JP6595177B2 - 水素ガス充填装置および方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、普及する以前には、小規模な充填設備またはガス欠時の緊急用充填設備が不可欠である。その際、十分な保安距離を有した充填設備の設置場所が非常に限定されており、従来の設計思想で小規模の水素ステーションを設計した場合、設備コストが高価になることが予想される。そのため、小規模な水素ガス充填設備のコンパクト化と同時に、設備の安全化が大きな問題になっている。このように、水素ガス充填装置は、コンパクト化と高い安全性が要求される。
そして、通常、従来の水素ガス充填装置に用いられる蓄圧器は、水素ガスを高圧で貯蔵するため、多くの本数が必要になる。また、従来の水素ガス充填装置では、以下の(1)〜(6)の課題がある。
水素ガスを水素ガス充填装置の容器に充填する場合において、容器内での高圧ガスの温度変化に留意する必要がある。一般に常温条件化では、気体を充填すると発熱する。また、水素ガスの場合、通常の気体と異なり、高圧状態から圧力が降下する際に温度が上昇する特質がある。このような高圧ガスの温度変化は、高圧ガス充填装置の温度管理を困難にすると共に、水素のような可燃性ガスについては、安全性の点において問題となる可能性がある。特に住宅密集地にもスタンドが要求される水素ステーションにおいては、さらに高い安全性が求められることから大きな課題となっている。さらに、装置の設置条件によっては、常温ではなく高温条件での充填の可能性を考慮した水素ガス充填装置が要求される場合がある。
従来の水素ガス充填装置においては、通常、水素ガスを圧縮する圧縮機が必要になる。また、燃料電池自動車に高圧の水素ガスを充填する場合において、直接燃料タンクに供給すると、高圧ガスの温度を安全性の基準温度80℃以下にすることが困難となるため、燃料タンクに供給する前に冷却が必要で、そのための冷却設備を設けることから、水素ガス充填装置の大型化は避けられない。しかし、水素ステーションあるいは各種プロセスにおける設置場所には厳しい制限があり、こうした条件下での水素ガス充填装置の大型化は大きな課題となっている。
市街地に設置される水素ステーションについては、高圧ガスの貯蔵量に一定の制限が課せられている。建築基準法では、地域毎に水素貯蔵量の上限が定められており、2015年のFCV(Fuel Cell Vehicle)普及開始時には主要な水素ステーション建設地となる市街地では、水素供給事業を成立させるに十分な水素ガスを貯蔵できない。貯蔵量の上限が撤廃されなければ、燃料供給事業として成立しない可能性もあり、高圧ガス貯蔵量は大きな課題となっている。
水素ガス充填装置には純度の高い水素ガスが供給され、蓄圧器に充填される。しかし、水素ガスに不純物が混入した場合、従来の水素ガス充填装置では、水素ガスを精製する装置を別に設ける必要があった。また、FCVの車検時の際に、一旦水素ガスをFCVから放出する必要があり、水素ガス充填装置の活用が求められている。その際、FCVから放出した水素ガスを精製して不純物を除去することが求められている。
水素ステーションの場合、70MPa程度の高圧の蓄圧器が要求されている。その場合、圧縮機には、高い圧縮性能が要求され、圧縮機自体の大型化や消費電力増大の問題がある。圧縮機を用いないか、用いる場合でも補助的に使用するような新しい水素ガス充填装置が要求されている。
圧縮機の場合、圧縮音が発生するため、静かな場所で使用する場合、夜間に使用する場合、騒音を防止する対策が必要である。
