状態で原料温度が50℃以下を維持するように継続的に温度管理しつつ約1カ月間保管して充分に発酵させたのち、得られた発酵米糠粉末を粉砕機を通してから2週間自然乾燥し、本発明の健康増進組成物であるMAX組成物を製造した。
[安全性試験]
得られたMAX組成物について、一般財団法人 日本食品分析センターに依頼し、食品の衛生検査指針に沿って有害菌である大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、腸炎ビブリオ、セレクス菌、ウェルシュ菌の各分析試験(分析試験成績書 第15107227001-0201号
2015年10月26日)を行ったところ、次の表1に示すように全て陰性の結果が得られ、食品としての安全性が確認された。
Figure 0006596135
[人の摂取効果A]
ホリスティック統合医療研究所の協力により、男性24名及び女性39名の計63名(11歳〜86歳)をモニターとして、MAX組成物を継続的に毎日1回約1gずつ経口摂取してもらい、1カ月後及び3カ月後に身体症状の変化についてアンケート調査したところ、次の結果が得られた。
<摂取1カ月後>
摂取者の72%が何らかの身体症状の変化を感じており、表2に示すように、特に排便状態の改善が顕著である他、便尿の臭いが減った、疲れにくくなった、元気になった、胃痛が解消した、食欲が出てきた、痩せた等の多くの体調改善の回答が各々複数人にあった。
Figure 0006596135
<摂取3カ月後>
表3に示すように、1カ月後と同様の回答に加え、風邪にかかりにくくなった、アトピー性皮膚炎が改善した、生理不順が治った、更年期の障害が出ない、二日酔いがなくなった、喘息が治った等の更なる体調改善の回答が各々複数人にあった。
Figure 0006596135
[人の摂取効果B]
大阪成蹊女子大学の協力により、18歳〜24歳の女性20人をモニターとして、MAX組成物を冬季(2月)に毎日1回約1gずつ七日間経口摂取してもらい、便通効果、皮膚効果(化粧のり、むくみ等)、手足の保温効果についてアンケート調査したところ、次の結果が得られた。
便通効果・・・有効15名、やや有効4名
皮膚効果・・・有効6名、やや有効9名
手足の保温効果・・・有効11名、やや有効6名
[体重増の抑制効果]
マウスを対象として、MAX組成物の摂取による体重増の抑制効果を調べた。その方法は、ヒト成人女性30〜39歳の平均体重53.7kg(平成25年厚労省保険局国民健康・衛生調査)が本健康増進組成物を一日1.3gずつ摂取するのを、マウス12週齢メス(平均体重21.7g)の体重割合の摂取量に換算し、一匹あたり粉末状のマウス高脂肪食(日本クレア社製の商品名HFD32)の一日平均食餌量2.2gにMAX組成物0.253mgを加える形で8週間投与したマウス群と、マウス高脂肪食のみを8週間投与したマウス群について、体重増加量推移、摂餌量推移、明期・暗期運動量、24時間周期運動量を調べるものである。
その結果、図4〜図7に示すように、本健康増進組成物の投与は、摂餌量及び運動量に影響は与えないが、高脂肪食摂取による体重増加を抑制することが判明した。なお、高脂肪食摂取による体重増加には、摂取初期(7〜14日後)と更にしばらく経ってからとの二つのフェーズがあるが、MAX組成物はこれら二つのいずれをも抑制すると想定される。また、MAX組成物の投与による体重増加抑制のメカニズムは、代謝レベル向上等の腸内環境改善以外のメカニズムが考えられる。一方、MAX組成物投与群と非投与群とで腸内細菌叢のプロファイルが異なり、MAX組成物投与群では投与14日目において腸内細菌叢の多様性が高く、且つBacteroidales目に含まれるいくつかの属の占有率が高いことが判明している。
[ピロリ菌の抑制効果A]
pH3に調整したブルセラ培地10mlを収容した試験管を用意し、その中にMAX組成物0.3mgを秤量して添加し、37℃で120時間の振盪培養を行ったのち、遠心分離により上清を採取して検体液(以下、MAX培養液という)とした。次に、ピロリ菌培養液を添加して各々pH3に調整したブルセラ培地10mlを収容した試験管10本をサンプルとして用い、MAX培養液1mlを添加した5本の試験管と、不添加の5本の試験管とについて、37℃の条件下で、各経過時間後にピロリ菌数(104CFU/ml)を調べた。その結果を表4に示す。表中の各数値はサンプル5本の平均値であり、±は該平均値に対する測定値のばらつき最大値を示す。
