JP6594575B1 - ジルコニア焼結体からなる熱処理用部材 - Google Patents

ジルコニア焼結体からなる熱処理用部材 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた耐食性及び耐久性を有する上に、焼成する電子部品を均一に加熱することができる熱処理用部材の提供。【解決手段】次の要件a)〜g)を満たすジルコニア焼結体からなる熱処理用部材。a)Y2O3を安定化剤とし、結晶相の99容積%以上が立方晶系ジルコニアであるジルコニア焼結体からなる。b)気孔率が0.3%以下である。c)平均結晶粒径が5〜10μmである。d)最小結晶粒径が3μm以上、最大結晶粒径が15μm以下である。e)Al2O3含有量が0.05wt%以下である。f)〔SiO2(wt%)/Y2O3(wt%)〕×100が0.20以下である。g)Al2O3及びSiO2以外の不純物量が0.02wt%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は耐食性及び耐久性に優れたジルコニア焼結体からなる熱処理用部材に関する。
スマートフォンをはじめとする電子機器はめざましい技術開発により小型化・高性能化が急速に進んでいる。また、最近では自動車の安全運転をサポートする様々な安全装置が開発され、多くの自動車に搭載されている。そのため、小型化・高性能化により電子部品の製造条件も益々厳しくなり、特に焼成工程が非常に重要なポイントとなっている。
以前はブロック形状の焼結体を焼成し、ブロックから切り出して電子部品用の素材を製造していたが、最近では使用される圧電体をはじめとする電子部品も小型化・高性能化しており、精密な組成制御だけでなく、小型で高性能化を図るため部品構造の多層化などが採用されており、焼成後に加工することなく、そのまま電子部品を製造するケースが非常に多くなってきている。また、従来の電子部品と比べて組成も複雑になっており、成分によっては焼成により蒸発するなどして狙いとする組成からずれてしまうため、目標通りの特性が出ない等の問題が起こり易くなっている。そこで、焼成後の電子部品の組成変動を最小限に抑制するため、焼成速度を速くしたり、焼成する電子部品との反応が極力少ない熱処理用セッターを採用するなどの対策が講じられている。
例えば特許文献1には、安定化剤としてY及び/又はCaOを6〜20mol%含有し、SiO含有量が0.2重量%以下である立方晶系ジルコニアからなる熱処理用セッターが開示されている。しかしながら、以前の熱処理用セッターに比べて耐食性は向上するものの、焼成した電子部品と反応して接着してしまうという問題がある。
また特許文献2では、焼成する電子部品との反応を一層抑制するためSiO、NaO及びKOの合計量を特定の範囲内に規定しているが、必ずしも十分とは言えない。
また、特許文献3及び4には、焼成用セッターの材質の改善ではなく、セッター表面に凹凸又は島状膨出部を設け、焼成する電子部品との接触を少なくして反応を抑制する発明が開示されている。即ち、特許文献3では、凸部の高さ、凸部間のピッチ、凸部の形状、凹部の厚さを規定しており、特許文献4では、島状膨出部の高さ、径、特定面積内の数を規定している。しかしながら、これらの規定を満たしたとしても、凹凸の凸部の最大高さと最小高さの差が大きい場合には、最近の小型化されている電子部品の焼成に適用すると、焼成用セッターの上に電子部品を載置した際に、各凸部と電子部品との間隔のばらつきが大きくなるため、電子部品が凸部上にきちんと載っている部分と、電子部品と凸部との間に隙間が開いている部分が混在する状態となり、焼成による変形等が生じるという問題がある。
特開2004−315293号公報 特開2005− 82429号公報 特開2013−178053号公報 特開2003−300782号公報