また、本発明は、小型化、省エネ化、サイレンス化を実現する水素ガス充填装置を提供することを目的とする。
水素ガス充填装置側の蓄圧器が、水素吸蔵合金を内蔵していることで、水素吸蔵合金に水素ガスを吸着させた後、冷却して、未吸着の不純物を放出し除去して水素ガスを精製でき、水素吸着された水素吸蔵合金を加熱することにより水素ガスを放出して蓄圧器内の水素ガス圧力を上昇できる。すなわち、圧縮機を用いることなく、高圧の水素ガスを蓄圧器内に充填できることになる。その後、蓄圧器内の高圧水素ガスを水素ガス使用設備に充填する。
また、加熱手段は、水素ガス使用設備から出る排熱を用いてもよい。また、冷却手段は、装置が寒冷地に設置される場合は、外気による自然空冷を用いてもよい。水素ガス使用設備に応じて、要求される水素ガスの圧力や供給速度が異なることから、それらの要求を満足できるような温度制御が可能な手段を選ぶようにする。
水素吸蔵合金を内蔵する第1の蓄圧器が、水素吸蔵合金を内蔵していることで、水素吸蔵合金に水素ガスを吸着させた後、冷却して、未吸着の不純物を放出し除去して水素ガスを精製でき、水素吸着された水素吸蔵合金を加熱することにより水素ガスを放出して第1の蓄圧器内の水素ガス圧力を上昇できる。すなわち、圧縮機を用いることなく、高圧の水素ガスを第1の蓄圧器内に充填できることになる。その後、蓄圧器内の高圧水素ガスを水素ガス使用設備に充填する。また、第2の蓄圧器を冷却する第2の冷却手段によって、蓄圧する水素ガスを十分に冷却して、水素ガス使用設備に充填し、充填時の水素ガスの温度上昇を抑制する。
また、水素ガス使用設備に供給する水素量を制御する流量制御手段は、流量制御弁を用いることができるが、オリフィスによる円形管路の絞り機構など比較的単純な方法で水素量を制御することがより好ましい。また異なる充填圧の蓄圧器から水素ガス使用設備に水素ガスを供給できるように、異なる径のオリフィスを並列に設けることが好ましい。
減圧容器は、水素ガス使用設備に充填後に、カプラなど接続機器を安全に取り外す場合に、水素ガス使用設備と接続する配管系の水素ガスを一時的に蓄える容器である。この減圧容器に、水素吸蔵合金を内蔵する蓄圧器を用いることができる。冷却手段により水素吸蔵合金を冷却することにより、放出弁などを用いて配管系の水素ガスを大気に放出することなく、減圧容器に取り込むことができる。
充填圧が異なる複数の蓄圧器が設けられる場合、例えば、10MPa、35MPa、70MPaの3つの蓄圧器が設けられる場合、水素ガス使用設備に蓄圧タンク内の水素ガス残量が少なく圧力が1〜2MPaの場合、充填圧の低い10MPaの蓄圧器から水素ガス使用設備に水素ガスを充填する。そして、10MPaの蓄圧器による充填が完了してから、次に充填圧が高い35MPaの蓄圧器から水素ガス使用設備に水素ガスを充填する。そして、35MPaの蓄圧器による充填が完了してから、最も充填圧が高い70MPaの蓄圧器から水素ガス使用設備に水素ガスを充填する。これは、水素ガス使用設備の蓄圧タンク内の圧力と、水素ガス充填装置の蓄圧器の内圧との圧力差により水素ガスを充填していくことから、最も充填圧が低い蓄圧器から充填を始め、充填効率を高めるのと、急激な圧力変動による温度上昇を抑制する効果がある。
本発明の水素ガス充填装置では、圧縮機を用いないことから消費エネルギーを大幅に低減する。しかし、加熱手段と冷却手段もまた、電力エネルギーを消費することから、加熱手段と冷却手段の省エネ対策が必要である。このため、水素吸蔵合金を内蔵する蓄圧器の発熱および吸熱を利用する熱交換器を設ける。水素吸蔵合金は、水素ガスの吸着時に発熱し、一方で、水素ガスの放出時に吸熱する。これらの発熱サイクルと吸熱サイクルにおいて、熱交換器を用いて発熱する熱量を取り込み、吸熱時には熱量を供給することにより、省エネを実現する。