Figure 0006596135
上表のMAX培養液不添加の左欄で示すように、この培養液では調整後24時間で殆どのピロリ菌(97%強)が死滅するが、10時間後ではまだかなりの菌が生存している。しかるに、上表右欄で示すように、MAX培養液を添加したサンプルでは、10時間及び24時間経過した段階で生存しているピロリ菌の数は、MAX培養液不添加の場合に比較して有意に減少している。これは、MAX組成物にピロリ菌の死滅を促進する作用があることを示している。この結果から、本発明の健康増進組成物の摂取により胃内のピロリ菌を減少させる効果が期待できる。
[ピロリ菌の抑制効果B]
株式会社バイオリサーチセンターにおいて、マウスを用いるピロリ菌感染実験を行い、MAX組成物投与群と非投与群について、一定期間飼育後の胃壁に存在するピロリ菌数を調べた。その結果を図9に示す。なお、試験方法は以下のとおりである。
(1)ピロリ菌液の調製・・・冷凍保存したHelicobacter SS-1 株(岡山大学大学院
保健学研究科検査専攻 横田憲治准教授より分与)を解凍し、綿棒でコロンビアヘリコバクター寒天培地に塗抹し、37℃の恒温器内で7日間微好気培養したのち、コロニーを綿棒で釣菌し、生理食塩液5mLに浮遊させ、目視によりMcFarland 1〜2(3〜6×108CFU/mL) の濁度になるように調製した。
(2)マウス・・・日本エルエスシー株式会社より2018年2月21日に入手した8週齢の雌20匹(系統:C57BL/6JJms Slc、入手日の体重:10.0〜25.0g)を対象とし、5週間の予備飼育期間中、ピロリ菌液の接種を週に1回、体重測定を6回、一般状態の観察を一日一回行い、最終菌液接種日にELISA キットを使用して抗体価を測定し、抗体価が感染成立の0.2以上で体重推移及び一般状態に異常が認められなかったマウスを用い、無作為抽出法によって各群の抗体価がほぼ等しくなるようにMAX組成物投与群(8匹)と非投与群(8匹)とに群分けした。
(3)飼育管理・・・温度18〜28℃、湿度30〜80%、明暗各12時間に維持された飼育室において、固形飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製:CRF-1)及び水道水を自由に摂取させる。週に1回のピロリ菌液の接種は、1個体あたり1mLの割合で経口投与した。また、MAX組成物投与群については、予備飼育期間終了後の4週間の間、毎日1回ずつMAX組成物を1個体あたり200μL(MAX組成物として20mg)の割合で経口投与した。
(4)胃内のピロリ菌測定・・・最終投与日の夕刻から絶食させ、翌日にイソフルランの過麻酔で安楽死させて胃を摘出し、剥離した胃の粘膜を生理食塩液1.5mL中に浮遊させ、100μLをコロンビアヘリコバクター寒天培地に塗抹し、37℃の恒温器内で7日間微好気培養したのち、培養後のコロニー数をハンディコロニーカウンターで計測し、生菌数を算出した。
図9で示すマウスを用いた感染実験の結果から、4週間のMAX組成物の投与により、胃壁に存在するピロリ菌を有意(90%以上)に減少させることが明らかである。
[家畜への投与効果]
帯広畜産大学環境保全科及び日本大学農芸科学科栄養生理学研究所の協力により、牛の飼料に対する本健康増進組成物の非投与と投与との場合について、排出された牛糞中の善玉菌及び悪玉菌の割合を調べたところ、非投与では図8(a)、投与では図8(b)で示す結果が得られた。なお、図中の記号は次の菌種を表している。
LBS:Latobacollus(有機物の好気性分解に役立つ乳酸桿菌)
VN :Veillonella(グラム染色陰性の嫌気性球菌)
ST :Streplococoua(グラム染色陰性の嫌気菌の連鎖状球菌)
EG :Enterobacleriaceal(グラム染色陰性の嫌気菌の腸内菌科・・・大腸菌のEsherichia Coli,腐敗菌のOroteus Vulgaris,霊菌のSerratia Marcescents)