本発明は、従来の緻密質のジルコニア焼結体からなる熱処理用部材よりも優れた耐食性及び耐久性を有する上に、焼成する電子部品を均一に加熱することができる熱処理用部材の提供を目的とする。なお、本発明でいう耐食性とは焼成する電子部品の成分と熱処理用部材との反応が少なく、また焼成する電子部品への熱処理用部材成分の浸透が非常に少ないことを意味し、耐久性とは繰り返し使用しても熱処理用部材の変形や割れ等が非常に少なく、焼成する電子部品への影響が非常に少ないことを意味する。
上記課題は次の1)〜2)の発明によって解決される。
1) 下記要件a)〜g)を満たすジルコニア焼結体からなることを特徴とする熱処理用部材。
a)Yを安定化剤とし、結晶相の99容積%以上が立方晶系ジルコニアであるジルコニア焼結体からなる。
b)気孔率が0.3%以下である。
c)平均結晶粒径が5〜10μmである。
d)最小結晶粒径が3μm以上、最大結晶粒径が15μm以下である。
e)Al含有量が0.05wt%以下である。
f)〔SiO(wt%)/Y(wt%)〕×100が0.20以下である。
g)Al及びSiO以外の不純物量が0.02wt%以下である。

2) 更に、熱処理用部材表面に凹凸を有し、下記要件h)〜k)を満たすことを特徴とする1)記載の熱処理用部材。
h)前記凹凸の凸部の最大高さ:Ryが30μm以下である。
i)前記凹凸の凸部の幅が120μm以下である。
j)前記凹凸の凸部の最大高さと最小高さの差が15μm以下である。
k)前記表面の1mmの面積内に前記凹凸の凸部が30〜200個存在する。
本発明によれば、従来の緻密質のジルコニア焼結体からなる熱処理用部材よりも優れた耐食性と耐久性を有する熱処理用部材を提供できる。特に代表的な電子部品である圧電体の焼成ではPb成分との反応が非常に少ないため目的とする組成を有する圧電体の焼成が可能であり、また被焼成体を均一に加熱できるため焼成した圧電体の変形の抑制だけでなく、割れ等の発生も抑制できる。そのため、従来、主としてPb系成分で製造されている圧電体だけでなく、最近、環境低減の点からも注目されている非Pb系圧電体の焼成も可能にするという顕著な効果を有する。更にこれらの電子部品の焼成だけでなく、全固体二次電池の熱処理等にも有用であり、広い範囲の用途に使用できる。
本発明の熱処理用部材表面の凸部の幅の測定値に関する説明図。 本発明の熱処理用部材表面の凸部の高さの測定値に関する説明図。
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明者は前述のような現状に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、熱処理用部材としてのジルコニア焼結体の優れた耐食性と耐久性を実現するためには、結晶相を立方晶系ジルコニアのみとし、焼結密度、結晶粒径、不純物量などを制御するだけでは不十分であることを突き止めた。更に、これらの要件だけでは小型化・高性能化が求められる圧電体をはじめとする電子部品の本来の特性を発現できるような焼成が安定して行えないことから、各要件をより高精度に制御することが必要不可欠であることを見出した。
即ち、不純物であるSiO量については、規定含有量内であっても、安定化剤であるY含有量との比率によっては目的とする十分な特性が得られないこと、また、ジルコニア結晶粒径についても、平均値だけでなく最小結晶粒径、最大結晶粒径も同時に制御しないと耐食性のバラツキや熱的安定性等について目的とする本来の特性を有する熱処理用部材が得られないことが分かった。そして、SiOや一部のYは結晶粒界に偏析しており、それらの結晶粒径にもよるが、偏析量及び偏析状態が耐食性及び耐久性に大きく影響するため、これらの要件を高精度に制御する必要があることが分かった。