上記構成の蓄圧器では、内部上層に水素吸蔵合金を内蔵しないことから、内部上層は通常の蓄圧器と同様、高圧水素ガスを蓄圧するだけのバッファタンクとして機能する。一方、内部下層は水素吸蔵合金を内蔵することから、前述のように水素ガスの精製器および加圧器として機能できる。水素吸蔵合金を内蔵する蓄圧器の場合、加熱により水素ガスを放出するのであるが、水素吸蔵合金から水素ガスを離脱する反応に時間がかかることから、即時的に水素ガスを放出するのは困難である。そのため、上記のようなハイブリッドの蓄圧器を用いることにより、水素吸蔵合金を内蔵しない内部上層に水素ガスを蓄圧し、即時的に水素ガスを放出できるようにする。
なお、蓄圧器の内部下層の水素吸蔵合金を内蔵する空間体積と、内部上層に水素吸蔵合金を内蔵しない空間体積の割合は特に限定されるものではないが、蓄圧器の内部下層の水素吸蔵合金を内蔵する空間体積を1とすると、内部上層に水素吸蔵合金を内蔵しない空間体積の割合は、1〜3が好ましいであろう。
本発明の水素ガス充填方法は、本発明の第1の観点の水素ガス充填装置を用いて、水素ガスを水素ガス使用設備に充填する方法であって、下記1−1)〜1−6)を備える。
1−1)水素ガスを効率よく吸着できる所定の温度に蓄圧器内の水素吸蔵合金を温度調整する工程
1−2)蓄圧器内の水素吸蔵合金を冷却し、水素吸蔵合金に水素ガス吸着を促す工程
1−3)蓄圧器内に残存するガスを排出し、蓄圧器内に導入された水素ガスを精製する工程
1−4)蓄圧器内の水素吸蔵合金を加熱し、導入された水素ガスを圧縮し蓄圧器に蓄圧する工程
1−5)蓄圧器に蓄圧された水素ガスを流量調整して水素ガス使用設備に充填する工程
1−6)充填終了後に配管内の水素ガスを減圧する工程
次に、蓄圧器内の水素吸蔵合金を冷却するのは、一旦、水素吸蔵合金が水素ガスを吸着し始めると、発熱し、温度が上がっていく。そのため、水素吸蔵合金を冷却して発熱による温度上昇を抑え、水素ガスの吸着効率が高い温度環境に維持して水素ガス吸着を促すのである。
2−1)水素ガスを効率よく吸着できる所定の温度に第1の蓄圧器内の水素吸蔵合金を温度調整する工程
2−2)第1の蓄圧器内の水素吸蔵合金を冷却し、水素吸蔵合金に水素ガス吸着を促す工程
2−3)第1の蓄圧器内に残存するガスを排出し、蓄圧器内に導入された水素ガスを精製する工程
2−4)第1の蓄圧器内の水素吸蔵合金を加熱し、導入された水素ガスを圧縮し蓄圧器に蓄圧する工程
2−5)圧縮された水素ガスを第2の蓄圧器に蓄圧する工程
2−6)第2の蓄圧器を冷却する工程
2−7)第2の蓄圧器に蓄圧された水素ガスを流量調整して水素ガス使用設備に充填する工程
2−8)充填終了後に配管内の水素ガスを減圧する工程
また、圧縮された水素ガスを第2の蓄圧器に蓄圧した後、第2の蓄圧器を冷却するのは、第2の蓄圧器に蓄圧された水素ガスを水素ガス使用設備に充填する際に、水素ガスが膨張して発熱して水素ガス使用設備の充填タンク内の水素ガス温度が上昇するため、第2の蓄圧器に蓄圧している時に、十分に冷却して、水素ガス使用設備の充填タンク内の水素ガス温度が上昇を抑えるためである。
3−1)水素ガス使用設備内の高圧ガスを、第2の蓄圧器に移充填させる工程
3−2)第2の蓄圧器を冷却する工程
3−3)水素ガスを効率よく吸着できる所定の温度に第1の蓄圧器内の水素吸蔵合金を温度調整する工程
3−4)水素ガス使用設備内の低圧ガスを、第1の蓄圧器内の水素吸蔵合金を冷却して水素吸蔵合金に吸着させる工程