NN :Nannocystis(他の細菌を溶かして栄養吸収することが多い粘液細菌目の中の球状菌)
図8(a)(b)の対比から明らかなように、本健康増進組成物の摂取と非摂取とで、病原性や腐敗性の強い細菌(EG,NN)と有用性の高い細菌(LBS)の数値が逆になっている。この結果は、本健康増進組成物の摂取により、牛の体内で悪玉菌が善玉菌によって駆逐されていることを表している。
以上に加え、実施例で用いたものと同じMAX組成物について、海外を含む多くの大学や研究所に試験依頼した結果、多彩な生物活性が明らかになっている。以下に、各試験依頼先からの報告の要約・結論を記載する。
<関西医科大学 竹林直紀医師>
MAX組成物の服用1〜3カ月後のアンケート調査で、大半の人が、排便状態の改善、風邪にかかりにくい、皮膚状態の改善などを自覚する。また、MAX組成物を3〜6カ月服用すると、腸管免疫系が改善され、唾液中の分泌型IgAが上昇する。従って、腸管内でもIgAが上昇していることが推察され、有害菌の感染に対する防御機構として働いている可能性があり、感染やアレルギーに対する抵抗力がつくと推察される。
<福井大学 医学部,鈴鹿医療科学大学>
高脂肪食を与える肥満動物モデルを用い、MAX組成物の投与による体重増加抑制効果を確認した。また、人では、MAX組成物の服用で食欲が出るが、普通以上に食べないことで体重がやや減少することが判った。
<酪農学園大学 畜産飼料科学研究室>
家畜(肉用豚)に対するMAX組成物の投与により、コレステロール値、中性脂肪値、血中グルコースの低下する傾向が見られ、肥育過程における代謝性疾患の予防に繋がると考えられる。
<帯広畜産大学>
豚を用いる実験で、悪臭が軽減した。
<競走馬理化学研究所>
糞中の微生物を調べると、MAX組成物の投与群では病原性微生物(悪玉菌)が減少して善玉菌の比率が増えた。
<蘇州大学動物実験センター>
ネズミとウサギを用いる実験で、MAX組成物を投与すると、飼育室における室内アンモニア濃度がユウイに低下した。
<中国江蘇省研究所>
豚による投与実験で、MAX組成物の成長促進効果が顕著に認められた。また、下痢の発生率が著しく低下した。
<中国江蘇省畜牧獣医所>
鶏を用いる6カ月の実験で、飼育環境が改善し、悪臭が生じなかった。
<塩城市畜牧獣医所>
子豚を対象としてMAX組成物の投与組と非投与組を比較したところ、投与組では食欲増加及び消化機能の改善があることに加え、下痢率は投与組が非投与組より90.4%低下し、養豚リスクを減少させることが判った。また、投与組では、投与10日後から体表に著しい変化が起こり、皮膚がつるつるになり、毛も艶々しくなって健康な様子が見られた。
以上のように、MAX組成物によれば、腸内環境改善効果に加え、腸内環境改善に伴う副次的な効果として、(1)代謝・吸収の改善、(2)便、尿、体臭の脱臭効果、(3)ダイエット効果、(4)抗ピロリ菌作用が認められるが、更に(5)生理痛の緩和作用、(6)口内炎の抑制作用、(7)免疫系の改善作用も確認されている。
(5)生理痛の緩和作用については、血液凝固剤として生理の出血を抑えるビタミンK2がMAX組成物中に産生されているか、もしくは元から腸内にあるビタミンK2産生菌がMAX組成物によって活性化されることで、生理の出血が抑えられるものと考えられる。また、(6)口内炎の抑制作用も同様に、口内炎を抑制するビタミンB2がMAX組成物中に産生されているか、もしくは元から腸内にあるビタミンB2産生菌がMAX組成物によって活性化されることによると想定される。
(7)免疫系の改善作用としては、感染防御効果、過敏性大腸炎改善効果、免疫(アレルギー)調節作用、発がん抑制効果、抗菌効果等が挙げられるが、その各々の作用機構に関しては次のように推測される。
〔感染防御効果〕
身体の感染防御システムでは、パイエル板のM細胞より管腔の抗原が取り込まれると、パイエル板内の樹状細胞を始めとする抗原提示細胞によりT細胞に提示されると同時に、パイエル板B細胞もその抗原を認識し、表面に膜型IgAを発現するsIgA+に分化する。そして、sIgA+B細胞はパイエル板を出て粘膜固有層へ移動し、IgA分泌細胞となる。分泌されたIgAは、上皮層を介して管腔側に排出され、腸管内で感染防御にあたる。そこで、MAX組成物が経口投与された場合、血中IgAが増加すると共に、パイエル板のNK細胞が活性化し、これらの細胞が脾臓、肺、鼻咽頭に移動することで、局所でインフルエンザ等の感染が防御される。