更に、小型化・高性能化が求められる電子部品の焼成では、変形や割れがなく安定した特性とする必要があることは当然であるが、焼成する際に電子部品と熱処理用部材との接触面と非接触面とで電子部品の組成が変わってしまうと安定な特性が得られない。
そこで、熱処理用部材表面に凹凸を設け、更には凸部の高さや幅だけでなく凸部の最大高さと最小高さの差も制御することにより焼成する電子部品への加熱状態を均一にすると、組成変動を大幅に抑制できることを見出した。
次に、本発明の各構成要件について説明する。まず請求項1の発明の要件a)〜g)について説明する。
a)Yを安定化剤とし、結晶相の99容積%以上が立方晶系ジルコニアであるジルコニア焼結体からなる点について
本発明ではYを安定化剤とするジルコニア焼結体を用いる。これにより他の安定化剤を用いた場合に比べて、耐食性、耐久性が高く優れた特性を有する熱処理用部材が得られる。
また本発明では結晶相の99容積%以上が立方晶系ジルコニアであるジルコニア焼結体を用いる。焼結体中に単斜晶系ジルコニアや正方晶系ジルコニアが混在すると、熱処理用部材として使用する際の加熱・冷却により、ジルコニア結晶相の相転移に伴う体積膨張によってマイクロクラックが発生し、焼成する電子部品成分の浸透やマイクロクラックの成長による割れが発生し、耐食性や耐久性、更には耐熱衝撃抵抗性の低下を招く。
結晶相は立方晶系ジルコニアのみからなることが望ましいが、正方晶系ジルコニア及び単斜晶系ジルコニアが1容積%以下であれば使用可能である。
本発明における立方晶系、正方晶系及び単斜晶系ジルコニアの含有量は、焼結体表面を鏡面仕上げした試料を用いて、X線回折により、回折角27〜33°から72〜75.5°の走査範囲で測定し、下式(数1参照)により求めることができる。
なお、X線回折条件は、X線源:CuKα、出力:40kV/40mA、発散スリット:1/2°(回折角27〜33°)、1°(回折角72〜75.5°)、散乱スリット:1/2°(回折角27〜33°)、1°(回折角72〜75.5°)、受光スリット:0.15mm、スキャンスピード:0.5°/min、走査軸:2θ/θ、モノクロ受光スリット:0.8mm、カウンタ:シンチレーションカウンタ、モノクロメーター:自動モノクロメーターである。
Figure 0006594575
b)ジルコニア焼結体の気孔率が0.3%以下である点について
本発明では、ジルコニア焼結体の気孔率を0.3%以下、好ましくは0.2%以下とする。ここでいう気孔率は開気孔率を意味し、測定はJIS R1634に準拠して行う。
気孔率が0.3%を超えると焼結体の気孔が増加し、該気孔に焼成する電子部品の成分が浸透して耐食性や耐久性が低下する。なお、実際の製造上の下限は0.01%程度である。
c)ジルコニア焼結体の平均結晶粒径が5〜10μmである点について
本発明では、ジルコニア焼結体の平均結晶粒径を5〜10μm、好ましくは6〜10μmとする。
平均結晶粒径が5μm未満では、結晶粒径が小さくなってジルコニア結晶粒界の総面積が大きくなり、粒界への焼成する電子部品成分の浸透が起こりやすくなって耐食性が低下する。一方、10μmを超えると、耐食性への影響はさほど大きくないが、強度低下を来たし、その結果、耐熱衝撃抵抗性や耐久性が低下する。
結晶粒径の測定は、まず焼結体表面をダイヤモンド砥石と砥粒を用いて鏡面仕上げし、得られた鏡面に熱エッチングを施し、走査電子顕微鏡を用いて視野に100個以上の結晶粒径が観察できる倍率で観察し写真撮影する。次いで得られた写真を画像解析して結晶粒子1個1個の面積を求め、その面積から円相当直径に換算した値を1個の結晶粒径として算出する。このようにして結晶粒径を算出した結晶粒子300個について、円相当直径を累積分布で表した時の累積50%の径を平均結晶粒径とする。