3−5)第1の蓄圧器内に残存するガスを排出し、蓄圧器内に導入された水素ガスを精製する工程
3−6)第1の蓄圧器内の水素吸蔵合金を加熱し、導入された水素ガスを圧縮し蓄圧器に蓄圧する工程
3−7)第1および第2の蓄圧器に蓄圧された水素ガスを流量調整して水素ガス使用設備に充填する工程
3−8)充填終了後に配管内の水素ガスを減圧する工程
なお、水素ガス使用設備に充填する水素ガスの流量および充填量の上記算定方法は、水素吸蔵合金が内蔵した蓄圧器からの水素ガス以外にも、装置に設けた圧縮機や、装置外部の水素源から導入する水素ガスについても、第2の蓄圧器に一時的に充填して、充填水素の流量と充填量を算定することも可能である。
(a)本発明の水素ガス充填装置と水素ガス充填方法では、水素吸蔵合金が選択的に水素ガスを吸蔵することを利用し、蓄圧器に内蔵された水素吸蔵合金に水素ガスを吸着させた後に冷却し、水素の圧力を下げた後、未吸着の不純物を放出し除去することによる水素ガスの精製器としての機能を発揮できる。また、水素は水素吸蔵合金に吸蔵させることにより、比較的低圧で安全に貯蔵ができることから、高圧ガス保安法上の規制を遵守した貯蔵が可能である。
(b)水素ガスが吸着された水素吸蔵合金を加熱すると水素ガスの放出により蓄圧器内の圧力が上昇する特性を利用することにより、水素ガス圧力を上昇させる加圧器としての機能を発揮できる。
(c)オリフィスやバルブを利用した比較的単純な方法で水素量を制御し、水素ガスを使用する設備に対して、一定量以上の水素が流れないようにする機能を発揮する。
(d)水素ガス使用設備に充填後に水素ガスを一時的に蓄える水素吸蔵合金を内蔵した蓄圧器を減圧容器として利用することにより、現場での水素ガス放出を回避できる。
特に、燃料電池自動車用の水素ステーションなどのように、危険性の高い高圧ガスに対しても、安全性を確保しながら、安定的に水素ガスを供給できるといった効果がある。
蓄圧器2の容量は、通常、5〜200Lであるが、これらの範囲外でも良く、用途に応じて自由に選定できる。
配管系4には、ベント管6dと窒素ガス(N2)の排出管6eが設けられている。なお、窒素ガスは、後述する準備工程の際、最初に窒素ガスを配管内に満たしておき、後で水素ガスと置換するために用いられる。水素ガス使用設備9と接続する直前で、水素ガスの圧力を計測する圧力計P0が設けられている。ベント管6d、排出管6eも逆止弁である。
先ず、図2のフローの前に準備工程を行う。準備工程とは、最初に配管系4には空気が入っていることから、例えばサイクルパージによって、窒素ガスを導入して空気を窒素ガスで置換し、次に同様にサイクルパージによって、水素ガスを導入して窒素ガスを水素ガスで置換する。サイクルパージとは、配管内を排気し、配管内に窒素ガス等を導入した後に、再度、配管内を排気するというように、配管内の排気と配管内への窒素ガス等の導入とを繰り返すことによって配管内をパージする方法である。
この準備工程を行った後に、以下のステップS01〜S06を実施する。
水素ガスを効率よく吸着できる所定の温度に蓄圧器2内の水素吸蔵合金を温度調整する。
例えば、蓄圧器2内の水素吸蔵合金が、50℃付近で水素ガスの吸着効率が高いのであれば、加熱冷却器3により蓄圧器2の周囲温度を50℃に温度調整する。また、蓄圧器2内の水素吸蔵合金が、−10℃付近で水素ガスの吸着効率が高いのであれば、加熱冷却器3により蓄圧器2の周囲温度を−10℃に温度調整する。
蓄圧器2内の水素吸蔵合金が一旦水素ガスを吸蔵し始めると、水素吸蔵合金が発熱するため、水素吸蔵合金の温度が上昇する。温度が上昇すると、水素ガスの吸着効率が高い温度付近から外れることになり、水素ガスの吸着効率が下がる。そのため、蓄圧器2を加熱冷却器3で冷却して内蔵された水素吸蔵合金を冷却し、水素吸蔵合金に水素ガス吸着を促すようにする。