〔過敏性大腸炎改善効果〕
炎症や潰瘍等の器質的疾患がないにも関わらず、下痢や便秘、腹痛等が起こる過敏性大腸炎は、ストレス等により起こるが、MAX組成物を服用することにより著しく症状が改善することがモニターの報告から判る。これは、腸内フローラの改善の結果であると推察される。過敏性大腸炎についてもプロバイオテクスが効果を示すという報告がなされているので、MAX組成物でも改善効果が期待できる。
〔免疫(アレルギー)調節作用〕
アトピー性皮膚炎や花粉症等のアレルギー疾患に対し、MAX組成物を服用すると、著しい改善効果が現れることが多々報告されている。その作用ついてアレルギー疾患の発症メカニズムから考察すると、a)IL-12依存的に未分化のT細胞をT1細胞へ分化誘導、b)活性化T2細胞のアポトーシスの増加によるT2細胞の減少、c)制御性T細胞の誘導及び活性化、によってT1−T2バランスが改善されるものと推察される。
〔発がん抑制効果〕
MAX組成物によるNK活性の増強が報告されている。
〔抗菌効果〕
既述のようにMAX組成物の服用後に唾液中の分泌型IgAが上昇することが認められており、このことからMAX組成物が腸内免疫機構を活性化し、腸内はもちろん、体内各所のIgAの生産が高められると推察される。従って、MAX組成物の服用により、腸管内の悪玉菌に対するIgA抗体ができ、悪玉菌の増殖が抑えられる結果、腸内フローラが改善して便秘や下痢を抑えると想定される。また、MAX組成物の服用により、生体各所の粘膜組織でIgAの生産量が増し、感染症に対する防御能が高まると考えられる。

Claims (6)

  1. セルロース分解性菌として、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)M−4菌株(受託番号:NITE P−02538)と、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)M−5菌株(受託番号:NITE P−02539)と、バチルス・ズブチルスの近縁種であるバチルス・スピーシーズ(Bacillus sp.)M−6菌株(受託番号:NITE P−02940)との少なくとも3種のバチルス属菌を含む非病原性菌類による米糠粉末の発酵物からなる腸内環境改善、高脂肪食摂取による体重増加抑制またはピロリ菌抑制のための組成物。
  2. 前記非病原性菌類が、前記セルロース分解性菌と共に、乳酸菌及びビフィズス菌と麹菌より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の腸内環境改善、高脂肪食摂取による体重増加抑制またはピロリ菌抑制のための組成物。
  3. 前記乳酸菌がラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)NBRC15883菌株である請求項2に記載の腸内環境改善、高脂肪食摂取による体重増加抑制またはピロリ菌抑制のための組成物。
  4. 前記ビフィズス菌がビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)NBRC100015菌株である請求項2又は3に記載の腸内環境改善、高脂肪食摂取による体重増加抑制またはピロリ菌抑制のための組成物。
  5. 前記麹菌がアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)NBRC6215菌株である請求項2〜4のいずれかに記載の腸内環境改善、高脂肪食摂取による体重増加抑制またはピロリ菌抑制のための組成物。
  6. 前記非病原性菌類における総菌数の20%以上がバチルス属菌からなる請求項1〜5のいずれかに記載の腸内環境改善、高脂肪食摂取による体重増加抑制またはピロリ菌抑制のための組成物。
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