d)ジルコニア焼結体の最小結晶粒径が3μm以上、最大結晶粒径が15μm以下である点について
前記平均結晶粒径が同じでも結晶粒径分布が異なると耐食性や耐久性が異なる。上記ジルコニア焼結体の最小結晶粒径と最大結晶粒径の少なくとも一方が規定範囲外の場合は、結晶粒径分布が広いことになり、耐食性、耐久性及び耐熱衝撃抵抗性が低下する。好ましくは最小結晶粒径が4μm以上、最大結晶粒径が12μm以下である。
本発明における最小結晶粒径と最大結晶粒径は、前記平均結晶粒径の測定結果を用い、円相当直径の累積10%の値を最小結晶粒径、累積90%の値を最大結晶粒径とする。
e)ジルコニア焼結体のAl含有量が0.05wt%以下である点について
本発明では、ジルコニア焼結体のAl含有量を0.05wt%以下、好ましくは0.03wt%以下とする。
Alはジルコニア結晶粒界に存在し、被焼成体と反応して耐食性を低下させる原因となる。なお、実際の製造上の下限は0.01wt%程度である。
f)ジルコニア焼結体の〔SiO(wt%)/Y(wt%)〕×100が0.20以下である点について
本発明では、ジルコニア焼結体の〔SiO(wt%)/Y(wt%)〕×100を0.20以下、好ましくは0.15以下とする。
優れた耐食性を有するジルコニア焼結体を得るにはSiO含有量を少なくする必要があるが、更にYに対するSiOの含有比率も重要である。即ち、ジルコニア結晶粒界にSiO及び一部のYが偏析するが、安定化剤であるY含有量によって許容されるSiO含有量が大きく変化するため、耐食性維持の観点から上記式の要件を満たす必要がある。上記値が0.20を超えると、ジルコニア焼結体が被焼成体と反応して耐食性や耐久性が低下する。なお、実際の製造上の下限は0.03程度である。
g)ジルコニア焼結体のAl及びSiO以外の不純物量が0.02wt%以下である点について
本発明ではジルコニア焼結体のAl及びSiO以外の不純物量を0.02wt%以下、好ましくは0.01wt%以下とする。Al及びSiO以外の不純物とはNaO、KO、MgO、CaO等である。
前記不純物量が0.02wt%を超えると、SiOなどと共にガラス相や第2相をジルコニア結晶粒界に形成し、被焼成体と反応して耐食性や耐久性が低下する。なお、実際の製造上の下限は0.005wt%程度である。
請求項2の発明では、更に熱処理用部材表面に凹凸を有する。この凹凸に係る要件h)〜k)について説明する。
h)前記凹凸の凸部の最大高さ:Ryが30μm以下である点について
上記最大高さ:Ryは30μm以下、好ましくは28μm以下とする。
この最大高さは焼成する電子部品特性には殆ど影響しないが、30μmを超えると焼成による変形やハンドリングにより凸部の欠け等の破損が起こり、そのため焼成した電子部品に欠けや割れ、変形等が発生することがあるので好ましくない。なお、実際の製造上の下限は10μm程度である。前記最大高さ:Ryの測定は、JIS B 0601(1994)に準拠して行う。
i)前記凹凸の凸部の幅が120μm以下である点について
前記凹凸の凸部の幅は120μm以下、好ましくは100μm以下とする。凸部の幅が120μmを超えると、1個の凸部の頂点の面積が大きくなるため、焼成する電子部品との接触面積が大きくなり、電子部品の組成によっては熱処理用部材と反応して組成の変動や引っ付きが起きることがあるので好ましくない。なお、実際の製造上の下限は45μm程度である。
前記凸部の幅は、熱処理用部材表面を触針式やレーザー顕微鏡等による非接触式で測定した断面形状の曲線に基づいて、一つの山を挟む二つの谷底間の距離を測定した値とする(図1参照)。なお、測定長さ1000μmの範囲で30点測定した時の平均値を採用する。
j)前記凹凸の凸部の最大高さと最小高さの差が15μm以下である点について