水素吸蔵合金は水素ガスを選択的に吸着する特質があるため、水素ガス以外は吸着されず、蓄圧器2内に残存する。そのため、十分に水素ガスが吸着された後に、蓄圧器2内に残存するガスを排出できることになる。これにより、蓄圧器2内に導入された水素ガスの純度を導入前の純度よりも高めることができることになる。すなわち、水素ガスが精製されることになる。蓄圧器2は水素ガスの精製器として用いられることになる。
蓄圧器2内の水素吸蔵合金を加熱冷却器3により加熱すると、水素吸蔵合金に吸着された水素ガスが放出される。放出された水素ガスは、蓄圧器2内に貯蔵されることになるので、放出される水素ガスの量が多くなればなるほど水素ガスは圧縮されて蓄圧器に蓄圧することになる。すなわち、水素ガスの圧力を昇圧し、高圧ガスとして貯蔵できることになる。
蓄圧器2に蓄圧された水素ガスは、水素ガス使用設備9の充填プロトコールに従って、配管系4のオリフィス7によって流量調整されながら水素ガス使用設備9に充填される。
なお、充填の際に、水素ガス使用設備9の貯蔵タンクの温度上昇を抑えるために、配管系4の一部(例えば、水素ガス使用設備9の接続配管付近)に、プレクーラ設備を設けて、充填する水素ガスを冷却することでもよい。
充填終了後に配管系4の配管内の水素ガスを減圧して、水素ガス使用設備9から安全に離せるようにする。配管内の水素ガスの減圧は、放出弁(図示せず)を用いることもできるし、蓄圧器2の水素吸蔵合金に水素ガスを吸着させて減圧することも可能である。
水素吸蔵合金は、加熱により貯蔵している水素ガスを放出できるが、水素吸蔵合金から水素ガスを離脱する反応に時間がかかるため、水素吸蔵合金を内蔵しない蓄圧器10に水素ガスを蓄圧し、即時的に水素ガスを放出できるようにする。
水素ガスを効率よく吸着できる所定の温度に蓄圧器(2a,2b)内の水素吸蔵合金を温度調整する。
蓄圧器(2a,2b)内の水素吸蔵合金が一旦水素ガスを吸蔵し始めると、水素吸蔵合金が発熱するため、水素吸蔵合金の温度が上昇する。温度が上昇すると、水素ガスの吸着効率が高い温度付近から外れることになり、水素ガスの吸着効率が下がる。そのため、蓄圧器(2a,2b)を加熱冷却器(3a,3b)で冷却して内蔵された水素吸蔵合金を冷却し、水素吸蔵合金に水素ガス吸着を促すようにする。
水素吸蔵合金は水素ガスを選択的に吸着する特質があるため、水素ガス以外は吸着されず、蓄圧器(2a,2b)内に残存する。そのため、十分に水素ガスが吸着された後に、蓄圧器(2a,2b)内に残存するガスを排出できることになる。これにより、蓄圧器(2a,2b)内に導入された水素ガスの純度を導入前の純度よりも高めることができることになる。すなわち、水素ガスが精製されることになる。蓄圧器(2a,2b)は水素ガスの精製器として用いられることになる。
蓄圧器(2a,2b)内の水素吸蔵合金を加熱冷却器(3a,3b)により加熱すると、水素吸蔵合金に吸着された水素ガスが放出される。放出された水素ガスは、蓄圧器(2a,2b)内に貯蔵されることになるので、放出される水素ガスの量が多くなればなるほど水素ガスは圧縮されて蓄圧器に蓄圧することになる。すなわち、水素ガスの圧力を昇圧し、高圧ガスとして貯蔵できることになる。
蓄圧器(2a,2b)を加熱することにより、圧縮機を用いることなく、蓄圧器(2a,2b)の水素吸蔵合金に貯蔵された水素ガスを放出して、蓄圧器(2a,2b)内の水素ガス圧力を上昇させ、高圧の水素ガスを蓄圧器10に充填する。
蓄圧器10を冷却する冷却器30によって、蓄圧する水素ガスを十分に冷却して、水素ガス使用設備に充填し、充填時の水素ガスの温度上昇を抑制する。蓄圧器10の冷却時に冷却器30が受け取る熱量は、熱交換器5に移され(30a)、熱エネルギーを効率的に利用する。
蓄圧器10に蓄圧された水素ガスは、水素ガス使用設備9の充填プロトコールに従って、配管系4のオリフィス(7a,7b)によって流量調整されながら水素ガス使用設備9に充填される。なお、蓄圧器10に貯蔵された水素ガスは十分に冷却されており、配管系4の一部(例えば、水素ガス使用設備9の接続配管付近)に、プレクーラ設備を特に設ける必要はない。
充填終了後に配管系4の配管内の水素ガスを減圧して、水素ガス使用設備9から安全に離せるようにする。配管内の水素ガスの減圧は、放出弁(図示せず)を用いることもできるし、蓄圧器(2a,2b)の水素吸蔵合金に水素ガスを吸着させて減圧することも可能である。
蓄圧器(10,11)を2台設けることで、水素ガスの貯蓄量を増やすことができ、また異なる充填圧の水素ガス(例えば、40MPa,70MPaなど)を貯蓄することができる。
また、蓄圧器(10,11)を冷却する冷却器(30,31)によって、蓄圧器(10,11)内で蓄圧する水素ガスを十分に冷却して、水素ガス使用設備に充填し、充填時の水素ガスの温度上昇を抑制する。蓄圧器(10,11)の冷却時に冷却器(30,31)が受け取る熱量は、熱交換器5に移され(30a,31a)、熱エネルギーを効率的に利用する。2つの蓄圧器(10,11)は、同じ充填圧のものであっても、異なる充填圧のものであっても良い。
蓄圧器(10,11)では、高圧状態で水素ガスを貯蓄するため、高圧ガス保安法による貯蓄量の制約を受けるため、蓄圧器の個数を多くすることは困難であるが、蓄圧器(2a,2b,・・・,2n)の場合、水素吸蔵合金に水素ガスを吸蔵している状態は、高圧状態で水素ガスを貯蓄するものではなく、高圧ガス保安法による貯蓄量の制約を受けないため、蓄圧器の個数を多くすることが可能である。
(ステップS22)蓄圧器11を冷却する冷却器31によって、蓄圧する水素ガスを十分に冷却して、水素ガス使用設備に再充填する際の充填時の水素ガスの温度上昇を抑制する。
(ステップS23)蓄圧器2n内の水素吸蔵合金を温度調整する。
(ステップS24)蓄圧器2n内の水素吸蔵合金を冷却する。
水素ガス使用設備内の低圧ガスを蓄圧器2n内の水素吸蔵合金に吸着させる。
(ステップS25)蓄圧器2n内に残存するガスを排出し、水素ガスを精製する。
(ステップS26)蓄圧器2n内の水素吸蔵合金を加熱し、水素ガスを圧縮する。
(ステップS27)蓄圧器11と蓄圧器2nに蓄圧された水素ガスを水素ガス使用設備に充填する。
(ステップS28)充填終了後に配管内の水素ガスを減圧する。
蓄圧器20の内部上層20bの空間は、水素吸蔵合金を内蔵しないことから、水素ガスを蓄圧するだけのバッファタンクに用いられる。また、内部下層20aは水素吸蔵合金を内蔵することから、水素ガスの貯蔵、精製および加圧に用いられる。水素吸蔵合金は、加熱により貯蔵している水素ガスを放出できるが、水素吸蔵合金から水素ガスを離脱する反応に時間がかかる。そのため、水素吸蔵合金を内蔵しない内部上層20bに水素ガスを蓄圧し、即時的に水素ガスを放出できるようにしたものである。蓄圧器の内部下層20aの空間体積と、内部上層20bの空間体積の割合は1対2にしている。
すなわち、水素ガス使用設備90の排熱を用いて蒸気を発生させ、蒸気ダクト91を通して、その蒸気を蓄圧器2の周辺に通すことにより、蒸気が有する熱を蓄圧器2の内部の水素吸蔵合金に伝達する(92)。