前記凹凸の凸部の最大高さと最小高さとの差は15μm以下、好ましくは13μm以下とする。差が15μmを超えると、焼成する電子部品が凸部で支持されない箇所が発生し、結果的に電子部品を支持する凸部が減って、焼成による変形や割れが起こり易くなることがあるので好ましくない。なお、実際の製造上の下限は5μm程度である。
前記凹凸の凸部の高さは、熱処理用部材表面を触針式やレーザー顕微鏡等による非接触式で測定した断面形状の曲線に基づいて、隣り合う山頂と谷底との距離を測定した値とする(図2参照)。なお、1000μmの長さに存在する凸部を30点測定した時の平均値を採用する。
k)前記表面の1mmの面積内に前記凹凸の凸部が30〜200個存在する点について
前記凹凸の凸部の個数は30〜200個、好ましくは40〜150個とする。該個数が30個未満では、焼成する電子部品が凸部に十分に載った状態にならず、電子部品の一部が載らずに傾いた状態で、或いは隣接する凸部間に“ブリッジ”の様に載った状態で焼成されるため変形等の問題が発生することがあり好ましくない。一方、個数が200個を超えると、熱処理用部材に載っている電子部品と熱処理用部材の凸部の接触面積が大きくなり、引っ付きや反応が発生したり、電子部品の下の部分の空間が狭くなって凸部に載っている面と反対側の面との雰囲気に差が生じ、結果的に焼成した電子部品の特性が不均一になったり変形したりすることがあるため好ましくない。
前記凹凸の凸部の個数は熱処理用部材表面を非接触式のレーザー顕微鏡等を用いて測定した時の表面の3D画像から計測した値とする。なお、測定面積1000μm×1000μmの個数を計測し、これを10点測定した時の平均値を採用する。
本発明で用いるジルコニア焼結体及び本発明の熱処理用部材は種々の方法で作製できるが、その一例について説明する。
ジルコニアとイットリアの含有量が所定のモル比となるようにジルコニウム化合物の水溶液とイットリウム化合物の水溶液を均一に混合し、加水分解し、水和物を得た後、脱水、乾燥させ、400〜1300℃で仮焼してジルコニア粉体を得る。得られた仮焼ジルコニア粉体を湿式で公知のポットミル、アトリッションミル等の粉砕機を用いて粉砕・分散処理してスラリーを得る。スラリー中の粉体粒子の平均粒子径は0.4〜0.8μm、好ましくは0.4〜0.6μmとする。平均粒子径は粉砕・分散で使用するボール径、ボール充填量、処理時間により制御する。
平均粒子径が0.4μm未満では、微細な粉体粒子が増える上に、この微細な粉体粒子の再凝集により粗大な凝集体が生じてブロードな粒度分布となり、結果的に焼結体の結晶粒径分布も広がることになる。一方、平均粒子径が0.8μmを超えると、粗い粉体粒子が増えて焼結性が低下するため気孔率が高くなり、また、平均粒子径が0.4μm未満の場合と同様に、結晶粒径分布が広くなる傾向があり、耐食性や耐久性が低下するので好ましくない。なお、本発明における平均粒子径とは、一次粒子が凝集した二次粒子の粒子径の平均値のことであり、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。
前記粉砕、分散処理で得たスラリーに公知のバインダー(例えばPVA、アクリル樹脂等)を所定量添加し、スプレードライヤーで乾燥して成形用粉体を作製する。この成形用粉体の粒度は30〜70μmが好ましい。この範囲を外れると、後述する金型プレス成形において目的とするきっちりとした凹凸部が成形できなくなるので好ましくない。
なお、成形体表面の凹凸は表面を凹凸加工した金型を用いて形成するが、加工方法としては公知のショットブラスト、化学エッチング等が採用できる。金型表面の凹凸の大きさ、形状、数量等は、本発明の熱処理用部材に適した範囲内となるように、焼成収縮を考慮して適宜調節する。