このように水素ガス使用設備90の排熱を用いて蓄圧器20内の水素吸蔵合金を加熱し、エネルギーの利用効率を高め、蓄圧器20に蓄圧された水素ガスを流量調整して水素ガス使用設備90に充填する。
3,3a,3b,3n 加熱冷却器
4 配管系
5 熱交換器
6a〜6g 開閉制御弁
7,7a〜7c オリフィス
8a〜8f 開閉弁
9 水素ガス使用設備(FCV)
10,11 水素吸蔵合金を内蔵しない蓄圧器
20 内部下層にのみ水素吸蔵合金を内蔵する蓄圧器
30 冷却器
90 水素ガス使用設備(非常用電源)
91 蒸気ダクト
92 蒸気加熱器
P0,P1,P2,Pn,P10,P12 圧力計
T1,T2,T3,Tn 温度計
Claims (10)
- 水素ガスを所定の圧力で水素ガス使用設備に供給する水素ガス充填装置であって、
水素吸蔵合金を内蔵する蓄圧器と、
水素吸蔵合金を加熱して水素吸蔵合金に吸蔵された水素ガスを放出し水素ガス圧力を上昇させる加熱手段(加圧手段)と、
水素吸蔵合金を冷却して水素ガス吸蔵を促し水素ガス圧力を減圧させる冷却手段(減圧手段)、
を備え、
前記蓄圧器は、充填圧が異なるものが複数設けられ、その中の1つは、前記水素ガス使用設備に充填後に供給配管の水素ガスを蓄えて供給配管の減圧を行う減圧容器として用いられ、
それぞれの蓄圧器が前記水素ガス使用設備に連通される配管系が設けられたことを特徴とする水素ガス充填装置。 - 前記水素ガス使用設備に水素ガスを充填する際、
充填圧が低い蓄圧器から充填を始め、充填圧が低い蓄圧器の充填が完了してから、充填圧が高い蓄圧器の充填を始めるように、前記配管系と蓄圧器の間に設けられたバルブを制御する制御手段が設けられることを特徴とする請求項1に記載の水素ガス充填装置。 - 上記の水素吸蔵合金を内蔵する蓄圧器は、水素吸蔵合金が水素ガスを選択的に吸蔵する特性を利用し、水素吸蔵合金に水素ガスを吸着させた後に前記冷却手段により冷却し、蓄圧器内の水素ガス圧力を下げた後に、未吸着の不純物を蓄圧器から放出し除去することにより、水素ガスの精製を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の水素ガス充填装置。
- 上記の水素吸蔵合金を内蔵する蓄圧器の発熱および吸熱を利用する熱交換器が設けられ、
前記加熱手段は、水素吸着合金の水素ガス吸着の際の発熱を利用し、
前記冷却手段は、水素吸着合金の水素ガス放出の際の吸熱を利用する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の水素ガス充填装置。 - 前記加熱手段(加圧手段)は、
金属酸化反応の発熱を利用するものであり、
金属酸化反応を行う金属を内蔵し、
該金属に対して、酸素含有ガスを供給または遮断する弁および配管を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の水素ガス充填装置。 - 請求項1〜5の何れかに記載の水素ガス充填装置に用いられる蓄圧器であって、
該蓄圧器は、内部下層に水素吸蔵合金を内蔵し、内部上層に水素吸蔵合金を内蔵せず、
前記加熱手段および前記冷却手段が、該蓄圧器の内部下層の周囲に設けられたことを特徴とする水素ガス充填装置用蓄圧器。 - 水素吸蔵合金を内蔵する蓄圧器と、水素吸蔵合金を加熱して水素吸蔵合金に吸蔵された水素ガスを放出し水素ガス圧力を上昇させる加熱手段(加圧手段)と、水素吸蔵合金を冷却して水素ガス吸蔵を促し水素ガス圧力を減圧させる冷却手段(減圧手段)を備える水素ガス充填装置を用いて、水素ガスを水素ガス使用設備に充填する方法であって、