成形体は金型を用いて成形圧300〜1500kgf/cmでプレス成形することにより得られる。得られた成形体を大気中、1560〜1700℃、好ましくは1560〜1680℃で焼成して本発明の熱処理用部材を得る。焼成温度が1560℃未満では平均結晶粒径が8μm未満となってジルコニア結晶粒界面積が大きくなり、ジルコニア結晶粒界への電子部品成分の浸透が起こり易くなるため耐食性が低下する。一方、焼成温度が1700℃を超えると、平均結晶粒径や最大結晶粒径が適正範囲外となり機械的強度が低下し、耐熱衝撃抵抗性が低下する。
本発明の熱処理用部材は熱処理用セッターに最適である。セッターとして板状で用いる場合の厚みは従来のものと同様でよく特に制限はないが、通常は2〜5mm程度とする。また、全固体二次電池用電解質等の高機能粉体の合成は多種の混合原料粉体を容器に入れて行うが、合成後に前記容器と合成粉体との反応や引っ付きにより合成粉体の組成が変動することがあり、更に前記容器を繰り返し合成に用いた際に、前記容器の反応部分と接触していた合成粉体とそうでない合成粉体の結晶構造が異なることがある。本発明の熱処理用部材はこのような問題を解決できるので粉体合成用容器としても有用である。更に単結晶育成用容器、熱処理用容器、環状炉用炉心管、ロータリーキルン用チューブ等としても用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1、比較例1
純度99.9wt%のオキシ塩化ジルコニウム(第一希元素化学工業社製:酸塩化ジルコニウム)と純度99.9wt%の硝酸イットリウム(高純度化学研究所製)を〔表1〕の実施例1(試料No.7を除く)及び比較例1(試料No.1、3、4を除く)の各欄に示すY含有量となるように混合した後、水を加えて水溶液を得た。この水溶液を加熱還流下で加水分解し、脱水、乾燥してYが固溶した水和ジルコニウムを得た後、1300℃で1時間仮焼してジルコニア粉体を得た。得られたジルコニア粉体を、水を溶媒とする湿式で、耐摩耗性ジルコニア(ニッカトー社製:YTZ)製のボール(φ5mm)及びタンクからなるアトリッションミルを用いて粉砕・分散しスラリーを得た。
比較例1の試料No.1については、シリカゾル(日産化学社製:ST−N)を混合して水溶液とした点を除き、上記と同様の手順でジルコニア粉体とし、粉砕・分散してスラリーを得た。
比較例1の試料No.4については、更に平均粒子径0.3μm、純度99.99%のAl粉体(住友化学社製:AKP−30)を混合して水溶液とした点を除き、上記と同様の手順でジルコニア粉体とし、粉砕・分散してスラリーを得た。
実施例1の試料No.7と比較例1の試料No.3については、更に平均粒子径15μmで純度99.97%のZrO粉体(第一希元素化学工業社製:WG−8S)と、平均粒子径1.0μmで純度99.95%のY粉体(信越化学工業社製:RUP)を、各欄に示すY含有量となるように混合して水溶液とした点を除き、上記と同様の手順でジルコニア粉体とし、粉砕・分散してスラリーを得た。
粉砕・分散により得られた各スラリー中の粉体の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製:マイクロトラックMT3300EX)を用いて測定した。結果を〔表1〕に示す。

次に、各スラリーに、PVA系バインダー(日本酢ビ・ポバール社製:JP−05)を1wt%添加し、スプレードライヤーで乾燥して平均粒度が50μmのスプレードライヤー粉体を得た後、該粉体を、金型面が平坦な金型を用いて1000kgf/cmの圧力で金型プレス成形して成形体を得た。得られた各成形体を高純度ジルコニア製敷板の上に載せ、大気中、1550〜1720℃で焼成して焼結体を得た。得られた焼結体の特性を〔表1〕に示す。
上記実施例1及び比較例1で作製した各焼結体を用い、下記のようにして熱処理用セッターを作製し、その耐食性及び耐久性を調べた。結果を〔表1〕に示す。