1)水素ガスを効率よく吸着できる所定の温度に蓄圧器内の水素吸蔵合金を温度調整する工程、
2)蓄圧器内の水素吸蔵合金を冷却し、水素吸蔵合金に水素ガス吸着を促す工程、
3)蓄圧器内に残存するガスを排出し、蓄圧器内に導入された水素ガスを精製する工程、
4)補助的に圧縮機を用いて水素ガスを加圧し、蓄圧器内の水素吸蔵合金を加熱し、導入された水素ガスを圧縮し蓄圧器に蓄圧する工程、
5)蓄圧器に蓄圧された水素ガスを流量調整して水素ガス使用設備に充填する工程、
6)充填終了後に配管内の水素ガスを減圧する工程、
を備えたことを特徴とする水素ガス充填方法。 - 水素吸蔵合金を内蔵する第1の蓄圧器と、水素吸蔵合金を内蔵しない第2の蓄圧器と、水素吸蔵合金を加熱して水素吸蔵合金に吸蔵された水素ガスを放出し水素ガス圧力を上昇させる加熱手段(加圧手段)と、水素吸蔵合金を冷却して水素ガス吸蔵を促し水素ガス圧力を減圧させる冷却手段(減圧手段)と、前記第2の蓄圧器を冷却する第2の冷却手段と、水素ガス使用設備に接続する接続手段と、水素ガス使用設備に供給する水素量を制御する流量制御手段を備える水素ガス充填装置を用いて、水素ガス使用設備から一時的に水素ガスを放出して後で充填する方法であって、
1)水素ガス使用設備内の高圧ガスを、第2の蓄圧器に移充填させる工程、
2)第2の蓄圧器を冷却する工程、
3)水素ガスを効率よく吸着できる所定の温度に第1の蓄圧器内の水素吸蔵合金を温度調整する工程、
4)水素ガス使用設備内の低圧ガスを、第1の蓄圧器内の水素吸蔵合金を冷却して水素吸蔵合金に吸着させる工程、
5)第1の蓄圧器内に残存するガスを排出し、蓄圧器内に導入された水素ガスを精製する工程、
6)第1の蓄圧器内の水素吸蔵合金を加熱し、導入された水素ガスを圧縮し蓄圧器に蓄圧する工程、
7)第1および第2の蓄圧器に蓄圧された水素ガスを流量調整して水素ガス使用設備に充填する工程、
8)充填終了後に配管内の水素ガスを減圧する工程、
を備えたことを特徴とする水素ガス充填方法。 - 水素吸蔵合金を内蔵する蓄圧器と、水素吸蔵合金を加熱して水素吸蔵合金に吸蔵された水素ガスを放出し水素ガス圧力を上昇させる加熱手段(加圧手段)と、水素吸蔵合金を冷却して水素ガス吸蔵を促し水素ガス圧力を減圧させる冷却手段(減圧手段)を備える水素ガス充填装置を用いて、水素ガスを水素ガス使用設備に充填する方法であって、
水素ガス使用設備からの排熱を回収する工程、
前記排熱を用いて蓄圧器内の水素吸蔵合金を加熱し、導入された水素ガスを圧縮し蓄圧器に蓄圧する工程、
蓄圧器に蓄圧された水素ガスを流量調整して水素ガス使用設備に充填する工程、
を備えたことを特徴とする水素ガス充填方法。 - 水素吸蔵合金を内蔵する第1の蓄圧器と、水素吸蔵合金を内蔵しない第2の蓄圧器と、水素吸蔵合金を加熱して水素吸蔵合金に吸蔵された水素ガスを放出し水素ガス圧力を上昇させる加熱手段(加圧手段)と、水素吸蔵合金を冷却して水素ガス吸蔵を促し水素ガス圧力を減圧させる冷却手段(減圧手段)と、前記第2の蓄圧器を冷却する第2の冷却手段と、水素ガス使用設備に接続する接続手段と、水素ガス使用設備に供給する水素量を制御する流量制御手段を備える水素ガス充填装置を用いて、水素ガスを水素ガス使用設備に充填する方法であって、
水素吸蔵合金を内蔵しない第2の蓄圧器内の水素ガスの圧力と温度、又は、蓄圧器内の水素ガスの重量、或は、蓄圧器内の水素ガスの圧力と温度および重量、を測定することにより、水素ガス使用設備に充填する水素ガスの流量および充填量を算定することを特徴とする水素ガス充填方法。
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