(1)耐食性試験
各焼結体を、ダイヤモンド砥石を用いて算術平均粗さRaが1μm以下〔JIS B 0601(1994)〕となるように研削加工し、15mm×15mm×3mmの大きさの熱処理用セッターを作製した。
市販のPbO粉末(純度99%以上、平均粒子径10μm以下:シグマアルドリッチジャパン社製)を用いて金型プレス成形によりφ10×1mmのペレットを作製して被焼成体とし、上記熱処理用セッター(15mm×15mmの面)の上に載せ、更にPbOペレットの上に1kPaの圧力を掛けて850℃で3時間保持する耐食性試験を10サイクル実施した。10サイクル後の熱処理用セッターについて試験前と試験後の重量変化を測定し、下記式で示す重量増加率により耐食性を評価した。
重量増加率(%)=〔(試験後重量−試験前重量)/試験前重量〕×100
(2)耐久性試験
前記耐食性試験の場合と同様にして作製したRaが1μm以下の50mm×50mm×3mmの大きさの各熱処理用セッターを耐火物(三井金属工業社製:アロスーパーKE−503)の上に載せ、700℃に加熱した電気炉に挿入し、1時間保持した後、耐火物に載せたまま炉外に取り出し、室温下で急冷する耐久性試験を10サイクル行い、割れの有無により耐久性を評価した。
実施例2、比較例2
〔表2〕の実施例2及び比較例2の各欄に示す、実施例1及び比較例1の各試料No.で作製したスプレードライヤー粉体を用い、凹凸を施したプレス面の金型を用いてプレス成形し成形体を得た。次いで、実施例1と同条件で焼成して20mm×20mm×3mmの熱処理用セッターを作製した。
各実施例及び比較例の熱処理用セッターにおける凸部の最大高さ、凸部の幅、凸部の最大高さと最小高さの差、及び表面の1mmの面積内に存在する凸部の数は表2に示すとおりである。
被焼成体には市販のアクチュエーター用の酸化ニオブが添加された平均粒子径が0.6μmのPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)粉末を金型プレスで直径10mm、厚さ1mmとした成形体を用いた。
50mm×50mm×30mmの高純度マグネシア製サヤの中に熱処理用セッターを入れ、その上にPZT成形体を載せ、サヤと同じ高純度マグネシア製の蓋をし、電気炉で1300℃、1時間焼成した。焼成後のPZT焼結体と熱処理用セッターの引っ付き状態及びPZT焼結体の反りを3次元測定器(東京精密社製:VF400A)で測定した。結果を〔表2〕に示す。
Figure 0006594575
Figure 0006594575

Claims (2)

  1. 下記要件a)〜g)を満たすジルコニア焼結体からなることを特徴とする熱処理用部材。
    a)Yを安定化剤とし、結晶相の99容積%以上が立方晶系ジルコニアであるジルコニア焼結体からなる。
    b)気孔率が0.3%以下である。
    c)平均結晶粒径が5〜10μmである。
    d)最小結晶粒径が3μm以上、最大結晶粒径が15μm以下である。
    e)Al含有量が0.05wt%以下である。
    f)〔SiO(wt%)/Y(wt%)〕×100が0.20以下である。
    g)Al及びSiO以外の不純物量が0.02wt%以下である。
  2. 更に、熱処理用部材表面に凹凸を有し、下記要件h)〜k)を満たすことを特徴とする請求項1記載の熱処理用部材。
    h)前記凹凸の凸部の最大高さ:Ryが30μm以下である。
    i)前記凹凸の凸部の幅が120μm以下である。
    j)前記凹凸の凸部の最大高さと最小高さの差が15μm以下である。
    k)前記表面の1mmの面積内に前記凹凸の凸部が30〜200個存在する。
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